特許第6718879号(P6718879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6718879無バッテリのマルチポイント無線製品条件(状態)感知を用いるプロセス監視と制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6718879
(24)【登録日】2020年6月17日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】無バッテリのマルチポイント無線製品条件(状態)感知を用いるプロセス監視と制御
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/02 20060101AFI20200629BHJP
   F26B 5/06 20060101ALI20200629BHJP
   G01K 1/02 20060101ALI20200629BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20200629BHJP
【FI】
   G08C17/02
   F26B5/06
   G01K1/02 E
   G08C17/00 Z
   !A61K9/19
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-540060(P2017-540060)
(86)(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公表番号】特表2018-507478(P2018-507478A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】US2016014849
(87)【国際公開番号】WO2016123062
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】62/108,589
(32)【優先日】2015年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/172,829
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511152968
【氏名又は名称】アイエムエー ライフ ノース アメリカ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ブラウワー,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガングリー,アナブ
(72)【発明者】
【氏名】レンジ,アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】デマルコ,フランシス,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】アルディーニ,ミシェル
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0239331(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0247234(US,A1)
【文献】 特開2010−6388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 17/00−17/06
G01K 1/00− 1/02
A61K 9/19
F26B 5/06
A61J 1/00− 1/22
A61J 3/00− 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌医薬品処理チャンバ内で処理される製品バイアルに含まれる製品の条件プロファイルを測定するための製品条件測定ユニットであって、
前記製品バイアルの開口内に位置決めするための支持構造と、
一の伸長プローブであって、
前記支持構造によって支持され、前記単一の伸長プローブの構造成分を形成するプリント回路基板と、
前記支持構造からの増分距離を隔てて前記単一の伸長プローブに沿う線形アレイに於いて長手方向に離間し、前記プリント回路基板上に表面搭載される複数の表面搭載センサを備える単一の伸長プローブと、
前記支持構造によって支持され、前記複数のセンサからの測定値を受信するように接続されたプロセッサとを備える製品条件測定ユニット。
【請求項2】
受信した無線電力信号を使用してプロセッサに電力を供給するよう接続された無線周波数環境発電ボードをさらに備える、請求項1に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項3】
