特許第6717462号(P6717462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6717462グラフト型コポリマー、グラフト型コポリマーの製造方法、及びコーティング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717462
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】グラフト型コポリマー、グラフト型コポリマーの製造方法、及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20200622BHJP
   C08F 265/10 20060101ALI20200622BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20200622BHJP
   C09D 151/00 20060101ALI20200622BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20200622BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20200622BHJP
【FI】
   C08F265/06
   C08F265/10
   C09D5/02
   C09D151/00
   C09D17/00
   C09D11/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-48565(P2017-48565)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-150473(P2018-150473A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年4月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL)「濃厚ポリマーブラシのレジリエンシー強化とトライボロジー応用」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】田儀 陽一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亜美
(72)【発明者】
【氏名】榊原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】辻井 敬亘
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−210956(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/091923(WO,A1)
【文献】 特開2015−227407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 265/10
C09D 151/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位を80質量%以上含有し、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が、50,000〜2,000,000であるグラフト型コポリマー。
(前記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上有する、酸価が10〜300mgKOH/gであるポリマーを示す)
【請求項2】
前記カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーが、メタクリル酸、フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、コハク酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、及びトリメリット酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のグラフト型コポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグラフト型コポリマーの製造方法であって、
下記一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)を含む「Polymer B」と、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを90質量%以上含有するモノマー成分とを、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物が存在する条件下で重合する工程を有するグラフト型コポリマーの製造方法。
(前記一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、Zは、塩素原子又は臭素原子を示す)
【請求項4】
請求項1又は2に記載のグラフト型コポリマーを含有するコーティング剤。
【請求項5】
水を含む水性媒体をさらに含有するとともに、
前記グラフト型コポリマーのカルボキシ基がアルカリで中和されている請求項4に記載のコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシ基である酸基を有するポリマー鎖を、高質量比で含有する、新規なグラフト型コポリマー及びその製造方法、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
色材、電子材料、及び機能性材料などの分野で用いられるビニル系ポリマーは、スチレンや(メタ)アクリル酸系モノマーなどを使用し、イオン重合、ラジカル重合、及びリビングラジカル重合などの重合方法によって製造される、直鎖型、ブロック型、グラフト型、及び星型のコポリマーである。そして、これらのポリマーには様々な官能基が導入されることが知られている。例えば、架橋反応性、密着性、水可溶性、又はイオン化性などの機能性をポリマーに付与すべく、カルボキシ基などの酸性基が導入されることがある。
【0003】
ビニル系モノマーを用いて製造されるグラフト型コポリマーは、幹となる主鎖と、この主鎖に結合した枝となる複数のグラフト鎖とを有する、分岐構造を有するポリマーである。このグラフト型コポリマーの製造方法としては、例えば、(1)主鎖であるポリマー成分と、モノマーとを重合して、主鎖からグラフト鎖を伸長させて形成するグラフトフロム法;(2)末端二重結合を有するマクロモノマーと、他のモノマーとを重合するグラフトスルー法;(3)側鎖に官能基を有するポリマーと、この官能基と反応する官能基を片末端に有するポリマーとを反応させるグラフトオントゥー法;などを挙げることができる(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4758652号公報
【特許文献2】特許第4813733号公報
【特許文献3】特開2008−274181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の(1)の方法の場合、グラフト鎖の重合末端のラジカル同士が停止反応であるカップリング反応を起こしてしまい、反応系がゲル化することがある。また、反応系のゲル化を抑制するために、重合収率が低下しやすかった。
【0006】
また、前述の(2)の方法の場合、高分子量のマクロモノマーの末端で重合反応させるため、反応確率が低下しやすい。特に、マクロモノマーの配合量が多いと、低分子量のモノマーのみが消費されてマクロモノマーが余ってしまう。そして、マクロモノマーを消費させようとすると低分子量のモノマーを多く添加する必要があるため、マクロモノマーが相対的に減少してしまい、グラフト鎖の含有量が少なくなることがあった。
