(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る防火改装サッシについて、図面を参考にして説明する。
(全体の構成)
本発明の実施形態に係る防火改装サッシは、
図1、2に示すように、建物開口部に設置されている既設枠体1の内周に捨て枠2が固定され、捨て枠2を介して新設枠体3が取り付けられており、既設枠体1にほとんど加工を施すことなく改装サッシを施工することができるものである。
【0010】
(既設枠体)
本実施形態に係る防火改装サッシにより改装される既設枠体1は、既設上枠11,既設下枠12、既設左縦枠13及び既設右縦枠14を四周に組んでなり、既設上枠11及び既設下枠12には、図示しない内障子及び外障子を引違い自在に案内する上案内レール11e,11f及び下案内レール12e,12fが設けられている。
【0011】
既設枠体1の既設上枠11は、
図1に示すように、建物開口部の内周面を形成する既設上枠本体11aと、既設上枠本体11aの室内側端及び室外側端に連設される室内側壁11b及び室外側壁11cと、室内側壁11bの室内側面から室内側に延設される顎部11dと、既設上枠本体11aの内周面から垂下される上案内レール11e,11fとを備えている。
また、既設枠体1の既設下枠12は、建物開口部の内周面を形成する既設下枠本体12aと、既設下枠本体12aの室内側端から立設する室内側壁12bと、室内側壁12bの上端から室内側に延設される顎部12cとを備える。さらに、既設下枠本体12aの上面は室外側に向かって下方に傾斜する水切り部として形成されており、既設下枠本体12aの室外側端から前壁部12dが下方に垂設されている。既設下枠本体12aの内周面(上面)には、図示しない内障子及び外障子を引違い自在に案内する下案内レール12e,12fが設けられている。
【0012】
既設枠体1の既設左縦枠13は、
図2に示すように、建物開口部の内周面を形成する既設左縦枠本体13aと、既設左縦枠本体13aの室内側に連設される室内側壁13bと、室内側壁13bからさらに室内側に延びる顎部13cと、既設左縦枠本体13aの室外側に連設される室外側壁13dを備えている。なお、既設右縦枠14の構成は、既設左縦枠13の構成と同様であるので、説明は省略する。
【0013】
(捨て枠)
既設上枠11の内周面に配置される上捨て枠21は、
図1に示すように、既設上枠11の内周側に配置される見込み面部21aと見込み面部21aの室内側及び室外側から外周方向(上方)に延びる室内側係止壁部21bと室外側係止壁部21cとからなり、建物開口部の左右方向の見付け幅寸法以下の長さを有する長尺部材として形成されている。
そして、上捨て枠21の見込み面部21aの上面を既設上枠11の室内側壁11b及び室外側壁11cの下端、及び、上案内レール11e,11fの下端に内周側から当接させるとともに、室内側係止壁部21b及び室外側係止壁部21cを既設上枠11の室内側壁11b及び室外側壁11cによって形成される凹所に下方より挿入して、室内側係止壁部21b及び室外側係止壁部21cと室内側壁11b及び室外側壁11cとをビス等の固定手段b,bで固定することにより、上捨て枠21が既設上枠11に取り付けられている。
【0014】
既設下枠12の内周側に配置される下捨て枠22は、既設下枠12の下案内レール12eに支持される複数個の支持部材221と、建物開口部の左右方向の見付け幅寸法以下の長さを有する長尺部材からなり複数個の支持部材221上に配置される載置面部材222とから形成されている。
【0015】
既設左縦枠13の内周面に配置される左縦捨て枠23は、
図2に示すように、既設左縦枠13の内周側に配置される見込み面部23aと見込み面部23aの室内側及び室外側から外周方向に延びる室内側係止壁部23bと室外側係止壁部23cとからなり、建物開口部の上下方向の見付け幅寸法以下の長さを有する長尺部材として形成されている。
そして、左縦捨て枠23は、見込み面部23aが内周側に配置するようにして室内側係止壁部23b及び室外側係止壁部23cを既設左縦枠13の室内側壁13b及び室外側壁13dによって形成される凹所に内周側より挿入し、室内側係止壁部23b及び室外側係止壁部23cと室内側壁13b及び室外側壁13dとをビス等の固定手段b,bで固定することにより、既設左縦枠13に取り付けられている。