件プロファイルは温度プロファイルを含む、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項4】
前記条件プロファイルが湿度プロファイルを含む、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項5】
前記測定値の各1つを、空間の単一場所における温度測定値および湿度測定値の双方に変換するよう構成された測定処理モジュールをさらに備える、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項6】
前記表面搭載センサは、セラミック表面搭載容量性センサを含む、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項7】
プロセッサはプリント回路基板上に搭載される、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項8】
ローカル無線ネットワークを介して測定データを送信するための無線送信機をさらに含む、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記ローカルのネットワークを介して前記製品条件測定ユニットの固有のIDコードを送信するように構成される、請求項8に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項10】
前記プロセッサに接続され、前記測定データを前記ローカル無線ネットワークを介して送信する通信アンテナをさらに備える、請求項8に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項11】
前記センサは、前記単一の伸長プローブに沿って隣接するセンサから2mm未満の間隔を置いて配置されている、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項12】
前記複数のセンサは、6つ以上のセンサを備える、請求項1および2のいずれか1項に記載の製品条件測定ユニット。
【請求項13】
凍結溶媒を含有する製品で、バイアル開口部を有し凍結乾燥チャンバ内に配置される複数のバイアルに存する前記製品の凍結乾燥方法であって、
凍結した溶媒を昇華させるための条件を製品に施すこと、
製品がプロセス条件に供されている間に、複数のバイアルのひとつのバイアルに於いて、プロダクト内に延在する単一の伸長測定プローブに沿って配置された製品条件センサであり、プリント回路基板上に搭載された表面搭載センサを含む前記製品条件センサの、2mm未満のピッチを有する線形アレイを利用して、昇華最前部の位置を測定すること、及び
測定された昇華最前部の位置に基づいてプロセス条件を制御することを含み、
前記プリント回路基板は、前記単一の伸長測定プローブの構造成分を形成する、凍結乾燥方法。
【請求項14】
製品を周囲条件に戻すこと、
バイアルに於いて、製品が周囲条件に供される間に、製品条件センサの線形アレイを利用して製品の湿度プロファイルを測定することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の棚であって、各個別棚は前記棚から前記棚によって支持されたバイアルへ熱伝達する個々の調整可能熱伝達システムを有する、前記複数の棚上に前記複数の製品バイアルが配置され、
昇華最前部の測定位置に基づいてプロセス条件を制御することは、前記昇華最前部の測定位置に基づいてバイアルが配置される特定の棚の調節可能な熱伝達システムを調節することをさらに含む請求項13および14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
無線の高周波数電力供給信号を使用して、バイアル上の製品条件測定ユニットに電力を供給することをさらに含む請求項13および14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記バイアル上の無線通信送信機によって測定データを送信することをさらに含む、請求項13および14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
製品条件センサは温度センサであり、前記方法は、前記製品の温度測定値に基づいて製品温度勾配を推定することによって前記昇華最前部の位置を決定することをさらに含む請求項13および14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
