特許第6716830号(P6716830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716830
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】遠隔コア穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/00 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   E21B25/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-14630(P2016-14630)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-133251(P2017-133251A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】河野 允告
(72)【発明者】
【氏名】安立 陽
(72)【発明者】
【氏名】内田 健
(72)【発明者】
【氏名】米田 完
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐介
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−054145(JP,A)
【文献】 特開昭62−296092(JP,A)
【文献】 特開2003−064974(JP,A)
【文献】 米国特許第05660504(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台機構としての機能を持ち作業場所へ移動する台車と、
前記台車に載置されたコアマシンと、
前記コアマシンに近接して台車上に載置されたアンカーユニットと、
前記台車、コアマシン及びアンカーユニットと電気的に接続され、これらの機能部材を駆動制御するコントロール部材と、を備え、
前記アンカーユニットは、
アンカーを作業場所の床面に打設するアンカー打設部材と、
このアンカー打設部材に対して同軸で且つ背反位置関係に配置されたドリル部材と、
前記ドリル部材に取り付けられた下穴削孔部材とで構成されており、
前記コントロール部材により遠隔から、台車を作業場所へ移動させ、その作業場所においてアンカーユニットとコアマシンを動作させる、
ことを特徴とする遠隔コア穿孔装置。
【請求項2】
台車は支持台となる台床を有し、
台床にはマシン支柱とアンカー支柱とが取り付けられ、
前記コアマシンはマシン支柱に昇降可能に連結されており、
前記アンカーユニットはアンカー支柱に昇降可能に連結されており、
マシン支柱及びアンカー支柱は互いに独立してそれぞれの下端部において台床の上に直立状態で固定取り付けされていることを特徴とする請求項1に記載のコア穿孔装置。
【請求項3】
台車は支持台となる台床を有し、
前記台床にはマシン支柱とアンカー支柱とが取り付けられ、
前記コアマシンはマシン支柱に昇降可能に連結されており、
前記アンカーユニットはアンカー支柱に昇降可能に連結されており、
前記マシン支柱及びアンカー支柱は上端が互いに連結されて支持フレームを構成し、
前記支持フレームは台床に固定取り付けされていることを特徴とする請求項1に記載のコア穿孔装置。
【請求項4】
前記アンカーユニットは、ユニット回転機構を備えた支持ブロックによりアンカー支柱に連結されており、このユニット回転機構により垂直面内で回転され、互いに背反位置関係にある前記アンカー打設部材とドリル部材とが回転中心に対して上下位置に交互に入れ替わり可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載のコア穿孔装置。
【請求項5】
前記台床は床面が水平面に対して直角になるよう、駆動機構により台車の前後方向に回転可能に連結されており、
この台床に固定取り付けされている前記マシン支柱及びアンカー支柱は、台床が水平に保持されているときはマシン支柱及びアンカー支柱が起立した状態に保持される一方、台床が水平面に対して直角になるよう回転せしめられたときはマシン支柱及びアンカー支柱が横臥した状態に保持されることを特徴とする請求項2又は3に記載のコア穿孔装置。
【請求項6】
前記台車にはキャタピラー型、或いは多軸車型の移動部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコア穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔コア穿孔装置、特に遠隔から指示操作することによりコアの穿孔を行うことができる遠隔コア穿孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建物の床面や壁面等に、コアを穿孔するためにコア穿孔装置が広く知られている。このコア穿孔装置は通常、コアを穿孔するコアマシンをマシン固定用のアンカー等により建物の床面等に取付固定し、コアマシンを安定させた状態でコア穿孔作業を行う。このようなコア穿孔装置の従来例としては例えば特許文献1に示されたものがある。
