特許第6718567号(P6718567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6718567
(24)【登録日】2020年6月16日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/55 20170101AFI20200629BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A61K47/55
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61K9/08
   A61K31/728
   A61K47/40
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K31/196
   A61K47/14
   A61K47/22
   A61K47/32
   A61K47/20
【請求項の数】28
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2020-508637(P2020-508637)
(86)(22)【出願日】2019年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2019044851
【審査請求日】2020年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-215867(P2018-215867)
(32)【優先日】2018年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 千晶
(72)【発明者】
【氏名】山下 直哉
(72)【発明者】
【氏名】國井 直子
(72)【発明者】
【氏名】星 裕貴
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/066214(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/168920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/005458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/55
A61K 9/08
A61K 31/196
A61K 31/728
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/20
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/40
A61P 19/02
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に示される化合物及び成分(A)を含有する医薬組成物:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【化1】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
【請求項2】
前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項又はに記載の医薬組成物。
【請求項4】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の終濃度が、0.01〜30wt%である請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらに、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含む、請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
pHが4.5〜7.0である、請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
水性組成物である、請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
関節疾患処置用医薬組成物である、請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載の医薬組成物が注射筒内に充填されている注射器を含む、キット。
【請求項12】
請求項10のいずれかに記載の医薬組成物を含むバイアル、及び注射器を含む、キット。
【請求項13】
下記式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物を製造する方法であって、下記式(1)に示される化合物と成分(A)とを共存させる工程を含む、方法:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【化1】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
【請求項14】
前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記成分(A)が、終濃度0.01〜30wt%で添加される、請求項1316のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(1)に示される化合物及び/又は成分(A)が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含む、請求項1317のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
医薬組成物のpHが4.5〜7.0である、請求項1318のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬組成物が水性組成物である、請求項1319のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
下記式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法であって、下記式(1)に示される化合物と、成分(A)とを共存させる工程を含む、方法:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【化1】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
【請求項22】
前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記成分(A)が、終濃度0.01〜30wt%で添加される、請求項2124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記式(1)に示される化合物、及び/又は、前記成分(A)が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含むものである、請求項2125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
pHが4.5〜7.0の範囲で行われる、請求項2126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記式(1)に示される化合物と前記成分(A)とを水性溶媒中で共存させる、請求項2127のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸誘導体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節疼痛や関節変性に起因する機能障害である変形性関節症(以下、本明細書において「OA」とも称する。)は、全世界で最も一般的な関節疾患であり、特に高齢者における日常生活に支障をきたす身体的障害の主要な原因の1つとなっている。また、OAと同じように関節に腫れと痛みを伴う疾患として、多発性関節炎であるリウマチ性関節症(以下、本明細書において「RA」とも称する。)が知られている。RAにおいても、長期間にわたって病状が続き、症状が進行すると、軟骨や骨が破壊されて変性変形が起こり、関節を動かせる範囲が狭くなるなど日常生活に支障をきたす身体的障害がもたらされる。
【0003】
現在、変形性関節症やリウマチ性関節症等の関節症の医薬としてヒアルロン酸やその誘導体を用いた製剤が使用されている。ヒアルロン酸製剤は、通常注射剤として製剤化され、ヒアルロン酸が有する潤滑作用、衝撃吸収作用、軟骨代謝改善作用等を通じた関節症による機能障害の改善及び疼痛抑制を目的として、患部である膝、肩等の関節に直接投与される。製品化されているヒアルロン酸製剤としては、例えば精製ヒアルロン酸ナトリウムを有効成分として含むもの(例えば、アルツ(登録商標)、スベニール(登録商標))がある。当該製剤では、1週間に1回の頻度で、連続3〜5回の投与が必要とされている。
また、架橋ヒアルロン酸を有効成分とする製剤では、1週間に1回の頻度で連続3回の投与が必要とされるもの(例えば、Synvisc(登録商標))や、1回投与で治療が完結する単回投与用のもの(例えば、Synvisc−One(登録商標)、Gel−One(登録商標)、MONOVISC(登録商標))が知られている。
【0004】
一方、ステロイドや非ステロイド系の抗炎症化合物は、即効性のある薬剤として知られており、OAやRAに起因した関節疼痛を緩解すること等を目的とした治療にも使用されている。例えば、ステロイドであるトリアムシノロンアセトニドは、関節リウマチなどの関節疾患を治療対象として、関節腔内注射される薬剤として市販されており、治療には1〜2週間毎の投与を必要とする。また、非ステロイド系抗炎症化合物では、例えばジクロフェナクナトリウムを有効成分として含有する軟膏や経口投与剤が知られており、抗炎症効果の発現のために1日当たり複数回の投与を必要とする。
【0005】
ヒアルロン酸又はその誘導体と、ステロイド又は非ステロイド系抗炎症化合物との混合物又は結合物を有効成分とすることも知られている。例えば架橋ヒアルロン酸とトリアムシノロンヘキサアセトニドとの混合物(CINGAL(登録商標))が単回投与用の薬剤として製品化されている。また、ヒアルロン酸又はその誘導体と、ステロイド又は非ステロイド系抗炎症化合物とが連結した化合物も知られている。例えば特許文献1および2には、抗炎症化合物がスペーサーを介してヒアルロン酸に導入された誘導体が記載されている。これらは速効性のある疼痛緩和と機能障害の改善を通じた長期的な疼痛緩和との両方を目指したものであるが、開発の途中段階にあり、承認薬の上市には至っていない。
また、別の一例として、速効性のある疼痛緩和と機能障害の改善を通じた長期的な疼痛緩和との両方を目指し、ヒアルロン酸の糖鎖中に一定の割合で抗炎症化合物であるジクロフェナクが導入された結合体(以下、「Dic−HA」と言うことがある。)の開発がすすめられてきた。しかしながら、Dic−HAについても未だ開発の途中段階にある。
ヒアルロン酸の安定化技術として、特許文献3には、ヨウ素含有還元剤及び/又は硫黄含有還元剤をヒアルロン酸に添加する方法が開示されている。また、特許文献4には、ヒアルロン酸を含む水性組成物がソルビトールによって安定化される旨の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/066214号
【特許文献2】国際公開第2015/005458号
【特許文献3】特開平10−212303号公報
【特許文献4】国際公開第2017/131130号
【発明の概要】
【0007】
Dic−HAから生成したジクロフェナクは低分子化合物であるため投与部位(例えば、関節内の滑膜)に溜まりにくく、早期にリンパ、血中等の投与部位外に移行する。このため、生体内への投与前の医薬組成物におけるジクロフェナクの生成は薬効の長期持続性という観点からは好ましくない。しかしながら、Dic−HAからジクロフェナクが生成される挙動は明らかでなく、そもそも生成を阻止するだけの実用上の必要があるのか、必要があるとすれば、どのように阻止できるのか、不明であった。
本発明者らが開発を進める中で、Dic−HA含有組成物中にDic−HAの分解物の存在が認められた。そして、分解物を解析したところ、Dic−HAから生成された分子は、ジクロフェナクのみならず、ジクロフェナクラクタムとして組成物中に含まれていることが判明した。また、ジクロフェナクラクタムの蓄積量が、保存期間や加熱処理等によって増大することが判明した。
本発明者らが検討を進めたところ、ジクロフェナクはそれ自体、消炎効果を有する生理活性物質であるが、そのラクタム体であるジクロフェナクラクタムは、Cox−2阻害活性がジクロフェナクの1/100程度であり、生理的に活性な消炎性物質とはみなされないものであった。これにより、生理的に不活性なジクロフェナクラクタムの生成を抑制すること、及びジクロフェナクラクタムの蓄積が抑制された組成物を提供することの意義がより明確に見いだされた。
【0008】
ヒアルロン酸の安定化技術として、特許文献3には、ヨウ素含有還元剤及び/又は硫黄含有還元剤をヒアルロン酸に添加する方法が開示されているが、これらの還元剤はヒアルロン酸の分子量低下を抑制するものであって、ヒアルロン酸結合物からのジクロフェナク成分の生成抑制に関しては記載も示唆もなされていない。また、特許文献4には、ヒアルロン酸を含む水性組成物がソルビトールによって安定化される旨の開示があるが、ここで指標とされたのは当該水性組成物の粘度低下の抑制であるから、ここで言う安定化とは、ヒアルロン酸の分子量低下の抑制であると解される。すなわち、Dic−HAのようなヒアルロン酸結合物からのジクロフェナク成分の生成抑制に関しては記載も示唆もなされていない。
【0009】
