(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。
【0023】
まず、
図1を用いて、バルブ装置100が設けられるエンジン1の構成の概要及びエンジン1におけるオイルの流れについて説明する。
【0024】
エンジン1は、4つの気筒を具備する直列4気筒型である。エンジン1は、オイルポンプ11、オイルフィルタ12、メインギャラリ13、メインメタル/コンロッドメタル14、オイル通路15、ピストンジェット16、チェーンジェット17、チェーンテンショナー18、可変バルブタイミング機構(VVT)19、ラッシュアジャスタ(HLA)20、カムジャーナル21、カムシャワー22及びバルブ装置100を具備する。
【0025】
オイルポンプ11は、オイルパン(不図示)に貯溜されたオイルを吸入して当該オイルを下流へ圧送するものである。オイルポンプ11は前記エンジン1によって駆動されると共に、当該エンジン1の回転数に応じた回転数で駆動される。オイルポンプ11の下流には、オイルから異物等を取り除くためのオイルフィルタ12が配置される。
【0026】
オイルフィルタ12を流通したオイルは、メインギャラリ13及びクランク軸(不図示)を支持するメインメタルとコンロッド(不図示)を支持するコンロッドメタル(メインメタル/コンロッドメタル14)へと送られる。
【0027】
また、オイルフィルタ12を流通したオイルは、ピストン(不図示)にオイルを噴射するピストンジェット16にオイルを供給するためのオイル通路15を流通してピストンジェット16へと送られる。
【0028】
また、オイルフィルタ12を流通したオイルは、チェーンジェット17、チェーンテンショナー18、可変バルブタイミング機構19、ラッシュアジャスタ20、カムジャーナル21及びカムシャワー22へと送られる。
【0029】
次に、
図2及び
図3を用いて、バルブ装置100の構成について説明する。なお、
図2及び
図3は、ソレノイド150に電圧が印加されていない状態を示している。
【0030】
バルブ装置100は、ピストンジェット16へのオイルの供給を制御するためのものである。バルブ装置100は、オイル通路15の中途部に配置される(
図1参照)。
図2に示すように、バルブ装置100は、ハウジング110、弁座120、ポペットバルブ130、第一スプリング140、ソレノイド150及び第二スプリング160を具備する。
【0031】
ハウジング110は、バルブ装置100の外郭を構成するものである。ハウジング110は、軸線方向を前後方向に向けた略円筒状に形成される。ハウジング110は、後部の外径が前部の外径よりも大きくなるように形成される。ハウジング110は、流入孔111、流出孔112、メイン通路113、挿通部114及び収納部115を具備する。
【0032】
流入孔111は、オイルポンプ11から供給されるオイルをハウジング110の内部(後述するメイン通路113)へ流入させる貫通孔である。流入孔111は、ハウジング110の外周面に開口するように形成される。流入孔111は、ハウジング110の前部(外径が小さい部分)の前後中途部に形成される。流入孔111は、周方向に略同一の間隔を空けて複数形成される。流入孔111は、オイルの流通方向における上流側(ハウジング110の外周面側)でオイルポンプ11(
図1参照)及びオイルフィルタ12(
図1参照)と接続される。
【0033】
流出孔112は、ハウジング110の内部(後述するメイン通路113)に供給されたオイルを、オイルの流通方向における下流側へ流出させるものである。流出孔112は、ハウジング110の前端面に開口するように形成される。流出孔112は、オイルの流通方向における下流側(ハウジング110の前端面側)でピストンジェット16(
図1参照)と接続される。
【0034】
メイン通路113は、流入孔111から流入したオイルが流通する通路である。メイン通路113は、ハウジング110の内部に、前後方向に延びるように形成される。メイン通路113の前端部は、流出孔112の後端部と接続される。メイン通路113の後端部は、ハウジング110の前後略中央(中央よりやや前方)まで延びるように形成され、前後中途部において流入孔111と接続される。メイン通路113は、前部(後述する弁座120が設けられる部分)の内径がその他の部分の内径よりも大きくなるように形成される。
【0035】
