特許第6716946号(P6716946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716946
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   E04H9/02 331Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-31746(P2016-31746)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-150178(P2017-150178A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐二
(72)【発明者】
【氏名】大豊 晃祥
(72)【発明者】
【氏名】松村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】小寺 元気
(72)【発明者】
【氏名】大崎 翔平
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−025263(JP,A)
【文献】 特開2007−197113(JP,A)
【文献】 特開2003−004097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0114919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側部材と下側部材の間に傾斜自在に配設され且つ上下端部に張出部が形成された免震柱と、
該免震柱の上端部に形成された張出部が前記上側部材に対して水平方向へ移動しないように拘束する上側拘束部材と、
前記免震柱の下端部に形成された張出部が前記下側部材に対して水平方向へ移動しないように拘束する下側拘束部材と、
減衰要素とバネ要素の少なくとも一方の機能を有し、前記下側部材と免震柱との間或いは前記上側部材と免震柱との間に前記減衰要素とバネ要素が位置するよう介装された連結体と
を備えた免震装置。
【請求項2】
前記免震柱の相互間を前記免震柱の長手方向と直交する方向へ延びて固定する固定連結材を備え、
前記免震柱と前記固定連結材とによって形成される面に直交する方向へは前記免震柱の傾斜が許容され、前記免震柱と前記固定連結材とによって形成される面に沿う方向へは前記免震柱の傾斜が阻止されるよう構成した請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記免震柱の上端部に形成された張出部の上端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて下り勾配となるテーパ面が形成され、前記免震柱の下端部に形成された張出部の下端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて上り勾配となるテーパ面が形成される請求項2記載の免震装置。
【請求項4】
前記連結体は、流体圧ダンパである請求項1〜3の何れか一項に記載の免震装置。
【請求項5】
前記連結体は、コイルバネである請求項1〜3の何れか一項に記載の免震装置。
【請求項6】
上側部材と下側部材の間に傾斜自在に配設され且つ上下端部に張出部が形成された免震柱と、
該免震柱の上端部に形成された張出部を前記上側部材に対して拘束する上側拘束部材と、
前記免震柱の下端部に形成された張出部を前記下側部材に対して拘束する下側拘束部材と、
減衰要素とバネ要素の少なくとも一方の機能を有し、前記下側部材と免震柱との間或いは前記上側部材と免震柱との間に前記減衰要素とバネ要素が位置するよう介装された連結体と
を備えた免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体倉庫、ボイラ鉄骨、立体パーキング、荷役設備等の構造物に適用して構造物の揺れを低減するための免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、立体倉庫は、複数の鋼鉄製の柱と複数段の鋼鉄製の梁を用いて複数のラック(棚)を立体的に組み立てた構成を有している。大規模な地震が発生した場合には、立体倉庫が損壊する可能性があり、又、地震により立体倉庫のラックに格納された荷が落下して荷が損傷する可能性があることから、立体倉庫に免震装置を備えて地震に対処することが考えられている。
【0003】
