(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態としての灰押出装置について説明するとともに、その改造方法について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
背景技術で説明したように、「戻り灰」の堆積量が増加すると、スクレーパの駆動に支障をきたし、焼却灰を排出口から押し出すことができなくなるおそれがある。そこで、本実施形態の灰押出装置は、後述するとおり、焼却灰が導入される筒状の壁面のうち第二傾斜面の上方に位置する壁面の下端部に形成された開孔に接続され、当該筒状の壁面の内側に向かってガスを噴出する配管を有するという簡易な構造を採用し、戻り灰が流通するための通路(隙間)を確保することで戻り灰の堆積を抑制する。以下、まずは灰押出装置の全体構成を説明し、次いで、戻り灰の堆積抑制のための構成を詳述する。
【0014】
[1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態の灰押出装置1は焼却炉(例えばストーカ炉)に設けられ、焼却炉で生成された焼却灰を冷却槽2で冷却したのち搬送装置19(例えばコンベヤ)へと排出する。灰押出装置1は、焼却灰を冷却する貯留水が貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ3及び駆動装置4とを有する。冷却槽2には、焼却灰が導入される導入口21及び冷却された焼却灰を排出する排出口22が設けられる。
【0015】
スクレーパ3は冷却された焼却灰を排出口22側へ押し出す装置である。スクレーパ3は、上方を向く上面3aと排出口22側を向く押出面3bと図示しない両側面とを備え、冷却槽2の底面23側に開放した箱型形状をなす。スクレーパ3は、押出面3bの下端(すなわちスクレーパ3の先端3c)が冷却槽2の底面23の全幅に亘って接しながら底面23に沿って前進及び後進する。なお、前進とは、スクレーパ3が焼却灰を排出口22側へ押し出す方向(
図1中の左方向、前進方向Df)に動くことを意味し、後進とは、前進の逆方向(スクレーパ3が戻る方向、
図1中の右方向、後進方向Dr)に動くことを意味する。また、全幅とは、冷却槽2の内部の幅方向(
図1の紙面に直交する方向)の大きさを意味する。
【0016】
駆動装置4はスクレーパ3を駆動する装置であり、導入口21に対し排出口22の逆側(
図1中の右側)に配置される。駆動装置4は、二方向に回動可能な駆動軸40と、スクレーパ3と駆動軸40とを接続するアーム41とを備える。駆動装置4は、駆動軸40が回動することでアーム41によってスクレーパ3を前進及び後進の往復動作をさせる。
【0017】
冷却槽2の導入口21は、筒状(例えば矩形筒状)の壁面20で形成される。この壁面20は、図示しない灰シュートと直結される。なお、灰シュートの上端は、図示しない焼却炉(例えばストーカ炉の後燃焼段)に接続される。壁面20の下端は、冷却槽2内の貯留水の所定水位(
図1中の破線)よりも下方に位置する。
【0018】
冷却槽2の底面23は、導入口21の直下から、排出口22(具体的には、排出口22における鉛直方向且つ下方の端部である開口端23d)に向かって上り傾斜となる第一傾斜面23aと、導入口21の直下から第一傾斜面23aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面23bとを備える。すなわち、第一傾斜面23aは前進方向Dfに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成され、第二傾斜面23bは後進方向Drに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成される。なお、冷却槽2では、導入口21の直下の底面部分(以下「最下面23c」という)が最も低く、底面23は、下に凸の曲面状となっている。冷却槽2の断面形状は幅方向に一様であり、第一傾斜面23a、最下面23c及び第二傾斜面23bの各幅寸法は全て同一である。
【0019】
