(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素化剤が、フッ化水素、金属フッ化物、フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体、フッ化4級アンモニウム、及びフッ化4級アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した高純度フルオロスルホニルアミド塩の製造方法においても、塩素原子をフッ素原子に置換する反応において残存するフッ化物イオンが、次工程の反応容器であるグラスライニング槽(GL槽)を腐食してナトリウムイオン等の不純物を増加させる等の問題があった。
また、微量のフルオロ硫酸が、アルカリ水溶液と接触してフルオロ硫酸塩となり、目的物に混入する場合がある。当該不純物は水洗することで除去が可能であるが、目的物が水溶性であるため、収率が低下するという問題があった。加えて、含まれるフルオロ硫酸塩は、分解してフッ化物イオンとして不純物となり、上記と同様、生成したフッ化物イオンが反応容器であるGL槽を腐食してナトリウムイオン等の不純物を増加させる等の可能性もあった。こうした不純物の混入は、フッ素含有スルホニルアミド化合物の品質低下につながり得る。
【0007】
本発明は、目的物の収率を低下させることなく、ナトリウムイオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、フルオロ硫酸イオン等の不純物を効率よく除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フッ素含有スルホニルアミド化合物を特定の塩水溶液で洗浄することにより、目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のものを包含する。
(1)フッ素含有スルホニルアミド、その金属塩、そのアンモニウム塩及びその4級アンモニウム塩からなる群から選ばれるフッ素含有スルホニルアミド化合物を、硫酸塩水溶液を用いて洗浄する工程を含む、フッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
(2)塩素含有スルホニルアミド、その金属塩、そのアンモニウム塩及びその4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる塩素含有スルホニルアミド化合物を、フッ素化剤を用いて塩素原子をフッ素置換した後に、該フッ素含有スルホニルアミド化合物を、硫酸塩水溶液を用いて洗浄する工程を行う、(1)に記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
(3)硫酸塩水溶液を用いて洗浄する工程の前に、中和工程を設ける、(1)又は(2)に記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
(4)フッ素化剤が、フッ化水素、金属フッ化物、フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体、フッ化4級アンモニウム、及びフッ化4級アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(2)に記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
(5)フッ素含有スルホニルアミド化合物が、式[II〕
【化1】
(式[II]中、R
1は、1〜6個の炭素原子を有するフッ化アルキル基又はフッ素原子を表し、R
2は塩素原子又はフッ素原子を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウムカチオン残基、又は4級アンモニウムカチオン残基を表し、nは、Mが水素原子の場合には1を表し、Mが金属原子である場合には、当該金属原子の原子価を表し、Mがアンモニウムカチオン残基又は4級アンモニウム残基の場合には1を表す。)で表される化合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
(6)フッ素含有スルホニルアミドが、ビス(フルオロスルホニル)アミドである(1)〜(5)のいずれかに記載のフッ素含有スルホニルアミド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フッ素含有スルホニルアミド化合物を硫酸塩水溶液で洗浄することにより、工業的に効率よく、電解質特性を低下させる金属イオン、フッ化物イオン等の不純物などを低減させて、高い純度で収率良くフッ素含有スルホニルアミド化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフッ素含有スルホニルアミド化合物とは、フッ素含有スルホニルアミド、その金属塩、そのアンモニウム塩及びその4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる化合物を表す。
フッ素含有スルホニルアミドとは、分子内にフッ素原子を有し、さらにスルホニルアミド結合を有する分子であれば、その構造は特に制限されず、具体的には、下記式[I]
【化2】
で表される化合物を例示することができる。式中、R
1は、1〜6個の炭素原子を有するフッ化アルキル基又はフッ素原子を表し、R
2は塩素原子又はフッ素原子を表す。R
1中、炭素数1〜6のフッ化アルキル基として具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、フルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、フルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、フルオロペンチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−t−ペンチル基、フルオロヘキシル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基等を例示することができる。式[I]として、具体的には、ビス(フルオロスルホニル)アミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、N−トリフルオロメチルスルホニル−N−フルオロスルホニルアミド等を例示することができる。
