(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法は、磁力選別や色彩選別のための特殊な機器が必要であるため設備費が高くなる問題がある。また、特許文献1に示されるような特殊な高磁力選別と色彩選別を組み合わせて実施するなど、選別処理を行わなければ、スラグの混入が少ない使用済み耐火物を精度よく選別することは難しい。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、使用済み耐火物の解体屑を原料として、安定した耐用性を有する耐火物を効率的かつ安価に製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決できる技術を見出すべく詳細な検討を行った結果、耐火物原料としてCaOを配合しないで製造された耐火物であって、使用済みとなった耐火物については、そのCaO含有量でスラグ混入量を推定することができ、したがって、この使用済み耐火物を原料の少なくとも一部として耐火物を製造するに当たっては、耐火物原料のCaO含有量を指標としてスラグ混入量を管理することにより、安定した耐用性を有する耐火物を製造できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0008】
[1]耐火物原料としてCaO(但し、耐火物原料中に不可避不純物として含まれるCaOを除く)を配合しないで耐火物を製造する方法において、
耐火物原料としてCaO(但し、耐火物原料中に不可避不純物として含まれるCaOを除く)を配合しないで製造された耐火物であって、使用済みとなった耐火物の解体屑を、耐火物原料の少なくとも一部として耐火物を製造するに当たり、
付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑(a
0)についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量と耐火物原料中での解体屑(a)の配合割合に基づき、解体屑(a
0)のなかから、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようなCaO含有量の解体屑(a)を選別し、この解体屑(a)を耐火物原料として用いることを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
[2]上記[1]の製造方法において、付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑(a
0)を破砕して磁気選別による地金除去を行った後、粉砕し、次いで分級して粒度別の解体屑(a
0)とし、前記粉砕後の解体屑(a
0)又は前記分級後の解体屑(a
0)についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量と耐火物原料中での解体屑(a)の配合割合に基づき、解体屑(a)の選別を行うことを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
【0009】
[3]耐火物原料としてCaO(但し、耐火物原料中に不可避不純物として含まれるCaOを除く)を配合しないで耐火物を製造する方法において、
耐火物原料としてCaO(但し、耐火物原料中に不可避不純物として含まれるCaOを除く)を配合しないで製造された耐火物であって、使用済みとなった耐火物の解体屑を、耐火物原料の少なくとも一部として耐火物を製造するに当たり、
付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑(a
0)についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるような、耐火物原料中での解体屑(a
0)の配合割合を求め、この配合割合の解体屑(a
0)を耐火物原料として用いることを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
[4]上記[3]の製造方法において、付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑(a
0)を破砕して磁気選別による地金除去を行った後、粉砕し、次いで分級して粒度別の解体屑(a
0)とし、前記粉砕後の解体屑(a
0)又は前記分級後の解体屑(a
0)についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量に基づき、耐火物原料中での解体屑(a
