(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一局面に係る実装構造体の製造方法は、第1回路部材と、第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を準備する工程と、熱硬化性シートと熱可塑性シートとを、実装部材に配置する配置工程と、熱硬化性シートと熱可塑性シートとの積層体を第1回路部材に対して押圧するとともに、積層体を加熱して第2回路部材を封止する封止工程(第1封止工程)と、熱可塑性シートを除去する除去工程と、を具備する。ここで、複数の第2回路部材の少なくとも1つは、第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材であり、第1封止工程では、空間を維持しながら、複数の第2回路部材が封止される。
【0012】
本発明の上記局面によれば、熱硬化性シートと熱可塑性シートとを積層した状態で封止材として用いるため、熱可塑性シートの塑性変形により、破断することなく、複数の回路部材間の隙間の形状に、積層したシートを追随させることができるとともに、内部空間に入り込むことが抑制される。また、熱硬化性シートの高い固着性により、隙間の形状に積層したシートが追随した状態で、回路部材に熱硬化性シートを固着させることができるとともに、固着したシートによりある程度の強度を確保することができる。よって、回路部材の内部空間を維持しながら、一括した封止が可能となる。
【0013】
配置工程に先立って、各シートを準備してもよく、熱硬化性シートと熱可塑性シートとが一体化されたシートを準備してもよい(シートの準備工程)。また、除去工程の後、硬化層上に熱硬化性材料を充填して、硬化させてもよい(第2封止工程)。
【0014】
本発明の他の局面には、上記の製造方法により製造される実装構造体も包含される。
【0015】
本発明のさらに他の局面には、上記実装部材を封止するために用いられる上記のシートも包含される。このようなシートでは、熱硬化性シートと熱可塑性シートとが一体化されていてもよい。また、本発明の別の局面には、上記実装部材の封止への上記のシートの使用も含まれる。
【0016】
以下に、適宜図面を参照しながら、実装構造体の製造方法の各工程および実装構造体の封止に使用されるシートについてより具体的に説明する。ただし、図面は、本発明の一実施形態に過ぎず、例示および数値範囲を含む以下の説明は、図面の実施形態に限られるものではなく、本発明に適用される。
図1〜
図8は、それぞれ、本発明の上記局面にかかる製造方法における所定の工程について、実装部材あるいは実装構造体の断面により説明するための模式図である。
【0017】
(実装部材の準備工程(第1準備工程))
本工程では、第1回路部材1と、第1回路部材1に搭載される複数の第2回路部材2と、を備える実装部材を準備する(
図1)。
【0018】
第1回路部材1は、例えば、半導体素子、半導体パッケージ、ガラス基板、樹脂基板、セラミック基板およびシリコン基板よりなる群から選択される少なくとも1種である。これら第1回路部材は、その表面に、ACF(異方性導電フィルム)やACP(異方性導電ペースト)のような導電材料層を形成したものであってもよい。樹脂基板は、リジッド樹脂基板でもフレキシブル樹脂基板でもよく、例えば、エポキシ樹脂基板(例えば、ガラスエポキシ基板)、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド樹脂基板、フッ素樹脂基板などが挙げられる。第1回路部材1は、内部に半導体チップ等を備える部品内蔵基板であってもよい。
【0019】
第2回路部材2は、基準部材21と、基準部材21に隣接する第1の隣接部材22と、基準部材21に隣接する第2の隣接部材23と、を備える。基準部材21と第1の隣接部材22との間の離間距離D1と、基準部材21と第2の隣接部材23との間の離間距離D2とは、図示例のように異なっていてもよく、同じであってもよい。第1の隣接部材22の基準部材21からの高さΔH1と、第2の隣接部材23の基準部材21からの高さΔH2とは、図示例のように異なっていてもよく、同じであってもよい。離間距離D1とD2とが異なる場合、および/または高さΔH1とΔH2とが異なる場合には、第1回路部材1および第2回路部材2により形成される凹凸のサイズや形状が不均一であるため、シートを追随させ難く、内部空間を維持しながら、一括して封止することが難しい。本発明の上記局面によればこのような場合でも、内部空間を維持しながら、凹凸にシートを追随させることができるため、一括して封止することができる。なお、図示例では、第2回路部材2を3つ備えているが、この場合に限らず、例えば、2つであってもよく、4つ以上であってもいい。
【0020】
高さΔHとは、第1回路部材1の主面方向から見たときの、基準部材21の最も高い(第1回路部材1からの距離が最も大きい)部分を基準としたときの、これに隣接する隣接部材の最も高い部分の高さであり、基準部材21より高いか低いかも加味する。例えば、第1の隣接部材22が基準部材21よりも高く、第2の隣接部材23が基準部材21よりも低い場合、第1の隣接部材22および第2の隣接部材23と基準部材21との高さの差が同じであっても、高さΔH1と高さΔH2とは異なる。また、例えば、第1の隣接部材22の高さが基準部材21と同じ(ΔH1=0)であり、第2の隣接部材23の高さが基準部材21よりも高い(あるいは低い)場合、高さΔH1と高さΔH2とは異なる。
【0021】
離間距離D2が離間距離D1よりも大きい場合、離間距離D1に対する離間距離D2の割合は、200%以上であってもよく、300%以上であってもよい。このように離間距離が大きく異なる場合であっても、シート4Pによれば、これら第2回路部材2を一括して封止することができる。離間距離Dとは、第1回路部材1の主面の法線方向から見たときの、基準部材21とこれに隣接する隣接部材(図示例では、隣接部材22あるいは23)との間の最短距離である。
【0022】
離間距離Dは、第1回路部材1の大きさ、第2回路部材2の数、大きさおよび配置方法等により適宜設定され、特に限定されないが、シート4Pによれば、離間距離が狭い場合(例えば、離間距離が150μm以下の場合)や、第2回路部材の高さが高い場合(例えば、高さが200μm以上の場合)でも、これら第2回路部材2を一括して封止することができる。離間距離Dの下限は、シート4Pの厚みに応じて適宜設定すればよいが、例えば、シート4Pの厚みTの10%以上4000%以下であってもよい。離間距離Dがシート4Pの厚みTに対してこのような範囲であれば、シート4Pを第2回路部材間の隙間により入り込ませ易い。離間距離Dは、例えば、10μm以上6mm以下であってもよく、10μm以上2000μm以下であってもよい。実装部材は、狭ピッチ化、高密度実装などの観点からは、離間距離Dが、例えば、400μm以下(好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下または100μm以下)である部分を少なくとも含むことが好ましい。本発明の上記局面によれば、このように離間距離Dが小さな場合でも、高い封止性で、回路部材の一括封止が可能である。