【0012】
フッ素含有スルホニルアミド以外のフッ素含有スルホニル化合物として、具体的には、式[II]で表される化合物を例示することができる。
【化3】
式[II]中、R
1及びR
2は式[I]と同じ意味を表す。Mは、水素原子、金属原子、アンモニウムカチオン残基、又は4級アンモニウムカチオン残基を表し、nは、Mが水素原子の場合には1を表し、Mが金属原子である場合には、当該金属原子の原子価を表し、Mがアンモニウムカチオン残基又は4級アンモニウム残基の場合には1を表す。式[II]中のMの金属原子として、具体的には、カリウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛等を例示することができ、4級アンモニウム残基として、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等を例示することができる。尚、残基とは、カチオン形成する電荷以外の部分を示す。式[II]で表される化合物として、具体的には、ビス(フルオロスルホニル)アミドカリウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドカリウム塩、ビス(フルオロスルホニル)アミドナトリウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドナトリウム塩、ビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドリチウム塩、ビス(ビス(フルオロスルホニル)アミド)亜鉛塩、ビス(N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミド)亜鉛塩、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアンモニウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアンモニウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(ペルフルオロ−n−プロピルスルホニル)アミドアンモニウム塩、ビス(フルオロスルホニル)アミドテトラメチルアンモニウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドテトラメチルアンモニウム塩、ビス(フルオロスルホニル)アミドテトラブチルアンモニウム塩、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アミドテトラブチルアンモニウム塩等を例示することができる。
これらのうちビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩が好ましい。
【0013】
フッ素含有スルホニルアミド化合物は、公知の方法を用いて製造することができるが、中でも、フッ素原子の位置が塩素原子である塩素原子含有スルホニルアミドを、フッ素化剤を用いてフッ素置換する方法を好ましく例示することができる。具体的には、公知の方法を用いて得られたビス(クロロスルホニル)アミドを、フッ素化剤を用いて塩素原子をフッ素置換する方法、また、フッ素置換後、中和する方法、又は、ビス(クロロスルホニル)アミドを中和して塩としてからフッ素化剤を用いて塩素原子をフッ素置換する方法等を例示することができる。
【0014】
フッ素置換に用いるフッ素化剤として、具体的に、フッ化水素、金属フッ化物、フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体、フッ化4級アンモニウム、及びフッ化4級アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体等を例示することができ、中でも、フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム−モノもしくはポリフッ化水素錯体が好ましい。
【0015】
化合物(I)で表されるフッ素含有スルホニルアミド又は化合物(II)で表されるフッ素含有スルホニル化合物と、フッ素化剤との反応は、化合物(I)又は(II)とフッ素化剤とを溶媒中で混ぜ合わせることによって行う。
フッ素化剤は、当該反応において、溶媒に溶解又は懸濁させて用いてもよいし、加熱によって融解させて用いてもよい。
フッ素化剤を溶解又は懸濁するための溶媒は、フッ素化反応を阻害しないものであれば特に限定されない。
【0016】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルムなどの非プロトン性溶媒を挙げることができる。フッ素化反応を円滑に進行させる観点から極性溶媒を使用することが好ましい。好適な溶媒として、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル又は酢酸ブチルを挙げることができる。
【0017】
フッ素含有スルホニルアミド化合物を硫酸塩水溶液で洗浄する工程は、特にその方法は限定されないが、フッ素含有スルホニルアミド化合物を上記溶媒に溶解し、硫酸塩水溶液を、又は硫酸塩水溶液に添加して、混合して行う方法を例示することができる。 特に、前記した塩素原子をフッ素置換する方法でフッ素含有スルホニル化合物を製造した反応溶液を硫酸塩水溶液洗浄する工程とするのが好ましい。さらに、フッ素含有化合物を用いてさらにカチオン交換反応を行うような場合には、カチオン交換反応前に洗浄工程を設けるのが好ましい。
