(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部材は、前記複数の第1経路のうち前記保持部材の周縁部にもっとも近い最外周の前記第1経路と前記周縁部とを接続する第3経路を前記導線が通るように、前記導線を保持する第3保持部を更に含む、請求項1に記載のコイル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置では、コアおよびコアに巻かれるコイル以外に、ガイド部、第1フック、第2フック、および保持部を設ける必要があり、導線の巻き方の調整のために部品数が増加してしまう。本開示は、部品数の増加を抑えつつ、導線の巻き方を調整できるコイル装置および保持部材を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るコイル装置は、コイルと、コイルを保持する保持部材と、を備え、コイルは、
渦巻状に延びる巻線方向に
導線が巻かれることで形成されると共に巻線方向に交差する方向で隣接する
渦巻状の複数のターンを含み、保持部材は、複数のターンに対応する複数の第1経路を導線が通るように、導線を保持する複数の第1保持部と、巻線方向に交差する方向に延び第1経路の間を接続する第2経路を導線が通るように、導線を保持する少なくとも1つの第2保持部と、を含む。
【0008】
このコイル装置によれば、第2経路は、巻線方向に交差する方向に延び、隣接する第1経路の間を接続する。よって、第1経路を通る導線は、そのまま第1経路を通ってもよいし、第1経路から分岐して第2経路を通ってもよい。これにより、所望のインダクタンスに近づく経路を選択して、保持部材に導線を保持することが可能になる。保持部材に設けられた第1保持部と第2保持部とによって、このような経路の選択が可能になっているため、保持部材の外部に追加の部品を設ける必要がない。よって、部品数の増加を抑えつつ、保持部材において導線の巻き方を調整できる。
【0009】
いくつかの態様において、保持部材は、複数の第1経路のうち保持部材の周縁部にもっとも近い最外周の第1経路とその周縁部とを接続する第3経路を導線が通るように、導線を保持する第3保持部を更に含む。導線が上記の第2経路を通ったとしても通らなかったとしても、第3経路に導線を通して、導線を引き出すことができる。導線が外部に引き出される位置を揃えることができるので、構成がシンプルになる。
【0010】
いくつかの態様において、第2経路を通った導線が、隣接する2つの第1経路において逆方向に巻かれている。導線が第2経路を通ると、本来、隣接する第1経路を通るべき導線部分が余ることになる。この余った導線が、隣接する第1経路において逆方向に巻かれることにより、導線の余りを少なくできる。また隣接する第1経路において、導線が逆方向に巻かれることにより、導線から生じる磁束が打ち消し合い、余った導線からの磁束が給電性能に影響を及ぼすことが抑えられる。
【0011】
いくつかの態様において、コイル装置は、保持部材の裏面側に配置された非磁性部材を更に備え、非磁性部材は、非磁性部材の裏面側において導線を保持する第4保持部を含む。非磁性部材の第4保持部に導線の余りを保持することにより、導線の余りを少なくできる。第4保持部は、コイル装置が対向する第2コイル装置とは反対側である裏面側に設けられているため、第4保持部を通る導線の磁束は、非磁性部材がシールドとなって、第2コイル装置側に漏れにくくなる。そのため、第4保持部に保持された導線の磁束が給電性能に影響を及ぼすことが抑えられる。
【0012】
いくつかの態様において、第4保持部は、導線が複数のループ状の第4経路を通ることができるように設けられており、非磁性部材は、複数の第4経路と非磁性部材の周縁部とを接続する第5経路を導線が通るように、導線を保持する第5保持部を更に含む。保持部材上で導線の両端部の出入り口の位置や方向が異なる場合でも、非磁性部材の第4経路に沿って余長導線を保持することができる。また、第4経路と第5経路とを適宜組み合わせて経路を工夫することで、定位置方向から導線の両端部を引き出すことができる。そのため、コイル装置から引き出される導線の末端処理(コネクタ化や端子固定等)をする際に余長を収納する空間を別途確保することなく、定位置に導線を誘導することが可能である。
【0013】
いくつかの態様において、保持部材は、導線を受け入れ可能な第1保持部としての第1溝と、導線を受け入れ可能な第2保持部としての第2溝と、を含み、第1溝および第2溝は、保持部材の表面側または裏面側に形成されている。第1保持部および第2保持部として、第1溝および第2溝が保持部材に直接設けられている。すなわち、導線を保持する保持部が、保持部材に一体的に形成されている。よって、保持部材とは異なる部材(すなわち別部材)が不要になっており、必要部材の縮小が図られている。部品数の増加を招くことなく、導線の巻き方を調整できる。
