特許第6716810号(P6716810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6716810樹脂組成物とこれを成形加工した樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716810
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】樹脂組成物とこれを成形加工した樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20200622BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20200622BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08J3/20 ZCER
   C08J3/20CEZ
   C08K3/30
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-101240(P2015-101240)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-216573(P2016-216573A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月16日
【審判番号】不服2019-8836(P2019-8836/J1)
【審判請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598108401
【氏名又は名称】株式会社トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊文
(72)【発明者】
【氏名】児玉 令
(72)【発明者】
【氏名】築城 寿長
(72)【発明者】
【氏名】山本 和久
【合議体】
【審判長】 近野 光知
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−17160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融可能な樹脂に化合物を混合した樹脂組成物であって、
前記化合物は水に溶解可能であり、硫酸亜鉛及び硫酸第二銅から選ばれる少なくとも一つの無機塩であり、
前記無機塩は水に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合し、溶融樹脂から水分を水蒸気の状態で除去することにより、前記無機塩の粒子は、粒径100nm未満で前記樹脂に分散されて含有しており、断面写真(走査電子顕微鏡(SEM),倍率40倍)で無機塩の粒子が観察されないことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂は熱可塑性樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエステル及び熱可塑性エラストマ
ーから選ばれる少なくとも一つである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂から選ばれる少なくとも一つである請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物は前記組成物100質量%に対して0.01〜20質量%混合されている請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を成形加工した樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
樹脂溶融部と、減圧ラインを備えた混練分散部と、押し出し部を連続して接続し、
前記樹脂溶融部に、に溶解させた化合物と、加熱溶融させた樹脂とを供給し、
次に前記混練分散部に送り、混合と同時に前記減圧ラインからを気体の状態で除去し、
次いで、押し出し部から樹脂組成物を押し出すことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物とこれを成形加工した樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、樹脂と化合物とが特定の方法で混合されており、均一な混合状態である樹脂組成物とこれを成形加工した樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂に無機塩等を混合させた組成物は様々なものが提案されている。たとえば、特許文献1〜3には樹脂を溶融混練させて無機塩と混合して組成物とする方法が提案されている。特許文献4には芯鞘構造のポリエステル複合繊維において、芯成分に無機粒子を練り込むことが提案されている。特許文献5には、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性繊維に特定の粒径の酸化亜鉛粉末を練り込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−230325号公報
【特許文献2】特開2006−225550号公報
【特許文献3】特開平1−263130号公報
【特許文献4】特開2003−027337号公報
【特許文献5】特許第4228856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の溶融混練による方法では、無機塩消臭剤などの無機塩は樹脂中に粒子状で混合されており、十分な消臭効果を発揮することはできなかった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、化合物を分子状態で樹脂に混合させ、消臭などの効果の高い樹脂組成物とこれを成形加工した樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、加熱溶融可能な樹脂に化合物を混合した樹脂組成物であって、前記化合物は水に溶解可能であり、硫酸亜鉛及び硫酸第二銅から選ばれる少なくとも一つの無機塩であり、前記無機塩は水に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合し、溶融樹脂から水分を水蒸気の状態で除去することにより、前記無機塩の粒子は、粒径100nm未満で前記樹脂に分散されて含有しており、断面写真(走査電子顕微鏡(SEM),倍率40倍)で無機塩の粒子が観察されないことを特徴とする。
【0007】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記の樹脂組成物の製造方法であって、樹脂溶融部と、減圧ラインを備えた混練分散部と、押し出し部を連続して接続し、前記樹脂溶融部に、に溶解させた化合物と、加熱溶融させた樹脂とを供給し、次に前記混練分散部に送り、混合と同時に前記減圧ラインからを気体の状態で除去し、次いで、押し出し部から樹脂組成物を押し出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、化合物は溶媒に溶解可能であり、粒径が100nm未満で前記樹脂に分散されていることにより、前記化合物の含有量が少量であっても高い機能を発揮でき、また、前記化合物の含有量が少量であることにより、得られた樹脂組成物の成形加工性は高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施態様で使用する押し出し機の模式的説明図である。
図2図2は本発明の一実施例の化合物を混合して得たポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)である。