上記のように、ヒアルロン酸の分子量低下抑制に係る安定化技術に係る報告こそ存在しているものの、Dic−HAの分解によるジクロフェナクラクタムの生成を抑止する技術については、知見が何ら存在していなかった。本発明者は、医薬として患者に投与する前段階ではDic−HAの分解を抑制(ジクロフェナクラクタムの蓄積を抑制)しつつ、投与後の患者の体内ではDic−HAの緩徐分解によって消炎剤としての生理活性を有するジクロフェナクを徐放したいという分解性能に関する相反する課題を見出したが、先行技術からは何ら解決指針も与えられない状態であった。
【0010】
本発明者らは、Dic−HA含有組成物中において、ある種の化合物を共存させたり、Dic−HA含有水性組成物の濾過性を高めたりすることにより、Dic−HA含有組成物中のジクロフェナクラクタムの蓄積量を抑制し得ることを見出した。
【0011】
本発明の一側面は、下記式(1)に示される化合物を含有し、さらに非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である成分(A)を含有する医薬組成物に関する。当該医薬組成物は局所投与用の処置剤(例えば、抗炎症剤、疼痛抑制剤)として好適に用いられ、特にOA、RA等の関節疾患処置用組成物として好ましく使用される。本発明の別の側面は、当該医薬組成物を製造する方法であって、下記式(1)に示される化合物、及び、前記成分(A)を共存させる工程を含む方法に関する。本発明のまた別の側面は、下記式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法であって、下記式(1)に示される化合物に対して、前記成分(A)を共存させる工程を含む方法に関する。本発明のまた別の側面は、下記式(1)に示される化合物からのジクロフェナク成分の生成を抑制する方法であって、下記式(1)に示される化合物に対して、前記成分(A)を共存させる工程を含む方法に関する。
本発明の別の側面は、下記式(1)に示される化合物を含み、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上である、水性組成物に関する。
【0012】
【化1】
【0013】
ただし、式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
【0014】
本明細書において、上記式(1)に示される化合物を「ヒアルロン酸誘導体」と表現することもある。また、式(1)においてaの割合で存在する構成二糖単位を「ジクロフェナク導入構成二糖単位」と、bの割合で存在する構成二糖単位を「ヒアルロン酸構成二糖単位」(すなわち、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸又はその塩とがβ1,3結合した構造)とも称する。また、「ジクロフェナク導入構成二糖単位」とヒアルロン酸構成二糖単位」とを特に区別することなく、単に「構成二糖単位」とも称する。
本明細書において、成分(A)及び濾過性向上剤を総称して「付加成分」とも称する。
【0015】
より具体的な例として、本発明は次の[1]から[23]に関する。
[1]式(1)に示される化合物、及び、成分(A)を含有する医薬組成物であって、前記成分(A)は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、医薬組成物。
[2]関節疾患処置用である、前記[1]に記載の医薬組成物。
【0016】
[3]前記[1]又は[2]に記載の医薬組成物が注射筒内に充填されている注射器を含む、キット。
[4]前記[1]又は[2]に記載の医薬組成物を含むバイアル、及び注射器を含む、キット。
【0017】
[5]式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物を製造する方法であって、式(1)に示される化合物と、前記成分(A)とを共存させる工程を含む、方法。
【0018】
[6]式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法であって、式(1)に示される化合物に対して、前記成分(A)を共存させる工程を含む、方法。
【0019】
[7]成分(A)の、式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物の製造における使用であって、前記成分(A)と前記式(1)に示される化合物とを共存させる工程を含み、前記医薬組成物は関節疾患処置用であり、前記成分(A)は、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する化合物である、使用。
【0020】
[8]ヒトの関節疾患処置における使用のための成分(A)であり、かつ、式(1)に示される化合物と共に関節疾患処置用医薬組成物の構成成分として使用されるものである、成分(A)。
【0021】
[9]ヒトの関節疾患処置方法であって、医薬組成物を関節疾患患者の関節に投与する工程を含み、前記医薬組成物は、有効量の式(1)に示される化合物、及び、成分(A)を含有する医薬組成物である、方法。
【0022】
[10]式(1)に示される化合物を含み、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上である水性組成物、ただし、前記最大処理量(Vmax)は、孔径0.22μmのポリフッ化ビニリデン濾過膜を用いて、液温70℃の前記水性組成物を0.6MPaの加圧下で濾過し、有効濾過面積当たりの総濾過量を、流量が濾過開始時の1/10以下になるまで30秒毎に測定し、これによって得られた測定値を下記計算式AおよびBに適用して導かれる値である:
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
ただし、上記計算式A及びBにおいて、tは濾過時間(分)であり、Vは有効濾過面積当たりの総濾過量(g/cm)であり、aは計算式Aの傾きであり、bは計算式Aの切片である。
[11]濾過性向上剤を更に含む、前記[10]に記載の水性組成物。
[12]前記濾過性向上剤が、ポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、及びこれらの塩、からなる群から選ばれる、前記[11]に記載の水性組成物。
[13]下記条件にて測定されるジクロフェナクラクタムの相対量が、0.9以下(例えば0.8以下、または0.75以下)である、前記[11]又は[12]に記載の水性組成物:
式(1)に示される化合物と濾過性向上剤とを共存させた試験組成物と、濾過性向上剤を含まない以外は上記と同一組成の対照組成物を、それぞれ、60℃の恒温槽にて1週間保存した後、試験組成物及び対照組成物中に蓄積したジクロフェナクラクタムの量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、試験組成物中に蓄積したジクロフェナクラクタム量を、対照組成物中に蓄積したジクロフェナクラクタム量を1としたときの相対量として算出する。
[14]下記条件にて測定されるジクロフェナクの相対量は、1未満(例えば0.95以下、または0.9以下)である、前記[11]〜[13]のいずれかに記載の水性組成物:
式(1)に示される化合物と濾過性向上剤とを共存させた試験組成物と、濾過性向上剤を含まない以外は上記と同一組成の対照組成物を、それぞれ、60℃の恒温槽にて1週間保存した後、試験組成物及び対照組成物中に蓄積したジクロフェナクの量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、試験組成物中に蓄積したジクロフェナク量を、対照組成物中に蓄積したジクロフェナク量を1としたときの相対量として算出する。
[15]関節疾患処置用である、前記[10]〜[14]のいずれかに記載の水性組成物。
[16]式(1)に示される化合物を0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%の濃度で含有する、前記[10]〜[15]のいずれかに記載の水性組成物。
[17]濾過性向上剤を0.01w/v%以上60w/v%以下、0.1w/v%以上30w/v%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満の濃度で含有する、前記[11]〜[16]のいずれかに記載の水性組成物。
[18]水を10w/v%以上99.98w/v%以下、60w/v%以上99.8w/v%以下、80w/v%以上98.5w/v%以下、または89w/v%を超えて97w/v%以下の濃度で含有する、前記[10]〜[17]のいずれかに記載の水性組成物。
【0025】
[19]前記[10]〜[18]のいずれかに記載の水性組成物が注射筒内に充填されている注射器を含む、キット。
[20]前記[10]〜[18]のいずれかに記載の水性組成物を含むバイアル、及び注射器を含む、キット。
【0026】
[21]式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物を製造する方法であって、式(1)に示される化合物と、濾過性向上剤とを共存させる工程を含む、方法。
【0027】
[22]式(1)に示される化合物の濾過性を向上させる方法であって、式(1)に示される化合物に対して、濾過性向上剤を共存させる工程を含む、方法。
【0028】
[23]前記[10]〜[18]のいずれかに記載の水性組成物を関節疾患患者の関節に投与する工程を含む、ヒトの関節疾患処置方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明によれば、ジクロフェナクラクタムの蓄積量が抑制されたDic−HA含有医薬組成物が提供される。
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について、例を挙げて説明する。
本発明の一側面は、下記式(1)に示される化合物と、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である成分(A)とを含有する医薬組成物:
【0031】
【化1】
【0032】
(式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である)
に関する。
【0033】
本発明の別の側面は、式(1)に示される化合物及び付加成分を含有する、ジクロフェナクの生成及び/又は蓄積が抑制された医薬組成物である。
【0034】
本発明の別の側面は、式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物を製造する方法であって、式(1)に示される化合物と、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である成分(A)とを共存させる工程を含む、方法に関する。
【0035】
本発明の別の側面は、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法であって、式(1)に示される化合物に対して、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の共存させる工程を含む、方法に関する。
【0036】
本発明のさらに別の側面は、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質の、式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物の製造における使用であって、前記医薬組成物は関節疾患処置用であり、前記少なくとも1種の物質は式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する化合物である、使用に関する。
【0037】
本発明のさらに別の側面は、ヒトの関節疾患処置における使用のための少なくとも1種の化合物であり、前記少なくとも1種の化合物は、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれるものであり、かつ、式(1)に示される化合物と共に関節疾患処置用医薬組成物の構成成分として使用されるものである、少なくとも1種の化合物に関する。
【0038】
本発明のさらに別の側面は、ヒトの関節疾患処置方法であって、医薬組成物を関節疾患患者の関節に投与する工程を含み、前記医薬組成物は、有効量の式(1)に示される化合物、及び、少なくとも1種の化合物を含有する医薬組成物であって、前記少なくとも1種の化合物は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれるものであり、かつ式(1)に示される化合物からのジクロフェナク成分の生成を抑制するものである、方法に関する。
【0039】
本発明の別の側面は、式(1)に示される化合物の保存方法であって、保存中のジクロフェナクラクタムの生成及び/又は蓄積が抑制された医薬組成物であって、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる化合物を含む、医薬組成物の保存方法に関する。
【0040】
本発明のさらに別の側面は、式(1)に示される化合物、及び、少なくとも1種の化合物を含有する医薬組成物であって、少なくとも1種の化合物は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれるものであり、かつ式(1)に示される化合物からのジクロフェナク成分の生成を抑制するものである、医薬組成物、並びに、注射器を含む、キットに関する。
【0041】
本発明の一側面によれば、式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物において、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類、及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることで、式(1)に示される化合物から生成されるジクロフェナクラクタムが前記医薬組成物の保存中に蓄積することを抑制することができる。
