(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
  博物館や美術館では、大小様々な展示装置が使用されている。展示装置は、展示空間を有する本体と、展示装置の開口部を塞ぐ透明板とを有しており、例えば、間口寸法が数メートル又はそれ以上になる大型の展示装置の場合は、透明板を本体の開口面に沿って左右スライドさせることにより、展示空間を開閉できるようにしている。
【0003】
  透明板は、上下の
横移動ガイド部材で左右スライド可能に保持されているが、透明板を閉じた展示状態では、展示空間の調湿のために透明板と本体との間はシール材でシールされているので、上下の
横移動ガイド部材が固定的であると、透明板を左右スライドさせることができない。そこで、
横移動上下ガイド部材のうち少なくとも下部の
横移動ガイド部材を
縦移動手段によって前後動可能として、透明板を手前に移動させた状態で左右スライドできるように構成している。
【0004】
  その例が特許文献1に開示されている。この特許文献1において、
縦移動手段は左右長手のねじ軸を有しており、カム機構を利用して、ねじ軸の回転によって
横移動ガイド部材が前後動するように構成されている。そして、ねじ軸は、通常は電動モータで駆動されるが、停電時やモータ故障時の対策として、手動式のハンドルでねじ軸を回転操作できるようにしている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  特許文献1において、ねじ軸は回転自在で左右動不能に保持されており、ねじ軸に螺合したスライダ(移動部材)が平面視傾斜姿勢のカム溝に沿って移動することにより、ガイド部材が前後動する。また、ねじ軸は左右長手の姿勢である一方、ハンドルによる回転操作は展示装置の手前から行われており、ハンドルは前後長手の軸心回りに回転するため、ハンドルの回転をねじ軸の回転に変換するための手動駆動手段を本体に設けており、手動駆動手段には、ハンドルの先端部を挿脱できる挿込口を設けている。
【0007】
  この特許文献1では、ねじ軸は回転自在で移動不能に保持されているので、手動駆動手段も本体に固定的に設けている。従って、ハンドルの回転操作によって透明板と手動駆動手段との間隔は変化することになり、透明板を手前に移動させると、透明板と動駆動手段との間隔は広がっていく。
【0008】
  このため、透明板を手前に移動させてからハンドルを取り外して各種の作業を行い、ハンドルを再び手動駆動手段の挿込口に差し込むにおいて、挿込口が奥まった状態になっているため、挿込口の位置の確認が面倒になるという問題があった。
【0009】
  本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
 