図3図3は比較例の化合物が含まれていないポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)である。
図4図4は本発明の一実施例の化合物を混合して得たポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)である。
図5図5は比較例の化合物が含まれていないポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、化合物(以下機能剤ともいう)として溶媒に溶解可能ものを用いる。溶媒としては水が好ましい。この化合物を溶媒に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合し、溶融樹脂から溶媒を気体の状態で除去することにより、前記化合物を前記樹脂に分子状態で分散させる。溶媒として水を使用する場合、化合物を水に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合し、溶融樹脂から水分を水蒸気の状態で除去することにより、前記化合物を前記樹脂に分子状態で分散させる。ここで「分子状態」とは、粒径100nm以上の粒子がない状態をいう。粒径100nm以上の粒子がない状態は、走査電子顕微鏡(SEM)で観察して粒子が見られないことで確認することができる。
【0011】
このような樹脂組成物は、押し出し機を使用し、減圧ラインを備えた混練チャンバーに、押し出し部を連続して接続し、前記混練チャンバー内に、溶媒に溶解させた化合物と、加熱溶融させた樹脂とを供給し、混合と同時に前記減圧ラインから溶媒を気体の状態で除去し、次いで、押し出し部から樹脂組成物を押し出すことにより得られる。
【0012】
使用する樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル及び熱可塑性エラストマー等がある。この中でもポリオキシメチレン(POM)は熱分解によりホルマリン臭(悪臭)が出るので、消臭は重要である。
【0013】
本発明で使用する化合物としては、樹脂には非相溶の(溶解しない)無機塩及び有機塩から選ばれる少なくとも一種の塩化合物であることが好ましい。前記無機塩または有機塩としては、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属リン酸塩、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属フッ化物、金属臭化物など、水溶性の塩であれば適宜使用することができる。例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、フマル酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛などの亜鉛塩、硫酸第二銅、硝酸第二銅、塩化第二銅、酢酸第二銅などの銅塩、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄、クエン酸第一鉄、リンゴ酸第一鉄、アスコルビン酸第一鉄、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)第一鉄、乳酸第一鉄などの鉄塩等がある。他に使用できる金属塩の金属としては、銀、コバルト、ニッケル、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、アルミニウム、マンガン、チタン、クロム、バナジウムなど、水溶性の金属塩であれば適宜使用することができる。前記無機塩または有機塩は、硫酸亜鉛及び硫酸第二銅から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。なお、前記化合物は樹脂組成物中では他の物質に変化していても良い。
【0014】
化合物としては、上述した無機塩または有機塩以外にも、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸や溶媒に溶解可能な鉱石などを用いることもできる。
【0015】
前記化合物は前記組成物100質量%に対して0.01〜20質量%混合されているのが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。前記の添加量であれば、消臭などの効果も高く、成形加工を行いやすい。
【0016】
化合物(機能剤)の機能としては、消臭機能、抗菌機能、静菌機能、防カビ機能、防ダニ機能、導電機能、帯電防止機能、親水機能、防汚機能、易染機能、難燃機能、防炎機能、蓄熱機能、発熱機能、遮蔽機能など、使用する機能剤によって様々な機能を発揮することができる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、成形加工した樹脂成形体とすることができる。樹脂成形体は前記の押し出し機を使用してそのまま押し出し成形しても良いし、一旦ペレット状にして、圧縮成形、真空成形、射出成形、トランスファ成形、押し出し成形、カレンダ成形等、あるいはこれらの成形法の組み合わせにより成形しても良い。樹脂成形体としては、繊維、フィラメント、シート、発泡体、ブロック体、その他適宜形状に成形すると良い。
【0018】
以下、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施態様で使用する押し出し機の模式的説明図である。この押し出し機1は、原料供給口2と、樹脂溶融部3と、混練分散部4と、減圧ライン5と、押し出し部6と、取り出し部7で構成されている。まず、樹脂溶融部3の原料供給口2からポリマーと水に溶解させた化合物を供給する。供給前に両者を混合しておいても良い。次に混練分散部4に送り、混練分散部4では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に溶解させた化合物は均一混合される。次いで減圧ライン5から水分が水蒸気の状態で除去される。次いで押し出し部6から樹脂組成物が押し出され、冷却して取り出し部7から取り出される。冷却後カットすればペレット状の樹脂組成物となる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例で添加量を単に%と表記した場合は、質量%を意味する。
【0020】
(測定方法)
(1)無機塩機能剤粒子の観察
ポリマー断面を走査電子顕微鏡(SEM)、倍率は適宜設定して観察して判断する。判断は次の基準で行った。
A:粒子が見られない状態、すなわち粒径100nm以上の粒子がない状態
B:粒子が見られる状態
(2)消臭性試験
アンモニア、酢酸について消臭試験を行った。試験方法:ペレット状の試料10gを5リットルのテドラーバッグに入れ、規定濃度のガス3リットルを注入し、経時毎にガス検知管で濃度(ppm)を測定した。
(3)抗菌性試験
ポリエチレンのみ、抗菌性試験をした。
・試験方法:JIS Z 2801:2010(フィルム密着法)
・試験菌株:大腸菌 Escherichia coli NBRC 3972
・試験菌株:黄色ぶどう球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
【0021】
<共通操作>
(1)無機塩機能剤を溶解した水溶液を準備した。
(2)樹脂の約半分から全量を1mm以下に粉砕した。残りはペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)のまま図1に示す押し出し機の原料供給口2からポリマーと、水に溶解させた機能剤を供給した。
(3)樹脂溶融部2では回転軸に沿って供給物を前に送り、混練分散部4では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に溶解させた機能剤は均一混合され、次いで減圧ライン5を真空(負圧)にすることで同時に水分を取り除いた。
(4)次いで押し出し部6から樹脂組成物を押し出し、冷却して取り出し口7から取り出した。