駆動装置4の駆動軸40は、第二傾斜面23bの上方であって貯留水に浸からない位置(すなわち所定水位よりも上方)に配置される。水封のため、貯留水の所定水位は、壁面20の下端よりも上方且つ排出口22の下方に設定される。冷却槽2内の貯留水は、この所定水位に保たれるようコントロールされる。具体的には、冷却槽2の第二傾斜面23bの上方に配置された水位計11によって貯留水の実際の水位(実水位)が検出され、制御装置10が、水位計11によって検出された実水位に基づき注水管8の電磁バルブ82を開閉制御する。
【0020】
注水管8は、冷却槽2内の貯留水を増水する配管であり、第二傾斜面23bの上方に配置される。電磁バルブ82は注水管8の中途に介装されている。電磁バルブ82が開弁すると冷却槽2内に貯留するための水道水などの液体が注水管8の内部を流通し、電磁バルブ82が閉弁すると当該液体の流通が止まる。
【0021】
冷却槽2には、貯留水の水位が所定水位を超えた場合に、貯留水を排水するための排水管12が設けられる。排水管12の上端の開口は所定水位よりも上方且つ近傍に配置される。これにより、バルブ制御をすることなく過剰な貯留水は自働的に排出される。なお、貯留水は主成分が水であればよく、水道水や再利用水(プラント内で使用されたのち処理された水)であってもよいし、塩酸等が混合されて中性化された混合水であってもよい。
【0022】
制御装置10は、灰押出装置1が有する電子制御装置であり、プロセッサ及びメモリを搭載した電子デバイスである。制御装置10は、上述のように水位計11の測定した実水位に基づき、電磁バルブ82を制御するのみならず、後述する第一配管5に介装された第一電磁バルブ52の開弁および閉弁をも制御する。また、制御装置10は、駆動装置4を制御する。
【0023】
冷却槽2は、スクレーパ3の前進及び後進の方向において三つの空間に大別される。具体的には、導入口21の直下(最下面23cの上方)の空間(消火加湿空間24)と、第一傾斜面23aの上方に位置する空間(第一空間25)と、第二傾斜面23bの上方に位置する空間(第二空間26)である。
【0024】
消火加湿空間24は、導入口21から焼却灰が導入されるともに、この焼却灰を消火及び冷却しつつ加湿する空間である。第一空間25は、スクレーパ3により押された焼却灰を引き続き加湿するとともに、所定水位よりも上方に位置する焼却灰の水分を抜いて固化しない程度に乾燥させる空間である。第二空間26は、上記の駆動装置4、注水管8、排水管12及び水位計11が配置される空間である。また、スクレーパ3が最も後退した状態(
図1中の実線の状態)では、スクレーパ3の大部分が第二空間26内に位置する。
【0025】
図1に拡大して示すように、スクレーパ3の上面3aと後壁20Rの下端部20bとの間には消火加湿空間24と第二空間26とを連通する隙間Gが設けられる。隙間Gは、スクレーパ3が最も前進した状態(
図1中の二点鎖線の状態)でも確保される。この隙間Gにより、スクレーパ3が壁面20に接触することなく往復動作可能となっている。さらに、この隙間Gを通じて、注水管8から注水された貯留水が消火加湿空間24へ流通可能となっている。
【0026】
貯留水は、スクレーパ3の往復動作と逆方向に隙間Gを流通する。すなわち、貯留水は、スクレーパ3の後進時には、前進方向Dfに隙間Gを通過して第二空間26から消火加湿空間24へ流れ、スクレーパ3の前進時には、後進方向Drに隙間Gを通過して消火加湿空間24から第二空間26へ流れる。
【0027】
隙間Gは、スクレーパ3の前進に伴って次第に狭まり、スクレーパ3の後進に伴って次第に広がるように、スクレーパ3の上面3a及び後壁20Rの下端部20bの位置関係が設定される。例えば、スクレーパ3が最も前進した状態の隙間をG1とし、スクレーパ3が最も後退した状態の隙間をG2とすると、G1<G2の関係が成り立つ。消火加湿空間24及び第二空間26は、実質的に、この隙間Gのみを介して連通する。なお、スクレーパ3の上面3aの形状を、隙間Gの大きさを適正に保つための湾曲形状や階段状の形状にしてもよい。
【0028】
[2.要部構成]
