(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザ照射部は、前記第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザよりも低い強度のレーザを前記第2の媒質蒸気発生位置に照射する請求項1に記載のプラズマ光源。
前記レーザ照射部は、前記第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、前記第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けて前記レーザを出射する請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ光源。
前記第2の媒質蒸気発生位置に照射される前記レーザの光路長が、前記第1の媒質蒸気発生位置に照射される前記レーザの光路長よりも長い請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ光源。
前記軸線が延在する方向と直交する方向において、前記軸線と前記第2の媒質蒸気発生位置との距離は、前記軸線と前記第1の媒質蒸気発生位置との距離よりも長い請求項1〜5の何れか一項に記載のプラズマ光源。
前記第2の媒質蒸気発生工程は、前記第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザよりも低い強度のレーザを前記第2の媒質蒸気発生位置に照射する請求項9に記載の極端紫外光の発光方法。
前記第2の媒質蒸気発生工程では、フィルタを透過させて前記レーザの強度を低下させて、強度が低下した前記レーザを前記第2の媒質蒸気発生位置に照射する請求項9又は10に記載の極端紫外光の発光方法。
前記第2の媒質蒸気発生工程では、前記第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、前記第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けて前記レーザを出射する請求項9〜11の何れか一項に記載の極端紫外光の発光方法。
前記第2の媒質蒸気発生工程では、前記第2の媒質蒸気発生位置に照射される前記レーザの光路長を、前記第1の媒質蒸気発生位置に照射される前記レーザの光路長よりも長くして、前記レーザを前記第2の媒質蒸気発生位置に照射する請求項9〜12の何れか一項に記載の極端紫外光の発光方法。
前記第2の媒質蒸気発生工程では、前記中心電極の軸線が延在する方向と直交する方向において、前記第1の媒質蒸気発生位置よりも、前記軸線から離れた位置に設けられた前記第2の媒質蒸気発生位置に、前記レーザを照射する請求項9〜13の何れか一項に記載の極端紫外光の発光方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラズマ媒質の蒸気(媒質蒸気)は、固体又は液体のプラズマ媒質にレーザ光が照射されることで、プラズマ媒質から蒸発して発生する。中心電極及び外部電極を備える同軸状電極は、プラズマを発生させるプラズマ源として機能する。中心電極と外部電極との間に媒質蒸気が供給されて、発生した初期プラズマは、電磁力によって中心電極の先端(前側)に移動して収束し高温・高密度状態になる。
【0005】
特許文献1に記載の従来技術は、対向型プラズマフォーカス方式が適用され、同軸状電極が中心電極の軸線方向に対向して配置されている。この特許文献1では、両側から中心電極の先端に到達したプラズマを衝突させて、プラズマをより高温・高密度の状態として、極端紫外光を発生させている。従来技術では、レーザ強度を上げることで、媒質蒸気の発生量を増加させて、中心電極と外部電極との間に供給される媒質蒸気の供給量を増やし、極端紫外光の発光量を増大させようとしていた。しかしながら、単に、媒質蒸気の供給量を増加させても、初期放電の開始のタイミングが早まるだけであり、極端紫外光の発光量を調整することは困難であった。
【0006】
本発明は、媒質蒸気の分布を調整して、極端紫外光の発光量を増大することが可能なプラズマ光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ光源は、中央面を挟んで対向する一対の同軸状電極を備えたプラズマ光源であって、同軸状電極は、中央面と直交する方向に延在する中心電極と、中心電極の軸線を中心とする仮想円の周方向に離間し、中央面に向かって延在する複数の外部電極と、を備え、プラズマ光源は、周方向に隣り合う外部電極を結ぶ仮想線よりも外側で、プラズマ媒質を保持するプラズマ媒質保持部と、プラズマ媒質保持部に保持されたプラズマ媒質にレーザを照射するレーザ照射部と、を備え、レーザが照射されてプラズマ媒質を蒸発させる媒質蒸気発生位置が、同軸状電極に対して複数設けられ、複数の媒質蒸気発生位置は、中心電極と外部電極との間で放電が開始される放電開始位置に供給される媒質蒸気を発生させる第1の媒質蒸気発生位置と、放電開始位置よりも中央面側である前側に供給される媒質蒸気を発生させる第2の媒質蒸気発生位置と、を含み、放電開始時において、放電開始位置における媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気を、放電開始位置よりも前側に供給する。
【0008】
このプラズマ光源では、一つの同軸状電極に対して、軸線方向において異なる位置に複数の媒質蒸気発生位置を設けることができる。第1の媒質蒸気発生位置にレーザが照射されて発生した媒質蒸気は、放電開始位置に供給される。第2の媒質蒸気発生位置にレーザが照射された発生した媒質蒸気は、放電開始位置よりも前側に供給されて、放電開始時において、放電開始位置における媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気を分布させる。これにより、媒質蒸気が最大の濃度となる放電開始位置で、媒質蒸気の濃度が放電開始の閾値に達すると初期放電が開始され初期プラズマが発生する。そして、放電開始位置で発生した初期プラズマが前側に移動する際に、放電開始位置よりも前側に、より低い濃度の媒質蒸気が分布しているので、これらの媒質蒸気が初期プラズマに更に供給されてエネルギが増大され、極端紫外光の発光量を増大させる。
【0009】
