(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記市場情報取得部は、前記市場情報として、前記家畜に対応する幼畜の取引量に関する情報を含む幼畜取引情報を取得する請求項1から3のいずれか一項に記載の食肉取引状況推定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では畜産農家(生産者)が、自己の飼養する家畜に対し予め設定された計画と実際の飼養履歴と対比させることで対象畜産の評価価値を把握することはできるが、実際に価格が決定される卸売市場での取引においては他の生産者から提供される畜産も存在するため、決定される食肉の取引価格はその時の需給のバランスによって変動する。サプライチェーン下流に位置する小売業者または加工業者などの需要者は、主に中流の卸売市場から食肉を調達するため、結果として卸売市場での取引価格や調達量の変動のリスクを受けることとなる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、食肉を調達する需要者に対して、未来の調達実施における安定性を向上させることのできる食肉取引状況推定システム、食肉取引状況推定サーバ、食肉取引状況推定方法、及び食肉取引状況推定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る食肉取引状況推定システムは、調達対象となる食肉の希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得部と、前記食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報、及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、前記家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定部と、前記家畜の卸売市場における前記家畜の食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得部と、前記将来出荷状況及び前記市場情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定部と、を備える。
【0008】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記家畜の飼養状況として畜産統計情報に基づく飼養頭数に関する情報が含まれてもよい。
【0009】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記飼養家畜情報は、個々の農場において飼養されている前記家畜に関する情報が含まれてもよい。
【0010】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記市場情報取得部は、前記市場情報として、前記家畜に対応する幼畜の取引量に関する情報を含む幼畜取引情報を取得してもよい。
【0011】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記食肉取引状況推定部は、前記市場情報から食肉価格の傾向を算出し、将来食肉取引状況として前記希望調達時期における将来食肉価格を推定してもよい。
【0012】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記食肉取引状況推定部は、前記食肉価格の傾向から、前記将来食肉価格に対する基本統計量を算出してもよい。
【0013】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記食肉取引状況推定部は、前記調達条件と前記将来食肉取引状況とを比較し、差異がある部分を差異情報として生成してもよい。
【0014】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記家畜情報には、前記過去家畜情報には前記家畜の食肉としての等級に関する情報が含まれており、前記出荷状況推定部は、前記等級ごとの将来出荷状況を推定し、前記市場情報取得部は、前記等級ごとの食肉取引情報を取得し、前記食肉取引状況推定部は、前記等級ごとの将来出荷状況及び前記等級ごとの食肉取引情報を用いて、前記希望調達時期における前記等級ごとの将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定してもよい。
【0015】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記市場情報取得部は、前記食肉取引情報を、複数の卸売市場ごとに取得し、前記食肉取引状況推定部は、前記将来出荷状況及び前記食肉取引情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を、複数の卸売市場ごとに推定してもよい。
【0016】
前記食肉取引状況推定システムにおいて、前記家畜は豚でもよい。