0)の配合割合を求めることを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
【0010】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、耐火物原料中での解体屑(a)の配合割合を10〜80質量%とすることを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法において、解体屑(a
0)を仮置き場で仮置する際に、解体屑(a
0)を下記(i)又は(ii)の条件で仮置き・搬出することを特徴とする使用済み耐火物を再利用した耐火物の製造方法。
(i)解体屑(a
0)を仮置き場の地面に仮置きし、解体屑(a
0)を仮置き場から搬出する際には、地面に接触している解体屑部分が残るようにして、その上部の解体屑(a
0)のみを搬出する。
(ii)事前に仮置き場の地面に使用済み耐火物の解体屑からなる敷材を敷いておき、解体屑(a
0)を仮置き場の前記敷材上に仮置きし、解体屑(a
0)を仮置き場から搬出する際には、敷材上の解体屑(a
0)のみを搬出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用済み耐火物の解体屑を原料として、安定した耐用性を有する耐火物を製造することができる。本発明では、耐火物原料のCaO含有量を管理するだけでよいため、比較的簡易な分別解体(付着異物と不要材質部分を除去する分別解体)を施して回収された大量の使用済み耐火物(解体屑)を耐火物原料として簡便に再利用することができ、安定した耐用性を有する耐火物を効率的かつ安価に製造することができる。また、本発明で得られる耐火物は、耐用性の安定化によって、従来では使用済み耐火物を原料とした耐火物の適用が困難であった、再利用前と同じ使用部位や設備にも適用できる。この結果、使用済み耐火物の再利用適用範囲および再利用可能量が増大し、廃棄物の減少によって廃棄物処理費用が削減されるとともに、安価な耐火物原料としての使用済み耐火物の使用量が増加することにより、耐火物の製造コストも低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
再利用対象の使用済み耐火物に対して、付着異物と不要材質部分を除去するために分別解体を行うが、耐火物表面に付着したり、耐火物の目地や亀裂などの隙間に入り込んだスラグや地金は、分別解体によっても不可避的に回収物に混入する。これらの地金やスラグは融点が1000〜1400℃と低く、さらにスラグは一度溶融しているプリメルト状態であるため、耐火物中に大量に混入した場合には耐火度の低下を引き起こし、少量の混入でも耐食性の低下が懸念される。
【0014】
使用済み耐火物に混入しているスラグのうち地金や鉄分の多いスラグは、リサイクルの過程で一般に行われる磁選工程において大半が除去されるが、多くのスラグはそのまま耐火物中に残存してしまう。したがって、スラグの混入量を低く抑えるように管理することが、使用済み耐火物を耐火物原料として再利用する上で重要となる。
本発明者らは、使用済み耐火物中のスラグは単体での検出が難しいため、大量に使用する耐火物原料としての管理には、何らかの化学成分を指標とするべきであると考えた。
【0015】
一般に鉄鋼スラグの主成分はCaO、SiO
2、Al
2O
3及び鉄分である。これらの成分のなかで、鉄分は上述のように磁選工程で大半が除去されるため、残る3つの主成分で管理することが考えられるが、鉄鋼スラグは精錬の対象物により異なる組成で生成され、特にSiO
2とAl
2O
3の含有量の違いが大きいため、この2成分(SiO
2、Al
2O
3)はスラグ混入量の管理には向かない。一方、CaOは一般にスラグ中に40質量%程度存在しており、その含有量は精錬の対象物による大きな違いがないため、使用済み耐火物のスラグ混入量を管理するための指標として好適であることが判った。
【0016】
ドロマイト系耐火物のように、原料としてCaOを配合する耐火物を再利用する場合は、耐火物由来のCaOであるかスラグ由来のCaOであるかの判別が困難であるため、CaOを使用済み耐火物のスラグ混入量を管理するための指標とすることは難しい。これに対して、マグネシアカーボン系耐火物、アルミナSiCカーボン系耐火物、アルミナ系耐火物などのような一般的な耐火物は、原料としてCaOを添加(配合)せず、原料中の不純物として最大0.5質量%程度のCaOを含むだけである。したがって、このような原料としてCaOを添加していない一般的な耐火物については、回収された使用済み耐火物中のCaO成分の増加はスラグの混入由来と考えてよい。よって、使用済み耐火物中のCaO成分を指標とすることで、リサイクル原料の品質(スラグ混入)管理が可能となる。