【0023】
第1の隣接部材22の高さが第2の隣接部材23の高さよりも高い場合、第2の隣接部材23の高さに対する第1の隣接部材22の高さの割合は、200%以上であってもよく、300%以上であってもよい。このように高さが大きく異なる場合であっても、シート4Pによれば、これら第2回路部材2を一括して封止することができる。第1の隣接部材22の高さは、第1の隣接部材22の第1回路部材1から最も遠い部分までの距離であり、第2の隣接部材23の高さは、第2の隣接部材23の第1回路部材1から最も遠い部分までの距離である。
【0024】
第2回路部材2は、第1回路部材1にバンプ3を介して搭載された中空部材(図示例では、基準部材21および第2の隣接部材23)を含む。第1回路部材1と中空部材との間には内部空間Sが形成される。中空部材は、この内部空間Sを維持した状態で封止(中空封止)されることを要する電子部品である。中空部材としては、例えば、RFIC、SAW、センサーチップ(加速度センサー等)、圧電振動子チップ、水晶振動子チップ、MEMSデバイスなどが挙げられる。中空部材以外の第2回路部材2としては、例えば、FBAR、BAW、チップ多層LCフィルタ、誘電体フィルタ、積層セラミックコンデンサ(MLCC)などが挙げられる。
【0025】
すなわち、実装部材は、各種第1回路部材1上に第2回路部材2が搭載されたチップ・オン・ボード(CoB)構造(チップ・オン・ウエハ(CoW)、チップ・オン・フィルム(CoF)、チップ・オン・グラス(CoG)を含む)、チップ・オン・チップ(CoC)構造、チップ・オン・パッケージ(CoP)構造およびパッケージ・オン・パッケージ(PoP)構造を有することができる。実装部材は、第2回路部材2が搭載された第1回路部材1に、さらに第1回路部材1および/または第2回路部材2を積層したような多層実装部材であってもよい。
【0026】
バンプ3は導電性を有しており、第1回路部材1と中空部材とは、バンプ3を介して電気的に接続される。バンプ3の高さは特に限定されないが、例えば、5μm以上150μm以下であってよい。バンプ3の材料も導電性を有する限り特に限定されず、例えば、銅、金、半田ボールなどが挙げられる。
【0027】
(シートの準備工程(第2準備工程))
本工程では、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pを備えるシート(シート状封止材)4Pを準備する(
図1)。図示例では、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pが一体化されたシート4Pを準備する場合を示すが、この場合に限らず、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pをそれぞれ別に準備してもよい。熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pを別々に準備する場合には、双方のシートを、後続の配置工程で重ねて積層体としてもよい。この場合でも、第2準備工程において、熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとが一体化していないだけで、各シートの構成、および実装構造体の製造方法の各工程の手順や条件は、一体化されたシート4Pの場合と同様である。
【0028】
(シート4P(シート状封止材))
シート4Pは、複数の第2回路部材2を一括して封止する部材である。
シート4Pは、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pを後続の配置工程で重ねた状態で用いることができればよく、これらのシート41P,42P以外の他のシート(第3シート)を含むこともできる。
【0029】
シート4Pによれば、中空部材を含み、かつ、様々な間隔で配置された複数の第2回路部材2を、中空部材の内部空間Sを維持しながら、一括して封止することができる。通常、離間距離が小さいほど、シート状封止材は、回路部材同士の隙間に入り込み難くなる。しかし、シート4Pは、内部空間Sに入り込まない程度の弾性と、離間距離の大小にかかわらず第2回路部材2間に入り込んで、伸展できる程度の粘性と、を有する。
【0030】
シート4Pを用いる場合、複数の第2回路部材2の第1回路部材1からの高さがそれぞれ異なっていても、中空部材の内部空間Sを維持しながら、これら複数の第2回路部材2を一括して封止することが可能となる。シート4Pは、小さな隙間の中で第1回路部材1に向かって伸展することができる程度の粘性を有している。そのため、一旦、第2回路部材2間に入り込むことができれば、シート4Pは第2回路部材2の高さに関わらず、第1回路部材1の表面に到達するまで進展することができる。
【0031】
シート4Pが、内部空間Sおよび第2回路部材2間に入り込むか否かは、第2回路部材2に対向する熱硬化性シート41Pあるいはこれに隣接する熱可塑性シート42Pの粘弾性に大きく依存する。そのため、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pの少なくとも一方について、第2回路部材2が封止されるときの温度tにおける、シートを構成する材料の損失正接tanδと、貯蔵せん断弾性率G’とを特定の範囲に制御してもよい。
【0032】
例えば、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pの少なくとも一方のシートを構成する材料について、第2回路部材2が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδが0.1以上0.8以下を満たし、かつ、貯蔵せん断弾性率G’が1×10
4Pa以上1×10
7Pa以下を満たすように制御する。これにより、複数の第2回路部材2を、内部空間Sを維持しながら一括して封止することが容易になる。特に、複数の第2回路部材2の離間距離や高さが異なる場合でも、一括して容易に封止を行うことができる。
【0033】
なかでも、多様な形状および配置を有する内部空間Sを維持し易い点で、熱硬化性シートを構成する熱硬化性材料が、上記損失正接tanδと貯蔵せん断弾性率G’とを満たすことが好ましい。特に、本発明の一実施形態に係るシートは、このような損失正接tanδおよび貯蔵せん断弾性率G’を有する熱硬化性材料で構成された熱硬化性シートを備えることが好ましい。
なお、第2回路部材2が封止されるときの温度tとは、内部空間Sが維持された状態で、第2回路部材2の表面がシート4Pによって覆われたときのシート4Pの温度である。
【0034】