【0018】
硫酸塩の使用量は、特に制限されないが、フッ素含有スルホニルアミド化合物1モルに対して、0.01〜10モルの範囲が好ましく、さらに0.05〜5モル、さらに0.1〜2モルの範囲が好ましい。
硫酸塩水溶液の濃度は、特に制限されないが、5〜30質量%の範囲が好ましく、さらに10〜20質量%の範囲が好ましい。5質量%未満では、目的物が水層に溶解して収率が低下する傾向にあり、30質量%より大きい場合には、不純物が十分には除去できない傾向にある。
洗浄工程は、1回で行うこともできるし、複数回に分けて洗浄することもできる。
【0019】
洗浄に用いる硫酸塩は、無機硫酸塩であり、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩;硫酸アンモニウム;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムなどの硫酸水素塩;ミョウバン等の複塩等を挙げることができる。
硫酸塩は洗浄対象に合わせて選ぶことが好ましく、洗浄対象であるフッ素含有スルホニルアミド化合物と対カチオンが同じになるものが好ましい。例えば、フッ素含有スルホニルアミドアンモニウム塩には硫酸アンモニウム水溶液を、フッ素含有スルホニルアミド金属塩には金属硫酸塩水溶液を用いることが好ましい。
【0020】
フッ素含有スルホニルアミド化合物中の除去対象となる不純物としては、ナトリウム、カリウム、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、鉛、ビスマス、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の原子のイオン又はこれらを含む原子団のイオンや、フルオロ硫酸イオン、アンモニウムイオン等のイオンが挙げられる。
硫酸塩水溶液には、除去したいイオンを極力持ちこまないようにすることが好ましい。例えば、除去したいイオンがナトリウムイオンの場合、ナトリウムイオンが5ppm以下の硫酸塩水溶液を用いることが好ましい。
【0021】
洗浄の温度は、0〜60℃、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは10〜30℃である。
【0022】
本発明は、フッ化物イオンを大幅に除去することが可能であることから、フッ化物イオンによる損傷が激しいガラス層を含む反応槽、例えばGL槽でフッ素化後の工程を行う場合に、GL槽の損傷抑制に加え、残存するフッ素イオンで溶け出すナトリウムイオン等の不純物が、製品へ混入することも抑制できるので、特に有用である。
【0023】
本発明の製造方法は、フッ素含有スルホニルアミド化合物に混入するナトリウムイオン等の不純物を効率よく除去する方法として大変有用であり、本発明の製造方法に従って得られるフッ素含有スルホニルアミド化合物は、電解質特性を低下させる金属不純物などの混入量が従来法で得られるものに比べて少ないので、一次電池、リチウムイオン二次電池などの二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、燃料電池、太陽電池、エレクトロクロミック素子などの電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料もしくはその中間体として好適に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜に変更を加えて実施することが勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0025】
実施例1
あらかじめ、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩中のナトリウムイオンを陽イオンクロマトグラフィーにより定量したところ、35ppmであった。このビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩39.71gを含む酢酸ブチル溶液303.61gを、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して0.5モル当量の硫酸アンモニウムの20質量%水溶液66.25gを用いて洗浄、分液し、37.89g(収率95.4%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液305.80gを得た。このうち10.58gをサンプリングし、溶媒を減圧留去して、陽イオンクロマトグラフィーによりナトリウムイオンを定量したところ、13ppmであった。
ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を硫酸アンモニウム水溶液で洗浄することにより、目的物の損失を抑えて、不純物であるナトリウムイオンを大幅に減少させることができた。
【0026】
実施例2
実施例1で得られたビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩36.58gを含む酢酸ブチル溶液295.22gを、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して0.5モル当量の硫酸アンモニウムの20質量%水溶液64.81gを用いて洗浄、分液し、33.29g(収率91.0%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液291.21gを得た。このうち、10.13gをサンプリングし、溶媒を減圧留去して、陽イオンクロマトグラフィーによりナトリウムイオンを定量したところ、4ppmであった。
【0027】
比較例1
