特許第6716900号(P6716900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星ダイヤモンド工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6716900-分断装置 図000002
  • 特許6716900-分断装置 図000003
  • 特許6716900-分断装置 図000004
  • 特許6716900-分断装置 図000005
  • 特許6716900-分断装置 図000006
  • 特許6716900-分断装置 図000007
  • 特許6716900-分断装置 図000008
  • 特許6716900-分断装置 図000009
  • 特許6716900-分断装置 図000010
  • 特許6716900-分断装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716900
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】分断装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/033 20060101AFI20200622BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20200622BHJP
   B28D 1/28 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   C03B33/033
   B28D5/00 Z
   B28D1/28
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-237304(P2015-237304)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-100926(P2017-100926A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 仁孝
(72)【発明者】
【氏名】高松 生芳
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227550(JP,A)
【文献】 特開2015−013782(JP,A)
【文献】 特開2009−078569(JP,A)
【文献】 実開昭61−172130(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成されたスクライブラインに沿って基板を分断する分断装置であって、
前記スクライブラインを境界とする前記基板の一方の領域を第一領域、他方の領域を第二領域としたときに、前記第一領域を第一支持部材で支持するとともに前記第二領域を前記第一支持部材からはみ出させた状態で、前記第二領域に対し上方から衝突させて前記スクライブラインに沿って前記第二領域を前記第一領域から切り離すインパクト部材を備え
前記インパクト部材による衝突は、当該インパクト部材の自由落下によってなされるようにしたことを特徴とする分断装置。
【請求項2】
前記インパクト部材による衝突時に、前記第一領域を上方から押さえて当該第一領域の浮き上がりを阻止する押さえ部材を備えている請求項に記載の分断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板をスクライブラインに沿って分断するための分断装置に関する。特に本発明は、液晶表示パネルのように、2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板を、それぞれの基板の表裏両面に形成されたスクライブラインに沿って分断するのに適した分断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造時には、2枚の大面積ガラス基板、すなわち、液晶を駆動する薄膜トランジスタTFT(Thin Film Transistor)等の電子デバイスが形成されたガラス基板と、対向電極が形成されたガラス基板とを貼り合わせて大判の貼り合わせ基板を形成する。そして、この大判の貼り合わせ基板を、スクライブ工程ならびにブレイク工程を経て1つ1つの単位表示パネルに分断することにより、製品となる単位基板が切り出される(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図9は、後記特許文献等で開示された貼り合わせ基板の分断方法を示すものである。
まず、図9(a)に示すように、貼り合わせ基板Mの上側の第一基板1の表面にスクライブ予定ラインに沿ってカッターホイール(スクライビングホイールともいう)Kを圧接させながら相対移動させることにより第一スクライブラインS1を形成する。次いで図9(b)に示すように、貼り合わせ基板Mを表裏反転させ、上方からブレイクバー20を押し付けて基板Mを下方に撓ませることにより、スクライブラインS1の亀裂を厚み方向に浸透させて第一基板1をスクライブラインS1に沿ってブレイクする。続いて図9(c)に示すように、貼り合わせ基板Mの第二基板2の表面にカッターホイールKで第二スクライブラインS2を加工する。この後、図9(d)に示すように、貼り合わせ基板Mを再度反転させてブレイクバー20を押し付けることにより、第二基板2を第二スクライブラインS2に沿ってブレイクするようにしている。
【0004】
