特許第6717812号(P6717812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

<>
  • 特許6717812-自動車の制動時の片効きを制御する方法 図000002
  • 特許6717812-自動車の制動時の片効きを制御する方法 図000003
  • 特許6717812-自動車の制動時の片効きを制御する方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717812
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】自動車の制動時の片効きを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1755 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   B60T8/1755 ZZYW
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-518853(P2017-518853)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公表番号】特表2017-530903(P2017-530903A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】FR2015052603
(87)【国際公開番号】WO2016055716
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】1459694
(32)【優先日】2014年10月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス, ディディエ
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−270388(JP,A)
【文献】 米国特許第08831853(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
8/32−8/96
B60W 10/00−10/30
30/00−50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の自動車(1)の制動時の、片効きを制御する制御する方法であって、
前記自動車(1)は少なくとも1つの車軸(4)を備え、前記車軸(4)は左車輪(2)と右車輪(3)を備え、前記車軸(4)の各車輪(2、3)は角速度(v2、v3)と角加速度(a2、a3)を規定し、
前記車軸(4)の各車輪(2、3)は、制動手段(6)と協働し、それによって前記制動手段(6)が関連する前記車輪(2、3)に牽引力を加えて関連する前記車輪(2、3)の前記角速度(v2、v3)を低減させ、
a)前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度の差分を表す値を計算するステップと、
b)補正値(y)が、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す前記値に比例するように、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の前記角加速度(a2、a3)の間の前記差分を表す前記値にゲイン値(G)を乗算することにより、前記補正値(y)を計算するステップと、
c)前記車軸(4)の各車輪(2、3)に関して、ステップb)で計算された前記補正値(y)に応じて関連する前記制動手段(6)によって加えられる前記牽引力を修正するように、関連する前記制動手段(6)を制御することであって、それによって、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す前記値を低減するため、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)のうちから選択された第1の車輪(2、3)に加えられる前記牽引力を増加させ、前記第1の車輪(2、3)とは異なる第2の車輪(2、3)に加えられる前記牽引力を減少させる、制御するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップa)で計算された、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す前記値がゼロになるまで、ステップa)からc)が反復されることを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
ステップa)の間、
− 前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)のそれぞれに関する前記車輪(2、3)の角加速度値(a2、a3)が、受信され、
− 前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の計算値の前記差分が計算される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の制御方法
【請求項4】
ステップa)の間、
− 前記車軸(4)の左車輪(2)と右車輪(3)のそれぞれに関して、前記車輪(2、3)の角速度値(v2、v3)が受信され、
− 受信された前記角速度値(v2、v3)の間の前記差分(ε)の値が計算され、