立体倉庫の柱の免震装置としては、立体倉庫を構成する複数の柱の各下端部と基礎との間に、積層ゴムからなる免震装置を備えたものがある(特許文献1)。因みに、特許文献1のように、多数の柱が設けられる立体倉庫の各柱の下端に積層ゴムによる免震装置を備えた場合には、基礎の増設が必要なことや積層ゴムが比較的高価であることから立体倉庫の設備コストが増加する問題があった。又、立体倉庫の柱を上下の途中位置で切断した構成として、上側の二本の柱の下端を水平な第1水平部材で連結し、上側の二本の柱に対応する下側の二本の柱の上端部を、前記第1水平部材と係合可能な水平な第2水平部材で連結することにより、前記第1水平部材と第2水平部材を長手方向へ低摩擦部材を介してスライド可能とし、前記第1水平部材と第2水平部材とを粘弾性体で接続したものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−104883号公報
【特許文献2】特開2013−039989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2においては、前記第1水平部材と第2水平部材を設け、更に、前記第1水平部材と第2水平部材とを接続する粘弾性体を設ける必要があるために、構造が複雑となって立体倉庫の設備コストが増加する問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、簡単な構成で構造物に作用する揺れを免震できる免震装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上側部材と下側部材の間に傾斜自在に配設され且つ上下端部に張出部が形成された免震柱と、
該免震柱の上端部に形成された張出部が前記上側部材に対して水平方向へ移動しないように拘束する上側拘束部材と、
前記免震柱の下端部に形成された張出部が前記下側部材に対して水平方向へ移動しないように拘束する下側拘束部材と、
減衰要素とバネ要素の少なくとも一方の機能を有し、前記下側部材と免震柱との間或いは前記上側部材と免震柱との間に前記減衰要素またはバネ要素が位置するよう介装された連結体と
を備えた免震装置にかかるものである。
【0008】
前記免震装置においては、前記免震柱の相互間を前記免震柱の長手方向と直交する方向へ延びて固定する固定連結材を備え、
前記免震柱と前記固定連結材とによって形成される面に直交する方向へは前記免震柱の傾斜が許容され、前記免震柱と前記固定連結材とによって形成される面に沿う方向へは前記免震柱の傾斜が阻止されるよう構成しても良い。
【0009】
この場合、前記免震柱の上端部に形成された張出部の上端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて下り勾配となるテーパ面が形成され、前記免震柱の下端部に形成された張出部の下端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて上り勾配となるテーパ面が形成されても良い。
【0010】
前記免震装置において、前記連結体は、流体圧ダンパとしても良い。
【0011】
前記免震装置において、前記連結体は、コイルバネとしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の免震装置によれば、簡単な構成で構造物に作用する揺れを免震できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の免震装置の実施例を示す正断面図である。
図2】本発明の免震装置の実施例を示す側断面図である。
図3】本発明の免震装置の実施例を示す平断面図であって、図1のIII−III断面図である。
図4】本発明の免震装置の実施例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図である。
図5】本発明の免震装置の実施例において、連結体として流体圧ダンパの代わりにコイルバネを用いた例を示す正断面図である。
図6】(a)は本発明の免震装置を適用する構造物の一例である立体倉庫の正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1図6は本発明の免震装置の実施例である。
【0016】
図6(a)及び図6(b)は本発明の免震装置を適用する構造物の一例である立体倉庫を示しており、構造物としての立体倉庫100は、複数の鋼鉄製の柱1と複数段の鋼鉄製の梁2を備えることにより複数のラック3(棚)が立体的に組み立てられた構成を有している。立体倉庫100は、スタッカクレーン4を挟むように立設され、該スタッカクレーン4の走行方向に沿って延びる長さを有しており、スタッカクレーン4の走行方向と直交する方向には、格納される荷の大きさに対応した、前記長さと比較して短い幅を有している。前記立体倉庫100を構成する複数の柱1は、ラック3に格納される荷の重量を支持するために高い強度を有している。