【0014】
本開示の別の態様に係るコイル装置は、コイルと、コイルを保持する保持部材と、保持部材の裏面側に配置された非磁性部材と、を備え、コイルは、導線が巻線方向に巻かれることで形成されると共に巻線方向に交差する方向で隣接する複数のターンを含み、保持部材は、複数のターンに対応する複数の第1経路を導線が通るように、導線を保持する複数の第1保持部と、巻線方向に交差する方向に延び第1経路の間を接続する第2経路を導線が通るように、導線を保持する少なくとも1つの第2保持部と、を含み、非磁性部材は、非磁性部材の裏面側において導線を保持する第4保持部を含む。
本開示の
更に別の態様は、導線を含むコイルを保持する保持部材であって、導線が巻かれる
渦巻状に延びる巻線方向に交差する方向で隣接する
、渦巻状の複数のターンに対応する第1経路を導線が通るように、導線を保持する複数の第1保持部と、巻線方向に交差する方向に延び第1経路の間を接続する第2経路を導線が通るように、導線を保持する少なくとも1つの第2保持部と、を備える。この保持部材によれば、上記したコイル装置と同様の作用・効果が奏される。すなわち、部品数の増加を抑えつつ、保持部材において導線の巻き方を調整できる。
本開示の更に別の態様に係る保持部材セットは、導線を含むコイルを保持する保持部材と、保持部材の裏面側に配置された非磁性部材と、を備え、保持部材は、導線が巻かれる巻線方向に交差する方向で隣接する複数のターンに対応する第1経路を導線が通るように、導線を保持する複数の第1保持部と、巻線方向に交差する方向に延び第1経路の間を接続する第2経路を導線が通るように、導線を保持する少なくとも1つの第2保持部と、を含み、非磁性部材は、非磁性部材の裏面側において導線を保持する第4保持部を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示のいくつかの態様によれば、部品数の増加を抑えつつ、保持部材において導線の巻き方を調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、
図1および
図2を参照して、第1実施形態に係るコイル装置1を説明する。コイル装置1は、非接触給電システムにおける受電装置または送電装置に用いられる。非接触給電システムは、たとえば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリを充電するためのシステムである。コイル装置1は、受電装置および送電装置の両方に用いられてもよい。
【0019】
コイル装置1が受電装置に用いられる場合、受電コイル装置としてのコイル装置1は、たとえば車両のシャシー等に固定される。コイル装置1には、受電回路および充電回路などを介して、バッテリが接続される。コイル装置1が送電装置に用いられる場合、送電コイル装置としてのコイル装置1は、たとえば路面に固定される。コイル装置1には、送電回路および整流回路などを介して、外部電源が接続される。
【0020】
送電コイル装置と受電コイル装置とが上下方向において対向し、内部のコイル同士が電磁気的に結合して電磁結合回路を形成することにより、送電コイル装置のコイルから受電コイル装置のコイルへと非接触給電が行われる。言い換えれば、受電コイル装置は、送電コイル装置から非接触で電力を受け取る。電磁結合回路は、「電磁誘導方式」で給電を行う回路であってもよく、「磁界共鳴方式」で給電を行う回路であってもよい。
【0021】
図1および
図2に示されるように、コイル装置1は、たとえば扁平な形状をなす。コイル装置1は、筐体2と、筐体2内に収容されるコイル部10とを備える。筐体2は、ベース4と、ベース4に固定されるカバー3とを含む。
【0022】
ベース4は、コイル部10の裏面側に配置された板状部材であり、コイル装置1の全体としての剛性を確保する。ベース4は、たとえば、非磁性材料であって導電性を有する材料からなる。ベース4は、剛性の高い材料であって、透磁率の低い金属(たとえばアルミニウム等)からなる。これにより、ベース4は、漏えい磁束の外部流出を遮蔽し得る。言い換えれば、ベース4は、絶縁プレートである。
【0023】
カバー3は、コイル部10の表面側に配置された箱体であり、コイル部10を含む内装部品を保護する。カバー3は、たとえば、磁力透過性かつ絶縁性の材料(たとえばGFRP(ガラス繊維強化樹脂)等)からなる。カバー3は、いわば外装カバーである。
【0024】