挿通部114は、後述するポペットバルブ130を挿通するための孔である。挿通部114は、ハウジング110の内部に、前後方向に延びるように形成される。挿通部114の内径は、メイン通路113の内径よりも小さくなるように形成される。挿通部114の前端部は、メイン通路113の後端部と接続される。挿通部114の後端部は、ハウジング110の前後略中央(中央よりやや後方)まで延びるように形成される。
【0036】
収納部115は、後述するソレノイド150を収納するためのものである。収納部115は、ハウジング110の後部(外径が大きい部分)の内部に、前後方向に延びるように形成される。収納部115の内径は、挿通部114の内径よりも大きくなるように形成される。収納部115の前端部は、挿通部114の後端部と接続される。収納部115の後端部は、ハウジング110の後端面に開口するように形成される。
【0037】
このように構成されるハウジング110には、オイルポンプ11(
図1参照)によって吐出されるオイルが流入孔111から流入する。当該流入したオイルは、メイン通路113を流通した後で流出孔112を流通し、ピストンジェット16(
図1参照)に供給される。このように、流入孔111、流出孔112及びメイン通路113は、オイル通路15の一部として形成される。
【0038】
弁座120は、後述するポペットバルブ130と当接する部材である。弁座120は、略円環状に形成される。弁座120は、軸線方向を前後方向に向けて、メイン通路113の前部(内径が大きい部分)に設けられる。弁座120は、外径がメイン通路113の前部の内径と略同一の大きさとなるように形成され、当該メイン通路113の前部に圧入される。これにより、弁座120は、オイル通路15を、上流側(流入孔111及びメイン通路113を含む部分)と下流側(流出孔112を含む部分)とに区画するように設けられる。弁座120は、第一連通孔121を具備する。
【0039】
第一連通孔121は、ハウジング110のメイン通路113と流出孔112とを連通するための孔である。第一連通孔121は、弁座120を前後方向に貫通するように形成される。第一連通孔121の前部は、前方に向かうにつれて内径が徐々に大きくなるようなテーパ状に形成される。
【0040】
ポペットバルブ130は、オイル通路15(第一連通孔121)を開閉するためのものである。ポペットバルブ130は、略円柱状に形成される。ポペットバルブ130は、軸線を前後方向に向けて、弁座120の後方に設けられる。ポペットバルブ130の前部は、メイン通路113に位置するように設けられる。ポペットバルブ130の後部は、挿通部114に挿通され、当該挿通部114と摺動するように設けられる。ポペットバルブ130には、フランジ部131、サブ通路132及び第二連通孔133が形成される。
【0041】
フランジ部131は、ポペットバルブ130の外周面から径方向外側に広がるように形成された略円板状の部分である。フランジ部131は、ポペットバルブ130の前後中途部に、メイン通路113に位置するように形成される。
【0042】
サブ通路132は、ポペットバルブ130の内部に形成されるオイルの通路である。サブ通路132は、ポペットバルブ130の軸線方向に延びて、ポペットバルブ130を貫通するように形成される。サブ通路132は、小径部132a及び大径部132bを具備する。
【0043】
図3に示す小径部132aは、サブ通路132の前部を構成する部分である。小径部132aの前端部は、ポペットバルブ130の前端面に開口するように形成される。小径部132aの後端部は、ポペットバルブ130の前後中途部(フランジ部131よりも前方の位置)まで延びるように形成される。
【0044】
図3に示す大径部132bは、サブ通路132の後部を構成する部分である。大径部132bの内径は、小径部132aの内径よりも大きくなるように形成される。大径部132bの前端部は、小径部132aの後端部と接続される。大径部132bの後端部は、ポペットバルブ130の後端面に開口するように形成される。
【0045】
第二連通孔133は、メイン通路113とサブ通路132とを連通するものである。第二連通孔133は、ポペットバルブ130の外周面に開口すると共に、ポペットバルブ130の径方向内側に延びてサブ通路132の大径部132bの内周面に開口するように形成される。第二連通孔133は、フランジ部131のすぐ後方に(サブ通路132の大径部132bの前端面よりも後方に)形成される。第二連通孔133は、周方向に略同一の間隔を空けて複数形成される。
【0046】