反復測定に基づいて前記昇華最前部の伝播速度を推定することをさらに含む請求項13および14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
筐体の内部を周囲雰囲気から無菌的に隔離するための無菌筐体と、
無菌筐体の内部の条件を制御するために接続された環境制御装置と、及び
無菌筐体の内部の温度と湿度を測定するように位置決めされ、かつ環境制御装置に測定値を提供するように接続された少なくとも1つの測定ユニットであって、空間内の単一位置で温度および湿度の双方を測定するための容量性センサ、コンピュータ可読媒体およびプロセッサを備える前記少なくとも1つの測定ユニットとを備え、
前記コンピュータ可読媒体は、前記容量性センサのための温度対容量曲線および湿度対容量曲線を含む較正情報を含み、
前記プロセッサは、空間内の前記単一位置で前記温度および前記湿度を測定して前記較正情報を利用するという命令を含む、無菌医薬品処理システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの測定ユニットが、プリント回路基板上に配置された複数の容量性センサを含む請求項20に記載の無菌医薬品処理システム。
【請求項22】
前記複数の容量性センサは、前記無菌筐体内で処理される製品内の温度と湿度のプロファイルを測定するように配置される請求項20および21のいずれか1項に記載の無菌医薬品処理システム。
【請求項23】
前記複数の容量性センサは、前記複数のセンサからの測定値を平均することによって前記無菌筐体内の環境条件を測定するように配置される請求項21に記載の無菌医薬品処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張〕
本願は、2015年1月28日出願の米国仮出願番号62/108,589号明細書、題名「無電池のマルチポイント無線温度感知を用いるプロセス監視および制御」、及び2015年6月9日提出の米国仮出願番号62/172,829号明細書、題名「無電池のマルチポイント無線温度感知を用いるプロセス監視および制御」の全内容が、ここに参考文献として援用される。
【0002】
本発明は、厳密に制御された温度及び湿度条件(状態)下で無菌製品のプロセス及び当該無菌製品を取り扱うための機器に関する。より詳細には、本発明は冷凍乾燥プロセスのような無菌プロセス、特に医薬品のような製品の測定及び監視に関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤製造プロセスは典型的には、入念に制御された環境下で実施される。これらの環境内での条件は厳密に監視されなければならない。これら条件には、プロセス中の製品内および制御された環境内での選択された場所の双方で測定された温度と湿度を含まれる。本明細書で使用される場合、用語「湿度」は、絶対湿度、即ち空気中の含水量を指す。絶対湿度は、例えば、空気1立方メートル当たりの水のグラム数として測定してよい。
【0004】
容器充填システムや包装システムなどの製薬プロセスシステムでの入念に制御された無菌状態を維持するために、環境アイソレータを使用してもよい。アイソレータは、典型的には、周囲「クラスC」の製造室で「クラスA」の無菌環境を維持することができる。このようなアイソレータは、専用の気中回路を含む。気中回路を制御し、漏れ、故障などを監視するためには、アイソレータ内の重要な点で、温度と湿度の測定が必要となる。温度測定は湿度測定と共に、アイソレータ内で実施されるプロセスの結果に影響する。これらの測定は、別々のセンサを使用する上記アイソレータで実施される。
【0005】
凍結乾燥とは、生成物から溶媒または懸濁媒体、典型的には水を除去するプロセスである。アルコールのようなその他の溶媒を凍結乾燥プロセスで除去してもよい。
【0006】
水を除去する凍結乾燥プロセスでは、製品中の水が凍結して氷を形成し、真空下で、氷が昇華し、蒸気が凝縮器に向かって流れる。水蒸気は氷として凝縮器で凝縮され、後に凝縮器から除去される。凍結乾燥は、凍結乾燥プロセス中に製品の完全性が保持され、製品の安定性が比較的長期にわたって保証され得るため、医薬品産業およびバイオ医薬品産業において特に有用である。本開示はまた、食品産業および類似の要件を有するおよび他の産業にも適用可能である。凍結乾燥製品は、必ずしもというわけではないが、本源的には生物学的な物質である。
【0007】
薬剤凍結乾燥は、多くの場合、凍結乾燥チャンバ内で、無菌条件下および入念に制御された条件を必要とする無菌プロセスである。製品と接触する凍結乾燥システムのすべての構成要素が無菌であることを確認することが極めて重要となる。
【0008】