なお、縦捨て枠の構成は、基本的に左右で相違するものでなく、右側の縦捨て枠24についての説明は省略する。
【0016】
(新設枠体)
新設枠体3を構成する新設上枠31は上捨て枠21の内周側に配置され、
図1に示すように、改修サッシの内周面を形成する新設上枠本体31aと、新設上枠本体31aの室内側端部に連設されて垂下される室内側壁31bと、室内側壁31bの上端が室内側に屈曲して形成される屈曲壁31cと、新設上枠本体31aの見込み方向略中央位置から下方に垂設される中央垂下壁31dと、新設上枠本体31aの室外側から下方に垂設される外案内レール31e及び網戸レール31fと、を備えており、新設上枠本体31aの上面には、新設上枠31の長手方向に複数延びる突条部31g,31hを有している。
そして、新設上枠31は、上捨て枠21の見込み面部21aに対してスペーサ91を介して配置されており、突条部31g,31hをスペーサ91の下面に当接させた状態で上捨て枠21に対してスペーサ91とともにビス等の固定手段bにより共締めして固定されている。
【0017】
新設上枠31の屈曲壁31cの室内側端は既設上枠11の室内側壁11bの室内側面と見込み方向でほぼ面一に配置されており、屈曲壁31cの下面から室内側端及び既設上枠11の室内側壁11bの室内側面に亘って気密テープ81によって被覆されている。
また、新設上枠31の新設上枠本体31aの室外側は、既設上枠11の室外側壁11cの室外側面よりも室外側に突出しており、新設上枠本体31aの室外側端部上面には、難燃性の材料よりなるヒレ状部材71が取り付けられている。ヒレ状部材に用いられる難燃性の材料としては、例えば複合防火PVC、難燃シリコン、クロロプレンゴム等が用いられる。ヒレ状部材71は、新設上枠本体31aに固定される固定部71aと固定部71aから突出するヒレ片71bとからなり、ヒレ片71bが既設上枠11の室外側面に当接することで外部からの雨水等の侵入を防いでいる。
【0018】
新設枠体3を構成する新設下枠32は、
図1に示すように、室外側が低く室内側が高く階段状に形成され、既設下枠12の上方に配置されて改修サッシの内周面を形成する新設下枠本体32aと、新設下枠本体32aの室内側端に連設される室内側壁32bと、新設下枠本体32aの室外側より垂下される前壁部32cと、新設下枠本体32aの上面より上方に突出する内レール32d及び外レール32eと、前壁部32cの室外側面より突出する網戸下レール32fと、階段状に形成された新設下枠本体32aの上段部より室外側に向かって突出する気密材保持壁32gと、を備えている。
新設下枠32が施工されるに際しては、既設下枠12の下案内レール12fが切除され、新設下枠32は、室外側が下案内レール12fが切除された既設下枠12の上面に載置されると共に、室内側が下捨て枠22の上面に支持されることで、既設下枠12の内周(上方)位置に配置されて施工される。施工された新設下枠32の室内側壁32bと既設下枠12の室内側壁12bとは狭い間隔をあけて対向しており、新設下枠32の室内側壁32bから顎部12cの上面に亘って気密テープ82によって被覆されている。
さらに、気密テープ82を覆うように、既設下枠12の顎部12cの上面にはアルミ合金製の顎部材42がビス等の固定手段bによって建物開口部に固定されている。
【0019】
新設枠体3を構成する新設左縦枠33は左側の左縦捨て枠23の内周側に配置され、
図2に示すように、改修サッシの内周面を形成する新設左縦枠本体33aと、新設左縦枠本体33aの室内側より内周方向に延設される室内側壁33bと、室内側壁33bよりさらに室内側に延設される室内側見込み壁33cと、新設左縦枠本体33aの室外側端より内周方向に延設される室外側壁33dと、新設左縦枠本体33aの内周面の見込み方向略中央位置より内周方向に延設される中央壁33eと、を備えており、新設左縦枠本体33aの外周面には、新設左縦枠33の長手方向に複数延びる突条部33f,33gを有している。
そして、新設左縦枠33は、左縦捨て枠23の見込み面部23aに対してスペーサ93を介して配置されており、突条部33f,33gをスペーサ93の内周面に当接させた状態で左縦捨て枠23に対してスペーサ93とともにビス等の固定手段bにより共締めして固定されている。
