特許第6717838号(P6717838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライフロボティクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000002
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000003
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000004
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000005
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000006
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000007
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000008
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000009
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000010
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000011
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000012
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000013
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000014
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000015
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000016
  • 特許6717838-直動伸縮機構 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717838
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】直動伸縮機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/02 20060101AFI20200629BHJP
   F16G 13/20 20060101ALI20200629BHJP
   B25J 18/02 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   F16H19/02 F
   F16G13/20
   F16H19/02 D
   B25J18/02
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-539220(P2017-539220)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2016076472
(87)【国際公開番号】WO2017043582
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-179213(P2015-179213)
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510341215
【氏名又は名称】ライフロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尹 祐根
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/152265(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/070915(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/137171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/02
B25J 18/02
F16G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能に連結された平板形状の複数の第1連結コマと、
底面側において屈曲可能に連結された溝形状の複数の第2連結コマとを具備し、
先頭の前記第2連結コマは先頭の前記第1連結コマと結合され、
前記第1、第2連結コマは互いに接合されたとき直線的に硬直し、分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記第1連結コマは平板形状の本体部を有し、前記本体部の前方両側には一対の軸受け部が設けられ、前記本体部の後方中央には単一の軸受け部が設けられ、前記前方の一対の軸受け部と前記後方の軸受け部とは軸支され、
前記連結された第1連結コマが直線的に並んだ姿勢から表面側への屈曲を制限するために、前記前方の一対の軸受け部の間の前記本体部には受け部として窪みが形成され、前記後方中央の軸受け部の表面側には前記受け部に嵌め込まれる突起部が後方に張り出して設けられる、直動伸縮機構。
【請求項2】
前記接合された第1、第2連結コマを前後移動自在に支持するために前記接合された第1、第2連結コマを挟圧する複数のローラを備えた射出部と、
前記射出部の後方に配設され、前記第1連結コマに係合して前記第1連結コマを前後に移動するためのドライブギアと、
前記第1連結コマを前記ドライブギアに押圧するためのガイドローラとをさらに備える請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項3】
前記第1連結コマの前記前後の軸受け部及び前記突起部はそれら表面が前記本体部の表面と単一の平坦面をなすよう形成される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項4】
前記第1連結コマの前方の軸受け部の軸孔にシャフトが挿入され、前記シャフトの先端は前記後方の軸受け部内で締結される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項5】
前記第1連結コマの前方の軸受け部の軸孔と前記後方の軸受け部の軸孔とが連通する幅方向に貫通する貫通孔にシャフトが挿入される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項6】
前記第2連結コマの底板の前方両側には一対の軸受け部が設けられ、前記第2連結コマの底板の後方中央には単一の軸受け部が設けられ、前記前方の一対の軸受け部と前記後方の軸受け部とは軸支される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項7】