また、レーザ照射部は、第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザよりも低い強度のレーザを第2の媒質蒸気発生位置に照射する構成でもよい。レーザの強度が高いほど、媒質蒸気の発生量を高くすることができ、レーザの強度が低いほど、媒質蒸気の発生量を低くすることができる。これにより、第2の媒質蒸気発生位置における媒質蒸気の発生量を、第1の媒質蒸気発生位置における媒質蒸気の発生量よりも低くすることができる。そのため、放電開始位置よりも前側に供給される媒質蒸気の量の少なくして、放電開始位置よりも前側の媒質蒸気の濃度を、放電開始位置よりも低くすることができる。
【0010】
また、プラズマ光源は、第2の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザの光路上に配置されて、レーザの強度を低下させるフィルタを備える構成でもよい。この構成のプラズマ光源によれば、フィルタを透過させることで、レーザの強度を低下させて、第2の媒質蒸気発生位置から発生する媒質蒸気の発生量を低くして、放電開始位置よりも前側の媒質蒸気の濃度を、放電開始位置よりも低くすることができる。
【0011】
また、レーザ照射部は、第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けてレーザを出射する構成でもよい。レーザが媒質に照射されると、まず、低い濃度の媒質蒸気が発生し、時間の経過とともに媒質蒸気の濃度が上昇する。そのため、中心電極と外部電極との間に、まず、低い濃度の媒質蒸気が到達し、時間の経過ともに、高い濃度の媒質蒸気が到達する。第2の媒質蒸気発生位置では、第1の媒質蒸気発生位置よりも遅れてレーザが到達するので、第2の媒質蒸気発生位置で発生する媒質蒸気の濃度は、第1の媒質蒸気発生位置で発生する媒質蒸気の濃度より遅れて上昇する。その結果、放電開始位置の前側において、放電開始位置よりも媒質蒸気の濃度を低くすることができる。
【0012】
また、第2の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザの光路長が、第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザの光路長よりも長い構成でもよい。この構成によれば、光路長を変えることで、第2の媒質蒸気発生位置におけるレーザの到達時刻を、第1の媒質蒸気発生位置におけるレーザの到達時刻よりも遅らせることができる。これにより、放電開始位置の前側において、放電開始位置よりも媒質蒸気の濃度を低くすることができる。
【0013】
また、軸線が延在する方向と直交する方向において、軸線と第2の媒質蒸気発生位置との距離は、軸線と第1の媒質蒸気発生位置との距離よりも長い構成でもよい。これにより、第1の媒質蒸気発生位置で発生した媒質蒸気が先に中心電極と外部電極との間に到達し、第2の媒質蒸気発生位置で発生した媒質蒸気が、その後、中心電極と外部電極との間に到達する。媒質蒸気の濃度は時間の経過に伴って上昇するので、放電開始位置よりも前側において、媒質蒸気の濃度を放電開始位置よりも低くすることができる。
【0014】
また、プラズマ光源は、複数のレーザ照射部を備え、複数のレーザ照射部は、第1の媒質蒸気発生位置にレーザを照射する第1のレーザ照射部と、第2の媒質蒸気発生位置にレーザを照射する第2のレーザ照射部と、を含む構成でもよい。これにより、照射対象となる媒質蒸気発生位置に応じて、異なる設定のレーザ照射部を設けることができる。たとえば、レーザ照射部ごとにレーザの強度を変えたり、レーザの照射タイミングを変えたりすることができる。また、レーザ照射部ごとに、レーザのパルス幅、周波数などを変えてもよい。
【0015】
また、プラズマ光源は、複数のプラズマ媒質保持部を備え、複数のプラズマ媒質保持部は、第1の媒質蒸気発生位置が設定されるプラズマ媒質を保持する第1のプラズマ媒質保持部と、第2の媒質蒸気発生位置が設定されるプラズマ媒質を保持する第2のプラズマ媒質保持部と、を含む構成でもよい。これにより、異なるプラズマ媒質保持部に保持されたプラズマ媒質に対して、それぞれ媒質蒸気発生位置を設定することができる。1個のプラズマ媒質に対して、第1の媒質蒸気発生位置と第2の媒質蒸気発生位置との両方を設定する必要がない。
【0016】
本発明の極端紫外光の発光方法は、中心電極と中心電極の周囲に配置された外部電極との間に、電位差を発生させる電位差発生工程と、外部電極の外側に配置されたプラズマ媒質にレーザを照射して、プラズマ媒質を蒸発させて媒質蒸気を発生させ、中心電極と外部電極との間に媒質蒸気を供給する媒質蒸気供給工程とを備え、媒質蒸気供給工程は、第1の媒質蒸気発生位置にレーザを照射して、放電開始位置に供給される媒質蒸気を発生させる第1の媒質蒸気発生工程と、第1の媒質蒸気発生位置とは異なる第2の媒質蒸気発生位置にレーザを照射して、放電開始位置によりも中心電極の先端部側である前側に供給される媒質蒸気を発生させる第2の媒質蒸気発生工程と、を含み、第2の媒質蒸気発生工程では、放電開始時において、放電開始位置における媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気を、放電開始位置よりも前側に供給する。
【0017】
この極端紫外光の発光方法では、一つの同軸状電極に対して、軸線方向において異なる位置に複数の媒質蒸気発生位置を設け、第1の媒質蒸気発生位置にレーザを照射して発生した媒質蒸気を放電開始位置に供給し、第2の媒質蒸気発生位置にレーザを照射して発生した媒質蒸気を、放電開始位置よりも前側に供給することができる。そして、放電開始時において、放電開始位置より前側に、放電開始位置の媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気を分布させる。これにより、媒質蒸気が最大の濃度となる放電開始位置で、媒質蒸気の濃度が放電開始の閾値に達すると初期放電が開始され初期プラズマを発生させる。放電開始位置で発生した初期プラズマが前側に移動する際に、放電開始位置よりも前側に分布している媒質蒸気が初期プラズマに供給されて、初期プラズマのエネルギが増大し、極端紫外光の発光量が増大する。
【0018】
また、第2の媒質蒸気発生工程は、第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザよりも低い強度のレーザを第2の媒質蒸気発生位置に照射してもよい。レーザの強度が高いほど、媒質蒸気の発生量を高くすることができ、レーザの強度が低いほど、媒質蒸気の発生量を低くすることができる。これにより、第2の媒質蒸気発生位置における媒質蒸気の発生量を、第1の媒質蒸気発生位置における媒質蒸気の発生量よりも低くすることができる。そのため、放電開始位置よりも前側に供給される媒質蒸気の量の少なくして、放電開始位置よりも前側の媒質蒸気の濃度を、放電開始位置よりも低くすることができる。
