(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
【0010】
[ホース用ゴム組成物]
本発明のホース用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、アクリロニトリルブタジエンゴムと、フィラーと、レゾルシンホルマリン初期縮合物と、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤と、脂肪酸ジエステルとを含有する、ホース用ゴム組成物である。
【0011】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
一般的にフタル酸ジオクチルや脂肪酸ジエステルのような可塑剤はアクリロニトリルブタジエンゴムとの相溶性が高い。
その中でもフタル酸ジオクチルが有するカルボン酸部は芳香族炭化水素基を有するため、フタル酸ジオクチルと脂肪酸ジエステルとを比較すると、フタル酸ジオクチルは脂肪酸ジエステルよりも、ゴム組成物の初期の架橋時において、ゴムの架橋に対し立体障害となりうる可能性が高いと考えられる。
これに対して、脂肪酸ジエステルのようにカルボン酸部が脂肪族炭化水素基を有する場合は、初期架橋に阻害を及ぼす事なく、加硫反応が発起しやすいため、本発明のゴム組成物は非常に効果的に流動性を抑制することができると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
<アクリロニトリルブタジエンゴム>
本発明のゴム組成物に含有されるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)は、アクリロニトリル及びブタジエンの共重合体であれば特に制限されない。
【0013】
NBRのアクリロニトリル含有量は、本発明の効果がより優れる点で、NBR全量に対して、10〜33質量%であることが好ましく、18〜21質量%であることがより好ましい。本発明において、NBRのアクリロニトリル含有量は、JIS K6384に基づきセミミクロケルダール法に準じて測定された。
なお、複数のNBRが使用される場合、NBR全量に対する平均アクリロニトリル含有量が上記範囲であってもよい。
【0014】
NBRのムーニー粘度は、本発明の効果がより優れる点で、40〜70であることが好ましく、45〜65であることがより好ましい。本発明において、NBRのムーニー粘度は、JIS K6300−1:2013の規定に準拠し、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、測定された。
なお、複数のNBRが使用される場合、アクリロニトリルブタジエンゴムの平均ムーニー粘度が上記範囲であってもよい。
NBRはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
<フィラー>
本発明のゴム組成物に含有されるフィラーは特に制限されない。例えば、カーボンブラック;シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ(雲母)、ケイソウ土のような無機フィラー(カーボンブラックを除く)が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、カーボンブラック、シリカ、タルクが好ましく、カーボンブラック及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0016】
カーボンブラックとしては、例えば、ゴム組成物に使用することができるものが挙げられる。
具体的には例えば、FTF級(Fine Thermal Furnace)、FEF級(Fast Extruding Furnace)、GPF級(General Purpose Furnace)、SRF級(Semi−Reinforcing Furnace)、HAF級(High Abrasion Furnace)のカーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
カーボンブラックの組合せとしては、本発明の効果がより優れる点で、例えば、平均粒子径が25〜36μmのカーボンブラック1と、平均粒子径が36μmを超え(好ましくは39μmを超え)250μm以下のカーボンブラック2とを併用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において、カーボンブラックの平均粒子径は、電子顕微鏡で撮影した粒子の直径の算術平均値である。
【0018】
シリカとしては、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)が挙げられる。
フィラーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
フィラーの含有量は、本発明の効果により優れ、接着性に優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、80〜120質量部であることが好ましく、90〜115質量部であることがより好ましく、100〜115質量部であることが更に好ましい。
【0020】
本発明のゴム組成物がカーボンブラック以外の無機フィラーを含有する場合、上記無機フィラーの含有量は、本発明の効果により優れ、接着性に優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、15〜30質量部であることが好ましく、20〜25質量部であることがより好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物がフィラーとしてカーボンブラック及び上記無機フィラー(例えばシリカ)を含有する場合、上記無機フィラーに対するカーボンブラックの質量比(カーボンブラック/無機フィラー)は、本発明の効果により優れ、接着性に優れるという観点から、2〜10であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。
【0022】
<レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物>
本発明のゴム組成物はレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有することによって、流動性を抑制することができる。
本発明のゴム組成物に含有されるレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、レゾルシン(レゾルシノール)とホルムアルデヒド(ホルマリン)との縮合物(レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物)を少なくとも含むものであれば特に制限されない。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、ホルムアルデヒド由来の構成単位とレゾルシン由来の構成単位とを含有する縮合物において、ホルムアルデヒド由来の構成単位が化学量論的に不足する又は過剰な状態であってもよい。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、ノボラック及びレゾールのいずれであってもよい。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物はノボラックであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ノボラックのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、例えば、熱、酸によって硬化することができる。
