(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<可塑性油脂組成物>
本発明の可塑性油脂組成物は、グリセリンを含有し、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の合計質量が、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して37〜57質量%であることを特徴とする。
【0023】
グリセリンは、無色の粘稠な液体で、においがなく、甘味がある。また、水と任意の割合で混和可能な液体であり、沸点が290℃と高く、体温で蒸発しないこと、保水力が高いことから、保湿剤として化粧品に用いられることが多い。また、グリセリンは、食品添加物として認可されており、水分値が10%を超える半生食品であるカステラ、イカの燻製、肉まんの皮等の食品のシトリや柔らかさの維持を目的として上記の食品に添加されることがある。食品に添加したグリセリンは、後述の製菓製パンの焼成工程においても、蒸散することはほとんどない。このため、焼成後の製菓製パンに対してシトリを付与することができる。
【0024】
本発明では、可塑性油脂組成物の主要成分である油脂にグリセリンを添加し、混合することで得られる可塑性油脂組成物とこれを用いて製造した製菓製パン等の焼成品に、長期に亘るシトリを付与することができる。また、この可塑性油脂組成物を含有するバタークリームやマーガリン、スプレッド等においては、瑞々しくしかもコク味が良好なものとすることができる。
【0025】
可塑性油脂組成物に用いることができるグリセリンとしては、食品添加物用のグリセリンであれば、特に制限されることなく使用可能である。なお、食品添加物用のグリセリンについては、食品添加物公定書に定められた基準に基づくものである。具体的には、食品添加物用のグリセリンは、グリセリン(C
3H
8O
3)95.0%(w/v)以上を含有することが規定されている。
【0026】
可塑性油脂組成物におけるグリセリンの含有量としては、例えば、可塑性油脂組成物全体の質量に対して2〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは、15〜35質量%の範囲であることが例示される。グリセリンの含有量が上記の範囲内であれば、可塑性油脂組成物を用いて製造した製菓製パンやバタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品について、シトリとコク味(甘み由来)のバランスが良好なものとなる。
【0027】
可塑性油脂組成物におけるグリセリン含有量は、下記の方法で測定する。可塑性油脂を溶解させ、グリセリンを含む水相部を抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することができる。
【0028】
グリセリンを含有する可塑性油脂組成物の製造方法は、以下の2つの方法に大別される。すなわち、(1)溶解した油相に、直接グリセリンを添加して油相を調製した後、水相を添加して乳化物を作製し、急冷捏和する方法と、(2)予め水にグリセリンを添加し水相を調製した後、溶解した油相に水相を添加して、乳化物を作製し、急冷混和する方法である。また水相を用いず、溶解した油相に直接グリセリンを添加することもできる。
【0029】
上記のいずれの方法を用いた場合であっても、所望の効果を発揮する可塑性油脂組成物を得ることができる。これらの方法は、いずれであっても構わないが、特に、油脂に対し、グリセリンの分散性が向上し、シトリの持続性が向上するので、(2)の予め水にグリセリンを添加し水相を調製した後、溶解した油相に水相を添加して、乳化物を作製し、急冷捏和する方法を採用することが好ましい。
【0030】
<油脂>
本発明の可塑性油脂組成物は、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の合計質量が、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して37〜57質量%であることを特徴とする。本発明の可塑性油脂組成物は、これにより、製菓製パン等の焼成品に、優れたシトリを付与することができる。シトリに優れた製菓製パン等の焼成品においては、スライス時に、くずの発生量を抑えることができるとともに、喫食時に感じる瑞々しさをも向上させることができる。また、本発明の可塑性油脂組成物を含有するマーガリン、バタークリーム、スプレッド等の食品においては、喫食時に感じる瑞々しさが向上するとともに、コク味が増し、しかも後味として感じるフレーバーリリース(後半のフレーバーリリース)も向上する。
【0031】
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。
【0032】
トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸は、分子構造上歪を形成しており、回転運動する際に、分子構造の障害となりやすい。そのため、油脂中の各トリグリセリドの分子が近付きにくくなることから、結晶化しにくい状態となる。その結果、徐冷時において結晶化部分(固)と非結晶部分(液)とが混在(固液分離)した状態となりやすい。これにより、本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パン等の焼成品のシトリを向上させるものと考えられる。また、本発明の可塑性油脂組成物は、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品を瑞々しく、しかもコク味が良好なものとすることができる。
【0033】
一方、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の質量が多すぎると、上記のとおり、分子構造による結晶化が阻害されることと、相対的に油脂中のオレイン酸量が多くなることに起因し、非結晶部が多くなり、このような油脂を含有する可塑性油脂組成物およびそれを用いた食品について、喫食時の食感が低下する。