【0017】
そして、図6の立体倉庫100を構成する複数の柱1に本発明の免震装置5を設ける。該免震装置5は、図6に示す如く、立体倉庫100に備えられる柱1の同一高さ位置に設けられる。前記免震装置5は、該免震装置5より上部の立体倉庫100全体がロッキングする挙動を発生させないために、上から1/3〜1/2程度の高さ位置に設置することが好ましい。このように、前記免震装置5を立体倉庫100の上部に設置しても、免震の効果により、免震装置5より上側の揺れが小さくなることで、結果的に免震装置5より下側の構造物の揺れも小さくなることが本発明者等の研究により判明している。
【0018】
本実施例の場合、前記免震装置5は、図1図4に示す如く、免震柱6と、上側拘束部材7と、下側拘束部材8と、連結体9とを備えている。
【0019】
前記免震柱6は、上側部材としての水平フランジ1Aと下側部材としての水平フランジ1Bとの間に、前記上側拘束部材7と下側拘束部材8とを介して傾斜自在に配設されている。前記免震柱6の上下端部には、張出部としてのフランジ10及びフランジ11が形成されている。前記上側部材としての水平フランジ1Aは、免震柱6の上方に位置する柱1の下端部に設けられ、前記下側部材としての水平フランジ1Bは、免震柱6の下方に位置する柱1の上端部に設けられている。尚、前記柱1及び免震柱6は、水平断面が矩形形状を有する中空の角型鋼材であるが、該角型鋼材に限定されるものではなく、H型鋼材、I型鋼材、Z型鋼材、円筒型鋼材であっても良い。
【0020】
前記上側拘束部材7は、前記免震柱6の上端部に形成された張出部としてのフランジ10が前記上側部材としての水平フランジ1Aに対して水平方向へ移動しないように拘束するためのものである。又、前記上側拘束部材7は、免震柱6の傾斜角度を制限するストッパ部7aを水平拘束部7bの下端に形成することにより、前記免震柱6が傾斜した際に該免震柱6が倒れずに自重で元の位置に復帰できる限界傾斜角度位置より傾斜角度が小さい位置で前記フランジ10を拘束するようにしてある。
【0021】
前記下側拘束部材8は、前記免震柱6の下端部に形成された張出部としてのフランジ11が前記下側部材としての水平フランジ1Bに対して水平方向へ移動しないように拘束するためのものである。又、前記下側拘束部材8は、免震柱6の傾斜角度を制限するストッパ部8aを水平拘束部8bの上端に形成することにより、前記免震柱6が傾斜した際に該免震柱6が倒れずに自重で元の位置に復帰できる限界傾斜角度位置より傾斜角度が小さい位置で前記フランジ11を拘束するようにしてある。
【0022】
前記連結体9は、減衰要素の機能を有する油圧ダンパ等の流体圧ダンパ9aであって、前記水平フランジ1B,1B下面をつなぐように延びる下側部材としての梁2と免震柱6との間に介装されている。前記連結体9は、前記流体圧ダンパ9aの代わりに、図5に示す如く、バネ要素の機能を有するコイルバネ9bとしても良い。尚、前記連結体9として、図1に示す流体圧ダンパ9a及び図5に示すコイルバネ9bの両方を用いるようにしても良い。又、前記下側部材としての梁2の代わりに、前記水平フランジ1A,1A上面をつなぐように延びる上側部材としての梁2と免震柱6との間に、減衰要素とバネ要素の少なくとも一方の機能を有する連結体9を介装しても良い。
【0023】
前記免震柱6の相互間は、図2及び図3に示す如く、前記免震柱6の長手方向と直交する方向へ延びる固定連結材12によって固定し、前記免震柱6と前記固定連結材12とによって形成される面に直交する方向(立体倉庫100の幅方向)へは前記免震柱6の傾斜が許容され、前記免震柱6と前記固定連結材12とによって形成される面(立体倉庫100の奥行方向)に沿う方向へは前記免震柱6の傾斜が阻止されるよう構成してある。
【0024】
前記免震柱6の上端部に形成された張出部としてのフランジ10の上端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、図1に示す如く、中央側から幅端側へ向けて下り勾配となるテーパ面10aが形成され、前記免震柱6の下端部に形成された張出部としてのフランジ11の下端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて上り勾配となるテーパ面11aが形成されるようにしてある。
【0025】
前記免震柱6のフランジ10及びフランジ11は、図3に示す如く、長辺と短辺を有する長方形とし、長辺を立体倉庫100の幅方向に沿わせ、短辺を立体倉庫100の奥行方向に沿わせるように配置してある。