【0003】
この特許文献1におけるコア穿孔装置は、実質的に、装置本体を成す台座リンク機構と、この台座リンク機構に立てた支柱部材であるカラムとこのカラムで高さ調整可能な案内ヘッドとこの案内ヘッド内でコア穿孔回転が可能に保持されてカラムに平行に延びた管形のコア穿孔機とを有する。コア穿孔機は台座リンク機構の下端を基礎部である建物の床面等にボルト等の固定具により固定されて安定性を確保しコア穿孔作業を行う。上記特許文献1におけるコア穿孔装置では、同文献の図1において、台座リンク機構(41)の下端と建物の床面に相当するコンクリート壁(15)との間にボルト、ナットが介装され、コア穿孔装置10を基礎部分であるコンクリート壁15に固定している。そして、上記ボルト、ナットの取り付け部分にアンカーが打設されている。
【0004】
このようなコア穿孔装置によりコア穿孔作業を行うには、
(1)コア穿孔位置まで作業員がコアマシンを運ぶか、またはコアマシンを分解したユニットをコア穿孔位置で組み立てる。
(2)ハンマードリルでアンカー用の削孔を形成する。
(3)削孔内にアンカーを打設してコアマシンを固定する。
(4)コアマシンによりコア穿孔作業を行う。
(5)コア穿孔作業が終わったらコアマシンを外して次のコア穿孔位置まで作業員がコアマシンを運ぶ。
という手順でコア穿孔作業が実行されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−291369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなコア穿孔作業では、作業員がコアマシン等の機械を直接設置し、操作しないと作業をすることができないので、人が立ち入れないような場所では作業ができなかった。
【0007】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業員が作業場所にいなくても一人の作業員によって、遠隔からコアマシンの作業場所への移動が行え、且つこのコアマシンを作業場所に固定でき、さらにコア穿孔操作が行える遠隔コア穿孔装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、遠隔コア穿孔装置であって、土台としての機能を持ち作業場所へ移動する台車と、台車に載置されたコアマシンと、コアマシンに近接して台車上に載置されたアンカーユニットと、前記台車、コアマシン及びアンカーユニットと電気的に接続され、これらの機能部材を駆動制御するコントロール部材とを備え、前記アンカーユニットは、アンカーを作業場所の床面に打設するアンカー打設部材と、このアンカー打設部材に対して同軸で且つ背反位置関係に配置されたドリル部材と、前記ドリル部材に取り付けられた下穴削孔部材とで構成されており、前記コントロール部材により遠隔から、台車を作業場所へ移動させ、その作業場所においてアンカーユニットとコアマシンを動作させることを特徴とする。この構成により作業者はコア穿孔装置から離れた位置にいて、コア穿孔装置をコントローラ操作することにより、一連のコア穿孔作業を実行することができる。
【0010】
このコア穿孔装置の一態様として、台車は支持台となる台床を有し、台床にはマシン支柱とアンカー支柱とが取り付けられ、前記コアマシンはマシン支柱に昇降可能に連結されており、前記アンカーユニットはアンカー支柱に昇降可能に連結されており、マシン支柱及びアンカー支柱は互いに独立してそれぞれの下端部において台床の上に直立状態で固定取り付けされていることを特徴とする。台床にはマシン支柱とアンカー支柱とが取り付けることにより、コアマシンとアンカーユニットの昇降運動を円滑に行わせることができる。
【0011】
コア穿孔装置の別の態様として、台車は支持台となる台床を有し、前記台床にはマシン支柱とアンカー支柱とが取り付けられ、前記コアマシンはマシン支柱に昇降可能に連結されており、前記アンカーユニットはアンカー支柱に昇降可能に連結されており、前記マシン支柱及びアンカー支柱は上端が互いに連結されて支持フレームを構成し、前記支持フレームは台床に固定取り付けされていることを特徴とする。マシン支柱とアンカー支柱で支持フレームを構成することにより、コアマシンとアンカーユニットの支持機構をより一層強固な構造にすることができる。
【0012】
コア穿孔装置の別の態様として、アンカーユニットは、ユニット回転機構を備えた支持ブロックによりアンカー支柱に連結されており、このユニット回転機構により垂直面内で回転され、互いに背反位置関係にある前記アンカー打設部材とドリル部材とが回転中心に対して上下位置に交互に入れ替わり可能であることを特徴とする。これにより1台のアンカーユニットで、下穴削孔動作とコア穿孔動作の異なった動作を実行することができる。
【0013】