これらのカバー3およびベース4によって、コイル部10を収容する収容空間が形成されている。コイル装置1が送電コイル装置および受電コイル装置の両方に適用される場合、これらのいずれか一方である第1コイル装置のカバー3と、いずれか他方である第2コイル装置のカバー3とが、所定の離間距離をもって対面する。第1コイル装置のベース4と、第2コイル装置のベース4とは、それぞれのコイル部10に対して、他のコイル装置に対向する側とは反対側に設けられる。ベース4は、車両や路面に固定される側に配置される。コイル装置1の扁平な各部において、対向する他のコイル装置に近い面を「表面」といい、他のコイル装置から遠い面、すなわち表面とは反対側の面を「裏面」という。
【0025】
コイル部10は、導線7を含むコイルCと、コイルCを保持するボビン(保持部材)6と、ボビン6とベース4との間に配置されたフェライト部8とを備える。フェライト部8は、たとえば矩形平板状のフェライトコアである。フェライト部8は、磁性体のフェライトからなり、コイルCから発生した磁力線の方向付けおよび集約を行う。フェライト部8は、複数の矩形のフェライト片8aによって形成されてもよく、単一のフェライト板によって形成されてもよい。フェライト部8は、ボビン6の大きさに略等しくてもよく、ボビン6より大きくてもよい。フェライト部8の形状は、矩形(正方形や長方形等)に限定されず、円形等の他の形状であってもよい。
【0026】
コイルCは、たとえば、同一平面内で略矩形の渦巻状に巻回された導線7によって形成される。コイルCが受電装置に設けられる場合、コイルCは、誘導電流を発生させる。コイルCは、いわゆるサーキュラー型のコイルである。サーキュラーコイルにおいて、導線7は、巻軸を囲むようにして内側から外側へ(もしくは外側から内側へ)、巻線方向に導線7が巻かれている。この場合、巻線方向は渦巻状に延びる方向であり、巻軸に垂直な仮想平面に沿った方向である。導線7としては、たとえば、互いに絶縁された複数の導体素線が撚り合わされたリッツ線が用いられる。導線7としては、表皮効果の高いリッツ線が用いられる。導線7は、銅もしくはアルミニウムの単線であってもよい。
【0027】
ボビン6は、ボビン6に対して導線7が巻回されることで導線7を保持する平板状の部材である。ボビン6は、磁力透過性かつ絶縁性の材料(たとえばシリコーンやポリフェニレンサルファイド樹脂等)からなる。なお、フェライト部8が設けられる場合、フェライト部8の一部に形成されたスリット8bにも、導線7が収容され得る。以下、コイル部10における導線7の保持構造について詳しく説明する。
【0028】
コイル装置1では、ボビン6上において導線7の経路および長さを自在に調整可能になっており、これによって、インダクタンス値を調整可能になっている。
図3および
図5に示されるように、ボビン6は、表面6a側に形成された複数の第1溝11を含んでいる。
図5に示されるように、コイルCは、導線7が巻線方向に巻かれることで形成される、複数のターンT1,T2…,T(n−1),T(n)を含んでいる(nは2以上の自然数)。複数のターンT1,T2…,T(n−1),T(n)は、巻軸を中心に同心状に形成されており、互いに連続している。サーキュラー型のコイルCにおいて、複数のターンT1,T2…,T(n−1),T(n)は、渦巻状をなしている。複数の第1溝11は、複数のターンT1,T2…,T(n−1),T(n)に対応する複数の第1経路R1(渦巻状の経路)を導線7が通るように、導線7を保持する第1保持部である。
【0029】
より詳細には、各第1溝11は、円柱状をなし、巻線方向に垂直な断面において、導線7の全体を収容可能な大きさおよび形状に形成されている(
図6参照)。すなわち、第1溝11の深さおよび幅は、導線7の太さ(直径)よりも大きい。なお、第1溝11は、導線7の外周の一部を収容可能であってもよい。たとえば、第1溝11は、導線7の半分程度を収容可能な半円柱状であってもよい。第1溝11は、導線7の全部または一部を受け入れ可能であって、それによって導線7を保持できればよい。
【0030】
複数の第1溝11は、巻線方向を横断する方向(巻線方向および巻軸方向に直交する方向)で隣接している。言い換えれば、複数の第1溝11は、巻軸を基準とする径方向で隣接している。隣り合う2本の第1溝11の間には、所定の間隔が設けられている。言い換えれば、隣り合う第1溝11の間には、それらの間隔を構成する複数の隔壁部6f(
図4参照)が設けられている。各隔壁部6fの高さは、たとえば、表面6aの高さに等しい。ここでの「高さ」は、巻軸方向における大きさ、すなわち上記したコイル装置1の対向方向における大きさである。
【0031】
これらの第1溝11内に導線7が配置され、嵌め込まれることにより、導線7は表面6aによって保持され、複数のターンT1,T2…,T(n−1),T(n)をなす。このように、複数の第1溝11自体が、第1経路R1を形成している。
【0032】