【0007】
さらに、前述の(3)の方法の場合、高分子量のポリマー同士を反応させるために反応効率が低い。また、立体障害によって反応しにくい片末端反応性ポリマーが余ってしまい、多くのグラフト鎖を導入することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、官能基として機能しうるカルボキシ基が導入されたグラフト鎖を有する、色材、電子材料、及び機能性材料等として有用なグラフト型コポリマーを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記のグラフト型コポリマーを簡便かつ効率的に製造することが可能なグラフト型コポリマーの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の課題とするところは、上記のグラフト型コポリマーを用いたコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すグラフト型コポリマーが提供される。
[1]下記一般式(1)で表される構成単位を80質量%以上含有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が、50,000〜2,000,000であるグラフト型コポリマー。
【0010】
(前記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上有する、酸価が10〜300mgKOH/gであるポリマーを示す)
【0011】
[2]前記カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーが、メタクリル酸、フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、コハク酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、及びトリメリット酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載のグラフト型コポリマー。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示すグラフト型コポリマーの製造方法が提供される。
[3]前記[1]又は[2]に記載のグラフト型コポリマーの製造方法であって、下記一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)を含む「Polymer B」と、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを90質量%以上含有するモノマー成分とを、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物が存在する条件下で重合する工程を有するグラフト型コポリマーの製造方法。
【0013】
(前記一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、Zは、塩素原子又は臭素原子を示す)
【0014】
さらに、本発明によれば、以下に示すコーティング剤が提供される。
[4]前記[1]又は[2]に記載のグラフト型コポリマーを含有するコーティング剤。
[5]水を含む水性媒体をさらに含有するとともに、前記グラフト型コポリマーのカルボキシ基がアルカリで中和されている前記[4]に記載のコーティング剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、官能基として機能しうるカルボキシ基が導入されたグラフト鎖を有する、色材、電子材料、及び機能性材料等として有用なグラフト型コポリマーを提供することができる。また、本発明によれば、上記のグラフト型コポリマーを簡便かつ効率的に製造することが可能なグラフト型コポリマーの製造方法を提供することができる。さらに、本発明の課題とするところは、上記のグラフト型コポリマーを用いたコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のグラフト型コポリマーは、下記一般式(1)で表される構成単位を80質量%以上含有する。そして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される、ポリスチレン換算のグラフト型コポリマーの数平均分子量は、50,000〜2,000,000である。
【0017】
(前記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上有する、酸価が10〜300mgKOH/gであるポリマーを示す)
【0018】
また、上記のグラフト型コポリマーを製造する際には、下記一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)を含む特定のポリマー(Polymer B)を使用する。すなわち、本発明のグラフト型コポリマーの製造方法は、「Polymer B」と、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを90質量%以上含有するモノマー成分とを、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物が存在する条件下で重合する工程を有する。
【0019】
(前記一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、Zは、塩素原子又は臭素原子を示す)
【0020】
<Polymer B>
まず、Polymer Bについて説明する。Polymer Bは、一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)を含む。一般式(2)中、Zで表される基が結合した炭素原子からポリマーが生成して、ポリマー(一般式(1)中の「Polymer A」)がグラフトしたグラフト型コポリマーを得ることができる。
【0021】
一般式(2)で表されるモノマーは、例えば下記式で表されるように、対応するモノマー(a)と酸成分(b)との反応生成物である。
【0022】
【0023】
モノマー(a)は、水酸基を有する(メタ)アクリレートである。モノマー(a)のうち、上記一般式(a)中のXがOであるものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸(n=2以上)プロピレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸(n=2以上)エチレンプロピレングリコールエステルなどを挙げることができる。
【0024】
また、これらの水酸基含有モノマーを用いて、ε−カプロラクトンや乳酸などを重合して得られる末端水酸基ポリエステル型モノマー;これらの水酸基含有モノマーにフタル酸などの多塩基酸を反応させて得られるモノエステルの他のカルボキシ基に、エチレングコリールやアミノエタノールなどの2以上の水酸基やアミノ基を有する有機化合物を反応して得られる水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーにカルボキシ基を有する有機化合物を反応させ、エポキシ基を開環して水酸基を生成させて得られる水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチルなどのイソシアネートに、2以上の水酸基や2以上の水酸基とアミノ基を有する有機化合物を反応させて得られる水酸基含有モノマーなどであってもよい。
【0025】