無菌条件下でのほとんどの凍結乾燥は、バイアル用に設計された凍結乾燥機で行われ、製品はトレイまたは棚に置かれたバイアルに収容される。図1に示す従来技術の凍結乾燥システム100の一の実施例では、凍結乾燥チャンバ110内の凍結乾燥器トレイ121上に配置されたバイアル112内に製品のバッチを入れる。凍結乾燥器棚123は、トレイ121を支持し、プロセスが要求するように、トレイおよび製品との間で熱を伝達するために使用される。棚123内の導管を通って流れる熱伝達流体は、熱を除去または追加するために使用される。
【0009】
次いで、製品乾燥チャンバは、真空ポンプ150を使用して真空排気される。真空下では、バイアル112内の凍結製品がわずかに加熱され、それにより製品内で氷が昇華する。氷の昇華に起因する水蒸気は通路115を通って、水蒸気の凝縮温度以下に維持された凝縮コイル122または他の表面122を含む凝縮チャンバ120に流れる。冷媒をコイル122に通して熱を除去し、水蒸気をコイル上の氷として凝縮させる。
【0010】
凍結乾燥チャンバ110と凝縮チャンバ120の双方は、凝縮チャンバ120の排気部に接続された真空ポンプ150によるプロセスの間、真空下に維持される。チャンバ110,120に含まれる非凝縮性ガスは、真空ポンプ150によって除去され、高圧出口152にて排気される。
【0011】
凍結乾燥プロセスが進行するにつれて、各バイアルに昇華最前部が形成され、製品の露出した上面からバイアルの底に移動する。昇華最前部は、昇華最前部の上の凍結乾燥製品と、昇華最前部下の凍結溶媒を含む凍結製品との間の境界を画定している。個々のバイアルでは、昇華最前部がバイアルの底に達すると、凍結乾燥プロセスが完了する。
【0012】
プロセス中およびプロセス後の温度や残留水分などの製品属性を正確に監視することは、特に医薬品/バイオ医薬品業界におけるプロセスのスケールアップに関連するプロセス開発とプロセス作業に極めて重要である。更に、凍結乾燥製品のバッチを首尾よく処理するためには、製造中の臨界範囲に従って製品条件を制御する能力が不可欠である。既存のシステムでは、製品温度は、典型的には、その目的のために凍結乾燥機チャンバ内に設けられた電気ポートに接続された有線の熱電対を用いて監視される。製品の残留水分は、典型的には、乾燥減量法またはカールフィッシャー滴定法などの分析技術を用いた破壊試験として、製造プロセス後に測定される。
【0013】
製品バイアルが載置される多数の棚間には熱伝達の変化があるため、温度および残留水分を含む製品属性は、凍結乾燥チャンバ内で位置依存性がある。既存のシステムの温度を監視するために、開発サイクルの多数の別々のバイアルにおいて、多数の(典型的には8〜16個)熱電対を使用して、その位置変動を判断する。製品チャンバに載置されたバイアルを横断する複数の熱電対線を備えたこのような構成は、取扱いが煩雑であり、時には製品の損失および/またはデータ収集の誤りを招くことがある。残留水分を監視するために、多数のサンプルがチャンバ全体の場所で採取される。試験には時間がかかり、また各試験済みバイアルの製品は破壊される。
【0014】
凍結乾燥などの無菌の環境制御プロセスの開発中および製造中の双方において、製品条件(状態)を監視するための改良技術が必要とされている。当該技術は、有線プローブが引き起こす潜在的なエラーとプロセスの分裂を排除するものとし、迅速かつ非破壊的なものとすべきです。当該技術は、チャンバの容積内およびバイアル内の測定分解能を最大にするものとする。当該技術は、凍結乾燥プロセスまたは条件の正確な制御を必要とする別のプロセスの制御に使用される、リアルタイムデータを提供するものとする。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、温度または湿度などの製品状態の密接離間測定を行うことができる製品条件(状態)センサを使用して、凍結乾燥プロセスまたは別の無菌プロセスを監視するための設備を提供することにより、上述の必要性に対処する。上記測定は、製品内の多数レベルで測定を行うために使用し得る、単一のプローブ上の直線アレイに密接離間状に配置されたセンサを使用して行われる。センサからのデータは、短距離無線デジタル通信を介してデータ収集ポイントに送信される。単一ポイントで温度および湿度を測定するためには、センサを使用し得る。昇華最前部の位置は、測定から算定し得る。
【0016】