【0034】
また、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の質量が少なすぎると、分子構造による結晶化の阻害による影響が少ないこと、相対的に油脂中のオレイン酸量が少なくなることに起因し、結晶化部分が多くなり、製菓製パン等の焼成品のシトリやコク味が低下し、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品では、喫食時に感じる瑞々しさ、後味として感じるフレーバーリリースも低下する。
【0035】
さらに、可塑性油脂組成物中の油脂は、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、28質量%以上60質量%以下であることが好ましい。油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸が、上記範囲内であれば、さらに製菓製パン等の焼成品のシトリやコク味が向上し、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品では、喫食時に感じる瑞々しさ、後味として感じるフレーバーリリースも向上する。本発明の可塑性油脂組成物が、製菓製パン等の焼成品に優れたシトリを付与し、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品について、喫食時に感じる瑞々しさ、後味として感じるフレーバーリリースを向上させることができるのは、上記のとおりの性質を有するトリグセリドの2位に結合されたオレイン酸と飽和脂肪酸の量のバランスが良好なためであると考えられる。
【0036】
本発明の可塑性油組成物において、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の合計質量は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合された脂肪酸全体の質量に対して37〜57質量%であり、より好ましくは、40〜52質量%である。可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の合計質量が、上記の範囲内であれば、製菓製パン等の焼成品では、焼成時に油脂が溶融状態となり、その後室温におかれた際に油脂は、徐冷となるため、固液分離の状態となり、非結晶部分を有するため、焼成品にシトリを付与することができる。また、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品では、喫食時に感じる瑞々しさ、後味として感じるフレーバーリリースを向上させることができる。このように、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の量が、トリグリセリドの2位に結合された脂肪酸全体の質量に対して37〜57質量%である油脂を含有する可塑性油脂組成物を用いることにより、製菓製パン等の焼成品のシトリやコク味が向上する。また、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品では、喫食時に感じる瑞々しさ、コク味にくわえて、後味として感じるフレーバーリリースも向上させることができる。
【0037】
本発明の可塑性油組成物において、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の合計質量は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合された脂肪酸全体の質量に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜4.0質量%である。可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の合計質量は、上記の範囲内であれば、可塑性油脂の口溶けが向上し、焼成品においては、コク味、バタークリームやマーガリン、スプレッド等の食品では、喫食時に感じる瑞々しさ、コク味にくわえて後味として感じるフレーバーリリースも向上させることができる。
【0038】
なお、本明細書において、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
【0039】
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
【0040】
飽和脂肪酸Sとしては、特に限定されないが、例えば、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)などが挙げられる。なお、上記の飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
【0041】
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。
【0042】
不飽和脂肪酸Uとしては、特に限定されないが、例えば、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)等が挙げられる。なお、上記不飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数を意味する。
【0043】