モノマー(a)のうち、上記一般式(a)中のXがNHであるものとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸クロライドなどの酸ハロゲン化物と、アミノ基を有し、水酸基を1以上有する化合物とを反応させて得られるモノマーなどを挙げることができる。
【0026】
酸成分(b)としては、例えば、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロ−2−メチル−プロピオン酸、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸などを挙げることができる。また、これらの酸ハロゲン化物、酸無水物などを酸成分(b)として用いることもできる。
【0027】
なお、モノマー(a)を含むモノマー成分を重合した後、得られた重合物中の水酸基に酸成分(b)を反応させてPolymer Bを形成してもよい。また、モノマー(a)を含むモノマー成分を重合した後、メタクリル酸クロライドなどを反応させて不飽和結合を導入し、導入した不飽和結合に塩化水素などのハロゲン化水素を付加してPolymer Bを形成してもよい。さらには、グリシジル基を有するモノマーを重合した後、酸成分(b)を反応させてPolymer Bを形成してもよい。
【0028】
一般式(2)中、Zで表される基(ハロゲン)が結合した炭素原子からハロゲンラジカルが脱離して炭素ラジカルが生ずる。生じた炭素ラジカルにモノマーが挿入され、末端ラジカル基が生成する。生成した末端ラジカル基に脱離したハロゲンラジカルが結合し、ラジカルの副反応であるラジカル同士のカップリングが防止されると考えられる。
【0029】
一般式(2)で表されるモノマーのみを共重合して得られるホモポリマーをPolymer Bとしてもよく、一般式(2)で表されるモノマーと、ラジカル重合しうる不飽和結合を有するモノマーとを共重合して得られるコポリマーをPolymer Bとしてもよい。
【0030】
ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどのカルボキシ基含有(メタ)アクリル酸系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート及びアルケニル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート及びシクロアルケニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートなどの酸素含有(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレートなどのケイ素含有(メタ)アクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性基を有するメタクリレート;テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーなどを用いることもできる。
【0031】
さらに、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーとしては、スチレン系ビニルモノマー、アミド系モノマー、アルカン酸ビニル系モノマー、マレイン酸系モノマーなどを用いることができる。スチレン系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルキシレンなどを挙げることができる。アミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0032】
アルカン酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ラウリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどを挙げることができる。また、マレイン酸系モノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸ジブチルなどを挙げることができる。
【0033】
さらに、ラジカル重合しうる不飽和結合を複数有するモノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの二官能性モノマー;トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのトリ(メタ)アクリレートなどの三官能性モノマー;ペンタエリスリトールやジペンタエリスリトールなどのポリ(メタ)アクリレート;ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレートなどのオリゴマーなどを挙げることができる。
【0034】
Polymer Bに含まれる構成単位(X)の割合は特に限定されず、Polymer B中に構成単位(X)が含まれていればよい。構成単位(X)の割合が少ない場合であっても、Polymer Aの分子量を大きく設計すればよい。但し、Polymer Bに含まれる構成単位(X)の割合は、グラフト鎖の本数を多くするために、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0035】
上記のモノマーを重合するには、通常、ラジカル重合法が採用される。ラジカル重合法では、通常、ラジカル重合開始剤を用いる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、水性及び油性のアゾ系開始剤や過酸化物開始剤などを用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸リチウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物系化合物;2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、これらの無機酸塩及び有機酸塩などのアゾ系化合物;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリルなどの油性のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルラウリン酸過エステルなどの油性の過酸化物などを挙げることができる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.2〜3質量部とすることがさらに好ましい。また、連鎖移動剤として、ドデカンチオールやチオグリセロールなどのチオールを使用してもよい。連鎖移動剤の使用量を調整することで、得られるポリマーの分子量を調整することができる。
【0036】
また、ラジカル重合法のなかでも、リビングラジカル重合法を採用することができる。具体的には、ニトロキサイドを使用する方法;チオールやチオエステルなどの硫黄化合物を使用する可逆的付加解裂連鎖移動重合;銅錯体などの原子移動ラジカル重合;有機テルルを使用するTERP法;ヨウ素移動重合や有機触媒を使用する可逆的移動触媒重合などがある。また、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物の存在下で重合することもできる。なお、原子移動ラジカル重合や、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物を使用して重合する方法では、分岐したPolymer Bを得ることができる。分岐した構造を有するPolymer Bを用いることもできる。
【0037】