【0017】
本発明者らの知見によれば、使用済み耐火物を耐火物原料に再利用して製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%を超えると、使用済み耐火物に混入したスラグに起因して耐火物の耐食性が急激に悪化し、安定した耐用性(耐食性)が得られなくなる。
このため本発明では、耐火物のCaO含有量を指標とし、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようにスラグ混入量を管理して耐火物を製造する。具体的には、本発明の第一の製造方法では、測定された使用済み耐火物のCaO含有量に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようなCaO含有量の使用済み耐火物(解体屑)を選別し、これを耐火物原料として用いる。また、本発明の第二の製造方法では、測定された使用済み耐火物のCaO含有量に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるような、使用済み耐火物(解体屑)の配合割合を求め、この配合割合の使用済み耐火物(解体屑)を耐火物原料として用いる。
【0018】
本発明は、スラグ由来のCaOの含有量をスラグ混入量の管理指標とするため、耐火物原料としてCaOを配合しないで耐火物を製造することが前提である。但し、耐火物原料中に不純物としてCaOが不可避的に含まれることは妨げない。通常、新規の耐火物原料(バージン原料)に不純物として含まれるCaOは最大でも0.5質量%程度である。
また、同様の理由で、本発明でリサイクル対象となるのは、耐火物原料としてCaOを配合しないで製造された耐火物(但し、上記と同様、耐火物原料中に不純物としてCaOが不可避的に含まれることは妨げない)であって、使用済みとなった耐火物である。本発明は、このような使用済み耐火物の解体屑を、耐火物原料の少なくとも一部として耐火物を製造する。
【0019】
以下、本発明の第一の製造方法について説明する。
本発明の第一の製造方法では、使用済み耐火物に付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑a
0についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量と耐火物原料中での解体屑aの配合割合に基づき、解体屑a
0のなかから、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようなCaO含有量の解体屑aを選別し、この解体屑aを耐火物原料として用いる。
【0020】
本発明において、再利用対象となる使用済み耐火物の解体屑a
0は、通常、使用済みの耐火物に対して、付着異物と不要材質部分を除去する比較的簡易な分別解体を施して得られたものである。
ここで、分別解体の対象となる使用済み耐火物は、鉄鋼製造プロセスにおいて生成するスラグと接するように使用された耐火物であり、したがって、主に精錬炉や取鍋などの容器に内張りされた使用済みの耐火物(劣化した耐火物部分)であるが、これに限定されるものではない。
【0021】
一般に使用済み耐火物の解体には、作業の安全性と能率面から重機を用いることが多い。重機による解体においても耐火物表面および容器上面の付着物除去は比較的容易に行うことが可能である。さらに、容器上方に再利用時に不要な材質がある場合は、その範囲まで解体を行うことができる。
使用済みの耐火物に付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施す場合、通常、最初に付着異物の除去を行い、次いで、不要材質部分の解体・除去を行い、しかる後、再利用対象となる耐火物の解体を行い、再利用対象となる解体屑a
0を回収する。
【0022】
本発明で行われる分別解体とは、付着異物および不要材質部分の除去と再利用対象となる耐火物の回収を目的としたものであり、例えば、精錬炉や取鍋などの容器に内張りされた耐火物の場合には、付着異物と不要材質部分を除去した上で、稼動面のワーク耐火物とその背面の捨て張りれんがまたはパーマ耐火物を同時に解体し、全量回収を行う。
付着異物とは、凝固したスラグ(高炉スラグ、溶銑予備処理時に生成したスラグなど)や銑鉄、或いはそれらの混合物が、耐火物の表面や亀裂、目地などに付着したものである。この付着異物は、一般にペッカーなどの大型の重機で表面を砕き、除去する。耐火物の目地に食い込んで取れない場合は、耐火物ごと除去する場合もある。
【0023】