スクレーパ3が往復動作すると貯留水に水流が生じ、貯留水に浸かっている焼却灰が貯留水とともに隙間Gから第二空間26に入り込んで第二空間26に堆積する戻り灰となりうる。灰押出装置1は、焼却灰が第二空間26に入り込むことを防止したり、第二傾斜面23b上に堆積した戻り灰を清掃したりする方法ではなく、第二空間26内に入り込んだ戻り灰が堆積することを抑制し、隙間Gを通じて消火加湿空間24に戻るように構成した点に特徴がある。
【0029】
具体的には、灰押出装置1は、第二傾斜面23bの上方であって、往復動作するスクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に一端5a(下端)から他端5b(上端)まで配置された直線状の第一配管5を有する。第一配管5の一端5aは、所定水位よりも下方に配置され、他端5bは所定水位よりも上方に配置される。なお、スクレーパ3は冷却槽2の実質的に全幅に亘って設けられる一方、アーム41は幅方向に間隔をあけて複数配置されるため、第一配管5は、幅方向においてアーム41と重ならない位置に配置される。
【0030】
第一配管5の一端5aには、他端5bから導入されたガスを噴出する第一噴出口50が設けられる。灰押出装置1では、第一配管5の他端5bに第一コンプレッサ51が設けられる。第一配管5から噴出されるガスは、この第一コンプレッサ51により圧縮された圧縮空気である。なお、圧縮空気の代わりに、焼却炉の排ガスを第一噴出口50から噴出する構成としてもよい。この場合、第一コンプレッサ51に代えて又は加えて、焼却炉の排ガスダクトから排ガスを第一配管5の他端5bに導入するための導入管を接続すればよい。
【0031】
図1に拡大して示すように、第一配管5の一端5aの形状は、実質的に水平方向に屈曲形成された角部を備えたL字形状である。第一噴出口50は、壁面20のうち第二傾斜面23bの上方に位置する壁面(すなわち後壁20R)の下端部20bに形成された開孔に接続される。なお、開孔は、下端部20bにおいて壁面20の厚み方向に貫通する孔や切欠きであり、第一噴出口50が嵌合可能な形状であることが好ましい。第一噴出口50は、当該開孔に対し、後壁20Rの外側(第二空間26側)を向く面から挿入され、第一噴出口50の先端が後壁20Rの内側(消火加湿空間24側)を向く面と一致する位置で固定される。
【0032】
第一配管5が上記のように配置されることで、第一噴出口50からガスが隙間Gの近傍で噴出され、当該ガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡が、スクレーパ3の上面3aに堆積した焼却灰ではね返り、隙間Gの周辺に滞留する焼却灰や浮遊する焼却灰(浮遊灰)を攪拌する。
【0033】
詳述すると、灰押出装置1では、第一噴出口50から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡が、まず、スクレーパ3の上面3aに堆積した焼却灰を削り取る。そして、当該堆積した焼却灰ではね返り隙間Gの近傍に流れ込む泡が、隙間Gの周囲に付着した焼却灰を剥離し、当該堆積した焼却灰ではね返って隙間Gの近傍に流れ込む水流が、当該剥離した焼却灰及び当該隙間に堆積しようとする焼却灰を押し流す。
従って、隙間Gの焼却灰による閉塞が抑制されるため、スクレーパ3の往復動作に伴って、戻り灰を含む貯留水を第二空間26から消火加湿空間24へ効果的に排出することができる。
【0034】
発明者は、スクレーパ3の進退の動きに伴って、隙間Gを介して貯留水の行き来が円滑に行われる限り、すなわち隙間Gが焼却灰で閉塞しない限り、戻り灰は、スクレーパ3の駆動に支障をきたすほど堆積することがないことを発見した。灰押出装置1は、当該発見に基づき、具体的に構成されたものである。
【0035】
第一配管5は、灰押出装置1の幅方向に所定の間隔をあけて複数配置される。各第一配管5は、例えば幅方向に延設される一つの支持部材(図示略)に固定されて支持されてよい。各第一配管5の断面形状は特に限定されず、円形,楕円形,多角形などを適用可能であり、この形状に応じて、壁面20の開孔の形状を設定すればよい。なお、第一噴出口50にノズル(図示略)を取り付けて、ガスを勢いよく噴射する構成としてもよい。
