特許第6716631号(P6716631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716631
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】非水系電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20200622BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20200622BHJP
   H01M 2/06 20060101ALN20200622BHJP
   H01M 2/02 20060101ALN20200622BHJP
   H01M 2/26 20060101ALN20200622BHJP
   H01M 2/30 20060101ALN20200622BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M2/16 P
   !H01M2/06 K
   !H01M2/02 K
   !H01M2/26 A
   !H01M2/30 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-109904(P2018-109904)
(22)【出願日】2018年6月8日
(62)【分割の表示】特願2013-120545(P2013-120545)の分割
【原出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-137244(P2018-137244A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年6月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】坂口 眞一郎
(72)【発明者】
【氏名】水田 政智
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−050583(JP,A)
【文献】 特開2002−273684(JP,A)
【文献】 特開2003−317701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00−10/39
H01M 4/00− 4/62
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正極板と複数の負極板と複数のセパレータとを積層した電極積層体を有する非水系電池であって、
前記複数のセパレータは、ポリオレフィンで構成される微多孔性樹脂膜から成り、セパレータの延伸方向がMD方向と同じ方向であり、MD方向に対して平行方向および垂直方向に切断されて4つの辺部を有する正方形または長方形に形成され、延伸方向およびMD方向に対して垂直な辺は切断時に熱を加えて形成され、MD方向に対して平行な辺は熱が加えられておらず、
前記電極積層体は、前記セパレータ同士を前記4つの辺部のいずれにおいても熱融着接合しない状態で、前記複数の正極板と前記複数の負極板と前記複数のセパレータを積層し、
前記正極板は、正極集電体と正極活物質層を有し、前記正極集電体の長手方向の端縁の一部は正極活物質層を具備しない正極集電体延長部として正極活物質層からMD方向と同方向に延長しており、前記負極板は、負極集電体と負極活物質層を有し、前記負極集電体の長手方向の端縁の一部は負極活物質層を具備しない負極集電体延長部として負極活物質層からMD方向と同方向に延長しており、
前記正極集電体延長部と接続された正極端子および前記負極集電体延長部と接続された負極端子が外装体の一辺から引き出され、かつ正極集電体,負極集電体の長手方向及び前記両端子の引き出し方向が延伸方向かつ前記MD方向と同方向であり、
前記外装体はラミネートフィルムであり、前記正極端子と前記負極端子は前記ラミネートフィルム同士を熱封止する辺から突出していることを特徴とする非水系電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用セパレータを用いた非水系電池に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層の表面に合成樹脂層がラミネートされたラミネートフィルムを外装体として用い、正極板、負極板およびセパレータを複数積層してなる電極積層体を、電解液とともに内部に収容した偏平形状をなす非水系電池が知られている。
【0003】
電極積層体を構成するセパレータは、ポリオレフィン等から構成された微多孔性樹脂膜を切断して形成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−287176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池用セパレータは巻き出し方向(MD方向:Machine Direction)の引っ張り強度は強いが、TD(Tranverse Direction)方向(MD方向に対し垂直方向)の引っ張り強度は弱い。すなわち、セパレータをTD方向に機械的に切断すると、その辺は裂けやすい。
【0006】
このセパレータをたとえば電池に格納した際にその辺は外力に対する耐性が低くなることを意味する。外力によって裂けたセパレータは絶縁体としての役割を十分に果たすことができず、非水系電池としての性能が低下するおそれがある。
【0007】
以上示したようなことから、外力耐性に優れた電池用セパレータを使用した非水系電池を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、正極板と負極板とセパレータとを積層した非水系電池であって、前記セパレータは、微多孔樹脂膜のMD方向に対して平行方向および垂直方向に切断されて4つの辺部を有する正方形または長方形に形成され、MD方向に対して垂直な辺は熱が加えられ、MD方向に対して平行方向の辺には熱が加えられていないことを特徴とする。
【0009】