【課題を解決するための手段】
【0010】
  本願発明は様々な構成を備えている。このうち請求項1の発明は、
「内部を陳列空間と成して前面を開口させた本体と、前記本体の開口面を覆う透明板とを有しており、
  前記本体の下部に、前記透明板を本体の開口面に沿って左右動可能に支持する
横移動ガイド手段と、
前記透明板の手前側からハンドルで駆動軸を回転させることによって前記
横移動ガイド手段を前後動させる
縦移動手段とが配置されている
」
という構成において、
「前記縦移動手段は、前記透明板を下降させつつ手前側に前進動させるように傾斜していると共に、前記透明板を後退方向に付勢するカウンターバランス手段を備えており、かつ  前記
縦移動手段の駆動軸は、前記透明板と一緒に前後動するように設けられている
」  という特徴を備えている。なお、駆動軸は、中空の駆動筒も含む概念である。
【0011】
  請求項2の発明は、請求項1において、
「
前記縦移動手段は、手前側が低くて後ろが高くなるように傾斜したガイド筒と、前記ガイド筒に前後摺動自在に嵌まったロッドとを備えて、前記ロッドに、前記横移動ガイド手段を構成する左右長手の固定ガイドレールが取り付けられている一方、
  前記駆動軸は前後方向に長い形態であって、その一部に設けた雄ねじ部を前記本体に固定的に設けたナットに螺合させることにより、駆動軸が回転しつつ前後動するようになっており、前記駆動軸と
横移動ガイド手段とは、一緒に前後動するように連動部材を介して連結されている
」
という構成になっている。
【0012】
  請求項3の発明では、請求項1又は2において、
「前記ハンドルは、前記駆動軸と同心の主軸
と人が握るグリップとを有するクランク状の形態であって、
  前記透明板を前進させきった状態では、前記ハンドルはグリップが真上又は真下に位置した姿勢になって、前記透明板を後退させきった状態では、前記ハンドルは透明板を前進させきった状態での姿勢と反対向きの姿勢になるように設定されている
」
という構成になっている。
【0013】
  請求項4の発明
は、
「内部を陳列空間と成して前面を開口させた本体と、前記本体の開口面を覆う透明板とを有しており、
  前記本体の下部に、前記透明板を本体の開口面に沿って左右動可能に支持する横移動ガイド手段と、ハンドルで駆動軸を回転させることによって前記横移動ガイド手段を前後動させる縦移動手段とが配置されている」
という構成において、
「前記縦移動手段の駆動軸は、前記透明板と一緒に前後動するように設けられている一方、
  前記透明板は左右に複数枚並設されており、
  前記
横移動ガイド手段と
縦移動手段とは各透明板に対応して複数設け
られており、各
横移動ガイド手段を
縦移動手段で同じ寸法だけ移動させると、透明板が隣り合った
横移動ガイド手段に移行可能になっている
」
という特徴を備えている。
【0014】
  本願発明において、展示装置は、壁際に設置する場合と、室の中に島状に配置する場合とがある。壁際に設置する場合は、外周のうち1つの面のみに透明板が配置されている場合が多いであろうし、島状に配置する場合は、外周の全体を透明板で構成することが多いであろう。複数の面に透明板を設けている場合は、請求項に記載した「前後」「左右」は、各面ごとに存在する。つまり、各開口部を基準にして、「前後」の方向は奥行き方向で、「左右」の方向は各間口方向になる。
【0015】
  また、駆動軸が複数の部材で構成されている場合も有り得るが、この場合は、少なくともハンドルと係合する部分(接続部)が透明板と一緒に前後動したらよい。更に、本願発明は、透明板の前後動を常に手動で行う場合と、電動式の補助手段としてハンドルを使用する場合との両方を含んでいる。
 
【発明の効果】
【0016】
  本願発明では、駆動軸のうち少なくともハンドルとの接続部が透明板と一緒に前後動するため、透明板を前進させた状態で、ハンドルを抜き外してから再びハンドルを付け直すにおいて、駆動軸の接続部の位置や姿勢の確認が容易であって、ハンドルの付け直しを素早く行うことができる。このため、作業性がよい。
  
