(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<マイクロカプセル>>
本発明のマイクロカプセルは、芯物質及び溶媒を内包し、前記芯物質は、アミノ基及びアミノ基が塩を形成している基(以下、「アミノ基塩形成基」と略記することがある)を有さず、常温の水に対する溶解度が23g/L以上のものであり、前記溶媒として、少なくともジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルを内包し、前記ジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル基が鎖状のものである。
本発明のマイクロカプセルにおいては、溶媒として、上記のような特定の化合物の組み合わせを選択することで、芯物質として溶解度が前記範囲の親水性化合物を、高濃度の溶液の状態で内包可能となっている。
【0010】
<芯物質>
前記芯物質(本明細書においては、「親水性芯物質」と称することがある)は、アミノ基及びアミノ基塩形成基を有しない。前記親水性芯物質がアミノ基を有しないことにより、また、アミノ基塩形成基を有さず、アミノ基を有する状態とはならないことにより、この芯物質と後述するイソシアネート化合物との反応が抑制される。その結果、マイクロカプセルを構成するための膜形成成分の形成量の低下が抑制される。
【0011】
前記アミノ基塩形成基としては、例えば、アミノ基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、アミノ基(−NH
2)の窒素原子に水素イオン(H
+)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがq価(qは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はq以下であり、通常はqである。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0012】
前記アミノ基塩形成基における前記アニオンは、特に限定されず、無機アニオン及び有機アニオンのいずれでもよい。
好ましい前記無機アニオンとしては、例えば、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられ、前記ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
好ましい前記有機アニオンとしては、例えば、カルボン酸のアニオン、スルホン酸のアニオン等が挙げられる。
前記カルボン酸のアニオンは、モノカルボン酸(1価カルボン酸)のアニオンでもよいし、ジカルボン酸、トリカルボン酸等の多価カルボン酸のアニオンでもよい。
【0013】
前記アミノ基塩形成基における前記アニオンは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
すなわち、1個のアミノ基塩形成基が2個以上の前記アニオンを有する場合、これら2個以上のアニオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
ただし、前記アミノ基塩形成基は、基全体として電気的に中性であること、すなわち、1個のアミノ基塩形成基中の前記カチオン部の価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
【0014】
前記親水性芯物質の常温の水に対する溶解度は23g/L以上であり、前記溶解度はこの条件を満たせば、特に限定されない。例えば、前記溶解度は、30g/L以上、35g/L以上、40g/L以上等のいずれかであってもよいが、これらは一例である。
前記溶解度の上限値も特に限定されず、例えば、100g/Lとすることができるが、これは一例である。
【0015】
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられ、好ましくは20〜24℃である。
【0016】
前記親水性芯物質は、アミノ基及びアミノ基塩形成基を有さず、常温の水に対する溶解度が23g/L以上のものであれば、特に限定されず、マイクロカプセルの用途に応じて、任意に選択できる。
【0017】
本発明のマイクロカプセルは、経時と共に、内包された親水性芯物質を徐々に外部に放出する徐放性を有するものとすることができる。したがって、本発明のマイクロカプセルは、医薬、殺菌剤、農薬等の分野で利用可能であり、前記親水性芯物質として、これらの有効成分を用いることができる。
【0018】
また、接着剤には、硬化剤と樹脂とを反応させることで得られるものがあり、本発明のマイクロカプセルは、このような接着剤の構成成分としても利用可能であり、前記親水性芯物質として、前記硬化剤を用いることができる。
ただし、ここに挙げた親水性芯物質は、本発明のマイクロカプセルが内包するものの一例に過ぎず、本発明における親水性芯物質は、これらに限定されない。
【0019】
また、建物の内装材や家具等には、ホルムアルデヒドを含む接着剤やバインダーを用いて製造されたものがあり、製品としてホルムアルデヒドを含むものがある。このような製品からは、ホルムアルデヒドが放出され、室内でのホルムアルデヒドの濃度が上昇してしまい、人や動物に対して健康被害を及ぼすことが問題となっている。本発明のマイクロカプセルは、このようなホルムアルデヒド等の有害成分を除去する除去剤としても利用可能であり、前記親水性芯物質として、このようなホルムアルデヒド等の有害成分と反応する成分を用いることができる。
【0020】
上述の有害成分と反応する成分のうち、ホルムアルデヒドと反応する成分(以下、「ホルムアルデヒド反応剤」と略記することがある)は、有機化合物であることが好ましく、このようなホルムアルデヒド反応剤としては、例えば、式「−NH−」で表される基(ただし、式中の結合相手が未確定の結合は、水素原子に結合していない。)(以下、この基を「「−NH−」基」と略記することがある)、及び前記式「−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−NH−」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有する化合物が挙げられる。ホルムアルデヒド反応剤において、「−NH−」基は、ホルムアルデヒドとの反応性を示し、「−NH−」塩形成基はそれ自体が、又は「−NH−」基となってこの「−NH−」基が、ホルムアルデヒドとの反応性を示すと推測される。
【0021】
ホルムアルデヒド反応剤1分子中の、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら2個以上の基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これら2個以上の基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。通常は、目的とするホルムアルデヒド反応剤の調製が容易であることから、これら2個以上の基は、すべて同一であること、すなわち、すべて「−NH−」基であるか、又はすべて同一の「−NH−」塩形成基であることが好ましい。
【0022】
「−NH−」塩形成基としては、例えば、「−NH−」基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、「−NH−」基の窒素原子に水素イオン(H
+)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがm価(mは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はm以下であり、mであることが好ましい。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0023】
「−NH−」塩形成基における前記アニオンは、特に限定されず、例えば、前記アミノ基塩形成基におけるアニオンと同様のものが挙げられる。
【0024】
ホルムアルデヒド反応剤が有する前記アニオンは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
すなわち、1分子のホルムアルデヒド反応剤が2個以上の前記アニオンを有する場合、これら2個以上のアニオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
ただし、ホルムアルデヒド反応剤は、分子全体として電気的に中性であること、すなわち、ホルムアルデヒド反応剤1分子中の前記カチオン部の価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
【0025】
ホルムアルデヒド反応剤1分子中の、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
【0026】
ホルムアルデヒド反応剤の分子中における、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の位置は、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド反応剤が鎖状構造である場合には、分子の末端部以外であれば、いずれの位置であってもよい。
【0027】
ホルムアルデヒド反応剤は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、鎖状構造及び環状構造をともに有していてもよい。
【0028】
ホルムアルデヒド反応剤が環状構造を有する場合、その環は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環が縮環した多環状であってもよい。
ホルムアルデヒド反応剤が環状構造を有する場合、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基は、前記環状構造の環骨格を形成していてもよいし、環骨格を形成せずに、環骨格を形成している基に結合していてもよい。
【0029】
ホルムアルデヒド反応剤において、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の窒素原子は、窒素原子又はカルボニル基の炭素原子に結合していることが好ましい。
1個のカルボニル基にこのように結合している「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみでもよいし、2個でもよい。
1個の窒素原子にこのように結合している「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみでもよいし、2個でもよいが、1個であることが好ましい。
【0030】
すなわち、好ましいホルムアルデヒド反応剤としては、例えば、式「−C(=O)−NH−」で表される基(アミド結合、以下、「「−C(=O)−NH−」基」と略記することがある)、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される基(以下、「「−NH−C(=O)−NH−」基」と略記することがある)、式「−C(=O)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−C(=O)−NH−」塩形成基」と略記することがある)、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基」と略記することがある)、式「=N−NH−」で表される基(以下、「「=N−NH−」基」と略記することがある)、式「−HN−N(−)−NH−」で表される基(以下、「「−HN−N(−)−NH−」基」と略記することがある)、式「=N−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「=N−NH−」塩形成基」と略記することがある)及び式「−HN−N(−)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−HN−N(−)−NH−」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有するもの、が挙げられる。ここで、例えば、「−HN−N(−)−NH−」基とは、1個の窒素原子に、2個の「−NH−」基の窒素原子と、さらにもう1個の基と、が単結合で結合しているものを意味する。