− 前記角速度値(v2、v3)の間の前記差分の微分値が、推定され、前記微分値は、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す値に相当することを特徴とする、請求項1または2に記載の制御方法
【請求項5】
自動車(1)の前車軸(4)に適用されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
走行中の自動車(1)の制動時の、片効きを制御する装置(8)であって、
前記自動車(1)は少なくとも1つの車軸(4)を備え、前記車軸(4)は左車輪(2)と右車輪(3)を備え、前記車軸(4)の各車輪(2、3)は角速度(v2、v3)と角加速度(a2、a3)を規定し、
前記車軸(4)の各車輪(2、3)は、制動手段(6)と協働し、それによって前記制動手段(6)が関連する前記車輪(2、3)に牽引力を加えて関連する前記車輪(2、3)の前記角速度(v2、v3)を低減させ、
− 前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の差分を表す値を計算可能な計算手段(12)であって、
補正値(y)が、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す前記値に比例するように、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の前記角加速度(a2、a3)の間の前記差分を表す前記値にゲイン値(G)を乗算することにより、前記補正値(y)も計算可能な計算手段(12)と、
− 前記車軸(4)の各車輪(2、3)に関して、前記計算手段(12)によって計算された前記補正値(y)に応じて関連する前記制動手段(6)によって加えられる前記牽引力を修正するように、関連する前記制動手段(6)を制御する制御手段(14)であって、それによって、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)の間の前記角加速度(a2、a3)の前記差分を表す前記値を低減させるため、前記車軸(4)の前記左車輪(2)と前記右車輪(3)のうちから選択された第1の車輪(2、3)に加えられる前記牽引力を増加させ、前記第1の車輪(2、3)とは異なる第2の車輪(2、3)に加えられる前記牽引力を減少させる、制御手段(14)と
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項に記載の制御装置(8)を備える自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の自動車の制動時の、片効き(lateral pulling)を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者が制動命令を発すると、ブレーキを介して車両の各車輪に牽引力が加わる。
【0003】
制動が直線的であるためには、牽引力によって生み出されたモーメントが、自動車の各車軸に関して均衡していることが相対的に重要である。
【0004】
しかし、所与の車軸に関して、各車輪に加わる牽引力がある程度非対称であることは、よくあることである。こうした非対称によって、自動車の車軸の各車輪によって生み出されたモーメントに差分が生じ、これが、片効き、言い換えると自動車のヨーイングにつながる横加速度につながり得る。
【0005】
小型自動車、具体的にはホイールベースの短い小型自動車は特に、制動時にヨーイングの影響を受けやすい。
【0006】
したがって、自動車の車軸の制動時に片効きを制御することは、相対的に重要である。
【0007】
例えば、自動車のヨーを測定するために自動車の状態センサを使用し、自動車の各車輪の牽引力に作用を加えることによってこのヨー効果に対抗することが知られている。
【0008】
しかしこうした解決法は、比較的緩慢であるし、この補正は、車両の運転者によって知覚され得るものである。知覚されるということは、例えば制御を失う感覚がするなど、通常、ステアリングを妨害する効果を有する。
【0009】
したがって、制動時の片効きをより迅速に制御する方法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
これを達成するため、本発明の目的は、走行中の自動車の制動時の、片効きを制御する方法であって、
自動車は少なくとも1つの車軸を備え、車軸は左車輪と右車輪を備え、車軸の各車輪は角速度と角加速度を規定し、
車軸の各車輪は、例えば油圧式ディスクブレーキもしくはドラムブレーキ、または任意の他のタイプのブレーキといった制動手段と協働し、それによって制動手段が関連する車輪に牽引力を加えて関連する車輪の角速度を低減させ、
a)車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値を計算するステップと、
b)少なくとも、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値に応じて、補正値を計算するステップと、
c)車軸の各車輪に関して、ステップb)で計算された補正値に応じて関連する制動手段によって加えられる牽引力を修正するように、関連する制動手段を制御することであって、それによって、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値を低減させるため、車軸の左車輪と右車輪のうちから選択された第1の車輪に加えられる牽引力を増加させ、第1の車輪とは異なる第2の車輪に加えられる牽引力を減少させる、制御するステップと
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0011】