【0019】
また、第2の媒質蒸気発生工程では、フィルタを透過させてレーザの強度を低下させて、強度が低下したレーザを第2の媒質蒸気発生位置に照射してもよい。これにより、フィルタを透過させることで、レーザの強度を低下させて、第2の媒質蒸気発生位置から発生する媒質蒸気の発生量を低くして、放電開始位置よりも前側の媒質蒸気の濃度を、放電開始位置よりも低くすることができる。
【0020】
また、第2の媒質蒸気発生工程では、第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けてレーザを出射することができる。レーザが媒質に照射されると、まず、低い濃度の媒質蒸気が発生し、時間の経過とともに媒質蒸気の濃度が上昇する。そのため、中心電極と外部電極との間に、まず、低い濃度の媒質蒸気が到達し、時間の経過ともに、高い濃度の媒質蒸気が到達する。第2の媒質蒸気発生位置では、第1の媒質蒸気発生位置よりも遅れてレーザが到達するので、第2の媒質蒸気発生位置で発生する媒質蒸気の濃度は、第1の媒質蒸気発生位置で発生する媒質蒸気の濃度より遅れて上昇する。その結果、放電開始位置の前側において、放電開始位置よりも媒質蒸気の濃度を低くすることができる。
【0021】
また、第2の媒質蒸気発生工程では、第2の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザの光路長を、第1の媒質蒸気発生位置に照射されるレーザの光路長よりも長くして、レーザを第2の媒質蒸気発生位置に照射してもよい。このように光路長を変えることで、第2の媒質蒸気発生位置におけるレーザの到達時刻を、第2の媒質蒸気発生位置におけるレーザの到達時刻よりも遅らせることができる。これにより、放電開始位置の前側において、放電開始位置よりも媒質蒸気の濃度を低くすることができる。
【0022】
また、第2の媒質蒸気発生工程では、中心電極の軸線が延在する方向と直交する方向において、第1の媒質蒸気発生位置よりも、軸線から離れた位置に設けられた第2の媒質蒸気発生位置に、レーザを照射してもよい。これにより、第1の媒質蒸気発生位置で発生した媒質蒸気が先に中心電極と外部電極との間に到達し、第2の媒質蒸気発生位置で発生した媒質蒸気が、その後、中心電極と外部電極との間に到達する。媒質蒸気の濃度は時間の経過に伴って上昇するので、放電開始位置よりも前側において、媒質蒸気の濃度を放電開始位置よりも低くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、媒質蒸気の分布を調整して、極端紫外光の発光量を増大することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
図1に示されたプラズマ光源1は、たとえば、半導体素子を製造するための露光装置に適用される。プラズマ光源1は、たとえば、波長13.5nmの極端紫外光(EUV光)を発生可能に構成されている。プラズマ光源1は、EUV光を発生させることにより、微細なパターンを形成するフォトリソグラフィを可能にする。
【0027】
プラズマ光源1は、いわゆる対向型プラズマフォーカス方式が採用されたものである。プラズマ光源1は、プラズマを発生させる一対の同軸状電極10と、同軸状電極10に電位差を生じさせる電圧印加装置20(電圧印加部)と、媒質蒸気を形成する一対の媒質蒸気形成部30と、プラズマ媒質43を保持するプラズマ媒質供給部41と、を備える。
【0028】
一対の同軸状電極10は、チャンバ2内に収容されており、軸線A上において互いに対面するように配置されている。一対の同軸状電極10は、仮想の中央面(対称面)Pに関して面対称に配置されている。一対の同軸状電極10の間には、一定の間隔(空間)が設けられている。チャンバ2には一又は複数の排気管3が設けられており、排気管3には真空ポンプ等(図示せず)が接続される。チャンバ2内は所定の真空度に維持される。また、チャンバ2は接地されている。
【0029】
同軸状電極10は、1本の中心電極11と、複数の外部電極12と、1つの絶縁体13とを備える。中心電極11は、軸線A上に沿って延びる棒状の導電体である。一対の同軸状電極10の中心電極11は、軸線A上で互いに対向して配置されている。そして、中央面Pを挟んで、中心電極11の先端部11a同士が対向して配置されている(
図3参照)。
【0030】
中心電極11は、高温に対して耐性の高い金属からなることが望ましい。中心電極11は、たとえばタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属からなる。中心電極11の軸線Aは、上記した中央面Pに直交する。中央面Pに対面する中心電極11の先端部11aは、たとえば半球状をなしている。中心電極11の側面11bは、たとえば円錐状をなしている。
【0031】
外部電極12は、対向する同軸状電極10に向かって延びる棒状の導電体である。外部電極12は、軸線Aに対して傾いた方向に延びている構成でもよい。例えば、
図3に示されるように円錐状をなす中心電極11の側面11bから外部電極12までの距離が常に一定になるように、外部電極12は側面11bに対して平行である方向に延びていてもよい。外部電極12は、高温に対して耐性の高い金属からなることが望ましい。外部電極12は、たとえばタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属からなる。中央面Pに対面する外部電極12の端面は、曲面であってもよく、平面であってもよい。
【0032】
また、外部電極12は、
図2に示されるように、中心電極11の周囲に配置されている。外部電極12は、中心電極11に対して所定の間隔を有している。複数の外部電極12は、軸線Aを中心とする仮想円Fの周方向において等間隔に(すなわち回転対称に)配置されている。同軸状電極10は、6本の外部電極12を有する。6本の外部電極12は、軸線Aを基準として60°毎に配置されている。なお、外部電極12の本数は6本に限定されず、中心電極11および外部電極12の大きさや形状、これらの間隔などに応じて適宜設定され得る。中心電極11のまわりに複数の外部電極12が配置されることにより、初期放電(たとえば沿面放電、アーク放電)が、中心電極11と外部電極12との間に発生する。この初期放電は、面状放電6に至る(
