(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層と、前記基材層上に配置された第1接着層と、前記第1接着層を介して前記基材層上に配置された金属箔層と、該金属箔層上に配置されたシーラント層と、を備える蓄電装置用外装材であって、
前記基材層は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含み、
前記金属箔層は、鉄を0.5質量%以上5.0質量%以下含有するアルミニウム箔であり、
前記第1接着層が芳香族ポリウレタン系接着剤層を含み、
前記基材層のMD方向及びTD方向における、前記外装材の引張伸びが共に60%以上である、蓄電装置用外装材。
請求項5に記載の製造方法により得られたエンボスタイプ外装材の前記凹部に蓄電装置要素を配置し、前記凹部を覆うように前記エンボスタイプ外装材を折り返し重ねる工程と、
前記エンボスタイプ外装材の折り返し重ねられた部分を熱融着する工程と、
を備える、蓄電装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(蓄電装置用外装材10)
まず、本実施形態に係る蓄電装置用外装材10(以下、単に「外装材10」とも記す。)について説明する。外装材10は、正極、セパレーター、負極及び電解液等の電池要素を覆って、電池内部への水分の浸入を防止したり、内部で発生した物質(例えば、水分の浸入により発生するフッ酸等)の外部への流出を防止するための包装材である。このような外装材10は、
図1に示すように、基材層11と、基材層11上に配置される金属箔層13と、金属箔層13上に配置されるシーラント層16とを基本構成として備えている。外装材10には、基材層11と金属箔層13との間に接着層12が配置されていてもよい、すなわち、基材層11上に配置された接着層12をさらに備え、金属箔層13が接着層12を介して基材層11上に配置されていてもよい。
【0020】
また、外装材10には、金属箔層13とシーラント層16との間に腐食防止処理層14及び/又は接着層15が配置されていてもよい。すなわち、金属箔層13上に配置された腐食防止処理層14及び/又は接着層15をさらに備え、シーラント層16が腐食防止処理層14及び/又は接着層15を介して金属箔層13上に配置されていてもよい。外装材10では、基材層11が最外層であってもよく、シーラント層16が最内層あってもよい。すなわち、外装材10は、蓄電装置用の容器として、基材層11を外側にし、シーラント層16を内側にして、蓄電装置を収容するものであってもよい。
【0021】
本実施形態における外装材10のMD方向及びTD方向における引張伸びは共に50%以上であり、60%以上であることが好ましい。外装材10の引張伸びが共に50%以上であることにより、基材層11の金属箔層13に対する保護効果が増大し、成型加工時の破断を抑制することができる。外装材10のMD方向及びTD方向における引張伸びは共に200%以下であってもよく、150%以下であってもよい。
【0022】
ここで、MD方向とは「Machine Direction」の略であり、基材層11の製造における流動方向を指す。また、TD方向とは「Transverse Direction」の略であり、基材層11の平面におけるMD方向と垂直な方向である。外装材10の引張伸びは、JIS Z 2241に記載される引張試験方法に準じ、引張速度25mm/分、温度23℃、及び湿度50%RHの条件で測定された原標点距離の増分の、原標点距離に対する百分率として算出される。
【0023】
また、外装材10の基材層側の表面及びシーラント層側の表面の少なくとも一方の(望ましくは、両方の)静摩擦係数は、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。外装材10の基材層側表面及び/又はシーラント層側表面の静摩擦係数が0.1以上であることにより、成型加工時の外装材10の凹部以外の部分(蓋部又はブランク部)の押さえが効いて、シワの発生を抑制できる。外装材10の基材層側の表面及びシーラント層側の表面の静摩擦係数は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。外装材10の基材層側表面及びシーラント層側表面の静摩擦係数が0.4以下であることにより、外装材10の成型加工エリア(凹部22)への流れ込み量が増加し、より良好な成型性が得られる。さらに、静摩擦係数をμ
Sとし動摩擦係数をμ
Dとしたときの、外装材10の基材層側の表面及びシーラント層側の表面の静摩擦係数と動摩擦係数との差(μ
S−μ
D)は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。静摩擦係数μ
Sと動摩擦係数μ
Dとの差(μ
S−μ
D)が0.1以下であることにより、成型加工時に、外装材10の凹部及びフランジ押さえ部の滑り性のバランスがとれ、外装材10の構成材料が凹部へ流れ込みやすくなる。その結果、成型加工時に凹部が薄くなりすぎず、より破断を抑制することができる傾向がある。基材層側表面及びシーラント層側表面の静摩擦係数を低減する方法、又は、静摩擦係数と動摩擦係数との差を低減する方法としては、例えば、脂肪酸アマイド等の滑剤を溶媒に溶かし、溶液をグラビアコート、リバースコート、ロールコート又はバーコート等の方法で基材層側表面及びシーラント層側表面に塗工し、乾燥することで滑剤層を得る等の方法が挙げられる。塗工する滑剤の量により静摩擦係数値を制御することができる。
【0024】
上記した静摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS P 8147に記載される水平法を用いた摩擦試験方法に準じて、測定される。このとき、静摩擦係数及び動摩擦係数は、成型金型と同じ材質からなり、同様の表面状態を有する金属と、外装材との間で測定される。
【0025】
次に、外装材10を構成する各層についてより詳細に説明する。
【0026】
[基材層11]