損失正接tanδは、温度tにおけるシートを構成する材料の貯蔵せん断弾性率G’と損失せん断弾性率(G”)との比:G”/G’である。貯蔵せん断弾性率G’および損失せん断弾性率G”は、JISK 7244−1:1998に準拠した粘弾性測定装置により測定することができる。具体的には、貯蔵せん断弾性率G’および損失せん断弾性率G”は、直径8mm×厚み1mmの試験片について、粘弾性測定装置(例えば、TA Instruments社製、ARES−LS2)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件で測定される。
【0035】
なお、本明細書中、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pの各シートについて物性値等を測定する場合には、一体化する前の各シートそれぞれで試験片を作製してよく、また一体化する前の各シートで試験片を作製することが難しい場合は、上記のように、シート4Pからの分離した各シートを使用してもよい。各シートの分離方法は、特に制限されず、例えば、シート4Pにおいて、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pの一方を、他方から剥離させることにより分離してもよく、他方のシートを除去して一方のシートを回収してもよい。物性値等を測定する際に用いる試験片は、このようにして分離された各シートから作製してもよい。ただし、各シートの厚みに過不足がある場合など、シートからの試験片の作製が難しい場合には、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pのそれぞれを構成する材料から作製した試験片について物性値等が測定される。
【0036】
(熱硬化性シート41P)
熱硬化性シート41Pを構成する熱硬化性材料の温度tにおける損失正接tanδ1は、例えば、0.1以上0.6以下であり、0.1以上0.4以下であってもよい。また、熱硬化性材料の温度tにおける貯蔵せん断弾性率G1’は、1×10
4Pa以上1×10
7Pa以下であってもよく、1×10
4Pa以上5×10
6以下(例えば、1×10
5Pa以上5×10
6Pa以下)であってもよく、1×10
4Pa以上1×10
6Pa以下であってもよい。
【0037】
絶縁性の観点から、熱硬化性シート41Pの体積抵抗率は1×10
8Ω・cm以上であることが好ましく、1×10
10Ω・cm以上であることがより好ましい。
熱硬化性シート41Pの体積抵抗率は、例えば、抵抗率計(例えば、(株)三菱化学アナリテック社製、ハイレスタUP)などの市販の装置を用いて測定することができる。
【0038】
熱硬化性シート41Pの厚みT1は、特に限定されない。なかでも、厚みT1は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であってよい。これにより、第2回路部材2同士の離間距離が小さい場合にも、これらの間に入り込み易くなるとともに、実装構造体10の低背化が可能になる。内部空間Sが維持され易くなる点で、厚みT1は5μm以上であることが好ましい。熱硬化性シート41Pの厚みT1は、熱硬化性シート41Pの主面間の距離である。主面間の距離は、任意の10箇所における距離を平均化して求めることができる。熱可塑性シート42Pの厚みT2もT1の場合に準じて求められる。
なお、各シート41Pおよび42Pの厚みT1およびT2、並びにシート4Pの厚みは、それぞれ、第1回路部材に対して押圧する前の厚みである。
【0039】
硬化前の熱硬化性材料の25℃における伸び率(平均伸び率)は特に限定されないが、50%以上3000%以下であることが好ましい。これにより、熱硬化性シート41Pが第2回路部材2間に入り込むことが容易となる。
なお、熱硬化性材料の伸び率とは、熱硬化性シート41Pの場合に準じてシート化された30mm長さ、10mm幅、および100μm厚みの試験片について測定される値である。まず、粘弾性測定装置(例えば、TA Instruments社製、ARES)を用いて、25℃にて、一定Hencky歪モードの条件下、治具(Extensional Viscosity Fixture)を用い、せん断速度0.1s
-1で伸び率を測定する。伸び率は、試験片に亀裂が生じたときの試験片の長さL1と初期の試験片の長さL0との差(=L1−L0)のL0に対する比率(=(L1−L0)/L0×100(%))である。複数(例えば、5つ)の試験片について、伸び率を測定し、平均化することにより平均伸び率を求める。
【0040】
熱硬化性シート41Pは、熱硬化性材料により構成される。熱硬化性材料(第1熱硬化性材料)としては、例えば、熱硬化性樹脂および硬化剤を含む樹脂組成物などが挙げられる。
封止前の熱硬化性樹脂は、未硬化状態でもよく、半硬化状態でもよい。半硬化状態とは、熱硬化性樹脂がモノマーおよび/またはオリゴマーを含む状態であり、熱硬化性樹脂の三次元架橋構造の発達が不十分な状態をいう。半硬化状態の熱硬化性樹脂は、室温(25℃)では溶剤に溶解しないが硬化は不完全な状態、いわゆるBステージにある。
【0041】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでもエポキシ樹脂が好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式脂肪族エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、プレポリマーであってもよく、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂と他のポリマーとの共重合体であってもよい。なかでも、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。特に、耐熱性および耐水性に優れ、かつ安価である点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂は、樹脂組成物の粘度調節のために、エポキシ基を分子中に1つ有する1官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂全体に対して0.1質量%以上30質量%以下程度含むことができる。このような1官能エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の硬化剤を含む。硬化剤は、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤(フェノール樹脂等)、ジシアンジアミド系硬化剤(ジシアンジアミド等)、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の種類は、熱硬化性樹脂に応じて適宜選択される。なかでも、硬化時の低アウトガス性、耐湿性、耐ヒートサイクル性などの点から、フェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0045】