【0017】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る食肉取引状況推定サーバは、調達対象となる食肉の希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得部と、前記食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報、及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、前記家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定部と、前記家畜の卸売市場における前記家畜の食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得部と、前記将来出荷状況及び前記市場情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定部と、を備える。
【0018】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る食肉取引状況推定方法は、調達対象となる食肉の希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得ステップと、前記食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報、及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、前記家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定ステップと、前記家畜の卸売市場における前記家畜の食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得ステップと、前記将来出荷状況及び前記市場情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定ステップと、をコンピュータで実行する。
【0019】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る食肉取引状況推定プログラムは、調達対象となる食肉の希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得ステップと、前記食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報、及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、前記家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定ステップと、前記家畜の卸売市場における前記家畜の食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得ステップと、前記将来出荷状況及び前記市場情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定ステップと、をコンピュータにより実行させる。
【発明の効果】
【0020】
上記手段を用いる本発明によれば、食肉を調達する需要者に対して希望とする調達実施における安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る食肉取引状況推定サーバ101を含む食肉取引状況推定システム1を示すシステム構成図である。
図1で示すように、本実施形態に係る食肉取引状況推定システム1は、食肉取引状況推定サーバ101と、ユーザが使用する情報端末201が、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。説明の簡略化のため、
図1では1つのユーザを想定して情報端末201のみを示しているが、食肉取引状況推定サーバ101はネットワークNWを介して複数のユーザの情報端末と接続可能である。
【0024】
また、食肉取引状況推定サーバ101は、国や地方自治体、行政法人等の畜産に関する統計情報を取り扱っている畜産統計情報源I1、I2、I3、家畜を飼養している複数の農場F1、F2、F3及び家畜の取引を行っている複数の卸売市場Ma1、Ma2、Ma3、複数の幼畜市場(子豚市場)Mb1、Mb2、Mb3の情報端末とネットワークNWを介して通信可能に接続されおり、各畜産統計情報源I1、I2、I3からの畜産統計情報、各農場F1、F2、F3における後述する家畜(豚)に関する情報、各卸売市場Ma1、Ma2、Ma3及び各幼畜市場(子豚市場)Mb1、Mb2、Mb3における後述する卸売市場に関する情報及び幼畜市場(子豚市場)に関する情報を取得可能である。説明の簡略化のため、
図1では3つの畜産統計情報源、3つの農場、3つの卸売市場、3つの幼畜市場(子豚市場)のみを示しているが、食肉取引状況推定サーバ101はネットワークNWを介してさらに多くの畜産統計情報源、農場、卸売市場、幼畜市場(子豚市場)と接続可能である。なお、農場は、一つの畜産農家が複数所有していてもよい。また、卸売市場、幼畜市場(子豚市場)は、卸売業者や食肉センター、協同組合等、食肉取引を行う者や子豚取引を行う者であってもよい。
【0025】
食肉取引状況推定システム1は、主に卸売市場から食肉を調達する外食店、量販店、小売店等の小売業者をユーザとして、調達条件に対応した食肉取引状況を推定して提示するシステムである。食肉取引状況推定システム1の運営者は、当該システムを用いて食肉取引状況を推定した結果を小売業者に提供するサービスを実施する。食肉取引状況推定システム1において、食肉取引状況推定サーバ101は食肉取引状況推定システム1の運営者が管理を行い、小売業者が情報端末201を使用するものである。また、食肉取引状況推定サーバ101は、小売業者自身が管理を行っても構わない。