本発明の一側面によれば、式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物において、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることで、式(1)に示される化合物から生成されるジクロフェナクが前記医薬組成物の保存中に蓄積することを抑制することができる。
本発明の一側面によれば、長期の安定性に優れ、保存可能期間が延長された医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、注射用の水性組成物として容器(例えば、バイアル、注射筒等の)中で保存可能であり、保存期間におけるジクロフェナクラクタムの経時的な蓄積が抑制されたものである。これにより、医薬組成物の供給が効率化され、製造・保管等に係るコストが低減することとなり、結果として当該医薬組成物の需要者である患者にとっての福音となる。
【0042】
本明細書において「カルボン酸塩の基」とは、カルボキシレート[-C(=O)-O]とカチオンとが塩を形成した構造であり、薬学的に許容される塩の形態であり得る。カルボン酸塩を形成するカチオンはカルボキシレート[-C(=O)-O]と塩を形成可能であれば特に限定されないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等を例示できる。好ましい一実施形態では、カルボン酸塩の基は、−CONaで表される(すなわち、カチオンがナトリウムイオンである)。
【0043】
本明細書において「薬学的に許容される塩」とは、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩のような金属塩;アンモニウム塩;メチルアミン塩、ジエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩のようなアミン塩;塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、リンゴ酸塩のような有機酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書において「ジクロフェナク成分」とは、ジクロフェナク及びジクロフェナクラクタムを個別に又は総称して指すものとして用いられる。ジクロフェナク成分量は、実施例に記載される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた手法により測定される。
【0045】
本明細書において、成分(A)は、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。成分(A)を含有することにより、ジクロフェナクラクタムの生成及び/又は蓄積が抑制された医薬組成物が提供される。
【0046】
本明細書において、「共存させる」とは、対象物質同士を接触し得る状態におくことを意味する。例えば、式(1)に示される化合物に成分(A)を添加することにより行うことも可能であり、成分(A)に、式(1)に示される化合物を添加することにより行うことも可能である。また、式(1)に示される化合物と成分(A)とを混合させることにより行うことも可能である。
【0047】
成分(A)として用いられる塩は、上記「薬学的に許容される塩」と同様、特に限定されないが、例えば、上記したような薬学的に許容される塩等を例示できる。
【0048】
一実施形態では、成分(A)は、例えば、式(1)に示される化合物を含む組成物において、ジクロフェナクラクタムの蓄積及び/又は生成を抑制する機能を有する。
好ましい一実施形態では、成分(A)は、さらに、式(1)に示される化合物を含む組成物において、ジクロフェナクの蓄積及び/又は生成を抑制するものが採用される。
【0049】
本明細書において、ジクロフェナク成分の生成及び蓄積の「抑制」とは、ジクロフェナク成分の生成量及び/又は蓄積量を減少させることを意味する。
【0050】
ジクロフェナク成分の蓄積及び/又は生成は、式(1)に示される化合物と成分(A)とを共存させた水性組成物を60℃の恒温槽にて1週間保存した後、水性組成物中に蓄積したジクロフェナク成分の量を測定することにより求めることができる。成分(A)によるジクロフェナク成分の蓄積抑制効果及び/又は生成抑制効果は、実施例においてより具体的に記載される通り、成分(A)を含まない以外は同一組成の水性組成物を同一条件で保存し、当該水性組成物に蓄積したジクロフェナク成分量を1としたときの相対量として試験水性組成物中のジクロフェナク成分量を算出することにより評価できる(当該相対量が1より小さい場合には、ジクロフェナク成分の蓄積及び/又は生成が抑制されている。)。この方法により、式(1)に示される化合物を含む水性組成物が、ジクロフェナク成分の蓄積及び/又は生成が抑制されているかどうか判断可能である。
【0051】
上記条件で算出されるジクロフェナクラクタムの相対量は、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.75以下であることが更に好ましい。また、上記条件で算出されるジクロフェナクの相対量は、1未満であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.9以下であることが更に好ましい。
【0052】
組成物は、成分(A)の一種を単独で、又は二種以上を含んでいてもよい。
二種以上含む場合の成分(A)の組み合わせも特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールと非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコールとヒドロキシアルキル化シクロデキストリンといった二種類の成分(A)を組み合わせたもの、ポリアルキレングリコール、非イオン性界面活性剤及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリンの三種類の成分(A)を組み合わせたものが挙げられる。後述する実施例のとおり、複数の成分(A)を共存させることにより、より高いジクロフェナク成分の抑制効果が期待できる。
また、本発明の別の側面は、式(1)に示される化合物とジクロフェナク成分の蓄積及び/又は生成を抑制する成分とを共存させた水性組成物であって、60℃の恒温槽にて1週間保存した後のジクロフェナクラクタムの相対量が0.9以下、より好ましくは該相対量が0.75以下である水性組成物である。ただし、前記相対量はジクロフェナク成分の蓄積及び/又は生成を抑制する当該成分を含まない以外は同一の水性組成物(対照組成物)を同一条件で保存し、当該対照組成物に蓄積したジクロフェナクラクタムの量を1としたときの値である。
本発明者らの検討により、成分(A)は、ジクロフェナク成分の生成抑制剤、組成物中のジクロフェナクラクタムの蓄積抑制剤、又は後述のように式(1)に示される化合物を含有する水性組成物の濾過性向上剤としても利用することもできることが明らかとなった。
一実施態様において、成分(A)は、組成物において0.01w/v%以上60w/v%以下、好ましくは0.1w/v%以上30w/v%以下、より好ましくは1w/v%以上15w/v%以下、特に好ましくは2w/v%以上10w/v%未満の割合で含有させることができる。
【0053】
ここで、ジクロフェナクは下記の式(2)で示される構造を有するものであり、ジクロフェナクラクタムは下記の式(3)で示される構造を有するものである。
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
本明細書において、「非イオン性界面活性剤」とは、当業者が通常理解する非イオン性界面活性剤が意図される。
非イオン性界面活性剤の非限定的な例として、ポリソルベート(ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80等)、アルキルフェノールエトキシレート(オクチルフェノールエトキシレート(Triton(商標)X−100)、ノニルフェノールエトキシレート等)、アルキルグルコシド(デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド等)、ポリオキシエチレングリコールエーテル(オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレンモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル等)、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル(ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェノールエーテル等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、グリセロールアルキルエステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、モノデカノイルスクロース、コカミド、ドデシルジメチルアミンオキシド、及び、アルコキシ化アルコール(エトキシ化アルコール、プロポキシ化アルコール、エトキシ化プロポキシル化アルコール等)、及び薬学的に許容されるこれらの塩を挙げることができる。
一実施態様において、ポリソルベート20、ポリソルベート80、TritonX−100、オクチルグルコシド、及び薬学的に許容されるこれらの塩が好ましい非イオン性界面活性剤として使用される。
【0057】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン」とは、当業者が通常理解するヒドロキシアルキル化されたシクロデキストリンが意図される。
ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンの非限定的な例として、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(HE−β−CD)、及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を挙げることができる。一実施態様において、HE−β−CD及びHP−β−CDは、それぞれ好ましいヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとして使用される。
【0058】
本明細書において、「C〜Cモノアルコール」とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の、炭素数1〜3のモノアルコールを意味する。
一実施態様において、エタノールが好ましいC〜Cモノアルコールとして使用される。
【0059】
本明細書において、「C〜Cジアルコール」とは、1,2−エタンジオール、プロピレングリコール等の、炭素数2〜3のジアルコールを意味する。
一実施態様において、プロピレングリコールが好ましいC〜Cジアルコールとして使用される。
【0060】
本明細書において、「C〜Cトリアルコール」とは、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、D−グルカール等の、炭素数3〜6のトリアルコールを意味する。
一実施態様において、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、及びD−グルカールは、それぞれ、好ましいC〜Cトリアルコールとして使用される。
【0061】
本明細書において、「ポリアルキレングリコール」とは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、アルキレングリコールのポリマーを意味する。ポリエチレングリコールの非限定的な例として、PEG100〜10000(例えば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG4000及びPEG6000)を挙げることができる。これらの例は、いずれも、本発明の一実施態様において好ましいポリアルキレングリコールとして使用される。
好ましい一実施形態において、重量平均分子量が200以上6,000以下のポリエチレングリコールが用いられる。
より好ましい一実施形態体において、重量平均分子量が400以上6,000以下のポリエチレングリコールが用いられる。
【0062】
本明細書において、「γ−ラクトン」とは、当業者が通常理解する5員環を有するラクトンが意図される。
γ−ラクトンの非限定的な例として、D-エリスロノラクトン、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、グルクロノラクトン、及び薬学的に許容されるこれらの塩を挙げることができる。
一実施態様において、D-エリスロノラクトン、エリソルビン酸ナトリウム、グルクロノラクトン、及び薬学的に許容されるこれらの塩は、それぞれ、好ましいγ−ラクトンとして使用される。
【0063】
本明細書において、「クロロゲン酸類」とは、クロロゲン酸、フェロイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸、及び薬学的に許容されるこれらの塩等のクロロゲン酸又はその類似化合物を意味する。
一実施態様において、クロロゲン酸及びその薬学的に許容される塩は好ましいクロロゲン酸類として使用される。
【0064】
本明細書において、「アルキル硫酸エステル」とは、アルキル基としてオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等を有する硫酸エステル、及びその薬学的に許容される塩
が意図される。代表的なアルキル硫酸エステルとして、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を挙げることができる。
一実施態様において、SDSは好ましいアルキル硫酸エステルとして使用される。
【0065】