基材層11は、蓄電装置を製造する際の後述する加圧熱融着工程における耐熱性を外装材10に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。基材層11は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成される。基材層11が延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含むことにより、成型加工時に金属箔層13を保護し、破断を抑制することができる。また、外装材10の引張伸びを大きくする観点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエステル樹脂層であることが好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ポリアミド樹脂層であることが好ましい。さらに、突刺強度又は衝撃強度に優れる点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。なお、基材層11は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の両層を含んで構成されていてもよい。
【0027】
基材層11の厚さは、例えば20μm〜50μmであることが好ましく、25μm〜50μmであることがより好ましく、30μm〜40μmであることがさらに好ましい。基材層11の厚さが20μm以上であることにより、金属箔層13の保護効果が向上し、より優れた成型性を得ることができる。基材層11の厚さが50μm以下であることにより、成型加工後の反り量を低減することができる。なお、基材層11の厚さは積層後のものであり、後述する接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着層15及びシーラント層16についても同様である。本明細書において、少なくとも基材層11、金属箔層13、腐食防止処理層14及びシーラント層16の積層前の厚さは、積層後の厚さ同等であるものとする。
【0028】
[接着層12]
接着層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。接着層12を構成する接着剤は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びアクリルポリオール等の主剤と、芳香族系ポリイソシアネート等の硬化剤とを含む2液硬化型の芳香族ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。接着層12は、外装材10の引張伸びを大きくする観点から、ポリエステルポリオールからなる主剤と、芳香族系ポリイソシアネートからなる硬化剤とを含む2液硬化型の芳香族ポリエステルウレタン系接着剤であることがより好ましい。上記ウレタン系接着剤を塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して、基材層11と金属箔層13とを強固に接着させることが可能となる。
【0029】
接着層12の厚さは、接着強度、追随性及び加工性等の点から、例えば1〜10μmであることが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。
【0030】
[金属箔層13]
金属箔層13は、防湿性、延展性等の加工性及びコストの面から、例えばアルミニウム箔から構成される。アルミニウム箔は、耐ピンホール性、及び成形加工時の延展性に優れる点から、鉄を含むことが好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量としては、0.5〜5.0質量%であることが好ましく、0.7〜2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.5質量%以上であることにより、外装材10の優れた耐ピンホール性及び延展性が得られる。また、鉄の含有量が5.0質量%以下であることにより、外装材10の優れた柔軟性が得られる。
【0031】
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び成型加工性の点から、例えば30〜60μmであることが好ましく、40〜60μmであることがより好ましい。金属箔層13の厚さが30μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。金属箔層13の厚さが60μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電装置の重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0032】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制し、また、金属箔層13と接着層15との密着力を高める役割を果たす。
【0033】
腐食防止処理層14は、塗布型又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜であることが好ましい。この塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と接着層15の密着力をより強固にするので、電解液等の蓄電装置要素に対して優れた耐性が得られる。また、腐食防止処理層14は、必要とされる機能に応じて接着層12と金属箔層13の間に追加されてもよい。
【0034】
腐食防止処理剤の塗膜は、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理、及び、クロム酸塩とリン酸塩とフッ化物と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるクロメート処理等により形成される。なお、腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上記した塗膜には限定されない。腐食防止処理層14は、例えば、リン酸塩処理及びベーマイト処理等によって形成された塗膜であってもよい。
【0035】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm〜5μmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましい。
