特許第6717162号(P6717162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6717162-車両用計器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717162
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】車両用計器
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20200622BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   B60R16/02 640K
   B60K35/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-208126(P2016-208126)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-69770(P2018-69770A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂井 勇一
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−159389(JP,U)
【文献】 実開昭59−050832(JP,U)
【文献】 特開2006−098092(JP,A)
【文献】 米国特許第06407663(US,B1)
【文献】 特開昭64−012991(JP,A)
【文献】 特開2008−070193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 35/00
B60R 16/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニュートラルインジケータと、
ニュートラルスイッチの状態を入力する第1入力信号路と、
後進駆動装置の状態を入力する第2入力信号路と、
前記ニュートラルスイッチの状態に応じて前記ニュートラルインジケータを点灯/消灯させる点灯回路と、
前記点灯回路の有効/無効を切り替える切替回路と、
前記後進駆動装置の状態が後進中のときは前記切替回路に前記点灯回路を無効にさせて前記ニュートラルインジケータを前記ニュートラルスイッチの状態とは関係なく消灯させ、前記後進駆動装置の状態が後進中でないときは前記切替回路に前記点灯回路を有効にさせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記切替回路を有効/無効に切り替えるための切替信号を出力する複数の切替信号出力部を有し、
前記切替回路は、前記複数の切替信号出力部の切替信号のいずれかにより有効/無効が切り替えられる、
ことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の切替信号出力部の少なくとも1つの出力を監視する監視部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニュートラルインジケータの点灯回路を有する車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車は後進駆動装置を設けないものが主流であるが、比較的大型の自動二輪車においては駐車用途として特許文献1に開示されるような後進駆動装置を設ける場合がある。
【0003】
この特許文献1の後進駆動装置は、エンジン始動用のセルモータを切替装置を介して駆動軸に直結し、後進時の駆動源として利用することにより、従来のエンジンの基本形態を維持しつつ後進駆動を可能とするものである。また、逆回転回路中にニュートラルスイッチが介挿されているので、セルモータの逆回転を切替装置を介して駆動軸に伝達する際には必ず変速機がニュートラルになっており、エンジンからの正回転が駆動軸に伝達されて該駆動軸の逆回転と緩衝することがないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−178439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の後進駆動装置の状態を表示する車両用計器においては、後進時にもニュートラルスイッチがオンとなるため、そのままニュートラルスイッチの状態を表示すると後進時にニュートラルインジケータが点灯して搭乗者に違和感を与えてしまう。
【0006】
そのため、ニュートラルスイッチの状態とは別に後進駆動装置の状態も車両用計器に入力され、車両用計器はニュートラルスイッチの状態と後進駆動装置の状態の組み合わせによってニュートラルインジケータの点灯を制御する必要があるが、万が一、ニュートラルインジケータの点灯が正常に行えないと搭乗者はギアのニュートラル状態が把握できず運転に支障が出る虞がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ニュートラルスイッチの状態と後進駆動装置の状態の組み合わせによってニュートラルインジケータの点灯を制御する車両用計器の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用計器は、
ニュートラルインジケータと、
ニュートラルスイッチの状態を入力する第1入力信号路と、
後進駆動装置の状態を入力する第2入力信号路と、
前記ニュートラルスイッチの状態に応じて前記ニュートラルインジケータを点灯/消灯させる点灯回路と、
前記点灯回路の有効/無効を切り替える切替回路と、
前記後進駆動装置の状態が後進中のときは前記切替回路に前記点灯回路を無効にさせて前記ニュートラルインジケータを前記ニュートラルスイッチの状態とは関係なく消灯させ、前記後進駆動装置の状態が後進中でないときは前記切替回路に前記点灯回路を有効にさせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記切替回路を有効/無効に切り替えるための切替信号を出力する複数の切替信号出力部を有し、
前記切替回路は、前記複数の切替信号出力部の切替信号のいずれかにより有効/無効が切り替えられる。
【0009】
また、本発明に係る車両用計器の
前記制御手段は、前記複数の切替信号出力部の少なくとも1つの出力を監視する監視部を有する、
ように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニュートラルスイッチの状態と後進駆動装置の状態の組み合わせによってニュートラルインジケータの点灯を制御する車両用計器の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態である車両用計器の電気的構成図である。