【0026】
本実施形態では、調達対象である食肉用の家畜を豚として説明する。豚は、主に繁殖用豚(繁殖用家畜)と、非繁殖用豚(非繁殖用家畜)に分けられる。繁殖用豚は、子豚を産むために飼養される、いわゆる母豚である。非繁殖用豚は、食肉として出荷するために肥育される、いわゆる肉豚である。母豚に対しては、個々に個体識別子(個体ID)が付与され個体管理される。肉豚は、複数の肉豚に対して群識別子(群ID)が付与され群管理される。また、子豚(幼畜)は将来主に肉豚として肥育される予定の子豚であり、肉豚として選別された後は自家繁殖させた肉豚と同様に群識別子(群ID)が付与され群管理される。
【0027】
食肉取引状況推定サーバ101は、プログラムに基づき処理を実行する1又は複数のサーバ(コンピュータ)からなり、各種演算部及び記憶部を有している。食肉取引状況推定サーバ101は、機能的には主に、調達条件取得部111、家畜情報データベース121、市場情報取得部131、市場情報データベース132、演算部141、及び表示部151を有している(以下、データベースはDBと称する)。
【0028】
調達条件取得部111は、ユーザが情報端末201の入力部211を介して入力した、食肉の等級ごとの希望調達時期、希望調達量、希望調達価格を含む調達条件を取得する機能を有する。希望調達量は枝肉頭数、枝肉重量、等で指定可能である。また、調達条件は幅を持たせて指定することも可能であり、例えば希望調達時期は所定の日だけでなく期間として指定可能であり、希望調達量は所定の枝肉頭数又は枝肉重量だけでなく所定範囲の枝肉頭数又は枝肉重量として指定可能であり、希望調達価格は所定の価格だけでなく所定範囲の価格として指定可能である。なお、調達条件として、等級、希望調達量、希望調達時期のうちの一部のみを指定することも可能である。また、この他にも調達条件に、肉豚の品種や、食肉の部位等を含めてもよい。
【0029】
家畜情報DB121には、家畜情報として、各畜産統計情報源I1、I2、I3からの畜産統計情報や農場F1、F2、F3の豚に関する情報に基づく、飼養豚情報、過去豚情報が記憶されている。詳しくは、
図2に家畜情報及び市場情報、調達条件の具体例が示されている。
【0030】
図2に示すように、家畜情報には、畜産統計情報に基づく全国、都道府県別における現在及び過去の飼養戸数、飼養頭数に関する情報が含まれる。なお、飼養頭数は肉豚飼養頭数と母豚飼養頭数を有している。これらの情報は全国や都道府県別の全体としての肉豚の生産量に関する情報、言い換えれば肉豚取引マーケットの規模に関する情報の基礎となる。畜産統計情報に基づく肉豚及び母豚の現在の飼養戸数、飼養頭数は飼養豚情報に含まれ、肉豚及び母豚の過去の飼養戸数、飼養頭数は過去豚情報に含まれる。
【0031】
また、家畜情報には、個々の農場F1、F2、F3の豚に関する情報に基づく飼養豚情報及び過去豚情報が含まれる。飼養豚情報は、各農場において現在飼養されている肉豚に関する肉豚情報、同じく現在飼養されている母豚に関する母豚情報が含まれる。肉豚情報は、群管理された情報であり、具体的には肉豚群の品種、群の数/識別子、各群の肉豚の頭数、各群が自家繁殖か子豚市場での購入かの調達方法(出自情報)、生まれてからの日数(日齢)、与えられている餌の種類や量や時期(給餌履歴)、投薬された薬の種類や量や時期(投薬履歴)、現在の群体重、移動履歴、等の肉豚の飼養状況に関する情報が含まれる。母豚情報は、個別管理された情報であり、具体的には母豚の品種、母豚の頭数、出産回数、妊娠有無、交配手段、交配日、出産予定日、1回の出産で生まれた子豚の数(出産頭数)及び離乳頭数、日齢、給餌履歴、投薬履歴、体重、等の母豚の飼養に関する情報がそれぞれ含まれる。
【0032】
過去豚情報は、各農場において過去飼養した肉豚に関する過去肉豚情報、過去飼養した母豚に関する過去母豚情報が含まれる。具体的には、過去肉豚情報は、群管理された情報であり、具体的には肉豚群の品種、出荷時の頭数(出荷頭数)、出荷時の日齢(出荷日齢)、出自情報、給餌履歴、投薬履歴、出荷時の群体重(出荷時群体重)、出荷した肉豚の肉質、出荷までに至らず死亡した死亡頭数、等に関する過去の出荷までに至る飼養状況に関する情報がそれぞれ含まれる。過去母豚情報は、個別管理された情報であり、具体的には母豚の品種、交配した雄豚品種、交配手段、流産回数、総出産回数、総出産頭数、各出産時の出産頭数(生存産子頭数)及び離乳頭数、給餌履歴、投薬履歴、等の過去の肉豚の出産に係る飼養状況に関する情報がそれぞれ含まれる。
【0033】
このような各情報を含む過去豚情報は、農場に限定されずに記憶されており、例えば各イベント(出荷、給餌、投薬、体重測定、死亡、出産等)に付随する日時に関する情報から、肉豚の品種ごとの出荷動向、母豚の品種ごとの出産動向、月単位や季節単位での出荷・出産動向等の統計処理が可能に記憶されている。つまり、これらの情報は畜産統計情報の裏付け情報や補足情報となり得る。
【0034】
市場情報取得部131は、ネットワークNWを介して接続されている各卸売市場Ma1、Ma2、Ma3や、各子豚市場Mb1、Mb2、Mb3、一般に公開されている情報元、等から豚の取引価格を含む市場情報を取得する機能を有している。特に、市場情報取得部131は、市場情報を地域の異なる複数の卸売市場Ma1、Ma2、Ma3ごとに取得する。当該市場情報取得部131は、市場情報DB132に接続されている。
【0035】
市場情報DB132には、市場情報取得部131で取得した市場情報が記憶されている。