コア穿孔装置の別の態様として、台床は床面が水平面に対して直角になるよう、駆動機構により台車の前後方向に回転可能に連結されており、この台床に固定取り付けされている前記マシン支柱及びアンカー支柱は、台床が水平に保持されているときはマシン支柱及びアンカー支柱が起立した状態に保持される一方、台床が水平面に対して直角になるよう回転せしめられたときはマシン支柱及びアンカー支柱が横臥した状態に保持されることを特徴とする。マシン支柱及びアンカー支柱が横臥した状態に保持されることにより、コア穿孔装置全体を低い高さに維持でき、障害物に当たらずに作業場所へ移動することができる。
【0014】
コア穿孔装置のさらに別の態様として、台車にはキャタピラー機構の移動部材が取り付けられていることを特徴とする。キャタピラー機構は作業場所に複数の瓦礫が存在する場合に、これらの瓦礫を乗り越えて前進後退するのに有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコア穿孔装置によれば、作業者はコア穿孔装置から離れた位置にいて、コア穿孔装置をコントローラ操作することにより、一連のコア穿孔作業を実行することができるため、危険で悪環境の作業場所であっても、コア穿孔作業が行える。また、アンカーユニット1つによって、下穴削孔動作とコア穿孔動作の異なった動作を実行することができるため、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態として示す遠隔コア穿孔装置の全体構造を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置のコア穿孔作業時の状態を示す側面図である。
図3】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置の非作業時(或いは格納時)の状態を示す側面図である。
図4】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置に組み込まれているアンカー打設ユニットの正面図である。
図5】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置に組み込まれているアンカー打設ユニットの側面図である。
図6】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置に組み込まれているアンカー打設ユニットの斜視図である。
図7】本実施の形態に於ける遠隔コア穿孔装置の動作のうち、作業員によるコントローラの操作によりコア穿孔装置がコア穿孔場所へ移動する状況を示す側面図である。
図8】コア穿孔装置が作業場所に到達して支持フレームを起立させる動作を示す側面図である。
図9】支持フレームの起立態勢でアンカー用下穴削孔を行う場合の削孔作業前におけるアンカーユニットの部分のみを示す斜視図である。
図10】支持フレームの起立態勢でアンカー用下穴削孔を行う場合の下穴の削孔が行われている状態のアンカーユニットの部分のみを示す斜視図である。
図11】下穴の削孔作業中におけるコアマシン及びアンカーユニットの部分を示す斜視図である。
図12】下穴の削孔作業が終了し、ダイヤモンドコアビット13がアンカー用の下穴から引き抜かれた状態のアンカーユニット部分を示す斜視図である。
図13】アンカー用の下穴からダイヤモンドコアビットが引き抜かれた後の反転動作を示すアンカーユニットの部分のみの斜視図である。
図14】アンカー用の下穴からダイヤモンドコアビットが引き抜かれた後の反転動作を示すコア穿孔装置全体の斜視図である。
図15】アンカーユニットによるアンカー挿入動作を示す斜視図である。
図16】アンカー挿入後におけるアンカー締め付け動作を示すアンカーユニット4の部分のみの斜視図である。
図17】アンカー挿入後におけるアンカー締め付け動作を示すコア穿孔装置全体の斜視図である。
図18】コア穿孔作業中におけるコアマシン及びアンカーユニットの部分を示す斜視図である。
図19】コア穿孔作業が終了し、コアビットがコア穴から引き抜かれた状態のコアマシン及びアンカーユニットの部分を示す斜視図である。
図20】コアビットの引き抜き動作の後、アンカーを外す動作を示すアンカーユニットの部分のみの斜視図である。
図21】コアビットの引き抜き動作の後、アンカーを外す動作を示すコアマシン及びアンカーユニットの部分の斜視図である。
図22】支持フレームの横臥動作を示す側面図である。
図23】コア穿孔装置が退避場所へ移動する状況を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1から図23を用いて本発明の実施の形態および動作を順次詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る遠隔コア穿孔装置(以下、単に「コア穿孔装置」という)の全体構造を示す斜視図である。図2は、本実施の形態の遠隔コア穿孔装置のコア穿孔作業時の状態を示す側面図である。図3は、本実施の形態の遠隔コア穿孔装置の非作業時(或いは格納時)の状態を示す側面図である。図4は、本実施の形態の遠隔コア穿孔装置に組み込まれているアンカー打設ユニットの正面図である。図5は、同じくアンカー打設ユニットの側面図である。図6は、同じくアンカー打設ユニットの斜視図である。図7図23は本実施の形態の遠隔コア穿孔装置によるコア穿孔作業の手順を時系列に示す作業手順図である。
