(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)で表される1価フェノールが、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル及びパラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステルから選択される、請求項2に記載のポリカーボネート樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表わされる1価フェノール、一
般式(2)に示す2価フェノール、及び、カーボネート結合剤を反応させて得られる。
【0016】
(式中、R
6〜R
9はそれぞれ、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20
、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましく
は炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素
数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜1
2のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜
5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル
基、炭素数6〜12のアリール基である。Xは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、
−CO−、又は下記式(3)で示されるいずれかの構造である。)
【0018】
(式中、R
10及びR
11はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜
20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ま
しくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは
炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7
〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数
2〜5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアル
キル基、炭素数6〜12のアリール基である。
R
10及びR
11はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜
12の炭素環又は複素環を形成してもよく、
cは0〜20の整数、好ましくは1〜12の整数を表す。
R
12及びR
13はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、
好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは
炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数
6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12
のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5
のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基
、炭素数6〜12のアリール基である。
R
12及びR
13はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜
12の炭素環又は複素環を形成してもよい。
R
14〜R
17はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好
ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭
素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6
〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12の
アラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5の
アルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、
炭素数6〜12のアリール基である。また、R
14とR
15及びR
16とR
17は、それ
ぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。
そしてR
18〜R
27は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、
R
18〜R
27のうち少なくとも一つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基であ
る。)
【0019】
上記一般式(2)の2価フェノールとして、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイ
ソプロピルベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチル
フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロ
パン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(
4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロ
モフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン
、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェ
ニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒド
ロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン
、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
[=ビスフェノールZ]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒド
ロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジ
ヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニ
ルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、1−フ
ェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキ
シ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキ
シ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)
フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げ
ることができるが、好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特
に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]
である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用
することができる。
【0020】
<カーボネート結合剤>
本発明のカーボネート結合剤としては、ホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエステル、及
び、一酸化炭素や二酸化炭素と云ったカルボニル系化合物が例示される。
【0021】
炭酸ジエステルとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−
tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートある
いはジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロ
フェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。中でもジフェニ
ルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネート
が好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用
することができる。
【0022】
<1価フェノール>
本発明の1価フェノールは末端停止剤として作用し、一般式(1)で示される。
【0024】
(式中、R
1は、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を
表す。R
2〜R
5はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のア
ルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。R
2〜R
5
は、好ましくは、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、又
は、置換基を有してもよい炭素数6〜8のアリール基である。)
【0025】
好ましくは、一般式(1)の1価フェノールが一般式(7)で表わされる化合物である
。
【0026】
【化7】
(式中、R
1は、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を
表す。)
【0027】
一般式(1)又は一般式(7)におけるR
1の炭素数は特定の数値範囲内であることが
より好ましい。
具体的には、R
1の炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18
が特に好ましい。
また、R
1の炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
【0028】
一般式(1)又は一般式(7)で示される1価フェノール(末端停止剤)の中でも、パ
ラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシ
ルエステルのいずれか、もしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
【0029】
R