図5参照)。
【0033】
図1に示される絶縁体13は、たとえば円板状をなすセラミックス板である。絶縁体13は、中心電極11と外部電極12の基部を支持し、これらの間隔を規定する。絶縁体13は、中心電極11と外部電極12とを電気的に絶縁する。
【0034】
電圧印加装置20は、同軸状電極10に同極性又は逆極性の放電電圧を印加することにより、電位差を生じさせる。電圧印加装置20は、たとえば2台の高圧電源(HV Charging Device)21,22を備える。高圧電源は1台でもよく、3台以上でもよい。第1高圧電源21の出力側は、一方の(たとえば図示左側の)同軸状電極10の中心電極11に接続されている。第1高圧電源21は、その中心電極11に対応する外部電極12よりも高い正の放電電圧を印加する。なお、第1高圧電源21は、その中心電極11に対応する外部電極12よりも低い負の放電電圧を印加してもよい。第2高圧電源22の出力側は、他方の(たとえば図示右側の)同軸状電極10の中心電極11に接続されている。第2高圧電源22は、その中心電極11に対応する外部電極12よりも高い正の放電電圧を印加する。なお、第2高圧電源22は、その中心電極11に対応する外部電極12よりも低い負の放電電圧を印加してもよい。いずれの外部電極12も接地されていてもよい。以下の説明では、第1高圧電源21を単に電源21という。同様に、第2高圧電源22を単に電源22という。
【0035】
なお、たとえば電源21,22のコモン側(リターン側)には、ロゴスキーコイル等を用いて誘導結合された線路が設けられてもよい。これらの線路により、中心電極11を経由した電流(すなわち、すべての放電電流)をオシロスコープ(Oscilloscope)で観察することができる。
【0036】
プラズマ光源1は、さらに、電圧印加装置20からの放電電圧を放電エネルギとして外部電極12毎に蓄積するエネルギ蓄積回路26を備えている。エネルギ蓄積回路26は、中心電極11と外部電極12との間を個別に接続する複数のコンデンサCを含む。コンデンサCは、電源21,22の出力側及びコモン側に接続されている。放電エネルギを蓄積するコンデンサCが外部電極12毎に設けられることにより、すべての外部電極12において放電が発生し得る。すなわち、中心電極11の周方向における放電分布に偏りが生じて、偏在的に多くの放電エネルギが消費されることが防止される。エネルギ蓄積回路26を備えることにより、同軸状電極10において、中心電極11の全周に亘って発生する理想的な面状放電6が得られる。
【0037】
プラズマ光源1は、さらに、電圧印加装置20に放電電流が帰還することを阻止する放電電流阻止回路28を備えている。放電電流阻止回路28は、外部電極12と電圧印加装置20(具体的には電源21,22のコモン側)との間を接続するインダクタLを含む。インダクタLは、放電電流に対して十分に高いインピーダンスを有するため、中心電極11及び外部電極12を経由した放電電流は、その発生源であるエネルギ蓄積回路26に戻され得る。これにより、コンデンサCに蓄積された放電エネルギが当該コンデンサCに直結した外部電極12以外の外部電極12に供給されることを防止できる。その結果、中心電極11の周方向における放電の発生分布に偏りが生じることを防止できる。
【0038】
ここで、プラズマ光源1では、
図3に示されるように、レーザが照射されてプラズマ媒質を蒸発させる媒質蒸気発生位置(アブレーション位置)が、同軸状電極10に対して複数設定されている。複数の媒質蒸気発生位置は、後述する放電開始位置Hに供給される媒質蒸気V
1を発生させる第1の媒質蒸気発生位置(44A)と、放電開始位置Hよりも中央面P側(前側)に供給される媒質蒸気V
2を発生させる第2の媒質蒸気発生位置(44B)と、を含む。そして、プラズマ光源1では、放電開始時において、放電開始位置Hにおける媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気が放電開始位置Hよりも前側に供給される。なお、軸線Aが延在する方向において、中央面P側を前側として、中央面Pとは反対側を後側とする。
【0039】
媒質蒸気形成部30は、
図1に示されるように、複数のレーザ装置(レーザ照射部)として、第1レーザ装置(第1のレーザ照射部)31A及び第2レーザ装置(第2のレーザ照射部)31Bを備える。第1レーザ装置31A及び第2レーザ装置31BはたとえばYAGレーザであり、アブレーションを行うために基本波又は基本波の二倍波を短パルスのレーザ光として出力する。また、媒質蒸気形成部30は、ビームスプリッタ(ハーフミラー)34A,34B及びミラー35を含む。
【0040】
第1レーザ装置31Aは、レーザ光32Aを出射する。レーザ光32Aは、ビームスプリッタ34Aやミラー35A等の光学素子により、2本のレーザ光32Aa,32Abに分岐され、プラズマ媒質供給部41の後述する第1保持部42Aに照射される(
図3参照)。レーザ光32Aa,32Abが照射されたプラズマ媒質43の表面(照射面)では、アブレーションによってプラズマ媒質43の一部が媒質蒸気V
1となって放出される。
【0041】
第2レーザ装置31Bは、レーザ光32Bを出射する。レーザ光32Bは、ビームスプリッタ34Bやミラー35B等の光学素子により、2本のレーザ光32Ba,32Bbに分岐され、プラズマ媒質供給部41の後述する第2保持部42Bに照射される。レーザ光32Ba,32Bbが照射されたプラズマ媒質43の表面(照射面)では、アブレーションによってプラズマ媒質43の一部が媒質蒸気V
2となって放出される。媒質蒸気V
1,V
2は、中性ガス又はイオンを含む。
【0042】
また、レーザ光32A,32Bの照射時には、同軸状電極10の中心電極11と外部電極12に電圧印加装置20による放電電圧が既に印加されている。従って、上述のアブレーションが発生して、中心電極11と外部電極12との間において媒質蒸気の密度が一定値に達すると、中心電極11と外部電極12との間において放電が誘発される。さらに、この放電によって面状放電6が形成される。
【0043】