(5)ペレタイザーに導き、ペレット化した。
(6)押し出し機内における加工温度は、ポリエチレン(PE)が150〜160℃、ポリプロピレン(PP)が170〜190℃である。
【0022】
(実施例1)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.74質量%、硫酸第二銅が0.42質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度25質量%の硫酸第二銅溶液を21g
(4)水を441.5g
(5)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。図2にこの機能剤含有ポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。粒子などは観察されないことが分かる。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0023】
(実施例2)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が1.27質量%、硫酸第二銅が0.41質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度25質量%の硫酸第二銅溶液を21g
(4)濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を90g
(5)水を441.5g
(6)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0024】
(実施例3)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.74質量%、二酸化ケイ素(シリカ)が0.025質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度8.5質量%の二酸化ケイ素(シリカ)スラリーを21g:二酸化ケイ素(シリカ)は、粒子表面にシラノール基を有しており、弱酸性を示すため、アンモニアの吸着性に寄与すると考えられる。
(4)水を461.3g
(5)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0025】
(実施例4)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が1.27質量%、二酸化ケイ素(シリカ)が0.025質量%となるようにした。各添加剤と添加量は次のとおりである。
(1)濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を7.5g
(2)濃度25質量%の硫酸亜鉛溶液を30g
(3)濃度8.5質量%の二酸化ケイ素(シリカ)スラリーを21g
(4) さらに濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を90g
(5) 水を461.3g
(6)ポリエチレン樹脂を5000g
他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0026】
(実施例5)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.89質量%となるようにした。ポリエチレン樹脂5000gに対し、濃度30質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。ただし、水などは追加していない。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0027】
(実施例6)
ポリエチレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.090質量%となるようにした。ポリエチレン樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0028】
(比較例1)
ポリエチレン樹脂のみとした(比較)。他は共通操作のとおりである。図3にこの機能剤なしのポリエチレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0029】
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂を主体とし、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.090質量%となるようにした。ポリプロピレン樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を150g添加した。他は共通操作のとおりである。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はAであった。図4にこの機能剤含有ポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。細かい線が見えるが、これは切断時のカッターの切断線であり、粒子などは観察されないことが分かる。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0030】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂のみとした(比較)。他は共通操作のとおりである。図5にこの機能剤なしのポリプロピレンの断面写真(SEM,倍率40倍)を示す。消臭試験などの結果は表1以下にまとめて示す。
【0031】
以上の実験で得られた結果を消臭試験:アンモニア濃度については表1に、消臭試験:酢酸濃度については表2に、抗菌性試験については表3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1〜2から明らかなとおり、本発明の各実施例はアンモニア及び酢酸の消臭効果が高いことが確認できた。亜鉛の量は変化させているが、少ないからといって効果が無いわけではなく、本実施例のように樹脂中に細かく分散していれば、機能剤の量が少なくても十分に効果が出ている。
【0035】
【表3】
【0036】
試験はポリエチレンのみであったが、結果として全て抗菌性を有していた。本試験においても、本実施例のように樹脂中に細かく機能剤が分散することで、機能剤の量が少なくても十分に効果が出ている。
【0037】
樹脂組成物の製造過程において硫酸亜鉛が酸化亜鉛に変化することが予想され、また、硫酸第二銅が酸化第二銅に変化することが予想される。
【0038】
(実施例8)
この実施例はポリオキシメチレン(POM)についての消臭効果を調べた。すなわち、POM樹脂を使用し、材料全体の質量に対して、硫酸亜鉛が0.15質量%となるようにした。実際にはPOM樹脂5000gに対し、濃度3質量%の硫酸亜鉛溶液を250g加えて製造した。加工温度は180℃とした。成形加工した後、24時間経過した時にホルマリン臭はしなかった、
これに対して、消臭剤(硫酸亜鉛)を加えていないブランクのPOM樹脂を使って成形加工した後、24時間経過してもホルマリン臭がした。
【0039】
(比較例3)
無機塩機能剤の固体粉末のものを使用した以外は実施例1と同様に実験した。得られた組成物の無機塩機能剤粒子の観察結果はBであり、粒子が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の樹脂組成物は、加熱溶融可能な樹脂であれば適用できる。得られた樹脂組成物は、任意の成形法により成形物にできる。
【符号の説明】
【0041】
1 押し出し機
2 原料供給口
3 樹脂溶融部
4 混練分散部
5 減圧ライン
6 押し出し部
7 取り出し部
図1
図2
図3
図4
図5