(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱ワイヤ(21)及び前記バスバー(22)が、前記第一中間層(3)と前記カバーペイン(4)との間に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
前記キャリア膜(5)の端部からの、前記基材(1)の1つの側端部までの、又は前記カバーペイン(4)の1つの側端部までの、最小の距離rが、5mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
少なくとも1層の第二中間層(2)が、前記基材(1)と、前記導電性層(6)を有している前記キャリア膜(5)との間に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
前記第一中間層(3)及び/又は前記第二中間層(2)が、透明であり、ポリビニルブチラール(PVB)を含有しており、若しくはそれでできており、かつ/又は、2〜4の比誘電率εr,2/3を有しており、かつ、前記キャリア膜(5)が、透明であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含有しており、若しくはそれでできており、かつ/又は、2〜4の比誘電率εr,5を有している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
前記導電性層(2)が、透明であり、かつ/又は、0.4オーム/スクエア〜200オーム/スクエアのシート抵抗を有しており、かつ/又は、銀(Ag)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素でドープされているスズ酸化物(SnO2:F)若しくはアルミニウムでドープされている亜鉛酸化物(ZnO:Al)を含有している、請求項1〜13のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
前記センサ電子システム(14)の感受性が選択されており、それにより、前記基材(1)の外側表面(IV)における人間の指による前記接触領域(11)の接触のときには、センサ電子システムが、スイッチシグナルを出力し、かつ、前記カバーペイン(4)の外側表面(I)における前記接触領域(11)の接触のときには、スイッチシグナルを出力せず、又は異なるスイッチシグナルを出力する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
前記センサ電子システム(14)の感受性が選択されており、それにより、前記基材(1)の外側表面(IV)における、かつ/又は前記カバーペイン(4)の外側表面(I)における、人間の指による前記接触領域(11)の接触のときには、センサ電子システムが、スイッチシグナルを出力し、かつ、前記基材(1)の前記表面(IV)における、かつ/又は前記カバーペイン(4)の前記表面(I)における前記供給ライン領域(12)の接触のときには、スイッチシグナルが出力されず、又は、異なるスイッチシグナルが出力される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
請求項1〜16のいずれか一項に記載の、容量性スイッチ領域(10)を有している容量性複合ペイン(100)を有しているペイン装置(101)を製造するための方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
(a)第一中間層(3)を適切なサイズに切断すること、及び、透明導電性層(6)を、カソードスパッタリングによって、キャリア膜(5)の1面の表面に適用すること、
(b)前記第一中間層(3)の表面に2個のバスバー(22)を適用すること、及び、前記第一中間層(3)の表面に少なくとも1個の加熱ワイヤ(21)を適用すること、ここで、前記加熱ワイヤ(21)が、両方のバスバー(22)に導電的に連結している、
(c)基材(1)、前記加熱ワイヤ(21)を有しており前記バスバー(22)を有している前記第一中間層(3)、導電性層(6)を有しているキャリア膜(5)、及びカバーペイン(4)の一連の積層体を製造すること、
(d)前記一連の積層体を積層加工して、複合ペイン(100)を形成すること。
請求項1〜16に記載の容量性スイッチ領域(10)を有する容量性複合ペイン(100)を有しているペイン装置(101)の、陸上、空中、水上における移動のための輸送手段における、かつ、機能性個別部品としての、かつ、家具、家電製品、及び建物における組み込み式構成要素としての、使用。
【発明を実施するための形態】
【0007】
複合ペインは、好ましくは、車両ペインであり、例えば、サイドペイン、ウィンドシールド、リアウインドウ、又はルーフパネルである。しかしながら、本発明に係る複合ペインが、建築ペイン、又は家具におけるグレージング、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、又は電気ヒーター若しくはミラー要素におけるグレージングであってもよい。
【0008】
複合ペインは、好ましくは、車両の、開閉式サイドウィンドウのためのサイドペインである。これが意味しているのは、車両ドアへのサイドペインの実質的に垂直な移動によって開けかつ再び閉めることができるサイドウィンドウである。
【0009】
複合ペイン、特にはサイドペインは、上方端部、下方端部、前方端部、及び後方端部を有している。サイドペインの場合には、「上方端部」が示しているのは、設置された位置において上方向を向いている、サイドペインの側端部である。「下方端部」が示しているのは、設置された位置において地面の方に下向きに向いている、側端部である。「前方端部」が示しているのは、運転方向において前方を向いている、側端部である。「後方端部」が示しているのは、運転方向において後方を向いている、側端部である。
【0010】
ペイン装置では、容量性スイッチ領域を有している本発明に係る複合ペインが、少なくとも以下の特徴を有している:
− 基材及びカバーペイン、並びに
− 基材とカバーペインとの間に面状に配置されている、少なくとも1個の第一中間層、
ここで、
− 導電性層を有しているキャリア膜が、少なくとも部分的に、
基材と第一中間層との間に配置されており、又は、
カバーペインと第一中間層との間に配置されており、
− 導電性層の少なくとも1つの領域が、容量性スイッチ領域を形成しており、
− 容量性スイッチ領域が、接触領域、供給ライン領域、及び連結領域を有しており、供給ライン領域が、接触領域を連結領域に電気的に連結しており、かつ、連結領域が、センサ電子システムに電気的に接続していてよく、かつ、
− 少なくとも1個の加熱ワイヤ及び少なくとも2個のバスバーが、基材とカバーペインとの間に配置されており、ここで、それぞれの場合に、加熱ワイヤの1つの末端が、それぞれ、バスバーのうちの1つに導電的に接続しており、それにより、バスバーに電圧が適用されたときに、加熱電流が加熱ワイヤを通って流れることができ、そのようにして、加熱ワイヤを加熱することができるようになっている。
【0011】
複合ペインは、加熱ワイヤが加熱可能であるため、加熱可能である。
【0012】
本発明の有利な実施態様では、センサ電子システムの第二入力部が、電気接地に接続されている。
【0013】
本発明の有利な実施態様では、容量性スイッチ領域が、複合ペインを通る投影において、少なくとも1個の加熱ワイヤと重なり合っている。
【0014】
本発明の有利な実施態様では、供給ライン領域の幅b
Zに対する長さl
Zの比が、1:700以下であり、好ましくは、1:1〜1:100である。本発明に関しては、供給ライン領域が一定の幅b
Zを有していない場合には、例えば、台形形状又は水滴形状で実施されている場合には、用語「幅b
Z」は、供給ライン領域の平均された幅を意味する。
【0015】
供給ライン領域の長さl
Zは、好ましくは、1cm〜70cm、特に好ましくは、3cm〜8cmである。供給ライン領域の幅b
Zは、好ましくは0.5mm〜10mm、特に好ましくは0.5mm〜2mmである。供給ライン領域は、好ましくは、矩形、ストリップ、又はラインの形状を有している。
【0016】
本発明に係る複合ペインの有利な実施態様では、連結領域が、ペインの外側端部に配置されている。ここで、外側端部からの距離が、好ましくは10cm未満、特に好ましくは0.5cm未満である。これは、連結領域の電気的接触を、例えば、箔伝導体によって、視覚的に目立たない黒色印刷の下に、又は覆いによって、例えばカメラ筐体によって、隠すことを可能にする。
【0017】
本発明に係るスイッチ領域の有利な実施態様では、接触領域が、1cm
2〜200cm
2、特に好ましくは1cm
2〜9cm
2の面積を有している。接触領域の長さl
Bは、好ましくは1cm〜14cm、特に好ましくは1cm〜3cmである。接触領域の最大幅b
Bは、好ましくは1cm〜14cm、特に好ましくは1cm〜3cmである。接触領域は、原則として、任意の所望の形状を有していてよい。特に適している接触領域は、円状、楕円状、又は水滴状である。あるいは、角度を有している形状が可能であり、例えば、三角形、正方形、四角形、台形、若しくは他のタイプの四辺形、又はより高次の多角形が可能である。
【0018】
本発明に係るスイッチ領域の別の有利な実施態様では、供給ライン領域の幅bzと、接触領域の最大幅b
Bとの比が、少なくとも1:2、特には少なくとも1:10である。このようにして、特に良好なスイッチング効果を得ることが可能となった。
【0019】