【0018】
図1において、符号1は本実施の形態に係る遠隔コア穿孔装置である。このコア穿孔装置1は、装置自身の土台機構を構成し且つ装置自身を移動させる台車2と、台車2に載置されたコアマシン3と、コアマシン3に近接して台車2上に載置されたアンカーユニット4とを備えて成る。
【0019】
台車2は、台床5と、台床5の左右両方に設けられた移動部材6を有する。この実施の形態において、台車2の移動部材6はモータなどにより電気的に駆動され、一例としてキャタピラー機構が採用されている。このキャタピラー機構は作業場所に複数の瓦礫が存在する場合に、これらの瓦礫を乗り越えて前進後退するのに有効である。また、台車2の移動部材6としては、キャタピラー機構以外に、自動車タイプの移動部材、鉄道軌道タイプの移動部材、多軸車タイプの移動部材、クローラタイプの移動部材、複数足による歩行タイプの移動部材などが考えられる。なお、コア穿孔装置1の土台機構としては、図には示してないが、上記台車2を使用する代わりに移動部材6を持たない静止型の基台構造体(台床を主体とする)を用いてもよい。この基台構造体を土台機構として用いる場合は、コア穿孔装置1を搬送するには他の運搬装置、例えば上記台車2と同様の搬送装置、或いはクレーンのような吊り下げ搬送装置等により作業場所へ移動されることができる。以下の説明では、土台機構として台車2を使用する態様を説明する。
【0020】
コアマシン3は、コアビット7と、これを回転駆動するコアビット駆動モータ8とで構成され、上下方向への送りモータを内蔵又は外付けするマシンブロック9によりマシン支柱10に昇降可能に連結されている。コアビット7としては、ダイヤモンドコアビットを使用することができる。
【0021】
アンカーユニット4は、アンカー4aを保持しこのアンカー4aを構造物の面に打設するためのアンカー打設部材としてのインパクトドライバ11と、このインパクトドライバ11に対して同軸で背反位置関係に配置されたドリル部材であるアンカードリル12と、アンカードリル12に取り付けられたダイヤモンドコアビット13とで構成されており、アンカー支柱14に取り付けられている。アンカーユニット4の詳細構造は図4図6に示されている。アンカーユニット4のアンカー支柱14への取り付けは、先ずアンカー支柱14にボールネジ15を支持フランジ16,17により取り付け、ボールネジ15にガイド部材18をネジ作動連結させ、このガイド部材18にアンカーユニット4を支持ブロック19により連結させることにより行われている。ボールネジ15とガイド部材18との関係はボールネジ15が雄ネジ、ガイド部材18が雌ネジの関係になっている。アンカー支柱14のボールネジ15に対向する面にはアンカー支柱14に沿って延びる軌道部材21が取り付けられており、この軌道部材21にはガイド部材18が相対運動可能に連結されている。ボールネジ15の頂部にはボールネジ15を回転動作させる回転駆動モータ20が取り付けられている。ボールネジ15とガイド部材18との関係が雄ネジ、雌ネジの関係になっており、軌道部材21にガイド部材18が相対運動可能に連結されていることにより、回転駆動モータ20を回転作動させるとガイド部材18及びこれに連結されたアンカーユニット4はアンカー支柱14に沿って往復運動する。支持ブロック19はユニット回転機構22を備えており(図1図2を参照)、このユニット回転機構22はアンカーユニット4を垂直面内で回転させることができる。これによりアンカーユニット4は、ユニット回転機構22の回転動作により垂直面内で回転され、インパクトドライバー11とアンカードリル12とがユニット回転機構22の回転中心に対して上下位置に交互に入れ替わり可能である。
【0022】
マシン支柱10及びアンカー支柱14は起立した状態のとき、台車2上においてマシン支柱10が前、アンカー支柱14が後ろとなるような前後関係に、略平行になるように配置されている。ここで、台車2について「前後」とは、図2中で矢印S1で示す方向を前、その逆方向が後ろである。一例として、マシン支柱10及びアンカー支柱14は互いに独立してそれぞれの下端部において台床5の上に直立状態で固定取り付けされている。また、台床5は台車2に支持される一方、台床5自体は床面が水平状態から、水平面に対して直角になるよう台車2の前後方向に回転可能に支持されている。台床5の回転動作は当該台床5に連結された駆動機構(図示してない)によって行われる。したがってマシン支柱10及びアンカー支柱14は、台床5が水平に保持されているときは両支柱10、14が起立した状態に保たれる(図1図2その他の図)一方、台床5が水平面に対して直角になるよう回転させられたときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が横臥した状態に保たれる(図3図7等)ことになる。通常では、コア穿孔装置1が使用されないで格納状態にあるときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が横臥した状態に保たれ、コア穿孔装置1がコア穿孔作業に使用されるときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が起立した状態に保たれる。