前記第1連結コマは前記第2連結コマと同一長で構成され、前記第1連結コマの先端が前記第2連結コマの先端に対して1/2長変位するよう前記先頭の第1連結コマは前記先頭の第2連結コマに対して結合される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項8】
前記第1連結コマの長さは前記第2連結コマの長さより短く、前記第1連結コマの先端が前記第2連結コマの先端に対して前記第1連結コマの長さの1/2長変位するよう前記先頭の第1連結コマは前記先頭の第2連結コマに対して結合される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項9】
屈曲可能に連結された複数の第1連結コマと、
屈曲可能に連結された複数の第2連結コマと、を具備し、
先頭の前記第2連結コマは先頭の前記第1連結コマと結合され、
前記第1、第2連結コマは互いに接合されたとき直線的に硬直し、分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記第1連結コマは本体部を有し、前記本体部の前方には少なくとも一の第1軸受け部が設けられ、前記本体部の後方には少なくとも一の第2軸受け部が設けられ、前記前方の第1軸受け部と前記後方の第2軸受け部とは軸支され、
前記連結された第1連結コマが直線的に並んだ姿勢から表面側への屈曲を制限するために、前記後方の第2軸受け部の表面側には後方に張り出す突起部が設けられ、前記本体部には前記突起部を受ける受け部として窪みが形成される、直動伸縮機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は直動伸縮機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多関節ロボットアーム機構が産業用ロボットなどさまざまな分野で用いられている。このような多関節ロボットアーム機構には、例えば、直動伸縮関節が組み合わされて装備されている。直動伸縮関節を構成するアーム部は、例えば、同一形状を有する複数のコマを列状に連結した2種類の連結コマ列の接合で構成される。2種類の連結コマ列を接合することで硬直状態が形成され一定の剛性を有する柱状体が構成される。直動伸縮関節のモータが順回転すると柱状体となったアーム部が射出部から送り出され、逆回転するとアーム部は引き戻される。射出部の後方では連結コマ列の接合状態は解除され、硬直状態から屈曲状態に回復し、その状態で本体内部に収容される。
【0003】
この直動伸縮関節の多関節ロボットアーム機構への採用は肘関節部を不要とし、容易に特異点を解消することができるので今後非常に有益な構造である。
【0004】
直動伸縮関節で重要なのは2種類の連結コマ列を接合してその硬直状態の剛性を高めること、それとともに連結コマ列の平滑な前後への送り出しと引き戻しの動作を実現することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、直動伸縮機構を構成する2種類の連結コマ列を接合してその硬直状態の剛性を高めること、それとともに連結コマ列の平滑な送り出しと引き戻しの動作を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る直動伸縮機構は、屈曲可能に連結された平板形状の複数の第1連結コマと、底面側において屈曲可能に連結された溝形状の複数の第2連結コマとを有する。先頭の第2連結コマは先頭の第1連結コマと結合される。第1、第2連結コマは互いに接合されたとき直線的に硬直し、分離されたとき屈曲状態に復帰する。第1連結コマは平板形状の本体部を有する。本体部の前方両側には一対の軸受け部が設けられる。本体部の後方中央には単一の軸受け部が設けられる。前方の一対の軸受け部と後方の軸受け部とは軸支される。連結された第1連結コマが直線的に並んだ姿勢から表面側への屈曲を制限するために、前方の一対の軸受け部の間の本体部には受け部として窪みが形成され、後方中央の軸受け部の表面側には受け部に嵌め込まれる突起部が後方に張り出して設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る直動伸縮関節を備えたロボットアーム機構の外観斜視図である。
図2図2は、図1のロボットアーム機構の内部構造を断面方向から見た図である。
図3図3は、図1のロボットアーム機構の構成を図記号表現により示す図である。
図4図4は、図1のアーム部の側面図、上方平面図、下方平面図である。
図5図5は、図1の第1連結コマの側面図である。
図6図6は、図1の第1連結コマを後方下側から見た斜視図である。
図7図7は、図1の第1連結コマを前方下側から見た斜視図である。
図8図8は、図1の第1連結コマを前方上側から見た斜視図である。
図9図9は、図1の第1連結コマを後方上側から見た斜視図である。
図10図10は、図1の第1連結コマ列の側面図である。
図11図11は、図10のA−A断面図である。
図12図12は、図1の第2連結コマの側面図である。
図13図13は、図1の第2連結コマを後方上側から見た斜視図である。
図14図14は、図1の第2連結コマを前方上側から見た斜視図である。
図15図15は、図1の第1連結コマ列と射出部のローラとの位置関係を示す側面図である。
図16図16は、図1の第2連結コマに対する第1連結コマの長さを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る直動伸縮機構を説明する。なお、本実施形態に係る直動伸縮機構は、単独の機構(関節)として使用することができる。以下の説明では、複数の関節部のうち一の関節部が本実施形態に係る直動伸縮機構で構成されたロボットアーム機構を例に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
図1は、本実施形態に係るロボットアーム機構の外観斜視図である。ロボットアーム機構は、複数、ここでは6つの関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6を有する。複数の関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6は基台1から順番に配設される。各関節部の間は、リンクにより接続される。一般的に、第1、第2、第3関節部J1,J2,J3は根元3軸と呼ばれ、第4、第5、第6関節部J4,J5,J6はハンド装置の姿勢を変化させる手首3軸と呼ばれる。手首部は、手首3軸を構成する第4、第5、第6関節部J4,J5,J6とこれら関節部の間を接続するリンクとを有する。根元3軸を構成する関節部J1,J2,J3の少なくとも一つは直動伸縮関節である。ここでは第3関節部J3が直動伸縮関節部、特に伸縮距離の比較的長い関節部として構成される。アーム部5は直動伸縮関節部J3(第3関節部J3)の伸縮部分を表している。
【0010】
