【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例で添加量を単に%と表記した場合は、質量%を意味する。
【0020】
(測定方法)
(1)無機塩機能剤粒子の観察
ポリマー断面を走査電子顕微鏡(SEM)、倍率は適宜設定して観察して判断する。判断は次の基準で行った。
A:粒子が見られない状態、すなわち粒径100nm以上の粒子がない状態
B:粒子が見られる状態
(2)消臭性試験
アンモニア、酢酸について消臭試験を行った。試験方法:ペレット状の試料10gを5リットルのテドラーバッグに入れ、規定濃度のガス3リットルを注入し、経時毎にガス検知管で濃度(ppm)を測定した。
(3)抗菌性試験
ポリエチレンのみ、抗菌性試験をした。
・試験方法:JIS Z 2801:2010(フィルム密着法)
・試験菌株:大腸菌 Escherichia coli NBRC 3972
・試験菌株:黄色ぶどう球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
【0021】
<共通操作>
(1)無機塩機能剤を溶解した水溶液を準備した。
(2)樹脂の約半分から全量を1mm以下に粉砕した。残りはペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)のまま
図1に示す押し出し機の原料供給口2からポリマーと、水に溶解させた機能剤を供給した。
(3)樹脂溶融部2では回転軸に沿って供給物を前に送り、混練分散部4では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に溶解させた機能剤は均一混合され、次いで減圧ライン5を真空(負圧)にすることで同時に水分を取り除いた。
(4)次いで押し出し部6から樹脂組成物を押し出し、冷却して取り出し口7から取り出した。
(5)ペレタイザーに導き、ペレット化した。
(6)押し出し機内における加工温度は、ポリエチレン(PE)が150〜160℃、ポリプロピレン(PP)が170〜190℃である。
【0022】
(実施例1)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.74質量%、硫酸第二銅が0.42質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度25質量%の硫酸第二銅溶液を21g
(4)水を441.5g
(5)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。
図2にこの機能剤含有ポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。粒子などは観察されないことが分かる。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0023】
(実施例2)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が1.27質量%、硫酸第二銅が0.41質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度25質量%の硫酸第二銅溶液を21g
(4)濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を90g
(5)水を441.5g
(6)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0024】
(実施例3)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.74質量%、二酸化ケイ素(シリカ)が0.025質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度8.5質量%の二酸化ケイ素(シリカ)スラリーを21g:二酸化ケイ素(シリカ)は、粒子表面にシラノール基を有しており、弱酸性を示すため、アンモニアの吸着性に寄与すると考えられる。
(4)水を461.3g
(5)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0025】
(実施例4)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が1.27質量%、二酸化ケイ素(シリカ)が0.025質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度8.5質量%の二酸化ケイ素(シリカ)スラリーを21g
(4) さらに濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を90g
(5) 水を461.3g
(6)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0026】
(実施例5)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.89質量%となるようにした。ポリエチレン樹脂5000gに対し、濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。ただし、水などは追加していない。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0027】
(実施例6)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.090質量%となるようにした。ポリエチレン樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0028】
(比較例1)
ポリエチレン樹脂のみとした(比較)。他は共通操作のとおりである。
図3にこの機能剤なしのポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0029】
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.090質量%となるようにした。ポリプロピレン樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。
図4にこの機能剤含有ポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。細かい線が見えるが、これは切断時のカッターの切断線であり、粒子などは観察されないことが分かる。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0030】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂のみとした(比較)。他は共通操作のとおりである。
図5にこの機能剤なしのポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0031】
以上の実験で得られた結果を消臭試験:アンモニア濃度については表1に、消臭試験:酢酸濃度については表2に、抗菌性試験については表3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1〜2から明らかなとおり、本発明の各実施例はアンモニア及び酢酸の消臭効果が高いことが確認できた。亜鉛の量は変化させているが、少ないからといって効果が無いわけではなく、本実施例のように樹脂中に細かく分散していれば、機能剤の量が少なくても十分に効果が出ている。
【0035】
【表3】
【0036】
試験はポリエチレンのみであったが、結果として全て抗菌性を有していた。本試験においても、本実施例のように樹脂中に細かく機能剤が分散することで、機能剤の量が少なくても十分に効果が出ている。
【0037】
樹脂組成物の製造過程において硫酸亜鉛が酸化亜鉛に変化することが予想され、また、硫酸第二銅が酸化第二銅に変化することが予想される。
【0038】
(実施例8)
この実施例はポリオキシメチレン(POM)についての消臭効果を調べた。すなわち、POM樹脂を使用し、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.15質量%となるようにした。実際にはPOM樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を250g加えて製造した。加工温度は180℃とした。成形加工した後、24時間経過した時にホルマリン臭はしなかった、
これに対して、消臭剤(硫酸亜鉛)を加えていないブランクのPOM樹脂を使って成形加工した後、24時間経過してもホルマリン臭がした。
【0039】
(比較例3)
無機塩機能剤の固体粉末のものを使用した以外は実施例1と同様に実験した。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はBであり、粒子が観察された。