1として、例えば、炭素数16のアルキル基である1価フェノール(末端停止剤)を
使用した場合、得られるポリカーボネート樹脂のガラス転移点、溶融流動性、成形性、耐
ドローダウン性、及びポリカーボネート製造時の1価フェノールの有機溶剤溶解性が優れ
ており、本発明のポリカーボネート樹脂に使用する末端停止剤として、特に好ましい。
【0030】
一方、一般式(1)又は一般式(7)におけるR
1の炭素数が増加しすぎると、1価フ
ェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が低下する傾向があり、ポリカーボネート樹脂
製造時の生産性が低下することがある。
一例として、R
1の炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあ
たって生産性が高く、経済性も良い。R
1の炭素数が22以下であれば、1価フェノール
は、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産
性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
一般式(1)又は一般式(7)におけるR
1の炭素数が小さすぎると、ポリカーボネー
ト樹脂のガラス転移点が低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
【0031】
材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で主骨格や末端停止剤を
他の構造のものと併用したり、他のポリカーボネート樹脂、更には他の透明樹脂と混合し
たりすることは許容される。使用する全末端停止剤中の80mol%以上が上記式(1)
で表わされる構造であることが好ましく、使用する全末端停止剤中の90mol%以上が
上記式(1)で表わされる構造であることがより好ましく、使用する全末端停止剤が上記
式(1)で表わされる構造であることが特に好ましい。
他に併用してもよい末端停止剤としては、フェノール、p−クレゾール、o−クレゾー
ル、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリ
ルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−プ
ロピルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェ
ノール、p−トリフルオロメチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェ
ノール、オイゲノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、
オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリ
スチルフェノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール
等のアルキルフェノール及びパラヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル
、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエ
ステル等のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。また、上記一価フェ
ノールを2種類以上併用して使用することも可能である。
【0032】
合成条件によっては、末端停止剤と反応しないフェノール性OH基のまま末端基が形成
され得る。このフェノール性OH基は、少ないほど好ましい。具体的には、全末端中の8
0mol%以上が上記式(1)で表わされる構造で封止されていることが好ましく、全末
端中の90mol%以上が上記式(1)で表わされる構造で封止されていることが特に好
ましい。
【0033】
<重合度、1価フェノール(末端停止剤)の使用量>
本発明のポリカーボネート樹脂は、1価フェノール(末端停止剤)の使用量によって分
子量が制御される。
主骨格のために使用する2価フェノール(上記一般式(2)で示される)の重合度と、
1価フェノール(末端停止剤)の使用量は次式に示される。
【0034】
【数1】
この式に基づいて1価フェノールと2価フェノールの使用量が定められるが、2価フェ
ノールの使用量(モル):1価フェノール(末端停止剤)の使用量(モル)の好ましい範
囲は、50:1〜15:1であり、さらに好ましくは40:1〜17:1の範囲である。
【0035】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル
−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2
,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6
−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキ
シフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で表さ
れるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシ
インドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7
−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を上述した芳
香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10mol%
、好ましくは、0.1〜3mol%である。
【0036】
<添加剤>
本発明のポリカーボネート樹脂には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で各種添加剤が配
合されていてもよい。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外
線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が例表
される。
また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動
性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0037】
熱安定剤として、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具
体的には、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸
; 酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等
の酸性ピロリン酸金属塩; リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン
酸亜鉛等、第1族又は第10族金属のリン酸塩; 有機ホスフェート化合物、有機ホスフ
ァイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。あるいは又、分子中の
少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なく
とも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸
(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニ
レン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。
亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタ
デシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステア
リルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファ
イト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニル
ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−ter
t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホ
スファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスフ
ァイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス
(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイ
ト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスフ
ァイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファ
イト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトー
ルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オ
クチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビ
ス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビ
ス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホス
ファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合
して使用してもよい。
【0038】
有機ホスファイト化合物として、具体的には、例えば、アデカ社製(商品名、以下同じ
)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」
、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・ス
ペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
【0039】
また、リン酸エステルとして、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ト
リブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリク
レジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフ
ェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0040】