また、不要材質部分とは、耐火物原料としての回収が不要な部分のことであり、例えば、回収対象の耐火物に対して材質系が異なっている耐火物部分、品位が大きく異なっている耐火物部分などが挙げられる。一般に、精錬炉や取鍋などの容器の場合には、壁や敷部はれんが(定形耐火物)で施工されるのに対して、容器上端や溶銑払い出し部は不定形耐火物で施工されている場合が多いが、この不定形耐火物が不要材質部分とされる場合がある。通常、本発明では、れんが(定形耐火物)を解体屑a
0として回収し、不定形耐火物は不要材質部分として除去することが多い。また、溶銑に接触しない壁の上部では、溶銑の接触範囲とは異なる材質の耐火物(例えば、ハイアルミナれんがなど)を使用する場合が多いが、このような耐火物が不要材質部分とされる場合もある。この不要材質部分の解体・除去は、上述した付着異物除去に続いて行われ、ペッカーなどの大型の重機を用いて容器上端部から対象範囲を砕きながら解体し、解体屑は重機で掻き出したり、容器を反転させて外部へ排出する。
【0024】
この作業の際、除去された付着異物や不要材質部分の解体屑により、容器表面が覆われて死角が生じ、付着異物の除去が不完全な部分が生じる恐れがあるため、付着異物の除去の後に解体屑の排出を行うことが望ましく、より望ましくは付着異物除去および不要材質部分の解体時に、解体屑(付着異物や不要材質部分)の排出を複数回行うと、耐火物原料として再利用する解体屑a
0への不純物混入を抑制することができる。
さらに、不要ワーク部分(不要材質部分)と再利用対象ワーク部分(再利用対象の耐火物)の境界部分に段差をつけるなど、解体時に両者が同時に崩れない工夫をすると解体屑a
0の回収率が向上する。また、容器全体を同じ系の材質(耐火物)で統一して全て回収対象とすることも、解体屑a
0の回収率向上に寄与する。
【0025】
上記のように付着異物および不要材質部分を除去した後、再利用対象となる耐火物を解体し、再利用対象となる使用済み耐火物の解体屑a
0を得る。再利用対象となる耐火物は、通常、ワーク部分の耐火物である。
解体時にパーマネント部分を残したい場合、ワーク部分の背面に捨て張りれんがを張ることが望ましい。捨て張りれんがの材質は、再利用する際に支障が出ないよう、ワーク部分と同じ材質か、ワーク部分の原料として含まれる材質にすることが望ましい。例えば、ワーク部分がアルミナ−ろう石−SiC−カーボンれんがの場合、ろう石れんがは原料として使用可能であるため、これを捨て張りれんがに使用すれば、再利用に支障がでない。
【0026】
耐火物を解体して得られた解体屑a
0を容器から排出して回収する。この排出時に他の解体屑や地面のダスト・土砂(特に、製鉄所の地面の土砂や堆積したダストにはスラグ由来のCaOが多く含まれており、CaO濃度が高い)などが混入すると、製造される耐火物の不純物となるため、解体屑a
0は鉄板上やコンクリート等で養生された場所に排出するのが好ましい。また、解体の頻度が高い場合は、専用の排出場所を設けることが望ましい。
【0027】
次に、回収した解体屑a
0を破砕後、磁力選別により目地や亀裂に入りこんだ地金を除去する。地金除去設備は他の解体屑やスラグと同じ設備を共用する場合があり、地金除去時にこれらが不純物として混入する恐れがある。このため、回収した解体屑a
0を処理する前に、地金除去設備を空運転するか、清掃を行い、残存物を除去しておくことが望ましい。地金除去前の解体屑a
0の仮置き場を設置するなどして、一度に処理する量を多くすることも、不純物混入濃度の低下につながるため有効である。
【0028】
地金を除去した解体屑a
0は、原料処理工場に送られ、ここで所望の粒度に粉砕した後、粒度毎に分級して管理し、耐火物原料とする。解体屑a
0の水分が多い場合は、原料化処理に乾燥工程を追加してもよい。さらに、原料化処理の前に、解体屑a
0を一旦仮置きし、複数ロットの解体屑a
0を混合した後に処理すると、材質成分のばらつきが小さくなり、原料として使用した耐火物の耐用安定化につながる。
【0029】
地金除去前、地金除去後、或いは原料化工場で解体屑a
0の仮置きを行う場合、容器からの解体屑a
0の排出場所と同様に、地面のダストや土砂が混入すると製造される耐火物の不純物となるため、解体屑a
0は鉄板上やコンクリート等で養生された場所に排出(仮置き)するのがよい。また、解体の頻度が高い場合は、専用の排出場所(仮置き場所)を設けることが望ましい。一連の仮置き場で鉄板の設置やコンクリート養生ができない場合は、専用の仮置き場を準備し、解体屑a
0を下記(i)又は(ii)の条件で仮置き・搬出することにより、耐火物原料となる解体屑a
0に地面側から不純物が混入しないようにすることが好ましい。
(i)解体屑a