硬化剤の量は、硬化剤の種類によって異なる。エポキシ樹脂を用いる場合、例えば、エポキシ基1当量あたり、硬化剤の官能基の当量数が0.001当量以上2当量以下、さらには0.005当量以上1.5当量以下となる量の硬化剤を用いてよい。
【0046】
なお、ジシアンジアミド系硬化剤、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤は、潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤の活性温度は、60℃以上であってよく、80℃以上であってもよい。また、活性温度は、250℃以下であってよく、更には180℃以下であってもよい。活性温度がこのような範囲である場合、活性温度以上で迅速に硬化する樹脂組成物を容易に得ることができる。
本明細書中、活性温度とは、潜在性硬化剤および/または硬化促進剤の作用により、熱硬化性樹脂の硬化が急速に早められる温度である。
【0047】
樹脂組成物は、上記以外の第三成分を含んでもよい。第三成分としては、熱可塑性樹脂、無機充填剤、硬化促進剤、重合開始剤、イオンキャッチャー、難燃剤、顔料、シランカップリング剤、チキソ性付与剤などを挙げることができる。
【0048】
熱可塑性樹脂は、シート化剤として配合され得る。樹脂組成物がシート化されることにより、封止工程における取り扱い性が向上するとともに、樹脂組成物のダレ等が抑制されて、内部空間Sが維持され易くなる。
【0049】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニルまたはそのケン化物(ポリビニルアルコールも含む)、ブチラール樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、熱可塑性エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、シート化剤としての機能に優れる点で、アクリル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、5質量部以上200質量部以下であってよく、10質量部以上100質量部以下であってもよい。
【0050】
樹脂組成物に添加する際の熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されない。熱可塑性樹脂は、例えば、平均粒子径が0.01μm以上200μm以下(もしくは0.01μm以上100μm以下)の粒子であってもよい。上記粒子は、コアシェル構造を有していてもよい。この場合、コアは、例えば、n−、i−およびt−ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1つのモノマー由来のユニットを含む重合体であってもよいし、その他の(メタ)アクリレート由来のユニットを含む重合体であってもよい。シェル層は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−、i−またはt−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等の単官能モノマーと1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能モノマーとの共重合体であってもよい。また、溶剤に分散あるいは溶解させた高純度熱可塑性樹脂を、樹脂組成物に添加してもよい。
【0051】
なお、本明細書中、アクリレートおよびメタクリレートを(メタ)アクリレートと総称し、アクリル酸およびメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と総称する。
また、本明細書中、平均粒子径は、体積基準の粒度分布における累積体積50%における粒子径(D50。以下同じ。)である。
【0052】
無機充填剤としては、例えば、溶融シリカなどのシリカ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素(BN)、アルミナなどを挙げることができる。なかでも、安価である点で、溶融シリカが好ましい。無機充填剤の平均粒子径(D50)は、例えば、0.01μm以上100μm以下である。無機充填剤の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、1質量部以上5000質量部以下であってよく、10質量部以上3000質量部以下であってもよい。
【0053】
硬化促進剤は、特に限定されないが、変性イミダゾール系硬化促進剤、変性脂肪族ポリアミン系促進剤、変性ポリアミン系促進剤などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂などの樹脂との反応生成物(アダクト)として使用してもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤の活性温度は、保存安定性の点から、60℃以上、更には80℃以上が好ましい。また、活性温度は、250℃以下であってよく、180℃以下であってよい。
【0054】
硬化促進剤の量は、硬化促進剤の種類によって異なる。通常、エポキシ樹脂100質量部あたり、0.1質量部以上20質量部以下であってよく、1質量部以上10質量部以下であってもよい。なお、硬化促進剤をアダクトとして使用する場合、硬化促進剤の量は、硬化促進剤以外の成分(エポキシ樹脂など)を除いた硬化促進剤の正味の量を意味する。
【0055】
重合開始剤は、光照射および/または加熱により、硬化性を発現する。重合開始剤としては、ラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤などを用いることができる。具体的には、ベンゾフェノン系化合物、ヒドロキシケトン系化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、芳香族スルホニウム塩、脂肪族スルホニウム塩などのスルホニウム塩などを用いることができる。重合開始剤の量は、エポキシ樹脂100質量部あたり、0.1質量部以上20質量部以下であってよく、1質量部以上10質量部以下であってよい。
【0056】
第1熱硬化性材料の粘弾性(つまり、損失正接tanδ)は、例えば、熱硬化性シート41Pの材料によって調整することができる。例えば、シート化剤である熱可塑性樹脂の量や種類を変更することにより、損失正接tanδを変化させることができる。なかでも、フェノキシ樹脂を用いると、容易に貯蔵せん断弾性率G’を小さくして、tanδを大きくすることができる。
【0057】