【0036】
[接着層15]
接着層15は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16を接着する層である。外装材10は、接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
【0037】
熱ラミネート構成における接着層15を構成する接着成分は、ポリオレフィン系樹脂を酸又はエポキシ化合物でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂又はエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で構成された場合のシーラント層16と、極性を有することが多い腐食防止処理層14の両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、外装材10の電解液等の蓄電装置要素に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生しても接着層15の劣化による密着力の低下を防止し易い。
【0038】
酸変性ポリオレフィン系樹脂の製造に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン系樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂における酸変性の方法としては、酸によってグラフト変性する方法、及び、酸を有する単量体を共重合する方法等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸及び酸無水物等が挙げられ、上記酸は無水マレイン酸であることが好ましい。接着層15は無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含むことがより好ましい。接着層15が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むことにより、電解液が浸透してもシーラント層16と金属箔層13との密着力を維持しやすくなる。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂の酸による変性率(例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜5質量%であることがより好ましい。
【0041】
熱ラミネート構成の接着層15は、さらに、スチレン系又はオレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。これにより、冷間成形時に接着層15にクラックが生じて白化することを抑制し易く、濡れ性の改善による密着力の向上及び異方性の低減による成膜性の向上等が期待できる。これらのエラストマーはポリオレフィン系樹脂中にナノメートルオーダーで分散、又はポリオレフィン系樹脂と相溶していることが好ましい。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂は、単独で接着層15を構成してもよく、2種以上を組み合わせて接着層15を構成してもよい。
【0043】
熱ラミネート構成の接着層15は、上記接着成分を押出し装置で押し出すことにより製造できる。熱ラミネート構成の接着層15の接着成分のメルトフローレート(MFR)は、230℃、荷重2.16kgfの条件において、4〜30g/10分であることが好ましい。熱ラミネート構成の接着層15の厚さは例えば5〜40μmであることが好ましい。
【0044】
ドライラミネート構成の接着層15における接着成分としては、例えば、接着層12で挙げたものと同様の2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。ドライラミネート構成の接着層15は、エステル基及びウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には接着層15は熱ラミネート構成であることが好ましい。
【0045】
[シーラント層16]
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、接着層15で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0046】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択されればよい。例えば、防湿性を付与する点では、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂層と、エチレン−環状オレフィン共重合体及びポリメチルペンテン等の樹脂層とを備えた多層フィルムが使用できる。また、シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0047】
シーラント層16の厚さは、例えば20〜85μmであることが好ましく、30〜40μmであることがより好ましい。接着層15とシーラント層16の厚さの合計は、例えば25〜90μmであることが好ましく、30〜60μmであることがより好ましい。接着層15とシーラント層16の厚さの合計が25μm以上であることにより、蓄電装置要素又は電流取り出し部のタブリードと金属箔層13との絶縁性を維持し易くなる。接着層15とシーラント層16の厚さの合計が90μm以下であることにより、成型性を損なうことなく、外装材10の厚膜化を抑えることが可能となる。
【0048】
(外装材10の製造方法)
次に、外装材10の製造方法について説明する。ただし、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0049】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11〜S13を有する方法が挙げられる。
工程S11:金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14を形成する工程。