本発明の可塑性油脂組成物およびこれを用いた食品に使用される油脂は、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを含み、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸Sまたは不飽和脂肪酸Uのいずれであってもよい。2位がオレイン酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SOS型トリグリセリド、SOU型トリグリセリド(位置異性体も含む)、UOU型トリグリセリドなどが挙げられるが、特に限定されない。なお、「O」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるオレイン酸を意味する。本発明の効果を得る点から、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sである場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸Uである場合、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸(ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルカ酸等)であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sと不飽和脂肪酸Uである場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と不飽和脂肪酸(炭素数14〜22の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
【0044】
本発明の可塑性油脂組成物において、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量は、油脂全体の構成脂肪酸の質量に対して、27〜55質量%であることが好ましい。上記のとおり、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドは、結晶化しづらいが、この2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの量と、油脂中の飽和脂肪酸の含有量を調整することにより、油脂の結晶性をコントロールすることができる。その結果、可塑性油脂組成物が添加された製菓製パン等の焼成品のシトリを向上させることができる。また、飽和脂肪酸の含有量を上記の範囲内とすることで、バタークリームやマーガリン、スプレッドの瑞々しさ、コク味、後味のフレーバーリリースを向上させることができる。
【0045】
本発明の可塑性油脂組成物の製造に用いられる油脂としては、特に限定されるものではないが、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油、加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。飽和脂肪酸の含有量およびトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸やオレイン酸の含有量などを適宜調整するために、これらの油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
また、本発明の可塑性油脂組成物およびこれを用いた食品に使用される油脂においては、ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)を4〜40質量%含有することが好ましく、5〜30質量%であることが、より好ましく考慮される。
【0047】
エステル交換油脂(a)の原料であるラウリン系油脂(a1)は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのラウリン系油脂(a1)のうち、ヤシ油に比べて融点が高く、高融点のエステル交換油脂(a)を容易に得ることができる点を考慮すると、パーム核油、その分別油や硬化油が好ましい。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
【0048】
ラウリン系油脂(a1)は、ヨウ素価が2以下の油脂を含有することが好ましい。ヨウ素価が2以下の油脂を用いると、トランス脂肪酸の生成の虞が少なく、エステル交換油脂(a)を他の油脂と混合する際に結晶核となり、固化し易くかつ口溶けの良い油脂組成物となる。ヨウ素価が2以下の油脂としては、極度硬化油が挙げられる。
【0049】
エステル交換油脂(a)の原料であるパーム系油脂(a2)は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。パーム系油脂(a2)としては、パーム油、パーム分別油やこれらの硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部などを用いることができる。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
【0050】
パーム系油脂(a2)は、ヨウ素価が50〜60の油脂を含有することが好ましい。ヨウ素価が50〜60の油脂を用いることで、含有する飽和脂肪酸量から結晶性に優れ、また不飽和脂肪酸を含む点から可塑性に優れた油脂の作製が可能となる。またパーム系油脂(a2)は、極度硬化油を含有することが好ましい。パーム系油脂(a2)に極度硬化油が含有されていると、エステル交換油脂(a)の融点を高めることができ、結晶性が良好になる。
【0051】
エステル交換油脂(a)において、ラウリン系油脂(a1)と、パーム系油脂(a2)とのエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(a)中における質量比(SUS/SSU)が0.45〜0.55の範囲内となる。
【0052】
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂質量の0.05〜0.15質量%添加し、減圧下で80〜120℃に加熱し、0.5〜1.0時間攪拌することでラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(a)を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01〜10質量%添加し、40〜80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(a)を得ることができる。エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。