図2】同車両用計器の入出力対応表である。(A)は切替信号出力部P1による切替回路の切替を表し、(B)は切替信号出力部P2による切替回路の切替を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る車両用計器Mの実施形態を添付図面を参照して以下に説明する。
【0013】
車両用計器Mは、後進駆動装置を有する大型の自動二輪自動車に搭載された車両用計器である。
車両用計器Mは、図1に示すように、イグニッション電源IGNと後進駆動装置制御手段ECUとニュートラルスイッチSWと電気的に接続しており、後進駆動装置の状態とニュートラルスイッチSWの状態に応じて、内蔵しているニュートラルインジケータLEDを点灯させる。
【0014】
イグニッション電源IGNは、車両のイグニッションがオンされているときにバッテリ電源を供給する電源である。
【0015】
後進駆動制御手段ECUは、後進駆動装置を制御するコントロールユニットである。後進駆動制御手段ECUは、例えば、CAN(コントローラエリアネットワーク)などの車載ネットワークで車両用計器Mと通信可能になっている。後進駆動制御手段ECUは、後進駆動装置の動作状態から車両が前進する状態にあるのか、後進する状態にあるのかを車両用計器に出力する。
【0016】
車両用計器Mは、ニュートラルインジケータLEDと、切替回路TRと、制御手段Pと、点灯回路と、から主に構成される。
【0017】
ニュートラルインジケータLEDは、発光ダイオードである。
【0018】
ニュートラルインジケータLEDは、アノードが切替回路TRを介してイグニッション電源IGNに接続され、カソードがダイオードD1とニュートラルスイッチSWを経由してグランドに接続されており、ニュートラルインジケータLEDの点灯回路を構成している。
【0019】
切替回路TRは、例えば、PNP型トランジスタであり、エミッタがイグニッション電源IGNに接続され、コレクタがニュートラルインジケータLEDのアノードに接続されている。切替回路TRは、ベースに制御手段Pから切替信号が入力されて、点灯回路の機能を有効/無効に切り替える。
【0020】
点灯回路は、切替回路TRにより機能が有効とされている間、ニュートラルスイッチSWのON/OFFに応じてニュートラルインジケータLEDを点灯/消灯させる。なお、ダイオードD1はニュートラルインジケータLEDのカソードからアノード側へ電流が逆流しないようにする整流作用を有する。
【0021】
制御手段Pは、例えば、CPUとROMとRAMとタイマと入出力ポートとを有するマイクロコントローラである。制御手段Pは、切替信号を出力する切替信号出力部P1,P2と、切替信号出力部P1の出力状態を入力して監視する監視部P3と、を有する。
【0022】
切替信号出力部P1は、抵抗R1を介して切替回路TRのベースに接続されている。抵抗R1は、切替信号出力部P1を過電流から保護する。
【0023】
切替信号出力部P2は、ダイオードD2を介して抵抗R1と切替回路TRのベースとの間に接続されている。ダイオードD2は切替信号出力部P2に向かって電流が逆流しないようにする整流作用を有する。
【0024】
監視部P3は、抵抗R2を介して切替信号出力部P1と抵抗R1の間に接続されている。抵抗R1は、監視部P3を過電流から保護する。また、監視部P3と抵抗R2の間には、グランドに接続されたコンデンサC1が設けられており、監視部P3の入力の耐ノイズ性を高めている。
【0025】
制御手段Pは、通常時は、切替信号出力部P1から点灯回路の機能を有効にさせる切替信号H/点灯回路の機能を無効にさせる切替信号Lを切替回路TRに出力し、切替信号出力部P2からは切替信号Lを切替回路TRに出力する。切替信号H,Lは切替信号Hが優先され、切替信号出力部P1の切替信号によって点灯回路の機能が有効あるいは無効に切り替わる。
【0026】
制御手段Pは、通常時に、図2(A)に示すように、後進駆動装置制御手段ECUから入力される後進駆動装置の動作状態が前進のときは、切替信号出力部P1から切替信号Hを出力して点灯回路を有効し、ニュートラルスイッチSWのON/OFFに応じてニュートラルインジケータLEDを点灯/消灯させる。また、制御手段Pは、後進駆動装置制御手段ECUから入力される後進駆動装置の動作状態が後進のときは、切替信号出力部P1から切替信号Lを出力して点灯回路を無効にし、ニュートラルスイッチSWの状態にかかわらずニュートラルインジケータLEDを消灯させる。
【0027】
制御手段Pは、通常時に、監視部P3により切替信号出力部P1の出力状態を監視し、切替信号出力部P1から切替信号Hを出力させようとしているにもかかわらず切替信号Hが出力されていないときに、切替信号出力部P1に機能不全があったと判断する。制御手段Pは切替信号出力部P1に機能不全があったと判断すると、図2(B)に示すように、切替信号出力部P1に代替して切替信号出力部P2を用いて点灯回路の機能を有効あるいは無効に切り替える。
【0028】
以上のように、本発明の実施形態である車両用計器Mは、ニュートラルインジケータLEDと、ニュートラルスイッチSWの状態を入力する第1入力信号路L1と、後進駆動装置の状態を入力する第2入力信号路L2と、ニュートラルスイッチSWの状態に応じてニュートラルインジケータLEDを点灯/消灯させる点灯回路と、点灯回路の有効/無効を切り替える切替回路TRと、後進駆動装置の状態が後進中のときは切替回路TRに点灯回路を無効にさせてニュートラルインジケータLEDをニュートラルスイッチSWの状態とは関係なく消灯させ、後進駆動装置の状態が後進中でないときは切替回路TRにより点灯回路を有効にさせる制御手段Pと、を備える。制御手段Pは、切替回路TRを有効/無効に切り替えるための切替信号を出力する複数の切替信号出力部P1,P2を有し、切替回路TRは、複数の切替信号出力部P1,P2の切替信号のいずれかにより有効/無効が切り替えられる。
このように構成することで、複数の切替信号出力部P1,P2のいずれかが機能不全に陥っても正常にニュートラルインジケータLEDを点灯/消灯させることができる。
【0029】
また、本発明の実施形態である車両用計器Mの制御手段Pは、複数の切替信号出力部P1,P2の少なくとも1つの出力を監視する監視部P3を有する。
このように構成することで、複数の切替信号出力部P1,P2のいずれかが機能不全に陥ったことを検出して適切に他方の切替信号出力部によって正常にニュートラルインジケータLEDを点灯/消灯させることができる。
【0030】
本発明は、上記の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されず、本発明の主旨に従う範囲で、上記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができる。
【符号の説明】
【0031】
M :車両用計器
LED :ニュートラルインジケータ
TR :切替回路
P :制御手段
P1 :切替信号出力部
P2 :切替信号出力部
P3 :監視部
IGN :イグニッション電源
ECU :後進駆動装置制御手段
SW :ニュートラルスイッチ
L1 :第1信号路
L2 :第2信号路
図1
図2