工程S12:金属箔層13の他方の面上に接着層12を介して基材層11を形成する工程。
工程S13:腐食防止処理層14上に、接着層15を介してシーラント層16を形成する工程。
【0050】
[工程S11]
腐食防止処理層14は、例えば、金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥することにより、金属箔層13の一方の面上に形成される。腐食防止処理剤としては、例えば、上述のセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、及びクロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されるものではなく、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、又はバーコート等の各種方法を採用できる。
【0051】
[工程S12]
基材層11は、例えば、金属箔層13の他方の面上に、接着層12を形成する接着剤を用いて、ドライラミネーション等の手法で貼り合わせられることにより、金属箔層13の他方の面上に形成される。
【0052】
基材層11と金属箔層13との接着性の向上のため、基材層11を形成した後の積層体を室温〜100℃の範囲でエージング(養生)してもよい。エージング時間は、例えば1〜10日である。
【0053】
[工程S13]
工程S12後、基材層11、接着層12、金属箔層13及び腐食防止処理層14がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14側に、接着層15を介してシーラント層16が形成される。シーラント層16は、ドライラミネーション及びサンドイッチラミネーション等によって積層されてもよく、接着層15とともに共押出し法によって積層されてもよい。シーラント層16は、接着性向上の点から、例えばサンドイッチラミネーションによって積層される、又は、接着層15とともに共押出し法によって積層されることが好ましく、サンドイッチラミネーションによって積層されることがより好ましい。
【0054】
以上説明した工程S11〜S13により、外装材10を得ることができる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記S11〜S13を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12を行ってから工程S11を行ってもよい。
【0055】
(エンボスタイプ外装材20の製造方法)
続いて、外装材10からエンボスタイプ外装材20を製造する方法について
図2〜
図5を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る製造方法で製造されるエンボスタイプ外装材20を示す図である。
図3は、
図2に示すエンボスタイプ外装材の製造に用いられる成型装置25の斜視図である。
図4の(a)〜(c)は、外装材の成型加工工程を説明するための模式的な縦断面図であり、
図5は、
図4の(c)の横断面図である。エンボスタイプ外装材20は、
図2に示すように、電池要素を収容するための凹部22を長手方向の一方側に有し、他方側には平面状の蓋部24を有している。エンボスタイプ外装材20は、後述する蓄電装置の製造の際、蓋部24が凹部22を覆うように折り曲げられる。
【0056】
このようなエンボスタイプ外装材20は、
図3に示すようなパンチ金型26及びダイ金型27を備えた成型装置25を用いて、以下の工程S21〜S23により外装材10から製造することができる。なお、ダイ金型27には、パンチ金型26の横断面積と略同じ大きさの開口を有する開口部28が形成されている。
工程S21:パンチ金型26と、パンチ金型26に対応する開口部28を有するダイ金型27とを備える成型装置25を準備する工程。
工程S22:蓄電装置用外装材10が開口部28を覆うように蓄電装置用外装材10をパンチ金型26とダイ金型27との間に配置する工程。
工程S23:パンチ金型26を開口部28内に押し込み、蓄電装置用外装材10に凹部22を形成する工程。
【0057】
[工程S21〜S22]
パンチ金型26は、
図3及び
図4の(a)に示すように、ダイ金型27の開口部28の上部に配置される。外装材10は、この開口部28を覆うようにパンチ金型26とダイ金型27との間に配置される。パンチ金型26の少なくとも底面及び側面の角部は丸みを有していることが好ましい。パンチ金型26の底面の角部の丸さは、上記丸みを円弧と考えたときの曲率半径であるパンチラジアスRpによって表され(
図4の(a)参照)、側面の角部の丸さはコーナーラジアスRcpによって表される(
図5参照)。
【0058】
ダイ金型27は、その上面が外装材10と同じか又はそれ以上の大きさを有する直方体の形状を有し、開口部28のxy平面における形状はパンチ金型26のxy平面における断面の形状と略同一である。ダイ金型27は、上面を長辺(長手方向)の半分で分けたときに半分よりも一方に偏った位置に開口部28(貫通孔)を有することが好ましく、上面を長辺の半分で分けたいずれか一方の半面内に開口部28(貫通孔)を有することがより好ましい(
図3参照)。
【0059】
ダイ金型27が上記位置に開口部28を有することにより、凹部22が形成されたエンボスタイプ外装材20を得ることができ、エンボスタイプ外装材20の片方を折り返して、上記凹部22中に蓄電装置を収容する容器を製造することができる。開口部28は、
図3におけるxy平面における一辺の長さがともに100mm以上であることが好ましい。開口部28がこのような大きさの形状であることにより、成型加工により外装材10が
図3のxy平面における各コーナー部に流れ込む際に、外装材10の隣接する別のコーナー部への流れ込みの影響を受けないことからより良好な成型性を得ることができる。
【0060】
また、
図4の(b)に示すように、外装材10は、フィルム押さえ29によって、上記ダイ金型27上に固定される。つまり、外装材10は、ダイ金型27とフィルム押さえ29とによって挟持される。一方、ダイ金型27において、開口部28によって形成される角部は丸みを有していることが好ましい。開口部28のyz平面の角部の丸さはそれぞれ、上記丸みを円弧と考えたときの曲率半径であるダイラジアスRdによって表される(