【0026】
尚、本実施例の場合、前記免震柱6の上下端部に形成された張出部としてのフランジ10,11の上下端面における傾斜が許容される方向(前記長辺の方向)を立体倉庫100の幅方向と一致させ、前記免震柱6の上下端部に形成された張出部としてのフランジ10,11の上下端面における傾斜が阻止される方向(前記短辺の方向で且つ前記固定連結材12の延びる方向)を立体倉庫100の奥行方向と一致させるようにしてある。
【0027】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0028】
地震が発生していない平常時には、図1に示す如く、免震柱6は鉛直に保持され、該免震柱6の上側の柱1に掛かる荷重は、水平フランジ1A及び上側拘束部材7から、上下両端にフランジ10,11が設けられた免震柱6と、下側拘束部材8及び水平フランジ1Bとを介して下側の柱1に伝達される。但し、図1において、中小規模の地震の発生により柱1に水平方向の比較的小さい加速度の揺れが発生した場合にも、前記免震柱6は鉛直に保持される。
【0029】
即ち、柱1に掛る荷重によって、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bに対し免震柱6のフランジ10,11は上側拘束部材7及び下側拘束部材8を介して圧着される。このとき、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bには、免震柱6のフランジ10,11の外周を取り囲む上側拘束部材7及び下側拘束部材8が設けられているので、免震柱6が水平方向へ移動することは防止される。従って、中小規模の地震によって、水平方向に比較的小さい加速度の揺れが発生しても、免震柱6は鉛直に保持される。これは、水平方向の加速度により免震柱6を傾けようとするモーメントが、免震柱6によって支持されている鉛直方向の荷重により免震柱6を鉛直状態に保持しようとするモーメントを超えない限り、免震柱6は傾くことができないトリガ機能によるものである。
【0030】
一方、大規模な地震の発生によって、水平方向へ大きな加速度の揺れが発生した場合、上側の柱1が慣性によりその場にとどまろうとするのに対し、下側の柱1は水平方向へ相対移動した状態となる。このとき、免震柱6のフランジ11は、下側拘束部材8に当接して水平方向へ移動することができない。しかし、前記立体倉庫100の幅方向におけるフランジ11の下端面の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて上り勾配となるテーパ面11aが形成されている。このため、前記免震柱6のフランジ10,11にトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合には、図4に示す如く、前記免震柱6は、フランジ11の下端面とテーパ面11aとの境界となる部分の辺と、フランジ10の上端面とテーパ面10aとの境界となる部分の辺とを支点として傾きを開始する。このように免震柱6が傾く免震の効果により、水平左右方向への大きな地震力の伝達が低減される。
【0031】
ここで、前記上側拘束部材7の水平拘束部7b及び下側拘束部材8の水平拘束部8bには、ストッパ部7a及びストッパ部8aが形成されているため、前記免震柱6が過大に傾斜しようとしても、前記ストッパ部7a及びストッパ部8aにフランジ10,11が接触することにより、免震柱6が限界傾斜角度位置を超えて傾斜することが阻止される。この結果、免震柱6が倒れる心配はなく、元の位置に確実に復帰可能となる。
【0032】
しかも、前記水平フランジ1B,1B下面をつなぐように延びる下側部材としての梁2と免震柱6との間には、連結体9として流体圧ダンパ9aが介装されている。このため、大規模な地震発生時に、前記免震柱6の傾斜速度を低下させて該免震柱6の傾斜角を抑制することが可能となり、前記免震柱6が傾斜状態から直立状態に復元する際、フランジ10,11が上側拘束部材7及び下側拘束部材8に接触する荷重を低減することが可能となる。更に、前記免震柱6の傾斜角が抑制されることに伴い、ストッパ部7a及びストッパ部8aへのフランジ10,11の接触を低減することもできる。
【0033】
又、前記水平フランジ1B,1B下面をつなぐように延びる下側部材としての梁2と免震柱6との間には、図5に示す如く、連結体9として流体圧ダンパ9aの代わりにコイルバネ9bを介装することもできる。前記連結体9としてコイルバネ9bを用いても、大規模な地震発生時には、前記免震柱6の傾斜速度を低下させて該免震柱6の傾斜角を抑制することが可能となり、前記ストッパ部7a及びストッパ部8aへのフランジ10,11の接触を低減し且つ前記免震柱6を傾斜状態から積極的に直立状態に復元させることが可能となる。