このようなポペットバルブ130は、後述するソレノイド150によって駆動されてオイル通路15を直接的に開閉する(後述するプランジャ155と共に移動することで弁座120に対して近接離間する)直動式のバルブとして構成される。
【0047】
第一スプリング140は、金属によって形成された線状の部材(線材)を螺旋状(コイル状)に成形した圧縮ばねである。第一スプリング140は、弁座120とポペットバルブ130のフランジ部131との間に、伸縮方向を前後方向に向けて圧縮された状態で配置される。これにより、第一スプリング140は、弁座120に対してポペットバルブ130を後方、すなわち弁座120に対して離間する方向に付勢する。
【0048】
ソレノイド150は、ポペットバルブ130を駆動させるためのものである。ソレノイド150は、ハウジング110の収納部115に設けられる。ソレノイド150は、外側ケース151、内側ケース152、ボビン153、コイル154及びプランジャ155を具備する。
【0049】
外側ケース151は、ソレノイド150の外郭を構成するものである。外側ケース151は、略筒状に形成される。外側ケース151は、軸線方向を前後方向に向けて、収納部115に収容される。
【0050】
内側ケース152は、後述するプランジャ155を収容するものである。内側ケース152は、有底略円筒状に形成される。内側ケース152は、開放側を前方へ向けて、外側ケース151の内部に設けられる。
【0051】
ボビン153は、略筒状に形成される部材である。ボビン153は、軸線方向を前後方向に向けて、内側ケース152の外側(内側ケース152と外側ケース151との間)に設けられる。
【0052】
コイル154は、ボビン153に巻回される銅線によって構成されるものである。コイル154は、図示せぬ電源と接続され、当該電源から電流が流されることによって磁力を発生させる。
【0053】
プランジャ155は、ソレノイド150の駆動部である。プランジャ155は、鉄等の磁性体で形成される。プランジャ155は、軸線を前後方向に向けた略円筒状に形成される。プランジャ155は、押圧部155a、摺動部155b及び貫通孔155cを具備する。
【0054】
押圧部155aは、プランジャ155の後部を構成する部分である。押圧部155aは、内側ケース152の内径と略同一の外径を有するように形成され、当該内側ケース152の内部に設けられる。押圧部155aの前端部は、ポペットバルブ130の後端部と当接するように形成される。
【0055】
摺動部155bは、プランジャ155の前部を構成する部分である。摺動部155bは、サブ通路132の大径部132bの内径と略同一の外径を有するように形成され、当該大径部132bに挿通される(
図3参照)。摺動部155bは、サブ通路132の大径部132bに対して前後方向に摺動可能に設けられる。摺動部155bの前端部は、第二連通孔133よりも前方に位置するように設けられる。このため、第二連通孔133は、摺動部155bの外周面によって閉鎖されている。
【0056】
貫通孔155cは、プランジャ155の内部に形成される貫通孔である。貫通孔155cは、プランジャ155の軸線方向に延びて、プランジャ155を貫通するように形成される。
【0057】
このように構成されたソレノイド150において、前記電源から電圧が印加されてコイル154に電流が流されると、コイル154に磁力が発生する。この磁力によって、プランジャ155は、前方に吸引される。前方に吸引されたプランジャ155は、押圧部155aの前端部(押圧部155aと摺動部155bとの段差部)によって、ポペットバルブ130を前方へ押圧することができる。これにより、弁座120に対してポペットバルブ130を前方に相対移動(すなわち、弁座120に近接)させることができる。なお、ポペットバルブ130が第一スプリング140の付勢力に抗して弁座120に近接できるように、第一スプリング140の付勢力は、プランジャ155の押圧力よりも小さくなるように設定される。
【0058】
第二スプリング160は、金属によって形成された線状の部材(線材)を螺旋状(コイル状)に成形した圧縮ばねである。第二スプリング160は、サブ通路132の大径部132bの前端面とプランジャ155の摺動部155b(の前端面)との間に、伸縮方向を前後方向に向けて圧縮された状態で設けられる。これにより、第二スプリング160は、ポペットバルブ130に対してプランジャ155を後方に付勢する。
【0059】
次に、
図4を用いて、オイル通路15(第一連通孔121)を閉塞する動作について説明する。なお、
図4に黒塗りで示す矢印は、ポペットバルブ130及びプランジャ155の移動方向を示している。また、