こうして、運転者が知覚する前に車両の片効きを補正し得る、相対的に迅速な制御方法が実現され得る。
【0012】
具体的には、補正値は、補正ゲインによって増幅された、車輪の角減速度の間の差分の推定値であってよい。
【0013】
限定しないが有利には、ステップa)で計算された、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値がゼロになるまで、ステップa)からc)が反復され得る。角加速度の間の差分を表す値はまた、比較的ゼロに近くてもよい。
【0014】
補正は、制動の開始時から継続して作動しているので、差分を表す値は、当然ゼロに向かう。
【0015】
具体的には、差分を表す値は、アクチュエータ側であれセンサ側であれ、この補正システムの感度に直接関係している。
【0016】
こうして、角加速度の間の差を表す値は、ゼロに近い値に向かって急速に収束し得、それによって片効きは相対的に効果的に補正され得る。
【0017】
限定しないが有利には、ステップa)の間、
− 車軸の左車輪と右車輪のそれぞれに関する車輪の角加速度値が、例えば車輪の角加速度用センサ、車輪の角速度に適用されたハイパスフィルタもしくはスプリッターフィルタ、または角加速度を評価する任意の他の手段を介して受信され得、
− 左車輪と右車輪の間の角加速度の計算値の差分が計算され得る。
【0018】
こうして、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の違いが、相対的に迅速に取得され得る。
【0019】
限定するものではないが、好適な実施形態によると、ステップa)の間、
− 車軸の左車輪と右車輪のそれぞれに関して、例えば車輪に関連する角速度センサによって車輪の角速度値が受信され得、
− 受信された角速度値の間の差分値が計算され得、
− 角速度値の間の差分の微分値が、ハイパスフィルタ、スプリッターフィルタ、または任意の他の微分計算手段によって推定され得、前記微分値は、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値に相当する。
【0020】
限定しないが有利には、補正値は、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値に比例し得る。このように、補正値は、例えば少なくとも1/2という値を含む例えば定数であるゲインに、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分値を乗算することによって求められ得る。
【0021】
限定しないが有利には、この制御方法は、自動車の前車軸に適用され得る。こうして補正された制動は、相対的に信頼できるものであり得る。
【0022】
本発明は、走行中の自動車の制動時の、片効きを制御する装置であって、
自動車は少なくとも1つの車軸を備え、車軸は左車輪と右車輪を備え、車軸の各車輪は角速度と角加速度を規定し、
車軸の各車輪は、制動手段と協働し、それによって制動手段が関連する車輪に牽引力を加えて前記関連する車輪の角速度を低減させ、
− 車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値を計算可能な計算手段であって、
− 少なくとも、車軸の左車輪と右車輪の角加速度の間の差分を表す前記値に応じて、補正値もまた計算可能な計算手段と、
− 車軸の各車輪に関して、計算手段によって計算された補正値に応じて関連する制動手段によって加えられる牽引力を修正するように、関連する制動手段を制御する制御手段であって、それによって、車軸の左車輪と右車輪の間の角加速度の差分を表す値を低減するため、車軸の左車輪と右車輪のうちから選択された第1の車輪に加えられる牽引力を増加させ、第1の車輪とは異なる第2の車輪に加えられる牽引力を減少させる、制御手段と
を含むことを特徴とする、装置にもまた関する。
【0023】
本発明はまた、上記の制御装置を備える自動車にも関する。
【0024】
ここで、非限定的な添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による自動車の図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、制御方法の進行の要約図である。
図3】本発明の第2の実施形態による、制御方法の進行の要約図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本書では、「前」、「後」、「上流」、及び「下流」の用語は、車両の前方及び後方の方向を示す。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、車両の長手軸(前から後)、横軸、及び垂直軸に対応する。
【0027】
「ほぼ水平」、「ほぼ長手方向」、または「ほぼ垂直」、の用語は、水平、長手方向、または垂直の方向/面に対して最大で±20°、最大で10°、または最大で5°の角度を形成する方向/面を意味する。
【0028】
「ほぼ平行」、「ほぼ垂直」、または「ほぼ直角」という用語は、平行、垂直、または直角である方向から、最大で±20°、最大で10°、または最大で5°の角度で逸脱している方向/角度を意味する。
【0029】
図1を参照すると、自動車1は、前車軸4及び後車軸4’を含む。各車軸4、4’は、左車輪2及び右車輪3を含む。
【0030】
自動車の各車輪2、3は、ここでは油圧作動式のディスクブレーキ6である、制動手段6と協働する。
【0031】
各車輪2、3は、車両の走行中、角速度v2、v3及び角加速度a2、a3を規定する。
【0032】