【0053】
本発明の可塑性油脂組成物およびこれを用いた食品に使用される油脂は、エステル交換油脂(a)を、全油脂の質量に対して4〜40質量%含有することが好ましく考慮される。エステル交換油脂(a)の含有量が上記の範囲内であれば、油脂の結晶性が良好となり、伸展性に優れた可塑性油脂組成物を得ることができ、製菓製パン生地では、常温域(15〜25℃)の作業環境下での練り込み工程においても作業性が良好であり、またバタークリームとして用いた場合は、液糖などの他素材との混合性が良好となる。
【0054】
本発明の可塑性油脂組成物およびこれを用いた食品に使用される油脂は、油脂の構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、血液中におけるLDLコレステロール量が増加しうる。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては、油脂の構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。
【0055】
<可塑性油脂組成物を用いたマーガリン、スプレッド、バタークリーム>
本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パン用であることが好ましく考慮される。具体的には、本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パン等の焼成品の生地に練り込み、あるいは折り込んで使用することができる。
【0056】
例えば、本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パン練り込み用油脂組成物(b1)として、菓子生地やパン生地に練り込んで使用される。製菓製パン練り込み用油脂組成物(b1)を含有する菓子生地やパン生地を焼成することによって、焼成品としての製菓製パンが得られる。
【0057】
あるいは、本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)として、菓子生地やパン生地に折り込んで使用することができる。例えば、生地の間に可塑性油脂組成物を用いたシート状の製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)を包み込み、その後、折り畳みと圧延を繰り返すことによって生地中に製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)を層状に折り込んで、生地と製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)の薄い層を何層にも作り上げる。そして、この製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)を含有する生地を焼成することによって、層状焼成品のパンが得られる。この製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状、ペンシル状などの様々な形状とすることができる。その中でも、加工が容易である点等から、シート状とすることが好ましい。製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)をシート状とした場合のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、幅50〜1000mm、長さ50〜1000mm、厚さ1〜50mmとすることができる。
【0058】
生地への可塑性油脂組成物の練り込み、折り込みや、生地の焼成は、例えば公知の条件および方法に従って行うことができる。
【0059】
可塑性油脂組成物を用いた生地は、穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、製菓製パン等の焼成品の生地に配合されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられる。
【0060】
生地には、穀粉と可塑性油脂組成物以外にも、通常、製菓製パン等の焼成品の生地に使用されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、製菓製パン等の焼成品の生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく適宜の量とすることができる。具体的には、例えば、水、乳、乳製品、蛋白質、糖質、卵、卵加工品、澱粉、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、粉末油脂、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバー等が挙げられる。
【0061】
製菓製パン練り込み用油脂組成物(b1)を練り込んだ生地を用いた焼成品としては、例えば、食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッド、スポンジケーキ、パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ等が挙げられる。
【0062】
製菓製パン折り込み用油脂組成物(b2)を折り込んだ生地を用いた焼成品としては、例えば、イーストなどを使用して生地を発酵させるデニッシュやクロワッサン、発酵過程のないパイ等のペストリー等が挙げられる。
【0063】
また、本発明では、可塑性油脂組成物として、マーガリン、スプレッドを調製することができ、また、この可塑性油脂組成物であるマーガリンを用いてバタークリームなどの食品を調製することができる。
【0064】
これらの食品では、本発明の可塑性油脂組成物の含有量が、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%の範囲内である。
【0065】