熱硬化性シート41Pは、一層構造であってもよく、二層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも隣接する二層は組成(構成成分の種類および/または含有量など)が異なるものであってもよい。各成分の含有量は、各層における含有量が上記の範囲を満たすようにしてもよい。各層の厚みは、熱硬化性シート41Pの厚みT1が上記の範囲を満たすように調節してもよい。
【0058】
(熱可塑性シート42P)
熱可塑性シート42Pと熱硬化性シート41Pとの間には、これらの以外の第3シートが配置されていてもよい。しかし、中空部材の内部空間Sを維持しながら、複数の第2回路部材2を一括して封止し易くなるように、熱可塑性シート42Pと熱硬化性シート41Pとを隣接させることが好ましい。
【0059】
熱可塑性シート42Pの厚みは特に限定されない。内部空間Sがさらに維持され易くなるとともに、シート4Pを複数の第2回路部材間の隙間に追随させ易い観点からは、熱可塑性シート42Pの厚みT2は、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上400μm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
熱可塑性シート42Pは、熱可塑性を有する各種材料(熱可塑性材料)により構成される。熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と添加剤などを含む樹脂組成物を用いてもよいが、熱可塑性を有していればこれらに限定されるものではない。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、熱硬化性シート41Pのシート化剤として例示した熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂として、ビニル樹脂やゴム状重合体などを用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、ホットメルト接着性を有するものを用いてもよい。熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましく、これらの樹脂のうち、ホットメルト接着性を有するものがより好ましい。中でも、第2回路部材間の隙間にシート4Pを追随させ易く、熱可塑性シート42Pを熱硬化性シート41Pの硬化物からスムーズに剥離させ易い観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましく、粘弾性のバランスに優れる観点からはポリウレタン樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0062】
熱可塑性シート42Pを構成する熱可塑性材料(熱可塑性樹脂など)の融点(またはガラス転移温度)t
mは、温度t以下であることが好ましく、温度tよりも低いことがより好ましい。融点(またはガラス転移温度)t
mは、例えば、50℃以上150℃以下であり、50℃以上130℃以下であることが好ましい。熱可塑性材料の融点(またはガラス転移温度)t
mがこのような範囲である場合、第1封止工程においてシート4Pの追随性を確保し易いとともに、熱可塑性シートの除去工程において、剥離等により、熱可塑性シート42Pを除去し易い。
なお、熱可塑性材料の融点(またはガラス転移温度)t
mは、熱可塑性シートの試験片を用いて、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量測定法(JIS K7121)により測定される。
【0063】
熱可塑性シートは、各種添加剤、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、顔料などを含むことができる。熱可塑性シートは、添加剤を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0064】
熱可塑性材料の粘弾性(つまり、損失正接tanδ)は、例えば、熱可塑性シート42Pの構成成分によって調整することができる。例えば、熱可塑性樹脂や添加剤の種類や、添加剤の量、複数の熱可塑性樹脂を用いる場合には各樹脂の比率を変更することにより、損失正接tanδを変化させることができる。
【0065】
熱可塑性材料の温度tにおける損失正接tanδ2は、例えば、tanδ1について記載した範囲から選択してもよく、0.6より大きくしてもよい。tanδ2は、0.9より大きく2以下としてもよく、1以上2以下としてもよい。また、熱可塑性材料の温度tにおける貯蔵せん断弾性率G2’は、G1’について記載した範囲から選択してもよく、0.5×10
4Pa以上1×10
7Pa以下としてもよく、1×10
4Pa以上1×10
6Pa以下としてもよい。
【0066】
熱可塑性シート42Pは、一層構造であってもよく、二層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも隣接する二層は組成(構成成分の種類および/または含有量など)が異なるものであってもよい。各層の厚みは、熱可塑性シート42Pの厚みT2が上記の範囲を満たすように調節してもよい。多層構造の場合、例えば、少なくとも熱硬化性シート41Pと接する層(層A1)に、第2回路部材間の隙間にシート4Pを追随させ易く、熱可塑性シート42Pを熱硬化性シート41Pの硬化物からスムーズに除去し易い熱可塑性樹脂を用い、層A1と隣接する層(層A2)に、粘弾性のバランスに優れる熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0067】
熱可塑性材料は、熱可塑性材料で形成されたシートの50%モジュラスが、8MPa以下であることが好ましく、3MPa以上8MPa以下であってもよい。この場合、微細な隙間でもシート4Pを追随させることができる。また熱可塑性材料で形成されたシートの破断強度は、10MPa以上であることが好ましく、10MPa以上30MPa以下であってもよい。熱可塑性材料で形成されたシートの破断伸度は、100%以上(例えば、100%以上1000%以下)であることが好ましく、200%以上1000%であってもよい。シートがこのような破断強度および/または破断伸度を示すような熱可塑性材料を熱可塑性シート42Pに用いる場合、微細な隙間でもシート4Pを追随させつつ、後の除去工程で熱硬化性シート41Pの硬化物から熱可塑性シート42Pを残さず除去し易い。なかでも、本発明の一実施形態に係るシートは、このような50%モジュラス、破断強度、および破断伸度を示す熱可塑性材料で構成された熱可塑性シートを備えることが好ましく、このような熱可塑性シートと上記の損失正接tanδおよび貯蔵せん断弾性率G’を有する熱硬化性材料で構成された熱硬化性シートとが一体化したシートであることが特に好ましい。
【0068】