熱安定剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対
して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0
.03質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ま
しくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能
性があり、熱安定剤が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある
。
【0041】
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビ
スフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体
的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(3,5−ジ−
tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n−オクタデシル−3
−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル
)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−
ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4
−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3
−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1
,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−
ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジ
イルビス[3 −(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナ
ミド)、2,4− ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[
[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフ
ォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a
”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オク
チルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−
tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビ
ス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1
,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−te
rt−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イ
ルアミノ)フェノール等を挙げることができる。 フェノール系酸化防止剤として、具体
的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(
登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−
50」、「アデカスタブAO−60」等を挙げることができる。
【0042】
酸化防止剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に
対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、1
質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の添加割合が下限値未満の
場合、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の添加割合が上
限値を超える場合、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0043】
難燃剤として、有機スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩としては
、脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を
単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、金属塩としては、アルカリ金
属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属として、ナトリウム、リチウム、
カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。アルカリ土類金属として、カル
シウム、ストロンチウム等が挙げられる。本発明で用いる有機スルホン酸金属塩の好まし
い金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属であり、より
好ましくはナトリウム、カリウムである。このような金属を採用することにより、燃焼時
の炭化層形成を効果的に促進し、高い透明性も維持できるという効果が得られる。
【0044】
脂肪族スルホン酸塩として、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より
好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩を挙げることができる。
また、フルオロアルカン− スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩及びアルカリ土
類金属塩を挙げることができ、アルカリ金属塩が好ましい。フルオロアルカンスルホン酸
金属塩の炭素数としては、1〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。このような範囲と
することにより、高い透明性を維持できるという効果が得られる。好ましいフルオロアル
カン−スルホン酸金属塩の具体例として、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、
パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸ナトリウム
、パーフルオロエタン−スルホン酸カリウム、等を挙げることができる。
【0045】
芳香族スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げること
ができ、アルカリ金属塩が好ましい。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩の具体例
としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロ
ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホ
ン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩
、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′
−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、ジフェニルスルホン−3
,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸
のジカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン
酸カリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩
等を挙げることができる。
【0046】
本発明で用いる有機スルホン酸金属塩は、特に、透明性を向上させる観点から、ジフェ
ニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−
スチレンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩が好ましく、ジ
フェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩がより好ましい。尚、芳香族ポリカーボ
ネート樹脂1 0 0 質量部に対する、有機スルホン酸金属塩の添加質量は、上記のとお
り、0.005質量部〜0.1質量部であるが、好ましくは0.01質量部〜0.1質量
部、より好ましくは0.03質量部〜0.09質量部である。
また、本発明では、有機スルホン酸金属塩以外の難燃剤を配合してもよい。
【0047】
難燃助剤として、例えばシリコーン化合物を加えることができる。シリコーン化合物と
しては、分子中にフェニル基を有するものが好ましい。フェニル基を有することによりシ
リコーン化合物のポリカーボネート中への分散性が向上し、透明性と難燃性に優れる。シ
リコーン化合物の好ましい質量平均分子量は450〜5000であり、中でも750〜4
000、更には1000〜3000、特に1500〜2500であることが好ましい。質
量平均分子量を450以上とすることにより、製造が容易になり、工業的生産への適応が
容易となり、シリコーン化合物の耐熱性も低下しにくくなる。逆にシリコーン化合物の質
量平均分子量を5000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物中での分散
性が低下しにくく、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における難燃性の低下や、機械物
性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0048】
難燃助剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対
して、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上であり、また、7.5質量
部以下、好ましくは5質量部以下である。難燃助剤の添加割合が下限値未満の場合、難燃
性が不十分となる可能性があり、難燃助剤の添加割合が上限値を超える場合、デラミ等外
観不良が発生し透明性が低下すると共に、難燃性が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能
性がある。
【0049】
紫外線吸収剤として、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリ
アゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合
物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミ
ン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。こ
れらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい
。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチ
ルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−
ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5
'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−
3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−
(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾ
トリアゾール)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミル)−ベンゾ
トリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリ
アゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6
−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−
1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−
[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−
5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,
1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパン
ジオイックアシッド−ジメチルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)
−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−
メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾ
ール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−t
ert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(
2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノ
ール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(
1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]、[メチル−3−[3−tert−ブチル
−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネ
ート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。これらの2種以上を併
用してもよい。上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−
オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3
,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]
である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4−ジヒドロキシ−
ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4
−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノ
ン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ
−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベ
ンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等を挙げること
ができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレ
ート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート等を挙げることができる。更には、
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−ト
リアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス
(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロ
キシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具
体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等
を挙げることができる。
【0050】
紫外線吸収剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部
に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質
量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の添加割合が下限値未満の場合
、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の添加割合が上限値を超
える場合、モールドデボジット等が生じ、金型や冷却ロール汚染を引き起こす可能性があ
る。
【0051】
離型剤として、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポ
リオレフィン系)等を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カル
ボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化
合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙
げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3
価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン
酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又
は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。
脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、
カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシ
ン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を
挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロ
ウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸
ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレ
ート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトール
モノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジス
テアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステ
アレート等を挙げることができる。数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素と
して、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス
、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙
げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これ
らの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス
、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィン
ワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜
5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様
々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン
系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコ
ーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げること
ができる。これらの2種類以上を併用してもよい。
離型剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し
て、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また
、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の添加割合が下限値未満の
場合、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の添加割合が上限値を超える場合、
耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
【0052】
着色剤としての染顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げること
ができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウム
イエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化ク
ロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバル
トグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔
料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を
挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料及び有機染料として、例えば、銅フ
タロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケル
アゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリド
ン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノ
リン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そし
て、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、
キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。尚、染顔料は、
1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても
よい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目
的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスター
バッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し
て、例えば5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である
。着色剤の添加割合が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0053】
<製造方法>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法としては、例えば、界面重合法、ピリ
ジン法、エステル交換法をはじめとする各種合成方法を挙げることができる。
【0054】
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下
で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物及び末端停止剤、必要に応じ
て芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させ
た後、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行
うことによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。末端停止剤の添加は、
ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は
0〜35℃であり、反応時間は数分〜数時間である。
【0055】
ここで、反応に不活性な有機溶媒として、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、
クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン
、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。重合触媒として、ト
リメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキ
シルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド
、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等
の第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂のフレークは、例えば、界面重合法にて得られた芳香族ポリカー
ボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液を45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除
去することで得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られた芳香族ポリカー
ボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をメタノール中に投入し、析出したポリマーを
濾過、乾燥して得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られたポリカーボネ
ート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をニーダーにて攪拌下、40℃に保ちながら攪拌粉
砕後、95℃以上の熱水で脱溶剤して得ることができる。
【0057】
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステ
ル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調
整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の芳香族ポリカーボネー
ト樹脂の分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。末端ヒドロキシル基量は、芳香族
ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用
的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは7
00ppm以下である。芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モ
ル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられ
る。
【0058】
炭酸ジエステルとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−
tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートある
いはジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロ
フェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。中でもジフェニ
ルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネート
が好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用
することができる。
【0059】
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を合成する際には、通常、エステル
交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカ
リ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合
物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基
性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、
2価フェノール、1価フェノール(末端停止剤)、炭酸ジエステルの混合物を、溶融下に
、反応器に供給し、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2.7×10
2P
a(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶
融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、又は、連続的に行うこ
とができるが、本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂にあっては、安定性等の観点
から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、芳香族ポリカーボネート
樹脂中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、又
は、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金
属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、芳香族ポリカーボネ
ート樹脂に対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
【0060】
上記のように、従来の方法に準じて本発明のポリカーボネート樹脂を製造でき、本発明
は産業上有用な発明である。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、本発明ポリカーボネート樹脂以外
の樹脂が含まれていてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、本発明で用いるポ
リカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(P
ET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレ
ート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)
、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹
脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチ
ルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエ
ラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂
(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂
;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂
(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE
樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹
脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることが
できる。
本発明のポリカーボネート樹脂中における、他の樹脂成分の配合割合は、全樹脂成分の
10質量%以下であることが好ましく、1%以下がさらに好ましい。他樹脂の成分割合が
10質量%を超えると諸物性を損なう可能性がある。
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂に種々の添加剤を任意の割合で添加し、周知のストラン
ド方式のコールドカット法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をストラ
ンド状に成形、冷却後、所定の形状に切断してペレット化する方法)、空気中ホットカッ
ト方式のホットカット法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、空気中
で水に触れぬうちにペレット状に切断する方法)、水中ホットカット方式のホットカット
法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、水中で切断し、同時に冷却し
てペレット化する方法)によって、ポリカーボネート樹脂ペレットを得ることができる。
得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用い
た乾燥といった方法に基づき乾燥させることが好ましい。
【0063】
<分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は以下の測定条件に基づいて
測定される。
【0064】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求
め、次式により算出する。
【0066】
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、18,000〜35,00
0が好ましく、20,000〜30,000がさらに好ましく、22,000〜28,0
00が特に好ましい。
【0067】
ガラス転移点、溶融流動性、耐ドローダウン性は分子量に影響を受ける物性であり、ポ
リカーボネート樹脂の粘度平均分子量が上記範囲にある場合、これらの特性全てがシート
、フィルム、熱成形体の製造に好ましい。すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂は、
熱成形の用途に特に適しているといえる。
粘度平均分子量が35,000より大きい場合、溶融流動性が低下することがある。ま
た、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が低い値とはならず、熱成形性が低下すること
がある。
粘度平均分子量が18,000より小さい場合、耐ドローダウン性が低下することがあ
る。
【0068】
ガラス転移点
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計を用い、以下に示す条
件にて測定する。
【0069】
<ガラス転移点の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)
加温速度:10℃/min
ガスフロー環境:窒素20ml/min
試料前処理:300℃加熱融解
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂は熱成形性の観点から、ガラス転移点が100℃〜13
5℃の範囲であることが好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は11
0℃〜130℃の範囲であることがさらに好ましく、115℃〜130℃の範囲であるこ
とが特に好ましい。
ガラス転移点が100℃未満であると、ポリカーボネート樹脂の製造上、造粒、乾燥工
程においてポリカーボネート樹脂粉末が凝集し、著しく生産性が低下することがある。
上記の理由により、ガラス転移点の高い方がポリカーボネート樹脂製造上のプロセスマ
ージンが広く、高品質のポリカーボネート樹脂を効率的、安定的に製造できる。このため
、本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は105℃以上であることがさらに好ま
しく、110℃以上であることが特に好ましい。
ガラス転移点が135℃より高い場合、熱成形時に樹脂を高温で軟化する必要があり、
エネルギー消費量が増加することがある。
【0071】
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示
す条件にて測定したQ値にて評価する。Q値が高いと溶融流動性が高いことを示し、Q値
が低いと溶融流動性が低いことを示す。
【0072】
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター
荷重:160kgf/cm
2
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:280℃
【0073】
上記測定条件で測定したポリカーボネート樹脂のQ値が1×10
−2cm
3/s未満と
なると、たとえガラス転移点が低くても、溶融流動性が低すぎるために、通常より高温条
件でシート、フィルム、熱成形体を製造する必要があり、エネルギー消費量が増加したり
、樹脂が分解することがある。
シートフィルムの生産安定性や製造時のエネルギー消費量の観点から、Q値は1×10
−2cm
3/s以上であり、2×10
−2cm
3/s以上であることがより好ましい。
【0074】
逆に、ガラス転移点が100℃〜135℃の好ましい範囲であっても、上記測定条件で
測定したポリカーボネート樹脂のQ値が35×10
−2cm
3/s以上となると、溶融流
動性が高すぎるために耐ドローダウン性が低く、熱成形時に著しいドローダウンが発生し
、成形不良を引き起こすことがある。ガラス転移点が100℃〜135℃であり、かつQ
値が30×10
−2cm
3/s以下であれば、熱成形時にドローダウンはほとんど観察さ
れないため、特に好ましい。
上記の理由により、本発明のポリカーボネート樹脂のQ値は1×10
−2cm
3/s〜
35×10
−2cm
3/sの範囲であることが好ましく、2×10
−2cm
3/s〜35
×10
−2cm
3/sの範囲であることがより好ましく、2×10
−2cm
3/s〜30
×10
−2cm
3/sの範囲であることが特に好ましい。
【0075】
<シート、フィルム>
本発明のシート、フィルムの製造方法は、特に限定されないが、押出成形、キャスト成
形が好ましい。
押出成形の例としては、本発明のポリカーボネート樹脂あるいは、これに添加剤を加え
た樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から
押出し、得られる半溶融状のシートをポリッシングロール等で挟圧しながら、冷却、固化
して製品とする方法が挙げられる。押出機は1軸でも2軸でもよく、またベント付き、ノ
ンベントのいずれも使用出来る。
【0076】
<熱成形体>
本発明の熱成形体とは、ポリカーボネート樹脂の熱成形によって製造された成形体であ
る。具体的な製造方法としては、真空成形や圧縮空気圧成形が挙げられる。
【0077】
<熱成形性>
本発明のポリカーボネート樹脂の熱成形性は、本発明のポリカーボネート樹脂フィルム
を圧空成形して評価する。具体的には、ポリカーボネート樹脂フィルムを、200mm×
300mm×180μmに裁断し、得られたサンプルフィルムを圧空成形機の型枠に取り
付け、赤外線ヒーターにより、所定の温度に予熱し、2.5MPaの高圧空気により、金
型(キューブ型)へ圧空成形を実施する。なお、絞り高さは、金型5mmの高さのものを
使用する。
【0078】
<耐ドローダウン性>
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形機の型枠に取り付け、赤外線ヒータ
ーにより、所定の温度に加熱し、耐ドローダウン性を目視にて観察する。
【0079】
<用途>
本発明のシート、フィルム、熱成形体は、上述した各種の好ましい形態、構成を含む本
発明のポリカーボネート樹脂を含有する熱成形体である。熱成形体の形状、模様、色彩、
寸法等に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。熱成形体として、具体的
には、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部
材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品、各種家庭用電気製品等の部品
、電気器具のハウジング、容器、カバー、収納部、ケース、照明器具のカバーやケース等
を挙げることができる。電気電子機器として、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲーム
機、テレビジョン受像機、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のディスプレイ装置、プリ
ンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電
子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、スマートフォン、タブレット、電池パック、
記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤ
ー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等を挙げることができる。また、成形体として、
電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン
、反射板やメーター部品等の自動車部品、玩具、装飾品等も挙げることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく
、実施例における種々の数値や材料は例示である。
【0081】
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は以下の測定条件に基づいて
測定した。
【0082】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求
め、次式により算出した。
【0083】
【数3】
【0084】
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計を用い、以下に示す条
件にて測定した。
【0085】