【0036】
灰押出装置1では、制御装置10が第一噴出口50からのガスの噴出を制御する。具体的には、制御装置10は、第一配管5の中途に介装された第一電磁バルブ52を開閉制御することで、少なくともスクレーパ3の後進の際に第一噴出口50からガスを噴出させる。ここでは、上記はね返りの効果を十分発揮しつつ消費電力を低減するため、制御装置10が、スクレーパ3の後進中に第一電磁バルブ52を開弁してガスを噴出させ、スクレーパ3が停止又は前進しているときに第一電磁バルブ52を閉弁する場合を例示する。なお、スクレーパ3の前進中は上記はね返りの効果が低減するが、スクレーパ3の動作に関わらず、常時ガスを噴出する構成であれば、隙間Gの閉塞防止効果や後述のアーチング防止効果をさらに高めることができる。また、第一噴出口50に戻り灰が侵入して閉塞することも防止できる。
【0037】
[3.灰押出装置の改造方法]
ここで、一般的な灰押出装置を、上述した灰押出装置1に改造するための方法について説明する。本改造方法は、三つの工程を有する。第一の工程は、上述した冷却槽2とスクレーパ3と駆動装置4と有する一般的な灰押出装置に対し、開孔を形成する工程である。この工程では、壁面20のうち、第二傾斜面23bの上方且つ所定水位よりも下方となる壁面の下端部20bに開孔を形成する。
【0038】
第二の工程は、第一配管5を配置する工程である。この工程では、第一配管5を、第二傾斜面23bの上方、且つ、往復動作するスクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に配置する。第三の工程は、ガスの噴出口である第一配管5の一端5aを、上記の開孔に接続する工程である。これら三つの工程は、この順に実施される。
【0039】
[4.効果]
(1)本実施形態の灰押出装置1によれば、第一配管5を通じて貯留水内で噴出されたガスが泡となりながら水流を生じさせ、上記はね返りにより泡を伴った水流が隙間G近傍に流れ込む。これにより、焼却灰による隙間Gの閉塞が抑制できるため、スクレーパ3の往復動作に伴う隙間Gを介した貯留水の行き来を確保できる。言い換えると、スクレーパ3の往復動作により生じる水流に乗せて、戻り灰を貯留水とともに隙間Gから消火加湿空間24へ排出することができる。したがって、簡易な構造で、戻り灰の堆積を抑制することができる。また、戻り灰の堆積を抑制することができるので、清掃を頻繁に行う必要もない。
【0040】
なお、ガスではなく液体(例えば貯留水と同じ水道水などの液体)を配管から噴出する構成であっても、上記はね返りにより隙間Gの流通をある程度は確保し得る。しかしながら、液体では、泡による剥離の効果が期待できない。
また、冷却槽2の貯留水の液量は、スクレーパ3を動作させない場合における所定水位まで貯留される液量に制限され、それ以上の液量については、排水管12から排出される。このため、ガスではなく液体を使用する場合は、プラントの運転コストを上昇させることになりうる。これに対し、第一噴出口50からガスを噴出する構成であれば、貯留水の液量に影響しないため、プラントの運転コストを安価にすることができる。
【0041】
また、上述した灰押出装置1によれば、第一噴出口50から噴出されるガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって、特に、上記のはね返った水流と泡とによって、導入口21の直下の水面に浮遊する焼却灰(浮遊灰)を攪拌して加湿することができ、浮遊灰が水面で固化するアーチングを防止できる。なお、第一噴出口50の向きは、スクレーパ3に向かって直接的にガスが噴出されないように設定される。このため、上記はね返りにより間接的に泡や水流が隙間Gの近傍の壁面20Rやスクレーパ3に穏やかに接触することから、壁面20Rやスクレーパ3が削りとられる等の損傷を防止することができる。
【0042】