第1関節部J1は基台1の接地面に対して垂直に支持される第1回転軸RA1を中心としたねじり関節である。第2関節部J2は第1回転軸RA1に対して垂直に配置される第2回転軸RA2を中心とした曲げ関節である。第3関節部J3は第2回転軸RA2に対して垂直に配置される第3軸(移動軸)RA3を中心として直線的にアーム部5が伸縮する関節である。
【0011】
第4関節部J4は第3移動軸RA3と略一致する第4回転軸RA4を中心としたねじり関節である。第5関節部J5は第4回転軸RA4に対して垂直に配置される第5回転軸RA5を中心とした曲げ関節である。第6関節部J6は第4回転軸RA4と第5回転軸RA5とに対して垂直に配置される第6回転軸RA6を中心とした曲げ関節である。
【0012】
基台1から順番に第1、第2、第3関節部J1,J2,J3が配設される。基台1と第1関節部J1との間にはリンクとしての本体フレーム2が、第1関節部J1と第2関節部J2との間にはリンクとしての回転フレーム3が、第2関節部J2と第3関節部J3との間にはリンクとしての起伏フレーム4がそれぞれ介在される。
【0013】
具体的には、基台1には本体フレーム2の一端が接続される。本体フレーム2の他端は第1関節部J1の固定部に接続される。第1関節部J1の固定部には、第1関節部J1の可動部が回転軸RA1を中心に回転自在に取り付けられる。第1関節部J1の可動部には、回転フレーム3の一端が接続される。第1関節部J1が回転するとき、第1関節部J1の固定部に対して可動部が回転軸RA1を中心に回転する。これにより可動部に接続された回転フレーム3はそれよりも前方部分とともに回転軸RA1を中心に回動、つまり左右に旋回動作する。なお、第1関節部J1の固定部は基台に固定されてもよい。この場合、第1関節部J1の可動部に本体フレーム2の他端と回転フレーム3の一端とが接続される。第1関節部J1の回転するとき、可動部に接続された本体フレーム2は回転軸RA1を中心に回転し、回転フレーム3はそれよりも前方部分とともに回転軸RA1を中心に旋回する。
【0014】
回転フレーム3の他端には第2関節部J2の固定部が接続される。第2関節部J2の固定部に対して、第2関節部J2の可動部が回転軸RA2を中心に回転自在に取り付けられる。第2関節部J2の可動部には、起伏フレーム4の一端が接続される。第2関節部J2が回転するとき、第2関節部J2の固定部に対して可動部が回転軸RA2を中心に回転する。これにより可動部に接続された起伏フレーム4はそれよりも前方部分とともに回転軸RA2を中心に垂直方向に起伏する。
【0015】
起伏フレーム4の他端には第3関節部J3の固定部(射出部58)が接続される。第3関節部J3の固定部には、第3関節部J3の可動部(アーム部5)が移動軸RA3に沿って伸縮自在に取り付けられている。第3関節部J3の可動部には手首部が取り付けられる。第3関節部J3が伸縮するとき、第3関節部J3の固定部に対して可動部(アーム部5)が伸縮する。これにより、可動部に接続された手首部は移動軸RA3に沿って直線的に移動する。
【0016】
手首部において、第3関節部J3の可動部から順番に、第4、第5、第6関節部J4,J5,J6が配設される。第3関節部J3と第4関節部J4との間にはリンクとしてのフレーム6が、第4関節部J4と第5関節部J5との間にはリンクとしてのフレーム7が、第5関節部J5と第6関節部J6との間にはリンクとしてのフレーム8がそれぞれ介在される。
【0017】
具体的には、フレーム6の一端は第3関節部J3の可動部(アーム部5)に接続される。フレーム6の他端には第4関節部J4の固定部が接続される。第4関節部J4の固定部に対して、第4関節部J4の可動部が回転軸RA4を中心に回転自在に取り付けられる。第4関節部J4の可動部には、フレーム7の一端が接続される。第4関節部J4が回転するとき、第4関節部J4の固定部に対して可動部が回転軸RA4を中心に回転する。これにより可動部に接続されたフレーム7はそれよりも前方部分とともに回転軸RA4を中心に回転する。
【0018】
フレーム7の他端には第5関節部J5の固定部が接続される。第5関節部J5の固定部に対して、第5関節部J5の可動部が回転軸RA5を中心に回転自在に取り付けられる。第5関節部J5の可動部には、フレーム8の一端が接続される。第5関節部J5が回転するとき、第5関節部J5の固定部に対して可動部が回転軸RA5を中心に回転する。これにより可動部に接続されたフレーム8はそれよりも前方部分とともに回転軸RA5を中心に垂直方向に起伏する。
【0019】
フレーム8の他端には第6関節部J6の固定部が接続される。第6関節部J6の固定部に対して、第6関節部J6の可動部が回転軸RA6を中心に回転自在に取り付けられる。第6関節部J6の可動部には、ハンド装置を取り付けるためのアダプタが設けられている。第6関節部J6が回転するとき、第6関節部J6の固定部に対して可動部が回転軸RA6を中心に回転する。これにより可動部のアダプタに取り付けられたハンド装置が回転軸RA6を中心に旋回する。
【0020】
上記の通り手首部の第6関節部J6の可動部に設けられたアダプタに取り付けられたハンド装置は、第1、第2、第3関節部J1,J2,J3により任意位置に移動され、第4、第5、第6関節部J4,J5,J6により任意姿勢に配置される。特に第3関節部J3のアーム部5の伸縮距離の長さは、基台1の近接位置から遠隔位置までの広範囲の対象にハンド装置を到達させることを可能にする。第3関節部J3はそれを構成する直動伸縮機構により実現される直線的な伸縮動作とその伸縮距離の長さとが特徴的である。
【0021】
根元3軸を構成する第1、第2、第3関節部J1,J2,J3は複数のカバー12,13,14により覆われる。本体カバー12は円筒形状に成形される。本体カバー12は、その円筒の中心軸が回転軸RA1に一致するように、一端が基台1に固定され他端が第1関節部J1の固定部に固定される。これにより、基台1から第1関節部J1の固定部にかけて配設されている機構(本体フレーム2)が本体カバー12により覆われる。
【0022】
回転カバー13は、楕円蓋状に成形される。回転カバー13は、その一端が第1関節部J1の可動部に固定され、第2関節部J2の固定部に固定される。これにより、回転カバー13は、第1関節部J1の可動部から第2関節部J2の固定部にかけて配設されている機構が回転カバー13により覆われる。
【0023】
起伏カバー14は、入れ子構造に構成された4つのカバー21,22,23,24からなる。4つのカバー21,22,23,24のうち後方のカバー24は、その後方部分が本体カバー12と連続する円筒形状に成形され、前方部分が鞍形形状に成形されている。前方のカバー21は、その前方部分が円筒形状に成形され、後方部分が鞍形形状に成形されている。カバー22,23各々は鞍形形状に成形されている。後方カバー24は、その後端が第1関節部J1の可動部に固定されている。カバー21,22,23は、第2関節部J2をその回転軸RA2に垂直な側方から跨いだ状態で第2関節部J2の可動部に装着される。アーム部5が下向きになるよう第2関節部J2が回転するとき、第2関節部J2の可動部に従動して起伏カバー14のカバー24からカバー21,22,23が順番に引き出される。アーム部5が上向きになるよう第2関節部J2が回転するとき、第2関節部J2の可動部に従動してカバー14のカバー24にカバー23,22,21が順番に収納される。これにより、第2関節部J2の可動部から第3関節部J3の固定部までに配設されている機構(起伏フレーム4)とともに、第1関節部J1の可動部から第3関節部J3の固定部までの、アーム部5の搬送経路が起伏カバー14により覆われる。