<ガラス転移点の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)(株)島津製作所製DSC−50
加温速度:10℃/min
ガスフロー環境:窒素20ml/min
試料前処理:300℃加熱融解
【0086】
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示
す条件にて測定したQ値にて評価した。
【0087】
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター(株)島津製作所製CFT−500D
荷重:160kgf/cm
2
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:280℃
【0088】
<押出成形条件>
本発明のポリカーボネート樹脂の押出成形によるフィルム化は、二軸押出機を使用し、
以下に示す条件にて実施した。
押出機:東芝機械(株)製TEM26DS
押出機温度:280℃
ダイス幅:330mm
ダイス温度:260℃
【0089】
<熱成形性>
本発明のポリカーボネート樹脂の熱成形性は、本発明のポリカーボネート樹脂フィルム
を圧空成形して評価した。具体的には、ポリカーボネート樹脂フィルムを、200mm×
300mm×180μmに裁断し、得られたサンプルフィルムを(株)NK・エンタープ
ライズ製圧空成形機VAP−30MT(送り速度900mm/s)の型枠に取り付け、赤
外線ヒーターにより、150℃、170℃、190℃に予熱し、それぞれ2.5MPaの
高圧空気により、金型(キューブ型)へ圧空成形を実施した。なお、絞り高さは、金型5
mmの高さのものを使用した。
【0090】
得られた熱成形体の表面状態(クラック、シワ、ムラ、形状)を観察し、以下に示す3
段階で評価した。形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されない場合、「
特に良好」と評価し、キューブ型の角がやや丸く形状賦型されている場合、「良好」と評
価し、キューブ型の角が丸く形状賦型されている場合、「不良」と評価した。
【0091】
<耐ドローダウン性>
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形機の型枠に取り付け、赤外線ヒータ
ーにより、150℃、170℃、190℃に加熱し、それぞれ耐ドローダウン性を目視に
て観察した。
ドローダウンがほとんど観察されなかった場合、「特に良好」と評価し、ややドローダ
ウンが観察された場合、「良好」と評価し、著しいドローダウンが観察された場合、「不
良」と評価した。
【0092】
<製造例1>
有機化学ハンドブックP143〜150に基づき、東京化成工業(株)製4−ヒドロキ
シ安息香酸と東京化成工業(株)製1−ヘキサデカノールを用いて脱水反応によるエステ
ル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)を得た。
【0093】
<製造例2>
製造例1において、1−ヘキサデカノールを新日本理化(株)製2−ヘキシルデカノー
ル(商品名:エヌジェコール 160BR)に変更した以外は、製造例1と同様に操作し
て、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル(HDPB)を得た。
【0094】
<実施例1>
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鉄住金化学(株)製ビスフ
ェノールA(BPA)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを
加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15
℃〜25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
【0095】
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメ
タン11kg、及び前記のCEPB443g(1.22mol)をジクロロメタン10k
gに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として10mlのト
リエチルアミンを加え約40分間重合させた。
【0096】
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるま
で純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸
発留去することによりポリカーボネート樹脂粉末を得た。
【0097】
得られたポリカーボネート樹脂粉末を、スクリュー径35mm の2軸押出機を用い、
シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレッ
ト化した。
【0098】
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを用いて、粘度平均分子量、ガラス転移点、Q
値測定を実施した結果、粘度平均分子量27600、ガラス転移点(Tg)127℃、Q
値7.7×10
−2cm
3/sであった。
【0099】
さらに、Tダイを有する40mm単軸押出機を用い、得られたポリカーボネート樹脂ペ
レットを吐出量40kg/h、シリンダー温度260℃で溶融押出し、Tダイからフィル
ム状にして押し出した後、120℃の鏡面ロールを用いて冷却し、厚み180μmのフィ
ルムを得た。
【0100】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムを用いて、熱成形性及び耐ドローダウン性を評
価した結果、熱成形性については150℃、170℃、190℃いずれの温度条件におい
ても形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、
耐ドローダウン性については150℃、170℃、190℃いずれの温度条件においても
ドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0101】
<比較例1>
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の商品名「ユーピロン(登録商標)S−
3000(末端構造はパラターシャリーブチルフェノール(PTBP))を用いて、実施
例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0102】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は21500、ガラス転移点(Tg)
は146℃、Q値は10×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については150℃では
キューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、170℃ではキューブ型の
角がやや丸く形状賦型されており、「良好」であり、190℃では形状を賦型し、クラッ
ク、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であった。耐ドローダウン性につい
ては150℃、170℃、190℃いずれの温度条件においてもドローダウンはほとんど
観察されず、「特に良好」であった。
【0103】
【表1】
【0104】
表1より、本発明のポリカーボネート樹脂は、従来の一般的なポリカーボネート樹脂と
比較して、低温での熱成形性が良好で、かつ熱成形時の耐ドローダウン性に優れたシート
、フィルムを与えるものであると言える。
【0105】
<実施例2>
実施例1において、CEPBの量を551g(1.52mol)に変更した以外は、実
施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0106】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は23600、ガラス転移点(Tg)
は119℃、Q値は17×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0107】
<実施例3>
実施例1において、CEPBの量を502g(1.38mol)に変更した以外は、実
施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0108】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は25000、ガラス転移点(Tg)
は123℃、Q値は13×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0109】
<実施例4>
実施例1において、CEPBを前記のHDPBに変更し、HDPBの量を383g(1
.05mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット
及びフィルムを得た。
【0110】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は27100、ガラス転移点(Tg)
は130℃、Q値は8.7×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型
し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン
性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0111】
<実施例5>
実施例4において、HDPBの量を452g(1.25mol)とした以外は、実施例
4と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0112】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24600、ガラス転移点(Tg)
は126℃、Q値は12×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0113】
<実施例6>
実施例4において、HDPBの量を525g(1.45mol)とした以外は、実施例
4と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0114】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22000、ガラス転移点(Tg)
は122℃、Q値は25×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0115】
<実施例7>
実施例1において、CEPBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸ドデシル
エステル(PODB)に変更し、PODBの量を443g(1.45mol)とした以外