【0020】
新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの室内側端面は既設左縦枠13の室内側壁13bの室内側面と見込み方向でほぼ面一に配置され、室内側見込み壁33cの内周面から室内側端面、及び既設左縦枠13の室内側壁13bの室内側面に亘って気密テープ83により被覆されている。
また、新設左縦枠33の新設左縦枠本体33aの室外側は、既設左縦枠13の室外側壁13dの室外側面よりも室外側に突出しており、新設左縦枠本体33aの室外側端部外周面には、難燃性の材料よりなるヒレ状部材73が取り付けられている。ヒレ状部材73は、新設左縦枠33に固定される固定部73aと固定部73aから突出するヒレ片73bとからなり、ヒレ片73bが既設左縦枠13の室外側面に当接することで外部からの雨水等の侵入を防いでいる。
なお、左右の新設縦枠33,34の構成は、基本的に左右で相違するものでなく、新設右縦枠34についての説明は省略する。
【0021】
(防火構造)
本発明の上記本実施形態に係る防火改装サッシは、火災時に既設枠体1と新設枠体3との間の間隙からの煙や炎の侵入を防止するための防火構造を備えている。
以下に、本実施形態に係る防火改装サッシの防火構造について、
図3乃至5を参考にして説明する。
【0022】
(捨て枠が存在する上枠部分の防火構造)
上枠部分においては、
図3(a)に示すように、新設上枠31は上捨て枠21を介して既設上枠11に取り付けられており、既設上枠11と新設枠体3の間に形成される間隙は、既設上枠11の内周面に配置される上捨て枠21により、上捨て枠21が存在する領域において上捨て枠21の上方の上間隙s11と同下方の下間隙s12とに分断されている。
そして、上捨て枠21の配置に際しては、上捨て枠21の見込み面部21aの上面が既設上枠11の室内側壁11b及び室外側壁11cの下端に当接していることから、既設上枠11と上捨て枠21との間の上間隙s11には室内外を連通する隙間が生じる危険性が少ない。そこで、加熱膨張材は、上捨て枠21と新設上枠31との間の下間隙s12を閉塞するように配置されており、下間隙s12の室内側端部近傍については、新設上枠31の屈曲壁31cの上面に加熱膨張材51が配置され、同室外側端部近傍については、新設上枠31の新設上枠本体31aの既設上枠11(上捨て枠21)よりも室外側に突出した部位の上面に加熱膨張材52が配置され、いずれも新設上枠31の全長に亘って配置されている。
【0023】
室内側の加熱膨張材51が配置される新設上枠31の屈曲壁31cは上捨て枠21と対向しており、屈曲壁31cは新設上枠本体31aに比べて上方位置に形成されている。そのため、屈曲壁31cの上面は上捨て枠21の見込み面部21aの下面に近接し、新設上枠31の屈曲壁31cの上面と上捨て枠21の見込み面部21aとの間には、下間隙s12の他の部分に比較して上下方向に狭い空間として間隙s13が形成されている。
また、新設上枠本体31aの室外側に突出した部位の上面に配置された加熱膨張材52は、新設上枠31に固定されたヒレ状部材71の固定部71aの近傍位置に配置され、加熱膨張材52の上方にはヒレ状部材71のヒレ片71bが配置されることで、加熱膨張材52の上方位置には新設上枠31と既設上枠11とヒレ状部材71とによって室外側が狭く室内側が広い間隙s14が形成されている。
【0024】
そして、火災が発生した際には、
図3(b)に示すように、室内側に配置した加熱膨張材51は、加熱により屈曲壁31cの上方に形成される比較的上下方向に狭い空間である間隙s13内に向かって膨張し、膨張初期において上捨て枠21の見込み面部21aに到達することができ、見込み方向の室内側端近傍における上捨て枠21と新設上枠31の間の間隙s13をすばやく閉塞することができる。
ここで、膨張初期とは、加熱膨張材が加熱され膨張が始まってから早い段階であることを意味し、例えば加熱膨張材が完全に膨張した時の体積の1/3以下程度の体積に膨張するまでのことをいう。