【0034】
一方、前記免震柱6の相互間は、図2及び図3に示す如く、前記免震柱6の長手方向と直交する方向へ延びる固定連結材12によって固定し、該固定連結材12の延びる方向を立体倉庫100の奥行方向と一致させているため、免震柱6が傾斜する方向を立体倉庫100の幅方向のみに限定することができ、免震柱6が振れ回るような挙動を阻止して動作を安定化させることができる。
【0035】
加えて、前記免震柱6の上下端部に形成された張出部としてのフランジ10,11の上下端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、図1に示す如く、中央側から幅端側へ向けてテーパ面10a,11aが形成されているため、免震柱6が傾斜する方向を立体倉庫100の幅方向のみに限定することをより的確に行えるようになり、免震挙動を更に安定化させることができる。
【0036】
尚、前記立体倉庫100は、図6(a)からも明らかなように、スタッカクレーン4を挟んで幅が狭く且つ上方へ高く延びる形状となっており、大規模な地震発生時には、その幅方向において揺れが生じやすいが、立体倉庫100の奥行方向においては、図6(b)に示す如く、横に長く延びる形状となっており、揺れは幅方向と比較して生じにくい。このため、立体倉庫100の幅方向において免震柱6の傾斜を許容し、立体倉庫100の奥行方向において免震柱6の傾斜を阻止することにより、免震を行う方向を水平一軸方向へ限定することは有効となる。
【0037】
又、前記免震装置5は、免震する構造物としての立体倉庫100の垂直方向に複数段配置するようにしても良い。このように配置すると、単段で免震する場合と比較し、より大きな揺れを吸収できる。
【0038】
こうして、簡単な構成で構造物としての立体倉庫100に作用する揺れを免震でき且つ免震柱6の過大な傾斜を確実に防止し得る。
【0039】
そして、本実施例においては、前記免震柱6の相互間を前記免震柱6の長手方向と直交する方向へ延びて固定する固定連結材12を備え、前記免震柱6と前記固定連結材12とによって形成される面に直交する方向へは前記免震柱6の傾斜が許容され、前記免震柱6と前記固定連結材12とによって形成される面に沿う方向へは前記免震柱6の傾斜が阻止されるよう構成してある。このように構成すると、免震柱6が傾斜する方向を特定の方向(例えば、立体倉庫100の幅方向)のみに限定することができ、免震柱6が振れ回るような挙動を阻止して動作を安定化させることができる。
【0040】
又、前記免震柱6の上端部に形成された張出部としてのフランジ10の上端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて下り勾配となるテーパ面10aが形成され、前記免震柱6の下端部に形成された張出部としてのフランジ11の下端面における傾斜が許容される方向の両幅端部には、中央側から幅端側へ向けて上り勾配となるテーパ面11aが形成される。このように構成すると、免震柱6が傾斜する方向を特定の方向(例えば、立体倉庫100の幅方向)のみに限定することをより的確に行えるようになり、免震挙動を更に安定化させることができる。
【0041】
更に又、前記連結体9を、流体圧ダンパ9aとすると、大規模な地震発生時に、前記免震柱6の傾斜速度を低下させて該免震柱6の傾斜角を抑制することが可能となり、前記免震柱6が傾斜状態から直立状態に復元する際、フランジ10,11が上側拘束部材7及び下側拘束部材8に接触する荷重を低減することが可能となる。
【0042】
又、前記連結体9を、コイルバネ9bとすると、大規模な地震発生時には、前記免震柱6の傾斜速度を低下させて該免震柱6の傾斜角を抑制することが可能となり、前記上側拘束部材7及び下側拘束部材8へのフランジ10,11の接触を低減し且つ前記免震柱6を傾斜状態から積極的に直立状態に復元させることが可能となる。
【0043】
尚、本発明の免震装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1A 水平フランジ(上側部材)
1B 水平フランジ(下側部材)
2 梁(上側部材、下側部材)
5 免震装置
6 免震柱
7 上側拘束部材
8 下側拘束部材
9 連結体
9a 流体圧ダンパ
9b コイルバネ
10 フランジ(張出部)
10a テーパ面
11 フランジ(張出部)
11a テーパ面
12 固定連結材
図1
図2
図3
図4
図5
図6