50%モジュラス、破断強度、および破断伸度は、熱可塑性材料で形成された厚み100μmの試験片を用いて測定される。試験片としては、通常、熱可塑性シート42Pの場合に準じてシート化された厚み100μmで、幅15mmのものが使用される。測定は、チャック間50mm、引張速度200mm/分の条件で行われる。なお、測定には、市販の引張試験機を用いればよい。破断伸度は、破断時の試験片の長さL2と初期の試験片の長さL0との差(=L2−L0)のL0に対する比率(=(L2−L0)/L0×100(%))である。複数(例えば、5つ)の試験片について、各物性を測定し、平均化することにより平均値を求める。上記の50%モジュラス、破断強度、および破断伸度の範囲は、いずれも平均値である。
【0069】
25℃において、熱可塑性材料の伸び率(平均伸び率)は、例えば、250%以上であり、300%以上であってよく、500%以上または1000%以上であってよい。熱可塑性材料がこのような伸び率を有する場合、微細な隙間でもシート4Pを追随させることができる。熱可塑性材料の伸び率の上限は、特に制限されないが、除去工程で熱硬化性シート41Pの硬化物から熱可塑性シート42Pを残さず除去し易い観点からは、2000%以下であることが好ましい。
【0070】
なお、熱可塑性材料の伸び率は、25℃にて、熱可塑性シート42Pの場合に準じてシート化された試験片について測定される以外は、熱硬化性材料の伸び率の場合に準じて測定することができる。複数(例えば、5つ)の試験片について、伸び率を測定し、平均化することにより平均伸び率を求める。
【0071】
(その他)
シート4P全体の厚みTは特に限定されないが、第2回路部材2の表面に密着させ易い点で、55μm以上1500μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であってよく、100μm以上500μm以下であってよい。
【0072】
シート4Pが、第3シートを備える場合、例えば、第3シートを構成する材料の温度tにおける損失正接tanδ3は、0.2以上1.0以下であってもよく、貯蔵せん断弾性率G3’は1×10
4Pa以上1×10
7Pa以下であってもよい。また、シート4Pにおいて、熱硬化性シート41Pは、第1回路基板1と対向するように最外層に配置されるが、熱硬化性シート41Pの反対側の最外層に第3シートを配置してもよい。第3シートは、一層構造であってもよく、二層以上の多層構造であってもよい。
【0073】
シート4Pの製造方法は、特に限定されない。シート4Pは、各シート41Pおよび42Pを別途作成した後、積層する(ラミネート法)ことにより形成してもよいし、各シートの材料を順次、コーティングする(コーティング法)ことにより形成してもよい。例えば、熱可塑性シート42Pの一方の表面に、熱硬化性シート41Pの材料をコーティングすることによりシート4Pを作製してもよい。
【0074】
ラミネート法において、各シート41Pおよび42Pは、例えば、各シートの材料を含む溶剤ペーストあるいは無溶剤ペースト(以下、単にペーストと総称する。)をそれぞれ調製する工程と、上記ペーストから各シートを形成する工程(形成工程)と、を含む方法により形成される。また、熱可塑性シート42Pは、押出成形法などの公知の熱可塑性シートの成形法により形成してもよい。このような方法により、熱硬化性シート41Pおよび熱可塑性シート42Pをそれぞれ形成した後、この順に積層する。ペーストがプレゲル化剤を含む場合、形成工程の際にゲル化が行われる。ゲル化は、ペーストを薄膜化した後、薄膜を熱硬化性シート41Pの材料の硬化温度未満(例えば、70℃以上150℃以下)で、1分〜10分間加熱することにより行われる。
【0075】
一方、コーティング法では、上記方法により、例えば、熱可塑性シート42Pを形成した後、この熱可塑性シート42Pの表面に、熱硬化性シート41Pの材料を含むペーストをコーティングして熱硬化性シート41Pを形成する。この場合も、形成工程の際にゲル化が行われ得る。ゲル化は、各ペーストからそれぞれの薄膜を形成した後、逐次実施されてもよく、薄膜の積層体を形成した後に実施されてもよい。
【0076】
ペーストを用いる場合、各層(薄膜)は、例えば、ダイ、ロールコーター、ドクターブレードなどにより形成される。この場合、ペーストの粘度を、10mPa・s以上10000mPa・s以下となるように調整してよい。溶剤ペーストを用いた場合、その後、70℃以上150℃以下、1分以上10分以下の間乾燥して、溶剤を除去してもよい。上記ゲル化と溶剤の除去とは、同時に実施され得る。
【0077】
(配置工程)
本工程では、熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとを、熱可塑性シート42Pと第1回路部材1との間に熱硬化性シート41Pが介在するように、実装部材に配置する(
図2)。このとき、熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとの積層体(シート4Pも含む)が、複数の第2回路部材2を覆うように配置すればよい。
【0078】
熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとが一体化されていない場合には、本工程で、第2回路部材2に熱硬化性シート41Pが対向するように、実装部材上に熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとを重ねて配置すればよい。第3シートを用いる場合には、本工程で、所定の位置に配置してもよい。各シートは実装部材上で重ねてもよく、予め重ね合わせて実装部材上に配置してもよい。
【0079】
シート4Pのように、熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとが一体化したものを用いる場合には、熱硬化性シート41Pが第2回路部材2に対向するように、一枚のシート4Pを実装部材上に配置する。
【0080】
(第1封止工程)
本工程では、熱硬化性シート41Pと熱可塑性シート42Pとの積層体(シート4Pも含む)を第1回路部材1に対して押圧するとともに(
図3および
図4)、シート4Pを加熱して、第1回路部材1上の第2回路部材2を封止し、熱硬化性シート41Pを硬化させて硬化層41に変換する(
図5)。これにより、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2が封止される。このように積層体で第2回路部材2を封止する際には、熱可塑性シート42Pも第2回路部材2の形状に追随して変形する(または成形される)。この熱可塑性シート42Pの変形により、熱硬化性シート41Pも第2回路部材2の形状に追随させることができる。
【0081】
より具体的に説明すると、まず、シート4Pを第1回路部材1に対して押圧すると、
図3に示すように、第1回路部材1上に配置された複数の第2回路部材2間の隙間にシート4Pが入り込んで行く。さらに押圧を継続させると、