また、縦移動手段は手前に向けて低くなるように傾斜していることにより、透明板は下降動しつつ手前に移動するため、透明板スライド操作は、上端部でのこじれを無くした状態で軽快に行うことができる。そして、縦移動手段が傾斜していると、透明板は上昇させながら後退動させなければならないが、本願発明では、カウンターバランス手段を設けているため、透明板の後退操作を軽い力で行うことができる。
【0017】
  駆動軸の回転を下ガイド手段の動きに変換する機構は様々な態様が有り得るが、請求項2のように、駆動軸に雄ねじ部を形成して、駆動軸の前後動によって下ガイド部材を前後動させる構成を採用すると、連動構造が単純化して構造を簡単化することができる。また、ギア類やカム類は不要であるため、メカロスもなくて
伝動効率もよい。
【0018】
  請求項3の構成を採用すると、後退位置の透明板を前進させるときと、前進させた透明板を後退させるときとの両方において、ハンドルの姿勢が上向きか下向きに定まっているため、姿勢を予め把握しておくことにより、駆動軸へのハンドルの嵌め込みを素早く行うことができる。
【0019】
  しかも、透明板を前進させる場合と後退させる場合とで、ハンドルの姿勢が上下逆向きになっているため、透明板を前進させる場合と後退させる場合とでハンドルをどちらの方向に回転させるべきかも、ハンドルの姿勢から直ちに把握できる。従って、ハンドルを駆動軸に嵌め込んでから回転させる動きをスムースに行い得る。
【0020】
  更に、ハンドルを回転操作して透明板を前後動させるにおいて、ハンドルの姿勢から透明板の前進位置又は後退位置を確認できるため、透明板の前後動をストロークの途中で止めてしまうような不具合を防止
できる利点もある。更に、ハンドルを駆動軸に付けたままにしておく、ハンドルの姿勢から透明板がどの状態にあるかを即座に視認できるという利点もある。
【0021】
  さて、この種の展示装置は、間口寸法が例えば10m前後かそれ以上に及ぶものもあるが、1枚の透明板の大きさには限度があるため、ある程度以上に大型の展示装置では、複数枚の透明板を左右に並設している。この場合、展示装置全体として1つの下ガイド手段を設けただけであると、左右に長い下ガイド手段を全体に亙って均等に移動させねばならないため、移動に大きな手間がかかる。
【0022】
  これに対して本願請求項4の構成を採用すると、各下ガイド手段を同じ量だけ移動させることにより、複数の下ガイド手段を一連に連続した状態にできるため、移動手段の操作の容易性を確保しつつ、透明板を隣り合った下ガイド手段にスライドさせて、陳列物の出し入れ等の作業を行うことができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0024】
  (1).第1実施形態の概略
  次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1〜
図8に示す第1実施形態を説明する。
図1に示すように、展示装置は、左右に長い直方体状の形態であり、前向きに開口した左右横長の本体1と、本体1の開口部を塞ぐべく左右に一列に並べた3枚の透明板(透明扉)2とを有している。
 
【0025】
  図1には、身長が170cm程度の人(一般成人)3を模式的に表示している。この人3との対比から理解できるように、展示装置の高さは人の身長よりも相当に高い。透明板2の大きさはユーザーの仕様に基づいて定められるが、本実施形態の場合、左右幅(間口寸法)は3m程度で高さは2〜3m程度に設定している。展示装置の全体の奥行き寸法は1m程度になっている。
 
【0026】
  本体1は、展示空間4の下方に位置した下部(基礎部)5、展示空間4の後ろに位置した背部6、展示空間4の左右側方に位置したサイド板7、展示空間4の上に位置した天板8とを有している。つまり、下部5と背部6とサイド板7と天板8とによって、前向きに開口した展示空間4が形成されており、展示空間4の前面の開口部が透明板2で塞がれている。各透明板2は、後述する下ガイド手段により、左右方向にスライドさせることができる。
 
【0027】
  敢えて述べるまでもないが、透明板2は、透明度と強度とに優れた特殊ガラスから成っている。サイド板7と天板8もガラス板を使用しているが、ユーザーが求める仕様によっては、これらのうち一方又は両方は、金属板などの不透明板を使用することも有り得る。天板8は1枚ものを使用しているが、左右に並んだ複数枚で構成することも可能である。
 
【0028】
  例えば
図2,5に示すように、本体1の下部5は、展示空間4の下面を構成する底板9を有しており、底板9は、左右横長のフロント支持フレーム10及びセンター支持フレーム11並びにリア支持フレーム12と、隣り合った支持フレーム10,11,12の間に位置した前後長手の縦桟13の群とで支持されている。従って、フロント支持フレーム10とセンター支持フレーム11とリア支持フレーム12と縦桟13の群とにより、平面視井桁状の支持枠体が構成されている。
 
【0029】
  下部5のうちの下層部は、横長ベースフレーム11′と、これら横長ベースフレーム11の上に重ねて固定された縦長ベースフレーム13 ′の群とを有しており、横長ベースフレーム11′と縦長ベースフレーム13 ′の群とにより、井桁状のベース枠体が構成されている。
 