図4に白塗りで示す矢印はオイルの流れを示している。これは、
図5、
図6、及び
図8から
図11までにおいても同様である。
【0060】
まず、
図2に示した状態から前記電源を動作させてソレノイド150に電圧を印加すると、コイル154に電流が流れることで磁力が発生する。プランジャ155は、前記磁力によって前方に吸引され、ポペットバルブ130を前方へ押圧する。これにより、ポペットバルブ130は、プランジャ155と共に、第一スプリング140の付勢力に抗して前方に移動する。このとき、ポペットバルブ130は、挿通部114に対して摺動しながら前方に移動する。また、ポペットバルブ130はプランジャ155と共に移動するので、第二連通孔133は、プランジャ155の摺動部155bによって閉鎖されたままである。
【0061】
ポペットバルブ130は、前方に移動することで弁座120に近接する。そして、ポペットバルブ130は、弁座120と当接(弁座120に着座)することで、弁座120の第一連通孔121を閉鎖する。これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、流出孔112へと流通することはできない。したがって、ピストンジェット16へのオイルの供給が停止される。
【0062】
次に、
図5を用いて、オイル通路15(第一連通孔121)を開放する動作について説明する。
【0063】
前述の如く、ソレノイド150に電圧が印加されているときには、ポペットバルブ130は弁座120に着座して第一連通孔121を閉鎖している(
図4参照)。ここで、
図4に示した状態からソレノイド150への電圧の印加を停止させると、コイル154に電流が流れなくなり、発生していた磁力は消失する。これにより、プランジャ155は、磁力によって前方へ吸引されなくなる。
【0064】
そうすると、ポペットバルブ130に付与されていたプランジャ155による前方への押圧力も解除される。したがって、ポペットバルブ130は、プランジャ155と共に第一スプリング140の付勢力によって後方に移動する。このとき、ポペットバルブ130は、挿通部114に対して摺動しながら後方に移動する。また、ポペットバルブ130はプランジャ155と共に移動するので、第二連通孔133は、プランジャ155の摺動部155bによって閉鎖されたままである。
【0065】
ポペットバルブ130は、後方に移動することで弁座120から離間する。そして、ポペットバルブ130は、弁座120から離座することで、弁座120の第一連通孔121を開放する。これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、流出孔112へと流通することができる。したがって、ピストンジェット16へ再びオイルが供給される。
【0066】
このように、ポペットバルブ130は、プランジャ155による前方への押圧力と、第一スプリング140の後方への付勢力とによって、弁座120に対して近接離間することにより、ピストンジェット16へのオイルの供給を切り替えることができる。
【0067】
次に、
図6を用いて、ポペットバルブ130の第二連通孔133を開放する動作について説明する。
【0068】
前述の如く、ソレノイド150への電圧の印加を停止させると、第一スプリング140の付勢力によってポペットバルブ130を離座させることができる。一方で、ハウジング110の内部に鉄系の異物Eが侵入すると、磁力によりハウジング110の内部の部材に異物Eが吸着することがある。ハウジング110の挿通部114とポペットバルブ130との摺動部に異物Eが吸着されて噛み込んだ場合には、ポペットバルブ130は、ソレノイド150への電圧の印加が停止されても、後方へ移動することができない可能性がある。この場合、ポペットバルブ130は、弁座120から離座することができず、着座した状態で保持される。
【0069】
このとき、ソレノイド150に電圧は印加されていないので、プランジャ155には前方への吸引力は付与されていない。そして、ポペットバルブ130は前後方向へ移動不能となっているため、プランジャ155は、第二スプリング160の付勢力により、押圧部155aの後面が内側ケース152と当接する位置まで後方へ移動する。プランジャ155の摺動部155bは、後方へ摺動することで、ポペットバルブ130の第二連通孔133を開放する。
【0070】
これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、ポペットバルブ130の第二連通孔133を介してサブ通路132に供給される。そして、当該オイルは、サブ通路132を前方へ流通し、弁座120の第一連通孔121を介して流出孔112へと流通する。
【0071】
したがって、ソレノイド150への電圧の印加が停止されたにもかかわらず、異物Eの噛み込み等によりポペットバルブ130が弁座120に着座したままとなっても、ピストンジェット16へとオイルを供給することができる。このため、エンジン1の焼付きを防止することができる。
【0072】
また、第二スプリング160の付勢力は、第一スプリング140の付勢力よりも小さくなるように設けられている。具体的には、プランジャ155の押圧部155aの後端部が内側ケース152に当接している状態(
図2参照)において、第一スプリング140が(弁座120に対して)ポペットバルブ130を後方へ付勢する力が、第二スプリング160が(プランジャ155に対して)ポペットバルブ130を前方へ付勢する力よりも大きくなるように、第一スプリング140及び第二スプリング160は構成(設定)されている。これにより、プランジャ155の押圧部155aの後端部が内側ケース152に当接した状態では、第二スプリング160がポペットバルブ130を前方に付勢することとなるが、このとき第一スプリング140は、第二スプリング160の前方への付勢力よりも大きな力でポペットバルブ130を後方に付勢することとなる。したがって、問題なく弁座120の第一連通孔121を開放することができる。
【0073】
また、ポペットバルブ130が弁座120に着座した状態(
図4参照)においては、プランジャ155の押圧部155aと内側ケース152とで囲まれた空間(押圧部155aの後方の空間)と、第一連通孔121とは、サブ通路132及び貫通孔155cを介して互いに連通している。よって、押圧部155aの後方の空間と第一連通孔121との間に差圧は生じない。つまり、押圧部155aの後方の空間の圧力が第一連通孔121の圧力よりも高くならないようにされている。したがって、問題なく弁座120の第一連通孔121を開放することができる。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係るバルブ装置100は、流体が流通する流体通路(流入孔111、メイン通路113及び流出孔112)を有するハウジング110と、前記流体通路を上流側と下流側とに区画するように設けられると共に、前記流体通路の前記上流側と前記下流側とを連通する第一連通孔121を有する弁座120と、メイン通路113(前記流体通路の前記上流側)に、前記弁座120に対して離間する方向である第一方向及び前記弁座120に対して近接する方向である第二方向に相対移動可能に設けられ、前記弁座120に着座することで前記第一連通孔121を閉鎖すると共に、前記弁座120から離座することで前記第一連通孔121を開放するポペットバルブ130(弁体)と、前記弁座120に対して前記第一方向に前記ポペットバルブ130を付勢する第一スプリング140(第一付勢部材)と、前記ポペットバルブ130に押圧力を付与可能に形成され、当該押圧力により前記第二方向に前記ポペットバルブ130を相対移動させる押圧部155aと、前記ポペットバルブ130に対して摺動可能に設けられた摺動部155bと、を具備し、前記ポペットバルブ130は、前記弁座120に着座しているときに前記第一連通孔121と連通するように形成されたサブ通路132と、前記サブ通路132とメイン通路113(前記流体通路の前記上流側)とを連通する第二連通孔133と、を具備し、前記摺動部155bは、前記ポペットバルブ130に対して摺動することで前記第二連通孔133の閉鎖と開放とを切り替え可能に形成されているものである。
このように構成されることにより、ポペットバルブ130が着座した状態で固着しても、流体通路の上流側と下流側とを連通することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、前記ポペットバルブ130に対して前記摺動部155bを付勢する第二スプリング160(第二付勢部材)を具備し、前記第一スプリング140は、前記弁座120に対して前記第一方向に前記ポペットバルブ130を付勢するように設けられ、前記摺動部155bは、前記ポペットバルブ130が前記押圧部155aにより押圧されて前記弁座120に着座しているときには、前記第二連通孔133を閉鎖し、前記押圧部155aの押圧力が解除されたにもかかわらず前記ポペットバルブ130が前記弁座120から離座しなかった場合に、前記第二スプリング160の付勢力によって摺動することにより前記第二連通孔133を開放するものである。