なお、「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基及び「−HN−N(−)−NH−」塩形成基において、「−NH−」塩形成基の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0031】
環状構造を有するホルムアルデヒド反応剤で好ましいものとしては、例えば、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成しているものが挙げられ、「−C(=O)−NH−」基、「−NH−C(=O)−NH−」基、「−C(=O)−NH−」塩形成基、「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基、「=N−NH−」基、「−HN−N(−)−NH−」基、「=N−NH−」塩形成基及び「−HN−N(−)−NH−」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成しているホルムアルデヒド反応剤がより好ましい。
【0032】
ホルムアルデヒド反応剤が環状構造を有する場合、その環骨格の環員数、すなわち、環骨格を形成している原子の数(個)は、単環状である場合には、好ましくは5〜7、より好ましくは5又は6であり、多環状である場合には、好ましくは8〜10である。
【0033】
特に好ましいホルムアルデヒド反応剤としては、例えば、置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩、置換基を有していてもよい2−イミダゾリジノン及びその塩、置換基を有していてもよい5−ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい3−ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール−3−オン及びその塩、置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩、置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩、置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,3−トリアゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール及びその塩、並びに置換基を有していてもよい1,2,3−ベンゾトリアゾール及びその塩等が挙げられる。
ヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、1,2,4−トリアゾール−3−オン、フタルイミド、グリコールウリル、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及び1,2,3−ベンゾトリアゾールを以下に示す。ヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールはいずれも、環員数が5の化合物である。フタルイミド及び1,2,3−ベンゾトリアゾールは環員数が9の化合物である。グリコールウリルは環員数が8の化合物である。
【0035】
ここで、ヒダントインの塩としては、例えば、ヒダントイン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、2−イミダゾリジノンの塩としては、例えば、2−イミダゾリジノン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、5−ピラゾロンの塩としては、例えば、5−ピラゾロン中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、3−ピラゾロンの塩としては、例えば、3−ピラゾロン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、1,2,4−トリアゾール−3−オンの塩としては、例えば、1,2,4−トリアゾール−3−オン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、フタルイミドの塩としては、例えば、フタルイミド中の1個の「−NH−」基が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、グリコールウリルの塩としては、例えば、グリコールウリル中の4個の「−NH−」基の少なくとも1個が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
【0036】
また、ピラゾールの塩としては、例えば、ピラゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3−トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3−トリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,4−トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,4−トリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3−ベンゾトリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
【0037】
なお、本明細書において、「置換基を有する」とは、元の化合物の1個以上の水素原子(ただし、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基中の水素原子を除く)が水素原子以外の基(置換基)で置換されていることを意味する。
【0038】
本明細書においては、置換基を有するヒダントインを「ヒダントイン誘導体」と称し、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体を包括して「ヒダントイン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するヒダントインの塩、すなわち、ヒダントイン誘導体の塩とは、ヒダントイン誘導体が、ヒダントインの場合と同様に、塩を形成したものである。
「置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩」とは、換言すると、ヒダントイン系化合物及びその塩のことである。
なお、本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されているものを意味する。
【0039】
ヒダントイン以外の化合物の場合も同様である。
すなわち、本明細書においては、置換基を有する2−イミダゾリジノンを「2−イミダゾリジノン誘導体」と称し、2−イミダゾリジノン及び2−イミダゾリジノン誘導体を包括して「2−イミダゾリジノン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する2−イミダゾリジノンの塩、すなわち、2−イミダゾリジノン誘導体の塩とは、2−イミダゾリジノン誘導体が、2−イミダゾリジノンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい2−イミダゾリジノン及びその塩」とは、換言すると、2−イミダゾリジノン系化合物及びその塩のことである。
【0040】
本明細書においては、置換基を有する5−ピラゾロンを「5−ピラゾロン誘導体」と称し、5−ピラゾロン及び5−ピラゾロン誘導体を包括して「5−ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する5−ピラゾロンの塩、すなわち、5−ピラゾロン誘導体の塩とは、5−ピラゾロン誘導体が、5−ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい5−ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、5−ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
【0041】
本明細書においては、置換基を有する3−ピラゾロンを「3−ピラゾロン誘導体」と称し、3−ピラゾロン及び3−ピラゾロン誘導体を包括して「3−ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する3−ピラゾロンの塩、すなわち、3−ピラゾロン誘導体の塩とは、3−ピラゾロン誘導体が、3−ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい3−ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、3−ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
【0042】
本明細書においては、置換基を有する1,2,4−トリアゾール−3−オンを「1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体」と称し、1,2,4−トリアゾール−3−オン及び1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体を包括して「1,2,4−トリアゾール−3−オン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4−トリアゾール−3−オンの塩、すなわち、1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体の塩とは、1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体が、1,2,4−トリアゾール−3−オンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール−3−オン及びその塩」とは、換言すると、1,2,4−トリアゾール−3−オン系化合物及びその塩のことである。
【0043】
本明細書においては、置換基を有するフタルイミドを「フタルイミド誘導体」と称し、フタルイミド及びフタルイミド誘導体を包括して「フタルイミド系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するフタルイミドの塩、すなわち、フタルイミド誘導体の塩とは、フタルイミド誘導体が、フタルイミドの場合と同様に、塩を形成したものである。
「置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩」とは、換言すると、フタルイミド系化合物及びその塩のことである。