放電の発生箇所は、媒質蒸気Vの供給領域及びその近傍に制限される可能性がある。従って、レーザ光32Aは軸線Aの周方向(仮想円Fの周方向)に沿って間隔を置いて、複数且つ同時に照射することが好ましく、その数は少なくとも2箇所である。これは、誘発された放電の領域が、中心電極11の軸を基点に180度以上の開き角があった実験結果に基づいている。この結果を考慮すると、照射箇所の数が少ないほど中心電極11に対して回転対称な位置にレーザ光32Aa,32Abを照射することが望ましい。なお、複数のレーザ光32Aの同時照射は、ビームスプリッタ34A及びミラー35A等の光学素子を用いて光路長を合わせた複数の光路を形成することで容易に達成できる。
【0044】
同様に、レーザ光32Bは軸線Aの周方向(仮想円Fの周方向)に沿って間隔を置いて、複数且つ同時に照射することが好ましく、その数は少なくとも2箇所である。これは、誘発された放電の領域が、中心電極11の軸を基点に180度以上の開き角があった実験結果に基づいている。この結果を考慮すると、照射箇所の数が少ないほど中心電極11に対して回転対称な位置にレーザ光32Ba,32Bbを照射することが望ましい。なお、複数のレーザ光32Bの同時照射は、ビームスプリッタ34B及びミラー35B等の光学素子を用いて光路長を合わせた複数の光路を形成することで容易に達成できる。
【0045】
また、プラズマ光源1では、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Aの光路長と、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Bの光路長とは、たとえば同じ長さとなっている。レーザ光32Aの光路長とは、第1レーザ装置31Aから出射されたレーザ光32Aがレーザ照射面まで到達するまでに進行した距離である。レーザ光32Bの光路長とは、第2レーザ装置31Bから出射されたレーザ光32Bがレーザ照射面まで到達するまでに進行した距離である。
【0046】
また、プラズマ光源1では、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Aと、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Bとは、たとえば同じレーザ強度となっている。レーザ光32Bの強度は、レーザ光32Aの強度よりも低く設定されていてもよい。
【0047】
また、プラズマ光源1では、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Aの出射のタイミングと、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Bの出射のタイミングとは異なっている。第1レーザ装置31A及び第2レーザ装置31Bは、第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けてレーザを出射する。
【0048】
図1〜
図3に示されるように、プラズマ媒質供給部41は、プラズマ光の発生に用いられるプラズマ媒質43を保持するものである。プラズマ媒質供給部41は、固体又は液体であるプラズマ媒質43と、当該プラズマ媒質43を保持する保持部(複数のプラズマ媒質保持部)42と、を備える。
【0049】
プラズマ媒質43は、必要とされる光の波長に応じて選択され得る。たとえば、13.5nmの紫外光が必要な場合は、プラズマ媒質43は、リチウム(Li)、キセノン(Xe)、スズ(Sn)等が用いられる。また、6.7nmの紫外光が必要な場合は、プラズマ媒質43は、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)等の少なくとも1つが用いられる。また、プラズマ媒質43は固体、液体、気体のいずれであってもよく、発生させたい光の波長によって選択される。プラズマ光源1では、プラズマ媒質43として、液体又は固体のリチウムを用いることができる。
【0050】
ここで、プラズマ媒質供給部41は、
図3に示されるように、1個の同軸状電極10に対して、複数のプラズマ媒質43(第1プラズマ媒質43A、第2プラズマ媒質43B)と、複数の保持部42(第1保持部42A、第2保持部42B)とを備える。複数の保持部42は、第1プラズマ媒質43Aを保持する第1保持部42Aと、第2プラズマ媒質43Bを保持する第2保持部42Bと、を含む。なお、第1保持部42Aと第2保持部42Bとを区別しない場合については、保持部42と記載し、第1プラズマ媒質43Aと、第2プラズマ媒質43Bとを区別しない場合については、プラズマ媒質43と記載する。
【0051】
第1保持部42A及び第2保持部42Bは、軸線Aが延在する方向において、異なる位置に配置されている。これにより、第1保持部42Aに保持された第1プラズマ媒質43Aと、第2保持部42Bに保持された第2プラズマ媒質43Bとは、軸線Aが延在する方向において、それぞれ異なる位置に配置されている。
【0052】
第1保持部42Aは、軸線Aが延在する方向において、放電開始位置Hに対応する位置に配置されている。第1保持部42Aで保持された第1プラズマ媒質43Aは、放電開始位置Hに供給される媒質蒸気V
1を発生させる。第1プラズマ媒質43Aのレーザ照射面の法線Lv
1は、たとえば軸線Aと直交している。法線Lv
1は、レーザ光32Aが照射される第1レーザ照射位置44Aを通る法線である。第1レーザ照射位置44Aは、レーザ光32Aが照射されて媒質蒸気V
1が発生する第1の媒質蒸気発生位置である。
【0053】
第2保持部42Bは、軸線Aが延在する方向において、放電開始位置Hよりも中央面P側である前側に配置されている。第2保持部42Bで保持された第2プラズマ媒質43Bは、放電開始位置Hよりも前側に供給される媒質蒸気V
2を発生させる。第2プラズマ媒質43Bのレーザ照射面の法線Lv
2は、放電開始位置Hよりも前側で、たとえば軸線Aと直交している。法線Lv
2は、レーザ光32Bが照射される第2レーザ照射位置44Bを通る法線である。第2レーザ照射位置44Bは、レーザ光32Bが照射されて媒質蒸気V
2が発生する第2の媒質蒸気発生位置である。法線Lv
2は、法線Lv
1よりも、軸線A方向において、たとえば距離L
4分、前側に配置されている。距離L
4については、たとえば実験の結果に基づいて決定することができる。
【0054】
また、第1保持部42A及び第2保持部42Bは、軸線Aと直交する方向において、たとえば同じ位置に配置されている。
【0055】
プラズマ光源1は、1個の同軸状電極10に対して2個のプラズマ媒質供給部41を備える。すなわち、プラズマ光源1は、1個の同軸状電極10に対して、2個の第1保持部42Aと、2個の第2保持部42Bとを備えるので、合計4個の保持部42を備える。なお、プラズマ媒質供給部41の個数は2個に限定されず、同軸状電極10の大きさや形状などに応じて適宜設定され得る。