は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0116】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20700、ガラス転移点(Tg)
は128℃、Q値は21×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0117】
<実施例8>
実施例1において、CEPBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸2−エチ
ルヘキシルエステル(EHPB)に変更し、EHPBの量を376g(1.50mol)
とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを
得た。
【0118】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22700、ガラス転移点(Tg)
は132℃、Q値は11×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはクラック、シ
ワ、ムラのいずれも観察されないが、キューブ型の角がやや丸く形状賦型されていたため
、「良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「
特に良好」であった。
【0119】
<実施例9>
実施例8において、EHPBの量を426g(1.70mol)とした以外は、実施例
8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0120】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20100、ガラス転移点(Tg)
は128℃、Q値は28×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0121】
<実施例10>
実施例8において、EHPBの量を445g(1.78mol)とした以外は、実施例
8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0122】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は19200、ガラス転移点(Tg)
は127℃、Q値は34×10
−2cm
3/sであり、熱成形性については形状を賦型し
、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性
についてはややドローダウンが観察され、「良好」であった。
【0123】
<比較例2>
実施例7において、PODBの量を630g(2.06mol)とした以外は、実施例
7と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0124】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16700、ガラス転移点(Tg)
は120℃、Q値は64×10
−2cm
3/sであり、耐ドローダウン性については著し
いドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドロ
ーダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
【0125】
<比較例3>
実施例8において、EHPBの量を514g(2.06mol)とした以外は、実施例
8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0126】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16500、ガラス転移点(Tg)
は124℃、Q値は60×10
−2cm
3/sであり、耐ドローダウン性については著し
いドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドロ
ーダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
【0127】
<比較例4>
比較例2において、PODBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸ブチルエ
ステル(POBB)とし、POBBの量を241.5g(1.24mol)とした以外は
、比較例2と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0128】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24300、ガラス転移点(Tg)
は141℃、Q値7.1×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはキューブ型の
角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウ
ンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0129】
<比較例5>
比較例2において、PODBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸プロピル
エステル(POPB)とし、POPBの量を224g(1.24mol)とした以外は、
比較例2と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0130】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は23900、ガラス転移点(Tg)
は141℃、Q値は7.3×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはキューブ型
の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダ
ウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0131】
<比較例6>
実施例1において、CEPBの量を188g(0.52mol)とした以外は、実施例
1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0132】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は46800、ガラス転移点(Tg)
は146℃、Q値は0.5×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはキューブ型
の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダ
ウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
【0133】
<比較例7>
比較例6において、CEPBをHDPB188g(0.52mol)に変更した以外は
、比較例6と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0134】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は47000、ガラス転移点は146
℃、Q値は0.5×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸
く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほ
とんど観察されず、「特に良好」であった。
【0135】
<比較例8>
実施例7において、PODBの量を159g(0.52mol)とした以外は、実施例
7と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0136】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は47700、ガラス転移点は147
℃、Q値は0.5×10
−2cm
3/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸
く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほ
とんど観察されず、「特に良好」であった。
【0137】
<比較例9>
実施例1において、CEPBの量を732g(2.39mol)とした以外は、実施例
1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0138】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16900、ガラス転移点は112
℃、Q値は67×10
−2cm
3/sであり、耐ドローダウン性については著しいドロー
ダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウン
が発生したために熱成形できず、「不良」であった。
【0139】
<比較例10>
比較例9において、CEPBをHDPB732g(2.39mol)に変更した以外は
、比較例9と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
【0140】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16800、ガラス転移点は112
℃、Q値は67×10
−2cm
3/sであり、耐ドローダウン性については著しいドロー
ダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウン
が発生したために熱成形できず、「不良」であった。
【0141】
【表2】
【0142】
表2に示すように、本発明のポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と
比較して、低温での熱成形性および耐ドローダウン性が良好である。
すなわち、各実施例のポリカーボネート樹脂においては、末端停止剤として、炭素数が
8であるEHPB、または炭素数が16であるCEPB、HDPB等を用いてガラス転移
点を100℃〜135℃、かつQ値を1×10
−2cm
3/s〜35×10
−2cm
3/
sの範囲内に調整することにより、優れた熱成形性および耐ドローダウン性が実現されて
いる。
一方、Q値が大きく高温での流動性が高すぎる比較例1、2、9、および10のポリカ
ーボネート樹脂は耐ドローダウン性に劣り、末端停止剤として、炭素数が4と少ないPO
BB、またはPOPBを用いた比較例4および5を含む比較例4〜8においては、ガラス
転移点が141℃以上と高く、熱成形性に劣る結果となった。
また、上述のように熱成形性および耐ドローダウン性に優れている本発明のポリカーボ
ネート樹脂により、耐ドローダウン性が良好な、シート、フィルムおよび成形体を提供す
ることができる。