【0030】
  例えば
図7(A)で明瞭に理解できるように、フロント支持フレーム10は、底板9が載る上水平板と、最前列に位置した横長ベースフレーム11の上面に重ねて固定された下水平板と、上下水平片を繋ぐ起立板とをしており、前向き開口コ字形の形態を成している。
図5では、センター支持フレーム11が、柱(スペーサ)14を介して縦長ベースフレーム13′で支持されている状態を示している。
図2に示すリア支持フレーム12も、支柱14の群を介して縦長ベースフレーム12で支持されている。
 
【0031】
  (2).
横移動ガイド手段・
縦移動手段
  例えば
図5に示すように、フロント支持フレーム10の起立板に、
縦移動手段の一部を構成するガイド筒15が貫通しており、ガイド筒15の先端に設けたフランジ16と、スペーサ17と押さえ板18とが、ボルト19a及びナット19bによって、フロント支持フレーム10に固定(共締め)されている。
 
【0032】
  ガイド筒15にはロッド21が摺動自在に嵌まっており、ロッド21の前端に、固定ガイドレール22が固定されており、固定ガイドレール22に、可動ガイド体23が左右スライド自在に嵌まっている。可動ガイド体23には、透明板2の下端部が取付けられている。固定ガイドレール22と可動ガイド体23とは、請求項に記載した
横移動ガイド手段の一例である。本実施形態では、固定ガイドレール22は、1枚の透明板2に対応して1本設けている。すなわち、固定ガイドレール22を有する
横移動下ガイド手段(及び
縦移動手段)と1枚の透明板2とが、1つのユニットを構成している。
 
【0033】
  例えば
図5に示すように、固定ガイドレール22は、上下の水平片を有する前向き開口コ字形の外枠25を有しており、外枠25の内部にスライダ受け26が固定されている。他方、可動ガイド体23は、上下の水平片を有する後ろ向き開口コ字形の外枠27を有しており、外枠27の内部に、スライダ受け26に嵌合するスライダ28を固定している。
 
【0034】
  スライダ受け26とスライダ28とは、それぞれ摩擦係数が小さい樹脂からなっており、スライダ受け26は、上下にくびれ溝を有するボス形状で、スライダ28は、スライダ受け26に外側から嵌まる溝状であり、スライダ受け26のくびれ溝に嵌まる内向き凸条を有している。従って、スライダ28は、スライダ受け26に対して抜け不能に保持されている。なお、透明板2を左右スライドさせる手段としては、実施形態のようなスライダ方式に代えて、C字形の固定ガイドレールに可動ローラ(コロ)の群を嵌め入れた方式なども採用できる。また、固定ガイドレール22の「固定」は、左右移動しないという意味で使用しており、前後方向等に動かないという意味は持っていない。
 
【0035】
  ガイド筒15は、手前側が低くて後ろが高くなるように、水平に対して若干の角度θ1だけ傾斜している。そこで、スペーサ17は、上から下に向けて厚さが小さくなって、押さえ板18は上から下に向けて厚さが大きくなっている。
 
【0036】
  一方、ロッド21の先端に固定ガイドレール22を取り付けるに当たっては、ロッド21の先端にフランジ板29を固定して、フランジ板29とクランプ板30とにより、固定ガイドレール22における外枠25の起立部を挟み固定しているが、固定ガイドレール22及び可動ガイド体23の外枠25,27の起立部は鉛直姿勢になっているので、フランジ板29は上から下に向けて厚さを大きくして、クランプ板30は、上から下に向けて厚さを小さくしている。固定ガイドレール22及び可動ガイド体23は、その起立部を鉛直姿勢にしたままで、前後動しつつ昇降する。
 
【0037】
  可動ガイド体23の外枠26は2枚の鋼板を重ねて構成されており、下端には前向き水平片26aを有しており、透明板2は、シール材31を介して前向き水平片26aに支持・接着されている。また、透明板2の下端部は、可動ガイド体23における外枠26の前面に接着剤32にて接着されている。更に、透明板2の下端部には、本体1の底板9と同じ程度の高さの化粧板33が接着されている。
 