【0024】
起伏カバー14は、本体カバー12とともに連続する中空構造を形成する。この中空部分には、アーム部5の後方部分が収納される。アーム部5が伸長するとき、アーム部5は起伏カバー14の先端の開口から外に向かって送り出される。アーム部5が収縮するとき、アーム部5は起伏カバー14の先端の開口から内に向かって引き戻され、中空部分に収納される。
【0025】
手首3軸を構成する第4、第5、第6関節部J4,J5,J6はそれぞれカバー16,17,18により覆われる。カバー16は、一端に開口を有する箱形状に成形されている。カバー16は、開口が後方に向くように第4関節部J4の可動部又はフレーム7に固定される。これにより、第4関節部J4とその前後のリンク(フレーム6,7)と第5関節部J5の固定部とがカバー16によりを覆われる。第5関節部J5を覆うカバー17と第6関節部J6を覆うカバー18とは結合されている。カバー17は、円蓋状に成形される。カバー18は、円筒形状に成形される。カバー17からカバー18にかけて、フレーム8の形状にあわせたカバーが連続している。これらカバー17,18は第5関節部J5の可動部に対して固定される。これにより、第5関節部J5の可動部とフレーム8と第6関節部J6とは、カバー17、18により覆われる。
【0026】
図2は、図1のロボットアーム機構の内部構造を示す斜視図である。直動伸縮機構はアーム部5と射出部58とを有する。アーム部5は第1連結コマ列51と第2連結コマ列52とを有する。第1連結コマ列51は列状に連結された複数の第1連結コマ53からなる。第1連結コマ53は略平板形に構成される。前後の第1連結コマ53は、互いの端部箇所においてシャフトにより列状に連結される。第1連結コマ列51は内側に屈曲自在に、外側に屈曲不可に構成される。第2連結コマ列52は列状に連結された複数の第2連結コマ54からなる。例えば、第2連結コマ54は横断面U字形状の溝状体に構成される。前後の第2連結コマ54は、互いの底面端部箇所においてシャフトにより列状に連結される。第2連結コマ列52は内側に屈曲自在に、外側に屈曲不可に構成される。第1、第2連結コマ53、54の構造については後述する。第1連結コマ列51のうち先頭の第1連結コマ53と、第2連結コマ列52のうち先頭の第2連結コマ54とは結合コマ55により接続される。例えば、結合コマ55は第2連結コマ54と第1連結コマ53とを合成した形状を有している。
【0027】
射出部58は、第1、第2連結コマ列51,52を接合して柱状体を構成するとともに、その柱状体を上下左右に支持する。射出部58は、複数のローラ59が角筒形状のフレーム60に支持されてなる。複数のローラ59は、フレーム60により、アーム部5を挟んで上下左右に分散されている。例えば、アーム部5を上方から支持する複数のローラ59はアーム部5を下方から支持する複数のローラ59からアーム部5の厚みと略等価又はアーム部5の厚みよりも若干短い距離を隔てられている。アーム部5を上方から支持する複数のローラ59は、第1連結コマ53の長さと略等価な間隔を隔ててアーム中心軸に沿って配列される。同様に、アーム部5を下面から支持する複数のローラ59は第2連結コマ54の長さと略等価な間隔を隔ててアーム中心軸に沿って配列される。射出部58の後方には、ガイドローラ57とドライブギア56とが第1連結コマ列51を挟んで対向するように設けられる。ドライブギア56は減速器を介してステッピングモータ(図示しない)に接続される。第1連結コマ53の背面には連結方向に沿ってリニアギア500が形成されている。複数の第1連結コマ53が直線状に整列されたときに隣合うリニアギア500は直線状につながって、長いリニアギアを構成する。ドライブギア56は、直線状のリニアギアにかみ合わされる。直線状につながったリニアギアはドライブギア56とともにラックアンドピニオン機構を構成する。
【0028】
アーム部5が伸長するとき、ドライブギア56が順回転し、第1連結コマ列51はガイドローラ57により、アーム中心軸と平行な姿勢となって、射出部58の内部に誘導される。第1連結コマ列51の移動に伴い、第2連結コマ列52は射出部58の後方に配置されたガイドレール(図示しない)により射出部58に誘導される。射出部58に誘導された第1、第2連結コマ列51,52は、上下に配設された複数のローラ59により互いに押圧(狭圧)される。これにより、第2連結コマ列52に第1連結コマ列51が接合し、第1、第2連結コマ列51,52は柱状の棒体(以下、柱状体又はアーム部5という)を構成する。第1、第2連結コマ列51,52の接合による柱状体が射出部58により堅持されることで、第1、第2連結コマ列51,52の接合状態が維持される。第1、第2連結コマ列51,52の接合状態が維持されているとき、第1、第2連結コマ列51,52の屈曲は互いに拘束される。それにより第1、第2連結コマ列51,52の接合による柱状体は、一定の剛性を備える。この柱状体は第2連結コマ54が第1連結コマ53とともに全体として様々な断面形状の筒状体に構成される。筒状体とは上下左右が天板、底板及び両側板で囲まれ、前端部と後端部とが開放された形状として定義される。第1、第2連結コマ列51,52の接合による柱状体は、結合コマ55が始端となって、第3移動軸RA3に沿って直線的に起伏カバー14の開口から外に向かって送り出される。
【0029】
アーム部5が収縮するとき、ドライブギア56が逆回転し、ドライブギア56と係合している第1連結コマ列51が本体カバー12と起伏カバー14とにより形成された中空部分に引き戻される。第1連結コマ列51の移動に伴って、柱状体が起伏カバー14の開口から内に向かって引き戻される。引き戻された柱状体は射出部58後方で分離される。例えば、柱状体を構成する第1連結コマ列51はガイドローラ57とドライブギア56とにより水平姿勢を維持し、柱状体を構成する第2連結コマ列52は重力により下方に引かれ、それにより第2連結コマ列52と第1連結コマ列51とは互いに離反される。離反された第1、第2連結コマ列51,52はそれぞれ屈曲可能な状態に復帰する。屈曲可能な状態に復帰した第1、第2連結コマ列51,52は、ともに同じ方向(内側)に屈曲しながら、本体カバー12の内部の収納部に収納される。このとき、第1連結コマ列51は第2連結コマ列52に略平行な状態で収納される。
【0030】
図3は、図1のロボットアーム機構を図記号表現により示す図である。ロボットアーム機構において、根元3軸を構成する第1関節部J1と第2関節部J2と第3関節部J3とにより3つの位置自由度が実現される。また、手首3軸を構成する第4関節部J4と第5関節部J5と第6関節部J6とにより3つの姿勢自由度が実現される。
【0031】