また、上述した灰押出装置1は、一般的な灰押出装置に対し、スクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に第一配管5を配置し、一端5aに設けられた第一噴出口50を、壁面20の下端部20bの開孔に接続することで完成する。つまり、冷却槽2の壁面20の一部に開孔を形成するだけで、スクレーパ3や駆動装置4といった主要部品を一切変更することなく改造が可能である。したがって、安価で簡単、且つ、短い工事期間で改造工事をすることができ、簡易な構造で、戻り灰の堆積を抑制可能な灰押出装置を実現できる。
【0043】
(2)上述した灰押出装置1によれば、第一噴出口50から圧縮空気を噴出するためには第一コンプレッサ51を設ければよく、空気自体のコストはかからないため、安価な灰押出装置1を実現できる。また、焼却炉の排ガスを第一噴出口50から噴出する構成とすれば、噴出されるガスの温度が高いため剥離力が増加し、隙間Gの閉塞をより抑制できる。また、この場合、排ガスに含まれる二酸化炭素によって灰が炭酸化反応するので、灰の無害化を図ることができる。
【0044】
(3)上述した灰押出装置1では、第一噴出口50からのガスの噴出を制御する制御装置10が設けられ、少なくともスクレーパ3の後進の際にガスが噴出される。スクレーパ3が後進する際には、隙間Gを通じて、第二空間26内の貯留水が消火加湿空間24へ流れる水流が発生するため、少なくともスクレーパ3の後進中にガスを噴出させることで、第二空間26内の戻り灰を隙間Gの水流に乗せて排出することができる。このため、効率よく戻り灰の堆積を抑制することができる。
【0045】
(4)なお、上述した灰押出装置1では、隙間Gが、スクレーパ3の前進に伴って次第に狭まり、スクレーパ3の後進に伴って次第に広がるように、スクレーパ3の上面3a及び後壁20Rの下端部20bの位置関係が設定される。このため、スクレーパ3の前進中は、隙間Gを通じて第二空間26内に貯留水が流れにくくなり、隙間Gを流れる水流による戻り灰の量を抑制できる。一方、スクレーパ3の後進中は隙間Gが次第に広がるため、隙間Gを流れる水流に乗って戻り灰が消火加湿空間24へ排出されやすくなる。したがって、第二空間26内の戻り灰の堆積を抑制することができる。
【0046】
[5.変形例]
上述した灰押出装置1は一例であり、上述した構成に限られない。以下、二種類の変形例について説明する。これら二つの変形例は組み合わせることも可能である。以下の説明では、上述した実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
[5−1.第一変形例]
図2に示す第一変形例の灰押出装置1′は、実施形態の灰押出装置1に対し、二つの注水管7、9及び注水ノズル71を追加し、さらに各々に対応した電磁バルブ72、82、92を追加して、制御装置10がこれら電磁バルブ72、82、92の開閉を制御する点が主に異なる。
【0048】
すなわち、本変形例の灰押出装置1′は、灰押出装置1の構成に加え、冷却槽2内の貯留水を増水する複数の注水管を備える。具体的には、灰押出装置1′は、第一注水管7と第二注水管8と第三注水管9の3つの注水管を備える。なお、第一注水管7、第二注水管8、第三注水管9はそれぞれ異なる注水管である。ここで、第二注水管8は、上記実施形態の注水管8と同様、第二傾斜面23bの上方に配置されたものであるので、同一番号を付している。
注水管7〜9からの貯留水の供給量は、後述するとおり、上記の制御装置10によって実水位(水位計11で検出された水位)に基づき制御される。
【0049】
注水ノズル71は、壁面20のうち排出口22側の面(すなわち前壁20F)に配置されており、隙間Gに向けて水を噴射する。この注水ノズル71には第一注水管7が接続される。第一注水管7の中途には、制御装置10により開弁及び閉弁が制御される電磁バルブ72が介装される。電磁バルブ72は、開弁することで、貯留水として貯留される水道水などの液体を第一注水管7の内部に流通させ、閉弁することで、当該液体の流通を止める。
【0050】
灰押出装置1′では、スクレーパ3の往復運動に伴って、貯留水を吸収し内部に取り込んだ焼却灰が排出口22から排出され、また、貯留水の液面が波打って上下するため排水管12から貯留水が徐々に排出されるので、自働的に貯留水は減水し、実水位は所定水位より低下する傾向にある。