【0038】
  固定ガイドレール22の外枠25及びスライダ受け26は、透明板2の左右全長に亙って延びている。他方、可動ガイド体23については、外枠27は透明板2の左右全長に亙って延びているが、
図3に示すように、スライダ28は、左右方向に飛び飛びで配置している(外枠27の左右両端部には、必ずスライダ28を設けている。)。スライダ28を左右全長にわたって設けることも可能であるが、実施形態のように飛び飛びで配置すると、スライダ受け26との間のこじれを抑制できる利点がある。
 
【0039】
  図3に示すように、ガイド筒15は、左右方向に飛び飛びで複数本(5本)配置しており、各ガイド筒15に嵌まっている各ロッド21の後端は、例えば
図5に示す左右横長でL形の1本の連結フレーム34の起立部に、ボルト35で固定されている。更に、
図3に示すように、1枚の透明板2に対応した個所に前後長手のリニアガイド36が左右に一対配置されており、例えば
図5に示すように、リニアガイド36に前後動自在に装着されたスライダ37に、補助フレーム38を介して固定されている。補助フレーム38は、連結フレーム34の左右全長にわたって延びている。
 
【0040】
  従って、各ロッド21は、リニアガイド
36にガイドされて一斉に前後動し、これに伴って、固定ガイドレール22と可動ガイド体23とが一緒に前後動し、固定ガイドレール22が前進した状態で、可動ガイド体23を左右動させることができる。すなわち、透明板2の下端部は、各ロッド21の前後動に連動して前後動し、固定ガイドレール22を前進させた状態で、透明板2を左右スライドさせることができる。例えば
図5に示すように、リニアガイド
36は、横長ベースフレーム11に固定された受け台
38′に固定されている。
 
【0041】
  フロント支持フレーム10の前端には、透明板2を後退させきった状態で、当該透明板2との間をシールする下シール材39が装着されている。下シール材39は軟質材から成っていて、例えば中空構造に形成されて変形が容易になっており、この下シール材39により、展示空間4の下部はしっかりとシールされている。なお、下シール材39は、透明板2に設けてもよいし、透明板2とフロント支持フレーム10(或いは底板9の前端)との両方に設けてもよい。
 
【0042】
  (3).駆動機構
  
図3及び
図5から理解できるように、1つのユニットにおいて、左右中間部に位置したガイド筒15の右(又は左)隣に、
透明板2手前側からハンドル40で回転操作される前後長手の駆動軸42が配置されている。ハンドル40及び駆動軸42は請求項に記載した
縦移動手段の構成要素であり、駆動軸42は、フロント支持フレーム10及び側面視コ字形の軸受部材43に、回転自在に保持されている。
 
【0043】
  すなわち、駆動軸42は、フロント支持フレーム10の起立部及び軸受部材43の前起立部43aに対しては、フランジ付きブッシュ44を介して回転自在で前後摺動自在に保持されており、軸受部材43の後ろ起立部43bに対しては、ナット45を介して回転自在に保持されている。従って、駆動軸42には、ナット45に螺合する雄ねじ部42aが形成されている。ナット45及び雄ねじ部42aのねじは、台形ねじを採用している。
 
【0044】
  なお、
図5では、駆動軸42の個所とガイド筒15との両方の個所の断面を表示している(両者は左右に分離しているので、本来は同じ断面には表れない。)。駆動軸42をねじ方式にする場合は、ねじとしては三角ねじも採用可能であるが、安定性の点からは、実施形態のような台形ねじが好ましい。
 
【0045】
  図5に示すように、駆動軸42の後端は、補助フレーム38から垂下したジョイント46に、回転自在で前後動不能に固定されている。従って、駆動軸42は回転しつつ前後動し、これに伴って、補助フレーム38及び連結フレーム34を介して各ガイド筒15の各ロッド21が前後スライドし、これにより、固定ガイドレール22が前後動する。また、
図6(B)に明示するように、駆動軸42は、回転しつつ、固定ガイドレール22や連結フレーム34と一緒に前後動する。ジョイント46や補助フレーム38、ロッド21などは、請求項に記載した連動部材を構成している。
 