本開示の好適な実施形態は、無菌医薬品処理チャンバ内で処理される製品バイアルに含まれる製品の条件(状態)プロファイルを測定するための製品条件(状態)測定ユニットを特徴とする。製品条件(状態)測定ユニットは、製品バイアルの開口内に位置決めするための支持構造と、前記支持構造によって支持された単一の伸長プローブであって、前記支持構造からの増分距離を隔てて前記単一の伸長プローブに沿う長手方向に離間する複数のセンサを有する単一の伸長プローブとを含む。前記製品条件(状態)測定ユニットは、前記支持構造体によって支持され、複数のセンサからの測定値を受信するように接続されたプロセッサをさらに備える。製品条件(状態)測定ユニットは、前記支持構造体によって支持されるプロセッサであって、前記複数のセンサからの測定を受け取るように接続されるプロセッサを更に備える。
【0017】
本開示の他の実施形態は、凍結溶媒を含有する製品であって、バイアル開口部を有し且つ凍結乾燥チャンバ内に配置される複数のバイアルに存在する当該製品を凍結乾燥する方法を含む。製品は、凍結溶媒を昇華させるプロセス条件に供される。複数のバイアル中の一のバイアルにおいて、製品がプロセス条件下にある間、製品内に延在する単一の伸長測定プローブに沿って配置される製品条件(状態)センサの線形アレイであって、2mm未満のピッチを有する当該線形アレイを用いて、昇華正面の位置を測定する。プロセス条件は、昇華最前部の測定位置に基づいて制御される。
【0018】
本開示のさらなる実施形態は、無菌性製薬処理システムを含む。本システムは、筐体の内部を周囲雰囲気から無菌状態で隔離するための無菌筐体と、無菌筐体の内部における条件(状態)を制御するよう接続された環境制御装置とを備える。少なくとも1つの測定ユニットが、無菌筐体の内部の温度と湿度を測定するために位置決めされる。当該測定ユニットは、環境制御装置に測定値を提供するように接続される。測定ユニットは、空間内の単一の場所で温度と湿度の双方を測定するためのセンサとプロセッサとを備える。
【0019】
本開示の好適な実施形態のそれぞれの特徴は、任意の組み合わせまたは副次的な組み合わせにより、共同でまたは個別に適用し得る。
【0020】
本明細書で開示される好適な実施形態は、添付の図面と併せて下記の詳細な説明を考察して理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、現在の凍結乾燥システムの概略図。
図2図2は、本開示の一態様に係る凍結乾燥プロセス監視システムの概略図。
図3図3は、本開示の一態様に係る製品条件(状態)測定ユニットの概略図。
図4図4は、本開示の一態様に係る凍結乾燥プロセス監視システムの概略図。
図5図5は、本開示の一態様に係る製品バイアル内の温度プロファイルを示す概略グラフ。
図6図6は、本開示の一態様に係る方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
温度センサのような無線センサは、かなりの現行システムにおいて、製品収納バイアル内の単一点監視プローブとして採用されている。これらのセンサは、温度と共に変化する共振周波数を決定するよう無線励起される誘導型検知システムであってもよい。他の構成では、データ取得モジュールと通信する熱電対を使用する。これらのセンサの感知技術および物理的サイズのために、一般的に感知プローブごとに1つのセンサのみを使用することができる。加えて、誘導型センサは、電磁場における結晶の励起に基づいて動作し、他方バイアルごとに多数のセンサを使用することは奨励しないことから、近接配置された誘導型センサにおいては、相互に干渉し合う傾向がある。
【0023】
無線容量性湿度センサは、美術館、プリンタ、温室などの室温またはそれに近い温度のアプリケーションに典型的に適用される単一点監視装置として現在使用されている。
【0024】
図2は本開示の実施形態に係る凍結乾燥システム200を概略的に示す図。図3は本開示の実施形態に係る製品条件(状態)測定ユニット201を概略的に示す図。本開示に係るシステムを、これらの図を参照して説明する。
【0025】
凍結乾燥チャンバ210は、チャンバ210の内部を真空排気する機器(図示せず)であって、棚212の加熱による手段のように、チャンバ212に収納された製品の温度を制御する装置に接続される。製品バイアル220,250は、棚212によって支持され、凍結乾燥される製品221を収納する。クロージャ252はバイアル250に取り付けられる。クロージャ252は浮出し位置にあってもよく、此処で、図示のように、クロージャ脚部253または他の手段は、凍結乾燥プロセスの間に溶媒蒸気を逃がすように、バイアル開口部251内の開放状態でクロージャを支持している。凍結乾燥プロセスが完了した後、クロージャは完全着座位置まで押下され、開口部251を閉じる。標準的なクロージャ252に対して、独自の幾何学的な形状特性および蒸気フロー特性をそれぞれ有する数種類の設計が採用可能である。
【0026】