【0044】
本明細書においては、置換基を有するグリコールウリルを「グリコールウリル誘導体」と称し、グリコールウリル及びグリコールウリル誘導体を包括して「グリコールウリル系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するグリコールウリルの塩、すなわち、グリコールウリル誘導体の塩とは、グリコールウリル誘導体が、グリコールウリルの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩」とは、換言すると、グリコールウリル系化合物及びその塩のことである。
【0045】
本明細書においては、置換基を有するピラゾールを「ピラゾール誘導体」と称し、ピラゾール及びピラゾール誘導体を包括して「ピラゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するピラゾールの塩、すなわち、ピラゾール誘導体の塩とは、ピラゾール誘導体が、ピラゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩」とは、換言すると、ピラゾール系化合物及びその塩のことである。
【0046】
本明細書においては、置換基を有する1,2,3−トリアゾールを「1,2,3−トリアゾール誘導体」と称し、1,2,3−トリアゾール及び1,2,3−トリアゾール誘導体を包括して「1,2,3−トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3−トリアゾールの塩、すなわち、1,2,3−トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3−トリアゾール誘導体が、1,2,3−トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3−トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3−トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
【0047】
本明細書においては、置換基を有する1,2,4−トリアゾールを「1,2,4−トリアゾール誘導体」と称し、1,2,4−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾール誘導体を包括して「1,2,4−トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4−トリアゾールの塩、すなわち、1,2,4−トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,4−トリアゾール誘導体が、1,2,4−トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,4−トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
【0048】
本明細書においては、置換基を有する1,2,3−ベンゾトリアゾールを「1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体」と称し、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体を包括して「1,2,3−ベンゾトリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3−ベンゾトリアゾールの塩、すなわち、1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体が、1,2,3−ベンゾトリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3−ベンゾトリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3−ベンゾトリアゾール系化合物及びその塩のことである。
【0049】
前記置換基は、特に限定されないが、好ましいものとしては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基(アリールアルキル基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
1分子のホルムアルデヒド反応剤が有する前記置換基は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
すなわち、2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
通常、1分子のホルムアルデヒド反応剤が有する前記置換基は、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
【0051】
ホルムアルデヒド反応剤の分子中における、前記置換基の位置は、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド反応剤が鎖状構造である場合には、分子の末端部であってもよいし、末端部以外の部位であってもよい。
ホルムアルデヒド反応剤が2個以上の前記置換基を有する場合、これら置換基の結合位置は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同じであってもよい。
【0052】
ホルムアルデヒド反応剤は、常温で固体であるものが好ましい。
【0053】
ホルムアルデヒド反応剤で特に好ましいものとしては、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−メチル−5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、3,5−ジメチルピラゾール、フタルイミド、グリコールウリル、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0054】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記親水性芯物質は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0055】
本発明のマイクロカプセルが2種以上の芯物質を内包する場合、内包するこれら芯物質の比率(芯物質の含有量の比率)は、通常、マイクロカプセルの製造時におけるこれら芯物質の配合量の比率と同じとなる。これは、芯物質が上述の親水性芯物質以外の場合にも同様である。マイクロカプセルの製造方法については後述するが、例えば、膜形成成分を後述する界面重縮合により形成した場合には、マイクロカプセルにおける前記芯物質の比率は、界面重縮合時における芯物質の配合量の比率と同じとなる。
【0056】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記親水性芯物質の量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記親水性芯物質の量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0057】
<溶媒>
本発明のマイクロカプセルは、溶媒として、少なくともジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルを内包する。ただし、前記ジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル基は鎖状である。
【0058】
[ジカルボン酸ジアルキルエステル]
前記ジカルボン酸ジアルキルエステルは、アルキルエステルを構成しているカルボキシ基(すなわち、アルコキシカルボニル基)を1分子中に2個有し、アルキルエステル部位を構成しているアルキル基(すなわち、前記アルコキシカルボニル基中のアルキル基)が鎖状のものであれば、特に限定されない。
【0059】
前記ジカルボン酸ジアルキルエステル中の前記鎖状のアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよい。
前記アルキル基で炭素数が1〜13のものとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基等が挙げられる。
前記アルキル基は、炭素数が3〜12であることが好ましく、4〜11であることがより好ましく、5〜10であることが特に好ましく、例えば、7〜10であってもよいが、これは一例である。
【0060】
前記ジカルボン酸ジアルキルエステル中の2個の前記アルキル基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、互いに異なる場合、これら2個のアルキル基の組み合わせは、特に限定されない。
【0061】
前記ジカルボン酸ジアルキルエステルは、炭化水素基に2個のアルコキシカルボニル基が結合している化合物であることが好ましい。
前記炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
また、前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0062】
前記アルキレン基は、炭素数が1〜10であるものが好ましく、このような前記アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチルトリメチレン基、2−エチルトリメチレン基、1−メチル−2−エチルエチレン基、n−プロピルエチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、1,2−ジメチルテトラメチレン基、1,3−ジメチルテトラメチレン基、1,4−ジメチルテトラメチレン基、2,3−ジメチルテトラメチレン基、2,2−ジメチルテトラメチレン基、1−エチルテトラメチレン基、2−エチルテトラメチレン基、1−メチル−2−エチルトリメチレン基、1−メチル−3−エチルトリメチレン基、2−メチル−3−エチルトリメチレン基、1−メチル−1−エチルトリメチレン基、2−メチル−2−エチルトリメチレン基、1,2,3−トリメチルトリメチレン基、1,1,2,2−テトラメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、前記アルキレン基は、炭素数が2〜10であるものがより好ましく、炭素数が3〜9であるものがさらに好ましい。
【0063】
前記ジカルボン酸ジアルキルエステルは、下記一般式(I)で表される化合物であることが特に好ましい。
R
1O−(O=)C−X−C(=O)−OR
2 ・・・・(I)
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数5〜10の鎖状のアルキル基であり;Xは炭素数3〜9のアルキレン基である。)
【0064】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数5〜10の鎖状のアルキル基であり、この鎖状のアルキル基は、先に説明した鎖状のアルキル基と同じものである。
また、式中、Xは炭素数3〜9のアルキレン基であり、このアルキレン基は、先に説明したアルキレン基と同じものである。
【0065】
