(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716710
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】鉄塔基礎諸元予測方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/08 20060101AFI20200622BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
E02D1/08
E02D27/32 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-548736(P2018-548736)
(86)(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公表番号】特表2019-527780(P2019-527780A)
(43)【公表日】2019年10月3日
(86)【国際出願番号】KR2017006624
(87)【国際公開番号】WO2018225888
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0069557
(32)【優先日】2017年6月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518084121
【氏名又は名称】韓国電力公社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ELECTRIC POWER CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ヒ−ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム, キョン−ユル
(72)【発明者】
【氏名】キム, テ−ホン
(72)【発明者】
【氏名】ぺ, トゥ−サン
【審査官】
柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−133301(JP,A)
【文献】
特開平11−190778(JP,A)
【文献】
特開平11−120476(JP,A)
【文献】
特開2003−139765(JP,A)
【文献】
特開2009−030994(JP,A)
【文献】
特開2002−156460(JP,A)
【文献】
特開平01−265187(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0402062(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/08
E02D 27/32 Z
G01R 27/00
G01V 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔を支持するために埋設された
深礎基礎
を中心に反対方向に直線的に延伸した同じ長さの側線を構築する段階と、
前記側線による両測点にそれぞれ複数のセンサーを設置する段階と、
前記センサーによって電場を測定する段階と、
前記電場を測定する段階によって測定された電場から電流を算出し、前記電流と印加された電圧から電気抵抗(R1)を算出する段階と、
前記両測点のセンサー間距離(L)を変更して5回以上前記電場及び前記電気抵抗(R1)を算出する段階と、
前記5回以上のセンサー間距離(L)及び電気抵抗(R1)を用いて下記電気抵抗式から変数 σm、σdf、Kdf、tdf、ddfを演算して導出する段階とを含むことを特徴とする、鉄塔基礎諸元予測方法。
【数21】
(式中、R
lは電気抵抗、aは電場測定センサーの半径、σ
mは土の電気伝導度、σ
dfは深礎基礎の電気伝導度、Lは電場測定のための両センサー間の距離、K
dfは土の誘電率ε
mと深礎基礎の誘電率ε
dfとの比、t
df、d
dfは深礎基礎の形状変数である。)
【請求項2】
鉄塔を支持するために埋設された
L字型基礎
を中心に反対方向に直線的に延伸した同じ長さの側線を構築する段階と、
前記側線による両測点にそれぞれ複数のセンサーを設置する段階と、
前記センサーによって電場を測定する段階と、
前記電場を測定する段階によって測定された電場から電流を算出し、前記電流と印加された電圧から電気抵抗(RL)を算出する段階と、
前記両測点のセンサー間距離(L)を変更して7回以上前記電場及び前記電気抵抗(RL)を算出する段階と、
前記7回以上のセンサー間距離(L)及び電気抵抗(RL)を用いて下記電気抵抗式から変数σm、σld、Kld、tld、Tld、dld、cldを演算して導出する段階とを含むことを特報とする、鉄塔基礎諸元予測方法。
【数22】
(式中、RLは電気抵抗、aは電場測定センサーの半径、σ
mは土の電気伝導度、σ
ldはL字型基礎の電気伝導度、Lは電場測定のための両センサー間の距離、K
ldは土の誘電率ε
mとL字型基礎の誘電率ε
ldとの比、t
ld、T
ld、d
ld、c
ldはL字型基礎の形状変数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された鉄塔基礎の諸元を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔は、鉄骨または鉄柱を素材とした塔であって、主に送電線の支持物として使用されるが、その形態は、線路の送電電力、電圧、地形などに応じて異なり、水平断面正方形のものが多い。
【0003】
このような鉄塔が崩壊して倒れることを防止するために地下に設置される構造物として基礎(footing, foundation)が設置され、その上に鉄塔が設置される。鉄塔基礎も、地形などの条件によって逆T字型基礎、L字型基礎、深礎基礎などに分けられる。
【0004】