バイアル220は、支持構造222と、単一の伸長プローブ226と、後述の回路を有するプリント回路基板224と、信号受信器266,236とを含む製品条件(状態)測定ユニット201(図2および図3)を備える。本開示の実施形態に係る凍結乾燥システムは、数万個のバイアルを含み得る。選択したバイアルのサブセットには、複数の製品条件(状態)測定ユニット201が備えられており、残るバイアルを標準的なクロージャ252を用いて閉じる。製品条件(状態)測定ユニット201を備えたバイアルサブセットは、チャンバ210内の製品条件(状態)の最適マップを提供するように選択される。
【0027】
支持構造222は、凍結乾燥システムで使用される他のクロージャ252の幾何学形状および蒸気フロー特性に適合するように設計される。このようにして、隣接するバイアルの製品条件(状態)プロファイルは、単一の計装バイアルからの情報を使用して推定し得る。
【0028】
本明細書で使用される「プローブ」は、プローブにおいてまたはその近傍での条件(状態)を試験するために製品内に挿入される単一の部材である。現在開示されている設備では、製品221に於いてまたはその近傍位置で複数のセンサ228を支持する単一の伸長プローブ226を利用している。この設備では、幾つかの利点が提供される。バイアル220内の条件(状態)を測定することで、近傍製品バイアル250の条件(状態)の推定を試みる構成であることから、温度および昇華速度のようなバイアル内の特性の最小外乱を、プローブ自体が生成することが重要となる。多数のセンサ228を支持する単一の伸長プローブ226を使用することにより、多数のセンサを支持する多数のプローブを使用することと比較して、測定済み条件(状態)の分裂は最小限に抑えられている。さらに、センサ228は同一プローブ226によって支持されていることから、センサ間の間隔は固定され、それにより測定プロファイルの精度が向上する。
【0029】
本開示の一の好適な実施形態では、6個以上の等間隔に配置された容量性センサは、温度および湿度などの製品条件(状態)を監視すると共に、収納バイアル220内への製品充填と同時にこれら条件(状態)の勾配を監視する。他の実施形態では、7個のセンサを使用し得る。他の実施形態では、3個以上のセンサが使用される。測定済みプロファイルの所望の分解能およびセンサの物理的サイズに依存して、より多くのまたはより少ないセンサを使用し得る。他の実施形態では、センサ228は、セラミック表面搭載デバイスに基づくキャパシタを備え得る。センサは、回路基板に取り付けられたときに2mm未満のスペースを必要とすることがある。従って、6個以上のそのようなセンサを12mmの測定ラインに載置してもよく、これにより比較的高分解能のプロファイルの測定を可能としている。択一的には、当該センサはプリント回路の一体的な構成要素であってもよい。
【0030】
容量性センサ228は、高い空間分解能を有する線形アレイにおいて多数回の測定を行うように配置され得る。その多点感知能力により、バイアル内への小型製品の充填など、小空間での勾配の測定を可能としている。センサ228は、回路/信号受信器266,236と共に、伸長プローブ226の構造的/電気的接続構成要素を形成する単一のプリント回路基板224上に装着されてもよい。
【0031】
測定モジュール227(図3)は、プリント回路基板224に含まれ、センサ228からの測定値を受け取り、測定値を凍結乾燥システムの他の構成要素によって使用可能なデータに変換する。測定モジュール227は、センサ228からのキャパシタンスまたは別の特性を測定するための特殊回路部品を含んでよい。測定モジュール227は、較正値などの値を格納し、かつキャパシタンス測定値を温度測定値および湿度測定値などの製品条件(状態)測定値に変換するために、プリント回路基板上に装着したプロセッサのソフトウェアモジュールを含んでよい。
【0032】
そのような温度測定値は、以下に記載されるように、凍結乾燥プロセスの監視と制御に使用され得る。加えて、製品の粒子間の空気のこのような局所的な湿度測定値は、製品中の残留水分の高信頼指標であり、それ故凍結乾燥プロセスの有効性を測定する目的で使用され得る。
【0033】
通信モジュール225もまた、プリント回路基板224に含まれ、当該通信モジュール225は測定ユニット201からチャンバ210外に位置する測定処理モジュール230へのデータの伝送を管理する。通信モジュール225は、ANT(商標)オープンアクセスマルチキャスト無線センサネットワークプロトコルなどのセンササンプリングプロトコルを使用して通信タスクを実行する。測定モジュール227から受信された測定値は、無線スペクトルの産業用、科学用および医療用(ISM)帯域(2.4GHz)を利用する信号234を介し、且つデータ送信アンテナ266を使用して通信モジュール225によって無線送信され、更にこれら測定値は通信アンテナ232を介して、乾燥室210外において、測定処理モジュール230によって受信される。