【0046】
  図6(A)に明示するように、駆動軸42の前端には、ハンドル40との係合手段の一例として半円状の切り欠き47を形成している。他方、ハンドル40は、互いに逆方向に向いた前後長手のハンドルと主軸40aとグリップとを板で繋いだクランク形状であり、主軸40aに、駆動軸42の前端部が嵌まる嵌合穴48を形成し、嵌合穴48に、駆動軸42の切り欠き47と噛み合う半円状の係合穴49を形成している。なお、
図6(C)(D)では、切り欠き47でない部分の端面に平行斜線を付している。
 
【0047】
  図6(B)に示すように、駆動軸42を回転操作すると、固定ガイドレール22は一定の
ストロークSで前後動するが、
図6(B)(C)(D)に示すように、固定ガイドレール22が後退しきった状態では、駆動軸42の切り欠き47は真下を向いて(
図7(A)も参照)、固定ガイドレール22が前進しきった状態では、駆動軸42の切り欠き47は真上を向くように設定している(
図8も参照)。従って、透明板2を前進させたり後退させたりするに際して、ハンドル40をどの姿勢で駆動軸42に嵌め入れたらよいかの把握が容易であり、一々身体をかがめて駆動軸42の切り欠き47の姿勢を視認するような必要はない。
 
【0048】
  図5,7に示すように、下部の前面のうち固定ガイドレール22の下方の部分には化粧用の巾木49を装着しているが、駆動軸42を設けて部位だけ巾木49を上向きに切り欠いて、この切り欠き部50に、下向き回動式の扉51を取付けている。
図7(A),8(A)に示すように、扉51を手前に倒すと(開くと)、ハンドル40で駆動軸42を回転操作できる。扉51には錠を設けている。
 
【0049】
  ガイド筒15は手前に向けて低くなるように傾斜しているので、何等の措置を施さないと、透明板2の重量により、ロッド21は下降し勝手になっている。すると、透明板2を後退させるにおいて、透明板2の重量に抗して後退させなければならず、作業者の負担が増えることになる。
 
【0050】
  そこで、本実施形態では、各ガイド筒15には、カウンターバランス手段の例として、ロッド21を後退方向に付勢するコイル方式の定荷重ばね(図示せず)を内蔵している。各定荷重ばねのばね力の総和は、透明板2の重量よりもわずかに小さい程度に設定している。従って、台形ねじのピッチを過度に小さくすることなく、透明板2の後退(上昇)を軽い力で行うことができる。その結果、透明板2の前後動操作を、軽い力で迅速に行える。下部5には、展示空間4の湿度を一定にする調湿装置を設けているが、本願発明との関連はないので、説明は省略する。
 
【0051】
  (4).上部の構造
  
図7(B)及び
図8(B)に示すように、透明板2の上端部には、上ガイドレール52における溝状部55の前側板53に当接するシールガイド部材60が、接着剤で接着されている。シールガイド部材60は樹脂製であって、透明板2の上端面と前面とに重なるL形の形態であり、透明板2の前面に重なった前板に、上ガイドレール52における溝状部55の前側板53に内側から当接する案内部61を一体に形成している。透明板2が上昇しきった状態では、案内部61の下端が、上ガイドレール52の前側板53に内側から当接することにより、透明板2の上端部が上シール材59に押さえつけられた状態が保持されている。
 
【0052】
  案内部61は、上に行くに従って透明板2に近くなる傾斜面61aを有している。
図5を参照して既に述べたように、透明板2の下端部は可動ガイド体23における外枠26の前面に接着剤で固定されているが、外枠26の前面は鉛直姿勢なので、透明板2は、鉛直姿勢を保持しながら前向き動及び下降動する傾向を呈する。
 
【0053】
  従って、透明板2を手前に移動させると、透明板2は、まず、シールガイド部材61の傾斜面61aの案内作用により、手前に移動しながら下降して、透明板2と上シール材59との当接が解除され、次いで、透明板2が下降しきると、シールガイド部材60の案内部61が前側板53から下方に外れて、シールガイド部材60の前板が案内部61の上の等厚部の個所において、上ガイドレール52の前側板53に当接する。
 