【0023】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物はゴムラテックスを含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0024】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、触媒下でレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させる方法が挙げられる。
ノボラックのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、例えば、酸を触媒として、レゾルシン/ホルムアルデヒドのモル比を1/0.8〜0.9で反応させることによって得ることができる。酸の触媒としては、例えば、シュウ酸、2価金属塩などが挙げられる。
レゾールのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、例えば、アルカリを触媒として、レゾルシン/ホルムアルデヒドのモル比を1/1〜3で反応させることによって得ることができる。アルカリの触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、第三アミンが挙げられる。
【0025】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の軟化点は、本発明の効果により優れ、混合加工性及び貯蔵安定性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、100〜140℃であることが好ましく、100〜110℃であることがより好ましい。本発明において、軟化点は、JIS K6220−1の環球式軟化点測定法に準じて測定された。
【0026】
ノボラックのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ラウリルオキシメチルピリジニウムクロライド、エトキシメチルピリジニウムクロライド、ホルムアルデヒドのトリオキサンヘキサメトキシメチルメラミンポリマー、ヘキサキス−(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリメチル/N,N′,N″−トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリス(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリブチル−N,N′,N″−トリメチロール−メラミン等のような硬化剤によって硬化することができる。上記硬化剤の種類がアルデヒド・アンモニア系加硫促進剤と重複する場合(例えば、ヘキサメチレンテトラミン等)、硬化剤の含有量はアルデヒド・アンモニア系加硫促進剤に含まれるものとする。
【0027】
レゾールのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は例えば、加熱によって硬化することができる。
【0028】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の他に更にレゾルシン及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種(レゾルシン等)を含んでもよい。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がレゾルシン等を更に含む場合、上記レゾルシン等は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を製造する際に使用された原料の未反応物であってもよい。また、上記レゾルシン等をレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物に添加してもよい。
【0029】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物はレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の他に更に水を含んでもよい。水の含有量は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物全量に対して、0〜1質量%以下であることが好ましい。
【0030】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、2.0〜6.0質量部であることが好ましく、2.5〜4.0質量部であることがより好ましい。
【0031】
なお、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の他にさらに水を含む場合、上記のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の含有量には、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物に含有される水は含まれない。
また、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の他にさらにレゾルシン及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、上記のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の含有量にはレゾルシン及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0032】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物と、レゾルシン及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む場合、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物(レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物と、レゾルシン及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種との合計量)に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0033】
<アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤>
本発明のゴム組成物に含有されるアルデヒド・アンモニア系加硫促進剤は、ゴム組成物に使用できるアルデヒド・アンモニア系加硫促進剤であれば特に制限されない。
【0034】
本発明のゴム組成物において、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤は、加硫促進剤として作用することができる。