組成物におけるジクロフェナクの生成及び/又は蓄積が抑制されるという観点から、好ましい一実施形態では、成分(A)は、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が使用される。
組成物のフィルター濾過性が優れるという観点から、好ましい一実施形態では、成分(A)は、ポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる化合物が使用される。
【0066】
本発明において、医薬組成物は、好ましくはヒトの関節疾患の処置に使用されるものである。本明細書において「関節疾患」とは、膝関節、肩関節、首関節、股関節、脊椎関節、顎関節、指関節、肘関節、手関節、足関節等の各種関節における疾患である。関節疾患としては、より具体的には、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨損傷、膝関節骨壊死症、大腿骨壊死症、肩関節炎、細菌性関節炎、ウイルス性関節炎、神経病性関節症等が例示できる。本発明にかかる関節疾患処置用の組成物は、好ましくは変形性関節症又は関節リウマチに用いられ、より好ましくは変形性関節症に用いられる。
【0067】
本明細書において「処置」とは、疾患それ自体に対する処置(例えば、疾患における器質的病変を治癒又は改善させる処置)であっても、疾患に伴う諸症状(例えば、疼痛、こわばり、関節機能(例えば、日常行動の困難性(階段の昇降や乗用車の乗降等に代表される)によって評価され得る)など関節に起因するADLの低下)に対する処置であってもよい。また、「処置」は、完全な治癒のみならず、疾患の一部又は全部の症状の改善、および疾患の進行の抑制(維持および進行速度の低下を含む)ならびに予防を含む。ここで予防とは、例えば関節における器質的病変が認められるものの関節の機能的障害、疼痛および/又はこわばりといった関節疾患に伴う諸症状が生じていない場合において、当該諸症状の発生を未然に防ぐことを含む。また、予防とは、例えば関節における明確な器質的病変が認められていないものの、関節の機能的障害、疼痛および/又はこわばりといった関節疾患に伴う諸症状が生じている場合において、当該器質的な病変の発生を未然に防ぐことや当該諸症状のうち顕在化していない症状の発展を抑制することを含む。組成物は、好ましくは関節疾患における症状の改善、治癒、又は進行の抑制に用いられ、より好ましくは症状の改善又は治癒に用いられ得る。一実施形態では、組成物は、関節痛の改善、治癒もしくは進行の抑制、又は関節機能の改善に好適に用いられ得る。
【0068】
本明細書において「有効量」とは、合理的なリスク/ベネフィット比に見合って、過度の有害副作用(毒性、刺激性およびアレルギー反応など)を有さずに、所望の応答を得るのに十分な成分の量を意味する。当該「有効量」は、投与対象となる患者の症状、体格、年齢、性別等の諸要素によって変化し得る。しかしながら、当業者であれば、諸要素の組み合わせのそれぞれについての個別の試験を要するまでもなく、一又は複数の具体的な試験例の結果と技術常識に基づいて、他の場合における有効量をも決定することができる。
【0069】
ヒアルロン酸は、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸又はその塩とがβ1,3結合した構造を二糖単位(ヒアルロン酸構成二糖単位)とし、当該ヒアルロン酸構成二糖単位が繰り返しβ1,4結合した基本骨格により構成されたグリコサミノグリカンを含み、当該基本骨格により構成されたグリコサミノグリカンである。また、ヒアルロン酸は、動物由来、又は微生物由来の精製物、化学的合成等の合成物など、いずれの手法により得られたものであっても用いることが可能である。
【0070】
ヒアルロン酸及び式(1)に示される化合物の質量平均分子量は特に限定されないが、10,000以上10,000,000以下が例示され、好ましくは500,000以上5,000,000以下、より好ましくは600,000以上3,000,000以下、さらに好ましくは600,000以上1,200,000以下である。なお、本明細書において、ヒアルロン酸及び式(1)に示される化合物の「質量平均分子量」は、極限粘度法により測定した値であり、これらの化合物の「重量平均分子量」と同義である。
【0071】
ヒアルロン酸及び式(1)に示される化合物は、塩を形成していない状態でも良く、また塩を形成した状態でも良い。かような塩としては、上記したような薬学的に許容される塩が例示できる。
【0072】
式(1)に示される化合物は、ヒアルロン酸に対して、2−ブロモエチルアミン臭化水素酸塩や2−アミノエタノール等をスペーサー化合物として用いてジクロフェナクと共有結合させることにより得られる。
【0073】
式(1)に示される化合物において、ジクロフェナクとスペーサーとはエステル結合で連結され、スペーサーとヒアルロン酸とはアミド結合で連結されてなる。
また、各構成二糖単位は、式(1)に示される化合物において、それぞれa及びbの比率でランダム又はブロック状に連結され得る。すなわち、ジクロフェナク導入構成二糖単位及びヒアルロン酸構成二糖単位は、ランダム又はブロックの形態で互いにβ1,4結合によって結合される。
式(1)に示される化合物の末端は、水素原子又は水酸基である。
【0074】
式(1)において、aは全構成二糖単位の数に対するジクロフェナク導入構成二糖単位の数の割合であり、bは全構成二糖単位の数に対するヒアルロン酸構成二糖単位の数の割合であり、a+bは1である。式(1)においてaとして示される割合をモル分率で表現した場合には、当該モル分率の値を本明細書では「導入率」と言う。式(1)において、aは0.01以上0.7以下(導入率として1モル%以上70モル%以下、bは0.3以上0.99以下)であり、0.1以上0.2以下(10モル%以上20モル%以下、bは0.8以上0.9以下)が好ましい。
【0075】
式(1)におけるaや導入率の値は、ヒアルロン酸へのジクロフェナクの導入反応工程において、縮合剤、縮合補助剤、スペーサー化合物の反応当量、ジクロフェナクの反応当量等を変えることにより調整可能である。
ここで、本明細書における「導入率」は、下記計算式1にて算出される値であり、吸光度測定により求めることができる。
【0076】
【数3】
【0077】
導入率は、より具体的には、ジクロフェナク特有の吸収度をカルバゾール吸光度法により測定し、予め作成したジクロフェナクの検量線を用いて、上記式により算出可能である。
【0078】
式(1)に示される化合物において、nは全構成二糖単位の数を示し、下記計算式2又は3から計算することができる。
原料のヒアルロン酸の質量平均分子量からnを求める場合は、下記計算式2にて算出できる。
【0079】
【数4】
式(1)に示される化合物の質量平均分子量、並びに式(1)におけるa及びbからnを求める場合は、下記計算式3にて算出できる。
【0080】
【数5】
nは25以上25,000以下の整数であり、好ましくは1,250以上12,500以下の整数であり、より好ましくは1,500以上7,500以下、さらに好ましくは1,500以上3,000以下の整数である。
【0081】
ヒアルロン酸にスペーサーおよびジクロフェナクを導入する方法は、スペーサーを導入したヒアルロン酸にジクロフェナクを導入してもよく、予めスペーサーを導入したジクロフェナクをヒアルロン酸と反応させてもよい。例えば特許文献1や特許文献2等を参照することにより、当業者であれば適宜実施をすることができる。
【0082】
一実施形態では、組成物は、式(1)に示される化合物を0.01w/v%以上80w/v%以下の濃度で含有する。好ましい実施形態では、0.1w/v%以上10w/v%以下、より好ましくは0.5w/v%以上5w/v%以下、特に好ましくは1w/v%の式(1)に示される化合物を含有する。
【0083】
組成物は、式(1)に示される化合物に加えて、薬学上許容される担体を含み得る。当該薬学上許容される担体としては、注射用水、生理食塩水、リンゲル液等の水性溶媒が好ましく例示される。一実施形態では、医薬組成物は水性組成物である。一実施形態では、組成物は、当該薬学上許容される担体と式(1)に示される化合物とを混合することにより調製される。必要に応じ、緩衝剤などのような添加物を組成物に添加してもよい。また、組成物は、各成分の混合後に、例えばフィルター濾過等により、除塵、除菌、滅菌等の処理を行ってもよい。
【0084】
一般に、医薬組成物等の組成物を生体(哺乳動物、特にヒトが好ましい)に適用する場合、除塵及び滅菌が必要となる。水性組成物の場合、成分の安定性や簡便性の観点から、除塵及び滅菌工程を濾過によって行うことが好ましい。組成物をフィルター濾過によって滅菌処理等を行う場合は、市販のメンブレンフィルター、滅菌済容器、滅菌済注射器・注射筒などが適宜使用できる。例えば、メンブレンフィルターとして、孔径0.22μmのメンブレンフィルターが使用できる。式(1)に示される化合物を含む水性組成物は高い粘性を有するので、実施態様によっては濾過性の低さから水性組成物の調製、特に濾過滅菌の際に困難が生じるおそれがある。
ここで、式(1)に示される化合物を含む水性組成物は濾過性が乏しい。特許文献1には、Dic−HAを含む溶液をアルカリ処理することにより、濾過フィルターの通過性を有する透明な溶液となり得ることが、示されている。しかしながら、発明者らが検討を進めたところ、Dic−HAを含む水性組成物をアルカリ処理すると、ジクロフェナク成分の生成が進むことが分かった。一方、式(1)に示される化合物を含む水性組成物の滅菌を、フィルター滅菌に代えて加熱滅菌で行うと、やはりジクロフェナク成分の生成が進んでしまうことが分かった。
【0085】
本発明のある側面は、式(1)に示される化合物を含み、以下の算出方法において最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示す水性組成物に関する。かような水性組成物によれば、フィルター濾過が可能であるため、除塵及び滅菌工程におけるジクロフェナク成分の生成を防止/抑制できる。
最大処理量(Vmax)の算出は、より具体的には、以下のように行う。すなわち、孔径0.22μmのポリフッ化ビニリデン濾過膜を用いて、液温70℃の前記水性組成物を0.6MPaの加圧下で濾過する。このとき、濾過膜の有効濾過面積当たりの総濾過量(V)を、流量(Q)が濾過開始時の1/10以下になるまで30秒毎に測定する。横軸に濾過時間(t)をとり、縦軸にt/Vをとって測定結果をプロットし、t/Vの推移が安定した測定点の範囲で下記式Aを算出する。最大処理量(Vmax)は、計算式Aの傾きaの逆数(すなわち、下記計算式B)から求められる。なお、流量(Q)は単位時間当たりの濾過量(すなわち、Q=dV/dt)である。
【0086】
【数1】
【0087】
【数2】
上記計算式A及びBにおいて、tは濾過時間(分)であり、Vは有効濾過面積当たりの総濾過量(g/cm)であり、aは計算式Aの傾きであり、bは計算式Aの切片である。
最大処理量(Vmax)が大きくなるほど(すなわちフィルター濾過性が高いほど)、フィルターの目詰まりが起こりにくく濾過に必要な時間が減少する。
なお、Vmax自体は、濾過フィルターの選定や最適化において用いられている評価指標である(要すれば、小林公彦著、「Vmax試験 フィルターの選定および最適化方法」、バイオプロセス・テクニカルシート 基礎技術No.2、日本ミリポア、1997年8月参照)。
【0088】
式(1)に示される化合物を含み、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上である水性組成物は、医薬組成物又はその中間体として有用である。最大処理量(Vmax)は、好ましくは6.0g/cm以上であり、より好ましくは8.0g/cm以上であり、更に好ましくは10g/cm以上であり、更により好ましくは15g/cm以上であり、特に好ましくは20g/cm以上である。最大処理量(Vmax)の上限は特に制限されないが、例えば2000g/cm以下(1500g/cm以下、1200g/cm以下、1000g/cm以下、800g/cm以下、500g/cm以下、200g/cm以下)である。例えば、1.0g/cm以上2000g/cm以下、6.0g/cm以上1500g/cm以下、8.0g/cm以上1000g/cm以下、10g/cm以上800g/cm以下、15g/cm以上500g/cm以下又は15g/cm以上200g/cm以下であってもよい。
【0089】
一実施形態では、水性組成物は、濾過性向上剤を更に含む。本発明において、「濾過性向上剤」とは、式(1)に示される化合物を含む水性組成物の濾過性、すなわち最大処理量(Vmax)、を向上させるものであれば特に限定されない。濾過性向上剤の具体例としては、例えば上記の成分(A)が例示できるが、これらに限定されない。
一実施形態では、濾過性向上剤は、上記したようなポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリンからなる群から選ばれる。
濾過性の観点から、好ましい一実施形態では、PEG200〜6000、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが濾過性向上剤として使用される。
より好ましい一実施形態では、PEG400、PEG4000、エタノール及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選ばれる化合物が、濾過性向上剤として組成物に使用できる。
一実施態様として、PEG400を含む場合には、濾過性が著しく向上することから、濾過性向上剤として特に好ましく使用できる。
【0090】
水性組成物は、濾過性向上剤の一種を単独で、又は二種以上を含んでいてもよい。
一実施態様において、水性組成物において0.01w/v%以上60w/v%以下、好ましくは0.1w/v%以上30w/v%以下、より好ましくは1w/v%以上15w/v%以下、特に好ましくは2w/v%以上10w/v%未満の割合で濾過性向上剤を含有させることができる。