重合の際には、水や有機溶剤などの従来公知の溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、琥珀酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの硫黄系溶媒;テトラメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチルなどのカーボネート系溶媒;イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどの陽イオンと、BF4-、PF6-などの陰イオンからなる塩であるイオン液体などを挙げることができる。なお、これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
重合系は、水系及び油系のいずれであってもよい。また、重合方法は、乳化重合、懸濁重合、ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合、沈殿重合、及び分散重合のいずれの方法であってもよい。
【0039】
Polymer Bの数平均分子量(Mn)は、1,000以上100,000以下であることが好ましい。また、Polymer Bの分子量分布(分散度)は、2.0以下であることが好ましい。分子量分布(PDI)は、「重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)」で表される。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0040】
Polymer Bは、直鎖型ポリマー、ブロック型ポリマー、グラフト型コポリマー、粒子型ポリマー、デンドリマー型ポリマー、多分岐型ポリマーなどのいずれの構造を有するポリマーであってもよい。直鎖型ポリマーを用いると、直鎖状の主鎖に枝分かれしたグラフト型コポリマーを得ることができる。例えば、一般式(2)で表されるモノマーの構成比が異なるポリマーブロックを有するブロック型ポリマーを用いると、枝分かれ密度が異なるグラフト型コポリマーを得ることができる。一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位を含まないポリマーブロックと、一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位を含むポリマーブロックとを有するブロック型ポリマーを使用すると、グラフト型コポリマーのポリマーブロックと、グラフト型以外のポリマーブロックとを有するブロック型のグラフト型コポリマーを得ることができる。さらに、ジブロック、トリブロック、及びマルチブロックなどのブロック構造を有するPolymer Bを用いると、対応するグラフト型コポリマーを得ることができる。
【0041】
その全体に構成単位(X)が導入されているグラフト型のPolymer Bを用いると、その全体からPolymer Aが伸長した多分岐構造を有するグラフト型コポリマーを得ることができる。主鎖のみに構成単位(X)が導入されているグラフト型のPolymer Bを用いると、Polymer Bの主鎖からPolymer Aが伸長したグラフト型コポリマーを得ることができる。さらに、グラフト鎖のみに構成単位(X)が導入されているグラフト型のPolymer Bを用いると、Polymer Bの主鎖から分岐した枝(グラフト鎖)からさらに枝(グラフト鎖)が分岐した構造を有するグラフト型コポリマーを得ることができる。また、デンドリマー型や多分岐型のポリマー構造を有するPolymer Bを用いると、その全体から「アーム」と呼ばれるポリマー(Polymer A)が伸長した構造を有するグラフト型コポリマーを得ることができる。
【0042】
<グラフト型コポリマーの製造方法>
次に、Polymer Bを用いてグラフト型コポリマーを製造する方法について説明する。グラフト型コポリマーは、Polymer Bと、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを90質量%以上含有するモノマー成分とを、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物が存在する条件下で重合することで製造することができる。Polymer Bとモノマー成分とは、具体的にはラジカル重合法又はリビングラジカル重合法により重合させる。重合反応の詳細な機構については必ずしも明らかではないが、リビングラジカル重合で進行する場合、以下のように推測される。すなわち、一般式(2)中のZで表される基(ハロゲン原子)が触媒や熱によりラジカルとなって脱離するとともに、ハロゲン原子が結合していた炭素原子がラジカルとなる。そして、生成したラジカルがモノマー成分と反応し、ラジカルが生成する。生成したラジカルに脱離したハロゲンラジカルが直ちに結合して安定化させる。生成したラジカルをこのように安定化させることで、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応を生じにくくすることができる。これにより、PolymerBにおけるリビングラジカル重合しうる基からメタクリレート系モノマーを含むモノマー成分が逐次重合して一般式(1)中の「Polymer A」で表されるポリマーが形成され、グラフト型コポリマーを得ることができる。
【0043】
リビングラジカル重合法としては、金属錯体を触媒とし、金属原子のハロゲン付加酸化還元反応を利用する原子移動ラジカル重合法;ヨウ素化合物を開始化合物として用いるヨウ素移動重合法;ヨウ素化合物を開始化合物とし、ヨウ素をラジカルとして引き抜く有機化合物を触媒として用いる可逆的触媒移動重合法などがある。なかでも、一般式(2)中のZが塩素原子又は臭素原子であり、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物の存在下で、Polymer Bと、モノマー成分とを重合することが好ましい。例えば、臭素末端がヨウ化物イオンを生成しうる化合物(ヨウ素化合物)とハロゲン交換した後、ヨウ素原子がラジカルとして脱離し、生成したラジカルにモノマー成分が反応して重合すると考えられる。
【0044】
ヨウ素化合物としては、ヨウ化金属塩、第四級アンモニウムアイオダイド塩、第四級ホスホニウムアイオダイド塩、第四級アンモニウムトリヨージド塩などを用いることができる。ヨウ化金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウムなどを挙げることができる。第四級アンモニウムアイオダイド塩としては、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイドなどを挙げることができる。第四級ホスホニウムアイオダイド塩としては、テトラブチルホスホニウムアイオダイド、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイドなどを挙げることができる。第四級アンモニウムトリヨージド塩としては、トリブチルメチルアンモニウムトリヨージドなどを挙げることができる。
【0045】
Polymer Bとモノマー成分は、有機溶剤中で重合させることが好ましい。ヨウ化物イオンを生成しうる化合の存在下で重合する場合には、ヨウ化物イオンを溶解させるために高極性の有機溶剤を用いることが好ましく、アルコール系、グリコール系、アミド系、尿素系、イオン液体の溶剤を用いることが好ましい。重合の際には、従来公知のアゾ系化合物や過酸化物系化合物であるラジカル発生剤、還元剤、金属、ヨウ素の引き抜きが可能な有機化合物や有機塩基などの触媒を用いてもよい。
【0046】
触媒としては、ヨウ素、ヨウ化有機化合物、及び有機塩基などを用いることができる。ヨウ化有機化合物としては、N−アイオドスクシニルイミド、N−アイオドフタルイミド、N−アイオドシクロヘキサニルイミド、1,3−ジアイオド−5,5−ジメチルヒダントイン、N−アイオドサッカリンなどを挙げることができる。また、有機塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ホスファゼン塩基などを挙げることできる。