また、室外側に配置した加熱膨張材52は、加熱により上方に配置されるヒレ状部材71に向かって膨張するが、難燃性の材料によりなるヒレ状部材71は加熱膨張材52が膨張する間は燃え尽きることなく形状を維持し、加熱膨張材52が飛散することを抑制することができるので、加熱膨張材52は既設上枠11と新設上枠31とヒレ状部材71とにより形成される間隙s14に密に膨張し、さらに見込み方向の室外側端近傍における上捨て枠21と新設上枠31の間の間隙をすばやく閉塞することができる。
なお、室外側において、新設上枠31の新設上枠本体31aに上方に隆起して上捨て枠21の見込み面部21aに近接する隆起部を形成して、隆起部の上面に加熱膨張材を配置することで、加熱膨張材の膨張初期において上捨て枠21と新設上枠31の間の間隙を閉塞するように構成してもよい。
【0025】
以上、本実施形態の防火改装サッシの上枠部分のように、既設枠体に対して室内外に亘って捨て枠が配置される場合などには、加熱膨張材は、見込み方向の室内側端部近傍における捨て枠と新設枠体の間の間隙、及び、室外側端部近傍における捨て枠と新設枠体の間の間隙を閉塞するように配置されることで、防火改装サッシの室内外の連通を防止することができる。
【0026】
(捨て枠が存在する下枠部分の防火構造)
下枠部分においては、
図4(a)に示すように、既設下枠12の室内側部分のみに下捨て枠22が配置されており、新設下枠32が下捨て枠22に支持されている室内側端部近傍においては、下捨て枠22と対向する新設下枠32の室内側壁32bの室内側面に加熱膨張材53が配置され、新設下枠32が既設下枠12の上面に配置される室外側端部近傍においては、既設下枠12の前壁部12dと対向する新設下枠32の前壁部32cの室内側面に加熱膨張材54が配置され、いずれも新設下枠32の全長に亘って配置されている。
【0027】
そして、室内側の加熱膨張材53が配置される室内側壁32bは、下捨て枠22の載置面部材222に近接した状態で対向しており、新設下枠32の室内側壁32bと下捨て枠22の載置面部材222とで形成される間隙s21は見込み方向に狭い空間として形成されている。
また、室外側の加熱膨張材54が配置される新設下枠32の前壁部32cは、既設下枠12の前壁部12dに近接した状態で対向しており、新設下枠32の前壁部32cと既設下枠12の前壁部12dとで形成される間隙s22は見込み方向に狭い空間として形成されている。
【0028】
そして、火災が発生した際には、
図4(b)に示すように、室内側に配置した加熱膨張材53は、加熱により下捨て枠22の載置面部材222に向かって膨張し、膨張初期において既設下枠12の室内側壁12bの室内側に配置された載置面部材222に到達して、狭い空間である間隙s21に充満することができる。そして、間隙s21を覆う気密テープ82を難燃性の材料によって形成することにより、新設下枠32の室内側壁32bと既設下枠12の室内側壁12bとで形成される間隙s21内で膨張した加熱膨張材53が飛散して室内側に漏れ出すことを抑制することができ、既設下枠12と新設下枠32との間隙s2の室内側の間隙s21に密に膨張して、より確実に閉塞することができる。
また、室外側に配置した加熱膨張材54は、加熱により既設下枠12の前壁部12dに向かって膨張し、膨張初期において既設下枠12の前壁部12dに到達し、新設下枠32の前壁部32cと既設下枠12の前壁部12dとで形成される狭い空間である間隙s22内に充満するので、新設下枠32と既設下枠12との間隙s2の室外側をすばやく確実に閉塞することができる。
【0029】
以上、本実施形態の防火改装サッシの下枠部分のように、既設枠体に対して室内側もしくは室外側に部分的に捨て枠が配置される場合などには、加熱膨張材は、見込み方向の捨て枠が配置される側の端部近傍における捨て枠と新設枠体の間の間隙、及び、同捨て枠が配置されない側の端部近傍における既設枠体と新設枠体の間の間隙を閉塞するように配置されることで、防火改装サッシの室内外の連通を防止することができる。
【0030】
(捨て枠が存在する縦枠部分の防火構造)
縦枠部分においては、
図5(a)に示すように、既設左縦枠13の内周面に左縦捨て枠23が配置され、新設左縦枠33は、既設左縦枠13及び左縦捨て枠23に対して近接するように配置されており、既設左縦枠13と新設左縦枠33の間に形成される間隙は、左縦捨て枠23が存在する領域において左縦捨て枠23の外周側の外間隙s31と同内周側の内間隙s32に分断されている。