本明細書において、「水性組成物」は、水を10w/v%以上99.98w/v%以下含有する組成物である。水性組成物は溶液、懸濁液、又はゲル状であってもよい。水性組成物の調製に用いる水としては、例えば注射用水、精製水、蒸留水などが例示できる。水性組成物中の水の含有量は、好ましくは60w/v%以上99.8w/v%以下、より好ましくは80w/v%以上98.5w/v%以下、特に好ましくは89w/v%を超えて97w/v%以下である。
【0091】
一実施形態では、式(1)に示される化合物を含む水性組成物の最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上であり、且つジクロフェナクラクタムの相対量が0.9以下である。好ましい一実施形態では、式(1)に示される化合物を含む水性組成物の最大処理量(Vmax)が6.0g/cm以上であり、且つジクロフェナクラクタムの相対量が0.8以下である。より好ましい一実施形態では、式(1)に示される化合物を含む水性組成物の最大処理量(Vmax)が8.0g/cm以上であり、且つジクロフェナクラクタムの相対量が0.75以下である。なお、ジクロフェナクラクタムの相対量は、式(1)に示される化合物と濾過性向上剤とを共存させた試験組成物と、濾過性向上剤を含まない以外は前記と同一組成の対照組成物とを60℃の恒温槽にて1週間保存した後、試験組成物及び対照組成物中に蓄積したジクロフェナクラクタムの量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、対照組成物に蓄積したジクロフェナクラクタム量を1としたときの相対量として算出する。
【0092】
組成物に包含され得る緩衝剤は、当業者に周知のものが適宜利用できる。非限定的な例として、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液を緩衝剤として利用することが挙げられる。
一実施態様において、クエン酸緩衝液は、クエン酸として終濃度0.1mM〜500mM(例えば、1mM〜50mM)含まれるものが例示される。ここで、当該クエン酸緩衝液は、好ましくはpH4.5〜5.5に調整されたものである。より好ましいクエン酸緩衝液のpHの例として、pH4.8〜pH5.4、さらにその一例としてpH5.1を挙げることができる。
一実施態様において、酢酸緩衝液は、酢酸として終濃度0.1mM〜500mM(例えば、1mM〜50mM)含まれるものが例示される。ここで、当該酢酸緩衝液は、好ましくはpH4.5〜5.5に調整されたものである。より好ましい酢酸緩衝液のpHの例として、pH4.8〜pH5.4、さらにその一例としてpH5.1を挙げることができる。
一実施態様において、リン酸緩衝液は、リン酸として終濃度0.1mM〜500mM(例えば、1mM〜50mM)含まれるものが例示される。ここで、当該リン酸緩衝液は、好ましくはpH6.0〜7.0に調整されたものである。より好ましいリン酸緩衝液のpHの例として、pH6.3〜pH6.8、さらにその一例としてpH6.5を挙げることができる。
【0093】
一実施態様において、クエン酸緩衝液は、成分(A)としてC〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、アルキル硫酸エステル、非イオン性界面活性剤、C〜Cモノアルコール、γ‐ラクトン、クロロゲン酸、C〜Cジアルコール、及びポリビニルピロリドン、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる一又は二以上と組み合わせて使用される。
一実施態様において、酢酸緩衝液は、成分(A)としてヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、ポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、非イオン性界面活性剤、及びポリビニルピロリドン、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる一又は二以上と組み合わせて使用される。
一実施態様において、リン酸緩衝液は、成分(A)として、γ‐ラクトン、ポリアルキレングリコール、及びC〜Cトリアルコール、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる一又は二以上と組み合わせて使用される。
【0094】
一実施態様において、組成物は、以下のような手順で調製される。
(工程1)クエン酸水和物、クエン酸ニナトリウム水和物、及びPEG400の所定量を注射用水(WFI)に溶解させる。
(工程2)工程1の溶液に式(1)に示される化合物(導入率18モル%)の所定量を溶解させる。そして、溶解後の溶液を70℃に加温し、減圧加温脱気する。
(工程3)工程2の溶液を孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌する。
(工程4)工程3の溶液を70℃で加温脱気し、次いで10℃に冷却する。
(工程5)滅菌条件下でシリンジに所定量を充填する。
上記(工程1)〜(工程5)により、ヒアルロン酸誘導体、PEG400及びクエン酸緩衝液を含む滅菌済医薬組成物が調製される。ここで、各成分の濃度は、ヒアルロン酸誘導体;0.5〜5w/v%、PEG400;3〜30w/v%、及びリン酸緩衝液;3〜30mM(クエン酸として)が例示されるが、医薬組成物中の各種成分の濃度は前記の各範囲に限定されるものではない。言うまでもなく、成分(A)はPEG400に限定されるものでなく、また、緩衝液はクエン酸緩衝液に限定されるものでない。ヒアルロン酸誘導体の構成やメンブレンフィルターの孔径についても同様である。
水性組成物の最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上であることにより、フィルターでの濾過滅菌の適性が高くなるため、滅菌工程でのジクロフェナクラクタム生成を抑制できる。
【0095】
調製後の滅菌済医薬組成物は、4℃などの低温、又は常温にて保存することができる。ヒアルロン酸誘導体の分解抑制のためには、4℃のような低温保存の方が望ましい。例えば、医薬組成物中のヒアルロン酸誘導体量に対して、0.5w/w%のジクロフェナクラクタム蓄積量を閾値として設定し、蓄積量が当該閾値を超えた場合は医薬品としての品質不適と判断することにした場合、溶液組成が好適な条件であれば、常温(25℃)環境下でも数ヶ月から1年程度は組成物が品質適格のまま保存可能である。当該保存期間は、下記実施例の保存試験の結果から換算して、成分(A)を共存させることによって約1ヶ月〜3ヶ月超も延長可能となったものである(当該換算は、成分(A)の共存によってジクロフェナクラクタムの蓄積が10〜25%抑制されることを前提に行った。この抑制割合は、例えば後記実施例1((1−2)の結果等)から十分達成可能なレベルである。数ヶ月が品質適格の保存期限である医薬組成物において、その保存期限が1〜3ヶ月超延長できるとすれば、コスト低減につながることが明確であり、患者の負担を軽減し、かつ医療経済への貢献も達成されることとなる。また、調製後の滅菌済医薬組成物は、遮光条件にて保存されることがより好ましい。このような条件としては、滅菌済医薬組成物が包装されたまま冷蔵庫等で保存することが挙げられる。
【0096】
医薬組成物の投与頻度は、患者の症状等に応じて適宜調整される。薬効の観点から、例えば、1週間に1回〜52週間に1回の頻度が例示できる。2週間に1回〜26週間に1回、あるいは4週間に1回〜13週間に1回の頻度がより好ましい例として挙げられる。1回の投与で十分な寛解が得られた場合は、もちろん1回限りの投与でも良い。組成物の好ましい調製態様は注射剤用の溶液(例えば、水性組成物)である。例えば、膝関節等の患部に注射として投与される場合、患者の身体的負担や精神的負担を考慮すれば、投与間隔は長いことが望ましい。特に、注射剤として用いる場合、その溶液性状は、無色澄明であることが好ましい。
【0097】
一実施形態では、本発明にかかる医薬組成物が注射筒内に充填されている注射器が提供される。一実施形態では、本発明にかかる医薬組成物が注射筒内に充填されている注射器を含むキットも、提供可能である。当該注射器は、薬剤押出用プランジャー等を具備し、本発明にかかる組成物が押出可能なものである。一実施形態では、注射器内に充填された組成物は、滅菌状態で提供され得る。一実施形態では、注射筒内には、1回投与量の組成物が予め充填されている。また、当該キットは、式(1)に示される化合物を、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、生理食塩水または注射用水に溶解した溶液を注射筒に充填し、薬剤押出用プランジャーで摺動可能に密封してなる医療用注射剤を含むキットとすることが可能である。ここで溶液の浸透圧や粘性は必要に応じて適宜調製され得る。なお、薬剤押出用プランジャーは通常用いられているものを用いることが可能であるが、ゴム又は合成ゴム等の弾性体によって形成され、注射筒に摺動可能に密着状態で挿入される。また、キットには、プランジャーを押込操作し薬剤を押出する為のプランジャロッドや、取扱説明書または添付文書等が含まれていても良い。また、一実施形態では、本発明にかかる医薬組成物は、上記のように注射筒内に充填される代わりに、バイアル瓶に収容されて提供される。この場合、バイアル瓶は、滅菌された空の注射筒を含む注射器と共に提供されることもある。また、前記バイアル瓶と前記注射器を含むキットとしても提供可能である。
【0098】
当業者に明らかであるように、本発明の一側面の好ましい性質および特徴はそれぞれ独立していてもよく、また本発明の他の側面と組み合わせて適用することもできる。
一実施形態では、ジクロフェナクラクタムの生成及び/又は蓄積を抑制し、かつ、ジクロフェナクの生成及び/又は蓄積が抑制された医薬組成物及びその製造方法が提供される。
一実施形態では、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示す、ジクロフェナクラクタムの生成が抑制された水性組成物及びその製造方法が提供される。
一実施形態では、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示す、ジクロフェナクの生成が抑制された水性組成物及びその製造方法が提供される。
一実施形態では、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示す、ジクロフェナクラクタムの生成及びジクロフェナクの生成が抑制された水性組成物及びその製造方法が提供される。
【0099】
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物、及び非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、ジクロフェナクラクタムの生成及び/又は蓄積が抑制され、且つジクロフェナクの生成及び/又は蓄積が抑制された医薬組成物が提供される。
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物、及びポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、ジクロフェナクラクタムの生成が抑制され、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示し、濾過性が向上された医薬組成物が提供される。
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物、及びC〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、ジクロフェナクの生成が抑制され、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示し、濾過性が向上された医薬組成物が提供される。
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物、及びC〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、ジクロフェナクラクタムの生成及びジクロフェナクの生成が抑制され、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上を示し、濾過性が向上された医薬組成物が提供される。
【0100】
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物と、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる工程を含む、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成及びジクロフェナクの生成を抑制する方法が提供される。
【0101】
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物と、ポリアルキレングリコール、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる工程を含む、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制し、且つ式(1)に示される化合物の濾過性を向上させる方法が提供される。
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物と、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる工程を含む、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクの生成を抑制し、且つ式(1)に示される化合物の濾過性を向上させる方法が提供される。