本発明に係るペインの有利な実施態様では、分離ラインの幅t
1が、30μm〜200μm、好ましくは70μm〜140μmである。そのような薄い分離ラインは、信頼性がありかつ十分に高い電気絶縁を可能とし、かつ同時に、複合ペインを通した視覚を、ほんのわずかしか妨げず、又は全く妨げない。
【0020】
スイッチ領域は、容量性のスイッチ領域であり、換言すると、スイッチ領域が、容量性接触検出のために特別に実施されている。有利な実施態様では、スイッチ領域が、表面電極を形成している。表面電極のキャパシタンスを、外部の容量性センサ電子システムによって計測する。物体(例えば、人間の身体、又は人間の身体の誘電率に類似している誘電率を有している物体)が、表面電極の近傍に来る場合に、又は、例えば、電極を覆っている絶縁層に接触した場合に、表面電極のキャパシタンスが、接地に対して変化する。絶縁層としては、特には、基材それ自体が含まれる。キャパシタンスの変化を、センサ電子システムによって計測し、かつ、閾値を超える場合に、スイッチシグナルが作動する。スイッチ領域は、表面電極の形状およびサイズによって規定される。
【0021】
直前に記載の、接地に対するキャパシタンス計測に加えて、導電性層と別の導電性領域との間での差分キャパシタンス計測を計測することも可能である。
【0022】
本発明の一部ではない、本発明に係る複合ペインの代替形態において、導電性層が、少なくとも1つの無被覆分離ラインによって、容量性スイッチ領域と周囲領域に、電気的に分割されている。周囲領域は、別の連結領域を介して、センサ電子システムに連結されていてよい。換言すると、複合ペインが、4個の供給ラインと接触している:容量性スイッチ領域のための1個の供給ライン、周囲領域のための1個の供給ライン、及び、加熱ワイヤによる電気的加熱のためのバスバーのための2個の供給ライン。
【0023】
そのような装置では、容量性スイッチ領域及び周囲領域が、2個の電極を形成しており、それらが、互いに容量的に連結されている。これらの電極によって形成されているコンデンサのキャパシタンスが、物体、例えば、人間の身体の部分の接近によって、変化する。キャパシタンスにおける変化を、センサ電子システムによって計測し、かつ、閾値を超える場合に、スイッチシグナルを作動させる。感受性領域は、電極が容量的に連結されている領域の形状及びサイズによって規定される。
【0024】
本発明によると、加熱回路、すなわち、加熱ワイヤ及びバスバーから構成される回路が、第二電極としてセンサ電子システムに接続されている。換言すると、加熱ワイヤ及びバスバーが、周囲領域として機能する。これは特に有利であり、なぜならば、この第二の電極のセンサ電子システムへの電気的な接続を、複合ペインの外側において、例えば、加熱機能のためにバスバーを運用電圧に接続するための、供給ラインのうちの1つの領域において、特には接地ラインによって、行うことさえも可能であるからである。このようにして、周囲領域への別個の供給ラインが排除され、かつ、複合ペイン全体が、3個の供給ラインのみと接触していることとなる:容量性スイッチ領域のための1個の供給ライン、及び、バスバーのための2個の供給ライン、ここで、バスバーのための供給ラインのうちの1個が、センサ電子システムの第二入力部への電気的なライン接続として機能する。
【0025】
容量性スイッチ領域、及び、随意に周囲領域又は加熱回路が、本発明に係る複合ペインに統合されている。したがって、スイッチ又は類似のものは、複合ペインに取り付けられる必要がある別個の構成要素として、必要ではない。複合ペインは、好ましくは、また、その表面において、向こう側を見るための領域に配置されている他の構成要素を有していない。これは、複合ペインの薄い設計の観点から特に有利であり、かつ、複合ペインを通しての可視性をわずかしか妨げないという観点から有利である。
【0026】
本発明に係るペイン装置は、本発明に係る複合ペイン及びセンサ電子システムを有しており、このセンサ電子システムが、連結領域を介して容量性スイッチ領域に電気的に接続されており、かつ、随意に、別の連結領域を介して、周囲領域又は加熱回路に電気的に接続されている。センサ電子システムは、容量性センサ電子システムである。
【0027】
本発明に係るスイッチ装置の有利な実施態様では、センサ電子システムの感受性が選択されており、それにより、基材において人間の指が接触領域と接触したときに、センサ電子システムがスイッチシグナルを出力するようになっており、かつ、カバーペインにおける接触領域の接触のときには、スイッチシグナルを出力しないか、又は別のスイッチシグナルを出力するようになっている。無論、接触領域の接触は、複数の指又は人間の身体の異なる部位によって行われてもよい。この発明に関して、「接触」は、計測シグナル、すなわち、この場合にはキャパシタンス、の計測可能な変化を生じる、スイッチ領域との任意の相互作用を意味する。特には、これは、外側表面への接触領域の直交突出によって得られる区域における、複合ペインの外側表面への接触である。
【0028】
本発明の有利な実施態様では、接触領域と基材の外側表面(IV)との間の表面キャパシタンスc
Iが、接触領域とカバーペインの外側表面(I)との間の表面キャパシタンスc
Aよりも大きい。
【0029】
表面キャパシタンスc
I又はc
Aは、接触領域と、基材の外側表面又はカバーペインの外側表面との間において、接触領域の直交突出により生ずる、複合ペインのその領域の平坦コンデンサのキャパシタンスとして定義され、結果として得られるキャパシタンスを、接触領域の面積にわたって標準化する。ここで、用語「外側表面」は、外向きに向かっている、すなわち、複合ペインから離れる方向に向かっている複合ペインの表面を意味する。したがって、「内側表面」は、複合ペインの内部に向かっており、かつ中間層に面状に接続している、基材又はカバーペインの表面を意味する。
【0030】
したがって、表面キャパシタンスは、導電性層から複合ペインのそれぞれの外側領域の端までに及ぶ一連の層(被覆)全体の、面積にわたって標準化された、キャパシタンスである。
【0031】
本発明に係る複合ペインの有利な実施態様では、表面キャパシタンスc
Iと表面キャパシタンスc
Aとの比が、1.1以上:1であり、好ましくは1.2以上:1である。そのような比に関しては、基材の外側表面への接触が、カバーペインの外側表面への接触から、既に良好に区別されうる。
【0032】
スイッチシグナル出力は、任意のタイプであってよく、かつ、それぞれの使用の要件に適合してよい。したがって、スイッチシグナルは、正の電圧、例えば、12Vを意味してよく、いかなるスイッチシグナルも、例えば、0Vを意味することはできず、かつ、別のスイッチシグナルが、例えば、+6Vを意味してよい。スイッチシグナルは、CAN−Busに慣用的であるCAN−High及びCAN−Low電圧に対応していてよく、それらの間の電圧値によって変化してもよい。スイッチシグナルは、また、パルス状であってよく、かつ/又はデジタル符号化されていてよい。
【0033】
センサ電子システムの感受性は、接触領域のサイズに応じて、かつ、基材、中間層、及びカバーペインの厚みに応じて、単純な実験の背景において、決定されうる。
【0034】
本発明に係るこのようなペイン装置の特に有利な点は、スイッチシグナルが、外側表面のうちの1つからの複合ペインへの接触のときにのみ、作動することができるという点にある。自動車ウィンドウにおけるペイン装置の使用であり、かつ、基材側が車両内側の方向になっている複合ペインの設置の場合では、例えば、外部から人によってスイッチ操作が作動されること、又は、雨若しくはウィンドシールドワイパーの動きによってスイッチ操作が意図せずに作動されることを、積層安全ガラスに関して一般的に慣用的なペイン構造を根本的に変化させることなく、信頼性良く回避することが可能である。このことは、当業者にとっては予想外であり、驚くべきことであった。
【0035】
たった今記述されたペイン装置と組み合わせて、又は、それの代わりに、センサ電子システムの感受性を選択してよく、それにより、基材及び/又はカバーペインにおける接触領域に人間の指が接触したときに、スイッチシグナルが出力されるようにし、かつ、基材及び/又はカバーペインにおける供給ライン領域に接触したときには、スイッチシグナルが出力されないようにし、又は異なるスイッチシグナルが出力されるようにする。
【0036】
センサ電子システムの感受性は、接触領域のサイズに応じて、かつ、形状に応じて、かつ、供給ライン領域の幅と長さの間のアスペクト比に応じて、単純な実験の背景において、決定することができる。ここでは、供給ライン領域の幅を、可能な限り小さく選択することが特に有利である。
【0037】
本発明に係るペイン装置のこの実施態様の特に有利な点は、スイッチシグナルは、接触領域又はそれに隣接している周囲を介した複合ペインの外側表面への接触によってのみ、作動することができ、したがって、スイッチ操作の正確な制御が可能であり、例えば、不注意でのスイッチ操作が防止されるということにある。
【0038】
本発明に係るペイン装置の有利な実施態様では、連結領域が、平坦伝導体に接続されており、かつ、この平坦伝導体が、ペインの外に送られている。その場合には、統合されたペイン装置を、使用場所において、特に簡便に、センサ回路のスイッチシグナルを評価する、電源及びシグナルラインに、例えば車両においてはCAN−Busを介して、接続することができる。
【0039】
原則として、本発明に係る複合ペインの製造及び使用の条件下で、熱的かつ化学的に安定であり、かつ、寸法的に安定である、すべての導電性基材が、基材及びカバーペインとして適している。