第1溝11は、表面6aの中央部6bから周縁部付近までの領域にわたって形成されている。なお、中央部6bは、第1溝11が形成されない領域を含んでもよい。中央部6bのやや第1側面6d寄りには、導線7を通すことができる中央貫通孔6cが形成されている。中央貫通孔6cは、たとえば導線7の太さ(直径)よりも僅かに大きい幅と、その幅よりも大きい長さとを有する長孔である。
【0033】
図3および
図4に示されるように、ボビン6は、表面6a側に形成されて、複数の第1溝11の間を接続する複数の第2溝12を含んでいる。より詳細には、ボビン6は、最外周のターンT(n)に対応する第1溝11と、ターンT(n)の次の(内周側に位置する2番目の)ターンT(n−1)に対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝12を含む。ボビン6は、2番目のターンT(n−1)に対応する第1溝11とその次の3番目のターンに対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝12を含む。ボビン6は、3番目のターンに対応する第1溝11と4番目のターンに対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝12を含む。
【0034】
これらの第2溝12は、一直線上に配置されて、径方向に連続している。これらの第2溝12は、第1経路R1の間を接続する第2経路R2を導線7が通るように、導線7を保持する第2保持部である。第2溝12は、導線7の逃がし溝である。第2溝12は、コイル装置1におけるインダクタンスの調整を可能にする。
【0035】
さらに、ボビン6は、ボビン6の周縁部である第1側面6dにもっとも近い最外周の第1溝11と第1側面6dとを接続する1つの第3溝13を含んでいる。この第3溝13は、最外周の第1経路R1とボビン6の周縁部とを接続する第3経路R3を導線7が通るように、導線7を保持する第3保持部である。第3溝13は、導線7の引出溝である。
【0036】
この第3溝13と、上記した複数の第2溝12とは、一直線上に配置されて、径方向に連続している。これらが連続することで形成される一本の溝は、たとえば、第1側面6dに直交するように延びる。このように、複数の第2溝12および第3溝13自体が、第2経路R2および第3経路R3をそれぞれ形成している。第2溝12および第3溝13の断面形状および大きさは、上記した第1溝11のそれと同様であってもよい。
【0037】
第2経路R2を形成する第2溝12についてより詳しく説明すると、
図4に示されるように、第2溝12は、第2溝12の内周側の第1溝11(第1経路R1)に対し、比較的大きな曲率半径をもって連絡する第1湾曲部12aを含む。第2溝12は、第2溝12の外周側の第1溝11(第1経路R1)に対し、比較的小さな曲率半径をもって連絡する第2湾曲部12bを含む。第1湾曲部12aの曲率半径は、第2湾曲部12bの曲率半径よりも大きい。言い換えれば、第1湾曲部12aは、第2湾曲部12bよりも緩やかなカーブを持つ。第1溝11に対する第2溝12の交差部(連絡部)に設けられたこれら第1湾曲部12aおよび第2湾曲部12bは、渦巻状に連続する第1経路R1上における中央貫通孔6cに近い側の壁部に設けられている。第2溝12は、第1経路R1上における中央貫通孔6cから遠い側の壁部において、略直線状の平坦部12cを含む。第1湾曲部12aおよび第2湾曲部12bは、第2溝12を通った導線7が折り返される場合において、導線7を案内する(
図8の(a)参照)。
【0038】
ボビン6は、表面6a側に形成されて、複数の第1溝11の間を接続する複数の第2溝22を含んでいる。より詳細には、ボビン6は、最内周のターンT1に対応する第1溝11に連絡する中央貫通孔6cと、ターンT1の次の(外周側に位置する2番目の)ターンT2に対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝22を含む。ボビン6は、2番目のターンT2に対応する第1溝11とその次の3番目のターンに対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝22を含む。これらの第2溝22は、一直線上に配置されて、径方向に連続している。これらの第2溝22は、第1経路R1の間を接続する第2経路R22を導線7が通るように、導線7を保持する第2保持部である。第2溝22は、導線7の逃がし溝である。このように、複数の第2溝22自体が、第2経路R22を形成している。第2溝22の断面形状および大きさは、上記した第1溝11のそれと同様であってもよい。第2溝22は、コイル装置1におけるインダクタンスの微調整を可能にする。
【0039】