【0047】
グラフト型コポリマーは、例えば、以下に示す方法(1)〜(3)のいずれかにより製造することができる。なかでも、方法(1)が、工程数が少ないために好ましい。
方法(1):Polymer Bと、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを含有するモノマー成分とを重合する方法。
方法(2):Polymer Bと、カルボキシ基がt−ブチル基等の保護基で保護されたメタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを含有するモノマー成分とを重合した後、脱保護する方法。
方法(3):Polymer Bと、水酸基等の反応性官能基を有するメタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーを含有するモノマー成分とを重合した後、反応性官能基に多塩基酸等を反応させてカルボキシ基を形成する方法。
【0048】
<グラフト型コポリマー>
次に、本発明のグラフト型コポリマーについて説明する。本発明のグラフト型コポリマーは、下記一般式(1)で表される構成単位を80質量%以上含有する。
【0049】
(前記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上有する、酸価が10〜300mgKOH/gであるポリマーを示す)
【0050】
Polymer Aは、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーを含むメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を有する。メタクリル酸系モノマーを用いることで、耐熱性、耐薬品性、耐酸アルカリ性、及び耐加水分解性に優れ、様々なガラス転移温度を有するグラフト型コポリマーとすることができる。また、メタクリル酸系モノマーを用いると、重合率が良好であるとともに、温和な条件で重合することができる。
【0051】
カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーとしては、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシアルキルの二塩基酸エステル、メタクリル酸の環状ラクトン付加物、メタクリル酸の二量体などを挙げることができる。なかでも、メタクリル酸、フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、コハク酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、トリメリット酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルが好ましい。メタクリル酸は、分子量が一番小さく、汎用性が高い。フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルは、カルボキシ基以外にも芳香環を導入することができるため、密着性等の効果を有するグラフト型コポリマーを得ることができる。コハク酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルは、一級のカルボキシ基を有するため、アルカリ現像性や反応性を考慮した場合に好ましい。ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルは、シクロアルキル基の硬質性により、疎水性及び耐光性が向上したグラフト型コポリマーを得ることができる。トリメット酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルは、分子内に2個のカルボキシ基を有するため、導入量を少なくすることができる、或いは、多く導入して高酸価のグラフト型コポリマーを得ることができる。
【0052】
メタクリル酸系モノマーとしては、上記のカルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーのみを用いてもよいが、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマー(その他のメタクリル酸系モノマー)を用いることが好ましい。その他のメタクリル酸系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルプロパンメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの(シクロ)アルキルメタクリレート;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;アリルメタクリレートなどのアルケニルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有メタクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテルメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルメタクリレートなどのグリコールモノアルキルエーテル系メタクリレート;
【0053】
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有メタクリレート;クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートなどの第4級アンモニウム塩基を有するメタクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネートや2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレートのイソシアネート基をε−カプロラクトン、メチルエチルケトンオキシム(MEKオキシム)、及びピラゾールなどでブロックしたイソシアネート基含有メタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレートなどの環状メタクリレート;オクタフルオロオクチルメタクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレートなどのハロゲン含有メタクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線を吸収するメタクリレート;トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖を有するケイ素含有メタクリレートなどを挙げることができる。また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端にメタクリル基を導入して得られるマクロモノマーなどを用いることができる。
【0054】
また、カルボキシ基以外の酸基を有するメタクリル酸系モノマーを用いることができる。カルボキシ基以外の酸基を有するメタクリル酸系モノマーとしては、メタクリロイロキシエチルリン酸エステルなどのリン酸基を有するメタクリル酸系モノマー;メタクリロイロキシエチルスルホン酸などのスルホン酸基を有するメタクリル酸系モノマーを挙げることができる。
【0055】
