(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717095
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】端子台構造
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20200622BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20200622BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
H01R9/00 A
H01R9/00 Z
H05K1/02 N
H05K1/18 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-143668(P2016-143668)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-14268(P2018-14268A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】秋田 義文
(72)【発明者】
【氏名】伊豆原 修
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−283221(JP,A)
【文献】
特開2014−096930(JP,A)
【文献】
特開平09−213387(JP,A)
【文献】
実開昭56−104072(JP,U)
【文献】
実開平02−065877(JP,U)
【文献】
実開昭57−197178(JP,U)
【文献】
特開2014−146545(JP,A)
【文献】
国際公開第01/099237(WO,A1)
【文献】
特開平07−249844(JP,A)
【文献】
特開2010−004341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H05K 1/02
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた端子台と、
前記端子台にねじで締結される複数の被固定端子と、
を備える端子台構造であって、
前記端子台は、
前記基板に固定される基部と、
前記基部から前記被固定端子に対応して互いに独立して延在する複数の取付部と、
を有し、
前記基板の一面には、途中にコンデンサが実装された接地用配線パターンが形成されており、
前記端子台は、前記接地用配線パターンに前記基部が接合されることによって前記接地用配線パターンに電気的に接続された状態で前記基板の一面に固定されており、
前記取付部に設けた雌ねじ部に螺合するねじにより被固定端子同士が当該取付部より前記基板側で前記基部により互いに導通していることを特徴とする端子台構造。
【請求項2】
前記端子台は、1枚の導電板で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子台構造。
【請求項3】
前記端子台の前記基部は、前記基板の接地用配線パターンに、はんだで接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の端子台構造。
【請求項4】
前記端子台は、突起を有し、前記突起が前記基板の貫通孔に挿入された状態で前記基板に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子台構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に設けられた端子台に複数の被固定端子がねじ締結される端子台構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のプリント基板実装端子台においては、
図5に示すように、桁部102と脚部103とを備える端子台(端子金具)100を含み、桁部102は電線が取り付けられる電線接続部101を複数有し、脚部103は桁部102を支持する。プリント基板110は脚部103がはんだ付けされる第1の導体パターン111を有する。プリント基板110に実装された端子台100の電線接続部101に取り付けられた電線同士を電気的に接続する。プリント基板110は、第2の導体パターン112と、第2の導体パターン112にはんだ付けされた温度検知素子120と、温度検知素子120の測定結果を外部へ出力するコネクタ130を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−146545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図5において接地用配線パターンの途中にコンデンサ140を実装して電線としてのハーネスのねじ締結箇所でノイズ改善を図ったときにおいて、
図5に一点鎖線で示す電流経路で電流が流れ、接地ラインに設けた二点鎖線で示すノイズ除去回路を用いてコンデンサ140によるノイズ除去が可能であるが、端子台100の一部がノイズ伝搬経路を構成するため抵抗成分が大きくなり、ノイズ改善を図る上での妨げとなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、基板に設けられた端子台に複数の被固定端子がねじ締結される構成においてノイズ改善を図ることができる端子台構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、基板と、前記基板に設けられた端子台と、前記端子台にねじで締結される複数の被固定端子と、を備える端子台構造であって
、前記端子台は
、前記基板に固定される基部と、前記基部から前記被固定端子に対応して互いに独立して延在する複数の取付部と、を有し、