【0040】
基材及び/又はカバーペインは、好ましくは、ガラスを含んでおり、特に好ましくは、平坦ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、若しくはクリアプラスチック、好ましくは剛性クリアプラスチック、特にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、塩化ポリビニル、及び/又はそれらの混合物を含んでいる。基材及び/又はカバーペインは、好ましくは透明であり、特には、車両のウィンドシールド若しくはリアウィンドウとしてのペインの使用のために、又は高光透過率が所望される他の使用のために、好ましくは透明である。本発明の背景において、「透明」は、可視スペクトル領域において、70%超の透過率を有しているペインを意味する。しかしながら、交通に関連する運転者の視界には配置されないペインに関しては、例えば、ルーフパネルに関しては、透過率は、さらに比較的低くてもよく、例えば、5%超であってもよい。
【0041】
基材及び/又はカバーペインの厚みは、幅広く変化することができ、そのようにして、個別の場合の要件に理想的に適合する。好ましくは、車両ガラスのためには、1.0mm〜25mm、好ましくは1.4mm〜2.5mmの、標準的な厚みが使用され、好ましくは、家具、電化製品、及び建物のためには、特には電気ヒーターのためには、4mm〜25mmの、標準的な厚みが使用される。ペインのサイズは、広く変化してよく、かつ、本発明に係る使用のサイズによって決定される。基材、及び、随意にカバーペインは、例えば、自動車エンジニアリング及び建築の分野で慣用的な面積である、200cm
2〜20m
2までの面積を有している。
【0042】
複合ペインは、任意の三次元形状を有していてよい。好ましくは、三次元形状は、影の領域を有しておらず、それにより、例えば、カソードスパッタリングによって被覆することができるようになっている。好ましくは、基材は、1又は複数の空間方向において、平坦であり又はわずかに若しくは大きく湾曲している。特には、平坦な基材が使用される。基材及びカバーペインは、無着色又は着色されていてよい。
【0043】
基材及び/又はカバーペインは、好ましくは、2〜8の、特に好ましくは6〜8の、比誘電率ε
r,1/4を有している。そのような比誘電率では、基材の外側表面を介した接触表面への接触の、カバーペインの外側表面との比較における特に良好な差別化を得ることが可能であった。
【0044】
基材及び/又はカバーペインは、少なくとも1層の第一及び少なくとも1層の第二中間層によって、互いに結合されている。中間層は、好ましくは透明である。中間層は、好ましくは、少なくとも1つのプラスチック、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでいる。しかしながら、中間層は、例えば、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、塩化ポリビニル、ポリアセテート樹脂、キャスティング樹脂、アクリレート、フッ化エチレンプロピレン、フッ化ポリビニル、及び/若しくはエチレンテトラフルオロエチレン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物を含有していてもよい。中間層は、互いに重なって配置されている1又は複数の膜から形成されていてよい。膜の厚みは、好ましくは、0.025mm〜1mm、典型的には、0.38mm又は0.76mmである。換言すると、第一又は第二中間層は、それぞれ、1又は複数の膜から組み立てられていてよい。中間層は、好ましくは熱可塑性であってよく、積層加工後に、基材、カバーペイン、及び他の任意の中間層を、互いに接着的に結合させることができる。本発明の複合ペインの特に有利な実施態様では、第一中間層が、接着性物質でできている接着層として実施されており、これによって、キャリア膜が、基材に接着的に結合されている。この場合には、第一中間層は、好ましくは、キャリア膜の寸法を有している。
【0045】
中間層は、好ましくは、2〜4、特に好ましくは2.1〜2.9の比誘電率を有している。そのような比誘電率では、基材の外側表面を介した接触表面への接触の、カバーペインの外側表面との比較における特に良好な差別化を得ることが可能であった。
【0046】
本発明に係るキャリア膜は、好ましくは透明である。それは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜を含有しており、又はそれでできている。キャリア膜の厚みは、好ましくは0.025mm〜0.1mmである。キャリア膜は、好ましくは、2〜4、特に好ましくは2.7〜3.3の比誘電率を有している。そのようなキャリア膜によって、特に良好な複合ペインを製造することが可能である。なぜならば、そのような薄いキャリア膜は、部分的な配置のみであっても、複合ペインに、良好にかつ視覚的に目立たないように、統合することができるからである。同時に、良好で選択的なスイッチシグナルを生成しうる。本発明に係る導電性層は、キャリア膜の表面に、換言すると、キャリア膜の2つの面のうちの正確に1面に(すなわち、その正面又はその背面に)好ましくは配置される。
【0047】
用語「基材」及び「カバーペイン」は、本発明に係る複合ペインの2個のペインを区別するために選択されている。幾何学的な配置に関する記述は、これらの用語に結び付いていない。本発明に係る複合ペインを、例えば、開口部において、例えば、車両又は建物の開口部において、外部環境から内部を分離するために提供する場合には、基材は、内部又は外部環境の方を向いていてよい。
【0048】
導電性層は、好ましくは、透明で導電性の被覆を含有している。ここでは、「透明」は、電磁放射に対して、好ましくは300nm〜1300nmの波長の電磁放射に対して、特には可視光に対して、透過性であることを意味している。
【0049】
本発明に係る導電性層は、例えば、独国実用新案第202008017611号明細書、欧州特許第0847965号明細書、又は国際公開第2012/052315号から知られている。それらは、典型的には、1又は複数の、例えば、2、3、又は4の導電性機能性層を有している。機能性層は、好ましくは、少なくとも1種の金属、例えば、銀、金、銅、ニッケル、及び/若しくはクロミウム、又は金属合金を含有している。機能性層は、特に好ましくは、少なくとも90wt%の金属、特には少なくとも99.9wt%の金属を含有している。機能性層は、金属又は金属合金でできていてよい。機能性層は、特に好ましくは、銀又は銀含有合金を含有している。そのような機能性層は、特に有利な電気導電性を有しており、同時に、可視スペクトル範囲において、高い透過率を有している。機能性層の厚みは、好ましくは5nm〜50nm、特に好ましくは8nm〜25nmである。機能性層の厚みに関するこの範囲では、可視スペクトル範囲における有利に高い透過率及び特に有利な導電性が得られる。
【0050】
典型的には、少なくとも1層の誘電体層が、それぞれ、2個の隣接している機能性層の間に配置されている。好ましくは、さらなる誘電体層が、第一機能性層の下にかつ/又は最後の機能性層の上に配置されている。誘電体層は、誘電体材料、例えば、窒化物、例えば窒化ケイ素、又は酸化物、例えば酸化アルミニウムを含有している誘電体材料でできている、少なくとも1層の別個の層を有している。しかしながら、誘電体層は、複数の別個の層を含んでいてもよく、例えば、誘電体材料、平滑層、適合層、ブロッカー層、及び/又は反射防止層の、別個のを含んでいてもよい。誘電体層の厚みは、例えば、10nm〜200nmである。
【0051】
この層構造は、一般に、一連の堆積操作によって取得され、この堆積操作は、真空法、例えば、磁場強化型カソードスパッタリングによって行われる。
【0052】
他の適切な導電性層としては、好ましくは、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素でドープされているスズ酸化物(SnO
2:F)、又はアルミニウムでドープされている酸化亜鉛(ZnO:Al)が挙げられる。
【0053】
導電層は、原則として、電気的に接触されうる任意の被覆であってよい。本発明に係るペインが、それを通しての視覚を可能にすることが意図されている場合には、例えば、ウィンドウ分野でのペインのような場合には、導電性層は、好ましくは透明である。有利な実施態様では、導電性層は、層、又は、複数の別個の層の層構造であり、2μm以下の、特に好ましくは1μm以下の合計の厚みを有している。
【0054】
本発明に係る有利な透明導電性層は、0.4オーム/スクエア〜200オーム/スクエアのシート抵抗を有している。特に好ましい実施態様では、本発明に係る導電性層が、0.5オーム/スクエア〜20オーム/スクエアのシート抵抗を有している。そのようなシート抵抗を有している被覆は、12V〜48Vの典型的な車載電圧を有している加熱自動車ペインのために特に適しており、又は、500V以下の典型的な車載電圧を有している電気車両で特に適している。
【0055】
導電性層は、キャリア膜の一方の表面全体にわたって延在していてよい。しかしながら、あるいは、導電性層が、キャリア膜の表面の一部のみにわたって延在していてもよい。導電性層が、1又は複数の無被覆区域を有していてよい。これらの区域は、電磁放射に対して透過性であってよく、例えば、データ送信ウィンドウ、又は通信ウィンドウとして知られている。
【0056】