これらの可塑性油脂は、水相を含有する形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型が挙げられ、油相の含有量は、好ましくは60〜99.4質量%、より好ましくは65〜98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、マーガリンが挙げられる。本明細書においてマーガリンとは、日本農林規格のマーガリンまたはファットスプレッドに該当するものである。すなわち、マーガリンは、油脂を80質量%以上含み、ファットスプレッドは、油脂を80質量%未満含むものである。
【0066】
これらの食品は、水以外に、従来公知の各種成分を含んでもよい。公知の成分としては、特に限定されないが、例えば、乳、乳製品、蛋白質、呈味剤(乳製品の酵素処理物等)、アミノ酸、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、増粘剤、着色成分、フレーバー、乳化剤、酒類等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン等)、多糖類等が挙げられる、抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0067】
これらの食品は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水相を含有する形態のものは、本発明の可塑性油脂組成物を含む油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機による急冷捏和後には、必要に応じて冷却混合機において、窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込んだり、熟成(テンパリング)してもよい。
【0068】
また、本発明の可塑性油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、スプレッドは、製菓製パンのフィリング、ナッペ、トッピングに使用されることが好ましく考慮される。
【0069】
本発明によれば、可塑性油脂組成物をこれらの食品に使用した際に、喫食時には、バタークリームやマーガリン、スプレッドの口溶けが良好で、瑞々しさとコク味を兼ね備え、しかも後味として感じるフレーバーリリースも良好である。
【0070】
ここでフィリング、ナッペまたはトッピングとしては、マーガリンやスプレッドをそのままスプレッドとして用いることや、マーガリンやスプレッドをごく少量起泡させたものを用いることや、マーガリンやスプレッドに糖質、呈味剤、フレーバー等を添加し起泡させたバタークリームを用いること等が挙げられる。
【0071】
起泡(クリーミング)は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、電動式もしくは手動の泡立て器を用いて、比重が適度に軽くなるまで含気させることにより行うことができる。
【0072】
バタークリームは、比重が好ましくは0.8以下、より好ましくは0.3〜0.7である。
【0073】
バタークリームに配合する呈味成分としては、糖質、乳製品、呈味剤(乳製品の酵素処理物等)、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、コーヒーおよびコーヒー製品、酸味料、調味料、フレーバー、酒類等が挙げられる。糖質としては、液糖、粉糖、糖アルコール等であってよく、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、多糖類、水あめ、異性化液糖等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加工卵等が挙げられる。
【0074】
バタークリームに呈味成分やそれ以外の成分を配合する場合は、これらの配合量は、通常、バタークリームに配合される範囲で特に制限なく配合することができる。バタークリームに糖質を配合する場合は、例えば、可塑性油脂100質量部に対して10〜200質量部の範囲内で配合することができる。
【0075】
これらバタークリーム、マーガリン、スプレッドを製菓製パンに使用する方法としては、例えばフィリングとしては、注入、塗布、絞り、ナッペとしては塗布、トッピングとしては絞りなどが挙げられる。
【0076】
<バタークリーム、マーガリン、スプレッドを用いた食品>
本発明の可塑性油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、またはスプレッドを含む食品としては、可塑性油脂組成物を含むバタークリーム、マーガリン、またはスプレッドを、フィリング、ナッペ、またはトッピングに用いた製菓製パンが挙げられる。本発明の可塑性油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、スプレッドは、喫食時には、バタークリームやマーガリン、スプレッドの口溶けが良好で、瑞々しさとコク味を兼ね備え、しかも後味として感じるフレーバーリリースも良好である。
【0077】
製菓製パンのうち、パンとしては食パン、菓子パン、ドックパン、ロールパン、クロワッサン、菓子としては、スポンジケーキ、バターケーキ、シュー、パイ、ウエハース、ドーナツ、クッキー、ビスケット、クラッカー、ワッフル、ゴーフル、炭酸せんべい等が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
(1)測定方法
油脂における飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂の構成脂肪酸全体の質量を基準としている。
【0080】
油脂における2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの含有量、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。なお、これらの含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂の2位構成脂肪酸全体の質量を基準としている。