具体的な一実施形態では、式(1)に示される化合物と、C〜Cモノアルコール、及びヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる工程を含む、式(1)で示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成及びジクロフェナクの生成を抑制し、さらに、式(1)に示される化合物の濾過性を向上させる方法が提供される。
【0102】
<実施形態>
本発明の好ましい実施形態を以下に例示する。
[1]式(1)に示される化合物及び成分(A)を含有する医薬組成物:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0103】
【化1】
【0104】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[2]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[1]に記載の医薬組成物。
[3]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[3]に記載の医薬組成物。
[5]前記式(1)に示される化合物を0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%の濃度で含有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]前記成分(A)の終濃度が、0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]さらに、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8]pHが4.5〜7.0である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]水性組成物である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]関節疾患処置用医薬組成物である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、前記[10]に記載の医薬組成物。
【0105】
[12]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物が注射筒内に充填されている注射器を含む、キット。
[13]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物を含むバイアル、及び注射器を含む、キット。
【0106】
[14]下記式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物を製造する方法であって、下記式(1)に示される化合物と成分(A)とを共存させる工程を含む、方法:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0107】
【化1】
【0108】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の連結はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[15]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[14]に記載の方法。
[16]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[14]又は[15]に記載の方法。
[17]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[16]に記載の方法。
[18]前記式(1)に示される化合物が、終濃度0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%の濃度で添加される、前記[14]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]前記成分(A)が、終濃度0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満で添加される、前記[14]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]式(1)に示される化合物及び/又は成分(A)が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含む、前記[14]〜[19]のいずれかに記載の方法。
[21]医薬組成物のpHが4.5〜7.0である、前記[14]〜[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記医薬組成物が水性組成物である、前記[14]〜[21]のいずれかに記載の方法。
【0109】
[23]下記式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法であって、
下記式(1)に示される化合物に対し、成分(A)を共存させる工程を含む、方法:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0110】
【化1】
【0111】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[24]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[23]に記載の方法。
[25]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[23]又は[24]に記載の方法。
[26]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[25]に記載の方法。
[27]前記成分(A)が、終濃度0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満で添加される、前記[23]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]前記式(1)に示される化合物、及び/又は、前記成分(A)が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含むものである、前記[23]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]pHが4.5〜7.0の範囲で行われる、前記[23]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30]前記式(1)に示される化合物と前記成分(A)とを水性溶媒中で共存させる、前記[23]〜[29]のいずれかに記載の方法。
【0112】
[31]下記式(1)に示される化合物を含む医薬組成物においてジクロフェナクラクタムの蓄積を抑制する方法であって、式(1)に示される化合物と成分(A)とを共存させる工程を含む、方法:
成分(A): 非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0113】
【化1】
【0114】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[32]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[31]に記載の方法。
[33]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[31]又は[32]に記載の方法。
[34]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[33]に記載の方法。
[35]前記医薬組成物が、前記式(1)に示される化合物を0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%の濃度で含有するものである、前記[31]〜[34]のいずれかに記載の方法。
[36]前記成分(A)が、終濃度0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満で添加される、前記[31]〜[35]のいずれかに記載の方法。
[37]前記式(1)に示される化合物、及び/又は、前記成分(A)が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液からなる群から選ばれる緩衝液を含むものである、前記[31]〜[36]のいずれかに記載の方法。
[38]pHが4.5〜7.0の範囲で行われる、前記[31]〜[37]のいずれかに記載の方法。
[39]前記医薬組成物が水性組成物である、前記[31]〜[38]のいずれかに記載の方法。
[40]前記医薬組成物が関節疾患処置用医薬組成物である、前記[31]〜[39]のいずれかに記載の方法。
[41]関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、前記[40]に記載の医薬組成物。
【0115】
[42]成分(A)の、下記式(1)に示される化合物を含有する医薬組成物の製造における使用であって、前記成分(A)は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記製造は前記成分(A)と前記式(1)に示される化合物とを共存させる工程を含む、使用:
【0116】
【化1】
【0117】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[43]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[42]に記載の使用。
[44]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[42]又は[43]に記載の使用。
[45]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[44]に記載の使用。
[46]前記医薬組成物が、前記式(1)に示される化合物を0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%の濃度で含有するものである、前記[42]〜[45]のいずれかに記載の使用。
[47]前記成分(A)が、0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満の終濃度で添加される、前記[42]〜[46]のいずれかに記載の使用。
[48]前記医薬組成物が関節疾患処置用医薬組成物である、前記[42]〜[47]のいずれかに記載の使用。
[49]関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、前記[48]に記載の使用。
【0118】
[50]ヒトの関節疾患処置における使用のための成分(A)であって、前記成分(A)は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記処置は、前記成分(A)と下記式(1)に示される化合物が共に関節疾患処置用医薬組成物の構成成分として使用されるものである、成分(A):
【0119】
【化1】
【0120】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[51]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[50]に記載の成分(A)。
[52]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[50]又は[51]に記載の成分(A)。
[53]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[52]に記載の成分(A)。
[54]前記式(1)に示される化合物の前記医薬組成物における終濃度が、0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%である、前記[50]〜[53]のいずれかに記載の成分(A)。
[55]前記成分(A)の前記医薬組成物における終濃度が、0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満である前記[50]〜[54]のいずれかに記載の成分(A)。
[56]関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、前記[50]〜[55]のいずれかに記載の成分(A)。
【0121】
[57]ヒトの関節疾患処置方法であって、医薬組成物を関節疾患患者の関節に投与する工程を含み、前記医薬組成物は、有効量の下記式(1)に示される化合物、及び、成分(A)を含有するものであり、前記成分(A)は非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、方法:
【0122】
【化1】
【0123】
式(1)中、aは0.01以上0.7以下であり、a+bは1であり、nは25以上25,000以下の整数であり、各構成二糖単位の配列はランダム又はブロック状であってよく、Rは各構成二糖単位においてそれぞれ独立してカルボキシ基又はカルボン酸塩の基である。
[58]前記成分(A)が、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれるものである、前記[57]に記載の方法。
[59]ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、前記[57]又は[58]に記載の方法。
[60]ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上6,000以下である、前記[59]に記載の方法。