本発明に係る複合ペインの有利な実施態様では、導電性層が、複合ペインの端部から、2mm〜50mm、好ましくは5mm〜20mmの幅の分、後退して配置されている。その場合には、導電性層は、空気と接触しておらず、かつ、複合ペインの内部において、損傷及び腐食に対して、中間層によって、有利に防護されている。
【0057】
電気供給ラインが、好ましくは、箔伝導体又は可撓性箔伝導体(平坦伝導体、平坦バンド伝導体)として実施される。用語「箔伝導体」は、その幅が、その厚みよりも大幅に大きい導電体を意味する。そのような箔伝導体は、例えば、銅、スズメッキされている銅、アルミニウム、銀、金、若しくはそれらの合金を含有している、又はそれらからできている、ストリップ又はバンドである。箔伝導体は、例えば、2mm〜16mmの幅、及び、0.03mm〜0.1mmの厚みを有している。箔伝導体は、絶縁性の、好ましくはポリマー性シース、例えば、ポリイミドに基づいているシースを、有していてよい。ペインにおける導電性被覆の接触のために適している箔伝導体は、合計の厚みが、例えば、わずか0.3mmである。そのような薄い箔伝導体は、困難なく、別個ののペインの間において熱可塑性中間層に、埋め込むことができる。互いに電気的に絶縁されている複数の伝導性層を、箔伝導体ストリップに配置してよい。
【0058】
あるいは、薄い金属ワイヤを、電気供給ラインとして使用してもよい。金属ワイヤは、特には、銅、タングステン、金、銀、若しくはアルミニウム、又はこれら金属の少なくとも2種の合金を含有している。合金は、モリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、又はプラチナを含有していてもよい。
【0059】
キャリア膜における導電性層の連結領域と電気供給ラインとの間の電気的なライン連結は、好ましくは、導電性接着性物質を介して行われる。導電性接着物質は、連結領域と供給ラインとの間の信頼性がありかつ耐久性のある電気的なライン連結を可能にする。あるいは、電気的なライン連結を、クランプによって行ってもよい。なぜならば、クランプ連結は、積層加工処置によって、滑りに対して強固に固定されるからである。あるいは、供給ラインを、例えば、金属含有、特には、銀含有導電性印刷ペーストによって、連結領域に印刷してもよい。
【0060】
本発明の有利な実施態様では、本発明に係る複合ペインが、光放射手段及び光偏向手段を有している。光放射手段及び光偏向手段は、基材及び/若しくはカバーペインの中に若しくは上に、又は、中間層若しくはキャリア膜の間に、配置される。
【0061】
本発明によると、光放射手段は、少なくとも1つの光源、好ましくはLED又はOLEDを有している。特に有利な点は、寸法が小さい点、及び、電力消費が低い点である。光源によって射出される波長範囲は、可視光の範囲において、例えば、実用的な、かつ/又は美的な考慮に基づいて、自由に選択することができる。光放射手段は、光学要素、特には光を誘導するための光学要素、好ましくは、反射器及び/又は光導波路、例えば、グラスファイバ又はポリマー性光学ファイバを含んでいてよい。光放射手段を、基材又はカバーペインの任意の位置に配置してよく、特には、基材若しくはカバーペインの側方端部に、又は、基材若しくはカバーペインの中央部における小さい凹部に、配置してよい。
【0062】
光偏向手段は、好ましくは、粒子、ドットグリッド、ステッカー、堆積、ノッチ、切込み、ライングリッド、インプリント、及び/又はスクリーン印刷を含んでおり、かつ、基材又はカバーペインにそこから送られる光を分離するために、適している。
【0063】
光偏向手段を、基材又はカバーペインのレベルの、任意の位置に配置してよい。光偏向手段を、接触領域の領域に、又は接触領域に隣接している周囲に、配置することが特に有利であり、そのようにすることで、そうでなければほとんど見えない接触領域を、迅速に見つけることが可能となる。これは、夜又は暗闇において、特に有利である。
【0064】
あるいは、光を、基材、中間層、又はカバーペインに配置される光導波路を通じて接触領域に導入してよく、かつ、接触領域を標識してよい。
【0065】
代替的に、又は組み合わせて、光放射手段は、光偏向手段と一緒に、ペインにデータを可視化することができ、例えば、容量性スイッチ領域のスイッチ状態を通知することができ、又は、例えば、電気機能のスイッチがオンになっているのか若しくはオフになっているのかを示すことができる。
【0066】
本発明に係る複合ペインの代替的な有利な実施態様では、活性光源によって、好ましくは、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、白熱光バルブ、又は他の活性照明、例えば、発光性材料、好ましくは蛍光性若しくはリン光性材料によって、直接に、接触領域を、標識することができ、又は標識する。
【0067】
本発明に係る複合ペインの別の代替的な有利な実施態様では、透明な基材、中間層、又はカバーペインにおける、着色されている、好ましくは白色若しくは黒色に着色されているインプリント、例えばスクリーン印刷によって、接触領域を、標識する。これは、耐久性良くかつ電源とは独立に、接触領域が標識されるという特に有利な点を有している。インプリントは、発光性の材料、好ましくは蛍光性若しくはリン光性材料を含有していてもよく、かつ/又は、発光性であってもよい。
【0068】
好ましい実施態様では、バスバーを、導電性箔のストリップとして実施する。導電性箔は、好ましくは、アルミニウム、銅、スズメッキされた銅、金、銀、亜鉛、タングステン、及び/若しくはスズ、又はそれらの合金、特に好ましくは銅を含有している。
【0069】
バスバーの厚みは、好ましくは10μm〜500μm、特に好ましくは30μm〜200μm、例えば50μm〜100μmである。これらの厚みを有している導電性箔でできているバスバーは、実現するのが技術的に簡単であり、かつ有利な電流搬送能力を有している。
【0070】
バスバーの長さは、複合ペインの設計に左右され、特には、それに沿ってバスバーが配置される端部の長さ、及び、接続される加熱ワイヤの数に左右され、かつ、当業者は、バスバーの長さを、個別の場合において適切に選択することができる。典型的にはストリップ形状であるバスバーの「長さ」は、それらの比較的長い寸法を意味しており、これに沿って、バスバーは、異なる加熱ワイヤ又は加熱ワイヤの部分に慣用的に接触している。
【0071】
バスバーの幅は、好ましくは2mm〜20mm、特に好ましくは5mm〜10mmである。これによって、加熱電力の観点において良好な結果が得られるだけではなく、視覚的に目立たないことという観点からも、良好な結果が得られる。
【0072】
バスバーは、加熱ワイヤに直接に、又は、例えば、はんだ付け組成物若しくは導電性接着性物質を介して、導電的に接続することができる。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、外部電力供給源への連結ケーブルの連結が、側端部のうちの1つの領域において行われ、車両のサイドペインの例では、好ましくは下方端部の領域において行われる。このようにして、連結ケーブルを、車両本体内に隠すことができる。これのために、サイドペインが、好ましくは、少なくとも1個の供給ラインを有しており、このラインが、バスバーと電気的に接続しており、かつ、バスバーから出発して、下方端部に進んでいる。好ましくは、それぞれのバスバーに、そのような供給ラインが提供されている。供給ラインは、例えば、直線状の伸展の形態で下方端部にまで進んでよく、そこで(例えば、下方端部へのバスバーの突出部の領域において)接続してよい。供給ラインは、ラミネート内に既に終端部があってよく、すなわち、下方端部に到達する前に終端部があってよく、かつ、平坦導体によって接触されてよい。あるいは、供給ラインが、下方端部を超えて伸びていてよく、それにより、積層体の外側において、外部連結ケーブルと連結する。
【0074】
複合ペインの供給ラインが、好ましくは、導電性箔のストリップとして実装される。伝導性箔は、好ましくは、アルミニウム、銅、スズメッキされている銅、金、銀、亜鉛、タングステン、及び/若しくはスズ、又はそれらの合金、特に好ましくは銅を含有している。箔の厚みは、好ましくは、10μm〜500μm、特に好ましくは30μm〜200μm、例えば50μm又は100μmである。供給ラインの幅は、好ましくは、2mm〜20mm、特に好ましくは5mm〜10mmである。有利には、供給ラインは、バスバーと同じ箔でできている。
【0075】
好ましい実施態様では、加熱ワイヤが、アルミニウム、銅、スズメッキされている銅、金、銀、亜鉛、タングステン、及び/若しくはスズ、又はそれらの合金を含有しており、特に好ましくは、銅及び/又はタングステンを有している。これは、加熱電力に関して有利である。
【0076】
加熱ワイヤの厚みは、好ましくは10μm〜200μm、特に好ましくは20μm〜100μm、例えば、30μm又は70μmである。これによれば、良好な加熱効果が得られる。さらに、そのようなワイヤは、十分に薄くて、視覚的に目立たない。
【0077】
本発明の好ましい実施態様では、複合ペインの加熱電力が、少なくとも250W/m
2である。これによって、有利な加熱効果が得られる。
【0078】
本発明のさらなる側面は、容量性スイッチ領域を有する加熱可能複合ペインを有しているペイン装置を製造するための方法を含んでおり、少なくとも、以下を含んでいる:
(a)第一中間層(3)を適切なサイズに切断すること、及び、キャリア膜(5)の1つの面の表面に、カソードスパッタリングによって、透明導電性層(6)を適用すること、