前記一般式(I)で表されるジカルボン酸ジアルキルエステルで好ましいものとしては、例えば、アジピン酸ジn−ヘキシル、アジピン酸ジn−オクチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジn−デシル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸ジアルキル;セバシン酸ジn−オクチル、セバシン酸ジイソオクチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸ジアルキル等が挙げられ、これらのなかでも、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)がより好ましい。
【0066】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記ジカルボン酸ジアルキルエステルは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0067】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記ジカルボン酸ジアルキルエステルの量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記ジカルボン酸ジアルキルエステルの量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0068】
[リン酸トリエステル]
前記リン酸トリエステルは、溶媒として機能するものであれば特に限定されない。
前記リン酸トリエステルで好ましいものとしては、例えば、リン酸トリエステルのエステル部位を構成し、酸素原子に結合している基が炭化水素基であるものが挙げられる。
【0069】
リン酸トリエステル中の前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基のいずれであってもよい。
リン酸トリエステル中の3個の前記炭化水素基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個の前記炭化水素基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、2個のみ同一であってもよい。
【0070】
前記炭化水素基のうち、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。
【0071】
前記炭化水素基における飽和脂肪族炭化水素基(すなわちアルキル基)は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。
前記アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。
【0072】
直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基等の、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0073】
環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等の、炭素数3〜10の環状のアルキル基が挙げられる。
また、環状の前記アルキル基としては、例えば、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、前記炭化水素基におけるアルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0074】
前記不飽和脂肪族炭化水素基としては、前記アルキル基中の、炭素原子間の1個以上の単結合(C−C)が、不飽和結合である二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)で置換されてなる基が挙げられる。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら不飽和結合は二重結合のみでもよいし、三重結合のみでもよく、二重結合及び三重結合が混在していてもよい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の位置は特に限定されない。
【0075】
前記不飽和脂肪族炭化水素基で好ましいものとしては、例えば、前記不飽和結合が1個のものに相当する、直鎖状又は分岐鎖状のものであるアルケニル基及びアルキニル基、並びに環状のものであるシクロアルケニル基及びシクロアルキニル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0076】
前記炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。
【0077】
前記炭化水素基のうち、前記芳香族炭化水素基(すなわちアリール基)は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6〜15であることが好ましい。
前記アリール基で好ましいものとしては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられる。
また、前記アリール基で好ましいものとしては、例えば、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基やアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換するアルキル基としては、前記炭化水素基におけるアルキル基として例示した上記のものが挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6〜15であることが好ましい。
【0078】
前記炭化水素基のうち、アラルキル基としては、例えば、前記炭化水素基におけるアルキル基の1個の水素原子が、前記炭化水素基におけるアリール基で置換されてなるものが挙げられる。
好ましい前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等が挙げられる。
【0079】
リン酸トリエステル中の前記炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
すなわち、好ましい前記リン酸トリエステルとしては、例えば、リン酸トリアルキルエステル、リン酸ジアルキルモノアリールエステル、リン酸モノアルキルジアリールエステル、リン酸トリアリールエステル等が挙げられる。
【0080】
前記リン酸トリエステルは、下記一般式(II)で表される化合物であることが特に好ましい。
R
3O−(O=)P(−OR
4)−OR
5 ・・・・(II)
(式中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基である。)
【0081】
式中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基であり、これらアルキル基及びアリール基は、先に説明したアルキル基及びアリール基と同じものである。
【0082】
前記一般式(II)で表されるリン酸トリエステルで好ましいものとしては、例えば、リン酸トリn−ブチル、リン酸トリn−ペンチル、リン酸トリn−ヘキシル、リン酸トリn−ヘプチル、リン酸トリn−オクチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)等のリン酸トリアルキル;リン酸トリフェニル等のリン酸トリアリール等が挙げられ、これらのなかでも、リン酸トリn−ブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)がより好ましい。
【0083】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記リン酸トリエステルは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0084】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記リン酸トリエステルの量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記リン酸トリエステルの量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0085】
前記マイクロカプセルが内包する2種以上の溶媒の量の比率(溶媒の含有量の比率)も、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0086】
溶媒として、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルを併用せず、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルのいずれか一方のみを用いた場合には、通常、マイクロカプセルを形成できないか、又は形成できたとしても、マイクロカプセルは前記親水性芯物質を高濃度の溶液の状態で内包できない。ところが、本発明のマイクロカプセルでは、このような好ましくない特性の溶媒同士を組み合わせて用いることで、全く意外にも、親水性芯物質を高濃度の溶液の状態で内包しつつ、安定してカプセル構造を維持できる。
【0087】
<膜形成成分>
本発明のマイクロカプセルは、外殻となる膜が前記親水性芯物質を包み込んだ構成を有する。
前記膜を形成する成分(本明細書においては、「膜形成成分」と称することがある)は、公知のものでよく、通常は重縮合物である。
前記重縮合物は、オリゴマー又はポリマーであり、膜形成能を有する有機化合物であれば特に限定されないが、界面重縮合法で得られた界面重縮合物であることが好ましい。界面重縮合物を用いることにより、より優れた品質のマイクロカプセルが得られる。界面重縮合の方法については、後ほど詳しく説明する。
【0088】
好ましい前記重縮合物としては、例えば、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
ここで、「ポリウレア」とは、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される結合(ウレア結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
また、「ポリウレタン」とは、式「−NH−C(=O)−O−」で表される結合(ウレタン結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基(−OH)を有するヒドロキシ化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
また、「ポリアミド」とは、式「−NH−C(=O)−」で表される結合(アミド結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のカルボキシ基(−C(=O)−OH)を有するカルボン酸、又はその1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基(−C(=O)−Cl)で置換されてなるカルボン酸クロライドと、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
【0089】
ポリウレア及びポリウレタンを製造するための前記イソシアネート化合物は、アミノ基又は水酸基を有しないものが好ましく、アミノ基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
【0090】