そして、左縦捨て枠23の配置に際しては、上捨て枠21の配置とは異なり、見込み面部23aの外周面が既設左縦枠13の室内側壁13b及び室外側壁13dの内周端に当接していないことから、左縦捨て枠23と新設左縦枠33との間の内間隙s32だけでなく、既設左縦枠13と左縦捨て枠23との間の外間隙s31にも、室内外に連通する隙間が生じる可能性がある。
そこで、縦枠部分の室内側端部近傍については、左縦捨て枠23と既設左縦枠13が当接する部分に対向するように、新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの外周面に加熱膨張材55が新設左縦枠33の全長に亘って配置されており、新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの内周側面から既設左縦枠13の室内側面に亘って気密テープ83が設けられている。
【0031】
また、同室外側端部近傍については、新設左縦枠33の新設左縦枠本体33aの既設左縦枠13(左縦捨て枠23)よりも室外側に突出した部位の外周面に加熱膨張材56が配置され、新設左縦枠33の全長に亘って配置されている。
新設左縦枠本体33aの室外側に配置される加熱膨張材56は、ヒレ状部材73の固定部73aの近傍位置に配置され、加熱膨張材56の外周にはヒレ状部材73のヒレ片73bが配置されることで、加熱膨張材56の外周位置には新設左縦枠33と既設左縦枠13とヒレ状部材73とによって室外側が狭く室内側が広い空間s34が形成されている。
【0032】
そして、火災が発生した際には、
図5(b)に示すように、室内側に配置した加熱膨張材55は、加熱により既設左縦枠13の室内側壁13bと左縦捨て枠23の室内側係止壁部23bとの当接部位に向かって膨張し、膨張初期において既設左縦枠13と左縦捨て枠23に到達し、縦枠部分において、左縦捨て枠23と新設左縦枠33との間の間隙の室内側だけでなく、既設左縦枠13と新設左縦枠33との間の間隙、及び既設左縦枠13と左縦捨て枠23との間の間隙を塞ぐことができる。
このとき、新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの内周側面から既設左縦枠13の室内側面に亘って設けられる気密テープ83を難燃性の材料により形成することにより、膨張した加熱膨張材55が室内側に飛散することを抑制することができ、縦枠部分の室内側に密に充満して、外間隙s31と内間隙s32の両方において室内外の連通をさらに確実に防ぐことができる。
【0033】
また、室外側に配置した加熱膨張材56は、加熱により外周に配置されるヒレ状部材73に向かって膨張するが、難燃性の材料によりなるヒレ状部材73は加熱膨張材56が膨張する間は燃え尽きることなく形状を維持し、加熱膨張材56が飛散することを抑制することができるので加熱膨張材56は既設左縦枠13と新設左縦枠33とヒレ状部材73とにより形成される空間s34に密に膨張し、さらに見込み方向の室外側端近傍における新設左縦枠33と、左縦捨て枠23及び既設左縦枠13との当接部位を覆うように膨張し、左縦捨て枠23と新設左縦枠33との間の内間隙32の室外側だけでなく、既設左縦枠13と左縦捨て枠23との間の外間隙s32の室外側を塞ぐことができる。
なお、室外側において、新設左縦枠33の新設左縦枠本体33aの既設左縦枠13の室外側壁13cと左縦捨て枠23の室外側係止壁部23cとの当接部位と対向する場所に加熱膨張材を配置することで、室外側においても加熱膨張材の膨張初期において左縦捨て枠23と新設左縦枠33との間の間隙、既設左縦枠13と新設左縦枠33との間の間隙、及び既設左縦枠13と左縦捨て枠23との間の間隙を閉塞するように構成してもよい。
【0034】
以上、本実施形態の防火改装サッシの縦枠部分のように、既設枠体に対して室内外に亘って捨て枠が配置される場合であって、既設枠体と捨て枠との間が十分な気密を保てない場合などには、加熱膨張材は、見込み方向の室内側端部近傍及び室外側端部近傍において、新設枠体に配置された加熱膨張体は、捨て枠と既設枠体との当接部分に向かって膨張するように配置することで、新設枠体と捨て枠及び既設枠体との間の間隙を閉塞することができ、防火改装サッシの室内外の連通を防止することができる。