[61]前記式(1)に示される化合物の前記医薬組成物における濃度が、0.01w/v%以上80w/v%以下、0.1w/v%以上10w/v%以下、0.5w/v%以上5w/v%以下、または1w/v%である、前記[57]〜[60]のいずれかに記載の方法。
[62]前記成分(A)の前記医薬組成物における濃度が、0.01w/v%以上60w/v%以下、0.01w/v%以上30wt%以下、1w/v%以上15w/v%以下、または2w/v%以上10w/v%未満である前記[57]〜[61]のいずれかに記載の方法。
[63]関節疾患が変形性関節症又はリウマチ性関節症である、前記[57]〜[62]のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0124】
以下、実施例を用いて本発明の好ましい実施形態についてより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0125】
<合成例>
国際公開第2005/066214号の実施例に記載の方法に準じて、ヒアルロン酸誘導体(式(1)に示される化合物)を合成した(a:0.18、n:2千、ヒアルロン酸の質量平均分子量:80万)。
より具体的には、以下の手法により合成した。
2−ブロモエチルアミン臭化水素酸塩2.155g(10.5mmol)をジクロロメタン20mLに溶解し、氷冷下でトリエチルアミン1.463mL(10.5mmol)を加え、さらにジ−tert−ブチル−ジカルボナート(BocO)2.299g(10.5mmol)のジクロロメタン溶液5mLを加えて撹拌した。室温で90分間撹拌した後、酢酸エチルを加え、5重量%クエン酸水溶液、水、飽和食塩水で順次分液洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去し、Boc−アミノエチルブロマイドを得た。
上記で得られたBoc−アミノエチルブロマイド2.287g(10.2mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液5mLを氷冷し、ジクロフェナクナトリウム3.255g(10.2mmol)のDMF溶液6mLを加え、室温で一晩撹拌した。60℃で11時間撹拌し、室温で一晩撹拌した。酢酸エチルを加え、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次分液洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、酢酸エチルを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1(v/v)、0.5体積%トリエチルアミン)で精製し、Boc−アミノエタノール−ジクロフェナクを得た。
上記で得られたBoc−アミノエタノール−ジクロフェナク2.108g(4.80mmol)をジクロロメタン5mLに溶解し、氷冷下で4M塩酸/酢酸エチル20mLを加えて2.5時間撹拌した。ジエチルエーテル、ヘキサンを加えて沈殿させ、沈殿を減圧乾燥した。これにより、アミノエタノール−ジクロフェナク塩酸塩を得た。構造はH−NMRにて同定した:
H−NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=3.18(2H,t,NHCHCHO−), 3.94(2H,s,Ph−CH−CO), 4.37(2H,t,NHCHCHO−), 6.47−7.31(8H,m,Aromatic H,NH)。
質量平均分子量80万のヒアルロン酸500mg(1.25mmol/二糖単位)を水56.3mL/ジオキサン56.3mLに溶解させた後、ヒドロキシコハク酸イミド(1mmol)/水0.5mL、水溶性カルボジイミド塩酸塩(WSCI・HCl)(0.5mmol)/水0.5mL、上記で得られたアミノエタノール−ジクロフェナク塩酸塩(0.5mmol)/(水:ジオキサン=1:1(v/v)、5mL)を順次加え、一昼夜撹拌した。反応液に5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液7.5mLを加え、約4時間撹拌した。反応液に50%(v/v)酢酸水溶液215μLを加えて中和後、塩化ナトリウム2.5gを加えて撹拌した。エタノール400mLを加えて沈殿させ、沈殿物を85%(v/v)エタノール水溶液で2回、エタノールで2回、ジエチルエーテルで2回洗浄し、室温にて一晩減圧乾燥し、ヒアルロン酸誘導体(ナトリウム塩)(式(1)に示される化合物)を得た。分光光度計により測定されたジクロフェナクの導入率は18モル%であった。
さらに、前記合成例に沿って、導入率18モル%のヒアルロン酸誘導体(ナトリウム塩)の乾燥物を調製した。
【0126】
<試験用サンプルの調製>
・リン酸緩衝液の調製
75mMリン酸濃度のリン酸二水素ナトリウム水溶液と75mMリン酸濃度のリン酸水素二ナトリウム水溶液とを17:11の比率(体積比)で混合し、リン酸緩衝液を調製した。調製後のリン酸緩衝液のpHは6.5であった。
・クエン酸緩衝液の調製
15mMクエン酸濃度のクエン酸水溶液と15mMクエン酸濃度のクエン酸三ナトリウム水溶液とを27:37の比率(体積比)で混合し、クエン酸緩衝液を調製した。調製後のクエン酸緩衝液のpHは5.1であった。
・酢酸緩衝液の調製
15mM酢酸濃度の酢酸水溶液と15mM酢酸濃度の酢酸ナトリウム水溶液とを1:3の比率(体積比)で混合し、酢酸緩衝液を調製した。調製後の酢酸緩衝液のpHは5.1であった。また、同様の手法により45mM酢酸濃度でpH5.1の酢酸緩衝液を調製した。
・1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液の調製
上記合成例のヒアルロン酸誘導体1.5gと上記で調製した各種緩衝液98.5gとを混合し、70℃湯浴にて2時間攪拌して1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液を調製した。
・各種付加成分水溶液の調製
ヒアルロン酸誘導体溶液に添加するための付加成分水溶液は、それぞれ終濃度の3倍濃度(重量%)となるように、各種付加成分とWFIを用いて調製した。
・試験用サンプルの調製
上記にて調製した1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液2.0gと前記付加成分水溶液1.0gとを混合し、試験用サンプル(ヒアルロン酸誘導体の終濃度:1.0重量%)を調製した。また、付加成分水溶液1.0gに代えてWFIを1.0g混合することで、前記付加成分を含まない対照溶液を調製した。
【0127】
実施例1 ジクロフェナク成分の蓄積に対する付加成分の影響
各種緩衝液(50mMリン酸緩衝液、10mMクエン酸緩衝液、10mM酢酸緩衝液、又は30mM酢酸緩衝液)を含む、上記で調製した試験用サンプルを保存試験に供した。
試験用サンプルを60℃の恒温槽にて1週間保存した後、ジクロフェナク及びジクロフェナクラクタムの蓄積量をHPLCによりそれぞれ測定した。
ジクロフェナク量及びジクロフェナクラクタム量は、60℃で1週間保存した対照溶液(1重量%ヒアルロン酸誘導体溶液)中に存在したジクロフェナク量及びジクロフェナクラクタム量をそれぞれ1としたときの相対値として算出した。
保存試験のより具体的な手順は次のとおりである。
【0128】
<保存試験>
調製した各種試験用サンプルをスクリューバイアル(アズワン社、Cat No.:3−1599−01)に充填し、60℃にて1週間静置した。静置後の溶液中に存在したジクロフェナク量、ジクロフェナクラクタム量をHPLCにて定量分析した。
HPLC条件は以下のとおり。
カラム:TSGgel ODS−100Z(4.6mmx150mm)
流速:1mL/min
温度:35℃
グラジエント:アセトニトリル(B)/20mMリン酸ナトリウム(A)
B conc.(mL/min)
0.40(0 min)−0.80(30 min)
0.80(33 min)−0.40(35 min)
ジクロフェナク及びジクロフェナクラクタムの溶出時間は標準物質を用いて予め測定し決定した。
なお、60℃での1週間保存は、25℃での1年間保存に相当する。
【0129】
(1−1)50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いた場合の保存試験
付加成分として、L−アルギニン塩酸塩(試験用サンプル中の終濃度:3重量%)、L−メチオニン、L−リジン塩酸塩(3重量%)、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、エデト酸ナトリウム(3重量%)、グリシン、ジグリセロール、チオグリコール酸ナトリウム(3重量%)、テトラキス(4−アルボキシフェニル)ポルフィリン(1.5重量%)、ニコチン酸アミド、ブチルヒドロキシアニソール、フロリジン水和物(1.5重量%)、ベンジルアルコール、ホウ酸、ポリビニルアルコール(1.5重量%)、D−エリスロノラクトン、D−グルカール、PEG200、PEG4000、エリソルビン酸ナトリウム(3重量%)、及びグリセリンを用いた。濃度の記載のない付加成分は、いずれも終濃度5重量%で使用した。
<結果>
付加成分として、L−アルギニン塩酸塩、L−メチオニン、L−リジン塩酸塩、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、エデト酸ナトリウム、グリシン、ジグリセロール、チオグリコール酸ナトリウム、テトラキス(4−アルボキシフェニル)ポルフィリン、ニコチン酸アミド、ブチルヒドロキシアニソール、フロリジン水和物、ベンジルアルコール、ホウ酸、及びポリビニルアルコールを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を超えた。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの生成量は増大しており、ジクロフェナクラクタムの生成促進が認められた。これらの付加成分を用いた場合、ブチルヒドロキシアニソールの例を除き、ジクロフェナク量(相対値)はいずれも1を超えていた。ブチルヒドロキシアニソールの場合のジクロフェナク量(相対値)は0.99であり、ジクロフェナクの生成に与える付加成分としての効果はほぼ認められなかった。
一方、付加成分としてD−エリスロノラクトン、D−グルカール、PEG200、PEG4000、エリソルビン酸ナトリウム、及びグリセリンを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を下回った。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの生成量は減少しており、ジクロフェナクラクタムの生成抑制が認められた(表1)。
COX−2阻害剤として実用上の活性を有しないジクロフェナクラクタムの生成を抑制することから、D−エリスロノラクトン、D−グルカール、PEG200、PEG4000、エリソルビン酸ナトリウム、及びグリセリンは、ジクロフェナクラクタムの蓄積を抑制できることが明らかとなった。さらに、これらのうち、D−エリスロノラクトン及びエリソルビン酸ナトリウムについては、ジクロフェナク量(相対値)も1を下回っており、ジクロフェナクの蓄積も抑制することが分かった。
【0130】
【表1】
【0131】
*Lac量;ジクロフェナクラクタム量の相対値
**Dic量;ジクロフェナク量の相対値
【0132】
(1−2)10mMクエン酸緩衝液(pH5.1)を用いた場合の保存試験
付加成分として、クレアチニン(1重量%)、デオキシコール酸ナトリウム(5重量%)、1,2,3−ブタントリオール(5重量%)、PEG400(6.3重量%、又は16.5重量%)、PEG600(10重量%)、PEG4000(10重量%)、PEG6000(10重量%)、SDS(5重量%)、TritonX−100(5重量%)、エタノール(26重量%)、オクチルグルコシド(5重量%)、グルクロノラクトン(0.1重量%)、クロロゲン酸(0.1重量%)、プロピレングリコール(10重量%)、ポリソルベート20(5重量%)、及びポリビニルピロリドン(5重量%)を用いた。
同様に付加成分として、PEG3350(10.6重量%)及びポリソルベート80(3重量%)、並びに、PEG3350(6.0重量%)及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(10重量%)の2成分系、又は、PEG3350(5.5重量%)、ポリソルベート80(1重量%)及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(10重量%)の3成分系の付加成分を用いた。
<結果>
付加成分として、クレアチニン、及びデオキシコール酸ナトリウムを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を超えた。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの生成量は増大しており、ジクロフェナクラクタムの生成促進が認められた。これらの付加成分を用いた場合、いずれもジクロフェナク量(相対値)も1を超えていた。
一方、付加成分として1,2,3−ブタントリオール、PEG400、PEG600、PEG4000、PEG6000、SDS、TritonX−100、エタノール、オクチルグルコシド、グルクロノラクトン、クロロゲン酸、プロピレングリコール、ポリソルベート20、及びポリビニルピロリドンを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を下回った。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの生成量は減少しており、ジクロフェナクラクタムの生成抑制が認められた(表2)。表2は、保管後の溶液性状も併せて示している。溶液性状は、無色澄明である場合が多く、着色のある場合でも僅かに黄色味がかる程度であり、澄明でない場合でも僅かに濁りがある程度であった。また、上記2成分系又は3成分系を使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)、ジクロフェナク量(相対値)のそれぞれが1を下回った。また、これらの2成分系、3成分系についての溶液性状はいずれも無色澄明であった(表3)。