前記イソシアネート化合物がその1分子中に有するイソシアネート基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0091】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート等の有機多価イソシアネート化合物;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする);前記有機多価イソシアネート化合物のトリメチロールプロパン付加体;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする)のトリメチロールプロパン付加体等が挙げられる。
【0092】
前記イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0093】
ポリウレアを製造するための前記アミン化合物は、イソシアネート基又は水酸基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
【0094】
前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0095】
前記アミン化合物としては、例えば、メラミン、尿素、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の有機多価アミン化合物等が挙げられる。
【0096】
前記アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0097】
ポリウレタンを製造するための前記ヒドロキシ化合物は、イソシアネート基又はアミノ基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及びアミノ基をともに有しないものがより好ましい。
【0098】
前記ヒドロキシ化合物が、その1分子中に有する水酸基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0099】
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、有機多価ヒドロキシ化合物等が挙げられ、前記有機多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール等が挙げられる。
【0100】
前記ヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0101】
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物としては、例えば、カルボキシ基を有しない点以外は、上述のポリウレアを形成するための前記アミン化合物と同じものが挙げられる。
【0102】
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0103】
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0104】
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸は、アミノ基を有しないものである。
前記カルボン酸がその1分子中に有するカルボキシ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0105】
前記カルボン酸としては、例えば、アジピン酸(ヘキサン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)等の有機多価カルボン酸(脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸)等が挙げられる。
【0106】
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸クロライドは、前記カルボン酸の1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換されてなるものであり、前記カルボン酸のすべてのカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換されてなるものでもよい。
【0107】
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸及びカルボン酸クロライドは、いずれも1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0108】
上記の中でも、前記重縮合物は、イソシアネート化合物を用いて得られたものが好ましく、より好ましいものとしては、ポリウレア、ポリウレタンが挙げられる。
【0109】
<他の成分>
本発明のマイクロカプセルは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記親水性芯物質及び溶媒以外に、他の成分を内包していてもよい。
例えば、マイクロカプセルの製造時に、前記他の成分を、前記親水性芯物質及び溶媒と併用することにより、前記他の成分を内包したマイクロカプセルが得られる。
【0110】
前記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、前記親水性芯物質以外の他の芯物質、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステル以外の他の溶媒、乳化剤等が挙げられる。
【0111】
[他の芯物質]
前記他の芯物質は、アミノ基及びアミノ基塩形成基の少なくとも一方を有するか、又は常温の水に対する溶解度が23g/L未満のものである。
【0112】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の芯物質は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0113】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の芯物質の量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の芯物質の量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0114】
本発明のマイクロカプセルにおいて、芯物質の総含有量(前記親水性芯物質及び他の芯物質の合計含有量)に対する、前記他の芯物質の含有量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、本発明の効果がより顕著に得られる。
すなわち、本発明のマイクロカプセルにおいて、芯物質の総含有量(前記親水性芯物質及び他の芯物質の合計含有量)に対する、前記親水性芯物質の含有量の割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0115】
[他の溶媒]
前記他の溶媒は、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステル以外のものであれば特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、後述するマイクロカプセルの製造方法を反映して、膜形成成分を形成するための原料化合物を溶解又は分散させている溶媒や、原料化合物を界面重縮合させるときに反応液を乳化させるための水及び疎水性溶媒等の溶媒が、前記他の溶媒の例として挙げられる。
【0116】
本発明のマイクロカプセルにおいて、溶媒の総含有量(前記ジカルボン酸ジアルキルエステル、リン酸トリエステル及び他の溶媒の合計含有量)に対する、前記他の溶媒の含有量の割合は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%以上であることがより好ましく、7〜20質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、本発明の効果がより顕著に得られる。
すなわち、本発明のマイクロカプセルにおいて、溶媒の総含有量(前記ジカルボン酸ジアルキルエステル、リン酸トリエステル及び他の溶媒の合計含有量)に対する、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルの合計含有量の割合は、70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%以上であることがより好ましく、80〜93質量%であることが特に好ましい。
【0117】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0118】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の溶媒の量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記他の溶媒の量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0119】
[乳化剤]
後述するマイクロカプセルの製造方法を反映して、界面重縮合時に用いる乳化剤が、前記他の成分として、挙げられる。
【0120】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記乳化剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0121】
本発明のマイクロカプセルが内包する前記乳化剤の量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
本発明のマイクロカプセルが内包する前記乳化剤の量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0122】
本発明のマイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜7μmであることがより好ましく、1.5〜4μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、コールターカウンターを用いる方法で測定された、体積累積分布の中央値D
50を意味する。
【0123】
本発明のマイクロカプセルにおいて、芯物質を包み込んでいる外殻の膜の厚さは、30〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましい。
【0124】
<<マイクロカプセルの製造方法>>
本発明のマイクロカプセルは、外殻となるカプセル状の膜に前記親水性芯物質を内包させることで製造できる。カプセル状の膜は、前記膜形成成分により形成する。
【0125】
膜形成成分は、これを形成するための原料化合物を重縮合させることで得られる。
前記重縮合は公知の方法で行えばよく、その条件は用いる原料化合物の種類等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0126】
例えば、界面重縮合を行う場合には、内包させる芯物質及び溶媒の共存下で、原料化合物を重縮合させることにより、芯物質及び溶媒を内包するマイクロカプセルが一気に得られる。以下、このように界面重縮合により、膜形成成分を形成するとともに本発明のマイクロカプセルを製造する方法について説明する。
【0127】