このように構成されることにより、ポペットバルブ130が着座した状態で固着しても、自動的に流体通路の上流側と下流側とを連通することができる。
【0076】
また、前記第二スプリング160は、前記第一スプリング140の付勢方向と同方向に前記摺動部155bを付勢するように設けられると共に、付勢力が前記第一スプリング140の付勢力よりも小さくなるように形成されているものである。
このように構成されることにより、ポペットバルブ130を離座し易くすることができる。具体的には、ポペットバルブ130に対する後方への付勢力(第一スプリング140による付勢力)の方が、ポペットバルブ130に対する前方への付勢力(第二スプリング160による付勢力)よりも大きいので、問題なく弁座120の第一連通孔121を開放することができる。
【0077】
なお、流入孔111、流出孔112及びメイン通路113は、流体通路の実施の一形態である。
また、ポペットバルブ130は、弁体の実施の一形態である。
また、サブ通路132は、内部通路の実施の一形態である。
また、第一スプリング140は、第一付勢部材の実施の一形態である。
また、第二スプリング160は、第二付勢部材の実施の一形態である。
【0078】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施形態においては、ポペットバルブ130は、ソレノイド150に電圧が印加されたときには弁座120に近接し、ソレノイド150に電圧が印加されていないときには第一スプリング140の付勢力によって弁座120から離間するものとしたが、これとは反対に、ソレノイド150に電圧が印加されていないときには第一スプリング140の付勢力によって弁座120に近接し、ソレノイド150に電圧が印加されたときには弁座120から離間するものであってもよい。
【0080】
また、本実施形態においては、ポペットバルブ130は、弁座120よりも上流側に設けられるものとしたが、弁座120よりも下流側に設けられるものであってもよい。
【0081】
また、本実施形態においては、摺動部155bは、押圧部155aと一体的に形成される(プランジャ155に摺動部155bが含まれる)ものとしたが、押圧部155aと別部材として形成されるものであってもよい。この場合、摺動部155bは、押圧部155aと同様に磁性体で形成されていてもよく、或いは磁性体で形成されていなくてもよい。
【0082】
また、本実施形態においては、第二スプリング160は、プランジャ155の摺動部155bの前方に設けられるものとしたが、第二スプリング160の位置はこれに限定されるものではなく、適宜の位置することができる。例えば、第二スプリング160は、ポペットバルブ130とプランジャ155の押圧部155aとの間に(すなわち、ソレノイド150の電圧印加時に、押圧部155aが第二スプリング160を介してポペットバルブ130を押圧するように)設けられていてもよい。
【0083】
また、本実施形態においては、第二スプリング160の付勢力によって第二連通孔133を開放するものとしたが、第二連通孔133を開放させる手段はこれに限定されるものではない。例えば、モーターや油圧等の他の駆動力によって摺動部155bを摺動させ、第二連通孔133を開放するものであってもよい。
【0084】
次に、
図7を用いて、第二実施形態に係るバルブ装置200について説明する。
【0085】
第二実施形態に係るバルブ装置200が、第一実施形態に係るバルブ装置100と異なる点は、プランジャ155に代えてプランジャ255を具備する点、及びさらにサブバルブ256を具備する点である。よって以下では、第二実施形態に係るバルブ装置200のうち第一実施形態に係るバルブ装置100と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
プランジャ255は、ソレノイド150の駆動部である。プランジャ255は、鉄等の磁性体で形成される。プランジャ255は、軸線を前後方向に向けた略円筒状に形成される。プランジャ255は、内側ケース152の内径と略同一の外径を有するように形成され、当該内側ケース152の内部に設けられる。プランジャ255の前端部は、ポペットバルブ130の後端部と当接可能に形成される。プランジャ255には、貫通孔255aが形成される。
【0087】