【0035】
(捨て枠が存在しない部分)
以上の実施形態に示すように、既設枠体1に対して捨て枠2を介して新設枠体3を設置する防火改装サッシに対して、既設枠体1と捨て枠2と新設枠体3との間に生じる隙間に効率的に膨張して充満する加熱膨張材を設けることで、有効な防火構造を備えることができる。
そして、本実施形態に係る防火改装サッシは、捨て枠は建具の左右方向及び上下方向の全長に亘って配置されるものではないことから、捨て枠の存在しない四隅部が存在するが、該捨て枠の存在しない四隅部において、さらなる防火構造を備えている。以下に
図6乃至11を参考に説明する。
【0036】
本実施形態に係る防火改装サッシは、上捨て枠21,下捨て枠22及び左右の縦捨て枠23,24は、建具の左右方向及び上下方向の全長に亘って配置されるものではなく、
図6に示すように、その角部に捨て枠2が配置されない領域が存在する。
そこで、本実施形態の防火改装サッシの捨て枠2が配置されない領域には、前述の加熱膨張材51乃至56に加え、捨て枠2の長さ方向の両側に加熱膨張材61乃至68を配置することにより、該領域における火炎や煙の侵入を抑制している。
【0037】
(捨て枠の存在しない上枠部分の防火構造)
上捨て枠21の左右両側に配置される加熱膨張材61,62は、
図7,8に示すように、既設上枠11の室内側壁11bの室外側面に配置されており、上捨て枠21の両端部位置から既設上枠11の両端部に亘って設けられている。
そのため、
図9(a)に示すように、上枠部分の上捨て枠21が存在しない領域において、既設上枠11と新設上枠31との間に形成される間隙s1には、前述の室内側の加熱膨張材51及び室外側の加熱膨張材52と、既設上枠11の室内側壁11bの室外側面に配置される加熱膨張材61,62とによって防火構造が形成されている。
【0038】
そして、火災が発生した際には、
図9(b)に示すように、室内側の加熱膨張材51と既設上枠11の室内側壁11bの室外側面に配置される加熱膨張材61,62とが膨張して一体化することにより、既設上枠11の上案内レール11eの室内側に形成される間隙に加熱膨張材51,61,62が十分に充満して、既設上枠11と新設上枠31との間に形成される間隙s5の室内側を閉塞することができる。
また、室外側に配置した加熱膨張材52は、前述のように、既設上枠11と新設上枠31とヒレ状部材71とにより形成される間隙s14に密に膨張して、既設上枠11と新設上枠31との間に形成される間隙s1の室外側を閉塞することができる。
なお、上記実施形態においては、加熱膨張材61,62は、既設上枠11の室内側壁11bに配置されているが、既設上枠11の室外側壁11cの室内側面に配置してもよい。
【0039】
(捨て枠の存在しない下枠部分の防火構造)
下捨て枠22の左右両側に配置される加熱膨張材63,64は、
図7,8に示すように、既設下枠12の室内側壁12bの室外側面に配置されており、下捨て枠22の載置面部材222の両端部位置から既設下枠12の両端部に亘って設けられている。
そのため、
図10(a)に示すように、下枠部分の下捨て枠22が存在しない領域において、既設下枠12と新設下枠32との間に形成される間隙s2には、前述の室内側の加熱膨張材53及び室外側の加熱膨張材54と、既設下枠12の室内側壁12bの室外側面に配置される加熱膨張材63,64とによって防火構造が形成されている。
【0040】
そして、火災が発生した際には、
図10(b)に示すように、既設下枠12の室内側壁12bに近接する新設下枠32の室内側壁32bの室内側に配置された加熱膨張材53が、膨張初期において既設下枠12の室内側壁12bに到達し、既設下枠12と新設下枠32の間の狭い空間である間隙s21内で密に膨張し、さらに、既設下枠12の室内側壁12bの室外側面に配置される加熱膨張材63,64が膨張して一体化することにより、間隙s21に膨張した加熱膨張材53が下方に落下することを抑制することができ、既設下枠12と新設下枠32との間に形成される間隙s2の室内側をすばやく閉塞することができる。