図4の(a)及び
図5参照)。
【0061】
パンチ金型26とダイ金型27との外装材10を挟み込む部分の角部の曲率半径である、パンチラジアスRpとダイラジアスRdとはそれぞれ1mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上4mm以下であることがより好ましい。パンチラジアスRpとダイラジアスRdとがそれぞれ1mm以上であることにより、成型加工時に外装材10が金型クリアランスQ内に、引っ掛かることなく流れ込むことができる。また、パンチラジアスRpとダイラジアスRdがそれぞれ5mm以下であることにより、外装材10が金型クリアランスQ内に流れ込む際の厚膜化によるシワの発生を抑制することができる。
【0062】
またパンチ金型26の各コーナーラジアスRcpは、1mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上4mm以下であることがより好ましい。コーナーラジアスRcpが1mm以上であることにより、成型加工時の外装材10の流れ込みによる厚膜化を分散でき、クリアランスQ内の引っ掛かりを抑制することができる。コーナーラジアスRcpが5mm以下であることにより、電極部材を入れ、真空封止した際に、コーナー形状の崩れを抑制することができる。
【0063】
[工程S23]
工程S22の後、パンチ金型26は開口部28内に押し込まれ(
図4の(c)参照)、外装材10に凹部22が形成されてエンボスタイプ外装材20となる。この押し込みの際の押込(成型)温度は、−10〜50℃程度(冷間成型)であり、押込速度は、0.1〜30mm/秒程度であり、押込保持時間は、0〜10秒程度である。また、押込(成型)深さPは特に制限されないが、外装材10が成型性に優れることから、8mm以上とすることができ、10mm以上であってもよい。また、金属箔層13の薄膜化によるピンホール発生を抑制する観点から、押込(成型)深さPは16mm以下であることができる。
【0064】
このようにして製造されたエンボスタイプ外装材20は、上述したように、長辺(長手方向)の半分で分けたときに半分よりも一方に偏った位置に凹部22を有する。本実施形態の外装材10は優れた成型性を有することから、片面のみに深い凹部22を形成する片側成型加工電池であっても破断等が発生することなくエンボスタイプ外装材20を得ることができる。
【0065】
パンチ金型26は、ダイ金型27の開口部28内にクリアランスQを介して押し込まれる(
図4の(c)参照)。クリアランスQは、パンチ金型26がダイ金型27の開口部28内に押し込まれた際のパンチ金型26とダイ金型27との最短の離間距離である。クリアランスQは、外装材10の厚さの1倍〜1.5倍であることが好ましく、1.1倍〜1.4倍であることがより好ましい。金型クリアランスQが外装材10の厚さの1倍以上であることにより、金型クリアランスQ内の外装材10の引っ掛かりを抑制することができる。また、金型クリアランスQが外装材10の厚さの1.5倍以下であることにより、成型加工エリア22側面のシワをシゴキの効果で抑制することができる。
【0066】
(蓄電装置30)
次に、本実施形態に係る蓄電装置30について説明する。蓄電装置30は、上記蓄電装置用外装材10を用いて得られる。蓄電装置30は、蓄電装置要素と該蓄電装置要素を収容する容器とを備え、上記容器は上記外装材10から形成される。上記容器は、好ましくは、凹部を有する上記エンボスタイプ外装材20から形成され、上記凹部内に上記蓄電装置要素が配置される。蓄電装置要素としては、例えば、正極、セパレーター、負極及び電解液等の電池要素が挙げられる。蓄電装置30のエネルギー容量は、上記蓄電装置要素の収容量、すなわち、外装材10の成型加工量に依存し、成型深さが大きい程エネルギー容量を大きくすることが可能であると考えることができる。
【0067】
本実施形態に係る蓄電装置30における上記容器がエンボスタイプ外装材20から形成される場合、エンボスタイプ外装材20は長辺(長手方向)の半分で分けたときの一方又は両方に凹部を有し、少なくとも一方の凹部の成型深さは8mm以上であることが好ましい。少なくとも一方の凹部の成型深さが8mm以上であることにより、十分なエネルギー容量を得ることができる傾向がある。エンボスタイプ外装材20が長辺の半分で分けたときの両方に凹部を有する場合、両方の凹部の成型深さの合計は16mm以下であることが好ましい。両方の凹部の成型深さの合計が16mm以下であることにより、金属箔層13が薄膜化してピンホールが生じることを抑制することができる傾向がある。ピンホールが生じれば、外部から水分が浸入するため、電池性能が劣化するおそれがある。
【0068】
(蓄電装置の製造方法)
次に、上述したエンボスタイプ外装材20を用いて蓄電装置30を製造する方法について
図6を参照しながら説明する。
図6は、エンボスタイプ外装材20(蓄電装置用外装材10)を用いて片側成型加工電池を製造する工程を示す斜視図である。なお、エンボスタイプ外装材20のような外装材を2つ設け、このような外装材同士を貼り合せる際のアライメントを調整して、両側成型加工電池を作製してもよい。
【0069】
片側成型加工電池である蓄電装置30は、以下の工程S31〜S33により製造することができる。
工程S31:エンボスタイプ外装材20の凹部22に蓄電装置要素を配置し、凹部22を蓋部24が覆うようにエンボスタイプ外装材20を折り返し重ねる工程。
工程S32:エンボスタイプ外装材20の折り返し重ねられた部分の端部等を加圧熱融着して、エンボスタイプ外装材20の全周を封止する工程。
【0070】
ここで、蓄電装置の製造方法について、二次電池を例に挙げて説明する。二次電池は、例えば、以下の工程S31a〜S33aにより製造される。
図6の(a)〜(c)は、本実施形態に係るエンボスタイプ外装材20(蓄電装置用外装材10)を用いた片側成型加工電池の製造工程を示す斜視図である。
工程S31a:エンボスタイプ外装材20の成型加工エリア(凹部22)に電池要素1を配置し、エンボスタイプ外装材20を折り返し重ねて、電池要素1から延びるリード2を挟持するようにエンボスタイプ外装材20の一辺を加圧熱融着する工程(