図2に示すように、市場情報DB132に記憶されている市場情報には、各卸売市場における市場基礎情報、食肉取引情報と、各子豚市場における市場基礎情報、子豚取引情報(幼畜取引情報)が含まれる。
【0036】
具体的には、卸売市場の市場基礎情報は、卸売市場の名称、住所、規模、取扱品種、営業日、生畜の受付時間、経費等に関する情報が含まれる。食肉取引情報は、等級ごとに、現在及び過去の枝肉価格と枝肉供給量に関する情報が含まれる。なお、枝肉供給量は枝肉頭数でも、枝肉重量であってもよい。また、食肉取引情報には、枝肉に関する情報だけでなく、内臓や頭部等の特定部位における食肉に関する情報も含まれてもよい。
【0037】
また、子豚市場における市場基礎情報は、子豚市場の名称、住所、規模、取扱品種、営業日、子豚の受付時間、経費等に関する情報が含まれる。子豚取引情報は、体重別(例えば42.5kg以下のベビー豚、42.5kgを超えるレギュラー豚)に、現在及び過去の子豚取引価格と子豚取引量に関する情報が含まれる。なお、子豚取引量は子豚頭数でも、子豚重量であってもよい。
【0038】
演算部141は、家畜情報DB121に記憶されている家畜情報、及び市場情報DB132に記憶されている市場情報から、調達条件取得部111において取得した調達条件に対応した将来食肉取引状況を推定する機能を有している。詳しくは、演算部141は、主な機能として、出荷状況推定部142、食肉取引状況推定部143を有している。
【0039】
出荷状況推定部142は、家畜情報DB121の家畜情報における飼養豚情報及び過去豚情報を用いて、肉豚の将来出荷状況を推定する機能を有している。例えば出荷状況推定部142は、食肉の調達条件に対応する肉豚について、飼養豚情報の肉豚情報における対象となる畜産マーケット全体としての肉豚の飼養戸数、飼養頭数、及び個々の農場が管理する肉豚の品種、日齢、給餌履歴、投薬履歴、群体重、等に対し、過去肉豚情報における対象となる畜産マーケット全体としての肉豚の飼養戸数動向、飼養頭数動向、及び個々の農場における同品種の肉豚の出荷頭数、出荷日齢、出荷時群体重、肉質、給餌履歴、投薬履歴、死亡頭数、等の傾向をベンチマークとして、現在飼養されている肉豚の将来出荷時期、将来出荷頭数、将来等級、将来肉質を将来出荷状況として推定する。また、出荷状況推定部142は、飼養豚情報の母豚情報における対象となる畜産マーケット全体としての母豚の飼養戸数、飼養頭数、及び個々の農場が管理する母豚の品種、出産回数、出産日、出産頭数、給餌履歴、投薬履歴、体重、等に対し、過去母豚情報における対象となる畜産マーケット全体としての母豚の飼養戸数、飼養頭数、及び個々の農場が管理する母豚における同品種の母豚の、総出産回数、総出産頭数、出産毎の出産頭数、給餌履歴、投薬履歴、等の傾向をベンチマークとして、担保対象の母豚の今後における出産可能な肉豚数を推定し、当該肉豚の将来出荷時期、将来出荷頭数、将来肉質を将来出荷状況として推定する。
【0040】
食肉取引状況推定部143は、出荷状況推定部142にて推定した将来出荷状況と、市場情報DB132に記憶されている市場情報を用いて、調達条件の希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する機能を有している。具体的には、将来出荷状況に基づく各農場から卸売市場に供給される肉豚量、食肉取引情報の枝肉取引量の動向から希望調達時期における将来食肉供給量を推定する。さらに食肉取引状況推定部143は、市場情報に含まれる子豚取引量を用いて、卸売市場に供給される肉豚量の補正も可能である。
【0041】
また、食肉取引状況推定部143は、食肉取引情報から食肉価格の傾向を算出し、将来食肉取引状況として前記希望調達時期における将来食肉価格を推定可能である。この食肉価格の傾向は、例えば食肉取引情報の等級ごとの枝肉の取引量及び取引価格の動向から算出される価格弾力性として示され、将来食肉価格は当該価格弾力性に基づき推定される。なお、この将来食肉価格は割引利子率等を用いて現在価値に置き換えて算出してもよい。
【0042】
さらに、食肉取引状況推定部143は、食肉取引情報における食肉価格の傾向から、推定された将来食肉価格に対する基本統計量を算出可能である。ここでの基本統計量としては、例えば希望調達時期を基準とした一定期間における卸売業者等との取引における適用期間を設定する際の参考情報として、当該適用期間における将来食肉価格の平均値、標準偏差、四分位などを算出する。
【0043】
また、食肉取引状況推定部143は、調達条件と将来食肉取引状況とを比較し、差異がある部分を差異情報として生成可能である。具体的には、希望調達時期の希望調達量に対して将来食肉供給量が不足する場合や、希望取引価格に対して将来食肉価格が高い場合等は、調達条件に満たない旨の差異情報を生成する。
【0044】
また、食肉取引状況推定部143は、将来食肉取引状況(将来食肉供給量、将来食肉価格)、基本統計量、差異情報は、卸売市場ごとに推定可能である。
【0045】
表示部151は、演算部141において算出された希望調達時期における将来食肉状況(将来食肉供給量、将来食肉価格)、基本統計量、差異情報を運営者が確認可能に表示する機能を有している。当該表示部151に表示可能な情報は、ネットワークNWを介して情報端末201の出力部212にも表示可能である。
【0046】