また、既設下枠12の前壁部12dの室外側面に近接する新設下枠32の前壁部32cの室内側に配置された加熱膨張材54が、膨張初期において既設下枠12の前壁部12dに到達し、新設下枠32と既設下枠12との間の狭い空間である間隙s22内に密に膨張するので、新設下枠32と既設下枠12との間隙s2の室外側をすばやく確実に閉塞することができる。
このように、防火改修サッシの下枠部分については、捨て枠が介在しない場合において、室内側端部近傍及び室外側端部近傍において新設下枠を既設下枠に近接させて配置して、新設下枠と既設下枠との間の空間を狭い間隙に形成するとともに、該狭い間隙に形成した室内側部分及び室外側部分を閉塞するように加熱膨張材を配置することにより、室内外のいずれの側の火災に対してもすばやく対応することができ、また、少ない加熱膨張材により室内外の連通を防止することができる。
【0041】
(捨て枠の存在しない左縦枠部分の防火構造)
左縦捨て枠23の上下両側に配置される加熱膨張材65,66は、
図7,8に示すように、既設左縦枠13の室内側壁13bの室外側面に配置されており、左縦捨て枠23の上下端部位置から既設左縦枠13の両端部に亘って設けられている。
そのため、
図11(a)に示すように、縦枠部分の左縦捨て枠23が存在しない領域において、既設左縦枠13と新設左縦枠33との間に形成される間隙s3には、前述の室内側の加熱膨張材55及び室外側の加熱膨張材56と、既設左縦枠13の室内側壁13bの室外側面に配置される加熱膨張材65,66とによって防火構造が形成されている。
【0042】
そして、火災が発生した際には、
図11(b)に示すように、室内側の加熱膨張材55が外周に向けて膨張するとともに、既設左縦枠13の室内側壁13bの室外側面に配置される加熱膨張材65,66が室外側に向けて膨張し、両者が一体化することにより、既設左縦枠13と新設左縦枠33との間に形成される間隙s3の室内側を閉塞することができる。
また、室外側に配置した加熱膨張材56は、前述のように、既設左縦枠13と新設左縦枠33とヒレ状部材73とにより形成される空間s34に密に膨張して、既設左縦枠13と新設左縦枠33との間に形成される間隙s3の室外側を閉塞することができる。
なお、上記実施形態においては、加熱膨張材65,66は、既設左縦枠13の室内側壁13bに配置されているが、既設左縦枠13の室外側壁13dの室内側面に配置してもよく、また、既設左縦枠本体13aに配置してもよい。
【0043】
このように、本実施形態に係る防火改修サッシの縦枠部分の捨て枠が介在しない領域においても、既設枠体と新設枠体との間の間隙の室内側部分及び室外側部分を閉塞するように加熱膨張材が配置されており、室内側いずれの側の火災に対してもすばやく対応することができ、また、少ない加熱膨張材により室内外の連通を防止することができる。
【0044】
(他の実施形態1)
本発明の他の実施形態を
図12乃至15を参考にして説明する。
例えば、
図12(a)に示すように、見込み方向に幅の広い既設縦枠13,14を備える防火改装サッシの場合には、既設縦枠13に近接する新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの外周面に設けられる室内側の加熱膨張材55は、左縦捨て枠23の内周面に対向させるとともに、新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの内周側面から左縦捨て枠23の外周面及び既設左縦枠13の室内側面に亘って気密テープ83を設けることにより、室内側の防火構造を形成することができる。
そして、火災が発生した際には、
図12(b)に示すように、室内側の加熱膨張材55が外周に向けて膨張することにより左縦捨て枠23と新設左縦枠33との比較的狭い隙間s33に充満して、縦枠部分における室内側の内間隙s32を閉塞して、室内外の連通をすばやく防止することができる。
【0045】
また、左縦捨て枠23が存在しない両端の領域においては、先の実施形態と同様に、
図13(a)に示すように、室内側の加熱膨張材55に加えて、既設左縦枠13の室内側壁13bの室外側面に加熱膨張材65,66が配置されている。
そして、火災が発生した際には、