好ましい一つの態様では、MD方向に対して平行な辺は機械切断により形成し、MD方向に対して垂直な辺は熱切断とすることを特徴とする。
【0010】
好ましい別の態様では、MD方向に対して平行方向の辺は機械切断により形成し、MD方向に対して垂直な辺は切断後に熱が加えられることを特徴とする。
【0011】
また、好ましい一つの態様では、MD方向に対して垂直方向の辺は、透明になるまで熱が加えられることを特徴とする。
【0012】
さらに、好ましい一つの態様では、セパレータおよび正極板および負極板を複数枚積層して発電要素としての積層電極体を構成し、電極積層体をラミネートフィルムからなる外装体の内部に格納したことを特徴とする
さらに、好ましい一つの態様では、正極板と接続された正極端子および負極板と接続された負極端子が外装体の一辺から引き出され、かつ端子の引き出し方向がMD方向と同方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池用セパレータ使用した非水系電池において、電池用セパレータの積層を容易化又は電池用セパレータの積層精度を向上させる共に電池用セパレータの外力耐性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における非水系電池を示す斜視図である。
図2】実施形態における非水系電池を示す断面図である。
図3】実施形態におけるセパレータを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明に係る電池用セパレータ(以下、セパレータと称する)を用いた非水系電池における実施形態を図1図3に基づいて詳述する。
【0016】
なお、以下の実施形態において、「電極積層体」とは正極板,負極板が複数積層されたものを意味する。
【0017】
また、本発明において、「正方形または長方形の微多孔性樹脂膜」には、微多孔性樹脂膜をその膜の厚み方向から見た場合の形状が厳密に正方形または長方形であるものだけでなく、端部に凸部や凹部がある場合、更には寸法誤差がある場合、微細な切り欠きがある場合など微多孔性樹脂膜をその膜厚み方向からみた場合の形状が略正方形または長方形であるものを含む。
【0018】
[実施形態]
初めに、図1および図2に基づいて、この発明による非水系電池1の一例を説明する。非水系電池1は、例えばリチウム イオン二次電池であり、図1に示すように、偏平な長方形の外観形状を有し、長手方向の一方の端縁に、導電性金属箔からなる一対の正極端子2,負極端子3を備えている。
【0019】
図2に示すように、非水系電池1は、長方形をなす発電要素としての電極積層体4を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体5の内部に収容したものである。上記電極積層体4は、セパレータ43を介して交互に積層された複数の正極板41および負極板42からなり、例えば、3枚の負極板42と、2枚の正極板41と、これらの間の4枚のセパレータ43と、を含んでいる。つまり、この例では、電極積層体4の両面に負極板42が位置している。但し、電極積層体4の最外層に正極板41が位置する構成も可能である。なお、図2 における各部の寸法は必ずしも正確なものではなく、説明のために誇張したものとなっている。
【0020】
正極板41は、長方形をなす正極集電体41aの両面に正極活物質層41b、41cを形成したものである。正極集電体41aは、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、正極活物質層41b、41cは、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、または、コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物からなる正極活物質と、バインダと、を混合したものを、正極集電体41aの主面に塗布することにより形成されている。
【0021】
負極板42は、長方形をなす負極集電体42aの両面に負極活物質層42b、42cを形成したものである。負極集電体42aは、例えば、ニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。負極活物質層42b、42cは、例えば、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、バインダを混合したものを、負極集電体42aの主面に塗布することにより形成されている。
【0022】
負極集電体42aの長手方向の端縁の一部は、負極活物質層42b、42cを具備しない延長部42dとして延びており、その先端が負極端子3に接合されている。また、図2には示されていないが、同様に上記正極集電体41aの長手方向の端縁の一部が、正極活物質層41b、41cを具備しない延長部41dとして延びており、その先端が正極端子2に接合されている。
【0023】
また、電解液としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池に一般的に使用される電解質として、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解した非水電解液を用いることができる。
【0024】
上記のような構成の電極積層体4を電解液とともに収容する外装体5は、図2に一部を拡大して示すように、熱融着層51と金属層52と保護層53との三層構造を有するラミネートフィルムからなる。中間の金属層52は、例えばアルミニウム箔からなり、その内側面を覆う熱融着層51は、熱融着が可能な合成樹脂例えばポリプロピレン(PP)からなり、金属層52の外側面を覆う保護層53は耐久性に優れた合成樹脂例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。なお、さらに多数の層を有するラミネートフィルムを用いることもできる。また、上記の例では金属層52の両面に合成樹脂層(熱融着層51,保護層53)をラミネートしているが、金属層52の外側の合成樹脂層(保護層53)は必ずしも必須のものではなく、内側表面にのみ合成樹脂層(熱融着層51)を備えた構成であってもよい