情報端末201は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような装置である。情報端末201は、端末にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって食肉取引状況推定サーバ101にアクセスしてもよい。また、食肉取引状況推定サーバ101が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、プラットフォーム等)を利用して食肉取引状況推定サーバ101にアクセスしてもよい。
【0047】
入力部211は、例えば、キーボードや、マウス、タッチパッド等のユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。また、スマートフォンやタブレット、PCにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の出力部212と一体であるタッチパネルでもよい。入力部211は、音声入力装置であっても構わない。なお、入力部211は、ユーザによる直接的な入力に限らず、他のシステムを介した間接的な入力を受け付けてもよい。
【0048】
出力部212は、情報等をユーザに表示するディスプレイ装置等である。情報端末201と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。出力部212は食肉取引状況推定サーバ101からの食肉取引状況推定結果等の表示データを表示可能である。
【0049】
なお情報端末201は、食肉取引状況推定サーバ101とネットワークを介さず、一体として構成されていても構わない。
【0050】
<処理の流れ>
次に、
図3には食肉取引状況推定サーバ101の演算部141において実行される食肉取引状況推定ルーチンを示したフローチャートが示されている。以下、同フローチャートに基づき、本実施形態の食肉取引状況推定方法について説明する。
【0051】
まずステップS10として、演算部141はネットワークNWを介して情報端末201の入力部211により入力された食肉の調達条件を取得する(調達条件取得ステップ)。調達条件としては、例えば、等級、希望調達時期、希望調達量、希望調達価格が入力される。
【0052】
ステップS11として、演算部141は、出荷状況推定部142により調達条件に対応する肉豚の将来出荷状況を推定する(出荷状況推定ステップ)。具体的には、出荷状況推定部142は、家畜情報DB121から、調達条件に対応する肉豚の現在の飼養状況を飼養豚情報から特定するとともに、過去豚情報から調達条件に対応する肉豚の過去の出荷状況を特定する。そして、特定した過去の出荷状況の傾向をベンチマークとして、現在飼養されている肉豚の将来出荷時期、将来出荷頭数、将来等級、将来肉質を将来出荷状況として推定する。また、調達条件に対応する母豚に関しては、過去母豚情報をベンチマークとして、対応する母豚が将来出産することが予測される肉豚(頭数)の将来出荷状況を推定する。
【0053】
ステップS12として、演算部141は、食肉取引状況推定部143により上記ステップS11にて推定した将来出荷状況と、市場情報DB132に記憶されている食肉取引情報を取得して(市場情報取得ステップ)、調達条件の希望調達時期における等級ごとの将来食肉供給量及び将来食肉価格を含む将来食肉取引状況を推定する(食肉取引状況推定ステップ)。例えば、将来食肉供給量は食肉取引情報の枝肉取引量の動向から推定する。将来食肉価格は、食肉取引情報の枝肉取引量及び取引価格の動向から価格弾力性を算出して、当該価格弾力性に基づいて将来食肉価格を推定する。なお、この将来食肉取引状況は複数の卸売市場ごとに推定される。さらに、食肉取引状況推定部143は子豚取引情報の子豚取引量を用いて、上記ステップS11にて推定した肉豚(頭数)の将来出荷状況を補正する。具体的には例えば子豚市場Mb1での取引量が変動すると、それ以前での子豚市場Mb1と複数の卸売市場での出荷量の時系列的な関係(タイムラグと出荷の量的関係)を基に、卸売市場に出荷される肉豚の出荷頭数を推定する。
【0054】
ステップS13として、食肉取引状況推定部143は、食肉取引情報における食肉価格の傾向から、推定された将来食肉価格に対する基本統計量を算出する。具体的には希望調達時期を基準とした適用期間における将来食肉価格の平均値、標準偏差、四分位を算出する。
【0055】
ステップS14として、食肉取引状況推定部143は、調達条件と将来食肉取引状況とを比較し、差異がある部分を差異情報として生成する。
【0056】
ステップS15として、演算部141は、表示部151又は情報端末201の出力部212に、ステップS12で推定した将来食肉取引状況、ステップS13で算出した将来食肉価格に対する基本統計量、ステップS14で生成した差異情報を表示して、当該ルーチンを終了する。なお、これら将来食肉取引状況、基本統計量、差異情報は、卸売市場ごとに表示する。
【0057】
このように食肉取引状況推定サーバ101にて推定した将来食肉取引状況、基本統計量、差異情報から、小売業者は事前に希望する食肉を調達することができるか否か、またその調達コストを把握することができる。仮に希望通り食肉を調達できないとして、小売業者はそれに応じて、海外調達、事前購入、小売業者側での生産計画の変更等の他の手段を検討することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る食肉取引状況推定サーバ101を含む食肉取引状況推定システム1では、卸売市場への肉豚の将来出荷状況を推定し、卸売市場Ma1、Ma2、Ma3における食肉の取引動向も考慮して、小売業者の希望調達時期における将来食肉供給量を推定している。これにより、小売業者は希望通り食肉を調達できるか否かを把握することができ、未来の調達実施における安定性を向上させることができる。