また、本発明において、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がノボラックであり、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤がヘキサメチレンテトラミン等である場合、ヘキサメチレンテトラミン等は、ノボラックのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の硬化剤として作用することができる。
【0035】
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤は例えば、アルデヒドとアンモニアとを反応させて得ることができる。上記アルデヒドは特に制限されない。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアが挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤の含有量は、本発明の効果により優れ、加工性、貯蔵安定性及び接着性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して1〜2質量部であることが好ましく、1.5〜1.8質量部がより好ましい。
【0037】
また、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物がノボラックであり、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤がヘキサメチレンテトラミン等である場合、ヘキサメチレンテトラミン等はノボラックの硬化剤として作用することができるため、ヘキサメチレンテトラミン等の含有量は、本発明の効果により優れ、加工性、貯蔵安定性及び接着性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム及びレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の合計量100質量部に対して、1〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部がより好ましい。
【0038】
<脂肪酸ジエステル>
本発明のゴム組成物に含有される脂肪酸ジエステルは、カルボン酸を複数有する脂肪酸のジエステルであれば特に制限されない。
【0039】
(脂肪酸)
脂肪酸ジエステルを構成する脂肪酸は、カルボン酸を複数有する脂肪族炭化水素であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記脂肪族炭化水素は2価以上の脂肪族炭化水素基であれば特に制限されない。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、不飽和結合を有してもよく、カルボン酸以外に、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子のようなヘテロ原子を有してもよい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましい。上記アルキル基の炭素数は1〜20とすることができ、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
上記脂肪酸が1分子に有するカルボン酸の数は2個であることが好ましい。
【0040】
(エステル)
脂肪酸ジエステルを構成するエステル結合に結合する炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、不飽和結合を有してもよく、また、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子のようなヘテロ原子を有してもよい。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。)が挙げられる。
上記炭化水素基は、なかでも、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状または分岐状のアルキル基であることがより好ましい。上記アルキル基の炭素数は1〜20とすることができ、1〜10が好ましい。
脂肪酸ジエステルを構成する2個のエステル結合に結合するそれぞれの炭化水素基は、同一でも異なってもよい。
【0041】
脂肪酸ジエステルを構成する全ての炭素数は、本発明の効果により優れ、NBRとの相溶性に優れるという観点から、12個以上であることが好ましく、12〜32個が好ましい。
【0042】
脂肪酸ジエステルは、本発明の効果により優れ、NBRとの相溶性を考慮すると、脂肪酸ジアルキルエステルが好ましく、アジピン酸ジアルキルエステルがより好ましい。
アジピン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、アジピン酸ジオクチルエステル、アジピン酸ジイソノニルエステルが挙げられる。
脂肪酸ジエステルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
脂肪酸ジエステルの含有量は、本発明の効果により優れ、混合加工性及び圧延加工性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、10〜15質量部であることが好ましく、10〜12.5質量部であることがより好ましい。
【0044】
また、脂肪酸ジエステルの含有量は、本発明の効果により優れ、混合加工性及び圧延加工性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム及びレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の合計100質量部に対して、9.5〜14.6質量部であることが好ましく、9.5〜12.2質量部であることがより好ましい。
【0045】
アクリロニトリルブタジエンゴムに対するレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の質量比(レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物/アクリロニトリルブタジエンゴム)は、本発明の効果により優れ、混合加工性及び圧延加工性のうちの少なくとも1つ又は全てに優れるという観点から、0.02〜0.06であることが好ましく、0.025〜0.035であることがより好ましい。
【0046】
(添加剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム以外のジエン系ゴム、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤以外の加硫促進剤、脂肪酸ジエステル以外の可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、硫黄等の加硫剤、接着助剤のような添加剤を含有することができる。各種添加剤は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。各種添加剤の含有量は特に制限されず、適宜選択することができる。
【0047】