ボビン6は、表面6a側であって第2溝12とは周方向にずれた位置に形成されて、複数の第1溝11の間を接続する複数の第2溝32を含んでいる。より詳細には、ボビン6は、最外周のターンT(n)に対応する第1溝11と、ターンT(n)の次の(内周側に位置する2番目の)ターンT(n−1)に対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝32を含む。ボビン6は、2番目のターンT(n−1)に対応する第1溝11とその次の3番目のターンに対応する第1溝11とを接続する1つの第2溝32を含む。
【0040】
これらの第2溝32は、一直線上に配置されて、径方向に連続している。第2溝32は、たとえば、第2溝12とは周方向に90度ずれた位置に形成されている。これらの第2溝32は、第1経路R1の間を接続する第2経路R32を導線7が通るように、導線7を保持する第2保持部である。第2溝32は、導線7の逃がし溝である。第2溝32は、第2溝12で折り返された導線7を第1溝11から分岐可能にする。
【0041】
さらに、ボビン6は、ボビン6の周縁部である第2側面6eにもっとも近い最外周の第1溝11と第2側面6eとを接続する1つの第3溝33を含んでいる。この第3溝33は、最外周の第1経路R1とボビン6の周縁部とを接続する第3経路R3を導線7が通るように、導線7を保持する第3保持部である。第3溝33は、導線7の引出溝である。第3溝33は、第2溝12で折り返された導線7を第2側面6e側に引き出し可能にする。
【0042】
この第3溝33と、上記した複数の第2溝32とは、一直線上に配置されて、径方向に連続している。これらが連続することで形成される一本の溝は、たとえば、第2側面6eに直交するように延びる。このように、複数の第2溝32および第3溝33自体が、第2経路R32および第3経路R33をそれぞれ形成している。第2溝32および第3溝33の断面形状および大きさは、上記した第1溝11のそれと同様であってもよい。
【0043】
第1溝11に対する第2溝22の交差部にも、上記した第1湾曲部12aや第2湾曲部12bと同様の湾曲部が設けられている。第1溝11に対する第2溝32および第3溝33の交差部にも、上記した第1湾曲部12aや第2湾曲部12bと同様の湾曲部が設けられている。ただし、これらの湾曲部は、渦巻状に連続する第1経路R1上における中央貫通孔6cから遠い側の壁部に設けられている。
【0044】
以上の構成を備えたボビン6では、ボビン6の保持される導線7の経路および長さを自在に調整可能である。すなわち、上記したように、複数の第1経路R1および複数の第2経路R2は接続されているため、導線7は、巻線方向に沿う第1経路R1のみならず、第2経路R2を介して、巻線方向から逸れるように巻かれ得る。
【0045】
たとえば、
図5に示されるコイル部10のように、導線7が第2溝12(第2経路R2)を通らないように巻かれ得る。その場合、導線7の第1端部7aは、第3溝13を通って引き出される。一方、導線7の第2端部7bは、中央貫通孔6cおよびフェライト部8のスリット8b(
図6参照)を通って、第1側面6d側から引き出される。第3溝13の位置とスリット8bの位置とが揃っていることにより、第1端部7aおよび第2端部7bは同じ位置から引き出される。
【0046】
一方、
図7に示されるコイル部10Aのように、導線7は、ターンT(n−1)を形成した後、ターンT(n)を形成することなく第1経路R1から分岐して、第2溝12を通るように巻かれ得る。最外周の第1溝11には、導線7は巻かれない。この場合でも、導線7の第1端部7aは、第3溝13を通って引き出される。なお、導線7の第2端部7bは、コイル部10と同様、フェライト部8のスリット8bを通って、第1側面6d側から引き出される。
【0047】
本実施形態のコイル装置1によれば、第2経路R2は、巻線方向に交差する方向に延び、隣接する第1経路R1の間を接続する。よって、第1経路R1を通る導線7は、そのまま第1経路R1を通ってもよいし、第1経路R1から分岐して第2経路R2を通ってもよい。これにより、所望のインダクタンスに近づく経路を選択して、ボビン6に導線7を保持することが可能になる。ボビン6に設けられた第1溝11と第2溝12とによって、そのような経路の選択が可能になっているため、ボビン6の外部に追加の部品を設ける必要がない。よって、部品数の増加が抑えられながらも、ボビン6において導線7の巻き方が調整される。その結果として、製造上のばらつき等に起因するインダクタンスの変化を抑え、均等化することができる。
【0048】