【0051】
そこで、貯留水が減水する速度を緩和するため、制御装置10は、電磁バルブ72を開弁して、予め設定された所定量(既定量)の液体(水道水など)を注水ノズル71から噴射し、当該既定量の液体を噴射し終わったら電磁バルブ72を閉弁する。当該既定量の液体の噴射に要する時間は適宜設定されるが、上述のとおり、貯留水の減水を緩和するのが目的であるため、後述のアーチング防止効果を奏する程度に少量の液体を比較的長時間かけて噴射するのが望ましい。
なお、このとき、制御装置10は、電磁バルブ82または電磁バルブ92を開弁して第二注水管8または第三注水管9から水を注水してもよい。
【0052】
従って、灰押出装置1′は、注水ノズル71による水噴射で隙間Gの周囲の貯留水を攪拌する。よって、灰押出装置1に比べ、焼却灰による隙間Gの閉塞をさらに効果的に防止できる。従って、隙間Gが閉塞せず、隙間Gにおける貯留水の流通が維持できるため、結果として、第二空間26の戻り灰(例えばスクレーパ3の裏側および第二傾斜面23bに堆積する戻り灰)の量を、駆動装置4の動作に影響を与えない程度に抑制できる。
また、多量の焼却灰が灰シュートから落下して、所定水位よりも上方に堆積した場合でも、注水ノズル71の水噴射によってこの堆積した焼却灰を崩すとともに素早く加湿できる。そのうえ、注水ノズル71の水噴射は、基本的に水面を直撃するため、導入口21の下方の水面の浮遊灰が水面で固化するアーチングをさらに効果的に防止できる。
【0053】
なお、制御装置10が注水ノズル71から水道水などの液体を噴射させるタイミングは適宜設定可能である。例えば、スクレーパ3が前進すると、筒状の壁面20の内部で、液面が上昇するとともに焼却灰の山が盛り上がる。従って、制御装置10が、スクレーパ3が前進方向Dfに前進時に注水ノズル71から当該液体を噴射させることで、焼却灰の冷却を効率よく行うとともに、アーチングを効率よく抑制できる。スクレーパ3の往復動作に関わらず、当該液体を注水ノズル71から連続的に噴射する構成や、タイマー制御により短時間の所定周期で当該液体を注水ノズル71から噴射する構成とすると、消火加湿空間24の水面に注水ノズル71が水噴射する時間が長くなるので、アーチングをさらに効果的に抑制することができる。
【0054】
制御装置10は、例えば、所定水位から実水位を減じた高低差が所定値以上の場合、少なくとも電磁バルブ72を開弁して注水ノズル71から上記既定量の液体の噴射を開始するとともに、電磁バルブ82を開弁して第二注水管8から液体を注水して、実水位から所定水位に向けて貯留水を増水するよう制御する。
または、制御装置10は、所定水位から実水位を減じた高低差が所定値以上の場合、少なくとも電磁バルブ72を開弁して注水ノズル71から上記既定量の液体の噴射を開始し、その後、当該高低差が所定値未満となったら、電磁バルブ82を開弁して第二注水管8のみから液体を注水して、実水位から所定水位に向けて貯留水を増水するよう制御してもよい。
水位計11は第二空間26に配置されるため、第二空間26に配置された第二注水管8から主に注水することで、水位の調整を適切に行うことができる。
【0055】
第三注水管9は、第一傾斜面23aの上方に配置され排出口22の直前に位置する焼却灰に注水するためのものである。第三注水管9の中途には、制御装置10により開閉制御される電磁バルブ92が介装される。電磁バルブ92は、開弁すると水道水などの液体を第三注水管9の内部に流通させ、閉弁すると当該液体の流通を止める。
【0056】
上記の通り、第一空間25における所定水位よりも上方の空間は、焼却灰の水分を抜くための空間である。この空間に存在する焼却灰は、スクレーパ3の動きに伴って次第に排出口22に移動しながら、一般的に数時間をかけて水分を抜き、乾燥される。しかし、所定水位よりも上方に位置する焼却灰が、当該乾燥により固化すると排出口22付近に詰まってしまう恐れがある。
【0057】