また、別の分断方法としては図10に示すものがある。すなわち、図10(a)に示すように、貼り合わせ基板Mの上下両面からカッターホイールK、Kを圧接させながら相対移動させることにより、第一基板1と第二基板2の表面に第一スクライブラインS1と第二スクライブラインS2を同時に加工する。次いで図10(b)に示すように、貼り合わせ基板Mに上方からブレイクバー20を押し付けて基板Mを下方に撓ませることにより、下側の第二基板2のスクライブラインS2の亀裂を厚み方向に浸透させて第二基板2をスクライブラインS2に沿ってブレイクする。続いて図10(c)に示すように、貼り合わせ基板Mを表裏反転させ、上方からブレイクバー20を押し付けて基板Mを撓ませることにより、第一基板1を第一スクライブラインS1に沿ってブレイクする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−103295号公報
【特許文献2】特開2006−137641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の貼り合わせ基板の分断方法では、いずれの場合も一方の基板をブレイクバー等でブレイクした後に、基板を反転させて反対側の基板をブレイクする工程、すなわち、貼り合わせ基板を表裏反転させる操作が必要となる。
しかし、このような基板の反転操作は、基板を反転させるための機構が必要であって装置が大型化するとともに装置コストも高くなる。加えて、反転操作に時間がかかるとともに、反転操作中に基板が傷付くリスクも有しているため生産性が低下するといった問題点もあった。
【0007】
そこで本発明は、上記した課題に鑑み、貼り合わせ基板の分断に際し、基板を表裏反転させることなく第一基板ならびに第二基板をスクライブラインに沿って一挙かつ確実に分断することができる分断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち本発明の分断装置は、表面に形成されたスクライブラインに沿って基板を分断する分断装置であって、前記スクライブラインを境界とする前記基板の一方の領域を第一領域、他方の領域を第二領域としたときに、前記第一領域を第一支持部材で支持するとともに前記第二領域を前記第一支持部材からはみ出させた状態で、前記第二領域に対し上方から衝突させて前記スクライブラインに沿って前記第二領域を前記第一領域から切り離すインパクト部材を備えている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分断装置では、インパクト部材を分断すべき基板の表面に衝突させて基板に剪断力を発生させるものであるから、単板の脆性材料基板や貼り合せ基板をスクライブラインに沿って確実に分断することができる。特に、分断すべき基板が第一基板と第二基板からなる貼り合わせ基板である場合には、インパクト部材の1回の下降で第一基板と第二基板をスクライブラインに沿って一挙に分断することが可能となる。これにより、一方の基板のスクライブラインをブレイク後に基板を反転させて、他方の基板のスクライブラインをブレイクするといった基板の表裏反転操作を省略して分断作業の効率化と装置のコンパクト化を図るとともに、反転操作中に基板が傷付くリスクも解消することができる。
【0010】
上記発明において、前記インパクト部材による衝突は、当該インパクト部材の自由落下によって行うようにするのがよい。これにより、複雑な機構を用いることなく、貼り合わせ基板の分断に必要な剪断力をインパクト部材の自重によって容易に得ることができる。
【0011】
また、上記発明において、前記インパクト部材による衝突時に、前記第一領域を上方から押さえて当該第一領域の浮き上がりを阻止する押さえ部材を備えている構成とするのがよい。これにより、インパクト部材による衝突時に第一領域部分の浮き上がりを阻止して精度よく分断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る分断装置を概略的に示す側面図。
図2図1の分断装置の要部を示す斜視図。
図3図1の分断装置による分断工程の第一段階を示す説明図。
図4図1の分断装置による分断工程の第二段階を示す説明図。
図5図1の分断装置による分断工程の第三段階を示す説明図。
図6図1の分断装置による分断工程の第四段階を示す説明図。
図7】分断対象となる貼り合わせ基板の一例を示す平面図と断面図。
図8】分断後の短冊状基板ならびに単位基板を示す平面図。
図9】従来の貼り合わせ基板の分断方法の一例を示す説明図。
図10】従来の貼り合わせ基板の分断方法の別の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る分断装置の実施例を、図1〜8に基づいて説明する。
図7は本発明に係る分断装置の分断対象となる貼り合わせ基板の一例を示しており、(a)は平面図、(b)は断面図である。貼り合わせ基板Mは、上側の第一基板1と下側の第二基板2とが貼り合わされて構成されている。第一基板1の表面には第一スクライブラインS1が、第二基板2の表面には第二スクライブラインS2が平面視において同じ位置でそれぞれX−Y方向に沿って形成されている。これらのスクライブラインS1、S2によって複数の単位基板M1となる領域が格子状に区分けされている。
【0014】
本発明に係る分断装置Aは、相対的に上下に移動する第一支持部材5と第二支持部材6とを備えている。本実施例では、第一支持部材5ならびに第二支持部材6がベルトコンベアで構成され、第一支持部材5が上流側、第二支持部材6が下流側となり、上流側の第一支持部材5から下流側の第二支持部材6に向かって分断すべき貼り合わせ基板Mが搬送されるようになっている。
【0015】
第一支持部材5と第二支持部材6は、水平状態において互いに近接した位置に配置されており、この位置から第二支持部材6がシリンダ7等の昇降機構により下方に移動できるようになっている。