重縮合させる必須の2群の原料化合物の使用量は、重縮合の方法及び原料化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。ここで、「重縮合させる必須の2群の原料化合物」とは、膜形成成分である重縮合物の主骨格を構成するのに必須の成分を意味し、重縮合物がポリウレアである場合には前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を意味し、重縮合物がポリウレタンである場合には前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を意味し、重縮合物がポリアミドである場合には前記カルボン酸又はカルボン酸クロライド及びアミン化合物を意味する。
【0128】
例えば、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を用いて、界面重縮合によりポリウレアを得る場合には、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の使用量は、[アミン化合物中のアミノ基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90〜60:40となる量であることが好ましく、20:80〜40:60となる量であることがより好ましい。アミン化合物中のアミノ基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセルが得られる。
【0129】
例えば、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を用いて、界面重縮合によりポリウレタンを得る場合には、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の使用量は、[ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90〜60:40となる量であることが好ましく、20:80〜40:60となる量であることがより好ましい。ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセルが得られる。
【0130】
ここまでは、前記重縮合物として、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれかを重縮合して得られたものについて説明したが、前記重縮合物は、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれにも該当しない他の化合物を重縮合して得られたものであってもよい。
【0131】
前記他の化合物は、重縮合可能なものであれば、特に限定されない。
前記他の化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0132】
例えば、ポリウレアが、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0133】
同様に、ポリウレタンが、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0134】
同様に、ポリアミドが、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0135】
重縮合時の前記親水性芯物質の配合量は、特に限定されないが、上述の重縮合させる必須の2群の原料化合物の総配合量100質量部に対して、25〜85質量部であることが好ましく35〜80質量部であることがより好ましく、45〜75質量部であることが特に好ましい。
【0136】
また、重縮合時の配合成分の総量に対する前記親水性芯物質の配合量の割合は、4.0質量%以上であることが好ましく、4.5質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以上であることが特に好ましい。
一方、重縮合時の配合成分の総量に対する前記親水性芯物質の配合量の割合の上限値は、特に限定されないが、15質量%であることが好ましい。
【0137】
重縮合時の前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルの配合量の比率は、特に限定されないが、[ジカルボン酸ジアルキルエステルの配合量]/[リン酸トリエステルの配合量]の質量比が、85/15〜55/45であることが好ましく、83/17〜57/43であることがより好ましく、81/19〜59/41であることが特に好ましい。前記の配合量の比率がこのような範囲内であることで、マイクロカプセルをより安定して形成できるとともに、このマイクロカプセルは、前記親水性芯物質をより高濃度の溶液の状態で内包できる。
【0138】
前記界面重縮合は、水と疎水性溶媒(可塑剤)との共存下で、反応液を乳化させて行うことが好ましい。
また、反応液を乳化させる場合には、乳化剤を併用してもよい。
【0139】
前記疎水性溶媒は、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステル以外の溶媒であり、本発明のマイクロカプセルが内包していてもよい他の溶媒として先に説明したものである。
前記疎水性溶媒として、より具体的には、例えば、アルコール、アミド、ニトリル、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類(フェノール性水酸基を有する化合物)、硫化炭素、カルボン酸等が挙げられる。
【0140】
前記疎水性溶媒は、SP値(溶解パラメータ)が12(cal/cm
3)
1/2以下であるものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、界面重縮合時の反応液が、水の中に油性成分が分散している状態の水中油滴型(O/W型)の分散液となり易く、膜形成成分とマイクロカプセルの形成がより容易となる。
すなわち、SP値が12(cal/cm
3)
1/2以下である溶媒を内包するマイクロカプセルは、本発明の好ましいマイクロカプセルの一例である。
【0141】
前記疎水性溶媒のSP値の下限値は、特に限定されないが、6.5(cal/cm
3)
1/2であることが好ましい。このようなSP値の疎水性溶媒は入手が容易である。
【0142】
SP値が12(cal/cm
3)
1/2以下の溶媒としては、例えば、
1−プロパノール(11.9)、2−プロパノール(11.5)、1−ブタノール(11.4)、シクロヘキサノール(11.4)、2−メトキシエタノール(10.8)、1−ヘキサノール(10.7)、2−メチル−2−プロパノール(10.6)、1−ブトキシ−2−プロパノール(10.4)、2−エチルヘキサノール(9.5)等のアルコール;
ジメチルホルムアミド(12.0)等のアミド;
アセトニトリル(11.8)等のニトリル;
アセトン(10.0)、メチルエチルケトン(9.3)、メチルプロピルケトン(8.7)、メチルイソプロピルケトン(8.5)等のケトン;
フタル酸ジn−ブチル(9.4)、酢酸エチル(9.1)、酢酸n−ブチル(8.5)、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(8.5)、酢酸イソプロピル(8.4)、酢酸イソブチル(8.3)等のエステル(カルボン酸エステル);
ジオキサン(9.9)、テトラヒドロフラン(9.1)、ジエチルエーテル(7.4)、イソプロピルエーテル(6.9)等の鎖状及び環状のエーテル;
ベンゼン(9.2)、トルエン(8.9)、キシレン(8.8)、エチルベンゼン(8.8)、シクロヘキサン(8.2)、n−オクタン(7.6)、n−ヘキサン(7.3)、n−ペンタン(7.0)等の芳香族及び脂肪族炭化水素;
塩化メチレン(9.7)、クロロホルム(9.3)、トリクロロエチレン(9.2)、四塩化炭素(8.6)等のハロゲン化炭化水素(ハロゲン化脂肪族炭化水素);
二硫化炭素(10.0)等の硫化炭素;
フェノール(11.5)等のフェノール類;
酢酸(10.1)等のカルボン酸
等が挙げられる。溶媒名と並記したカッコ内の数値はSP値((cal/cm
3)
1/2)を意味する。
【0143】
前記疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0144】
重縮合時における前記溶媒の配合量は、特に限定されないが、通常は、芯物質の配合量100質量部に対して、200〜5000質量部であることが好ましく、300〜4000質量部であることがより好ましく、400〜3000質量部であることが特に好ましい。
【0145】
重縮合時において、前記溶媒の総配合量に対する、前記ジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルの合計配合量の割合は、特に限定されないが、通常は、10〜50質量%であることが好ましく、14〜40質量%であることがより好ましく、18〜30質量%であることが特に好ましい。
【0146】
前記乳化剤は、本発明のマイクロカプセルが内包していてもよい他の成分として先に説明したものである。
前記乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0147】
前記乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0148】
界面重縮合の温度は、特に限定されないが、通常は60〜110℃であることが好ましく、65〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることが特に好ましい。
また、界面重縮合の時間も特に限定されず、例えば、界面重縮合の温度に応じて適宜調節すればよいが、0.5〜5時間であることが好ましく、1〜4時間であることがより好ましく、1.5〜3時間であることが特に好ましい。
【0149】
重縮合後は、例えば、本発明のマイクロカプセルが水分散体として得られる。
得られたマイクロカプセルは、そのまま目的とする用途で用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行ってから、目的とする用途で用いてもよく、分散媒を除去してから目的とする用途で用いてもよい。
【0150】
本発明のマイクロカプセルは、例えば、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドからなる群から選択される1種又は2種以上を膜形成成分とする場合、本発明の効果を損なわない範囲内において、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドのいずれにも該当しない、他のオリゴマー及びポリマーのいずれか一方又は両方を、さらに膜形成成分としていてもよい。
前記他のオリゴマー及びポリマーは、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0151】
本発明のマイクロカプセルにおいて、膜形成成分の総含有量に対する、前記他のオリゴマー及びポリマーの合計含有量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
すなわち、本発明のマイクロカプセルにおいて、膜形成成分の総含有量に対する、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドの合計含有量の割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0152】
<<マイクロカプセルの使用方法>>
[液状組成物]
本発明のマイクロカプセルは、例えば、液状組成物の含有成分として好適である。このような液状組成物は、本発明のマイクロカプセルと溶媒(分散媒)を含有していれば、特に限定されず、溶液であってもよいし、分散液であってもよく、任意の形態とすることができる。