(b)第一中間層(3)の表面に、2個のバスバー(22)を適用すること、及び、少なくとも1個の加熱ワイヤ(21)を、第一中間層(3)の表面に適用すること、ここで、加熱ワイヤ(21)が、導電的に両方のバスバー(22)に接続される、
(c)基材(1)、加熱ワイヤ(21)を有しておりバスバー(22)を有している第一中間層(3)、導電性層(6)を有しているキャリア膜(5)、及びカバーペイン(4)の一連の積層体を製造すること、並びに
(d)この一連の積層体を積層加工して、複合ペイン(100)を形成すること。
【0079】
方法の工程(a)における導電性層の適用は、それ自体として知られている方法によって行うことができ、好ましくは、磁場強化型カソードスパッタリングによって行うことができる。これは、簡便、迅速、経済的、かつ均一な基材の被覆の観点から、特に有利である。しかしながら、導電性層を、例えば、蒸気堆積、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化型化学気相成長(PECVD)、又は湿式化学方法によって適用してもよい。
【0080】
キャリア膜を、方法の工程(a)の後に、温度処理に供してもよい。導電性層を有しているキャリア膜を、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも300℃の温度にまで加熱する。温度処理は、導電性層の透過率を向上させることに、かつ/又は、シート抵抗を低減することに役立ちうる。
【0081】
本発明に係る方法の有利な実施態様では、導電性層を少なくとも1つの容量性スイッチ領域及び少なくとも1層の周囲領域に電気的に分割する、少なくとも1個の分離ラインを、好ましくは、レーザーパターニングによって、又は機械的若しくは化学的切除によって、導電性層に導入する。
【0082】
導電性層における別個の分離ラインの脱被覆は、好ましくは、レーザービームによって行われる。薄い金属膜をパターニングするための方法が、例えば、欧州特許出願公開第2200097号明細書、欧州特許出願公開第2139049号明細書から知られている。脱被覆の幅は、好ましくは、10μm〜1000μm、特に好ましくは30μm〜200μm、特には70μm〜140μmである。この範囲においては、特に清浄で、かつ残渣のない、レーザービームによる脱被覆が行われる。レーザービームによる脱被覆は、特に有利であり、なぜならば、無被覆ラインが、視覚的に非常に目立たず、かつ、外観および透明性にわずかしか影響しないからである。レーザー切除の幅よりも広い幅を有しているラインの脱被覆は、レーザービームによるラインの繰り返しの摩滅によって行われる。結果として、方法の時間及び処理コストが、ライン幅の増加とともに、増加する。あるいは、脱被覆を、機械的切除によって、かつ、化学的又は物理的エッチングによって行ってよい。
【0083】
第一又は第二中間層を、単一膜によって形成してよく、又はさらには、互いに重ねて面状に配置される2以上の膜によって形成してよい。
【0084】
方法の工程(d)における基材及びカバーペインの結合を、好ましくは、熱、真空、及び/又は圧力の作用の下で行う。複合ペインを製造するための、それ自体として知られている方法を、使用してよい。
【0085】
例えば、いわゆるオートクレーブ法を、およそ10bar〜15barの高圧で、かつ130℃〜145℃の温度で、およそ2時間にわたって行ってよい。それ自体が知られている真空バッグ又は真空リング法は、例えば、およそ200mbar及び80℃〜110℃で運用される。第一ペイン、熱可塑性中間層、及び第二ペインを、カレンダーにおいて、少なくとも1対のローラーの間で押圧して、ペインを形成してもよい。ペインを製造するためのこのタイプのシステムが、知られており、通常、押圧設備の前の上流に、少なくとも1つの加熱トンネルを有している。押圧操作の間の温度は、例えば、40℃〜150℃である。カレンダー及びオートクレーブ法の組み合わせは、実際に、それらの価値が特に証明されている。あるいは、真空ラミネーターを使用してよい。これらは、1又は複数の加熱可能かつ減圧可能なチャンバーからなり、これにおいて、第一ペイン及び第二ペインを、例えば、およそ60分の間に、0.01mbarから800mbarの減圧で、かつ、80℃〜170℃の温度で、積層加工する。
【0086】
バスバー及び加熱ワイヤを、第一中間層への適用の間または前に、少なくとも領域において、好ましくは加熱する。
【0087】
バスバーの取り付けを、特には、配置によって、しかしながら接着性結合によっても、行ってよい。バスバーの加熱は、例えば、はんだごてによって行う。加熱によって、熱可塑性中間層がわずかに溶解するはずであり、これにより、バスバーに結合される。温度は、好ましくは、150℃〜240℃である。
【0088】
はんだごてを使用する代わりに、バスバーを、プロッター及び加熱されたホイールによって中間層に適用することも可能であり、又は、バスバーを、その表面に埋め込むことも可能である。
【0089】
加熱ワイヤが、2個のバスバーの間に、サンドイッチ状に配置される場合には、上方バスバー(すなわち、中間層への配置のときに中間層から最も遠くにあるバスバー)を、好ましくは、比較的高い温度、例えば、300℃〜360℃で固定する。
【0090】
加熱ワイヤの適用は、好ましくは、いわゆる「プロッター」によって行われる。ここでは、加熱ワイヤを、ロボットアームによって動かし、スプールから巻き出す。加熱ワイヤは、好ましくは、適用の間に加熱され、それにより、熱可塑性中間層が溶解し、加熱ワイヤに結合する。特には、加熱ワイヤが、中間層の表面内に完全に又は部分的に入り込むはずであり、それにより、中間層の表面内に埋め込まれる。
【0091】
本発明の別の側面は、本発明に係る容量性スイッチ領域を有する電気加熱可能ペインを有しているペイン装置の、建物における、特にはアクセス領域、ウィンドウ領域、屋根領域、又はファケード領域における使用、家具及び装置における組み込み要素としての使用、陸上、空中、又は水上移動用輸送手段における、特には列車、船、及び自動車における、例えば、ウィンドシールド、リアウインドウ、サイドウィンドウ、及び/又はルーフパネルとしての使用を含んでいる。
【0092】
さらに示されるのは、複合ペインの内側又は外側での機能の電気的な制御のための容量性スイッチ領域の使用であり、好ましくは、加熱機能、照明、特には複合ペインに配置される照明手段、例えばLED,機能性中間層の視覚的透明性における変化、特には懸濁粒子装置(SPD)層又はエレクトロクロミック中間層の、電気的な制御のための容量性スイッチ領域の使用である。
【0093】
以下では、本発明を、図面及び例示的な実施例を参照して、詳細に説明する。図面は、概略図であり、縮尺通りではない。図面は、決して本発明を限定しない。
【0094】
図1Aは、本発明に係る複合ペイン100を有する、本発明に係るペイン装置101の例示的な実施態様の平面図を描写している。
【0095】
図1Bは、
図1Aの切断線A−A’に沿った断面図である。ここでは、複合ペイン100が、例えば、基材1及びカバーペイン4を有しており、これらが、第一中間層3及び第二中間層2を介して、互いに結合している。複合ペイン100は、例えば、自動車ペインであり、特には、乗用車のウィンドシールドである。複合ペイン100の寸法は、例えば、0.9m×1.5mである。基材1は、例えば、設置された位置において、内部の方に向くことが意図されている。換言すると、基材1の外側表面IVは、内部から到達可能である;他方で、対照的に、カバーペイン4の外側表面Iは、車両内部に対して外側を向いている。基材1及びカバーペイン4は、例えば、ソーダ石灰ガラス製である。基材1の厚みd
1は、例えば、1.6mmであり、かつ、カバーペイン4の厚みd
4は、2.1mmである。無論、基材1及びカバーペイン4は、任意の厚みを有してよく、例えば、同一の厚みを有して実施されてもよい。中間層2,3は、熱可塑性中間層であり、かつポリビニルブチラール(PVB)製である。これらは、それぞれ、例えば、0.38mmの厚みd
2/3を有している。キャリア膜5、例えば4つの容量性スイッチ領域10を有しているキャリア膜5が、複合ペイン100の中央下方部位において、第一中間層3と第二中間層2との間に配置されている。
【0096】
描写されている例示では、台形の複合ペイン100の底部に平行に進行している、8個の加熱ワイヤ21が、例えば、第一中間層3及びカバーペイン4の間に配置されている。加熱ワイヤ21は、それぞれ、それらの末端において、バスバー22に接続している。バスバー22は、それぞれ、供給ライン23に接続している。このようにして、加熱ワイヤ21が、並列回路でバスバー22に接続されており、それにより、バスバー22へ(供給ライン23を介して)電圧を適用すると、加熱電流が、加熱ワイヤ21を通って流れることができるようになっている。加熱電流は、ジュール熱の発生に起因して加熱ワイヤ21の加熱をもたらし、それにより、複合ペイン100を、全体として、電気的に加熱することができるようになっている。
【0097】
加熱ワイヤ21は、例えば、それぞれ、30μm厚のタングステンワイヤ製であり、電気絶縁性シースを有しており、例えば、黒色又は緑色である。このシースは、複数の利点を有している:銅ワイヤを、実施態様の要件に応じて配置することができ、例えば、短絡を起こすことなく、別の導電性構造体を横切らせることもできる。さらには、ポリマー性シースによって、加熱ワイヤが、腐食に対して防護される。さらには、着色されているシースにおける反射は、金属製銅内部伝導体における反射よりも低く、それにより、加熱ワイヤが、視覚的に目立ちにくくなっている。