【0081】
各油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
【0082】
(2)油脂組成物の製造
<エステル交換油脂の製造>
[エステル交換油脂1]
パーム油70質量%、パーム核油15質量%、パーム極度硬化油7.5質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%を混合し、110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
【0083】
[エステル交換油脂2]
パーム油62.5質量%、パーム核油20質量%、パーム極度硬化油10質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%を混合し、110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂2を得た。
【0084】
[エステル交換油脂3]
パーム分別軟質油100質量%を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂3を得た。
【0085】
[エステル交換油脂4]
パーム油100質量%を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂4を得た。
【0086】
なお、エステル交換油脂1、2は、前述したエステル交換油脂(a)である。
【0087】
<マーガリンの製造>
後述する表1から表3に記載された各油脂を75℃で溶解し、混合して得られた油脂に対し、表に記載の各乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、レシチン)を添加して、75℃に調温して油相とした。一方、表に記載された水にグリセリン、脱脂粉乳を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。なお、実施例8、19は、水を添加せず、85℃で加熱殺菌した。実施例30は、グリセリンに脱脂粉乳を添加し、攪拌後、分散させ、85℃で加熱殺菌した。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、ミルクフレーバーを添加し、攪拌後、パーフェクターによって急冷捏和して、表1から表3に記載された配合割合の練り込み用マーガリン・バタークリーム用マーガリン・スプレッドマーガリンを得た。得られたマーガリンは、5℃で保管した。
【0088】
なお、乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名エマルジーMO、理研ビタミン(株)製または商品名エマルジーMS、理研ビタミン(株)製)を用いた。配合割合は、後述する表1から2に記載されたとおりである。
【0089】
また、グリセリンとしては、商品名「食品添加物グリセリン」(ミヨシ油脂(株)製)を用いた。
【0090】
(3)製菓製パンの製造および評価
<パウンドケーキの製造>
上記で得たそれぞれのマーガリンを用いて、下記配合で、パウンドケーキを製造した。
【0091】
まず、マーガリンと上白糖をすり合わせホイップし、比重を0.75とした。その後、全卵を徐々に加え合わせ、最後に薄力粉とベーキングパウダーを加え合わせ、最終比重が0.8〜0.85となるようミキシングし、生地を得た。
【0092】
比較例4については、マーガリンと上白糖をすり合わせホイップし、比重0.75とした後、全卵とグリセリンを125g混合した混合液を徐々に加え合わせ、最後に薄力粉とベーキングパウダーを加え合わせ、最終比重が0.8〜0.85となるようミキシングし、生地を得た。
【0093】
この生地をパウンド型に350g流し込み、170℃、35分焼成し、パウンドケーキを製造した。
【0094】
焼成したパウンドケーキを室温で放冷させた後、10mmの厚さにスライスし、ポリプロピレン製袋に入れ、20℃の恒温槽にて20日保管した後、後述する各評価に用いた。
<パウンドケーキの配合>
薄力粉 100質量部(500g)
上白糖 100質量部(500g)
マーガリン 100質量部(500g)
全卵(正味) 100質量部(500g)
ベーキングパウダー 2質量部(10g)
【0095】
<パウンドケーキの評価>
上記で得たパウンドケーキについてパネル12名で、以下の基準により瑞々しさ、コク味を評価した。
【0096】
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性5名、女性7名を選抜した。
【0097】
[焼成品の表面のシトリ]
20℃の恒温槽にて20日保管した後、焼成品の表面のシトリ(湿り気)を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:触った際に、湿り気を感じる。
○:触った際に、若干湿り気を感じる。
△:触った際に、湿り気がないが、かさつき感がない。
×:触った際に、まったく湿り気がなく、かさつき感あり。
【0098】
[焼成品の瑞々しさ]
20℃の恒温槽にて20日保存した後、10mmの厚さにスライスし、パネルにより喫食した際の瑞々しさ、すなわち、パサツキ感がなく、シトリがあることについて、官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上が瑞々しさがあると評価した。
○:パネル12名中7〜9名が瑞々しさがあると評価した。
△:パネル12名中3〜6名が瑞々しさがあると評価した。
×:パネル12名中、2名以下が瑞々しさがあると評価した。
【0099】
[焼成品のコク味]
20℃の恒温槽にて20日保存した後、10mmの厚さにスライスし、パネルによりパウンドケーキのコク味(甘み由来)の官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上がコク味があると評価した。