【0153】
前記液状組成物で好ましいものとしては、例えば、前記マイクロカプセルを含有する塗料が挙げられる。このような塗料は、建物の内装材(例えば、壁紙等)や家具、又はこれら内装材や家具の構成材料等、ホルムアルデヒドの除去対象物に付着させるのに用いることができる。
ここで塗料は、公知のものでよく、例えば、油性塗料、酒精塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料等が挙げられ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0154】
ただし、ここに挙げた液状組成物は、本発明のマイクロカプセルを用いたもののごく一例に過ぎず、本発明のマイクロカプセルを用いた液状組成物はこれらに限定されない。
【0155】
前記液状組成物は、例えば、前記マイクロカプセルと、溶媒(分散媒)等の液状媒体と、必要に応じて他の成分とを配合することで製造できる。そして、得られた液状組成物は、その配合成分や目的に応じて適した公知の方法で使用すればよい。
【0156】
前記液状組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で、目的とする対象物に付着させることができる。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が挙げられる。
付着させた前記液状組成物は、必要に応じて乾燥させればよい。
【0157】
[樹脂組成物]
本発明のマイクロカプセルは、例えば、樹脂組成物の含有成分として好適である。このような樹脂組成物は、本発明のマイクロカプセルと樹脂を含有していれば、特に限定されず、任意の形態とすることができる。
【0158】
前記樹脂組成物で好ましいものとしては、前記マイクロカプセルを含有する樹脂成形品用のものが挙げられる。
前記樹脂としては、目的に応じて任意に選択でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、シリコンゴム等の合成ゴム等も挙げられる。
【0159】
前記樹脂成型品としては、例えば、建物の内装材や家具等の構成材料が挙げられる。
前記樹脂成型品の形状は、目的に応じて任意に選択でき、例えば、シート状、プレート状(板状)、ブロック状等とすることができる。
【0160】
ただし、ここに挙げた樹脂組成物は、本発明のマイクロカプセルを用いたもののごく一例に過ぎず、本発明のマイクロカプセルを用いた樹脂組成物はこれらに限定されない。
【0161】
前記樹脂組成物は、例えば、本発明のマイクロカプセルと、樹脂と、必要に応じて硬化剤、溶媒等の他の成分とを配合することで製造できる。そして、得られた樹脂組成物は、その配合成分や目的に応じて適した公知の方法で成形すればよい。
【0162】
[シート]
本発明のマイクロカプセルは、例えば、シートの含有成分として好適である。このようなシートは、本発明のマイクロカプセルと樹脂を含有していれば、特に限定されず、任意の形態とすることができる。
【0163】
前記シートで好ましいものとしては、例えば、本発明のマイクロカプセルを含有する層(以下、「マイクロカプセル含有層」と略記することがある)を基材上に備えたものが挙げられる。
【0164】
前記基材として紙基材を用いた場合の前記シートとしては、例えば、医薬シート(貼付剤)、農薬シート(貼付剤)、抗菌シート、伝票、帳票、記録紙、玩具、通信紙、証券、金券、チケット、ポスター、感圧接着剤層を備えた再剥離性シート、壁紙等が挙げられる。
前記紙基材の紙としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等が挙げられる。
【0165】
前記基材として樹脂基材を用いた場合の前記シートとしては、例えば、医薬シート(貼付剤)、農薬シート(貼付剤)、玩具、ポスター、再剥離性シート、壁紙等が挙げられる。
前記樹脂基材の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が挙げられる。
【0166】
前記基材は、1種の材質からなるものでもよいし、2種以上の材質からなるものでもよく、2種以上の材質からなる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。2種以上の材質からなる基材としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等からなる基材が挙げられる。
また、前記基材は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0167】
前記シートは、前記マイクロカプセル含有層をシートの用途に適した組成とすることで、上述のような各種シートとすることができる。
例えば、基材上にマイクロカプセル含有層として、発色剤及び顕色剤を含有し、これらの少なくとも一方を内包するマイクロカプセルを含有する層を備えることで、経時と共に内包された発色剤又は顕色剤がマイクロカプセルから徐々に放出され、発色して、目的とする情報を表示できるようにしたシートを構成できる。
【0168】
また、例えば、基材上にマイクロカプセル含有層として、香料を内包するマイクロカプセルと、感圧接着性及び再剥離性を有する接着剤と、を含有する層を備えることで、開封時に芳香性を示す感圧圧着葉書等の再剥離性シートとすることができる。
【0169】
ここでは、シートとして、前記マイクロカプセル含有層を基材上に備えたものについて説明したが、前記基材として、特定の紙基材等、液状成分が浸透可能なものを用いることで、基材上だけでなく基材中にも前記マイクロカプセルを含有するシートが得られる。
前記シートは、マイクロカプセルを基材上及び基材中のいずれに含有する場合であっても、マイクロカプセルを含有する組成物を用いることで製造できる。
【0170】
ただし、ここで挙げた本発明のシートはごく一例であり、本発明のシートは、これらに限定されない。
【実施例】
【0171】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0172】
<マイクロカプセルの製造>
[実施例1]
1,2,3−ベンゾトリアゾール(東京化成社製、13g)を、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(豊国精油社製、40g)及びリン酸トリn−ブチル(東京化成社製、10g)の混合物に溶解させた。次いで、ここへ濃度が75質量%であるイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体の酢酸エチル溶液(三井化学社製「タケネートD−140N」、21g、固形16g)を添加し、得られた混合物を、濃度が5質量%であるポリビニルアルコール水溶液(150g、固形分7.5g)に添加して、乳化機(プライミクス社製)を用いて、回転数12000rpm、時間10分の条件で乳化させ、乳化液を得た。
ジエチレントリアミン(東京化成社製、2g)を蒸留水(20g)に添加して、溶解させた後、この水溶液の全量を、上記で得られた乳化液に添加し、80℃で2時間攪拌することで、界面重縮合を行った。
以上により、ジエチレントリアミンと、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(以下、「IPDI−TMP付加体」と略記することがある)と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として1,2,3−ベンゾトリアゾールを、溶媒としてセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)及びリン酸トリn−ブチル([セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)]/[リン酸トリn−ブチル]=80/20(質量比))を、それぞれ内包したマイクロカプセルを、水分散体として得た。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
なお、各化合物の構造を、後ほどまとめて示す。
【0173】
上記で得られたマイクロカプセル水分散体を、上質紙上にバーコーターを用いて塗工し、105℃で90秒乾燥させ、次いで、電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて、5000倍の倍率で塗工及び乾燥部位を観察し、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認した。コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を用いて、得られたマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、2.2μmであった。また、1,2,3−ベンゾトリアゾールは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。これらの結果を表2に示す。
【0174】
[実施例2]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)の使用量を40gに代えて30gとし、リン酸トリn−ブチルの使用量を10gに代えて20gとした点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルは、ジエチレントリアミンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として1,2,3−ベンゾトリアゾールを、溶媒としてセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)及びリン酸トリn−ブチル([セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)]/[リン酸トリn−ブチル]=60/40(質量比))を、それぞれ内包したものであり、水分散体である。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
実施例1と同じ方法で、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認し、このマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、1.9μmであった。また、1,2,3−ベンゾトリアゾールは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。結果を表2に示す。
【0175】
[実施例3]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)に代えて、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(東京化成社製、30g)を用い、リン酸トリn−ブチルの使用量を10gに代えて20gとした点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルは、ジエチレントリアミンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として1,2,3−ベンゾトリアゾールを、溶媒としてアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)及びリン酸トリn−ブチル([アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)]/[リン酸トリn−ブチル]=60/40(質量比))を、それぞれ内包したものであり、水分散体である。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