【0056】
図2に示されるように、一対のプラズマ媒質供給部41は、同軸状電極10の周囲に配置されている。具体的には、一対のプラズマ媒質供給部41は、軸線Aのまわりに180度の間隔をもって配置されている。第1保持部42A及び第2保持部42Bは、軸線Aを中心とする仮想円Fの周方向において、たとえば同じ位置に配置されている。一対の第1保持部42Aは、180度の間隔をもって配置され、一対の第2保持部42Bは、180度の間隔をもって配置されている。一対の第1保持部42Aは、仮想円Fの周方向において等間隔に配置され、一対の第2保持部42Bは、仮想円Fの周方向において、等間隔に配置されている。
【0057】
一対の第1保持部42Aは、軸線Aに対して点対称に配置され、一対の第2保持部42Bは、軸線Aに対して点対称に配置されている。また、一対の第1保持部42A同士は、軸線Aからの距離が互いに等しい位置に配置され、一対の第2保持部42B同士は、軸線Aからの距離が互いに等しい位置に配置されている。
【0058】
プラズマ媒質供給部41は、中心電極11及び外部電極12と物理的に接触していない。
図1に示されるように、軸線Aに直交する仮想平面P2を規定し、この仮想平面P2における同軸状電極10の端面が
図2に示されている。
図2では、軸線Aが延在する方向において、中央面P側から見た保持部42(第1保持部42A、第2保持部42B)の配置も図示されている。
【0059】
そして、仮想円Fの周方向に隣り合う外部電極12の軸線Bを通る仮想線B2を規定する。そうすると、同軸状電極10では、6本の仮想線B2が規定され、これら6本の仮想線B2に囲まれた六角形状の領域BSが規定されている。中心電極11は、この領域BSの中心に配置される。一方、プラズマ媒質供給部41は、この領域BSの外側に配置されている。要するに、プラズマ媒質供給部41は、すべての外部電極12を含むと共に中心電極11を囲む閉じた領域BSの外側に配置される。また、プラズマ媒質供給部41と中心電極11とは、仮想線B2を挟んで配置されるとも言える。
【0060】
また、
図3に示されるように、軸線Aが延在する方向において、放電開始位置Hと中央面Pとの距離L
1は、たとえば15mmである。放電開始位置Hは、媒質蒸気V
1が供給されて放電が開始されて、初期プラズマが発生する位置である。放電開始位置Hは、初期プラズマが加速されて所望のエネルギが得られるように設定される。距離L
1を長くすることにより、初期プラズマが加速される距離を増加させることができる。
【0061】
次に、プラズマ光源1の動作(極端紫外光の発光方法)について説明する。
【0062】
まず、チャンバ2内は、プラズマ(初期プラズマ)の発生に適した温度及び圧力に保持される。放電前の同軸状電極10には、電圧印加装置20により放電電圧が印加される。電圧印加装置20は、電源21,22によりコンデンサCに電荷を予め蓄積(充電)し、同軸状電極10に放電電圧を印加し、中心電極11と外部電極12との間に、電位差を発生させる電位差発生工程を実行する。
【0063】
放電電圧が印加された状態で、プラズマ媒質供給部41のプラズマ媒質43にレーザ光32Aa,32Ab,32Ba,を照射して、プラズマ媒質を蒸発させて媒質蒸気V
1,V
2を発生させる媒質蒸気供給工程を実行する。媒質蒸気供給工程は、第1レーザ照射位置44Aにレーザを照射して、媒質蒸気V
1を発生させる第1媒質蒸気発生工程(第1の媒質蒸気発生工程)と、第2レーザ照射位置44Bにレーザを照射して、媒質蒸気V
2を発生させる第2媒質蒸気発生工程(第2の媒質蒸気発生工程)とを含む。
【0064】
第1媒質蒸気発生工程では、第1レーザ装置31Aからレーザ光32Aを出射し、第1保持部42Aに保持された第1プラズマ媒質43Aに照射する。これにより、プラズマ媒質43の表面の第1レーザ照射位置44Aで第1プラズマ媒質43Aが蒸発して、媒質蒸気V
1が発生する。
【0065】
第2媒質蒸気発生工程では、第2レーザ装置31Bからレーザ光32Bを出射し、第2保持部42Bに保持された第2プラズマ媒質43Bに照射する。これにより、プラズマ媒質43の表面の第2レーザ照射位置44Bで第2プラズマ媒質43Bが蒸発して、媒質蒸気V
2が発生する。
【0066】
また、第1媒質蒸気発生工程におけるレーザ光32Aの光路長と、第2媒質蒸気発生工程におけるレーザ光32Bの光路長とは、たとえば同じ長さとなっている。
【0067】
また、第1媒質蒸気発生工程におけるレーザ光32Aの強度と、第2媒質蒸気発生工程におけるレーザ光32Bの強度とは、たとえば同じ強度となっている。
【0068】
また、第1媒質蒸気発生工程において、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Aの出射のタイミングと、第2媒質蒸気発生工程において、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Bの出射のタイミングとは異なっている。第2媒質蒸気発生工程では、第1媒質蒸気発生工程において第1の媒質蒸気発生位置にレーザが到達する時刻よりも遅れて、第2の媒質蒸気発生位置にレーザが到達するように、時間差を設けてレーザを出射する。
【0069】
図4に示されるように、第1レーザ照射位置44Aで発生した媒質蒸気V
1は、第1プラズマ媒質43Aの表面の法線方向(Lv
1)に拡散する。第2レーザ照射位置44Bで発生した媒質蒸気V
2は、第2プラズマ媒質43Bの表面の法線方向(Lv
2)に拡散する。たとえば法線を中心として、余弦則に沿って拡散することが想定される。
【0070】
ここで、レーザがプラズマ媒質43に照射されると、まず、低い濃度の媒質蒸気が発生し、時間の経過とともに媒質蒸気の濃度が上昇する。たとえば、
図4では、媒質蒸気の濃度分布M
1,M
2,M
3を示している。濃度分布M
1が最も濃度が低く、濃度分布M2は、濃度分布M
1よりも濃度が高く、濃度分布M
3は、濃度分布M
2よりも濃度が高くなっている(M
1<M
2<M
3)。プラズマ媒質43のレーザ照射位置44から離れるほど、媒質蒸気が拡散されるので、濃度が低くなる。
【0071】
第1レーザ照射位置44Aで発生した媒質蒸気V
1と、第2レーザ照射位置44Bで発生した媒質蒸気V
2とを比較すると、照射面から長さL
3離れた位置Q1において、媒質蒸気V