図6の(a)及び
図6(b)参照)。
工程S32a:リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺を加圧熱融着し、その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺を加圧熱融着する工程(
図6の(b)参照)。
工程S33a:リード2を挟持する辺以外の加圧熱融着辺端部をカットし、成型加工エリア(凹部22)側に折り曲げる工程(
図6の(c)参照)。
【0071】
[工程S31a]
エンボスタイプ外装材20の成型加工エリア22内に、正極、セパレーター、負極及び電解液等から構成される電池要素1を配置し、電池要素1から延び、正極と負極に接合されたリード2を成型加工エリア22から外に引き出す。その後、エンボスタイプ外装材20を長手方向の略中央で折り返して、シーラント層16同士を重ね、エンボスタイプ外装材20のリード2を挟持する一辺を加圧熱融着する。加圧熱融着は、温度、圧力及び時間の3条件で制御でき、適宜設定される。加圧熱融着の温度は、シーラント層16を融解する温度以上であることが好ましい。
【0072】
[工程S32a]
次に、リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺の加圧熱融着を行う。その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺の加圧熱融着を行う。加圧熱融着の条件は工程S31aと同様である。
【0073】
[工程S33a]
リード2を挟持する辺以外の加圧熱融着辺端部をカットし、端部からははみだしたシーラント層16を除去する。その後、加圧熱融着部31を成型加工エリア22側に折り返し、折り返し部32を形成することで、蓄電装置30としての二次電池が得られる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0075】
[使用材料]
下記実施例及び比較例で、外装材10の、基材層11、接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着層15及びシーラント層16を形成するために、使用した材料を以下に示す。
【0076】
(基材層11)
基材A−1:二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ:25μm)
基材A−2:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm)
基材A−3:二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ:20μm)
基材A−4:二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ:50μm)
基材A−5:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:20μm)
基材A−6:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)
基材A−7:無延伸ナイロンフィルム(厚さ:30μm)
基材A−8:無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:30μm)
基材A−9:二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ:15μm)
基材A−10:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:16μm)
【0077】
(接着層12)
接着剤B−1:芳香族ポリエステルウレタン系接着剤
接着剤B−2:脂肪族ポリウレタン系接着剤
【0078】
(金属箔層13)
金属箔C−1:鉄含有量0.9質量%アルミニウム箔(厚さ:40μm)
金属箔C−2:鉄含有量0.5質量%アルミニウム箔(厚さ:40μm)
金属箔C−3:鉄含有量5.0質量%アルミニウム箔(厚さ:40μm)
金属箔C−4:鉄含有量0.9質量%アルミニウム箔(厚さ:30μm)
金属箔C−5:鉄含有量0.9質量%アルミニウム箔(厚さ:60μm)
金属箔C−6:鉄含有量0.4質量%アルミニウム箔(厚さ:40μm)
金属箔C−7:鉄含有量6.0質量%アルミニウム箔(厚さ:40μm)
金属箔C−8:鉄含有量0.9質量%アルミニウム箔(厚さ:25μm)
【0079】
(腐食防止処理層14)
処理剤D−1:酸化セリウム、リン酸及びアクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤。
【0080】
(接着層15)
接着樹脂E−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)
【0081】
(シーラント層16)
フィルムF−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:13μm)の一方の面をコロナ処理したフィルム。
フィルムF−2:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:40μm)の一方の面をコロナ処理したフィルム。
フィルムF−3:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:60μm)の一方の面をコロナ処理したフィルム。
【0082】
[外装材10の作製]
(実施例1−1)
上記金属箔C−1の一方の面に、処理剤D−1を塗布し、乾燥して、金属箔層13上に腐食防止処理層14を形成した。次に、金属箔層13の腐食防止処理層14が形成された面と反対の面に、接着剤B−1を用いたドライラミネート法により、積層後の接着層12の厚さが5μmとなるように基材A−1を貼り合せ、金属箔層13上に接着層12を介して基材層11を積層した。得られた積層体に対し、60℃、6日間のエージングを行った。次に、エージング後の積層体の腐食防止処理層14側に押出し装置にて接着樹脂E−1を押出して積層後の厚さが20μmとなるように接着層15を形成し、腐食防止処理層14上に接着層15を介してフィルムF−1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることでシーラント層16を形成した。シーラント層16形成後の積層体に対し、190℃、4kg/cm