(製造方法、用途等)
本発明のゴム組成物はその製造について特に制限されない。例えば、NBRと、フィラーと、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、脂肪酸ジエステルと、必要に応じて使用することができる添加剤(加硫剤及び加硫促進剤を除く。)とを、40〜200℃の条件下で、バンバリー、ニーダー等の密閉式混合機、または混練ロール機により混練し、ついで、上記混練によって得られた混合物に、加硫剤と、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤と、必要に応じて使用することができる、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤以外の加硫促進剤とを加え、これらを40〜120℃の条件下で、密閉式混合機、混練ロール機等で混練して、ゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
【0048】
本発明のゴム組成物を加硫又は架橋させる条件は特に制限されない。例えば、加圧しながら、110〜160℃の条件下で、本発明のゴム組成物を加硫又は架橋させることができる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、ホースの製造に使用することができる。特に補強層を固定するための層間ゴム層に本発明のゴム組成物を使用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
補強層に使用される材料としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アラミド繊維のような繊維材料;ブラスメッキが施されたワイヤ、亜鉛メッキワイヤのような硬鋼線が挙げられる。
【0050】
[ホース]
本発明のホースは、本発明のホース用ゴム組成物を用いて形成される層を有するホースである。
本発明のホースに使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
ホース用ゴム組成物を用いて形成される層は、ホースが有するいずれの層であってもよい。
【0051】
本発明のホースとしては、例えば、内管と、補強層と、外管とをこの順で有し、補強層が補強鋼線層と層間ゴム層とを有するホースが挙げられる。この場合、ホース用ゴム組成物を用いて形成される層は、内管、外管及び層間ゴム層からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。
【0052】
少なくとも層間ゴム層が本発明のゴム組成物で形成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
層間ゴム層は補強鋼線層の片面又は両面に配置することができる。
補強層が有する補強鋼線層は単数又は複数のいずれであってもよい。補強鋼線層が複数である場合、複数の補強鋼線層の間に層間ゴム層を配置することができる。
本発明において補強鋼線層は例えば上記繊維材料からなる繊維層であってもよい。
補強層は少なくとも1層の補強鋼線層を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0053】
(内管)
内管を構成するゴム材としては、従来公知のゴム組成物を用いることができる。具体的には例えば、NBR系ゴム組成物が挙げられる。
【0054】
内管は1層又は複数層とすることができる。
内管と、内管に隣接する補強鋼線層との間に接着層等が配設されていてもよい。
【0055】
(補強層)
補強層に使用される補強鋼線層は、ワイヤ等の補強鋼線を編組して形成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
補強鋼線としては、例えば、通常ホースに用いられる硬鋼線が挙げられる。具体的には例えば、ブラスめっきワイヤ、亜鉛めっきワイヤが挙げられる。
補強鋼線層は、その網組の方法について特に限定されない。例えば、ブレード状で形成されたもの、スパイラル状で形成されたものが挙げられる。
【0056】
(外管)
外管を構成するゴム材としては、従来公知のゴム組成物を用いることができる。具体的には例えば、スチレンブタジエンゴム系ゴム組成物、クロロプレンゴム系ゴム組成物、エチレンプロピレンジエンゴム系ゴム組成物が挙げられる。
【0057】
外管は1層又は複数層とすることができる。
外管と、外管に隣接する補強鋼線層との間に接着層等が配設されていてもよい。
【0058】
以下、本発明のホースを添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本発明のホースは図面に示す好適実施形態に限定されない。
【0059】
図1は、本発明のホースの一例の各層を切り欠いた一部切欠斜視図である。
図1において、ホース1は、内管2と補強層と外管3とを有し、補強層は補強鋼線層5aおよび5bと層間ゴム層4とを有する。層間ゴム層4は複数の補強鋼線層5aおよび5bの間に配置される。ホース1において少なくとも層間ゴム層4を本発明のゴム組成物で形成することができる。
【0060】
本発明のホースの製造方法は、特に限定されない。例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、あらかじめ離型剤を塗布したマンドレルに、内管ゴム材用ゴム押出機から内管材を押し出し、内管を形成させる。
つぎに、内管(接着層がある場合は接着層)の上に補強鋼線層を形成させる。補強鋼線層は、補強用ワイヤを複数本引きそろえてスパイラル状またはブレード状に編組して形成されてもよい。更に、補強鋼線層の上に、本発明のゴム組成物をあらかじめ圧延加工して製造されたシート状の層間ゴムシートを巻き付けて、層間ゴム層とする。更に、層間ゴム層の上に補強鋼線層を形成させる。本発明のホースが、補強鋼線層を3層以上有する場合は、補強鋼線層と層間ゴム層の形成を、上述の方法と同様にして、必要に応じて複数回繰り返す。
本発明のホースが外管を有する場合は、補強層の上に、内管の場合と同様に、外管材を押し出し、外管を形成させる。
その後、これらの層を加硫(例えば、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)、または温水加硫)することにより加硫接着させて、本発明のホースを製造することができる。
上記加硫の際の温度は130〜160℃とすることが好ましい。
【0061】
本発明のホースに本発明のゴム組成物を使用する場合、本発明のホースは本発明のゴム組成物を用いて形成される層を有するため、その製造過程において、本発明のゴム組成物の流動性が抑制されることによって、ホースの外観及び寸法安定精度に優れる。
本発明のホースの特に層間ゴム層に本発明のゴム組成物を使用する場合、ホースは層間ゴム層として本発明のゴム組成物を用いて形成される層を有するため、その製造過程において、本発明のゴム組成物の流動性が抑制されることによって、未加硫時および加硫初期における層間ゴムが補強層から滲出しない又は滲出したとしてもその量が少なく、ホースの外観及び寸法安定精度に優れる。
【0062】