【0059】
また、飼養家畜情報には、家畜の飼養状況として畜産統計情報に基づく肉豚の飼養頭数に関する情報が含まれていることで、畜産マーケット全体の規模を把握して、家畜の将来出荷状況を推定することができる。
【0060】
また、飼養家畜情報に、個々の農場において飼養されている肉豚に関する情報が含まれていることで、より詳細な肉豚の飼養状況を把握でき、家畜の将来出荷状況の推定精度を向上させることができる。
【0061】
さらに、市場情報として、子豚取引量を含む子豚取引情報を取得することで、子豚市場Mb1、Mb2、Mb3における子豚の取引状況まで含めた、より精度の高い将来食肉状況を推定することができる。
【0062】
また、食肉取引情報から食肉価格の傾向(価格弾力性)を算出し、将来食肉取引状況として希望調達時期における将来食肉価格を推定することで、小売業者は調達コストを把握することができ、未来の調達実施における安定性を向上させる。
【0063】
さらに、食肉価格の傾向から、将来食肉価格に対する基本統計量も小売業者に提供することで、卸売業者等との取引における適用期間を決定する際に、市場変動要素を織り込んだ適用期間の設定交渉が可能となる。
【0064】
また、調達条件と将来食肉取引状況とを比較し、差異がある部分を差異情報として生成することで、小売業者は希望とする調達条件が満たされない要素を容易に把握することができる。
【0065】
また、食肉の等級ごとに将来食肉取引状況を推定することで、小売業者はより細かく食肉の調達を把握することができる。
【0066】
また、市場情報においては、複数の卸売市場ごとに取得していることから、取引価格の地域差等も考慮して、最も適した卸売市場における将来食肉調達状況を選択することができる。
【0067】
このように本実施形態に係る食肉取引状況推定システム1、食肉取引状況推定サーバ101、食肉取引状況推定方法、及び食肉取引状況推定プログラムによれば、食肉を調達する需要者に対して、未来の調達実施における安定性を向上させることができる。
【0068】
<プログラム>
図4は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805を備える。
【0069】
ここで、実施形態に係る食肉取引状況推定サーバ101を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0070】
食肉取引状況推定サーバ101は、コンピュータ801に実装される。そして、食肉取引状況推定サーバ101の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶されている。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読み出して主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0071】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、調達対象となる食肉の希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得ステップと、前記食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報、及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、前記家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定ステップと、前記家畜の卸売市場における前記家畜の食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得ステップと、前記将来出荷状況及び前記食肉取引情報を用いて、前記希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定ステップと、をコンピュータにより実行させるプログラムである。
【0072】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0073】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)
であってもよい。
【0074】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。また、実施形態の説明では家畜として豚を例として説明したが、牛や鳥、羊のように他の家畜に食肉取引状況推定システムを適用しても構わない。
【課題】食肉を調達する需要者に対して、未来の調達実施における安定性を向上させることのできる食肉取引状況推定システム、食肉取引状況推定サーバ、食肉取引状況推定方法及び食肉取引状況推定プログラムを提供する。
【解決手段】食肉取引状況推定システム1は、希望調達時期を含む調達条件を取得する調達条件取得部111と、この食肉に対応する家畜の飼養状況に関する情報を含む飼養家畜情報及び過去に飼養した前記家畜の飼養状況に関する情報を含む過去家畜情報を用いて、家畜の将来出荷状況を推定する出荷状況推定部142と、卸売市場における食肉供給量に関する情報を含む食肉取引情報、を含む市場情報を取得する市場情報取得部131と、将来出荷状況及び食肉取引情報を用いて、希望調達時期における将来食肉供給量を含む将来食肉取引状況を推定する食肉取引状況推定部143と、を備える。