2は、媒質蒸気V
1に遅れて到達する。これにより、同時刻において、媒質蒸気V
2の濃度は、媒質蒸気V
1の濃度よりも低くなっている。そのため、放電開始時の同軸状電極10において、放電開始位置Hよりも中央面P側には、放電開始位置Hにおける媒質蒸気V
1の濃度よりも薄い濃度の媒質蒸気V
2が分布することになる。
【0072】
そして、媒質蒸気V
1が、放電開始位置H近傍に到達し、中心電極11と外部電極12との間における媒質蒸気Vの濃度が上昇すると、
図5に示されるように、電圧印加装置20において、電流経路Kが形成され、コンデンサCの正極側から負極側へ電流が流れる。この電流は、コンデンサCに蓄積された電荷量に相当する電流が電気回路の時定数に従ってパルス的に流れる。つまり、電荷は、電流経路Kにおいて、中心電極11、面状放電6、及び外部電極12の順に流れ、最終的にコンデンサCの負極側に戻る。このようにして、放電開始位置Hにおいて放電が開始され、中心電極11の周方向に沿うリング状(面状)の面状放電6が生じる。
【0073】
また、一対の第1保持部42Aで保持された第1プラズマ媒質43Aから蒸発した蒸気は、対向する同軸状電極10同士で、同じタイミングで、同じ濃度分布となるように供給される。同様に、一対の第2保持部42Bで保持された第2プラズマ媒質43Bから蒸発した蒸気は、対向する同軸状電極10同士で、同じタイミングで、同じ濃度分布となるように供給される。そのため、一対の同軸状電極10において、媒質蒸気Vの濃度が同様に上昇し、一対の同軸状電極10において同時に面状放電6が発生する。
【0074】
そして、面状放電6は、中心電極11と外部電極12との間で放電しながら、自己磁場(電磁力)によって、軸線A方向に中心電極11の先端部11aに向かって移動する。換言すると、一対の同軸状電極10で発生した初期プラズマは、中央面Pに向かって両側から進行する。
【0075】
また、面状放電6が中央面Pに向かって移動する際に、放電開始位置Hよりも中央面P側には、濃度が薄い媒質蒸気V
2が分布しているので、これらの媒質蒸気V
2によって面状放電6に伴う初期プラズマの密度が高くなる。
【0076】
また、プラズマ光源1はエネルギ蓄積回路26を備えているため、エネルギ蓄積回路26と複数の外部電極12との協働により、面状放電6の発生確率が高められている。間隔をあけて非連続的に配置される複数の外部電極12は、連続した管状(筒状)の外部電極が採用される場合に比して、面状放電6の形成を容易にするという観点で有利である。
【0077】
そして、面状放電6に伴うプラズマは同軸状電極10の先端部11aに達する。面状放電6が中心電極11の先端部11aに達したことで、その放電電流の出発点は中心電極11の側面11bから先端部11aに移行する。この電流の移行によって、一対の面状放電6に伴って移動してきたプラズマは収束し、高密度かつ高温になる。
【0078】
この現象は中央面Pを挟んだ同軸状電極10で進行するため、初期プラズマは、一方の同軸状電極10から他方の同軸状電極10に向かって押し出される。その結果、初期プラズマは、軸線Aに沿う両方向からの圧力を受けて同軸状電極10が対面する中間位置(すなわち中央面Pの位置)に移動し、プラズマ媒質を成分とする単一のプラズマが形成される。そして、プラズマが形成された後も、面状放電6を通じて電流が流れ続け、プラズマを全体的に包囲し、プラズマを一対の中心電極11の中間付近に保持する。
【0079】
面状放電6が発生している間は、プラズマの高密度化および高温化が進行し、イオンの電離が進行する。その結果、プラズマ媒質に応じた光を含むプラズマ光が放射される。この状態において、面状放電6を通じて電流が流れ続けることにより、長時間に亘って、プラズマ光が発生し得る。
【0080】
このようなプラズマ光源1では、一つの同軸状電極10に対して、軸線A方向において異なる位置に複数のレーザ照射位置44が設定されている。第1レーザ照射位置44Aにレーザが照射されて発生した媒質蒸気V
1は、放電開始位置Hに供給される。第2レーザ照射位置44Bにレーザが照射された発生した媒質蒸気V
2は、放電開始位置Hよりも前側に供給される。そして、第1レーザ照射位置44Aにレーザが到達する時刻よりも遅れて、第2レーザ照射位置44Bにレーザが到達するように、時間差を設けてレーザを出射するので、放電開始時において、放電開始位置Hにおける媒質蒸気V
1の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気V
2を分布させることができる。
【0081】
これにより、媒質蒸気が最大の濃度となる放電開始位置で、媒質蒸気の濃度が放電開始の閾値に達すると初期放電が開始され初期プラズマが発生する。放電開始位置で発生した初期プラズマが前側に移動する際に、放電開始位置よりも前側に、より低い濃度の媒質蒸気が分布しているので、これらの媒質蒸気が初期プラズマに更に供給されてエネルギが増大されるので、極端紫外光の発光量を増大させることができる。
【0082】
また、プラズマ光源1では、第1レーザ装置31A及び第2レーザ装置31Bを備える構成なので、異なるレーザ照射位置に応じて、異なる設定のレーザ照射部を設けることができる。具体的には、レーザの照射タイミングを、レーザ装置ごとに設定することができる。
【0083】
なお、プラズマ光源1では、放電開始位置Hよりも中央面P側に、放電開始位置Hにおける媒質蒸気の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気を分布させている。想定していた放電開始位置Hよりも中央面P側に高い濃度の媒質蒸気が分布すると、この位置で放電が開始されるので、所望の走行距離を確保することができず、初期プラズマのエネルギを増加させることができない。また、放電開始位置Hに、より高い濃度の媒質蒸気を供給した場合には、媒質蒸気の濃度が一定値に達したときに初期放電が開始されるため、より高い濃度の媒質蒸気を供給しても、初期プラズマのエネルギを増加させることはできず、極端紫外光の発光量を調整することはできない。プラズマ光源1では、放電開始位置Hよりも中央面P側に、初期放電が開始しない程度の濃度の媒質蒸気Vを分布させておくことで、初期プラズマの中央面P側への移動に伴って初期プラズマのエネルギを増大させることができ、極端紫外光の発光量を増大させることができる。
【0084】