2、2m/分の条件で加熱加圧することで外装材10を作製した。得られた外装材の基材層側表面とシーラント層側表面に、0.3質量%脂肪酸アマイド系滑剤溶液(滑材溶液(1))をグラビアコートで塗工し、乾燥した。基材層側表面とシーラント層側表面の静摩擦係数はそれぞれ、0.20及び0.20であった。また、得られた外装材10の引張伸びを測定したところ、MD方向で70%、TD方向で75%であった。
【0083】
(実施例1−2〜1−16及び比較例1−1〜1−8)
基材層11、接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着層15及びシーラント層16を形成するために、使用した材料、及び層の厚さを表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−16及び比較例1−1〜1−8の外装材10を作製した。得られた外装材10の静摩擦係数、静摩擦係数μ
Sと動摩擦係数μ
Dとの差(μ
S−μ
D)、及び引張伸びをまとめて表2に示す。なお、表1中の滑材(2)〜(3)の詳細は以下のとおりである。
滑材溶液(2):0.5質量%脂肪酸アマイド系滑剤溶液
滑材溶液(3):0.1質量%脂肪酸アマイド系滑剤溶液
【0084】
[絶縁性の評価]
実施例1−1〜1−16及び比較例1−1〜1−8で得られた外装材10を、120mm×60mmサイズに切り出し、シーラント層が内側になるように長辺を半分に折りたたんだ。次に、折りたたまれた部分の辺の左右両端部を含む辺の縁をそれぞれ190℃/0.5MPa/3秒、5mm幅でヒートシールし、袋状の外装材を作製した。開口している一辺から袋状の外装材内に、溶媒としてのエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート(1/1/1(質量比))と電解質としてのLiPF
6を混ぜた混合溶液を注入し、ニッケル製で厚さ50μm、幅12mm、長さ50mmサイズのタブリードを開口部で挟んだ後、190℃/0.5MPa/3秒、200℃/0.5MPa/3秒、の2条件で、外装材とタブリードとをまとめて10mm幅にヒートシールし、電気絶縁性評価用サンプルを作製した。電気絶縁性評価用サンプルのタブリードと外装材の金属箔層に、絶縁抵抗試験機(菊水電子株式会社製 AC/DC耐電圧)電極を接触させ、電圧25Vを5秒間印加し、各ヒートシール条件で得られた電気絶縁性評価用サンプルの抵抗値を測定した。下記基準に従って絶縁性を評価した。評価結果を表2に示す。
a:ヒートシール温度190℃及び200℃で得られたサンプルの抵抗値がともに25GΩ以上である。
b:ヒートシール温度190℃で得られたサンプルの抵抗値が25GΩ以上であるが、ヒートシール温度200℃で得られたサンプルの抵抗値が25GΩ未満である。
c:ヒートシール温度190℃及び200℃で得られたサンプルの抵抗値がともに25GΩ未満である。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
[成型装置25]
エンボスタイプ外装材20を作製するために用いられる成型装置25の設定を以下に示す。
【0088】
(成型加工エリア22)
成型加工エリアG−1:一辺の長さが100mmの略正方形
成型加工エリアG−2:一辺の長さが80mmの略正方形
【0089】
(ダイ金型27)
ダイ金型H−1:ダイラジアスRdが3mm
ダイ金型H−2:ダイラジアスRdが1mm
ダイ金型H−3:ダイラジアスRdが0.9mm
ダイ金型H−4:ダイラジアスRdが0.5mm
ダイ金型H−5:ダイラジアスRdが5mm
【0090】
(パンチ金型26)
パンチ金型I−1:パンチラジアスRpが3mm、コーナーラジアスRcpが3mm
パンチ金型I−2:パンチラジアスRpが3mm、コーナーラジアスRcpが0.5mm
パンチ金型I−3:パンチラジアスRpが0.5mm、コーナーラジアスRcpが3mm
パンチ金型I−4:パンチラジアスRpが1mm、コーナーラジアスRcpが3mm
パンチ金型I−5:パンチラジアスRpが5mm、コーナーラジアスRcpが3mm
パンチ金型I−6:パンチラジアスRpが3mm、コーナーラジアスRcpが1mm
パンチ金型I−7:パンチラジアスRpが3mm、コーナーラジアスRcpが5mm
パンチ金型I−8:パンチラジアスRpが0.9mm、コーナーラジアスRcpが3mm
パンチ金型I−9:パンチラジアスRpが3mm、コーナーラジアスRcpが0.9mm
【0091】
(金型クリアランスQ)
金型クリアランスJ−1:169μm
金型クリアランスJ−2:117μm
金型クリアランスJ−3:外装材の厚さの1倍
金型クリアランスJ−4:外装材の厚さの1.5倍
金型クリアランスJ−5:外装材の厚さの0.9倍
【0092】
[エンボスタイプ外装材20の作製]
(実施例2−1)
実施例1−1で得られた外装材10を、210mm×300mmのブランク形状に切り取り、成型加工エリアG−1、ダイ金型H−1、パンチ金型I−1及び金型クリアランスJ−1に設定した成型装置25の、ダイ金型27とパンチ金型26の間に、シーラント層16が上面になるように配置した。そして、フィルム押さえ23で外装材10をダイ金型27上に固定し、23℃、50%RHの条件下で、パンチ金型26で外装材10を所定の深さまで押圧して冷間成型し、エンボスタイプ外装材20を得た。
【0093】
(実施例2−2〜2−32及び比較例2−1〜2−8)
外装材10、及び成型装置25の設定を表3及び表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例2−1と同様にして、実施例2−2〜2−32及び比較例2−1〜2−8のエンボスタイプ外装材20を作製した。
【0094】
[成型性の評価]
実施例2−1〜2−32及び比較例2−1〜2−8で成型深さPを0.5mmごとに3〜17mmに設定して得られたエンボスタイプ外装材20の成型性を、目視にて下記基準に従って評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