COX−2阻害剤として実用上の活性を有しないジクロフェナクラクタムの生成を抑制することから、1,2,3−ブタントリオール、PEG400、PEG600、PEG4000、PEG6000、SDS、TritonX−100、エタノール、オクチルグルコシド、グルクロノラクトン、クロロゲン酸、プロピレングリコール、ポリソルベート20、及びポリビニルピロリドンは、ジクロフェナクラクタム蓄積抑制剤として使用できることが明らかとなった。しかも、これらを使用した場合、ジクロフェナク量(相対値)も1を下回っており、ジクロフェナクの蓄積も抑制することが分かった。
【0133】
【表2】
【0134】
*Lac量;ジクロフェナクラクタム量の相対値
**Dic量;ジクロフェナク量の相対値
【0135】
【表3】
【0136】
*Lac量;ジクロフェナクラクタム量の相対値
**Dic量;ジクロフェナク量の相対値
【0137】
(1−3)30mM酢酸緩衝液(pH5.1)を用いた場合の保存試験
付加成分として、没食子酸プロピル(1.5重量%)、無水乳酸(1.5重量%)、ヒドロキシプロピルセルロース(1.5重量%)、でんぷん(1.5重量%)、デキストラン(5重量%)、スクロース(5重量%)、サッカリン酸ナトリウム二水和物(5重量%)、グリシン(5重量%)、アスパラギン酸ナトリウム(1.5重量%)、L−ロイシン(1.5重量%)、L−フェニルアラニン(5重量%)、L−セリン(5重量%)、D−マンニトール(1.5重量%)、D−ソルビトール(5重量%)、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(3重量%、5重量%、10重量%、又は15重量%)、及びエタノール(5重量%、10重量%、20重量%、又は26.3重量%)を用いた。
<結果>
付加成分として、没食子酸プロピル、無水乳酸、ヒドロキシプロピルセルロース、でんぷん、デキストラン、スクロース、サッカリン酸ナトリウム二水和物、グリシン、アスパラギン酸ナトリウム、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、L−セリン、D−マンニトール、及びD−ソルビトールを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を超えた。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの生成量は増大しており、ジクロフェナクラクタムの生成促進が認められた。これらの付加成分を用いた場合、いずれもジクロフェナク量(相対値)も1を超えていた。
一方、付加成分としてヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、及びエタノールを使用した場合、ジクロフェナクラクタム量(相対値)はそれぞれ1を下回った。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの蓄積量は減少しており、ジクロフェナクラクタムの蓄積抑制が認められた(表4)。
COX−2阻害剤として実用上の活性を有しないジクロフェナクラクタムの生成を抑制することから、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及びエタノールは、ジクロフェナクラクタムの蓄積抑制剤として使用できることが明らかとなった。しかも、これらを使用した場合、ジクロフェナク量(相対値)も1を下回っており、ジクロフェナクの蓄積も抑制することが分かった。
【0138】
【表4】
【0139】
*Lac量;ジクロフェナクラクタム量の相対値
**Dic量;ジクロフェナク量の相対値
【0140】
(1−4)10mM酢酸緩衝液(pH5.1)を用いた場合の保存試験
付加成分として、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(5重量%)、PEG400(7.5重量%)、PEG4000(5重量%、又は15重量%)、エタノール(10重量%)、オクチルグルコシド(5重量%)、ポリソルベート80(5重量%、又は10重量%)、及びポリビニルピロリドン(5重量%)を用いた。
<結果>
付加成分として、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、PEG400、PEG4000、エタノール、オクチルグルコシド、ポリソルベート80、及びポリビニルピロリドンを使用した場合、いずれもジクロフェナクラクタム量(相対値)は1を下回った。すなわち、付加成分を用いない対照と比してジクロフェナクラクタムの蓄積量は減少しており、ジクロフェナクラクタムの蓄積抑制が認められた(表5)。
COX−2阻害剤として実用上の活性を有しないジクロフェナクラクタムの生成を抑制することから、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、PEG400、PEG4000、エタノール、オクチルグルコシド、ポリソルベート80、及びポリビニルピロリドンは、ジクロフェナクラクタムの蓄積抑制剤として使用できることが明らかとなった。しかも、これらを使用した場合、ジクロフェナク量(相対値)も1を下回っており、ジクロフェナクの蓄積も抑制することが分かった。
【0141】
【表5】
【0142】
* Lac量;ジクロフェナクラクタム量の相対値
**Dic量;ジクロフェナク量の相対値
【0143】
<結論>
本実施例を通じて、ポリソルベート20、ポリソルベート80、TritonX−100、オクチルグルコシド、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、エタノール、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、D−グルカール、PEG200、PEG400、PEG600、PEG4000、PEG6000、D−エリスロノラクトン、エリソルビン酸ナトリウム、グルクロノラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸、SDS、及びプロピレングリコールには、ジクロフェナクラクタムの蓄積抑制効果が確認された。
よって、ポリソルベート20、ポリソルベート80、TritonX−100、オクチルグルコシド等の非イオン性界面活性剤;ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のヒドロキシアルキル化シクロデキストリン;エタノール等のC〜Cモノアルコール;プロピレングリコール等のC〜Cジアルコール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、D−グルカール等のC〜Cトリアルコール、;PEG200、PEG400、PEG600、PEG4000、PEG6000等のポリアルキレングリコール;D−エリスロノラクトン、エリソルビン酸ナトリウム、グルクロノラクトン等のγ-ラクトン;ポリビニルピロリドン;クロロゲン酸等のクロロゲン酸類及びSDS等のアルキル硫酸エステルは、ヒアルロン酸誘導体からのジクロフェナクラクタムの生成抑制剤として、また、ヒアルロン酸誘導体を含む医薬組成物におけるジクロフェナクラクタムの蓄積抑制剤として使用することができる。また、これらの薬学的に許容される塩についても、同様に使用することができる。
【0144】
実施例2 水性組成物の濾過性の評価
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、エタノール、PEG400、及びPEG4000について、ヒアルロン酸誘導体を含有する水性組成物の濾過を検討した。
<試験サンプルの調製>
・1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液の調製
上記で調製したヒアルロン酸誘導体と上記で調製した15mM酢酸緩衝液(pH5.1)とを混合し、攪拌後、静置し脱泡させることで1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液を調製した。
・試験用サンプルの調製
上記で調製した1.5重量%ヒアルロン酸誘導体溶液150.0gと付加成分水溶液75.0gとを混合し、試験用サンプル(ヒアルロン酸誘導体の終濃度:1.0重量%)を調製した。
また、付加成分水溶液に代えてWFIを75.0g混合させた対照溶液も調製した。
<濾過性の試験方法>
孔径0.22μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(47mm径、有効濾過面積:13.8cm、メルク社製)をセットしたステンレス製加圧フィルターホルダーに、上記で調製した試験用サンプルを200mL加え、70℃にて0.6MPaで加圧した。フィルター通過液量を30秒ごとに秤量し、経過時間と総濾過量との関係から最大処理量(Vmax)を算出した。
【0145】
<結果>
付加成分を用いた場合は、いずれも、最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上であることが確認された(表6)。とりわけ、PEG400は最大処理量(Vmax)が高値であった。
【0146】
【表6】
【0147】
<結論>
フィルター濾過時において、流量が初期の1/10になる前に濾過を中止するとフィルターが有効に使用できないし、これ以上使用すると濾過時間が長く必要になるため作業効率上好ましくない。Vmax値に0.68を乗じた値(流量が初期の1/10になった時点でのフィルター処理能力の低下率を68%とする。)として算出されるV90値は、流量が初期流量の1/10になった時点までの処理量にあたる。濾過可能量を評価する上で、V90値は経験的に好ましい値であることが知られている(要すれば、小林公彦著、「Vmax試験 フィルターの選定および最適化方法」、バイオプロセス・テクニカルシート 基礎技術No.2、日本ミリポア、1997年8月参照)。上記のような最大処理量(Vmax)が1.0g/cm以上である水性組成物はV90値も高くなるため、フィルター濾過性に優れるといえる。つまり、このような水性組成物は、濾過時の目詰まりが起こりにくく、したがって濾過フィルターの交換や洗浄の頻度が少なくて済むなどの理由により、工業的規模での大量生産に適するものである。このため、医薬組成物として提供する場合であっても、加熱滅菌等を必要としない。したがって、ジクロフェナク成分の蓄積、とりわけジクロフェナクラクタムの蓄積量が抑制された組成物として提供し得る。
【0148】
実施例3 医薬組成物の調製
成分(A)は、ヒアルロン酸誘導体と共に医薬組成物の調製に使用される。一例として、ヒアルロン酸誘導体、PEG400、及びクエン酸緩衝液を含む注射用の医薬組成物の調製を示す。
(工程1)クエン酸水和物、クエン酸ニナトリウム水和物、及びPEG400の所定量をWFIに溶解させる。
(工程2)工程1の溶液にヒアルロン酸誘導体(導入率18モル%)の所定量を溶解させる。そして、溶解後の溶液を70℃に加温し、減圧加温脱気する。
(工程3)工程2の溶液を孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌する。
(工程4)工程3の溶液を70℃で加温脱気し、次いで10℃に冷却する。
(工程5)滅菌条件下でシリンジに所定量を充填する。
上記(工程1)〜(工程5)により、ヒアルロン酸誘導体、PEG400及びクエン酸緩衝液を含む滅菌済医薬組成物が調製される。ここで、各成分の濃度は、ヒアルロン酸誘導体;0.5〜5w/v%、PEG400;3〜30w/v%、及びクエン酸緩衝液;3〜30mM(クエン酸として)が例示されるが、医薬組成物中の各種成分の濃度は前記の各範囲に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、例えば、ヒト関節疾患患者(特に、慢性的な関節疾患患者)の関節疾患に対して有意な改善効果をもたらす組成物であって、生理的に不活性な成分であるジクロフェナクラクタムの蓄積が抑制された安定性に優れた組成物を提供するものであることから、医薬産業などにおける産業上の利用可能性を有している。
【0150】
本発明は具体的実施例と様々な実施形態とに関連して記載されているが、本明細書に記載される実施形態の多くの改変や応用が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく可能であることは、当業者によって容易に理解される。
本出願は、2018年11月16日付で日本国特許庁に出願された特願2018−215867号に基づく優先権を主張し、その内容は参照によって全体として本出願に組み込まれる。
【要約】
本発明は、明細書中の式(1)で示されるヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物及びその製造方法、並びに、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成を抑制する方法の提供を目的とする。
明細書中の式(1)の化合物と、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、C〜Cモノアルコール、C〜Cジアルコール、C〜Cトリアルコール、ポリアルキレングリコール、γ‐ラクトン、ポリビニルピロリドン、クロロゲン酸類及びアルキル硫酸エステル、並びにこれらの塩、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である成分(A)とを共存させることにより、式(1)に示される化合物からのジクロフェナクラクタムの生成が抑制する方法が提供され、また、式(1)に示される化合物及び成分(A)を含有する医薬組成物の製造方法及びその製造物である医薬組成物が提供される。