外装体5は、一つの例では、図2の電極積層体4の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとの2枚構造をなし、これら2枚のラミネートフィルムの周囲の4辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。図示例は、このような2枚構造の外装体5を示している。また、他の一つの例では、外装体5は1枚の比較的大きなラミネートフィルムからなり、2つ折りとした状態で内側に電極積層体4を配置した上で、周囲の3辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。
【0025】
長方形をなす非水系電池1の短辺側に位置する一対の正極端子2、負極端子3は、ラミネートフィルムを熱融着する際に、ラミネートフィルムの接合面を通して外部へ引き出されている。
【0026】
上記の非水系電池1の製造手順としては、以下の通りである。まず、負極板42、セパレータ43、正極板41及びセパレータ43を順次積層し、かつ正極集電体41a,負極集電体42aの延長部41d,42dをそれぞれ正極端子2、負極端子3にスポット溶接等により取り付けて電極積層体4を構成する。次に、この電極積層体4を外装体5となるラミネートフィルムで覆い、比較的小さな充填口を残して周囲の4辺(上記の2つ折りの場合は3辺)を熱融着する。次に、上記充填口を通して外装体5の内部に電解液を充填し、その後、充填口を熱融着して外装体5を密閉状態とする。これにより非水系電池1が完成する。
【0027】
ここで、セパレータ43について説明する。セパレータ43は、正極板41と負極板42との間の短絡を防止すると同時に電解質を保持する機能を有するものであって、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性樹脂膜からなる。なお、セパレータ43としては、ポリオレフィン等の単層膜に限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造のもの等、後述する熱切断又は熱を加えた際に溶解するものが挙げられる。
【0028】
本実施形態におけるセパレータ43は、MD方向に対して平行に予め設定された間隔で切断して帯状に形成されたあと、MD方向に対して垂直方向に予め設定された間隔で切断して、図3に示すような長方形状または正方形状のセパレータ43を形成する。
【0029】
ここで、図3に示すように、MD方向に対して平行方向の切断は機械切断とする。この機械切断は例えば、カッター等が使用される。一方、MD方向に対して垂直方向の切断は熱切断とする。この熱切断は例えば、レーザ等が使用され、その温度は、セパレータ43がポリオレフィン系の場合は、約170°とする。
【0030】
このように、MD方向に対して平行方向の切断を機械切断とすることにより、辺部62a,62bは直線状となる。その結果、電極積層体4を積層する際に、機械切断した辺部62a,62bを基準として位置合わせをすることができ、容易に電極積層体4を積層することが可能となると共に、正極と負極の積層精度が向上することで積層ずれによる電池の容量低下を抑制することができる。
【0031】
また、MD方向に対して垂直方向の切断は機械切断ではなく熱切断とすることにより、セパレータ43の辺部61a,61bは熱により溶解して空孔を閉塞する。そのため、辺部61a,61bの外力に対する耐性が向上し、辺部61a,61bの破損を抑制することができる。その結果、セパレータ43は絶縁体としての役割を維持し、セパレータ43を用いた非水系電池1は電池としての性能低下を抑制することが可能となる。
【0032】
また、巻回方式の非水系電池の場合、セパレータ43の切断辺はテープで止められるのが一般的であるため、切断辺に対する外力耐性は必要ない。そのため、積層電極体4を用いた非水系電池1に本実施形態におけるセパレータ43を用いると、その効果は顕著となる。
【0033】
また、たとえば、MD方向に対して垂直方向の辺部61aから正極端子2が,辺部61bから負極端子3が引き出されている場合は、両側で電極積層体4が固定されるため、電極積層体4の移動が規制される。しかしながら、本実施形態は、MD方向に対して垂直方向の辺部61a,61bのうち一方向の辺部61aから正極端子2および負極端子3を引き出しているため、電極積層体4は辺部61a側の外装体5にのみ固定される。その結果、電極積層体4は、外装体5内において辺部61b方向への移動は規制されるが、辺部61a方向への移動は規制されないこととなる。
【0034】
そのため、例えば、辺部61bから外力が与えられた場合、電極積層体4は外装体5内で辺部61方向へ移動し、電極積層体4が正極端子2,負極端子3に接触し、セパレータ43の辺部61aが破損する恐れがある。しかし、本実施形態では、延伸方向に対して垂直方向の辺部、特に61aは熱切断されることによって外力に対する耐性が向上しているため、正極端子2,負極端子3と接触して破損することが抑制される。その結果、セパレータ43は絶縁体としての役割を維持し、非水系電池1の性能劣化を抑制することが可能となる。
【0035】
実施形態におけるMD方向に垂直方向の辺61a,61bについては、辺の切断時に熱を加える方法について説明したが、切断した後に熱を加えても良い。また、セパレータ43のMD方向を揃えて積層し積層後の電極積層体4に対しMD方向に対して垂直方向になる辺にヒーター等で熱を印加するようにしてもよい。さらに、切断する前に、セパレータ43のMD方向に対して垂直方向の切断箇所に熱を加え、熱を加えた後に切断してもよい。また、熱を加える際には、MD方向に垂直方向の辺が透明になる程度まで行うと良い。透明になる程度まで熱を加えることで十分溶融し外力に対する耐性が向上する。
【0036】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0037】
1…非水系電池
2…正極端子
3…負極端子
4…積層電極体
5…外装体
41…正極板
42…負極板
43…電池用セパレータ
61a,61b,62a,62b…辺部
図1
図2
図3