貫通孔255aは、後述するサブバルブ256を挿通するものである。貫通孔255aは、プランジャ255を前後方向に貫通するように形成される。貫通孔255aは、後部の内径が前部の内径よりも大きくなるように形成される。貫通孔255a(の前部)の内径は、ポペットバルブ130のサブ通路132(の後部)の内径と略同一の大きさを有するように形成される。
【0088】
サブバルブ256は、ポペットバルブ130のサブ通路132と摺動する部材である。また、サブバルブ256は、ソレノイド150の駆動部を兼ねるものである。サブバルブ256は、鉄等の磁性体で形成される。サブバルブ256は、略円柱状に形成される。サブバルブ256は、軸線を前後方向に向けて設けられる。サブバルブ256は、後端部近傍(貫通孔255aの後部(内径が大きい部分)に収容される部分)の外径が、貫通孔255aの前部の内径よりも大きくなるように形成される。サブバルブ256は、プランジャ255の貫通孔255a(の前部)の内径及びポペットバルブ130のサブ通路132(の後部)の内径と略同一の外径を有するように形成され、貫通孔255a及びサブ通路132に挿通される。サブバルブ256は、前端部近傍においてポペットバルブ130の第二連通孔133を閉鎖するように設けられる。サブバルブ256には、貫通孔256aが形成される。
【0089】
貫通孔256aは、サブバルブ256の内部に形成される貫通孔である。貫通孔256aは、サブバルブ256の軸線方向に延びて、サブバルブ256を貫通するように形成される。
【0090】
次に、
図8を用いて、オイル通路15(第一連通孔121)を閉塞する動作について説明する。
【0091】
まず、前記電源を動作させてソレノイド150に電圧を印加すると、コイル154に電流が流れることで磁力が発生する。プランジャ255は、サブバルブ256と共に前記磁力によって前方に吸引され、ポペットバルブ130を前方へ押圧する。これにより、ポペットバルブ130は、プランジャ255及びサブバルブ256と共に、第一スプリング140の付勢力に抗して前方に移動する。
【0092】
ポペットバルブ130は、前方に移動することで弁座120に近接する。そして、ポペットバルブ130は、弁座120と当接(弁座120に着座)することで、弁座120の第一連通孔121を閉鎖する。これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、流出孔112へと流通することはできない。したがって、ピストンジェット16へのオイルの供給が停止される。
【0093】
次に、
図9を用いて、オイル通路15(第一連通孔121)を開放する動作について説明する。
【0094】
前述の如く、ソレノイド150に電圧が印加されているときには、ポペットバルブ130は弁座120に着座して弁座120の第一連通孔121を閉鎖している。ここで、ソレノイド150への電圧の印加を停止させると、コイル154に電流が流れなくなり、発生していた磁力は消失する。これにより、プランジャ255及びサブバルブ256は、磁力によって前方へ吸引されなくなる。
【0095】
そうすると、ポペットバルブ130に付与されていたプランジャ255及びサブバルブ256による前方への押圧力も解除される。したがって、ポペットバルブ130は、プランジャ255と共に第一スプリング140の付勢力によって後方に移動する。このとき、サブバルブ256は、プランジャ255と共に後方に移動する。
【0096】
ポペットバルブ130は、後方に移動することで弁座120から離間する。そして、ポペットバルブ130は、弁座120から離座することで、弁座120の第一連通孔121を開放する。これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、流出孔112へと流通することができる。したがって、ピストンジェット16へ再びオイルが供給される。
【0097】
次に、
図10及び
図11を用いて、ポペットバルブ130の第二連通孔133を開放する動作について説明する。
【0098】
前述の如く、ソレノイド150への電圧の印加を停止させると、第一スプリング140の付勢力によってポペットバルブ130を離座させることができる。一方で、
図10に示すように、ハウジング110の挿通部114とポペットバルブ130との摺動部に異物Eが吸着されて噛み込んだ場合には、ポペットバルブ130は、ソレノイド150への電圧の印加が停止されても、後方へ移動することができない可能性がある。この場合、ポペットバルブ130は、弁座120から離座することができず、着座した状態で保持される。