次に、第2実施形態に係るプラズマ光源1(極端紫外光の発光方法)について説明する。第2実施形態に係るプラズマ光源1が、第1実施形態に係るプラズマ光源1と異なる点は、第1レーザ装置31A及び第2レーザ装置31Bにおいて、出射されるレーザの強度が異なる点である。第2実施形態のプラズマ光源1の装置構成は、第1実施形態のプラズマ光源1と略同じである。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0085】
具体的には、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Aの強度は、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Bの強度よりも低く設定されている。これにより、第2レーザ照射位置44Bに照射されるレーザの強度は、第1レーザ照射位置44Aに照射されるレーザの強度より弱くなるので、第2レーザ照射位置44Bにおける媒質蒸気V2の発生量を、第1レーザ照射位置44Aにおける媒質蒸気V1の発生量を低くすることができる。その結果、放電開始位置Hよりも前側に、放電開始位置Hにおける媒質蒸気V
1の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気V
2を分布させることができる。
【0086】
この第2実施形態においては、第1レーザ装置31Aから出射されるレーザ光32Aの出射のタイミングと、第2レーザ装置31Bから出射されるレーザ光32Bの出射のタイミングとを同じにすることができる。
【0087】
このような第2実施形態のプラズマ光源1においても、第1実施形態のプラズマ光源1と同様に、放電開始位置Hよりも前側に、低い濃度の媒質蒸気V
2を分布させることができ、極端紫外光の発光量を増大させることができる。
【0088】
次に、
図6を参照して変形例に係るプラズマ光源1(極端紫外光の発光方法)について説明する。上記の第1実施形態のプラズマ光源1では、第1保持部42Aと第2保持部42Bとを仮想円Fの周方向において同じ位置に配置しているが、第1保持部42Aと第2保持部42Bとは、仮想円Fの周方向において、異なる位置に配置してもよい。
【0089】
この構成では、軸線Aが延在する方向において、第1保持部42Aと第2保持部42Bとが当たることがないので、第1保持部42A及び第2保持部42Bの配置の自由度が上がる。
【0090】
次に、
図7を参照して、第3実施形態に係るプラズマ光源1(極端紫外光の発光方法)について説明する。第3実施形態に係るプラズマ光源1が、第1実施形態に係るプラズマ光源1と異なる点は、軸線Aと直交する方向において、第1保持部42Aと第2保持部42Bと配置が異なる点である。第1実施形態のプラズマ光源1では、軸線Aから第1レーザ照射位置44Aまでの距離L
2は、軸線Aから第2レーザ照射位置44Bまでの距離L
2と同じ長さとなっているが(
図4参照)、第3実施形態のプラズマ光源1では、軸線Aから第1レーザ照射位置44Aまでの距離L
2と、軸線Aから第2レーザ照射位置44Bまでの距離(L
2+L
5)とは、長さが異なっている。
【0091】
具体的には、軸線Aから第2レーザ照射位置44Bまでの距離は、軸線Aから第1レーザ照射位置44Aまでの距離L
2よりも長くなっている。軸線Aと直交する方向において、第2レーザ照射位置44Bは、第1レーザ照射位置44Aよりも距離L
5分、軸線Aから離れて配置されている。そのため、第2レーザ照射位置44Bで発生した媒質蒸気V
2が同軸状電極10に到達するまでの時間を、第1レーザ照射位置44Aで発生した媒質蒸気V
1が同軸状電極10に到達するまでの時間よりも長くすることができ、媒質蒸気V
2が、媒質蒸気V
1よりも遅れて同軸状電極10に到達させることができる。このようにして、放電開始位置Hよりも前側に、放電開始位置Hにおける媒質蒸気V
1の濃度よりも低い濃度の媒質蒸気V
2を分布させることができ、極端紫外光の発光量を増大させることができる。なお、距離L
5は、媒質蒸気の進行速度に基づいて、適宜、計算により算出することができる。
【0092】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0093】
上記の実施形態では、第1レーザ照射位置44Aに照射されるレーザ光32Aの光路長と、第2レーザ照射位置44Bに照射されるレーザ光32Bの光路長とは、同じ長さとして説明しているが、レーザ光32Aの光路長と、レーザ光32Bの光路長とは異なっていてもよい。たとえば、レーザ光32Bの光路長をレーザ光32Aの光路長よりも長く設定することで、第2レーザ照射位置44Bにおけるレーザの到達時刻を、第1レーザ照射位置44Aにおけるレーザの到達時刻よりも遅らせることができる。これにより、媒質蒸気V
2が媒質蒸気V
1よりも遅れて、同軸状電極10に到達するようにして、放電開始位置Hの前側において、放電開始位置Hよりも媒質蒸気の濃度を低くしてもよい。なお、光路長の差は、光の速度に基づいて算出することができる。
【0094】
また、上記の実施形態では、第1保持部42A及び第2保持部42Bを備える構成として、異なる保持部に保持された異なるプラズマ媒質43に、第1レーザ照射位置44A及び第2レーザ照射位置44Bを設定しているが、同一の保持部に保持された同一のプラズマ媒質43に、第1レーザ照射位置44A及び第2レーザ照射位置44Bの両方を設定してもよい。
【0095】
また、上記の実施形態では、第1レーザ装置31A及び第2レーザ装置31Bを備える構成としているが、同一のレーザ装置から出射されたレーザを分岐して、光路を変えることで、第1レーザ照射位置44A及び第2レーザ照射位置44Bのそれぞれに照射してもよい。
【0096】
また、上記の実施形態において、第2レーザ照射位置44Bに照射されるレーザの光路上に、レーザの強度を低下させるフィルタを配置してもよい。この構成によれば、フィルタを透過させることで、レーザの強度を低下させて、第2レーザ照射位置44Bから発生する媒質蒸気V
2の発生量を、第1レーザ照射位置44Aから発生する媒質蒸気V
1の発生量より低くしてもよい。このようにして、放電開始位置Hよりも前側の媒質蒸気V
2の濃度を、放電開始位置Hの媒質蒸気V
1の濃度よりも低くすることができる。
【0097】
また、放電開始位置Hにおいて、中心電極11の側面から外部電極12に向かって突出する突出部が形成されている構成でもよい。同様に放電開始位置Hにおいて、外部電極12の側面から中心電極11に向かって突出する突出部が形成されている構成でもよい。