図4に示すようにシート4Pが、伸展して、第2回路部材2の表面に密着するように、第2回路部材2間の隙間に充填される。熱可塑性シート42Pの塑性変形により熱硬化性シート41Pを第2回路部材2間の隙間の形状に沿って追随させることができるとともに、熱硬化性シート41Pの高い密着性により、熱硬化性シート41Pを第2回路部材2間の隙間の形状に沿って固着させることができる。また、熱可塑性シート42Pによりシート4Pが破れることなく伸展させることができるため、高い封止性を確保することができる。
【0082】
シート4Pの第1回路部材1に対する押圧は、例えば、シート4Pを、シート4Pに含まれる熱硬化性シート41P(具体的には、熱硬化性シート41Pに含まれる熱硬化性材料)の硬化温度未満で加熱しながら行われる。これにより、シート4Pは、第2回路部材2の表面に密着するとともに、第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に達するまで伸展することが容易となり、第2回路部材2の封止の信頼性を高めることができる。
【0083】
押圧時の加熱の条件は、特に限定されず、押圧方法や熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。上記加熱は、例えば、40℃以上200℃以下、もしくは50℃以上180℃以下(例えば、60℃以上160℃以下)で行なわれる。加熱時間は、特に制限されないが、例えば、1秒〜300分(または3秒〜300分)である。
また、押圧は、加圧雰囲気(0.1MPaより高い圧力下)で行なってもよく、大気圧下で行ってもよいし、減圧雰囲気(例えば、10Pa以上0.05MPa以下または50Pa以上3kPa以下)で行ってもよい。
【0084】
押圧は、シートを回路基板上に押圧できればよく、公知の方法により行なうことができる。押圧は、例えば、プレス(熱プレスなど)により行なってもよく、ラミネータなどにより行なってもよい。また、シート4Pに第1回路基板1とは反対側から加圧しながら、シート4Pを第2回路基板2による凹凸に沿わせてもよい。また、シート4Pと第1回路基板1との間の空間を減圧しながら、シート4Pを第2回路基板2による凹凸に沿わせてもよい。いずれの場合にも、シート4Pを加熱しながら行なうと、シート4Pを第2回路基板2による凹凸形状に追随させ易くなる。
【0085】
なお、第2回路部材が封止されるときのシート4Pの温度tは、第1封止工程におけるシート4Pに対する加熱手段の設定温度に代替できる。シート4Pの加熱手段がプレス機である場合、加熱手段の温度とは、プレス機の設定温度である。シート4Pの加熱手段が第1回路部材1を加熱する加熱機である場合、加熱手段の温度とは、第1回路部材1の加熱機の設定温度である。温度tは、シート4Pの材質等に応じて変更し得るが、例えば、室温+15℃(40℃)から、200℃までの間である。具体的には、温度tは、例えば50℃以上180℃以下であり、60℃以上160℃以下であってよい。また押圧する時間は、例えば、1秒以上300分以下であり、3秒以上300分以下であってよい。第2回路部材2が封止されるとき、熱硬化性シート41Pは未硬化状態であってもよいし、半硬化状態であってもよい。また、シート4Pの第2回路部材間の隙間への高い充填性を確保し易い観点からは、温度tは、熱可塑性シート42Pを構成する熱可塑性材料の融点(またはガラス転移温度)t
mよりも高い温度であることが好ましい。
【0086】
続いて、必要に応じて、シート4Pを上記硬化温度で加熱して、シート4P中の熱硬化性シート41Pを硬化させて、硬化物41で形成された封止材を形成してもよい。これにより、第2回路部材2が封止される。シート4Pの加熱(熱硬化性シート41Pの硬化)の条件は、熱硬化性シート41Pに含まれる熱硬化性材料の種類に応じて適宜設定すればよい。熱硬化性シート41Pの硬化は、例えば、50℃以上200℃以下(もしくは120℃以上180℃以下)で行なわれる。加熱時間は、特に制限されないが、例えば、1秒〜300分(もしくは60分〜300分)である。熱可塑性シート42Pを構成する熱可塑性材料の種類にもよるが、第2回路部材間の隙間への高い充填性を維持する観点からは、熱可塑性シート42Pは、熱硬化性シート41Pを硬化させる間、溶融または軟化していることが好ましい。つまり、熱可塑性材料のガラス転移温度(または融点)以上の温度で熱硬化性シート41Pを硬化させることが好ましい。
【0087】
押圧と熱硬化性シート41Pの硬化とは、別々に実施してもよく、同時に実施してもよい。例えば、減圧雰囲気下、熱硬化性シート41Pに含まれる熱硬化性材料の硬化温度未満の温度で押圧した後、減圧を解除して、大気圧下でさらに高温で加熱して、熱硬化性シート41Pを硬化させてもよい。あるいは、大気圧下で、熱硬化性シート41Pに含まれる熱硬化性材料の硬化温度未満の温度で押圧した後、さらに高温で加熱して、熱硬化性シート41Pを硬化させてもよい。また、減圧雰囲気下、硬化温度で押圧することにより、減圧中に熱硬化性シート41Pを硬化させてもよい。
【0088】
なお、第1封止工程において硬化物41は、完全に熱硬化していなくてともよく、その後実施する除去工程で熱可塑性シートを除去可能な硬さを有していればよい。その場合、例えば、熱可塑性シートを除去した後に、硬化物41を完全硬化させればよい。また、例えば、後述の第2封止工程を実施する場合は、第2封止工程において硬化物41を完全硬化させてもよい。
【0089】
(熱可塑性シートの除去工程)
本工程では、第1封止工程で熱硬化性シート41Pの硬化により形成された硬化層41から、熱可塑性シート42Pを除去する(
図6)。これにより、第2回路部材が硬化層41で封止された実装構造体10が得られる(
図7)。熱可塑性シートの除去手段としては、例えば、溶解による除去であってもよいし、剥離による除去であってもよい。剥離による除去は、化学的な剥離であってもよいし、物理的な剥離であってもよい。また一度目の除去手段で熱可塑性シートの残渣が生じる場合は、別の除去手段により残渣を除去してもよい。なお、
図8)には、熱可塑性シートを剥離により除去する場合を示した。
【0090】
以下に、物理的な剥離により除去する場合についてより具体的に説明する。
熱可塑性シート42Pの剥離は、例えば、熱可塑性シート42Pを構成する熱可塑性材料の融点またはガラス転移温度以下、例えば40℃以下、もしくは室温(具体的には、20℃以上35℃以下)の温度で行なうことが好ましい。このような温度では、熱可塑性シート42Pの粘性が低く、弾性が高い。また、第1封止工程において、熱硬化性シート41Pは硬化して粘着性が低下する。そのため、熱可塑性シート42Pの高い弾性を利用して、硬化層41から熱可塑性シート42Pを容易に剥離させることができる。これにより、硬化層41の破れも抑制できる。
【0091】
(第2封止工程)
熱可塑性シートの除去工程の後、必要により、硬化層41上に硬化性材料(第2硬化性材料)を充填して、硬化させてもよい(