一般式(1)中の「Polymer A」は、メタクリル酸系モノマーが重合、好ましくは、リビングラジカル重合して生成したポリマー(マクロモノマー)であり、熱的に安定であるとともに、耐酸・耐アルカリ性に優れたポリマー部分である。また、Polymer Aは、カルボキシ基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を有するため、反応性の高いカルボキシ基がその構造中に導入されている。カルボキシ基を中和してイオン化することで、グラフト型コポリマーを水可溶性とすることができる。水可溶性となった本発明のグラフト型コポリマーは、例えば、水溶性バインダー、増粘剤、吸水性ポリマー、アルカリ現像性のバインダーとして用いることができる。さらに、カルボキシ基と反応しうる架橋剤と併用することで、塗料やコーティング材料とすることもできる。
【0056】
Polymer Aの数平均分子量は1,000〜50,000であることが、通常の重合処方で容易に得られる範囲であるために好ましい。Polymer Aの数平均分子量は、グラフト型コポリマーを加水分解してPolymer BからPolymer Aを切り出して測定することができる。また、グラフト型コポリマーを製造する際にハロゲン置換炭素基を有する有機化合物を添加して、その有機化合物から重合が開始して得られるポリマーの数平均分子量を、Polymer Aの数平均分子量とすることもできる。
【0057】
Polymer Aは、ホモポリマーであってもよく、ランダム構造を有するコポリマーや、ブロック構造を有するコポリマーであってもよい。ブロック構造を有するPolymer Aは、例えば、Polymer Bと、メタクリル酸系モノマーを含有するモノマー成分とを重合する途中又は重合した後に、その他のモノマーを添加して重合することによって製造することができる。
【0058】
Polymer Aの酸価は10〜300mgKOH/gであり、好ましくは、20〜250mgKOH/gである。Polymer Aの酸価が10mgKOH/g未満であると、カルボキシ基の反応性が十分に発揮されない場合がある。一方、Polymer Aの酸価が300mgKOH/g超であると、酸性基が多いために重合がうまく進行しない場合がある。
【0059】
本発明のグラフト型コポリマーの数平均分子量(Mn)は50,000〜2,000,000であり、好ましくは100,000〜800,000である。数平均分子量が50,000未満であると、他の構造を有するポリマーで代用することができる場合がある。一方、数平均分子量が2,000,000超であると、溶媒に溶解しにくくなるなど、取り扱いが困難になる場合がある。また、本発明のグラフト型コポリマーの分子量分布(分散度(PDI))は、4.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0060】
<用途>
本発明のグラフト型コポリマーは、塗膜形成用材料、添加剤、フィルムなどの成形品を形成するための成形材料などとして用いることができる。なかでも、グラフト型コポリマーを含有するコーティング剤が有用である。グラフト型コポリマーを液媒体に乳化・分散させた分散液や、グラフト型コポリマーを液媒体に溶解させた溶液を、コーティング剤として用いることができる。また、グラフト型コポリマー単体をコーティング剤として用いることもできる。なお、グラフト型コポリマー単体をコーティング剤として用いる場合には、グラフト型コポリマーは室温条件下又は加熱条件下で適度な流動性を示すことが好ましい。
【0061】
コーティング剤は、広義には、物品等の表面に定着し、物品等の表面の少なくとも一部を被覆する作用を示す剤である。このため、本発明のコーティング剤は、このような作用を示す様々な用途に適用することができる。具体的には、塗料、文具、電子材料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、紫外線硬化性インク、電子線硬化性インク、トナー、化粧品、捺染、接着剤、粘着剤、フォトレジスト材料、医療用材料などを挙げることができる。
【0062】
前述の製造方法によって得られたグラフト型コポリマーを、重合用の溶媒に溶解したままコーティング剤として用いることができる。また、貧溶剤に析出させる、又は重合用の溶媒を留去するなどして単離したグラフト型コポリマーを、用途に合わせた液媒体に溶解等してコーティング剤として用いることができる。なお、グラフト型コポリマーを液媒体に溶解等して得た溶液や分散液をコーティング剤として使用する場合には、コーティング剤を物品の表面等に塗布、吐出、又は噴霧した後、乾燥させて液媒体を除去する。これにより、グラフト型コポリマーからなる塗膜が形成され、物品の表面等の少なくとも一部を被覆することができる。コーティング剤に用いる液媒体としては、水及び各種の有機溶剤を挙げることができ、用途に合わせて適宜選択すればよい。また、コーティング剤には種々の添加剤を含有させることができる。
【0063】
コーティング剤は、水を含む水性媒体をさらに含有するとともに、グラフト型コポリマーのカルボキシ基がアルカリで中和されていることが好ましい。カルボキシ基をアルカリで中和してグラフト型コポリマーを親水性とし、グラフト型コポリマーの水性媒体溶液をコーティング剤として用いることができる。グラフト型コポリマーのカルボキシ基を中和するアルカリとしては、例えば、アンモニア;トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化物アルカリ金属塩などを挙げることができる。グラフト型コポリマーのカルボキシ基の全部を中和してもよいし、一部のみを中和してもよい。
【0064】
また、グラフト型コポリマーのカルボキシ基と反応しうる架橋剤をコーティング剤に添加すれば、コーティング剤を塗布及び乾燥後に架橋硬化させて、耐久性や密着性等の物性が向上した三次元網目構造を有する塗膜を形成することができる。架橋剤としては、グラフト型コポリマーのカルボキシ基と反応しうる官能基を有する、従来公知の架橋剤を用いることができる。カルボキシ基と反応しうる官能基としては、エポキシ基、オキサゾリン基、アルカノールアミノ基、アルコキシメチルアミノ基、カルボジイミド基、水酸基、イソシアネート基、アジリジン基、アルカノールシラン基などを挙げることができる。また、金属キレート剤やアルカリ土類金属イオンを生成する化合物なども架橋剤として用いることができる。
【0065】
本発明のコーティング剤は、例えば、塗料、文具、電子材料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、紫外線硬化性インク、電子線硬化性インク、トナー、化粧品、捺染、接着剤、粘着剤、フォトレジスト材料、医療用材料などに使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0067】
<Polymer Bの合成>
(合成例1:Polymer B−1)
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド(MDPA)400部を入れ、窒素を吹き込みながら撹拌して78℃に加温した。滴下ロートに、2−(2−ブロモイソブチリロキシ)エチルメタクリレート(BBEM)300部を入れ、2時間にかけて反応装置内に滴下した。また、別の滴下ロートに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)15部及びMDPA 50部の混合均一溶液を入れ、BBEMと同時に滴下を開始し、2時間かけて反応装置内に滴下した。滴下後、その温度で5時間重合して重合溶液を得た。得られた重合溶液の一部をサンプル瓶に採取して秤量し、150℃の真空乾燥機で10時間乾燥した。得られた乾燥物から換算した重合溶液の固形分は40.2%であり、重合率は約100%であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とし、示差屈折計(RI)を備えたGPC装置を使用して測定した、重合液中のポリマーのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは12,000であり、分子量分布(分散度PDI)は2.03であった。得られた重合溶液に含有されているポリマーをPolymer B−1とした。