a:破断又はクラックを生じずに、成型深さ10mm以上17mm以下の深絞り成型が可能である。
b:破断又はクラックを生じずに、成型深さ8mm以上10mm未満の深絞り成型が可能である。
c:成型深さ8mm未満の深絞り成型で破断又はクラックが生じる。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表1〜4に示すように、実施例1−1〜1−16で得られた外装材10はMD方向及びTD方向における引張伸びが50%以上であり、これらを用いた実施例2−1〜2−32で得られたエンボスタイプ外装材20は優れた成型性を示した。特に実施例1−1,1−2,1−4,1−6,1−10〜1−14に係る外装材を用いた実施例2−1,2−2,2−4,2−6,2−10〜2−14では、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ10mm以上の深絞り成型ができた。
【0098】
基材層が薄く基材層の強度が低下した比較例1−3及び1−4で得られる外装材を用いた比較例2−3及び2−4では、金属箔層への保護効果が低下したことで、実施例2−1及び2−2と比較して成型性が低下し、成型深さ8mm未満の深絞り成型で破断又はクラックが生じた。
【0099】
基材層側表面又はシーラント層側表面に別の滑剤を塗工して、静摩擦係数が0.4であった実施例2−15〜2−16では、成型加工時に外装材10の成型加工エリア22への流れ込み量が減少し、実施例2−1と比較してやや成型性が低下したものの、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ5〜10mm未満の深絞り成型ができた。
【0100】
成型加工エリアの一辺の長さが80mmの実施例2−17では、成型加工時に外装材10が各コーナー部に流れ込む際に隣接するコーナーの流れ込みの影響を受けることで、実施例2−1と比較してやや成型性が低下したものの、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ5〜10mm未満の深絞り成型ができた。
【0101】
コーナーラジアスRcpが0.5mmの金型で成型加工した実施例2−18では、成型加工時の外装材10の流れ込みによる厚膜化を分散できず、クリアランス内に引っ掛かりが生じ、実施例2−1と比較してやや成型性が低下したものの、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ5〜10mm未満の深絞り成型ができた。
【0102】
ダイラジアスRdとパンチラジアスRpが0.5mmの金型で成型加工した実施例2−19では、成型加工時に外装材10がクリアランス内に流れ込む際に引っ掛かりが生じ、実施例2−1と比較してやや成型性が低下したものの、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ5〜10mm未満の深絞り成型ができた。
【0103】
金型クリアランスが117μmの金型で成型加工した実施例2−26では、外装材総厚に対して、クリアランスが90%であるので、成型加工時に外装材10がクリアランス内に流れ込む際に引っ掛かりが生じ、実施例2−1と比較してやや成型性が低下したものの、破断又はクラックを生じさせることなく、成型深さ5〜10mm未満の深絞り成型ができた。
【0104】
基材層に無延伸ナイロンフィルムを用いた比較例2−1及び2−3では、基材層の強度が不足し、金属箔層への保護効果が低下したことで、外装材10の引張伸びが50%を下回り、成型性が低下し、成型深さ5mm未満で破断又はクラックが生じた。
【0105】
また、接着層12に脂肪族ウレタン系接着剤を用いた比較例2−5では、接着層12の強度が不足し、金属箔層13への保護効果が低下したことで、外装材10の引張伸びが50%を下回り、成型性が低下し、成型深さ5mm未満で破断又はクラックが生じた。
【0106】
また、金属箔層13に鉄含有量0.4質量%アルミニウム箔を用いた比較例2−6では、アルミニウム箔の展延性が小さく、成型性が低下し、成型深さ5mm未満で破断又はクラックが生じた。
【0107】
また、金属箔層13に厚さ25μmのアルミニウム箔を用いた比較例2−8では、成型加工時の応力による外装材10の薄膜化への耐性が不足し、成型性が低下し、成型深さ5mm未満で破断又はクラックが生じた。
【0108】
[水分バリア性の評価]
実施例2−1で成型深さPを8mm、10mm、16mm、16.5mmに設定して得たエンボスタイプ外装材20の長辺を半分に折りたたんだ。ここで、リファレンスサンプルとして、実施例1−1で得られた成型加工前の外装材10でも、シーラント層が内側になるように長辺を半分に折りたたんだ。次に、折りたたまれた部分の辺の作用両端部を含む辺の縁をそれぞれ190℃/0.5MPa/3秒、5mm幅でヒートシールし、袋状の外装材を作製した。開口している一辺から袋状の外装材内に、含有水分量を20ppm以下に抑えたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネートを(1/1/1(質量比))で混ぜた混合液を3mg注入した。続いて、開口している辺の縁を190℃/0.5MPa/3秒、5mm幅でヒートシールし、水分透過量測定用サンプルを作製した。作製した水分透過量測定用サンプルを、温度60℃、湿度90%の環境下に4週間保管させた。保管後の混合液中の水分含有量をカールフィッシャー試験機で測定した。成型加工していないリファレンスサンプルの水分含有量を基準(100%)としたときの、各成型深さに加工したエンボスタイプ外装材の水分含有量の相対値を算出した。水分バリア性の評価は、以下の基準に従って行った。水分バリア性の評価結果を表5に示す。
a:水分含有量がリファレンスサンプルの水分含有量の110%未満。
b:水分含有量がリファレンスサンプルの水分含有量の110%以上、150%未満。
c:水分含有量がリファレンスサンプルの水分含有量の150%以上。
【0109】
【表5】
【0110】
表5の結果から、実施例2−1で得られたエンボスタイプ外装材は、成型深さ16mmで成型した場合においても、良好な水分バリア性を示すことが確認された。