【0023】
上述とは別の例として、マシン支柱10及びアンカー支柱14は、それぞれの上端部及び下端部において水平梁材26,27によって連結されている。よって、マシン支柱10、アンカー支柱14、及び水平梁材26,27は一体となった矩形状の支持フレーム28を構成している。この支持フレーム28は、その下端部において台床5の上に固定取り付けされている。また、台床5は移動部材6に支持される一方、台床5自体は床面が水平状態から、水平面に対して直角になるよう台車2の前後方向に回転可能に支持されている。台床5の回転動作は当該台床5に連結された駆動機構(図示してない)によって行われる。したがって支持フレーム28は、台床5が水平に保持されているときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が起立した状態に保たれる(図1図2その他の図)一方、台床5が水平面に対して直角になるよう回転させられたときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が横臥した状態に保たれる(図3図7等)ことになる。通常では、コア穿孔装置1が使用されないで格納状態にあるときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が横臥した状態に保たれ、コア穿孔装置1がコア穿孔作業に使用されるときはマシン支柱10及びアンカー支柱14が起立した状態に保たれる。
【0024】
コア穿孔装置1に用いられる各種駆動機構やモータ(8,11,20等)は電気的に駆動制御されるものであり、これらの電気的駆動部材にはケーブル30により電力及び制御信号が供給される。また、ケーブル30にはコア穿孔装置1の各種動作を操縦するためのコントローラ31が接続されている。なお、コア穿孔装置1にはバッテリを搭載して各種駆動機構やモータに電力を供給し、コントローラ31と各種駆動機構やモータ(8,11,20等)の間は無線により制御信号の送受を行ってもよい。こうすれば、より一層遠隔の場所へのコア穿孔装置1の移動が可能となる。
【0025】
以上の構成を有するコア穿孔装置1について、以下、図7図23の作業手順図にしたがって動作を説明する。図7は作業員32によるコントローラ31の操作によりコア穿孔装置1がコア穿孔場所へ移動する状況を示す側面図である。この場合支持フレーム28(すなわち、マシン支柱10及びアンカー支柱)は台床5の回転により、横臥状態にされている。これによりコア穿孔装置全体を低い高さに維持でき、障害物に当たらずに作業場所へ移動することができる。図8はコア穿孔装置1が台車2の動作により移動し、作業場所に到達して支持フレーム28を起立させる動作を示す側面図である。コア穿孔装置1が作業場所に到達すると、支持フレーム28の起立操作が行われ(図2図8中の矢印S2の方向)、コアマシン3とアンカーユニット4が起立状態になる。この動作では、台床5に連結された駆動機構により台床5が垂直状態から水平状態へ回転動作され、支持フレーム28が起立する(支柱10,14も同様)ことによりコアマシン3とアンカーユニット4が起立状態になる。なお、支持フレーム28の横臥、起立は作業状況に応じてなされるもので、何も障害物がない場所では支持フレーム28を起立させたままでコア穿孔装置1を移動させてもよい。また、上記コア穿孔装置1により建物の壁面にアンカー操作等を行うときは、支持フレーム28を横臥させたままの状態でアンカー操作、コア穿孔操作を行ってもよい。
【0026】
そして、アンカーユニット4においては、第1段階の作業を行うためにダイヤモンドコアビット13が下向き、アンカー4aが上向きになるよう態勢が決められる。図9及び図10はこの態勢でアンカー用下穴削孔を行う場合のアンカーユニット4の部分のみを示す斜視図であり、図9は上記下穴の削孔作業前の状態を示し、図10はアンカードリル12によりダイヤモンドコアビット13を回転させながら降下し(図10中下向き矢印)、上記下穴の削孔が行われている状態を示す。ダイヤモンドコアビット13の降下動作は、回転駆動モータ20によりボールネジ15を回転させガイド部材18を降下させることにより行う。図11は上記下穴の削孔作業中におけるコアマシン3及びアンカーユニット4の部分を示す斜視図である。図12は下穴の削孔作業が終了し、回転駆動モータ20によりボールネジ15を先とは逆向きに回転させ、ダイヤモンドコアビット13が上昇(図12中上向き矢印)せしめられてアンカー用の下穴から引き抜かれた状態のアンカーユニット4の部分のみを示す斜視図である。図13及び図14はアンカー用の下穴からダイヤモンドコアビット13が引き抜かれた後の反転動作を示す図であり、図13はアンカーユニット4の部分のみの斜視図、図14はコア穿孔装置1全体の斜視図である。