【0068】
(合成例2:Polymer B−2)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA561部、ヨウ素1.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名「V−70」、和光純薬社製)3.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)208.0部、及びN−アイオドスクシンイミド(NIS)0.11部を入れ、窒素を吹き込みながら45℃で7時間重合した(重合率:約100%)。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を展開溶媒とするGPC装置を使用して測定した反応系中のポリマーのMnは18,500であり、PDIは1.34であった。
【0069】
上記の反応系にピリジン189.5部を添加し、氷浴で5℃に冷却した。滴下ロートに2−ブロモイソ酪酸ブロマイド459.8部を入れ、10℃を超えないように3時間かけて反応系に滴下した。その温度で2時間放置した後、45℃に加温して1時間反応させた。室温まで冷却した後、メタノール561部添加して撹拌した。別容器にメタノール5000gを入れ、ディスパーで撹拌しながら重合溶液を徐々に添加して軟質のポリマーを析出させた。析出したポリマーを分取し、大量の水中にディスパーで撹拌しながら添加して洗浄した。ろ過及び水洗した後、50℃の送風乾燥機を使用して揮発分がなくなるまで乾燥して、微黄色の粉末状の固体であるPolymer B−2を得た。得られたPolymer B−2のMnは27,400であり、PDIは1.30であった。
【0070】
(合成例3:Polymer B−3)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)156.1部、ヨウ素1.0部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名「V−65」、和光純薬社製(V−65))2.98部、BBEM30部、メチルメタクリレート(MMA)40部、ベンジルメタクリレート(BzMA)30部、及びNIS0.11部を入れ、窒素を吹き込みながら65℃で8時間重合した(重合率:約100%)。ビーカーに大量の水を入れ、ディスパーで撹拌しながら重合溶液を徐々に添加してポリマーを析出させた。ろ過及び水洗した後、50℃の真空乾燥機を使用して揮発分がなくなるまで乾燥して、白色の粉末であるPolymer B−3を得た。得られたPolymer B−3のMnは9,200であり、PDIは1.35であった。
【0071】
(合成例4:Polymer B−4)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、BDG157.5部、ヨウ素1.0部、V−65 2.98部、MMA40部、BzMA30部、及びNIS0.11部を入れ、窒素を吹き込みながら65℃で5.5時間重合した(重合率:約100%)。反応系中のポリマーのMnは6,500であり、PDIは1.23であった。次いで、V65 0.9部、及びBBEM30部を添加し、4.5時間重合した(重合率:約100%)。ビーカーに大量の水を入れ、ディスパーで撹拌しながら重合溶液を徐々に添加してポリマーを析出させた。ろ過及び水洗した後、50℃の真空乾燥機を使用して揮発分がなくなるまで乾燥して、白色の粉末であるPolymer B−4を得た。得られたPolymer B−4のMnは8,900であり、PDIは1.39であった。
【0072】
合成例1〜4で合成したPolymer Bの組成及び物性を表1に示す。
【0073】
【0074】
<グラフト型コポリマーの製造>
(実施例1:グラフト型コポリマー KB−1)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA200部、及びPolymer B−1の溶液(固形分40.2%)13.88部を入れ、80℃に加温した。テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)8.1部を入れて30分間加温した後、MMA45部、メタクリル酸(MAA)5部、及びトリエチルアミン(TEA)0.4部を添加し、80℃で8時間重合した(重合率:90.0%)。重合溶液をメタノール/水混合溶液中に投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過及び水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、グラフト型コポリマー KB−1を得た。トルエン/エタノール混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して算出した、グラフト型コポリマー KB−1の酸価(全体酸価)は61.3mgKOH/gであった。また、グラフト型コポリマー KB−1のMnは730,100であり、PDIは1.68であった。なお、組成(MMA/MAA=90/10)から算出されるPolymer Aの理論酸価は、65.2mgKOH/gであった。Polymer Aの理論酸価は下記式より算出した。
・理論酸価(mgKOH/g)
=(MAAの比率(質量%)/86.1)×56.1×1000/100
(MAAのMw:86.1、KOHのMw:56.1)
【0075】
(実施例2〜4:グラフト型コポリマー KB−2〜4)
表2に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、グラフト型コポリマー KB−2〜4を製造した。なお、表2中の※1〜3の詳細は以下に示す通りである。
※1:フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル(三菱レイヨン社製、Mw:278.3)
※2:コハク酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル(共栄社化学社製、Mw:230.2)
※3:ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル(三菱レイヨン社製、Mw:284.3)
【0076】
【0077】
(実施例5:グラフト型コポリマー KB−5)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA200部、及びPolymer B−2 5.58部を入れ、80℃に加温した。TBAI5.58部を入れて30分間加温した後、MMA30部、HEMA20部、及びTEA0.4部を添加し、80℃で8時間重合した(重合率:92.3%)。反応系中のポリマーのMnは752,000であり、PDIは1.67であった。
【0078】
トリメリット酸無水物(TMA、三菱ガス化学社製)29.5部、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)0.5部、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン0.3部を添加し、窒素を吹き込みながら120℃で7時間重合して、グラフト型コポリマー KB−5を得た。得られたポリマーの赤外吸収スペクトルを確認したところ、酸無水物のピーク(1850cm-1)及び水酸基のピーク(3500cm-1)は、いずれもほぼ消失していた。これにより、HEMAにTMAが付加し(酸無水物が開環し)、カルボキシ基が導入されたグラフト型コポリマーが形成されたことがわかる。得られたグラフト型コポリマー KB−5のMnは820,600であり、PDIは2.01であり、酸価(全体酸価)は205.8mgKOH/gであった。