【0098】
それぞれの加熱ワイヤ21が、それぞれの末端において、それぞれ、バスバー22に電気的に接続している。バスバー22は、例えば100μmの厚み及び例えば7mmの幅を有している銅箔のストリップとして実施される。電圧がバスバー22に適用されると、電流が加熱ワイヤ21を通って流れ、加熱作用を生み出す。電圧は、慣用的な自動車車載電圧14Vであってよく、又は、例えば、42V若しくは48Vの電圧であってもよい。
【0099】
図1Cは、
図1Aの本発明に係るキャリア膜5の拡大図を描写している。
図1Dは、
図1Cの切断線B−B’に沿った対応する断面図を描写している。
【0100】
キャリア膜5は、この例では、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)膜であり、0.05mmの厚みd
5を有している。透明な導電性膜6が、キャリア膜5に配置されている。導電性膜6は、層システムであり、このシステムは、例えば、誘電体層によってそれぞれから分離されている3層の導電性銀層を有している。
【0101】
導電性層6が、例えば、キャリア膜5の1つの面全体にわたって延在している。描写されている例示的な実施態様では、導電性層6が、基材1に面しているキャリア膜5の面に配置されている。キャリア膜5は、ペイン端部からペイン内部へと、およそ8mmの距離後退している。この領域は、積層加工の間に、2層の中間層2,3を接着することによって密封され、それにより、導電性層6が、複合ペイン100の周囲からの湿分に対して防護され、このようにして、腐食及び損傷に対して防護される。あるいは、キャリア膜5を、端領域において無被覆にしておくこと、又は、そこにおいて、導電性層6を除去することも可能であろう。
【0102】
導電性層6が、無被覆分離ライン7によって、互いから電気的に絶縁されている異なる領域に分割されている。
図1Cにおいて描写される例では、2個の容量性スイッチ領域10が、共通の周囲領域15によって電気的に分割されている。それぞれのスイッチ領域10が、接触領域11を有しており、接触領域11は、ほぼ正方形で実施されており、ストリップ形状の供給ライン領域12に移行している。接触領域11の幅b
B及び長さl
Bは、それぞれ、例えば、40mmである。供給ライン領域12の幅b
Zは、例えば、1mmである。したがって、b
Z:b
Bの比は、およそ1:40である。供給ライン領域12が、連結領域13に連結している。連結領域13は、正方形の形状を有しており、辺長b
A、例えば12mmの辺長b
Aを有している。供給ライン領域の長さl
Zは、およそ48mmである。
【0103】
分離ライン7は、例えばほんの100μmの幅t
1を有しており、かつ、例えばレーザーパターニングによって、導電性層6に導入される。そのような低い幅を有している分離ライン7は、視覚的にほとんど知覚することができず、複合ペイン100を通した視界をほんの僅かしか妨げない。これは、特には自動車における使用のために、運転の安全に関して特別な重要性を有しており、かつ、特に美観に優れてもいる。
【0104】
連結領域13は、電気的ライン連結20を介して、箔伝導体17に導電的に連結されている。信頼性のある導電性連結が、好ましくは、導電性接着物質によって得られる。箔伝導体17は、例えば、50μm厚の銅箔から作成されており、例えば、ポリイミド層によって連結領域13の外で絶縁されている。そのようにして、箔伝導体17を、電気的短絡なく、複合ペイン100の底部端部を介して、周囲領域15を超えて、誘導することができる。無論、外への連結領域の電気的ライン連結を、絶縁ワイヤを介して外方向に誘導してもよく、又は、周囲領域の導電性層が断絶している領域を介して、外方向に誘導してもよい。
【0105】
ここで、箔伝導体17が、例えば、複合ペイン100の外で、容量性センサ電子システム14に接続されている。さらには、周囲領域15が、別の連結領域16を介して、センサ電子システム14に連結されてもいる。センサ電子システム14は、スイッチ領域10の、周囲領域15に対するキャパシタンス変化を正確に計測するために適しており、かつ、スイッチシグナルを、例えば、閾値に応じて自動車のCAN−Busに送るために適している。自動車における任意の機能を、スイッチシグナルを介してスイッチ操作することができる。例えば、バスバー及び加熱ワイヤからできている加熱回路に電圧を適用することによって、又はこの回路への電圧をスイッチを切ることによって、複合ペイン100の電気加熱機能のスイッチオン又はスイッチオフをすることができる。
【0106】
複合ペイン100が、例えば、自動車におけるウィンドシールドとして使用される場合には、供給ライン領域12の長さを選択してよく、それにより、車両の運転者又は前方座席の乗員が、楽に、スイッチ領域10の接触領域11に届くことができるようにする。
【0107】
描写されている例示的な実施態様では、センサ電子システム14の構造及びチューニングを連携させて、それにより、基材1の外側ペイン表面IVが容量性スイッチ領域10の接触領域11を介して接触された場合に、スイッチシグナルが作動し、一方で、カバーペイン4の外側ペイン表面Iが容量性スイッチ領域10を介して接触されたときには、スイッチシグナルは作動しないようになっている。このために、本発明に係る複合ペイン100の厚み及び材料を本発明に従って選択し、それにより、接触領域11と基材1の外側表面IVとの間の表面キャパシタンスc
Iが、接触領域11とカバーペイン4の外側表面Iとの間の表面キャパシタンスc
Aよりも大きくなるようにする。
【0108】
表面キャパシタンスc
I又はc
Aは、本発明に関しては、接触領域11と、基材1の外側表面IV又はカバーペイン4の外側表面Iとの間において、接触領域11の直交突出から生じる、複合ペイン100の領域の平板コンデンサのキャパシタンスとして定義され、結果として得られるキャパシタンスを、接触領域の面積にわたって標準化する。
【0109】
図1Bにおいて詳細に描写されている例では、接触領域11と基材2の外側表面IVとの間の表面キャパシタンスc
Iは、個々のキャパシタンスの直列接続(1/c
1+1/c
2)
−1として得られ、個々のキャパシタンスは、c
i=ε
0*ε
r,i/d
iで得られる。これは、比誘電率ε
r,i及び厚みd
iを有しているそれぞれの個々の層のキャパシタンスC
iを、接触領域11の面積Aにわたって標準化したもの、すなわち、c
i=C
i/Aに対応している。
【0110】
さらには、接触領域11とカバーペイン4の外側表面Iとの間の表面キャパシタンスc
Iは、個々のキャパシタンスの直列接続(1/c
3+1/c
4+1/c
5)
−1として得られる。
【0111】
基材1及びカバーペイン4の比誘電率は、ここでは、例えば、ε
r,1=ε
r,4=7である;第一中間層2及び第二中間層3の比誘電率は、ここでは、例えば、ε
r,2=ε
r,3=2.6であり、かつ、キャリア膜5の比誘電率は、ここでは、例えば、ε
r,5=3である。これにより、表面キャパシタンスの比c
I:c
Aが、1.2:1となる。
【0112】
さらには、この例では、接触領域11の面積A、特にはその幅b
Bを、供給ライン領域12の幅b
Zに適合させ、それにより、基材の外側表面IVが接触領域11を介して(すなわち、表面IVへの接触領域11の直交突出により生ずる表面IVの領域において)接触したときにのみ、スイッチシグナルが出力されるようになっており、かつ、表面IVが、供給ライン領域12を介して接触したときには、スイッチシグナルが出力されないようになっている。
【0113】
我々の実験が驚きを伴って示したように、導電性層6の接触領域11とカバーペイン4との間における加熱ワイヤの存在が、選択性をさらに向上させる。換言すると、基材1の外側表面IVにおける接触のときの感受性が、カバーペイン4の外側表面Iへの接触と比較して、さらに大幅に向上する。これは、予想外であり、驚くべきことであった。
【0114】
図2Aは、本発明に係る複合ペイン100を有している、本発明に係るペイン装置101の、代替的で例示的な実施態様の平面図を描写している。
【0115】
図2Bは、
図2Aの切断線A−A’に沿った断面図である。単純化のために、箔導電体17は、示されていない。ここでは、複合ペイン100が、例えば、基材1及びカバーペイン4を有しており、これらが、第一中間層3を介して互いに接合している。複合ペイン100は、例えば、ペインであり、特には、乗用車のサイドペインである。複合ペイン100の寸法は、例えば、1.0m×0.6mであり、サイドペインの前方端部が、上方端部の領域において、斜めになっている。基材1は、例えば、設置位置において、内部の方を向くことが意図されている。換言すると、基材1の外側表面IVは、内部から到達可能であり、対照的に、カバーペイン4の外側表面Iが、外部の方を向いている。基材1及びカバーペイン4は、例えば、ソーダ石灰ガラス製である。基材1の厚みd
1は、例えば、2.1mmであり、カバーペイン4の厚みd
4は、例えば、同様に2.1mmである。第一中間層3は、熱可塑性中間層であり、ポリビニルブチラール(PVB)製である。第一中間層3は、0.76mmの厚みd
3を有している。
【0116】