そこで、制御装置10が、第三注水管9によって排出口22近傍の焼却灰に水道水などの液体を散布して、焼却灰を適度に湿らせて固化しない程度に軟化する。これにより、灰押出装置1′は、焼却灰を排出口22から容易に排出することが可能となる。なお、制御装置10が第三注水管9から水を散布するタイミングは特に限られず、第一注水管7の注水ノズル71と同期して散布してもよいし、長時間の所定の周期で散布してもよい。第一注水管7の注水ノズル71と同期して散布する場合、スクレーパ3が前進して焼却灰を押圧しているので、排出口22からの焼却灰の排出が容易となる。
【0058】
[5−2.第二変形例]
図3に示す第二変形例の灰押出装置1″は、実施形態の灰押出装置1に対し、第二配管6及びそれに対応した第二電磁バルブ62を追加し、第二配管6からガスを噴出する点が主に異なる。第二配管6は、第二傾斜面23bの上方であって、往復動作するスクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に一端6aから他端6bまで配置される。第二配管6の一端6aは、所定水位よりも下方に配置され、他端6bは所定水位よりも上方に配置される。
【0059】
第二配管6の一端6aには、他端6bから導入されたガスを第二傾斜面23bとスクレーパ3との間に向けて噴出する第二噴出口60が設けられる。
図3に拡大して示すように、本変形例の第二配管6の一端6aの形状は、実質的に水平方向に屈曲形成された角部を備えたL字形状である。この角部が第二傾斜面23bに接触して配置される。これにより、第二噴出口60からガスを噴出した際に、ガスの圧力で一端6aが後進方向Dr側に押し戻されても、第二配管6の変形または変位が防止される。
また、第二傾斜面23bにおいてスクレーパ3の後進によりかき上げられた戻り灰の物理的な圧力によって第二配管6が変形または変位することも防止される。さらに、第二噴出口60からガスを噴出するので、スクレーパ3の後進によりかき上げられた戻り灰による第二噴出口60の閉塞も防止できる。
【0060】
また、第二配管6では、第二噴出口60が、実質的に水平方向、具体的には第二配管6の延在方向(例えば鉛直方向)に対して直交する方向(例えば水平方向)に開口するので、第二噴出口60からのガスは、第二傾斜面23bから離れる方向に噴出する。このため、第二噴出口60から噴出されたガスが第二傾斜面23bを削るなどして損傷することがない。
【0061】
灰押出装置1″では、第二傾斜面23bの近傍で第二噴出口60から噴出されたガスにより生じる水流と泡は、第二傾斜面23bとスクレーパ3の間を前進方向Dfに進み、やがてスクレーパ3の押出面3bまたは上面3aに速度を落として穏やかに当たることではね返り、または、当たることなく渦を巻く。このため、当該ガスによる泡で、第二空間26に堆積(例えば、第二傾斜面23bに堆積、スクレーパ3の裏側に堆積、等)した戻り灰が剥離され、当該水流によって、当該剥離した戻り灰のみならず第二空間26に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。
【0062】
言い換えると、第二空間26内に堆積した戻り灰を剥離するとともに、第二空間26内の戻り灰が第二傾斜面23b上に堆積する前に、第二噴出口60から噴出されるガスによって戻り灰を攪拌し、貯留水内に戻り灰が混ざり合った状態(流動状態)を保つ。従って、灰押出装置1″は、戻り灰を第二空間26から容易に排出する。また、灰押出装置1″においては、戻り灰は、上記泡の浮力によりスクレーパ3の裏側や第二傾斜面23bの近傍から水面に押し上げられて分散する。従って、灰押出装置1″は、戻り灰を第二空間26からさらに容易に排出することができる。
【0063】
第二空間26で攪拌された戻り灰は、スクレーパ3の往復動作により生じる水流に乗って、貯留水とともに隙間Gから消火加湿空間24へと排出される。したがって、本変形例の灰押出装置1″によれば、第一噴出口50から噴出されるガスによって隙間Gの閉塞が抑制されたうえで、第二噴出口60から噴出されるガスによって戻り灰を攪拌できるため、一層効果的に戻り灰の堆積を抑制できる。
【0064】