ロボット座標系Σbは第1関節部J1の第1回転軸RA1上の任意位置を原点とした座標系である。ロボット座標系Σbにおいて、直交3軸(Xb、Yb,Zb)が規定されている。Zb軸は第1回転軸RA1に平行な軸である。Xb軸とYb軸とは互いに直交し、且つZb軸に直交する軸である。手先座標系Σhは、手首部に取り付けられたハンド装置の任意位置(手先基準点)を原点とした座標系である。例えば、ハンド装置が2指ハンドのとき、手先基準点(以下、単に手先という。)の位置は2指先間中央位置に規定される。手先座標系Σhにおいて、直交3軸(Xh、Yh,Zh)が規定されている。Xh軸は第6回転軸RA6に平行な軸である。Xh軸は、手先の前後軸として与えられる。Yh軸とZh軸とは互いに直交し、且つXh軸に直交する軸である。Yh軸は、手先の左右軸として与えられる。手先姿勢とは、手先座標系Σhのロボット座標系Σbに対する直交3軸各々周りの回転角(Xh軸周りの回転角(ヨー角)αh、Yh軸周りの回転角(ピッチ角)βh、Zh軸周りの回転角(ロール角)γhとして与えられる。
【0032】
接地面BP上に基台1が設置されている。基台1に対して本体フレーム2の後端部分が垂直に設けられている。本体フレーム2の先端部分には第1関節部J1の固定部が取り付けられている。第1関節部J1は、回転軸RA1を中心としたねじり関節として構成されている。回転軸RA1は基台1が設置される接地面BPに垂直に配置される。
【0033】
第1関節部J1の可動部には、第1関節部J1と第2関節部J2との間を接続するリンクとしての回転フレーム3の後端部分が取り付けられている。回転フレーム3の先端部分には、第2関節部J2の固定部が取り付けられている。第2関節部J2は回転軸RA2を中心とした曲げ関節として構成される。回転軸RA2は、第1関節部J1の回転軸RA1に対して垂直な向きに設けられる。さらに第2関節部J2は、第1関節部J1に対して、回転軸RA1の方向(Zb軸方向)と回転軸RA1に垂直な方向との2方向に関してオフセットされる。第2関節部J2が第1関節部J1に対して上記2方向にオフセットされるように、回転フレーム3が構成されている。
【0034】
第2関節部J2の可動部には、第2関節部J2と第3関節部J3との間を接続するリンクとしての起伏フレーム4の後端部分が取り付けられている。起伏フレーム4の先端部分には第3関節部J3の固定部が取り付けられている。この第3関節部J3の固定部は後述の射出部58を構成する。この射出部58に対して、第3関節部J3の可動部としてのアーム部5が伸縮自在に設けられている。第3関節部J3は移動軸RA3を中心とした直動伸縮関節として構成される。移動軸RA3は回転軸RA2に対して垂直な向きに設けられる。第2関節部J2の回転角がゼロ度、つまりアーム部5の起伏角がゼロ度であってアーム部5が水平な基準姿勢においては、第3関節部J3の移動軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2とともに第1関節部J1の回転軸RA1にも垂直な方向に設けられる。ロボット座標系Σb上では、移動軸RA3はYb軸及びZb軸に対して垂直なXb軸に平行に設けられる。さらに、第3関節部J3は、第2関節部J2に対してその移動軸RA3の方向(Xb軸方向)と、移動軸RA3と第2関節部J2の回転軸RA2とに直交するZb軸の方向との2方向に関してオフセットされる。第3関節部J3が第2関節部J2に対して上記2方向にオフセットされるように、起伏フレーム4が構成されている。
【0035】
第3関節部J3の可動部(アーム部5)には、第2関節部J2と第3関節部J3との間を接続するリンクとしてのフレーム6の後端部分が取り付けられている。フレーム6の先端部分には第4関節部J4の固定部が取り付けられている。第4関節部J4は回転軸RA4を中心としたねじり関節として構成される。回転軸RA4は第3関節部J3の移動軸RA3に略一致するよう配置される。
【0036】
第4関節部J4の可動部には、第4関節部J4と第5関節部J5との間を接続するリンクとしてのフレーム7の後端部分が取り付けられている。フレーム7の先端部分には、第5関節部J5の固定部が取り付けられている。第5関節部J5は回転軸RA5を中心とした曲げ関節として構成される。回転軸RA5は第3関節部J3の移動軸RA3及び第4関節部J4の回転軸RA4に略直交するよう配置される。
【0037】
第5関節部J5の可動部には、第5関節部J5と第6関節部J6との間を接続するリンクとしてのフレーム8の後端部分が取り付けられている。フレーム8の先端部分には、第6関節部J6の固定部が取り付けられている。第6関節部J6は回転軸RA6を中心としたねじり関節として構成される。回転軸RA6は第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交するよう配置される。第6関節部J6の可動部はアダプタを有し、このアダプタに対して手先効果器としてのハンド装置が取り付けられる。第6関節部J6は手先効果器としてのハンド装置を左右に旋回するために設けられている。なお、第6関節部J6は、その回転軸RA6が第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交する曲げ関節として構成されてもよい。
【0038】
このように複数の関節部J1−J6の根元3軸のうちの一つの曲げ関節部を直動伸縮関節部に換装し、第1関節部J1に対して第2関節部J2を2方向にオフセットさせ、第2関節部J2に対して第3関節部J3を2方向にオフセットさせることにより、本実施形態に係るロボット装置のロボットアーム機構は、特異点姿勢を構造上解消している。
【0039】
図4は、図1のアーム部5の側面図、上方平面図、下方平面図である。図4(a)は、図1のアーム部5を示す側面図である。図4(b)は、図4(a)のA矢視図(上方平面図)である。図4(c)は、図4(a)のB矢視図(下方平面図)である。図4(b)に示すように、第1連結コマ列51は複数の第1連結コマ53が列状に連結されてなる。第1連結コマ53は、その前方部分が凹形状、後方部分が凸形状の略平板に成形されている。前後の第1連結コマ53において、前方の第1連結コマ53の後方の凸部分が後方の第1連結コマ53の先端の凹部分に嵌め込まれ、シャフトにより連結される。同様に、第2連結コマ列52は複数の第2連結コマ54が列状に連結されてなる。第2連結コマ54は、横断面略U字形状の溝状体に成形されている。第2連結コマ54は、その前方部分が凹形状、後方部分が凸形状に成形されている。前後の第2連結コマ54において、前方の第2連結コマ54の後方の凸部分が後方の第2連結コマ54の先端の凹部分に嵌め込まれ、シャフトにより連結される。以下、第1、第2連結コマ53、54の構造について説明する。
【0040】
図5は、図1の第1連結コマ53の側面図である。図6は、図1の第1連結コマ53を後方下側から見た斜視図である。図7は、図1の第1連結コマ53を前方下側から見た斜視図である。図8は、図1の第1連結コマ53を前方上側から見た斜視図である。図9は、図1の第1連結コマ53を後方上側から見た斜視図である。図10は、図1の第1連結コマ列51の側面図である。図11は、図10のA−A断面図である。