8個の加熱ワイヤ21が、例えば、カバーペイン4に面している第一中間層3の表面に埋め込まれている。加熱ワイヤ21は、例えば、銅製であり、30μmの厚みを有している。それぞれの加熱ワイヤ21が、その末端において、それぞれ、バスバー22に電気的に接触している。バスバー22は、銅箔のストリップとして実施されており、その厚みが、例えば、100μmであり、かつ、その幅が、例えば、7mmである。電圧がバスバー22に適用されると、電流が加熱ワイヤ21を通って流れ、加熱作用を生み出す。電圧は、慣用的な自動車車載電圧14Vであってよく、又は、例えば、42V若しくは48Vの電圧であってもよい。描写されている例示的な実施態様では、バスバー22が、電源24に連結されており、電源24は、一方のバスバー22に接地電圧を提供し、かつ、他方のバスバー22に、14Vの電圧を提供する。
【0117】
複合ペイン100の中央下方部位において、それぞれが容量性スイッチ領域10を有している4つのキャリア膜5が、第一中間層3と基材1との間に配置されている。キャリア膜5は、一方の端部において、水滴形状の形態を有しており、これが、接触領域11を形成している。接触領域11は、キャリア膜5の狭い領域、供給ライン領域12を介して、正方形の連結領域13に導電的に連結している。この例では、それぞれのキャリア膜5が、完全な導電性層6を有しており、この導電性層は、分離ライン又は他の絶縁によって分割されていない。換言すると、ここでは、キャリア膜5が、周囲領域を有していない。
【0118】
キャリア膜5は、この例では、0.05mmの厚みd
5を有している透明ポリエチレンテレフタレート(PET)膜である。導電性層6は、例えば、誘電体層によって互いから離されている3層の導電性銀層を有している層システムである。
【0119】
それぞれのスイッチ領域10が、接触領域11を有しており、接触領域11は、おおよそ水滴形状で実施されており、かつ、ストリップ形状の供給ライン領域12へと移行している。接触領域11の幅b
B及び長さl
Bは、それぞれ、例えば、40mmである。供給ライン領域12の幅b
Zは、例えば、1mmである。したがって、比b
Z:b
Bは、およそ1:40である。供給ライン領域12は、連結領域13に連結している。連結領域13は、丸みを帯びた角を有している正方形形状を有しており、端長b
Aが、例えば12mmである。供給ライン領域の長さl
Zは、およそ48mmである。
【0120】
導電性層6が、例えば、キャリア膜5の1面の表面全体にわたって延在している。キャリア膜5は、複合ペイン100の最も近接している側端部への端部からの距離、例えば15mm、を有している。この領域は、積層加工時における、基材1への第一中間層3の接着的な結合によって密封されており、それにより、導電性層6が、複合ペイン100の周囲からの湿分に対して防護され、したがって、腐食及び損傷に対して防護される。描写されている例示的な実施態様では、導電性層6が、キャリア膜5の、基材1に面しているその面に配置されている。
【0121】
連結領域13は、電気的ライン連結20を介して箔伝導体17に導電的に連結されている。信頼性のある導電性連結が、好ましくは導電性接着物質によって達成される。箔伝導体17は、例えば、50μm厚の銅箔でできており、かつ、例えば、ポリイミド層によって連結領域13の外において絶縁されている。このようにして、箔伝導体17を、電気的な短絡なく、複合ペイン100の下方端部を介して、周囲領域15を超えて外に送ることができる。無論、外側への連結領域13の電気的な連結を、絶縁されているワイヤを介して、又は、周囲領域15が断絶している領域を介して、外向きに誘導してもよい。
【0122】
ここでは、箔導電体17が、例えば、複合ペイン100の外において、容量性センサ電子システム14に連結している。
【0123】
既に言及したように、キャリア膜5は、この例示的な実施態様では、周囲領域を有していない;換言すると、導電性層6が、連結領域11、供給ライン領域12、及び連結領域13を完全に形成している。そうであるにもかかわらずキャパシタンスの差分計測を可能にするために、センサ電子システム14を、バスバー22の供給ライン23のうちの1つに導電的に連結する。この例では、車両接地に連結しているバスバー22の供給ライン(
図2Aの右側)を介して、導電的に連結する。
【0124】
センサ電子システム14は、加熱ワイヤ21及びバスバー22からなる加熱回路に対するスイッチ領域10のキャパシタンス変化を正確に計測するために適しており、かつ、スイッチシグナルを、例えば、閾値に応じて車両のCAN−Busに送るために適している。これのために、容量性スイッチ領域10が、複合ペイン100を通る
投影において、加熱ワイヤ21のうちの1個と重なり合うことが、特に有利である。
【0125】
スイッチシグナルを介して、車両における任意の機能のスイッチ操作をすることができる。例えば、加熱ワイヤ21及びバスバー22からなる加熱回路の電源24を、選択的にオン若しくはオフし、又は制御することができ、そのようにして、複合ペイン100の加熱機能を制御しうる。
【0126】
代替的に又は追加的に、複合ペイン100が、光学的透明度を制御するための、懸濁粒子装置(SPD)、エレクトロクロミック、又は他のタイプの層若しくは膜を有していてよい。これらは、スイッチシグナルによってその光学的な透明度を変化させることができ、ここでは、例えば、4つの透明性レベルで変化させることができ、4つの透明性レベルを、それぞれ、4つの容量性スイッチ領域10を介して選択してよい。無論、代替的に又は追加的に、他の電気的な機能、例えば、電気照明、複合ペイン100の移動、例えば車両ドアにおけるサイドウィンドウの開け閉めを、制御しうる。代替的に又は追加的に、1又は複数の容量性スイッチ領域10が、キーパッドを形成し、かつ電子システムに接続されてよく、例えば、特定のキー配列が入力されたときに、車両ドアを開け、若しくはカギをかけることができ、警報システムのスイッチを入れることができ、又は、複雑な制御を行うことができる。
【0127】
複合ペイン100が、例えば、車両におけるルーフパネルとして使用される場合には、供給ライン領域12の長さを選択してよく、それにより、車両の運転者、前方座席の乗員、又は後方座席の乗員が、楽に、スイッチ領域10の接触領域11に届くことができるようにする。無論、これのために、複数のキャリア膜5を、複合ペイン100に配置することさえも可能であり、例えば、それぞれの車両占有者に対してキャリア膜5を配置することさえも可能である。
【0128】
描写されている例示的な実施態様では、センサ電子システム14の構造及びチューニングが調整されており、それにより、基材1の外側ペイン表面IVが、容量性スイッチ領域10の接触領域11を介して接触された場合に、スイッチシグナルが作動するようになっており、一方で、カバーペイン4の外側ペイン表面Iが、容量性スイッチ領域10を介して接触された場合には、スイッチシグナルが作動しないようになっている。これは、車両外側からの意図的な又は意図しない複合ペイン100への接触によってはスイッチシグナルが作動し得ないという特に有利な点を有している。また、意図しないスイッチシグナルの作動、例えば、雨による又は車の洗浄による意図しないスイッチシグナルの作動が、回避される。これのために、本発明に係る複合ペイン100の材料における厚みが選択され、それにより、接触領域11と基材1の外側表面IVとの間の表面キャパシタンスc
Iが、接触領域11とカバーペイン4の外側表面Iとの間の表面キャパシタンスc
Aよりも大きくなるようになっている。さらには、容量性スイッチ領域10を、加熱回路よりも基材1に近接して配置することが、有利であるが、必須ではない。
【0129】
図2Cにおいて描写されている断面図は、
図2Bの複合ペイン100に係る複合ペイン100に対応しており、ここでは、導電性層6のみが、基材1から離れて面しているキャリア膜5のその面に、配置されている。
【0130】
図2Dにおいて描写されている断面図は、その構成において、
図2Cの構成に対応しており、ここでは、加熱ワイヤ21及びバスバー22が、カバーペイン4と第一中間層3との間には配置されておらず、むしろ、基材1と第一中間層3との間に配置されている。ここでは、加熱ワイヤが、導電性層6に隣接して配置されている。電気的な短絡を回避するために、加熱ワイヤ21が、ポリマー性シースによって電気的に絶縁されている。我々の調査によって驚きをもって示されたように、容量性スイッチ領域の機能は、導電性層6と加熱ワイヤ21との間の空間的な近接によっては、実質的には損なわれない。この結果は、当業者にとっては、予期しないものであり、驚くべきものであった。
【0131】
有利な実施態様では、少なくとも1個の加熱ワイヤ21が、導電性層6の突出部の少なくとも1つの小区域において、湾曲した、曲がった、蛇行して長くなった、ジグザグの、又はその他の態様で、実施されている。これは、加熱ワイヤ21のこの区域において、複合ペイン100がより強く加熱されうるという特に有利な点を有している。このようにして、容量性スイッチ領域10の位置、特には接触領域11の位置を、特に迅速に解氷し又は凝結除去することができ、かつ、容量性スイッチ領域10の位置を、使用者が、迅速かつ簡便に特定することができる。さらには、容量性スイッチの感受性の非対称性が、この実施態様によって補強される。
【0132】
図3は、
図2Bの本発明に係る複合ペイン100の改良形態を描写している。この例では、追加的なシールドワイヤ25が、キャリア膜5と第一中間層3との間で、第一中間層3への接触領域11の突出によって生じる領域に配置されていた。シールドワイヤ25によって、容量性スイッチの感受性の非対称性が、補強されるが、しかしながら、シールドワイヤ25を、加熱回路又はセンサ電子システム14のいずれにも連結させる必要はない。シールドワイヤ25は、互いから電気的に隔離されているワイヤ部位からなっていてよく、又は、1若しくは複数の、例えば、曲がって進んでいる若しくは蛇行しているワイヤからなっていてよい。無論、シールドワイヤ25が、1つの面において、又は両面において、参照接地又は加熱ワイヤ21に電気的に接続していてもよい。