【0054】
  従って、透明板2は、鉛直姿勢から後傾姿勢に姿勢を変えながら下降していき、傾斜姿勢で左右スライドする。この状態では、上シール材59には当接していないので、上シール材59との摩擦は皆無であり、従って、軽い力で左右スライドさせることができる。また、サイド板7の前面にはサイドシール材62が張られており、透明板2が上昇しきった状態では、サイドシール材62によってサイド板7と透明板2との間のシールが行われているが、透明板2が前進するとサイドシール材62との間の摩擦も皆無になるので、サイドシール材62が透明板2の左右スライドに対する抵抗になることはない。
 
【0055】
  透明板2を手前に移動させると、透明板2の下端部を接着している接着剤32の弾性力により、透明板2の上端部は、シールガイド部材60を介して上ガイドレール52の前側板53に当接しており、シールガイド部材60が上ガイドレール52の前側板53を摺接しながら透明板2の左右スライドが行われる。そこで、シールガイド部材60は摩擦係数が小さい樹脂で製造するのが好ましい。透明板2の下降動に際しての傾斜は上ガイドレール52で規制されるので、透明板2の最大傾斜角度は、ガイド筒15の傾斜角度θ1よりも小さくなっている。
 
【0056】
  (5).まとめ
  既に説明したように、本願実施形態では、各透明板2の個所においてハンドル40を回転操作することにより、透明板2を前進させつつ下降させて、シール材39,74,77との当接を解除した状態にて左右スライドさせることができる。従って、透明板2の左右スライドを軽い力で行えると共に、シール材39,74,77の磨滅や剥がれなども防止して、シール性も高い状態に維持できる。
 
【0057】
  そして、透明板2に対して上シール材74が当接した状態で透明板2を左右スライドさせようとすると、摩擦抵抗がモーメントとして作用するため、透明板2のスライドに対してこじれが生じて(上端がつかえた状態になって)非常にスライドさせにくいが、本実施形態では、透明板2の上端部は、下降動しつつ上シール材74から離反するため、透明板2のスライド操作は、上端部でのこじれを無くした状態で軽快に行うことができる。ガイド案内部材76の存在によって高いシール性を確保できることは、既述したとおりである。
 
【0058】
  また、本実施形態では、
横移動ガイド手段と
縦移動手段とは各透明板2に対応してユニット化しているので、1本のハンドル40の回転操作のみでも、各透明板2を軽快に前後動及び昇降させることができる。各固定ガイドレール22を同じ量だけ前進させると、透明板2は、固定ガイドレール22に跨がらせた状態でスライドさせることができる。
 
【0059】
  既述のとおり、本実施形態では、透明板2を後退させきった状態では、駆動軸42の切り欠き47は下向きで、透明板2を前進させきった状態では、駆動軸42の切り欠き47は上向きになるように設定しているので、透明板2を前進・下降させるに際しても、透明板2を後退・上昇させるに際しても、ハンドル40の姿勢が決まっている。このため、一々身体をかがめて駆動軸42を覗き込むような必要はなくて、指先で駆動軸42の前端部の位置を確かめてから、ハンドル40を上向きの姿勢にして嵌め込むだけでよいため、駆動軸42に対するハンドル40の嵌め込みを容易に行える。
 
【0060】
  固定ガイドレール22を後退させきると、当然にハンドル40は駆動軸42から抜き外すが、固定ガイドレール22を前進させきった状態では、ハンドル40は駆動軸42に取り付けたままにしておいて展示物の入れ換えなどを行う場合もあると云える。その場合、実施形態のように、固定ガイドレール22を前進させきった状態と後退させきった状態とで、ハンドルの姿勢が上下逆向きになるように設定しておくと、ハンドル40の姿勢から透明板2を前進させきっている状態を視認できるため、作業者は透明板2の状態を容易に把握できる利点がある。
 