0を仮置き場の地面(表土など)に仮置きし、解体屑a
0を仮置き場から搬出する際には、地面に接触している解体屑部分が残るようにして、その上部の解体屑a
0のみを搬出する。
(ii)事前に仮置き場の地面(表土など)に使用済み耐火物の解体屑からなる敷材を敷いておき、解体屑a
0を仮置き場の前記敷材上に仮置きし、解体屑a
0を仮置き場から搬出する際には、敷材上の解体屑a
0のみを搬出する。
【0030】
本発明において、解体屑a
0についてのCaO含有量の測定(成分分析)と、これに基づく解体屑a(耐火物原料となる解体屑)の選別は任意の段階で行うことができる。すなわち、分別解体を経て回収された解体屑a
0は、破砕して磁気選別による地金除去を行った後、所望の粒度に粉砕し、次いで分級して粒度別の解体屑とするが、このような一連の作業工程のいずれかの段階(例えば、解体屑a
0の地金除去前、地金除去後、粉砕後、分級後のいずれかの段階)で解体屑a
0のCaO含有量の測定(成分分析)とこれに基づく解体屑aの選別を行うことができる。
【0031】
なかでも、解体屑aの選別を効率的かつ精度よく行うという観点からは、地金除去後の解体屑a
0を所望の粒度に粉砕したものについて、或いは粉砕後に分級して粒度別の解体屑としたものについて、CaO含有量の測定(成分分析)と、これに基づく解体屑aの選別を行うことが好ましい。また、この場合、それ以前の任意の1つ以上の段階(例えば、解体屑a
0の地金除去前、地金除去後、粉砕後のうちの1つ以上の段階)でも解体屑a
0のCaO含有量を測定し、所定のCaO含有量を超える解体屑を分別し、解体屑a
0から取り除くようにしてもよい 。なお、解体屑a
0の化学成分分析は、原料管理のために一般的に行われているため、本発明による大幅な費用増は生じない。
【0032】
本発明において、解体屑a
0のなかから解体屑aを選別するに当たっては、製造に使用する耐火物原料中での解体屑aの配合割合(或いは配合割合の上限)を予め決めておき、この解体屑aの配合割合と測定されたCaO含有量に基づき、解体屑a
0のなかから、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようなCaO含有量の解体屑aを選別し、この解体屑aを耐火物原料として用いる。
本発明では、解体屑aを耐火物原料の全部又は一部として耐火物を製造する。解体屑aを耐火物原料の一部として耐火物を製造する場合には、残りの耐火物原料としては、添加成分としてCaOを配合しない新規の耐火物原料(バージン原料)が用いられる。
【0033】
一般に、添加成分としてCaOを配合しない新規の耐火物原料(バージン原料)のCaO含有量は0.5質量%以下である。したがって、例えば、解体屑aの配合割合を50質量%、残りをバージン原料とする場合、解体屑aのCaOが4.5質量%以下であれば、製造される耐火物のCaO含有量を2.5質量%以下にすることができるので、解体屑a
0のなかから、CaO含有量が4.5質量%以下の解体屑aを選別し、この解体屑aを耐火物原料として用いる。また、解体屑aの配合割合を60質量%、残りをバージン原料とする場合、解体屑aのCaOが3.8質量%以下であれば、製造される耐火物のCaO含有量を2.5質量%以下にすることができるので、解体屑a
0のなかから、CaO含有量が3.8質量%以下の解体屑aを選別し、この解体屑aを耐火物原料として用いる。
【0034】
耐火物原料中での解体屑aの配合割合に特別な制限はないが、10質量%未満では使用済み耐火物の再利用率が低下し、一方、成形するために超微粉や粘土等のバージン原料が少なくとも20質量%程度は配合された方がよいため、一般には解体屑aの配合割合は10〜80質量%とすることが好ましい。上述したように、一般に、添加成分としてCaOを配合しない新規の耐火物原料(バージン原料)のCaO含有量は0.5質量%以下であるので、解体屑aの配合割合を上限の80質量%とする場合、解体屑aのCaO含有量が3.0質量%以下であれば、製造される耐火物のCaO含有量を2.5質量%以下にすることができる。
【0035】
使用済み耐火物を耐火物原料に再利用して製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%を超えると、使用済み耐火物に混入したスラグによる耐火物の耐食性が急激に悪化し、安定した耐用性(耐食性)が得られなくなるが、解体屑aは上述のようにしてCaO含有量を指標に選別されたものであるため、本発明によれば、CaO含有量が2.5質量%以下のスラグ混入が少ない耐火物を製造することができる。
【0036】
以下、本発明の第二の製造方法について説明する。