【0133】
無論、シールドワイヤ25を、加熱ワイヤ21と同じレベルに配置してもよい。これのために、例えば、加熱ワイヤ21を、例えば、
図2Dで描写されているように、基材1と第一中間層3との間に配置してよい。
【0134】
これは、製造技術の観点から、特に有利であり、かつ、実現が簡単である。
【0135】
図4は、容量性スイッチ領域10を有している複合ペイン100を製造するための、本発明に係る方法の例示的な実施態様のフローチャートを描写している。
本発明の態様は、以下のとおりである:
〈態様1〉
下記を有している、ペイン装置(101):
下記を有しており、容量性スイッチ領域(10)を有している加熱可能複合ペイン(100):
基材(1)及びカバーペイン(4)、並びに、
前記基材(1)と前記カバーペイン(4)との間に配置されている、少なくとも1層の第一中間層(3)、ここで、
導電性層(6)を有しているキャリア膜(5)が、少なくとも部分的に、前記基材(1)と前記第一中間層(3)との間に、又は前記カバーペイン(4)と前記第一中間層(3)との間に配置されており
、
前記導電性層(6)の少なくとも1つの領域が、容量性スイッチ領域(10)を形成しており、
前記容量性スイッチ領域(10)が、接触領域(11)、供給ライン領域(12)、及び連結領域(13)を有しており、前記供給ライン領域(12)が、前記接触領域(11)を、前記連結領域(13)に電気的に連結しており、かつ、前記連結領域(13)が、センサ電子システム(14)に電気的に接続していてよく、かつ、
少なくとも1個の加熱ワイヤ(21)及び少なくとも2個のバスバー(22)が、前記基材(1)と前記カバーペイン(4)との間に配置されており、かつ、それぞれの場合に、前記加熱ワイヤ(21)の1つの末端が、それぞれ、前記バスバー(22)のうちの1個と導電的に連結しており、それにより、前記バスバー(22)に電圧を適用すると、前記加熱ワイヤ(21)を通って加熱電流を流すことができるようになっており、それによって、前記加熱ワイヤ(21)を加熱することができる、
第一入力部を介して前記連結領域(13)に導電的に連結しており、かつ、第二入力部を介して前記加熱ワイヤ(21)又は前記バスバー(22)に導電的に連結している、容量性センサ電子システム(14)。
〈態様2〉
前記センサ電子システム(14)の前記第二入力部が、電気接地に連結している、請求項1に記載のペイン装置(101)。
〈態様3〉
前記複合ペイン(100)を通る
投影における前記容量性スイッチ領域(10)が、少なくとも1個の加熱ワイヤ(21)と重なり合っている、請求項1又は2に記載のペイン装置(101)。
〈態様4〉
前記加熱ワイヤ(21)及び前記バスバー(22)が、前記第一中間層(3)と前記カバーペイン(4)との間に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様5〉
前記キャリア膜(5)の端部からの、前記基材(1)の1つの側端部までの、又は前記カバーペイン(4)の1つの側端部までの、最小の距離rが、5mm以上、好ましくは15mm以上、特には25mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様6〉
少なくとも1層の第二中間層(2)が、前記基材(1)と、前記導電性層(6)を有している前記キャリア膜(5)との間に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様7〉
前記加熱ワイヤ(21)が、金属、好ましくはタングステン又は銅を含有しており、かつ、電気絶縁性シース、好ましくはポリマー製の電気絶縁シースを有している、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様8〉
前記供給ライン領域(12)が、1cm〜70cm、好ましくは1cm〜8cmの長さl
Zを有しており、かつ、0.5mm〜10mm、好ましくは0.5mm〜2mmの幅b
Zを有しており、好ましくは、矩形、ストリップ、又はラインの形状を有しており、かつ、前記供給ライン領域(12)の幅b
Zに対する長さl
Zの比が、好ましくは1:700以下、特に好ましくは1:5〜1:100である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様9〉
前記接触領域(11)の面積が、1cm
2〜200cm
2、特に好ましくは1cm
2〜9cm
2であり、かつ/又は、矩形、正方形、台形、三角形、円形、楕円形、若しくは水滴形態の形状を有しており、若しくは丸みを帯びた角を有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様10〉
前記第一中間層(3)及び/又は前記第二中間層(2)が、透明であり、ポリビニルブチラール(PVB)を含有しており、若しくはそれでできており、かつ/又は、2〜4の、特に好ましくは2.1〜2.9の比誘電率ε
r,2/3を有しており、かつ、前記キャリア膜(5)が、透明であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含有しており、若しくはそれでできており、かつ/又は、2〜4の、特に好ましくは2.7〜3.3の比誘電率ε
r,5を有している、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様11〉
前記基材(1)及び/又は前記カバーペイン(4)が、ガラス、好ましくは平坦なガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、若しくはポリマー、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び/若しくはそれらの混合物を含有しており、かつ/又は、2〜8、特に好ましくは6〜8の比誘電率ε
r,1/4を有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様12〉
前記導電性層(2)が、透明であり、かつ/又は、0.4オーム/スクエア〜200オーム/スクエア、好ましくは0.5オーム/スクエア〜20オーム/スクエアのシート抵抗を有しており、かつ/又は、銀(Ag)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素でドープされているスズ酸化物(SnO
2:F)若しくはアルミニウムでドープされている亜鉛酸化物(ZnO:Al)を含有している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様13〉
前記センサ電子システム(14)の感受性が選択されており、それにより、前記基材(1)の外側表面(IV)における人間の指による前記接触領域(11)の接触のときには、センサ電子システムが、スイッチシグナルを出力し、かつ、前記カバーペイン(4)の外側表面(I)における前記接触領域(11)の接触のときには、スイッチシグナルを出力せず、又は異なるスイッチシグナルを出力する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様14〉
前記センサ電子システム(14)の感受性が選択されており、それにより、前記基材(1)の外側表面(IV)における、かつ/又は前記カバーペイン(4)の外側表面(I)における、人間の指による前記接触領域(11)の接触のときには、センサ電子システムが、スイッチシグナルを出力し、かつ、前記基材(1)の前記表面(IV)における、かつ/又は前記カバーペイン(4)の前記表面(I)における前記供給ライン領域(12)の接触のときには、スイッチシグナルが出力されず、又は、異なるスイッチシグナルが出力される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペイン装置(101)。
〈態様15〉
請求項1〜14のいずれか一項に記載の、容量性スイッチ領域(10)を有している容量性複合ペイン(100)を有しているペイン装置(101)を製造するための方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
(a)第一中間層(3)を適切なサイズに切断すること、及び、透明導電性層(6)を、カソードスパッタリングによって、キャリア膜(5)の1面の表面に適用すること、
(b)前記第一中間層(3)の表面に2個のバスバー(22)を適用すること、及び、前記第一中間層(3)の表面に少なくとも1個の加熱ワイヤ(21)を適用すること、ここで、前記加熱ワイヤ(21)が、両方のバスバー(22)に導電的に連結している、
(c)基材(1)、前記加熱ワイヤ(21)を有しており前記バスバー(22)を有している前記第一中間層(3)、導電性層(6)を有しているキャリア膜(5)、及びカバーペイン(4)の一連の積層体を製造すること、
(d)前記一連の積層体を積層加工して、複合ペイン(100)を形成すること。
〈態様16〉
請求項1〜14に記載の容量性スイッチ領域(10)を有する容量性複合ペイン(100)を有しているペイン装置(101)の、陸上、空中、水上における移動のための輸送手段における、特には自動車における、例えば、ウィンドシールド、リアウインドウ、サイドウィンドウ、及び/又はルーフパネルとしての、かつ、機能性個別部品としての、かつ、家具、家電製品、及び建物における組み込み式構成要素としての、特には電気ヒーターとしての、使用。