【0041】
第1連結コマ53は、その前方部分が凹形状、後方部分が凸形状の略平板に成形されている。具体的には、第1連結コマ53は、平面矩形に成形された本体部530を有する。本体部530の前方両側に一対の軸受ブロック(以下、前方の軸受ブロックという。)531が設けられる。本体部530の後方中央に単一の軸受ブロック(以下、後方の軸受ブロックという。)532が設けられる。これら軸受ブロック531,532の表面は、本体部530の表面とともに単一の平坦面を構成する。
【0042】
本体部530の前方両側の一対の軸受ブロック531は互いに後方の軸受ブロック532の幅に略等価な距離を隔てられる。前方の軸受ブロック531は、後方の軸受ブロック532の幅方向の一端から第1連結コマ53の幅方向の一端までの距離と略等価な幅を有する。例えば、後方の軸受ブロック532は第1連結コマ53の幅の1/2の幅を有し、前方の軸受ブロック531は第1連結コマ53の幅の1/4の幅を有する。これにより、前後の第1連結コマ53において、後方の第1連結コマ53の前方両側の一対の軸受ブロック531の間に、前方の第1連結コマ53の後方中央の単一の軸受ブロック532を差し込むことができる。後方の第1連結コマ53の前方両側の一対の軸受ブロック531の間に、前方の第1連結コマ53の後方中央の軸受ブロック532が差し込まれた状態で、前後の第1連結コマ53各々の側面は単一の平坦面を構成する。
【0043】
第1連結コマ53は、前後の第1連結コマ53を互いに回転可能に連結するための構造を有する。具体的には、前方の一対の軸受ブロック531には、第1連結コマ53の幅方向と平行に貫通した一対の軸孔533がそれぞれ空けられている。後方の軸受ブロック532には、第1連結コマ53の幅方向と平行に一対の軸孔534が空けられている。一対の軸孔534のうち一方は軸受ブロック532の幅方向の一端から他端に向かって空けられ、他方は軸受ブロック532の幅方向の他端から一端に向かって空けられている。一対の軸孔534各々は、軸受ブロック532の幅の1/2未満の深さを有する。これにより、後方の第1連結コマ53の前方両側の一対の軸受ブロック531の間に、前方の第1連結コマ53の後方中央の軸受ブロック532が差し込まれた状態で、後方の第1連結コマ53の前方の一対の軸孔533と前方の第1連結コマ53の後方の一対の軸孔534とがそれぞれ連続的につながり、一対の挿入孔が構成される。一対の挿入孔各々にシャフトが挿入され、前後の第1連結コマ53は連結される。このようにして、複数の第1連結コマ53は列状に連結され、第1連結コマ列51を構成する。前後の第1連結コマ53はシャフトを中心に互いに回転することができ、これにより第1連結コマ列51は屈曲することができる。
【0044】
第1連結コマ53は、第1連結コマ列51が直線状に配列された状態からそれ以上外側(コマ表面側)に屈曲しないための構造を有する。第1連結コマ53の後端部分に突出部が形成され、先端部分に突出部を受ける受け部が形成される。
【0045】
具体的には、第1連結コマ53の後方の軸受ブロック532の後端上面に、後方に向かって突出する突出部536が形成される。第1連結コマ53の本体部530の後端両側の上面に、後方に向かって突出する一対の突出部538が形成される。
【0046】
第1連結コマ53の本体部530の先端上面に、後方の軸受ブロック532の後端の突出部536を受ける受け部535が形成されている。この受け部535は、本体部530の表面から窪んだ形状に形成される。この窪みは、突出部536の厚みに略等価な深さに、本体部530の先端中央の一対の軸受ブロック531の間の全面にわたって形成される。同様に、第1連結コマ53の前方の一対の軸受ブロック531の先端上面に、本体部530の後端上面の一対の突出部538を受ける一対の受け部537がそれぞれ形成される。この一対の受け部537各々は、軸受ブロック531の表面から窪んだ形状に形成される。この窪みの深さは、突出部538の厚みに同一である。
【0047】
図10に示すように、前後の第1連結コマ53が内側に屈曲された状態から直線状に整列されたとき、後方の第1連結コマ53の先端に形成された受け部535,537に前方の第1連結コマ53の後端に形成された突出部536,538がそれぞれ嵌め込まれる。後方の第1連結コマ53の受け部535,537に前方の第1連結コマ53の突出部536,538がそれぞれ嵌め込まれた状態で、第1連結コマ53の突出部536,538の表面は、その後方の第1連結コマ53の受け部535,537の表面とともに単一の平坦面を構成する。これにより、直線状に配列された第1連結コマ列51は、その表面が平坦に構成される。また、第1連結コマ列51が直線状に配列されたとき、第1連結コマ53の突出部536,538により、その後方の第1連結コマ53の受け部535,537がそれぞれ上方から抑えられる。これにより、後方の第1連結コマ53は前方の第1連結コマ53に対して、直線状に整列された状態からそれ以上外側に屈曲できない。
【0048】
図6図7に示すように、第1連結コマ53の背面には、ドライブギア56とともにラックアンドピニオン機構を構成するリニアギア500が形成されている。リニアギア500は、第1連結コマ53の背面の幅中央に長さ(連結)方向に沿って形成されている。また、第1連結コマ53の背面には、第2連結コマ列52に対して第1連結コマ列51を接合するためのピンホールブロック539が形成されている。ピンホールブロック539は、第1連結コマ53の背面の両側中央にそれぞれ設けられている。ピンホールブロック539は、縦断面台形状を有し、その厚み中央には第1連結コマ53の長さ方向と平行にロックピンホールが空けられている。
【0049】
図11(a)は、図10の第1連結コマ列51のA―A断面図である。図11(a)は、前後の第1連結コマ53の連結構造を示す。第1連結コマ53の前方の軸受ブロック531の軸孔533の内壁には軸受5331が設けられている。この軸受5331には、玉軸受、ころ軸受等の転がり軸受が適用される。なお、潤滑油を必要とする合金のすべり軸受、二硫化モリブデン等を主体とする固体潤滑剤を金属又は樹脂等に混入し、分散させることで、自己潤滑性を与えたすべり軸受等を適用してもよい。後方の軸受ブロック532の軸孔534は、軸受5331の径と略等価な径を有し、その先端部分の内壁にはネジ切り加工が施され雌ネジ5341が形成されている。シャフト501は軸受5331の内径に略等価な径を有する円柱状体に成形されている。シャフト501は、その長さが第1連結コマ53の一端から後方の軸受ブロック532の軸孔534の先端までの距離と略等価な長さに形成される。シャフト501の先端部分には、雄ネジ5011が形成される。この雄ネジ5011は、後方の軸受ブロック532の軸孔534の先端部分と同じピッチ、溝数のねじ切り加工により形成される。
【0050】