なお、本変形例の灰押出装置1″では、第二配管6の他端6bに第二コンプレッサ61が設けられる。第二配管6から噴出されるガスは、この第二コンプレッサ61により圧縮された圧縮空気である。なお、第二コンプレッサ61に代えて、第一コンプレッサ51と第一電磁バルブ52との間に分岐点を設け、第二配管6の他端6bをこの分岐点に接続することで、第一コンプレッサ51を兼用してもよい。また、圧縮空気の代わりに、焼却炉の排ガスを第二噴出口60から噴出する構成としてもよい。この場合、第二コンプレッサ61に代えて又は加えて、焼却炉の排ガスダクトから排ガスを第二配管6の他端6bに導入するための導入管を接続すればよい。
【0065】
第二配管6は、灰押出装置1″の幅方向に所定の間隔をあけて複数配置される。なお、第一配管5及び第二配管6は同数でなくてもよく、配置される間隔が同一である必要はない。第二配管6の断面形状も特に限定されず、円形,楕円形,多角形などを適用可能である。なお、第二噴出口60にノズル(図示略)を取り付けて、ガスを勢いよく噴射する構成としてもよい。
【0066】
本変形例の灰押出装置1″では、制御装置10が第二噴出口60からのガスの噴出を制御する。具体的には、制御装置10は、第二配管6の中途に介装された第二電磁バルブ62を開閉制御することで、少なくともスクレーパ3の後進の際に第二噴出口60からガスを噴出させる。
【0067】
例えば、
図4に示すように、スクレーパ3が後進する際に、制御装置10が第二噴出口60からガスを噴出させることで戻り灰が攪拌されるとともに、スクレーパ3によって戻り灰がかき上げられる。また、スクレーパ3の後進により、第二空間26において、戻り灰を含む貯留水の位置が所定水位より上昇し、且つ、消火加湿空間24における貯留水の位置が所定水位より下降する。このため、スクレーパ3の後進に伴って次第に広がる隙間Gを流れる水流Wrに乗り、戻り灰が第二空間26から消火加湿空間24へ排出される。また、スクレーパ3にかき上げられた戻り灰も第二噴出口60から噴出されたガスにより撹拌されるので、かき上げられた戻り灰による第二配管6の損傷を防止し、また第二噴出口60に戻り灰が侵入して閉塞することを防止できる。なお、この時、排水管12からも戻り灰を含む貯留水が排出される場合がある。
従って、第二空間26内の戻り灰の堆積が抑制される。
【0068】
一方、
図5に示すように、スクレーパ3が前進する際には、消火加湿空間24内の焼却灰が盛り上がり、消火加湿空間24において、戻り灰を含む貯留水の位置が所定水位より上昇し、且つ、第二空間26において、戻り灰を含む貯留水の位置が所定水位より下降する。だたし、隙間Gはスクレーパ3の前進に伴って次第に狭くなることから、隙間Gを通じて消火加湿空間24から第二空間26に貯留水が流れにくくなり、隙間Gを流れる水流Wfによる戻り灰の量が抑えられる。これによっても、第二空間26内の戻り灰の堆積が抑制される。なお、スクレーパ3の前進の際にもガスを噴出させる構成であってもよい。この場合、第二空間26内の貯留水が常時かき乱されることになるため、戻り灰の堆積がより抑制される。
【0069】
なお、上述した実施形態及び各変形例の灰押出装置1、1′、1″において、制御装置10がガスの噴出タイミングだけでなく、噴出量を制御するよう構成してもよい。
【解決手段】焼却灰の導入口21及び排出口22を備えた冷却槽2と、スクレーパ3と、駆動装置4と、注水管8と、排水管12とを有し、冷却槽2の底面23が第一傾斜面23a及び第二傾斜面23bを備え、貯留水が所定水位で貯えられ、駆動装置4がスクレーパ3を底面23に沿って往復動作させる灰押出装置1は、第二傾斜面23bの上方であってスクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に配置された第一配管5を有する。第一配管5は、一端5aが所定水位よりも下方に配置され、この一端5aに、他端5bから導入されたガスを噴出する第一噴出口50を備える。第一噴出口50は、第二傾斜面23bの上方に位置する壁面20Rの下端部20bの開孔に接続され、第一噴出口50から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって隙間Gに貯留水を流通させる。