【0016】
第二支持部材6の上方には、第一支持部材5寄りの位置にインパクト部材8が設けられている。インパクト部材8はベルト幅方向に長く形成され、索引紐9で吊り上げられた位置からガイド10に沿って自重により垂直に自由落下できるように形成されている。また、第一支持部材5の上方には、第二支持部材6寄りの位置に、分断時の基板Mの浮き上がりを阻止する押さえ部材11が設けられている。この押さえ部材11およびインパクト部材8の下面には、基板Mの表面へ接触したときに傷が付くことを防止するためのウレタン等の軟質シート11a、8aが貼り付けられている。
【0017】
さらに、インパクト部材8の落下ストロークを制限するストッパ4が設けられている。このストッパ4は、第二支持部材6を挟んだ左右両脇部分に配置され、分断装置Aのフレーム(図示せず)に固定されている。また、ストッパ4に当接する当接片8bが、インパクト部材8に連なって形成されている。このストッパ4は、後述する分断工程中において、インパクト部材8により切り離されて第二支持部材6上に落下した基板M1、M2に対し、インパクト部材8が接触するのを防ぐ役目をする。
【0018】
次に、分断装置Aの動作について説明する。
先行するスクライブ工程で第一、第二スクライブラインS1、S2が予め加工された貼り合わせ基板Mを、いずれか一方のスクライブライン、例えばX方向のスクライブラインがベルト幅方向に沿うようにして第一支持部材5に載置し、下流側の第二支持部材6に向かって搬送する(図1〜3参照)。そして、図4に示すように、最初のスクライブラインS1、S2が第一支持部材5から少し離れた位置まで移動したときに貼り合わせ基板Mの搬送を停止させる。このとき、貼り合わせ基板MのスクライブラインS1、S2を境界として、第一支持部材5によって支持されている領域を第一領域といい、第二支持部材6によって支持されている領域を第二領域という。
【0019】
次いで、図5、6に示すように、押さえ部材11を下降させて貼り合わせ基板Mの第一領域の表面に軽く接触させる。この状態で、インパクト部材8を上方の待機位置から自由落下させると、自由落下の衝突で生じる剪断力によって、貼り合わせ基板Mの上下のスクライブラインS1、S2は同時にブレイクされ、第二領域が第一領域から分離されて図8(a)に示す短冊状基板M1となる。このとき、貼り合わせ基板Mの第一領域は押さえ部材11によって押さえられているので、分断時の第一領域部分の浮き上がりを防ぐことができる。
【0020】
このようにして順次X方向のスクライブラインに沿って貼り合わせ基板Mを短冊状基板M1に分断した後、この短冊状基板M1のY方向のスクライブラインがベルト幅方向に沿うようにして第一支持部材5に載置し、上記同様に、インパクト部材8によって短冊状基板M1をスクライブラインに沿って順次分断して、図8(b)に示す単位基板M2を切り離す。
【0021】
分断対象となる貼り合わせ基板Mの素材や厚みにより、分断時における第二支持部材6の下降ストロークL1、ならびに、インパクト部材8の自重および落下ストロークL2が好ましい値に設定される。例えば、貼り合わせ基板Mの第一基板1および第二基板2が、0.2〜0.4mmの厚さのガラス板である場合、第二支持部材6の下降ストロークL1は4〜10mm、インパクト部材8の下降ストロークL2は3〜9mmとするのがよい。また、インパクト部材8が最下端まで落下したときの第二支持部材6上の第二領域との間隔L3は1〜5mmとするのが好ましい。
【0022】
このように、インパクト部材8を自由落下させて衝突させることにより生じる剪断力によって貼り合わせ基板Mを分断するため、一方の基板のスクライブラインをブレイク後に基板を反転させて他方の基板のスクライブラインをブレイクするといった煩雑な基板反転操作を省略して、インパクト部材の1回の落下によって第一基板1と第二基板2をスクライブラインS1、S2に沿って一挙に分断することが可能となる。これにより、分断作業の効率化と装置のコンパクト化を図るとともに、反転操作中に基板が傷付くリスクも解消することができる。
また、インパクト部材8により切り離されて短冊状基板M1や単位基板M2となる第二領域は、第二支持部材6上へ落下後に第二支持部材6で順次下流側へ搬送することにより、貼り合わせ基板Mの分断工程を流れ作業で連続的に行うことができる。
【0023】
本発明において、上記実施例では貼り合わせ基板Mに対し、インパクト部材8を自重による自由落下で衝突させることにより基板Mへの剪断力が生じるようにしたが、これと同等の剪断力が生じるのであれば、例えばプレス機のような機械的手段でインパクト部材8を下降させるようにしてもよい。
【0024】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。例えば、上記実施例では、第一基板と第二基板を貼り合わせた貼り合わせ基板を分断対象として説明したが、単板の脆性材料基板の分断にも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の分断装置は、大判の脆性材料基板をスクライブラインに沿って分断して単位基板を切り出すときに利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 分断装置
M 貼り合わせ基板
S1 第一スクライブライン
S2 第二スクライブライン
1 第一基板
2 第二基板
4 ストッパ
5 第一支持部材
6 第二支持部材
8 インパクト部材
11 押さえ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10