後方の第1連結コマ53の前方両側の軸受ブロック531の間に、前方の第1連結コマ53の後方中央の軸受ブロック532が差し込まれた状態で、後方の第1連結コマ53の前方の一対の軸受ブロック531の軸孔533と前方の第1連結コマ53の後方の軸受ブロック532の一対の軸孔534とが連続的につながり、一対の挿入孔が構成される。一対の挿入孔にはそれぞれシャフト501が挿入される。挿入孔に挿入されたシャフト501は、その先端の雄ネジ5011が軸孔534の雌ネジ5341に締結されることで、後方の軸受ブロック532に対して固定される。挿入孔に挿入されたシャフト501により、前方の軸受ブロック531の軸孔533の軸受5331は軸支される。これにより、挿入孔からのシャフト501の脱落を防止し、前後の第1連結コマ53は連結され、シャフト501を中心に互いに回転することができる。
【0051】
図11(b)は、図11(a)の前後の第1連結コマ53の連結構造の他の例を示す断面図である。図11(b)に示すように、第1連結コマ53の後方の軸受ブロック532に空けられた軸孔534は第1連結コマ53の幅方向に貫通していてもよい。この場合、後方の軸受ブロック532の軸孔534の内壁には、軸受5331と同一の軸受5343が設けられる。シャフト503は、第1連結コマ53の幅と略等価な長さを有する。
【0052】
後方の第1連結コマ53の前方両側の軸受ブロック531の間に、前方の第1連結コマ53の後方中央の軸受ブロック532が差し込まれた状態で、後方の第1連結コマ53の前方の軸受ブロック531の軸孔533と前方の第1連結コマ53の後方の軸受ブロック532の軸孔534とが連続的につながり、第1連結コマ53の幅方向に貫通した挿入孔が構成される。シャフト503は、貫通した挿入孔の一方側から挿入され、挿入孔の他方側で留め輪により留められる。これにより挿入孔からのシャフト503の脱落を防止できる。挿入孔に挿入されたシャフト503により、前方の軸受ブロック531の軸孔533の軸受5331と後方の軸受ブロック532の軸孔534の軸受5343とは軸支される。これにより、前後の第1連結コマ53は連結され、シャフト503を中心に互いに回転することができる。
【0053】
第2連結コマ列52を構成する第2連結コマ54の構造について図12図14を参照して説明する。図12は、図1の第2連結コマ54の側面図である。図13は、図1の第2連結コマ54を後方上側から見た斜視図である。図14は、図1の第2連結コマ54を前方上側から見た斜視図である。
【0054】
第2連結コマ54は、その前方部分が凹形状、後方部分が凸形状の溝状体に成形されている。具体的には、第2連結コマ54は、断面U字形の溝状体に成形された本体部を有する。本体部は、同サイズ、同形状の一対の側板540が底板541により平行に連結されてなる。底板541の後方中央に軸受ブロック(以下、後方の軸受ブロックという。)543が設けられている。底板541の前方両側に軸受ブロック(以下、前方の軸受ブロックという。)542が設けられる。これら前方の軸受ブロック542は、後方の軸受ブロック543の幅に略等価な距離を隔てられている。前方の軸受ブロック542は、後方の軸受ブロック543の幅方向の一端から第2連結コマ54の幅方向の一端までの距離と略等価な幅を有する。例えば、後方の軸受ブロック543は第2連結コマ54の幅の1/2の幅を有し、前方の軸受ブロック542は第2連結コマ54の幅の1/4の幅を有する。これにより、前後の第2連結コマ54において、後方の第2連結コマ54の前方両側の軸受ブロック542の間に、前方の第2連結コマ54の後方中央の軸受ブロック543を差し込むことができる。
【0055】
第2連結コマ54は、前後の第2連結コマ54を互いに回転可能に連結するための構造を有する。この構造は、既述の第1連結コマ53における構造と同一である。すなわち、前方の軸受ブロック542には、その幅方向の一端から他端に向かって、第2連結コマ54の幅方向と平行に貫通した軸孔544が空けられている。後方の軸受ブロック543には、他端から一端に向かって、第2連結コマ54の幅方向と平行に軸孔545が空けられている。これら後方の軸受ブロック543の軸孔545は、軸受ブロック543の幅の1/2未満の深さを有する。これにより、後方の第2連結コマ54の前方両側の軸受ブロック542の間に、前方の第2連結コマ54の後方中央の軸受ブロック543が差し込まれた状態で、後方の第2連結コマ54の前方の一対の軸孔544と前方の第2連結コマ54の後方の一対の軸孔545とがそれぞれ連続的につながり、一対の挿入孔が構成される。一対の挿入孔各々にシャフトが挿入され、前後の第2連結コマ54は連結される。このようにして、複数の第2連結コマ54は列状に連結され、第2連結コマ列52を構成する。前後の第2連結コマ54はシャフトを中心に互いに回転自在に連結される。第2連結コマ54の本体部は断面U字形状であり、前後の第2連結コマ54の側板540同士が接触するため、第2連結コマ列52は直線状に整列された状態から内側には屈曲可能であるが、外側には屈曲不可である。
【0056】
第2連結コマ54は、第1連結コマ列51を第2連結コマ列52に対して固定するためのロック機構を有する。このロック機構は、チャックブロック548とロックピンブロック546とにより構成される。
【0057】
ロックピンブロック546は、第2連結コマ54の側板540の先端上方の裏面に形成されている。ロックピンブロック546は直方体形状を有し、その前方の面には前方に向かって突出したロックピン547が形成されている。このロックピン547は、第1連結コマ53のピンホールブロック539のピンホールにあわせた形状を有する。第2連結コマ54の側板540の後端上方の裏面には、チャックブロック548が形成されている。チャックブロック548は直方体形状を有し、その後方部分は前方から後方に向かって斜めの切欠かれている。前後の第2連結コマ54が直線状に整列されると、前方の第2連結コマ54のチャックブロック548の後方部分と後方の第2連結コマ54のロックピンブロック546の前方部分とは所定形状の嵌合受け部を形成する。
【0058】
第1、第2連結コマ列51、52が直線状に整列され、第2連結コマ列52に対して第1連結コマ列51が押圧される際に、第1連結コマ53のピンホールブロック539は、そのピンホールに第2連結コマ54のロックピンブロック546のロックピン547が挿入されながら、前後の第2連結コマ54により形成された嵌合受け部に嵌合される。これにより、第1連結コマ列51は第2連結コマ列52に対してロックされる。このロック状態は、第1連結コマ53のピンホールブロック539が前後の第2連結コマ54に形成された嵌合受け部に嵌め込まれることにより維持される。上述のように接合された第1、第2連結コマ列51,52は一定の剛性を有する柱状体を構成する。この柱状体は断面略ロ字形状の筒形状を有する。
【0059】
図15(a)、図15(b)は、図1の第1連結コマ列51と射出部58のローラ59との位置関係を示す側面図である。図15(a)において、第1連結コマ列51は、前方部分が凹形状、後方部分が凸形状に成形された複数の第1連結コマ53からなる。図15(b)において、第1連結コマ列51は、前方部分が凸形状、後方部分が凹形状に成形された複数の第1連結コマ53からなる。