【0079】
実施例1〜5で製造したグラフト型コポリマーの組成及び物性を表3に示す。
【0080】
【0081】
(実施例6:2種のグラフト鎖を有するグラフト型コポリマー(1))
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA200部、Polymer B−2 2.79部、及びTBAI4.1部を入れて80℃に加温した後、MMA20部、MAA5部、及びTEA0.2部を添加した。80℃で8時間重合したところ、高粘度の液体となった。サンプリングして測定した重合率は92.8%であった。反応液中のポリマー(ポリマー MB−1)のMnは379,000であり、PDIは1.43であった。また、紫外線検出器(UV、測定波長:254nm)を備えたGPCで分析したところ、微小な吸収しか観察されなかった。形成されたポリマーは、254nmの波長域での吸収が弱いためと考えられる。ポリマーを構成するPolymer Aの理論酸価は、130.3mgKOH/gである。得られた反応液をメタノール/水混合溶媒に投入し、析出物をろ過及び水洗した。70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、ポリマー MB−1を得た。
【0082】
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA200部、ポリマー MB−1 25部、BzMA15部、PAMA10部、及びTBAI4.1部を入れた。窒素を吹き込みながら80℃に加温し、TEA0.2部を加えて7時間重合した。重合率は94.2%であり、得られたポリマーのMnは860,700であり、PDIは1.83であった。また、UV−GPC(254nm)で測定したポリマーのMnは850,200であり、PDIは1.89であった。ポリマー MB−1は254nmの波長域にほとんど吸収を有しなかったのに対し、得られたポリマーは254nmの波長域の光を吸収したことから、主鎖に残っていた開始基から2種目のモノマー(BzMA/PAMA)が重合して、2種のグラフト鎖を有するグラフト型コポリマーが得られたと考えられる。得られたグラフト型コポリマーの2種目のグラフト鎖(Polymer A)の理論酸価は、80.6mgKOH/gである。
【0083】
(実施例7:2種のグラフト鎖を有するグラフト型コポリマー(2))
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA200部、Polymer B−2 2.79部、及びTBAI4.1部を入れて80℃に加温した後、MMA20部、MAA5部、及びTEA0.2部添加した。80℃で8時間重合したところ、高粘度の液体となった。サンプリングして測定した重合率は93.1%であった。反応液中のポリマー(ポリマー MB−2)のMnは381,000であり、PDIは1.41であった。また、ポリマーを構成するPolymer Aの理論酸価は、130.3mgKOH/gである。
【0084】
反応液に、BzMA10部、HOMS15部、及びTBAI4.1部を添加し、窒素を吹き込みながら80℃に加温し、TEA0.2部を加えて7時間重合した。重合率は94.6%であり、得られたポリマーのMnは871,800であり、PDIは1.92であった。また、UV−GPC(254nm)で測定したポリマーのMnは866,000であり、PDIは1.95であった。ポリマー MB−2は254nmの波長域にほとんど吸収を有しなかったのに対し、得られたポリマーは254nmの波長域の光を吸収したことから、主鎖に残っていた開始基から2種目のモノマー(BzMA/HOMS)が重合して、2種のグラフト鎖(MMA及びBzMA/HOMSからなるA−Bブロックコポリマーと、BzMA/HOMSからなるランダムコポリマー)を有するグラフト型コポリマーが得られたと考えられる。得られたグラフト型コポリマーの2種目のグラフト鎖(Polymer A)の理論酸価は、146.2mgKOH/gである。
【0085】
(実施例8:顔料分散剤用グラフト型コポリマー)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に、MDPA100部、及びPolymer B−4 22.32部を入れて80℃に加温した後、TBAI9.76部を添加して30分間加温した。その後、n−ブチルメタクリレート37.5部、MAA12.5部、及びTEA1.6部を添加した。80℃で8時間重合したところ、高粘度の液体となった。サンプリングして測定した重合率は98.6%であった。反応液中のポリマー(ポリマー VA−1)のMnは111,500であり、PDIは1.55であった。また、ポリマーを構成するPolymer Aの理論酸価は、162.9mgKOH/gである。得られた反応液をメタノール/水混合溶媒に投入し、析出物をろ過及び水洗した。70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、ポリマー VA−1を得た。得られたポリマー VA−1の酸価は145.3mgKOH/gであった。得られたポリマー VA−1を酸価の1.1倍量のアンモニア水にて中和し、ポリマー水溶液VA−1(固形分40%)を調製した。
【0086】
<応用例>
(応用例1:白色顔料分散液の調製)
250mLのガラス瓶に、ポリマー水溶液VA−1 16部、水19.75部、酸化チタン(商品名「JR−405」、テイカ社製)64部、及びジエタノールアミン(DEA)0.25部を入れた。ガラスビーズ200gをさらに入れ、シェイカーにて2時間振とうさせて白色顔料分散液を得た。
【0087】
(応用例2:水性塗料の調製)
塗料用の水性樹脂として、商品名「ウォーターゾールS−126」(DIC社製)100部、商品名「ウォーターゾールS−695」(DIC社製)5部、及び商品名「ウォーターゾールS−683IM」(DIC社製)5部を混合するとともに、水100部を配合して撹拌した。応用例1で得た白色顔料分散液30部を加えて撹拌し、白色の水性塗料を得た。得られた水性塗料をアルミ板に塗布し、140℃で20分間焼き付けたところ、透明で綺麗な白色の塗膜が形成された。塗膜が形成された塗板を沸騰水に入れて30分間浸漬したところ、塗膜の白化、膨れ、剥離などは生じなかった。また、得られた水性塗料を黒帯展色紙に塗布して乾燥したところ、黒帯部分を十分に隠蔽する、隠蔽力の大きい塗膜を形成することができた。
【0088】
(応用例3:黒色顔料分散液の調製)
250mLのガラス瓶に、ポリマー水溶液VA−1 16部、水53.75部、カーボンブラック顔料30部、及びDEA0.25部を入れた。ガラスビーズ200gをさらに入れ、シェイカーにて2時間振とうさせて黒色顔料分散液を得た。
【0089】
(応用例4:水性文具用インキの調製)
応用例3で得た黒色顔料分散液、グリセリン、及び水を、顔料濃度85%及びグリセリン濃度14%となるように混合し、水性文具用のインキを調製した。中芯と、プラスチック成形で作製したペン先とを有するプラスチック製のサインペンに調製したインキを詰めた。このサインペンを使用して普通紙及び画仙紙に筆記したところ、浸透によるインキの裏抜け現象が生ずることなく、良好に筆記できることがわかった。さらに、筆記文字の濃度も高かいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のグラフト型コポリマーは、例えば、塗料、文具、電子材料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、紫外線硬化性インク、電子線硬化性インク、トナー、化粧品、捺染、接着剤、粘着剤、フォトレジスト材料、医療用材料などに用いられる被膜形成成分として使用することができる。