【0027】
このときアンカーユニット4においては、第2段階の作業を行うために回転モータ22の回転により反転動作が行われ(図13図14中の矢印S3)、アンカー4aが下向き、ダイヤモンドコアビット13が上向きになるよう態勢が決められる。そしてインパクトドライバー11のソケットにアンカー4aを固定した状態で反転させ、アンカー4aを上記削孔された下穴に挿入する。図15はそのアンカー挿入動作を示す斜視図である。図16及び図17はアンカー挿入後におけるアンカー締め付け動作を示す斜視図であり、図16はアンカーユニット4の部分のみの斜視図、図17はコア穿孔装置1全体の斜視図である。この動作ではインパクトドライバー11を、アンカーを締め付ける方向へ回転動作させることによりアンカー4aが締付け固定され、コア穿孔装置1が作業場所に固定される。
【0028】
以上によりコア穿孔装置1の固定が行われると、第3段階の作業を行うためにコアの穿孔動作が行われる。図18はコア穿孔作業中におけるコアマシン3及びアンカーユニット4の部分を示す斜視図である。この動作では、コアビット駆動モータ8によりコアビット7を回転させながら降下し、建造物の床面33にコアを穿孔する。コアビット7の降下動作は、マシンブロック9に内蔵又は外付けされた送りモータを回転させることによりマシンブロック9をマシン支柱10に沿って降下させることにより行う。また、このコア穿孔作業中において、アンカーユニット4は図16図17に示されたアンカー締付け作業でアンカー4aを締め付けたままの状態で動作を中止し、アンカー4aとインパクトドライバー11とが結合した状態を保持する。これによりコア穿孔装置1の作業場所への固定が維持される。図19は上記コア穿孔作業が終了し、コアビット7がコア穴から引き抜かれた状態のコアマシン3及びアンカーユニット4の部分を示す斜視図である。コアビット7の引き抜き動作はマシンブロック9に内蔵又は外付けされた送りモータを先とは逆向きに回転させ、コアビット7を上昇させてコア穴から引き抜くことにより行う。図20及び図21はコアビット7の引き抜き動作の後、アンカー4aを外す動作を示す斜視図であり、図20はアンカーユニット4の部分のみの斜視図、図21はコアマシン3及びアンカーユニット4の部分の斜視図である。この動作ではインパクトドライバー11を、アンカーを締め付け解除する方向へ回転動作させることによりアンカー4aが取外しされ、コア穿孔装置1が作業場所で解放されて移動可能にされる。
【0029】
次に第4段階の作業を行うために支持フレーム28の横臥動作が行われる。図22は支持フレーム28の横臥動作を示す側面図である。この動作では、台床5に連結された駆動機構により台床5が水平状態から垂直状態へ回転動作され、支持フレーム28が倒れる(支柱10,14も同様)ことによりコアマシン3とアンカーユニット4が横臥状態になる。図23はコア穿孔装置1が退避場所へ移動する状況を示す。この場合支持フレーム28は台床5の回転により、横臥状態にされている。これによりコア穿孔装置全体を低い高さに維持でき、障害物に当たらずに退避場所へ帰還することができる。
【0030】
以上の一連の動作によりコア穿孔動作が実行される。なお、図20及び図21に示されたアンカー4aを外す動作を実行した後は、必ずしも図22に示された支持フレーム28の横臥動作に移る必要はなく、コア穿孔装置1を別の作業場所へ移動させることもできる。そしてこの別の作業場所において、図9に示されたアンカー用下穴の削孔以降の動作を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による遠隔コア穿孔装置によれば、作業者はコア穿孔装置から離れた位置にいて、コア穿孔装置をコントローラ操作することにより、一連のコア穿孔作業を実行することができるため、危険で悪環境の作業場所であっても、コア穿孔作業が行え、有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 遠隔コア穿孔装置
2 台車
3 コアマシン
4 アンカーユニット
4a アンカー
5 台床
6 移動部材
7 コアビット(ドリル部材)
8 コアビット駆動モータ
9 マシンブロック
10 マシン支柱
11 インパクトドライバ(アンカー打設部材)
12 アンカードリル(ドリル部材)
13 ダイヤモンドコアビット
14 アンカー支柱
15 ボールネジ
16,17 支持フランジ
18 ガイド部材
19 支持ブロック
20 回転駆動モータ
21 軌道部材
22 ユニット回転機構
28 支持フレーム
図1
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