実施例1と同じ方法で、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認し、このマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、2.1μmであった。また、1,2,3−ベンゾトリアゾールは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。結果を表2に示す。
【0176】
[実施例4]
表1に示すように、1,2,3−ベンゾトリアゾール(13g)に代えて、5,5−ジメチルヒダントイン(13g)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルは、ジエチレントリアミンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として5,5−ジメチルヒダントインを、溶媒としてセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)及びリン酸トリn−ブチル([セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)]/[リン酸トリn−ブチル]=80/20(質量比))を、それぞれ内包したものであり、水分散体である。配合成分の総量に対する5,5−ジメチルヒダントインの配合量の割合は5.6質量%である。
実施例1と同じ方法で、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認し、このマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、1.8μmであった。また、5,5−ジメチルヒダントインは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。結果を表2に示す。
【0177】
[比較例1]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)及びリン酸トリn−ブチル(10g)に代えて、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(50g)を用い、1,2,3−ベンゾトリアゾールの使用量を13gに代えて2.6gとした点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルは、ジエチレントリアミンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として1,2,3−ベンゾトリアゾールを、溶媒としてセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)を、それぞれ内包したものであり、水分散体である。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は1.2質量%である。
実施例1と同じ方法で、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認し、このマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、2.4μmであった。また、1,2,3−ベンゾトリアゾールは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。結果を表2に示す。
なお、本比較例において、1,2,3−ベンゾトリアゾールの使用量を2.6gに代えて9.2gとした場合、すなわち、配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合を4.0質量%とした場合、1,2,3−ベンゾトリアゾールが溶解した状態で内包されたマイクロカプセルは得られなかった。
【0178】
[比較例2]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)及びリン酸トリn−ブチル(10g)に代えて、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(50g)を用い、1,2,3−ベンゾトリアゾールの使用量を13gに代えて2.6gとした点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルは、ジエチレントリアミンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質として1,2,3−ベンゾトリアゾールを、溶媒としてアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)を、それぞれ内包したものであり、水分散体である。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は1.2質量%である。
実施例1と同じ方法で、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認し、このマイクロカプセルの平均粒子径を測定したところ、2.3μmであった。また、1,2,3−ベンゾトリアゾールは、溶媒に溶解した状態でマイクロカプセルに内包されていた。結果を表2に示す。
なお、本比較例において、1,2,3−ベンゾトリアゾールの使用量を2.6gに代えて9.2gとした場合、すなわち、配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合を4.0質量%とした場合、1,2,3−ベンゾトリアゾールが溶解した状態で内包されたマイクロカプセルは得られなかった。
【0179】
[比較例3]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)及びリン酸トリn−ブチル(10g)に代えて、アジピン酸ジn−ブチル(50g)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルの製造を試みた。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
しかし、実施例1と同じ方法で、反応後の液体を観察したところ、1,2,3−ベンゾトリアゾールは溶解していたが、目的とするマイクロカプセルが得られなかったことが確認された。結果を表2に示す。
【0180】
[比較例4]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)及びリン酸トリn−ブチル(10g)に代えて、リン酸トリn−ブチル(50g)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルの製造を試みた。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
しかし、実施例1と同じ方法で、反応後の液体を観察したところ、1,2,3−ベンゾトリアゾールは溶解していたが、目的とするマイクロカプセルが得られなかったことが確認された。結果を表2に示す。
【0181】
[比較例5]
表1に示すように、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(40g)及びリン酸トリn−ブチル(10g)に代えて、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)(50g)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルの製造を試みた。配合成分の総量に対する1,2,3−ベンゾトリアゾールの配合量の割合は5.6質量%である。
しかし、実施例1と同じ方法で、反応後の液体を観察したところ、1,2,3−ベンゾトリアゾールは溶解していたが、目的とするマイクロカプセルが得られなかったことが確認された。結果を表2に示す。
【0182】
[比較例6]
表1に示すように、1,2,3−ベンゾトリアゾール(13g)に代えて、アジピン酸ジヒドラジド(13g)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法でマイクロカプセルの製造を試みた。配合成分の総量に対するアジピン酸ジヒドラジドの配合量の割合は5.6質量%である。
しかし、実施例1と同じ方法で、反応後の液体を観察したところ、アジピン酸ジヒドラジドは溶解していたが、目的とするマイクロカプセルが得られなかったことが確認された。結果を表2に示す。
【0183】
<マイクロカプセルの評価>
上記の各実施例及び比較例において、マイクロカプセルを作製できた場合には、マイクロカプセル化を「○(合格)」と判定し、マイクロカプセルを作製できなかった場合には、マイクロカプセル化を「×(不合格)」と判定した。
また、作製したマイクロカプセルにおいて、芯物質が溶媒に溶解した状態で内包され、このとき、配合成分の総量に対する芯物質の配合量の割合として4質量%以上を達成できた場合には、芯物質の溶解性を「○(合格)」と判定し、前記割合として4質量%以上を達成できなかった(前記割合が4質量%未満にとどまった)場合には、芯物質の溶解性を「×(不合格)」と判定した。
そして、上記の「マイクロカプセル化」及び「芯物質の溶解性」の判定結果がいずれも「○(合格)」であった場合には、総合評価を「○(合格)」と判定し、「マイクロカプセル化」及び「芯物質の溶解性」の判定結果の少なくとも一方が「×(不合格)」であった場合には、総合評価を「×(不合格)」と判定した。結果を表2に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【化2】
【0187】
【化3】
【0188】
【化4】
【0189】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4では、溶媒として、上述のジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルの組み合わせを用いたことで、親水性芯物質を高濃度の溶液の状態で内包したマイクロカプセルが得られた。
【0190】
これに対して、比較例1及び2では、溶媒としてジカルボン酸ジアルキルエステルを単独で用いたことで、親水性芯物質を溶液の状態で内包したマイクロカプセルが得られたが、芯物質を高濃度の溶液の状態で内包させることができなかった。
また、比較例3では、溶媒としてジカルボン酸ジアルキルエステルを単独で用いたことで、親水性芯物質を高濃度の溶液の状態とすることができたが、マイクロカプセルを形成できなかった。
また、比較例4及び5では、溶媒としてリン酸トリエステルを単独で用いたことで、親水性芯物質を高濃度の溶液の状態とすることができたが、マイクロカプセルを形成できなかった。
また、比較例6では、溶媒として、上述のジカルボン酸ジアルキルエステル及びリン酸トリエステルの組み合わせを用いたことで、親水性芯物質を高濃度の溶液の状態とすることができたが、マイクロカプセルを形成できなかった。これは、芯物質としてアミノ基を有する化合物を用いたことにより、この化合物によって、上述のアミン化合物とイソシアネート化合物との縮合反応が阻害され、膜形成成分を形成できなかったためである。