○:パネル12名中7〜9名がコク味があると評価した。
△:パネル12名中3〜6名がコク味があると評価した。
×:パネル12名中、2名以下がコク味があると評価した。
【0100】
[スライス時のケーキのくず量]
20℃の恒温槽にて20日保存した後、10mmの厚さにスライスした際に生じたケーキのくずの量を目視により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:くずは全く出ない。
○:くずは出るが、若干量である。
×:くずが多く出る。
【0101】
上記の評価結果を表1に示す。また、可塑性油脂組成物の油脂配合と油脂組成も併せてこの表に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
(4)バタークリームの作製と評価
<バタークリームの作製>
上記で得たマーガリンを15℃に調温した後、卓上ミキサー(Kitchen Aid社)を用いて、調温したマーガリン500gを多羽ホイッパーで速度4にて比重が0.5程度となるまで起泡させ、バタークリームを得た。
【0104】
なお、比較例8については、マーガリンに、375gを多羽ホイッパーで速度4にて、10秒クリーミングし、マーガリンを分散させた後、グリセリン125gを添加し、比重が0.5程度となるまで、起泡させ、バタークリームを得た。
【0105】
<バタークリームの評価>
上記で得たバタークリームを20℃で2日間保存した後、このバタークリームをパネル12名で喫食し、以下の基準で評価した。
【0106】
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性5名、女性7名を選抜した。
【0107】
[バタークリームの瑞々しさ]
20℃で2日保存した後、パネルによりバタークリームの瑞々しさの官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上が、瑞々しさがあると評価した。
○:パネル12名中7〜9名が、瑞々しさがあると評価した。
△:パネル12名中3〜6名が、瑞々しさがあると評価した。
×:パネル12名中2名以下が、瑞々しさがあると評価した。
【0108】
[バタークリームの後半のフレーバーリリース]
20℃で2日保存した後、パネルにより喫食し、口中で、バタークリームがすべてなくなった後も、ミルクフレーバーが残存するように感じることができた場合を後半のフレーバーリリースが良好であるとして、官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上が良好であると評価した。
○:パネル12名中7〜9名が良好であると評価した。
△:パネル12名中3〜6名が良好であると評価した。
×:パネル12名中2名以下が良好であると評価した。
【0109】
[バタークリームのコク味]
20℃で2日保存した後、パネルによりバタークリームのコク味(甘味由来)の官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上がコク味があると評価した。
○:パネル12名中7〜9名がコク味があると評価した。
△:パネル12名中3〜6名がコク味があると評価した。
×:パネル12名中、2名以下がコク味があると評価した。
【0110】
上記の評価結果を表2に示す。また、可塑性油脂組成物の油脂配合と油脂組成も併せてこの表に示した。
【0111】
【表2】
【0112】
<スプレッドマーガリンの評価>
上記スプレッドマーガリンを20℃で2日間保存した後、このスプレッドマーガリンをパネル12名で喫食し、以下の基準で評価した。
【0113】
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性5名、女性7名を選抜した。
【0114】
[スプレッドマーガリンの瑞々しさ]
20℃で2日保存した後、パネルによりスプレッドマーガリンの瑞々しさの官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上が、瑞々しさがあると評価した。
○:パネル12名中7〜9名が、瑞々しさがあると評価した。
△:パネル12名中3〜6名が、瑞々しさがあると評価した。
×:パネル12名中2名以下が、瑞々しさがあると評価した。
【0115】
[スプレッドマーガリンの後半のフレーバーリリース]
20℃で2日保存した後、パネルにより喫食し、口中で、スプレッドマーガリンがすべてなくなった後も、ミルクフレーバーが残存するように感じることができた場合を後半のフレーバーリリースが良好であるとして、官能評価を以下の基準で評価した。
◎:パネル12名中10名以上が良好であると評価した。
○:パネル12名中7〜9名が良好であると評価した。
△:パネル12名中3〜6名が良好であると評価した。
×:パネル12名中2名以下が良好であると評価した。
【0116】
[スプレッドマーガリンのコク味]
20℃で2日保存した後、パネルによりスプレッドマーガリンのコク味(甘味由来)の官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上がコク味があると評価した。
○:パネル12名中7〜9名がコク味があると評価した。
△:パネル12名中3〜6名がコク味があると評価した。
×:パネル12名中、2名以下がコク味があると評価した。
【0117】
[スプレッドマーガリンの乾き]
スプレッドマーガリンをプラスチック容器に入れて、5℃で、30日間保管した後、プラスチック容器から取り出し、固化したスプレッドマーガリンの表面と、中央部でカットした際の中心部との色の差を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:表面と中心部との色の差がない。
○:表面の方が、中心部より若干濃くなっている。
△:表面の方が、中心部より濃くなっている。
×:表面の方が、中心部よりかなり濃くなっている。
【0118】
上記の評価結果を表3に示す。また、可塑性油脂組成物の油脂配合と油脂組成も併せてこの表に示した。
【0119】
【表3】