【0061】
  更に、駆動軸42は固定ガイドレール22と一緒に前後動するため、透明板2の前面と駆動軸42の前端との相対位置は不変であり、駆動軸42が透明板2の後ろに大きく隠れてしまう現象は生じない。従って、いったん透明板2を前進させてからハンドル40を抜き取って再度嵌め込むに際して、駆動軸42の位置を手さぐりで探すような手間は不要であり、ハンドル40の嵌め込みを容易に行える。また、ハンドル40の主軸40aの長さを短くできる利点もある。
 
【0062】
  (6).
参考例・その他
  次に、
図9に示す
参考例を説明する。第1実施形態と同じ機能を有する部材には同じ符号を付しており、必要がない限り説明は省略している。この
参考例では、まず、固定ガイドレール22は断面C形になっており、透明板2が固定された可動枠65に適宜間隔で取り付けたコロ66が固定ガイドレール22の内部に転動自在に嵌め入れられている。
 
【0063】
  固定ガイドレール22の背面には、前後長手のガイド軸67の前端が固定されている。ガイド軸67は左右に複数本配置されており、それぞれ、前後の受け部材68によって、前後スライド自在に保持されている。そして、1本のガイド軸67に垂下したジョイント部材69に、前後長手に配置したねじ軸70が螺合している。ねじ軸70は、軸受部材43の前後側板43aに、回転自在で前後動不能に保持されている。従って、ねじ軸70が回転すると、固定ガイドレール22が前後動する。
 
【0064】
  ねじ軸70は、軸受部材43の手前に突出したスプライン軸71を有しており、スプライン軸71に、駆動軸42のスプライン筒部72が摺動自在に嵌まっている。駆動軸42は、固定ガイドレール22から垂下した軸受板73に嵌まる円形部を有しており、この円形部に設けたスナップリング74とフランジ75とで軸受板73を前後から挟むことにより、駆動軸42を回転自在で前後動不能に保持されている。そして、駆動軸42の前端部に、角棒状の係合部76を設けている。
 
【0065】
  他方、ハンドル40の主軸40aには、駆動軸42の係合部76に嵌合する係合穴77を形成している。駆動軸40の係合部77は、巾木49に設けた穴78から僅かに露出している。スナップリング74を使用せずに、駆動軸42をばねで手前に付勢することも可能である。
 
【0066】
  この
参考例では、駆動軸42は固定ガイドレール22と一緒に前後動する。そして、駆動軸42のストロークの全範囲において、スプライン筒部72とスプライン軸71とが嵌合しているため、ねじ軸70の回転に支障はない。この実施形態のように、本願発明は、ねじ軸70が回転のみするタイプにも適用できる。ねじ軸70にスプライン筒72を設けて、ハンドルに40にスプ
ライン軸71を形成することも可能である。
 
【0067】
  前後移動する駆動軸(或いは駆動筒)と前後移動しないねじ軸70とを連動させる手段としては、
参考例のようなスプライン軸71とスプライン筒72との組み合わせに代えて、角形軸と角形筒との組み合わせや、キーとキー溝との組あせなどを採用できる。ハンドルの主軸に角形等の係合ボスを形成して、駆動軸の前端に係合穴を形成することも可能である。
 
【0068】
  本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、
縦移動手段は、電動モータを用いた動力式と手動式とを併用することも可能である。透明板を前後動及び昇降させる場合、前後動と昇降とを別々の動きにしてもよい。駆動軸の回転を透明板の前後動に変換する
伝動機構は、歯車を使用するなど、様々な態様を採用できる。
 
【0069】
  回転のみするねじ軸と前後動する駆動軸との連動手段としては、例えばユニバーサルジョイントを使用することも可能である。この場合は、ねじ軸と駆動軸との高さを任意に設定できる利点がある。透明板は実施形態のように上下動させる必然性はないのであり、少なくとも下端部が前後動したらよい。
 
【0070】
  本願発明は、展示装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。