本発明の第二の製造方法では、付着異物と不要材質部分を除去する分別解体を施して得られた解体屑a
0についてCaO含有量を測定し、このCaO含有量に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるような、耐火物原料中での解体屑a
0の配合割合を求め、この配合割合の解体屑a
0を耐火物原料として用いる。
この第二の製造方法において、再利用対象となる使用済み耐火物の詳細、分別解体の方法、解体屑a
0の回収方法、原料化するまでの処理方法などは、さきに説明した本発明の第一の製造方法と同様である。
【0037】
本発明において、解体屑a
0についてのCaO含有量の測定(成分分析)は任意の段階で行うことができる。すなわち、分別解体を経て回収された解体屑a
0は、破砕して磁気選別による地金除去を行った後、所望の粒度に粉砕し、次いで分級して粒度別の解体屑とするが、このような一連の作業工程のいずれかの段階(例えば、解体屑a
0の地金除去前、地金除去後、粉砕後、分級後のいずれかの段階)で解体屑a
0のCaO含有量の測定(成分分析)を行うことができる。なかでも、地金除去後の解体屑a
0を所望の粒度に粉砕したものについて、或いは粉砕後に粒度毎に分級したものについて、CaO含有量の測定(成分分析)を行うことが好ましい。
【0038】
このCaO含有量に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるような、耐火物原料中での解体屑a
0の配合割合を求め、この配合割合の解体屑a
0を耐火物原料として用いる。
本発明の第二の製造方法でも、解体屑aを耐火物原料の全部又は一部として耐火物を製造する。解体屑aを耐火物原料の一部として耐火物を製造する場合には、残りの耐火物原料としては、添加成分としてCaOを配合しない新規の耐火物原料(バージン原料)が用いられる。なお、耐火物原料中での解体屑aの配合割合につては、さきに述べた第一の製造方法と同様である。
【0039】
一般に、添加成分としてCaOを配合しない新規の耐火物原料(バージン原料)のCaO含有量は0.5質量%以下である。したがって、例えば、解体屑aのCaO含有量が4.5質量%の場合、解体屑aの配合割合を50質量%以下、残りをバージン原料とすれば、製造される耐火物のCaO含有量を2.5質量%以下にすることができるので、そのような配合割合で解体屑aを耐火物原料として用いる。また、解体屑aのCaO含有量が3.8質量%の場合、解体屑aの配合割合を60質量%以下、残りをバージン原料とすれば、製造される耐火物のCaO含有量を2.5質量%以下にすることができるので、そのような配合割合で解体屑aを耐火物原料として用いる。
【0040】
使用済み耐火物を耐火物原料に再利用して製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%を超えると、使用済み耐火物に混入したスラグによる耐火物の耐食性が急激に悪化し、安定した耐用性(耐食性)が得られなくなるが、解体屑aの配合割合は、上述のようにしてCaO含有量を指標に決められるものであるため、本発明によれば、CaO含有量が2.5質量%以下のスラグ混入が少ない耐火物を製造することができる。
【0041】
以上のようにして解体屑aを原料として製造される耐火物は、新規の耐火物原料(バージン原料)のみで製造される耐火物に対し、耐用低下が使用に支障ない範囲に抑えられ、安定した耐用性を発揮できる。この耐火物は、耐用性の安定化によって、従来では使用済み耐火物を原料とした耐火物の適用が困難であった、再利用前と同じ使用部位や設備にも適用できる。この結果、使用済み耐火物の再利用適用範囲および再利用可能量が増大し、廃棄物の減少によって廃棄物処理費用が削減されるとともに、安価な耐火物原料としての使用済み耐火物使用量が増加することにより、耐火物の製造コストも削減できる。また、この耐火物は、通常、不焼成れんがなどの定形耐火物として用いられるが、不定形耐火物として用いることもできる。
【実施例】
【0042】
製鉄工場で使用されている溶銑容器の修理時に発生する使用済み耐火物を耐火物原料として再利用した。当該溶銑容器のワーク部分には、アルミナ−ろう石−SiC−カーボンれんがが使用され、パーマネント部分と捨て張りれんがには、ろう石れんがが使用されている。また、溶銑容器上部にはアルマグキャスタブルが施工されている。この溶銑容器の修理時に分別解体を行った。まず、付着異物を重機で壊し、続いて上部のキャスタブル(不要材質部分)を解体した。これらの解体屑を排出した後、残りのワーク部分と捨て張りれんがを同時に解体し、その解体屑a
0を鉄板敷きの地面に排出し、回収した。この回収された解体屑a