実施例1において、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩19.82gを含む酢酸ブチル溶液152.23gに対し、硫酸アンモニウム水溶液の代わりに、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して1.0モル当量の塩化アンモニウムの20質量%水溶液26.73gを用いる以外は、実施例1と同様に行った。結果、18.87g(収率95.2%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液151.90gを得た。これに含まれるナトリウムイオンを、陽イオンクロマトグラフィーにより定量したところ、22ppmであった。
【0028】
比較例2
実施例2において、比較例1で得られたビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩17.52gを含む酢酸ブチル溶液141.09gに対し、硫酸アンモニウム水溶液の代わりに、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して1.0モル当量の塩化アンモニウムの20質量%水溶液24.89gを用いる以外は、実施例2と同様に行った。結果、16.13g(収率92.1%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液139.16gを得た。これに含まれるナトリウムイオンを、陽イオンクロマトグラフィーにより定量したところ、15ppmであった。
【0029】
実施例3
あらかじめ、ビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩中のナトリウムイオンを陽イオンクロマトグラフィーにより測定したところ、23ppmであった。このビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩17.18gを含む酢酸ブチル溶液137.86gを、ビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩に対して0.5モル当量の硫酸リチウムの20質量%水溶液25.67gを用いて洗浄、分液し、16.92g(収率98.5%)のビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩を含む酢酸ブチル溶液146.11gを得た。このうち12.69gをサンプリングし、溶媒を減圧留去して陽イオンクロマトグラフィーにより、ナトリウムイオンを定量したところ、15ppmであった。ビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩を硫酸リチウム水溶液で洗浄することにより、目的物の損失を抑えて、不純物であるナトリウムイオンを大幅に減少させることができた。
【0030】
実施例4
あらかじめ、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩中の、ナトリウムイオンは陽イオンクロマトグラフィーにより、フッ化物イオン、塩化物イオン及びフルオロ硫酸イオン(FSO
3−)は陰イオンクロマトグラフィーにより測定したところ、それぞれ、5ppm、1179ppm、24ppm、1378ppmであった。
このビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩19.81gを含む酢酸ブチル溶液95.64g(サンプルA)に、酢酸ブチル56.37gを加えた後、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して0.5モル当量の硫酸アンモニウムの20質量%水溶液33.08gで洗浄、分液し、17.84g(収率90.1%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液152.24gを得た。このうち、16.72gのビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液142.69gを、ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩に対して0.5モル当量の硫酸アンモニウムの20質量%水溶液31.00gを用いて洗浄、分液し、14.92g(収率89.2%)のビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を含む酢酸ブチル溶液140.14gを得た(サンプルB)。
この一部をサンプリングし、溶媒を減圧留去したところ、ナトリウムイオン(陽イオンクロマトグラフィーにより定量)、フッ化物イオン、塩化物イオン、フルオロ硫酸イオン(FSO
3−)(それぞれ陰イオンクロマトグラフィーにより定量)はそれぞれ1ppm、5ppm、3ppm、22ppmであった。
ビス(フルオロスルホニル)アミドアンモニウム塩を硫酸アンモニウム水溶液で洗浄することにより、ナトリウムイオン以外にも、フッ化物イオン等の不純物を大幅に減少させることができた。
【0031】
実施例5
実施例4で使用した、サンプルAの洗浄で得られたサンプルBを使用し、GLテストピース試験を実施した。
ポリ容器にGLテストピースを入れ、GLテストピースの接液部が14cm
2となるように、サンプルB42.58gを容器に加え、25℃で静置した。
この溶液の一部を、静置後0日目、1日目にサンプリングして溶媒を減圧留去し、陽イオンクロマトグラフィーにてナトリウムイオンを測定した。結果、サンプルBはそれぞれ<1ppm、<1ppmとなり、増加は見られなかった。
硫酸アンモニウム水溶液での洗浄により、フッ素イオン等の不純物を大幅に減少させることで、GLの腐食及びそれに伴うナトリウムイオンの増加の抑制ができた。
【0032】
比較例3
実施例5において、サンプルBの代わりに、サンプルAと同組成の溶液46.14gを使用する以外は、実施例5と同様にGLテストピース試験を実施した。
この溶液の一部を、静置後0日目、1日目にサンプリングして溶媒を減圧留去し、陽イオンクロマトグラフィーにてナトリウムイオンを測定した。結果、サンプルAはそれぞれ5ppm、30ppmとなり、顕著な増加が見られた。