前記基板の一面には、途中にコンデンサが実装された接地用配線パターンが形成されており、前記端子台は、前記接地用配線パターンに前記基部が接合されることによって前記接地用配線パターンに電気的に接続された状態で前記基板の一面に固定されており、前記取付部に設けた雌ねじ部に螺合するねじにより被固定端子同士が当該取付部より前記基板側で前記基部により互いに導通していることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、接地用配線パターンの途中にコンデンサが実装された基板に設けられる端子台は、基部が、基板の接地用配線パターンに電気的に接続された状態で基板に固定され、複数の取付部が、基部から被固定端子に対応して互いに独立して延在し、取付部に設けた雌ねじ部に螺合するねじにより被固定端子同士が当該取付部より基板側で基部により互いに導通している。よって、被固定端子同士が基部により互いに導通しているので、電流が基板上を流れ、この電流経路に繋がるノイズ伝搬経路での抵抗成分が小さくなる。その結果、基板に設けられた端子台に複数の被固定端子がねじ締結される構成においてノイズ改善を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の端子台構造において、前記端子台は、1枚の導電板で構成されているとよい。
請求項3に記載のように、請求項1または2に記載の端子台構造において、前記端子台の前記基部は、前記基板の接地用配線パターンに、はんだで接合されているとよい。
【0009】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子台構造において、前記端子台は、突起を有し、前記突起が前記基板の貫通孔に挿入された状態で前記基板に固定されるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板に設けられた端子台に複数の被固定端子がねじ締結される構成においてノイズ改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は実施形態における端子台構造の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は端子台構造の下面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0013】
図1(a),(b),(c)に示すように、端子台構造10は、基板20と、基板20に設けられた端子台40と、端子台40にねじ70,80で締結される複数の被固定端子50,60と、を備える。被固定端子50は、ハーネス51の端部に設けられた丸端子である。被固定端子60は、ハーネス61の端部に設けられた丸端子である。ハーネス51,61を連結するために端子台40が用いられる。
【0014】
基板20は、水平面(X−Y面)に配置される。基板20は、絶縁基板21上に配線パターンが形成されている。
図1(a),(b)及び
図2に示すように、絶縁基板21の上面には接地用配線パターン22,23が形成されている。接地用配線パターン22の一端部と接地用配線パターン23の一端部とは離間している。接地用配線パターン23の他端部はアースされている。詳しくは、ボディアースされたケースに接続されている。
【0015】
基板20にはコンデンサ25が実装されている。詳しくは、接地用配線パターン22の一端部にチップ型のコンデンサ25の一方の電極が、はんだ付けされるとともに、接地用配線パターン23の一端部にチップ型のコンデンサ25の他方の電極が、はんだ付けされている。このように、基板20は、接地用配線パターン22,23の途中にコンデンサ25が実装されている。コンデンサ25は、ハーネス51,61のねじ締結箇所でノイズ改善を図るためのものである。
【0016】
端子台40は、1枚の導電板(例えば銅板)で構成されている。
図3(a),(b)は端子台40の展開図である。
図3(a)において折線L1,L2,L3,L4で90°折り曲げられて屈曲形成される。
【0017】
端子台40は、基部41と、複数の取付部42,43と、を有する。基部41は平板状をなし、基板20の接地用配線パターン22の他端側に、リフローはんだ付けされており、はんだ24により接合されている。このように表面実装技術を用いて端子台40が基板20の上面に固定されている。基部41は、基板20の接地用配線パターン22に電気的に接続された状態で基板20に固定されている。複数の取付部42,43は、基部41から被固定端子50,60に対応して互いに独立して延在(立設)する。取付部42は立設部42aと水平部42bを有する。取付部43は立設部43aと水平部43bを有する。
【0018】
基部41は
図3(a)に示すように、長方形状をなしている。
図2に示すように、基部41は、基板20の上面に形成された接地用配線パターン22の上面に長辺がX方向に延びるように配置され、接地用配線パターン22に、はんだ付けされている。基部41における長辺での一方の端部から取付部42の立設部42aが上方(Z方向)に延びるとともに取付部42の水平部42bは所定の高さにおいて基部41と対向するようにX方向に延びている。基部41における長辺での他方の端部から取付部43の立設部43aが上方(Z方向)に延びるとともに取付部43の水平部43bは所定の高さにおいて基部41と対向するようにX方向に延びている。
【0019】
取付部42において、水平方向に延びる平板状の水平部42bに、バーリング部44が形成されている。円筒状のバーリング部44は、水平部42bの中央部において下方向(Z方向)に突出している。円筒状のバーリング部44の内周面には雌ねじ部46が形成されている。雌ねじ部46には、ねじ70が螺合する。同様に、取付部43において、水平方向に延びる平板状の水平部43bに、バーリング部45が形成されている。円筒状のバーリング部45は、水平部43bの中央部において下方向(Z方向)に突出している。円筒状のバーリング部45の内周面には雌ねじ部47が形成されている。雌ねじ部47には、ねじ80が螺合する。このように、複数の取付部42,43は、それぞれ、雌ねじ部(46,47)を有する。
【0020】
図1(c)及び
図3(a)に示すように、端子台40は、突起48a,48b,48c,48dを有する。突起48a,48bは立設部42aに形成され、折線L1で折り曲げられると基部41の下面より絶縁基板21側に突出するように形成されている。同様に突起48c,48dは立設部43aに形成され、折線L2で折り曲げられると基部41の下面より絶縁基板21側に突出するように形成されている。