鉄塔は、安全性が重要視される構造物であって、時間経過に伴って風の影響により老朽化し、基礎の補強が必要とされる。そのため、定期的に安定性を検討し、必要に応じて補強を行う必要がある。韓国の場合、1988年6月以前に施工された鉄塔の中で、2015年までに補強完了した鉄塔基礎は4324基あり、それ以降に補強を必要とする鉄塔は4220基ある。
【0005】
ところが、鉄塔基礎を補強するためには基礎の諸元(形状や形状を規定するための寸法等のデータ)が取得されなければならないが、補強を必要とする鉄塔4220基のうち、諸元の取得されていない鉄塔が2306基に達する。
【0006】
鉄塔基礎の形状及び寸法等をはじめとした土の下部の諸元を探査することができる方法としては、電気比抵抗探査、弾性波探査、電磁探査などが存在する。
【0007】
しかしながら、電気比抵抗探査の場合は、鉄塔基礎の形状及び寸法を正確に判断することができず、探査のために広い敷地が必要である。また、電磁探査の場合は、鉄塔基礎が伝導性を持たないため探査が不可能であり、弾性波探査の場合は、信号が鉄塔によって干渉を受けるため正確な結果を得ることができない。すなわち、既存の方法では、鉄塔基礎の形状及び寸法を正確に判断することが難しい。
【0008】
以上の背景技術に記載された事項は、発明の背景に対する理解を助けるためのものであって、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術ではない事項を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的は、鉄塔基礎の諸元を正確に予測するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある観点による鉄塔基礎諸元予測方法は、鉄塔を支持するために埋設された基礎の周辺で地中の電場を測定する段階と、前記電場を測定する段階によって測定された電場から地中の電気抵抗に対する関係式を算出する段階と、前記測定された電場と前記電気抵抗に対する関係式によって前記基礎の諸元を導出する段階とを含んでなる。
【0011】
前記地中の電場を測定する段階は、前記基礎を中心に反対方向に直線的に延伸した同じ長さの側線を構築する段階と、前記側線による両測点にそれぞれ複数のセンサーを設置する段階と、前記センサーを介して電場を測定する段階とを含むこと特徴とする。
【0012】
また、前記基礎が深礎基礎である場合、前記センサーは各側点あたり5個であることを特徴とする。
【0013】
また、前記基礎がL字型基礎である場合、前記センサーは各側点あたり7個であることを特徴とする。
【0014】
一方、前記各測点を中心に設置される複数のセンサーは、互いに0.5m以上離隔するように設置されることを特徴とする。
【0015】
このような前記電気抵抗に対する関係式は、前記基礎が存在しないときの電流、前記基礎の面積に該当する電流、及び前記基礎の材質を考慮した電流の関係から導出されることを特徴とする。
【0016】
このため、前記電気抵抗に対する関係式は、土の電気伝導度、前記基礎の電気伝導度、及び前記土の誘電率と前記基礎の誘電率との比を変数として含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の観点による鉄塔基礎諸元予測方法は、鉄塔を支持するために埋設された基礎の周辺で電場を測定し、測定された電場から地中の電気抵抗に対する関係式を算出することにより、算出された前記電気抵抗に対する関係式によって前記基礎の諸元を導出するが、前記基礎が深礎基礎である場合、算出される前記電気抵抗に対する関係式は、下記式で表されることを特徴とする。
【0018】
【数19】
【0019】
式中、R
lは電気抵抗、aは電場測定センサーの半径、σ
mは土の電気伝導度、σ
dfは深礎基礎の電気伝導度、Lは電場測定のための両センサー間の距離、K
dfは土の誘電率ε
mと深礎基礎の誘電率ε
dfとの比、t
df、d
dfは深礎基礎の形状変数である。
【0020】
本発明の別の観点による鉄塔基礎諸元予測方法は、鉄塔を支持するために埋設された基礎の周辺で電場を測定し、測定された電場から地中の電気抵抗に対する関係式を算出することにより、算出された前記電気抵抗に対する関係式によって前記基礎の諸元を導出するが、前記基礎がL字型基礎である場合、算出される前記電気抵抗に対する関係式は、下記式で表されることを特徴とする。
【0021】
【数20】
【0022】
式中、R
Lは電気抵抗、aは電場測定センサーの半径、σ
mは土の電気伝導度、σ
ldはL字型基礎の電気伝導度、Lは電場測定のための両センサー間の距離、K
ldは土の誘電率ε
mとL字型基礎の誘電率ε
ldとの比、t
ld、T
ld、d
ld、c
ldはL字型基礎の形状変数である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の鉄塔基礎諸元予測方法によれば、鉄塔の周辺で電気抵抗値を測定し、大略的な鉄塔基礎の根入れ深さと形状を算定することができる。したがって、従来予測できなった深礎基礎及びL字型基礎に対する電場解析によって、鉄塔基礎の根入れ深さと形状の予測が可能であり、これに基づいて、鉄塔基礎の補強工事を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、深礎基礎の諸元を予測する方法を説明するための図である。
【
図2】
図2は、L字型基礎の諸元を予測する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明、本発明の動作上の利点、及び本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好適な実施形態を例示する添付図面、及び添付図面に記載された内容を参照しなければならない。
【0026】