0は、耐火物原料として再利用されるものであり、以下「回収解体屑a
0」という。
【0043】
回収解体屑a
0を40mm以下程度の粒径に粉砕し、磁力選別機により地金を除去した後、隣接する2箇所の仮置き場にて表土上に直接仮置きした。この2箇所の仮置き場から回収解体屑a
0を搬出する際に、一方の仮置き場では、不純物混入防止策として、表土に接触している回収解体屑部分(表土面から厚さ200mm程度の回収解体屑)が残るようにして、その上部の回収解体屑a
0のみを搬出し(表1中の「不純物混入防止対策:あり」の場合)、他方の仮置き場では、表土上の全ての回収解体屑a
0を搬出した(表1中の「不純物混入防止対策:なし」の場合)。
比較例に用いるため、分別解体を行わない解体屑も回収した。これは土木工事用に使用する目的でコーンクラッシャーによって40mm以下程度の粒径に粉砕し、磁力選別機により地金を除去した後に保管していたものである。
【0044】
回収解体屑a
0(比較例に用いるために回収された解体屑も含む。)を乾燥させた後、ジョークラッシャーとディスクミルを用いて最大粒径3mm以下に粉砕した。粉砕後の回収解体屑a
0は、それぞれ縮分し、サンプルを採取した後、所定の篩目で分級した。
回収解体屑a
0から採取したサンプルの化学成分を分析してCaO含有量を求め、本発明例では、このCaO含有量と耐火物原料中での解体屑aの配合率(30質量%、50質量%、70質量%)に基づき、製造される耐火物のCaO含有量が2.5質量%以下となるようなCaO含有量の解体屑aを選別し、この解体屑aを耐火物原料として用いた。
【0045】
耐火物原料中での解体屑aの配合率を30質量%、50質量%及び70質量%とし、解体屑aを新規の耐火物原料(バージン原料)に配合し、新たにアルミナ−ろう石−SiC−カーボン不焼成れんがを製造した。この際、比較材としたバージン原料のみを使用したれんがの組成値であるアルミナ(Al
2O
3)50質量%、シリカ(SiO
2)30質量%を目標にしてれんがを製造した。新規の耐火物原料は、アルミナ源としてバンド頁岩を、シリカ源としてろう石を使用した。また、黒鉛およびSiCは、解体屑aからの持ち込み量で不足する量を補填使用した。
【0046】
製造された各れんがの耐熱スポーリング性と耐食性を、以下のように評価した。
耐熱スポーリング性の評価試験では、1500℃に加熱されたアルゴンガス雰囲気の横型電気炉内に各れんがの試料を装入し、炉内雰囲気温度が1500℃に回復した後、15分保持し、その後、試料を15℃に保った冷水中に浸漬させるサイクルを10回繰り返した。評価は試験中の亀裂発生状況を観察するによって行ったが、10回の繰り返し中にどのサンプルも亀裂が発生せず、差は見られなかった。
【0047】
耐食性の評価では、回転ドラム試験機を利用した侵食試験を行った。侵食試験には、CaOとSiO
2との比が2.2となるよう調合した合成スラグを用いた。また、このスラグのFeOとMnOの含有量の合計値が17質量%となるよう調合を行った。侵食試験は、回転ドラム試験機に内張りした試料を回転させながらバーナーにより加熱し、試験温度1500℃に到達した後に合成スラグを投入し、3時間保持して行った。評価には、試験前後の試料の厚み変化を測定し、比較材であるバージン原料のみを使用したれんがの厚み変化を100とした侵食性指数を用いた。試験は各試料について2回ずつ行い、その平均値から侵食性指数を求めた。この試験結果を、れんが製造条件とともに表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
図1は、本実施例で製造されたれんがについて、CaO含有量と耐食性(侵食性指数)との関係をまとめたものであり、れんが中のCaO含有量が2.5質量%を超えると急激に侵食性指数が高くなり、耐食性が著しく悪化するのに対して、れんが中のCaO含有量が2.5質量%以下であれば、良好な耐食性が得られている。
また、比較例1と本発明例1との比較、比較例2と本発明例2との比較、および比較例3と本発明例3との比較から、分別解体を行うことにより、回収解体屑中のCaO含有量を低くできることが判る。また、本発明例1と本発明例4との比較、本発明例2と本発明例5との比較、および本発明例3と本発明例6との比較から、不純物混入防止策を採ることにより、CaO含有量をさらに低くできることが判る。
以上の試験結果から、分別解体で得られた回収解体屑を耐火物原料に用いるに際し、耐火物原料のCaO含有量を管理し、CaO含有量が2.5質量%以下となるような条件で不焼成れんがを製造することにより、耐熱スポーリング性が良好で、耐用性(耐食性)も安定した不焼成れんが製造できることが判る。