上記した特許文献1に記載の装置では、ガイド部、第1フック、第2フック、および保持部は、コイルユニットの内部に収めようとすると格納空間が別途必要となり、外観寸法(縦横の高さ)が大きくなってしまう。よって、装置の大型化を招く。また、第2フックは可動部品であるため、長寿命的な強度や環境による耐振動などが劣る。これに対し、本実施形態のコイル装置1では、導線7の巻き方をボビン6の範囲内で調整できるため、コンパクト化が図られている。また、可動部品は設けられていないため、耐振動の観点でも有利である。
【0049】
また、特許文献1に記載の装置では、導線が巻かれるコアと、ガイド部とが一体なのか別体なのかは明らかでない。これらが別体である場合には、これらを接着するための接着部材が必要になる。本実施形態のコイル装置1では、ボビン6に第1溝11や第2溝12等の保持部が一体的に形成されるため、接着部材は不要であり、必要部材の縮小が図られている。
【0050】
コイル装置1では、
図5および
図7に示されるように、導線7が第2経路R2を通ったとしても通らなかったとしても、第3経路R3に導線を通して、導線7を引き出すことができる。導線7が外部に引き出される位置を揃えることができるので、構成がシンプルである。
【0051】
上記した特許文献1に記載の装置では、導線が複数のガイド部のいずれを通るかによって、外部への引き出し方が変わる。そのため、引き出し方が複雑になるとともに、第1フックから離れたガイド部が選択されるほど、ガイド部から第2ブックに至るまでの導線経路が長くなってしまう。結果として、漏えい磁界や電力ロスの増大を招き得る。本実施形態のコイル装置1によれば、ボビン6に第3溝13が設けられていることにより、外部への導線7の引き出し方は統一されており、簡易である。漏えい磁界や電力ロスも抑え得る。
【0052】
コイル装置1では、第1保持部および第2保持部として、第1溝11および第2溝12がボビン6に直接設けられている。すなわち、導線7を保持する保持部が、ボビン6に一体的に形成されている。よって、ボビン6とは異なる部材(すなわち別部材)が不要になっており、必要部材の縮小が図られている。部品数の増加を招くことなく、導線7の巻き方を調整できる。
【0053】
また、中央貫通孔6cの近傍にも第2溝22が設けられているため、第2溝22によって、インダクタンスの微調整が可能になっている。外周側の第2溝12の方がインダクタンスの調整効果は大きいが、内周側の第2溝22をインダクタンスの調整に併用してもよい。
【0054】
コイル装置1によれば、コイル部10およびコイル部10Aとは別の構成例が種々実現され得る。たとえば、
図8の(a)に示されるように、第2溝12(第2経路R2)を通った導線7が、隣接する2つの第1溝11(2つの第1経路R1)において逆方向に巻かれたコイル部10Bが採用されてもよい。コイル部10Bでは、導線7は、ターンT(n−1)を形成した後、ターンT(n)を形成することなく第1経路R1から分岐して、第2溝12を通るように巻かれ得る。さらに、導線7は、最外周の第1溝11を逆方向に巻かれ、第1端部7aは第3溝33を通って引き出される。これにより、第2溝12と第3溝33との間の90度の範囲で延在するターンT(n−1)の第2延在部7qと、折り返された第3延在部7rとにおいて、電流の方向は同じにならない。すなわち、
図8の(b)に示されるように、第2溝12と第3溝33との間の90度の範囲で延在するターンT(n−2)の第1延在部7pと、第2延在部7qとで電流の方向は同じであるが、第2延在部7qと第3延在部7rとにおいて、電流の方向は逆である。なお、導線7を流れる電流が交流である場合、ある瞬間において上記の関係(
図8の(b)に示される関係)が成り立っている。これにより、隣り合う線材の磁束が打ち消し合う。
【0055】
導線7が第2経路R2を通ると、本来、隣接する第1経路R1を通るべき導線部分が余ることになる。この余った導線7が、隣接する第1経路R1において逆方向に巻かれることにより、導線7の余り(ボビン6からはみ出す長さ)を少なくできる。また、隣接する第1経路R1において、導線7が逆方向に巻かれることにより、導線7から生じる磁束が打ち消し合い、余った導線7からの磁束が給電性能に影響を及ぼすことが抑えられる。なお、コイル部10Bにおいて、第2延在部7qと第3延在部7rとが、導線7の余りの一部分であってボビン6に巻かれた部分に相当する。
【0056】
続いて、第2実施形態に係るコイル装置のコイル部10Cについて説明する。
図9の(a)および
図9の(b)に示されるように、コイル部10Cは、ボビン6の裏面側に配置されたシールド板(非磁性部材)9Cを含む。シールド板9Cは、非磁性材料であって導電性を有する材料からなる。シールド板9Cは、たとえば、アルミニウム板や銅板等からなる。シールド板9Cは、その裏面側において、導線7を保持する第4保持部である第4溝14を含む。シールド板9Cの裏面側には、U字状に折り返された形状の複数の第4溝14と、複数の第4溝14を接続する複数の接続溝24とが設けられている。複数の第4溝14のうち、1つの第4溝14は第1側面9dに達しており、別の1つの第4溝14は、上記の第4溝14とは異なる位置で第1側面9dに達している。すなわち、第4溝14および接続溝24は、導線7が第4経路R4および接続経路R24をそれぞれ通るように、導線7を保持する第4保持部である。