本発明の好適な実施形態を説明するにあたり、本発明の要旨を不要に不明確にするおそれのある公知の技術または反復的な説明は、その説明を減らし或いは省略する。
【0027】
本発明に係る鉄塔基礎諸元予測方法は、まず、鉄塔基礎を中心に反対方向に直線的に延伸した(
図1及び
図2においては左右に平行して配置されている)同じ長さの側線を構築する。
【0028】
その後、両測点にそれぞれ複数のセンサーを設置する。センサーは、深礎基礎の場合には各側点あたり5個、L字型基礎の場合には各側点あたり7個程度設置して、複数のデータを計測する。各測点を中心に設置される複数のセンサーは、周辺の影響を考慮して0.5m以上ずつ離隔することが好ましい。
【0029】
設置されたセンサーによって電場を測定し、測定された電場から地中の電気抵抗を理論的には算出する。
【0030】
算出された電気抵抗式から逆解析を行って基礎の様々な諸元を導出する。
【0031】
図1及び
図2は測定された電場から電気抵抗式を算出する方法を説明するための図である。
図1は深礎基礎の諸元を予測するための方法であり、
図2はL字型基礎の諸元を予測するための方法である。
【0032】
まず、
図1を参照して深礎基礎の諸元算出を説明する。
【0033】
電流Iは、時間が経過する間に任意の断面積dsを通過する電荷量を意味し、下記数式1のとおりである(ガウスの法則)。
【0035】
式中、σは電気伝導度であり、Eは電場である。
【0036】
前記数式1を
図1の深礎基礎に適用すると、下記数式2のとおりである。
【0038】
式中、σ
mは土の電気伝導度、E
mは土から発生する電場、σ
dfは深礎基礎の電気伝導度、E
dfは深礎基礎から発生する電場、lは両センサーを連結した線から土内部の任意の点までの距離である。
【0039】
前記数式2において、第一項は、深礎基礎が存在しないときの電場解析式であり、第二項は、深礎基礎面積だけの電流量であり、第三項は、深礎基礎材質σ
dfを考慮した電流量である。
【0040】
土から発生する電場は、下記数式3のとおりであり、深礎基礎から発生する電場と土から発生する電場との関係は、下記数式4のとおりである。
【0043】
式中、ε
mは土の誘電率、Qは電荷量、rはセンサーから土内部の任意点までの距離、Lは両センサー間の距離、ベクトルrは方向の垂直ベクトル、K
df(=ε
df/ε
m)は土の誘電率ε
mと深礎基礎の誘電率ε
dfとの比である。
【0044】
前記数式3において2倍にした理由は、土内部の任意の点がソース(source)センサーとレシーバー(receiver)センサーからそれぞれ影響を受けるためである。
【0045】
前記数式2の第一項に前記数式3と前記数式4を適用すると、下記数式5のとおりである。
【0047】
電荷量Qは、既存の理論式によって下記数式6のとおりであり、下記数式6を前記数式5に代入して前記数式2を整理すると、下記数式7のとおりである。
【0050】
式中、aはセンサーの半径であり、Vは電圧である。
【0051】
前記数式7に前記数式4を代入して整理すると、下記数式8のとおりである。
【0053】
前記数式8の積分項に前記数式3及び前記数式6を代入すると、前記数式8は、下記数式9のように表現可能である。
【0055】
式中、t
df、d
dfは
図1の深礎基礎の形状変数である。
【0056】
よって、前記数式9を電気抵抗(R
l)式で表現すると、下記数式10及び数式11のとおりである。
【0059】
前記数式10の変数は、R
l、a、σ
m、σ
df、L、K
df、t
df、d
dfである。これらの中でaは既知の変数であるから、Lに応じてR
lを5回測定することで、得ようとする変数σ
m、σ
df、K
df、t
df、d
dfを逆解析によって取得可能である。
【0060】
次に、
図2を参照してL字型基礎の諸元算出を説明する。
【0061】
L字型基礎が地下の内部に存在するときに流れる電流は、前記数式2を修正した下記数式12のとおりである。
【0063】
式中、σ
ldはL字型基礎の電気伝導度、E
ldはL字型基礎から発生する電場である。
【0064】
前記数式12において、第一項は、L字型基礎が存在しないときの電場解析式であり、第二項は、L字型基礎面積だけの電流であり、第三項は、L字型基礎材質σ
ldを考慮した電流量である。
【0065】
土から発生する電場は、前記数式3のとおりであり、L字型基礎から発生する電場と土から発生する電場との関係は、下記数式13のとおりである。
【0067】
式中、K
ld(=ε
ld/ε
m)は、土の誘電率ε
mとL字型基礎の誘電率ε
ldとの比である。
【0068】
前記数式12の第一項に前記数式5を代入して整理すると、下記数式14のとおりである。
【0070】
前記数式14に前記数式13を代入して整理すると、下記数式15のとおりである。
【0072】
前記数式15の積分項は、下記数式16のとおり表現可能である。
【0074】
式中、t
ld、T
ld、d
ld、c
ldは
図2のL字型基礎の形状変数である。
【0075】
したがって、前記数式16を電気抵抗(R
L)式で表現すると、下記数式17及び数式18のとおりである。
【0078】
前記数式18の変数は、R
L、a、σ
m、σ
ld、L、K
ld、t
ld、T
ld、d
ld、c
ldである。これらの中でaは既知の変数であるから、Lに応じてR
Lを7回測定することで、得ようとする変数σ
m、σ
ld、L、K
ld、t
ld、T
ld、d
ld、c
ldを逆解析によって取得可能である。
【0079】
上述したような本発明は、例示された図面を参照して説明されたが、記載された実施形態に限定されるものではない。本発明の思想及び範囲から外れることなく、様々な修正及び変形を加え得ることは、当該技術分野における通常の知識を有する者に自明であろう。よって、それらの修正例または変形例も本発明の特許請求の範囲に属すると理解すべきであり、本発明の権利範囲は添付された特許請求の範囲に基づいて解釈すべきである。