本発明のホースは、例えば、油圧ホース等の高圧ゴムホース、冷媒輸送用ホースとして好適に用いられる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分(加硫剤(硫黄)及びアルデヒド・アンモニア系加硫促進剤を除く。)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを40〜160℃の条件下で、密閉式混合機により混練し、次いで、ここに、加硫剤と、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤とを加え、これらを40〜120℃の条件下で混練して、ゴム組成物を製造した。
【0064】
<評価>
上記のとおり製造されたゴム組成物を用いて次の流れ量の評価を行った。結果を第1表に示す。
・流れ量(未加硫ゴムの流動性)
長さ(L)15mm、直径(D)1.5mmの細管(オリフィス)を有するチャンバーと、チャンバー内に充填した未加硫ゴム組成物を加圧できるシリンダーと、オリフィスを通して流出したゴムを保持するキャビティーとを有する金型を用いた。
上記のとおり製造された各ゴム組成物(未加硫)40gをチャンバー内に配置して、150℃、1.5MPaの条件で20分間、シリンダーを押圧した。20分後、オリフィスを通過し、キャビティー内に保持された各加硫ゴムの質量を測定した。
上記測定で得られた数値を、各加硫ゴムの比重で除して、各加硫ゴムの体積を算出し、これを流れ量(単位mL)とした。
流れ量の値が小さいほど、流動性が小さく、流動性の抑制が良好であることを示す。
【0065】
【表1】
【0066】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NBR1:Nipol DN405、日本ゼオン社製
・NBR2:PERBUNAN NT1846F、LANXESS社製
なお、上記各NBRのアクリロニトリル量(AN%、単位:質量%)および100℃におけるムーニー粘度(Vm)は第1表に示すとおりである。
【0067】
・カーボンブラック1(HAF):HAF級カーボンブラック(ファーネスブラック)、ショウワブラックN330、キャボットジャパン社製 平均粒子径26〜30μm
・カーボンブラック2(FTF):FTF級カーボンブラック(サーマルブラック)、アサヒサーマル、旭カーボン社製、平均粒子径90〜206μm
・シリカ:ニップシール VN3、東ソー・シリカ社製
【0068】
・比較可塑剤(DOP):ジオクチルフタレート、ジェイ・プラス社製
・脂肪酸ジエステル1:アジピン酸ジオクチルエステル、ジェイ・プラス社製
【0069】
・レゾルシン(比較):レゾルシノール、住友化学社製
【0070】
・レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物1:Penaclite Resins B−18−S(INDSPEC Chemical Corporation社製)。ノボラックのレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物である。
Penaclite Resins B−18−Sは、レゾルシン25質量%とレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物75質量%とを含有する混合物である。
Penaclite Resins B−18−Sの軟化点100〜110℃である。
Penaclite Resins B−18−Sに含有される水分量は1.0質量%以下である。
Penaclite Resins B−18−Sは、ゴムラテックスを含まない。
【0071】
・硫黄:粉末イオウ、細井化学工業社製
・アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤:ヘキサメチレンテトラミン、ノクセラーH、大内新興化学工業社製
【0072】
第1表に示すように、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有せず代わりにレゾルシンを含有する比較例1、2を比較すると、脂肪酸ジエステルを含有する比較例2は、DOPを含有する比較例1よりも流れ量が大きく、流動性がさらに大きくなることが分かった。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有するが、脂肪酸ジエステルを含有せず代わりにDOPを含有する比較例3は、比較例1、2よりも流れ量が大きく、流動性がさらに大きくなることが分かった。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有せず代わりにレゾルシンを含有し、脂肪酸ジエステルの含有量が比較例2よりも多い比較例4、5は、比較例2よりも流れ量が大きく、流動性がさらに大きくなることが分かった。
【0073】
これに対して、実施例1〜12は所定の効果を得ることができた。
詳細には、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する実施例2と比較例3とを比較すると、脂肪酸ジエステルを含有する実施例2は、DOPを含有する比較例3よりも流れ量が小さく、流動性を抑制することが分かった。
このように、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有するゴム組成物における脂肪酸ジエステル(実施例2)、DOP(比較例3)による流動性の抑制効果は、レゾルシンを含有するゴム組成物における場合(比較例1、2)と逆転することが明らかとなった。
【0074】
実施例3は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有せず代わりにレゾルシンを含有する比較例4よりも流れ量が小さく、流動性の抑制に優れることが分かった。
実施例4は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有せず代わりにレゾルシンを含有する比較例5よりも流れ量が小さく、流動性の抑制に優れることが分かった。
実施例1〜4を比較すると、脂肪酸ジエステルの含有量が少ないほど流れ量が小さく、流動性の抑制に優れた。
【0075】
シリカの含有量について実施例2、5〜7を比較すると、シリカの含有量が多くなるほど流動性をより抑制した。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤の含有量について実施例2と、実施例8、9とを比較すると、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤の含有量がアクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して1質量部より多く2質量部より少ない場合(実施例2)、又は、アクリロニトリルブタジエンゴム及びレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の合計100質量部に対して1質量部より多く2質量部より少ない場合(実施例2)、流動性をより抑制した。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物中のレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の含有量について実施例2、10〜12を比較すると、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の含有量が多いほど、流動性をより抑制した。