図8)。この工程を第2封止工程と称する。第2回路部材2は、硬化層41と第2硬化性材料の硬化により形成される硬化層50とで封止されることになる。
【0092】
シート状封止材で回路部材を封止する場合、シート状封止材が、内部空間には入り込まず、回路部材間の小さな隙間に入り込めるような物性を有することが優先されるため、封止後の封止材の表面状態や物性の選択性が低い。例えば、シート状封止材は、回路部材間の隙間に充填された状態となるが、表面には形状を制御し難い凹凸が形成されることもある。
【0093】
本発明の上記局面では、シート4Pを用いて第2回路部材を、内部空間を維持しながら封止した後に、熱可塑性シート42Pを除去するため、第2回路部材2を、硬化層41ごと別の材料(つまり、第2硬化性材料)で再度封止することができる。第2硬化性材料には、内部空間を維持しながら封止する場合に求められるような特性は必要とされないため、材料の選択性が向上する。また、硬化層41上の凹凸を平坦化したり、封止材の表面を平滑にするなど、封止後の封止材の状態を制御したり、封止材の厚みを調節したり、別の機能性を付与することも容易である。なお、第2硬化性材料で再度封止する場合、全面であっても一部であってもよい。
【0094】
第2硬化性材料としては、公知のものが使用できる。第2硬化性材料としては、光硬化性材料を用いてもよく、熱硬化性材料を用いてもよい。また、硬化性材料は、液状であってもよく、シート状であってもよい。光硬化性材料としては、例えば、光硬化性樹脂および硬化剤などを含む樹脂組成物が使用される。熱硬化性材料としては、例えば、第1熱硬化性材料として例示したものが挙げられる。第2硬化性材料のうち熱硬化性材料は、第1熱硬化性材料と同じであってもよく、異なるものであってもよい。また、熱硬化性材料は、導電性、放熱性、電磁波遮蔽性、電磁波吸収性などの機能性を有するよう硬化性材料であってもよい。
【0095】
封止工程の後、得られた実装構造体10を、ダイシングする個片化工程を行ってもよい。個片化工程は、第2回路部材ごとに行ってもよい。
【0096】
[実施例]
以下、本発明を実施例および参考例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
《実施例1》
ガラスエポキシ基板(第1回路部材、50mm角、厚み0.2mm)に、4つの同型のSAWチップA,B,C,D(第2回路部材、1.1mm×1.1mm、高さ0.2mm)を、金バンプ(直径100μm、高さ20μm)を介し、並べて搭載することにより実装部材を得た。SAWチップAとBとの間の離間距離D1は0.4mmであり、SAWチップBとCとの間の離間距離D2は0.1mmであり、SAWチップCとDとの間の離間距離D3は0.2mmであった。得られた実装部材を積層シート(熱硬化性シート(第1層)と熱可塑性シート(第2層)との積層体)で封止した。封止工程では、積層シートを熱硬化性シート(第1層)の面が第2回路部材側に接するよう配置し、積層シートを120℃(封止温度)で加熱しながら、減圧雰囲気下(200Pa)で1分間加圧した。その後、150℃、1atm(≒0.1MPa)、180分間の条件でオーブン内にて加熱後、室温まで冷却してから熱可塑性シート(第2層)を剥離し、実装構造体を得た。
【0098】
積層シートとしては、熱硬化性シート(厚み12μm)と熱可塑性シート(厚み250μm)とを熱ラミネートにより積層したものを用いた。熱可塑性シートとしては、オレフィン系樹脂のシートを用いた。熱硬化性シートは、以下の成分を以下の割合(質量基準)で含む樹脂組成物を用いて、コーティング法により作製した。
エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂):100部
フェノールノボラック(硬化剤):60部
アクリル樹脂(熱可塑性樹脂):60部
溶融球状シリカ(無機充填剤):100部
イミダゾール(硬化促進剤):2部
【0099】
なお、積層シートとする前の熱硬化性シートおよび熱可塑性シートを構成する各材料について、それぞれ既述の手順で、物性値を測定した。その結果、硬化前の熱硬化性材料について測定された25℃における伸び率は150%であり、SAWチップが封止されるときの温度t=120℃における損失正接tanδ1は0.1であり、貯蔵せん断弾性率G1’は2×10
5Paであった。熱可塑性材料については、25℃における50%モジュラスが7.0MPa、破断伸度が600%、破断強度が25.0MPaであり、融点(t
m)は100℃であった。
【0100】
《参考例1および2》
積層シートとして、いずれも熱硬化性の第1層および第2層を有する積層体を用いるとともに、冷却後に剥離を行わないこと以外は、実施例1と同様に実装構造体を得た。積層シートとしては、実施例1で用いた熱硬化性シート(厚み12μm)を第1層とし、第2層としては、表1に示す成分を表1に示す比率で含む樹脂組成物を用いて、コーティング法により作製した熱硬化性シート(厚み250μm)を用いた。双方の熱硬化性シートを重ね合わせて、実施例1の場合と同様に熱ラミネートすることにより積層シートを形成した。なお、参考例1で用いたフェノキシ樹脂は、熱可塑性樹脂である。各シートを構成する材料について、それぞれ既述の手順で、物性値を測定した。
【0101】
《実施例2および3》
熱可塑性シートとして、表1に示す特性を有するオレフィン系樹脂シートを用いた。また、封止温度を表1に示す温度に変更した。これら以外は、実施例1と同様に実装構造体を得た。なお、各シートを構成する材料について、それぞれ既述の手順で、物性値を測定した。
【0102】
《評価》
実施例および参考例について下記の評価を行った。
(1)封止性
実装構造体について、SAWチップの離間距離D1、D2およびD3のそれぞれの部分について、チップ下(基板裏)から中空封止状態を確認し、中空封止性を下記の基準で評価した。
A:未充填によるボイドや樹脂進入がなく、中空封止性が十分であった。
B:樹脂侵入はないが、一部に、未充填によるごく小さなボイドが見られた。
C:チップ下に樹脂が侵入していた。
D:樹脂の未充填による大きなボイドが発生していた。
【0103】
(2)剥離性
第2層を剥離した後の、実装構造体の硬化層(第1層)の表面(剥離後の封止材表面)を観察し、下記の基準で第2層の剥離性(除去性)を評価した。
A:第1層の表面から第2層が残らず除去できた。
B:第1層から第2層の剥離を試みたが、剥離できなかった。
【0104】
実施例および参考例の結果を表1に示す。表1には、各シートまたはそれを構成する材料の物性値、熱硬化性シートの原料組成、および封止温度も示した。
【0106】
表1に示されるように、実施例では、参考例に比べて、高い中空封止性が得られるとともに、第1層から第2層の剥離性も高かった。
【0107】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。