図13(b)に示すように、新設左縦枠33の室内側見込み壁33cの外周面に設けられた加熱膨張材55が外周側に向かって膨張し、既設左縦枠13の室内側壁13bの室外側面に設けられた加熱膨張材65,66が室外側に向かって膨張して、両者が一体化することで、新設左縦枠33と既設左縦枠13の間の間隙s3の室内側を閉塞することができる。
【0046】
上記の左縦捨て枠23が存在する領域においても、また、存在しない領域においても、新設左縦枠33と既設左縦枠13との間に亘って設けた気密テープ83を難燃性の材料により形成することで、気密テープ83により加熱膨張材の室内側への飛散が抑制されて、縦枠部分の間隙s3の室内側をより密に充満することができる。
なお、室外側の防火構造については、先の実施形態と同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0047】
(他の実施形態2)
また、上枠部分の防火構造において、
図14(a)に示すように、新設上枠31の屈曲壁31cの上面に加熱膨張材51を配置するポケット部31iを設けてもよく、
図14(b)に示すように、新設上枠31の新設上枠本体31aの室内側上面に加熱膨張材51を配置するポケット部31iを設けて加熱膨張材51を配置してもよい。ポケット部31iを設けることにより、加熱膨張材51が脱落することが防止できる。
さらに、下枠部分の防火構造において、
図15(a)に示すように、室外側の加熱膨張材54を新設下枠32の前壁部32cの室内側面に設けるのではなく、既設下枠12に近接する新設下枠32の新設下枠本体32aの室外側下面に配置してもよい。
そして、本発明の防火改装サッシにより施工される新設枠体3は、階段状の下枠を備えるものに限定されるものではなく、例えば
図15(b)に示すように、室外側の外レールの高さが室内側の内レールの高さよりも高い形式の改装サッシとして構成されてもいい。そのような場合には、下捨て枠22は、内外レールの上面に配置される見込み方向に幅の広い下捨て枠22を用いることが好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る防火改装サッシにおいては、見込み方向の室内側端部近傍及び室外側端部近傍において、既設枠体と新設枠体との間、もしくは、捨て枠と新設枠体との間に加熱膨張材が配置されているので、室内側に配置した加熱膨張材及び室外側に配置した加熱膨張材がいずれも見込み方向の外方部分(室内側端部及び室外側端部)に配置されていることから、火災が発生した際には、室内外のいずれに発生した火災に対しても火災の初期の段階でいずれかの加熱膨張材が加熱されて膨張させることができるので、火災の早期に既設枠体と新設枠体との間隙を閉塞することができ、間隙に配置される樹脂製のスペーサー等が加熱されることによって生じる有害なガスの漏れを防ぎ、スペーサ等への引火や延焼を防止することができる。
また、いずれの加熱膨張材も新設枠体に配置されることにより、比較的火炎の接触しやすい新設枠体に伝わる熱により早期に加熱膨張材を膨張させることができる。
さらに、新設枠体の加熱膨張体を配置した室内側端部近傍及び/又は室外側端部近傍において、既設枠体と新設枠体、もしくは捨て枠と新設枠体とを近接させることで、既設枠体と新設枠体、もしくは捨て枠と新設枠体の間の間隙を比較的狭い空間として形成し、加熱膨張材の膨張初期に前記間隙を閉塞することができるので、素早い閉塞をすることができ、また、間隙を充満させるための加熱膨張材の量が少なくて済み、効率的に充満させることができる。
【0049】
なお、新設枠体と既設枠体、もしくは、新設枠体と捨て枠との間に加熱膨張材を配置するための構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、捨て枠が存在する領域においても、室内側端部近傍及び室外側端部近傍の既設枠体と新設枠体との間に加熱膨張材を配置するようにしてもよく、また、実施形態において下枠部分に採用されている防火構造を、上枠や縦枠に採用しても良い。即ち、見込み方向の室内側端部近傍及び室外側端部近傍において、新設枠体と既設枠体、もしくは、新設枠体と捨て枠との間に加熱膨張材が配置されていればよい。