図4に示すように、基板20には、端子台40の突起48a,48b,48c,48dに対応する貫通孔26a,26b,26c,26dが形成されている。突起48a,48b,48c,48dが、基板20の貫通孔26a,26b,26c,26dに挿入され、この状態で端子台40が基板20に固定されている。
図4において、はんだペースト塗布領域Z1は貫通孔26a,26b,26c,26dを含み、リフローはんだ付け後において貫通孔26a,26b,26c,26dには、はんだが充填される。
【0021】
端子台40の水平部42bの上面に平板状の被固定端子(丸端子)50が面接触するように配置されている。ねじ70は被固定端子50を貫通して端子台40の雌ねじ部46に螺合する。被固定端子50は、ねじ70により端子台40の取付部42に固定される。同様に、端子台40の水平部43bの上面に平板状の被固定端子(丸端子)60が面接触するように配置されている。ねじ80は被固定端子60を貫通して端子台40の雌ねじ部47に螺合する。被固定端子60は、ねじ80により端子台40の取付部43に固定される。取付部42,43に設けた雌ねじ部46,47に螺合するねじ70,80により被固定端子50,60同士が当該取付部42,43より基板20側で基部41により互いに導通している。
【0022】
次に、作用について説明する。
基板20に設けられた端子台40に対し被固定端子50,60を組み付ける際の手順について説明する。
【0023】
端子台40が、基板20の接地用配線パターン22に電気的に接続された状態で基板20に固定されている。そして、被固定端子50を貫通するねじ70を取付部42の雌ねじ部46に螺入することにより被固定端子50を取付部42にねじ締結する。また、被固定端子60を貫通するねじ80を取付部43の雌ねじ部47に螺入することにより被固定端子60を取付部43にねじ締結する。
【0024】
この状態では、被固定端子50,60同士が取付部42,43より基板20側で基部41により互いに導通している。
ハーネス51,61から端子台40に電流が流れる際に次のようになる。
【0025】
図1(b)において一点鎖線で示す電流経路で電流が流れる。つまり、ハーネス51から端子台40の取付部42に流れ、取付部42から基部41に流れ、基部41から取付部43に流れ、取付部43からハーネス61に流れる。また、接地用配線パターン22,23の途中にコンデンサ25が実装されており、接地ラインに設けた二点鎖線で示すノイズ除去回路を用いてコンデンサ25にノイズが放出される。このとき、ノイズ伝搬経路での抵抗成分が
図5の場合よりも小さくなる。
【0026】
つまり、
図5の場合には、端子台100の一部がノイズ伝搬経路を構成するため抵抗成分が大きくなり(端子台100でのインピーダンスが高くなり)、ノイズ改善を図る上での妨げとなってしまう。本実施形態では、電流が端子台40の基部41を流れ、基部41にノイズ伝搬経路となる接地用配線パターン22が繋がっており、端子台40でノイズ伝搬経路が構成されておらず抵抗成分が小さい(端子台40のインピーダンスが最小となる)。ノイズ伝搬経路での抵抗成分が小さいのでノイズ改善効果が高いものとなる。そのため、ノイズ改善用部品であるコンデンサの数を減らすことが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0027】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)端子台構造10は、基板20と、基板20に設けられた端子台40と、端子台40にねじ70,80で締結される複数の被固定端子50,60と、を備える。基板20は、接地用配線パターン22,23の途中にコンデンサ25が実装されている。端子台40は、基板20の接地用配線パターン22に電気的に接続された状態で基板20に固定される基部41と、基部41から被固定端子50,60に対応して互いに独立して延在する複数の取付部42,43と、を有する。取付部42,43に設けた雌ねじ部46,47に螺合するねじ70,80により被固定端子50,60同士が当該取付部42,43より基板20側で基部41により互いに導通している。よって、被固定端子50,60同士が基部41により互いに導通しているので、電流が基板20上を流れ、この電流経路に繋がるノイズ伝搬経路での抵抗成分が小さくなる。その結果、基板20に設けられた端子台40に複数の被固定端子50,60がねじ締結される構成においてノイズ改善を図ることができる。
【0028】
(2)端子台40は、1枚の導電板で構成されているので、端子台40を容易に形成することができる。
(3)端子台40の基部41は、基板20の接地用配線パターン22に、はんだ24で接合されているので、一般的に用いられる部品実装技術により製造が容易となる。
【0029】
(4)端子台40は、突起48a,48b,48c,48dを有し、突起48a,48b,48c,48dが基板20の貫通孔26a,26b,26c,26dに挿入された状態で基板20に固定されるので、リフローはんだ付けの際の端子台40の位置決めが容易となるとともに、端子台40はねじ締結の際に回転力を受けるが回り止め効果がある。
【0030】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・端子台40の雌ねじ部は、バーリング部44,45の内周面に形成した雌ねじ部46,47であったが、これに限らない。例えば、ナットを設けてナット内周面で雌ねじ部を構成してもよい。
【0031】
・端子台にねじで締結される複数の被固定端子の数は「2」であったが、端子台にねじで締結される複数の被固定端子の数は「3」以上であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
20…基板、22,23…接地用配線パターン、24…はんだ、25…コンデンサ、26a,26b,26c,26d…貫通孔、40…端子台、41…基部、42,43…取付部、46,47…雌ねじ部、48a,48b,48c,48d…突起、50,60…被固定端子、70,80…ねじ。