上述したように、第1連結コマ53は、前方部分が凹形状、後方部分が凸形状に成形される。第1連結コマ53の先端には受け部535,537が形成され、後端には突出部536,538が形成される。前後の第1連結コマ53が直線状に配列されたとき、前方の第1連結コマ53の後端の突出部536,538が後方の第1連結コマ53の先端の受け部535,537に嵌め込まれる。これにより、前後の第1連結コマ53は、直線状に配列された状態から、それ以上外側への屈曲が制限される。第1連結コマ列51は内側に屈曲しながら収納され、また、内側に屈曲しながら射出部58に誘導される。すなわち、第1連結コマ列51が外側に屈曲できる必要がなく、第1連結コマ列51の外側への屈曲を制限することで、第1、第2連結コマ列51,52の接合による柱状体の剛性を向上することができる。なお、上述の効果は、第1連結コマ53がその前方部分が凸形状、後方部分が凹形状に成形されていても、つまり、第1連結コマ53の先端に突出部536,538が形成され、後端に受け部535,537が形成されていた場合でも、同様に得られる。
【0060】
第1連結コマ53がその前方部分が凹形状、後方部分が凸形状に成形されている場合、つまり、第1連結コマ53の後端に突出部536,538が形成され、先端に受け部535,537が形成されている場合、第1連結コマ53がその前方部分が凸形状、後方部分が凹形状に成形されている場合に比べて、第1連結コマ列51の移動の平滑性を向上することができる。
【0061】
第1連結コマ列51は、ドライブギア56とガイドローラ57との間に挟まれることで、第1連結コマ53の背面のリニアギア500がドライブギア56に係合し、ドライブギア56が回転されることで、第1連結コマ列51は本体カバー12の内部の収納部から送り出される。ドライブギア56とガイドローラ57との間を通過するときに、第1連結コマ列51は内側に屈曲しながら、その姿勢を垂直姿勢から水平姿勢に変化させる。図15(b)に示すように、第1連結コマ53の後端に受け部535,537が、先端に突出部536,538が形成されている場合、後方の第1連結コマ53は前方の第1連結コマ53に対して内側に屈曲するとき、第1連結コマ53の先端の突出部536,538が、その前方の第1連結コマ53のコマ表面から突出する場合がある。第1連結コマ53の先端の突出部536,538が、その前方の第1連結コマ53のコマ表面から突出した場合、ドライブギア56とガイドローラ57との間を通過するときに、その突出部分がガイドローラ57に衝突する可能性がある。これを回避するために、ガイドローラ57の一部分を切り欠く、第1連結コマ53がドライブギア56とガイドローラ57との間に挟まれる前に、第1連結コマ53を垂直姿勢から水平姿勢に姿勢変化させ、その姿勢を維持した状態でドライブギア56とガイドローラ57との間に誘導するために、ガイドローラ57の後方に他のガイドローラを配置するなどの対策が必要となる。
【0062】
また、第1連結コマ列51は直線状に配列された状態で射出部58に誘導される。しかしながら、何らかの理由で、第1連結コマ列51が内側に屈曲した状態で射出部58に誘導された場合、上記と同様に、第1連結コマ53の先端の突出部536,538が、その前方の第1連結コマ53のコマ表面から突出し、その突出部分が射出部58の上部に配置された複数のローラ59に衝突する可能性がある。これを回避するために、射出部58の上部ローラ59の一部分を切り欠く等の対策が必要となる。
【0063】
一方、図15(a)に示すように、第1連結コマ53の先端に受け部535,537が、後端に突出部536,538が形成されている場合、第1連結コマ53の後端の突出部536,538が、その後方の第1連結コマ53のコマ表面から突出する場合はあっても、その前方の第1連結コマ53のコマ表面から突出することはない。そのため、第1連結コマ列51が送り出されるときに、上記のように第1連結コマ53の突出部536,538が、ガイドローラ57や射出部58の上部ローラ59に衝突するのを回避することができる。一方、第1連結コマ列51が引き戻されるとき、第1連結コマ列51は第2連結コマ列52とともに柱状体を構成した状態で射出部58に戻されるため、第1連結コマ53の後方の突出部536,538が射出部58の上部ローラ59に衝突する可能性は低い。同様に、第1連結コマ列51が引き戻されるとき、第1連結コマ列は、ドライブギア56とガイドローラ57との間を水平姿勢を維持した状態で通過するため、第1連結コマ53の後方の突出部536,538がガイドローラ57に衝突する可能性は低い。
【0064】
このように、第1連結コマ53の先端に受け部535,537が、後端に突出部536,538が形成されることで、ガイドローラ57等に第1連結コマ53の突出部536,538が衝突するのを回避することができ、これにより、第1連結コマ列51をスムーズに移動させることができる。
【0065】
図16(a)は、図1のアーム部5を示す側面図である。図16(b)は、図16(a)のアーム部5の他の寸法の例を示す側面図である。ここでは、第1連結コマ53の長さは、前方の軸受ブロック531の軸孔533の中心と後方の軸受ブロック532の軸孔534の中心との間の距離として定義する。同様に、第2連結コマ54の長さは、前方の軸受ブロック542の挿入孔544の中心と後方の軸受ブロック543の挿入孔545の中心との間の距離として定義する。
【0066】
図16(a)に示すように、典型的には、第1連結コマ53の長さL11は、第2連結コマ54の長さL21と同一長に構成される。結合コマ55により、第1連結コマ列51は、第2連結コマ列52よりも、前方又は後方に長さLu1オフセットされている。オフセット長Lu1は、第1連結コマ53の長さL21の1/2長に略等価である。これにより、第1、第2連結コマ列51,52各々の連結部分をアーム部5の厚み方向と平行な直線上に配置されるのを回避し、柱状体としてのアーム部5の剛性を確保することができる。
【0067】
なお、第1連結コマ53の長さL11は、第2連結コマ54の長さL21と異なる長さ、典型的には第2連結コマ54の長さL21よりも短く構成されてもよい。例えば、図16(b)に示すように、第1連結コマ53の長さL12は、第2連結コマ54の長さL22の1/3の長さに構成されてもよい。この場合も、結合コマ55により、第1連結コマ列51は、第2連結コマ列52よりも後方に長さLu2オフセットされている。オフセット長Lu2は、第1連結コマ53の長さL12の1/2長に略等価である。これにより、第1、第2連結コマ列51,52各々の連結部分をアーム部5の厚み方向と平行な直線上に配置されるのを回避し、柱状体としてのアーム部5の剛性を確保することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
53…第1連結コマ、530…本体部、531、532…軸受ブロック、533,534…軸孔、535,537…受け部、536,538…突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16