【0057】
コイル部10Cによっても、シールド板9Cの裏面において導線7の経路を自在に調整可能になっている。たとえば、導線7は、最外周の第1溝11をバイパスした上で、シールド板9Cの第1側面9dに形成されたスリット9f(スリット9fはボビン6の第3溝13と同じ位置にある)を通ってシールド板9Cの裏面側に回り込む。スリット9fは、裏面側の第4溝14に連絡している。スリット9fを通る導線7の一部分は、表裏反転部7cである。さらに、導線7は、2つのU字状の第4溝14を通った後、3つの接続溝24を通り、上記の別の第4溝14を通って第1側面9dから引き出される。第2端部7bは、フェライト部8のスリット8bを通って、第1側面6d側から引き出される。第3溝13の位置すなわちスリット9fの位置とスリット8bの位置とが多少ずらされていることにより、表裏反転部7cと第2端部7bとの干渉は避けられている(
図10参照)。
【0058】
コイル部10Cによれば、第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。さらには、シールド板9Cの第4保持部に導線7の余りを保持することにより、導線7の余りを少なくできる。第4保持部は、コイル装置が対向する第2コイル装置とは反対側である裏面側に設けられているため、第4保持部を通る導線7の磁束は、シールド板9Cがシールドとなって、第2コイル装置側に漏れにくくなる。そのため、第4保持部に保持された導線7の磁束が給電性能に影響を及ぼすことが抑えられる。
【0059】
コイル装置の特性上、組立時のばらつきによる定数調整のために導線7の長さはある一定以上は必要であるが、シールド板9に設けられた第4保持部は、導線7の余長を隠す手段として有効である。
【0060】
続いて、第3実施形態に係るコイル装置のコイル部10Dについて説明する。
図11の(a)および
図11の(b)に示されるように、コイル部10Dは、ボビン6の裏面側に配置されたシールド板(非磁性部材)9Dを含む。シールド板9Dは、非磁性材料であって導電性を有する材料からなる。シールド板9Dは、たとえば、アルミニウム板や銅板等からなる。シールド板9Dは、その裏面側において、導線7を保持する第4保持部である第4溝34を含む。シールド板9Dの裏面側には、複数のループ状の第4溝34と、複数の第4溝34と第1側面(周縁部)9dとを接続する複数の第5溝15とが設けられている。複数の第4溝34は、同心状の円形をなしている。2本の第5溝15が、第4溝34の中央で十字状に交差している。2本の第5溝15のそれぞれは、第1側面9dおよび第2側面9e(
図13の(a)参照)に達している。また、シールド板9Dの裏面側には、複数の第4溝34と第1側面9dとを接続する1つの接続溝25が設けられている。接続溝25は、第1側面9dに達しており、上記した第5溝15と平行に延びる。すなわち、第4溝34、第5溝15、および接続溝25は、導線7が、ループ状の第4経路R34、十字状の第5経路R5、および接続経路R25を通ることができるように、導線7を保持する第4保持部または第5保持部である。
【0061】
コイル部10Dにおいて、導線7は、最外周の第1溝11をバイパスした上で、シールド板9Dの第1側面9dに形成されたスリット9f(スリット9fはボビン6の第3溝13と同じ位置にある)を通ってシールド板9Dの裏面側に回り込む。スリット9fを通る導線7の一部分は、表裏反転部7cである。さらに、導線7は、最外周の第4溝34を通った後、1つの接続溝25を通って第1側面9dから引き出される。第2端部7bは、フェライト部8のスリット8bを通って、第1側面6d側から引き出される。第3溝13の位置すなわちスリット9fの位置とスリット8bの位置とが多少ずらされていることにより、表裏反転部7cと第2端部7bとの干渉は避けられている(
図12参照)。
【0062】
また、
図13の(a)および
図13の(b)に示されるように、シールド板9Eの裏面側における導線7の延在距離が短くされたコイル部10Eが採用されてもよい。コイル部10Eでは、シールド板9Dと同じシールド板9Eが用いられる。コイル部10Eでは、ボビン6において折り返され逆方向に巻かれた第3延在部7rが設けられる。その後、導線7は、第2側面9e側に形成されたスリット9gを通ってシールド板9Eの裏面側に回り込む。スリット9gは、裏面側の第5溝15に連絡している。スリット9gを通る導線7の一部分は、表裏反転部7gである。さらに、導線7は、最外周の第4溝34を1/4周だけ通った後、1つの接続溝25を通って第1側面9dから引き出される。コイル部10Eにおいても、