【0099】
このとき、ソレノイド150へ電圧は印加されていないので、サブバルブ256には前方への吸引力は付与されていない。そして、ポペットバルブ130は前後方向へ移動不能となっているため、サブバルブ256は、第二スプリング160の付勢力により、サブバルブ256の後面が内側ケース152と当接する位置まで後方へ移動する。サブバルブ256は、当該位置まで摺動することで、ポペットバルブ130の第二連通孔133を開放する。
【0100】
これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、ポペットバルブ130の第二連通孔133を介してサブ通路132に供給される。そして、当該オイルは、サブ通路132を前方へ流通し、弁座120の第一連通孔121を介して流出孔112へと流通する。
【0101】
したがって、ソレノイド150への電圧の印加が停止されたにもかかわらず、異物Eの噛み込み等によりポペットバルブ130が弁座120に着座したままとなっても、ピストンジェット16へとオイルを供給することができる。このため、エンジン1の焼付きを防止することができる。
【0102】
また、
図11に示すように、ソレノイド150の内側ケース152とプランジャ255との摺動部に異物Eが吸着されて噛み込んだ場合には、プランジャ255は、ソレノイド150への電圧の印加が停止されても、後方へ移動することができない可能性がある。この場合、ポペットバルブ130は、プランジャ255が妨げとなって後方へ移動不能となる。よって、ポペットバルブ130は、弁座120から離座することができず、着座した状態で保持される。
【0103】
このとき、ソレノイド150へ電圧は印加されていないので、サブバルブ256には前方への吸引力は付与されていない。そして、ポペットバルブ130は前後方向へ移動不能となっているため、第二スプリング160は、ポペットバルブ130に対してサブバルブ256を後方へ付勢する。したがって、サブバルブ256は、第二スプリング160の付勢力により、サブバルブ256の後面が内側ケース152と当接する位置まで後方へ移動する。サブバルブ256は、当該位置まで摺動することで、ポペットバルブ130の第二連通孔133を開放する。
【0104】
これにより、流入孔111を介してメイン通路113に供給されたオイルは、ポペットバルブ130の第二連通孔133を介してサブ通路132に供給される。そして、当該オイルは、サブ通路132を前方へ流通し、弁座120の第一連通孔121を介して流出孔112へと流通する。
【0105】
したがって、異物Eがポペットバルブ130の摺動部ではなくプランジャ255の摺動部に噛み込んだ場合であっても、第二連通孔133を開放することができ、これによりピストンジェット16へとオイルを供給することができる。このため、エンジン1の焼付きを防止することができる。
【0106】
以上の如く、第二実施形態に係るバルブ装置200は、サブバルブ256(摺動部)は、プランジャ255(押圧部)に対して相対移動可能に形成されているものである。
このように構成されることにより、プランジャ255が弁座120に対して離間する方向(第一方向)に戻ることができなくなったことが原因でポペットバルブ130が離座できなくなった場合であっても、流体通路の上流側と下流側とを連通することができる。
【0107】
また、前記サブバルブ256は、前記プランジャ255の内部に挿通されているものである。
このように構成されることにより、プランジャ255が弁座120に対して離間する方向(第一方向)に戻ることができなくなったことの原因(異物Eの噛み込み等)がプランジャ255の外側にある場合に、サブバルブ256は、その影響を受けることなくプランジャ255に対して相対移動可能とすることができる。
【0108】
なお、プランジャ255は、押圧部の実施の一形態である。
また、サブバルブ256は、摺動部の実施の一形態である。
【0109】
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、第二実施形態においては、第二スプリング160は、サブバルブ256の前方に設けられるものとしたが、第二スプリング160の位置はこれに限定されるものではなく、適宜の位置することができる。例えば、第二スプリング160は、プランジャ255の貫通孔255aの段差面とサブバルブ256の後部(外径が大きい部分)との間に設けられていてもよい。