図2を参照すると、制動するために、運転者は自動車(図示せず)のブレーキペダルを作動させる。このとき、制動命令が制動制御装置10に対して送られる。
【0033】
次いで、制動制御装置10は、各車輪2、3に関して加えられる牽引力の値(ここではNmで表す)を計算する。
【0034】
この牽引力の計算値は、ここで各車輪2、3の制動手段6に送信され、次いで制動手段6は、関連する車輪2、3に対して対応する牽引力を加える。
【0035】
自動車1の片効き制御装置8は、ここで前車軸4の各車輪2、3の角速度値v2、v3を受信する。
【0036】
本書では、片効き制御装置8によって実装される片効きの制御方法は、前車軸4のみに適用される。実際、自動車1の制動時には、制動の約80%が前車軸4に対して加えられている。しかし、本方法はまた、後車軸4’に対しても適用され得るし、両車軸4、4’に対して同時にも実装され得る。
【0037】
片効き制御装置8は、ここではマイクロプロセッサ12である計算手段12を含む。マイクロプロセッサ12は、前車軸4の左車輪2及び右車輪3からそれぞれ、例えばrad/sまたは°/sで表される角速度値v2、v3を受信する。
【0038】
図2を参照すると、計算手段12は次に、受信した角速度値v2とv3の間の差分の値εを計算する。この値εは、以下の等式を用いて求められ得る。
ε=v2−v3
【0039】
車輪2、3のパラメータで(例えば車輪2、3の半径値に応じて)この差分値を補正することによって、角速度の差分が長手方向速度の差分の近似値と容易に相関関係を有し得、それによって、変換ゲインを用いて、εがm/sで表される値と等しいと考えられ得ることは、当業者には明らかである。
【0040】
ここで、計算手段12は、差分値εの微分値を推定する。
【0041】
この微分値dε/dtは、ハイパスフィルタ9を適用することによって求められ得る。
【0042】
言い換えれば、周波数フィールドに移行することによって差分値εの微分値を推定するために、以下のハイパスフィルタ9が適用される。
s/(1+τs)
ここでは、
− τは回路の時定数であり、
− sは、ラプラス変換の変数である。
【0043】
ハイパスフィルタ(1/τ)のカットオフ周波数は、フィルタリングされた微分値が、補正フィルタの有効性のために所望の通過帯域と適合性のある周波数フィールド内に存在するようにして、調整される。このことは、当業者には良く知られている。
【0044】
微分動作は、0からカットオフ周波数の中央値までで決定される。
【0045】
制動システムのケースでは、制動システムの通過帯域は、10Hzのオーダーである。ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、20Hzのオーダー、またはそれよりも上である。
【0046】
より一般的には、こうしたハイパスフィルタ9またはスプリッターフィルタ9の使用は、当業者に良く知られている。
【0047】
ここで計算手段12は、結果として差分値εの微分値を得る。この微分値は、車軸の右車輪と左車輪の間の角加速度の差分を表す値に相当する。
【0048】
図3に示す代替的な実施形態では、計算手段12は、前車軸の車輪2、3の角速度値v2、v3を受信し得、次いで車軸4の各車輪2、3に関して、角速度値v2、v3の微分値を推定し得る。それによって、各車輪2、3のそれぞれに関する角加速度a2、a3が求められる。
【0049】
微分値は、上記のように、各車輪2、3の各角速度値v2、v3に対してハイパスフィルタ9を適用することによっても求められ得る。
【0050】
この微分値はまた、前車軸の各車輪2、3に設置された角加速度センサによって直接送信されてもよい。
【0051】
ここで、計算手段12は、前車軸4の車輪2と3の間の角加速度値の差分a2−a3を計算する。この差分は、車軸4の右車輪2と左車輪3の間の角加速度の差分を表す値に相当する。
【0052】
図1、2及び3を参照すると、片効き制御装置8の計算手段12は、補正値yを計算する。各車輪2、3に関する補正値yは、ゲイン値Gに、車軸4の左車輪2と右車輪3の間の角加速度の差分を表す値を乗算することによって求められる。補正値yは、bar/(m/s)で表される値に等しいと考えられる。
【0053】
第1の概算として、ゲイン値Gは、1/2に等しい。しかし、ゲイン値Gは同時に、当業者に良く知られた制御パラメータを含んでいなければならない。
【0054】
ここで、前車軸4の各車輪2、3への制動手段6に対する補正値yの適用を制御するため、補正値yは、ここではコミュニケーションバス14である制御手段14によって、制動制御装置10に送信される。
【0055】
補正値yは次に、正の値+yとして左車輪2用に、負の値−yとして右車輪3用に、制動制御装置10に送信される。この補正値+y、−yは、次に、前車軸4の左車輪2と右車輪3の間の角加速度の差分を補正するため、各車輪2、3に加えられる牽引力に対して加算される。
【0056】
代替形態では、補正値yはまた、制動制御装置に対して一度だけ送信されて、制動制御装置が、正の補正値+yを左車輪2に加えられる牽引力に加算し、負の補正値−yを右車輪3に加えられる牽引力に加算しても良い。
【0057】
運転者がブレーキ命令を適用している限り、且つ車軸4の左の車輪2と右の車輪3の間の角加速度の差分を表す値がゼロでない限り、補正値は計算される。
【0058】
言い換えると、前車軸4の左車輪2と右車輪3の間の角加速度の差分がゼロまたはごく少量にならない限り、本書に記載の方法は、片効き制御装置8によって反復される。例えば、片効き制御方法を停止するための閾値は、例えばほぼゼロに近い値、例えば、車軸4の車輪2、3に加えられる牽引力の中央値の2%未満として規定され得る。
図1
図2
図3