図12に示した第1端部7aおよび第2端部7bと同じ位置関係で、第1端部7aおよび第2端部7bが引き出される(
図14参照)。
【0063】
コイル部10Dおよびコイル部10Eによれば、第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。さらには、ボビン6上で導線7の第1端部7aおよび第2端部7bの出入り口の位置や方向が異なる場合でも、シールド板9D,9Eの第4経路に沿って余長導線7dを保持することができる。また、第4経路と第5経路とを適宜組み合わせて経路を工夫することで、常に定位置方向から導線7の第1端部7aおよび第2端部7bを引き出すことができる。そのため、コイル装置1から引き出される導線7の末端処理(コネクタ化や端子固定等)をする際に余長を収納する空間を別途確保することなく、定位置に導線を誘導することが可能である。
【0064】
続いて、第4実施形態に係るコイル装置について説明する。第1〜第3実施形態においては、サーキュラー型のコイルCは、ボビン6に保持されていたが、第4実施形態に係るコイル装置では、コイルCは、保持部材としてのカバー3に保持される。カバー3の内面側には、上記した各形態における第1溝(ターン収容溝)および第2溝(逃がし溝)と同様の溝が形成され得る。カバー3の内面側には、上記した各形態における第3溝(引出溝)と同様の溝が形成されてもよい。第4実施形態において、これらの溝は、カバー3の平板部(フェライト部8およびベース4に対面する部分)の厚みの範囲内に形成される。カバー3とフェライト部8との間には、絶縁プレートが配置され得る。このような構成を有するコイル装置では、カバー3が保持部材を兼ねているため、ボビン6は不要になっている。ボビン6が省かれることにより、コイル装置の薄型化が図られ得る。第4実施形態のコイル装置によっても、上記したコイル装置と同様の作用・効果が奏される。
【0065】
続いて、第5実施形態に係るコイル装置のコイル部について説明する。
図15の(a)および
図15の(b)に示されるように、コイル部のボビン6Fは、いわゆるソレノイド型のコイル用の保持部材である。ボビン6Fは、複数のターンに対応する第1経路R41を導線7が通るように、導線7を保持する複数の第1溝(第1保持部)41と、隣り合う第1経路R41の間を接続する第2経路R42を導線7が通るように、導線7を保持する第2溝(第2保持部)42と、最外周の第1経路R41と第1側面(周縁部)6dとを接続する第3経路R43を導線7が通るように、導線7を保持する第3溝(第3保持部)43とを含む。また、コイル部のシールド板9Fは、その裏面側において、導線7を保持する第4保持部であるU字状の第4溝44を含む。第4溝44は、導線7が第4経路R44を通るように、導線7を保持する第4保持部である。このようなボビン6Fおよびシールド板9Fを備えるコイル装置によっても、上記したサーキュラー型のコイル装置と同様の作用・効果が奏される。
【0066】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、第2溝の個数と位置は、任意に設定され得る。コイル部10,10A,10Bにおいて、第3溝13が設けられる位置と第3溝33が設けられる位置とは、周方向に任意の角度だけずれていてもよい。ずれる角度は、90度である場合に限られず、60度、120度、または180度等の角度であってもよい。第3溝を周縁部の3箇所以上に設けてもよい。
【0067】
導線7を保持する保持部は、溝である形態に限られない。たとえば、保持部は、ボビン6の表面6aまたはカバー3の内面等から突出した突起やピン等であってもよい。複数の突起やピン等が配列されることで、導線7を保持することができる。保持部は、ボビン6の表面6aまたはカバー3の内面等に立設された平行な2枚の壁部であってもよい。2枚の壁部間に導線7が嵌まる(挟まれる)ことで、導線7を保持することができる。突起、ピン、または壁部と、溝とを組み合わせた保持部としてもよい。
【0068】
フェライト部8は省略されてもよい。シールド板9は省略されてもよい。その場合に、ベース4の裏面に、第4保持部や第5保持部が設けられてもよい。
【0069】
水中航走体といった車両以外の移動体のバッテリを充電するための非接触給電システムに、本開示のコイル装置が適用されてもよい。また、モータやセンサー等の電力を消費する部品に電力を直接的に供給するシステムに、本開示のコイル装置が適用されてもよい。誘導加熱システムや渦流探傷システムに、本開示のコイル装置が適用されてもよい。