【0034】
センサ228は、既知の製品条件(状態)較正点で個別に較正されてもよい。結果としての較正係数およびオフセット値は、測定モジュール227内の測定ユニット201上に格納してよい。択一的に、センサシステム内の個別の測定ユニット201に対する較正情報は、対応するユニットIDコードとともに、凍結乾燥チャンバ外に位置する測定処理モジュール230にアクセス可能なデータベースに格納されてもよい。
【0035】
同一の感知装置からの一般的な温度/湿度の感知は、簡略的なキャパシタンス−温度/湿度の較正曲線を介して可能である。かくして、キャパシタンスを測定することで、凍結乾燥プロセス中の対応温度およびプロセス終了時の湿度を、データ取得と交信する無線RF稼働装置を用いて測定することができる。
【0036】
本開示の実施形態によれば、温度および湿度は、センサ228が位置決めされる空間内の単一点で行われる単一キャパシタンス測定値から計算されてもよい。センサ228は温度値に対して較正され、温度対キャパシタンス曲線が格納される。センサ228は、一以上の一定温度で湿度値に対して個別に較正され、これらの値は、湿度対キャパシタンス曲線として格納される。
【0037】
そして、センサ228によるキャパシタンス測定値は、温度対キャパシタンス曲線を用いて直接温度測定値に変換される。同一のキャパシタンス測定値は、湿度対キャパシタンス曲線を使用して湿度の示度に変換される。
【0038】
製品条件(状態)測定ユニット201は、固有のIDコードを利用して、測定処理モジュール230に自身を識別させる。凍結乾燥チャンバ210の棚212上へのバイアル220,250の初期の装填は、個々の製品条件(状態)測定モジュール227の位置が既知であり、かつ一覧化されるように実施される。充填トラックを用いる自動充填システムでは、トラックに沿った位置を凍結乾燥チャンバ210内の棚上の位置に対して追尾できる。測定処理モジュール230による測定値を受信すると、固有コードがチャンバ210内の識別された製品条件(状態)測定ユニット201の位置に対して相互的に関連され、分析とプロセス制御のために、受信した製品条件(状態)測定値のその位置へのマッピングを可能としている。
【0039】
測定処理モジュール230からの処理済み測定データは、他のモジュールに送信されて使用される。例えば、データは、温度データに基づく、凍結乾燥プロセスのリアルタイム制御のために、プロセス制御モジュール235に送信されてもよい。ひとたびプロセスが完了し、チャンバが大気圧に戻されると、同一のセンサ228で測定されたデータは、破壊試験を利用せずに、製品内の残留水分の指標としての湿度をマッッピングするために使用し得る。択一的には、温度データおよび湿度データは、プロセス開発、スケールアップおよび品質分析のために、データ分析モジュールに転送されてもよい。
【0040】
本明細書で説明される技術は、部分的には、記載された処理機器と共に使用される個別プロセッサ、産業用コントローラ、またはコンピュータによって実行されてもよい。例えば、プロセス制御モジュール235は、バルブ、モータなどのための操作ロジックを有するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に常駐してもよい。測定処理モジュール230は、パーソナルコンピュータ(PC)またはPLCまたはその両方に常駐してもよい。製品条件(状態)測定ユニット201との通信は、測定処理モジュールをサンプリングし、受信した情報をホストPCに転送するファームウェアと、一体型通信アンテナとを含むUSB ANT(登録商標)プラグインモジュールによって操作してもよい。このようなモジュールは、ノルウェーのオスロのノルディック・セミコンダクタ(Nordic Semiconductor)(登録商標)から入手できるような単一チップANT(商標)接続性ICを利用してもよい。データ取得は、択一的に、他の専用装置によって、またはタブレットまたはスマートフォンなどの標準装置の短距離通信機能を使用することによって実行されてもよい。
【0041】
測定ユニット201、ならびにPLCおよびPCは、それぞれ中央処理装置(CPU)およびメモリを含む。PLCとPCはまた、バスを介してCPUに接続される入力/出力インターフェースを備える。PLCは、典型的には、入力/出力インターフェースを介して処理機器に接続され、温度、位置、速度、流量などの装置の様々な条件(状態)を監視するセンサからデータを受信する。また、PLCは、棚212内の機器の一部の装置であって、真空ポンプ150(図1)および熱流体循環部のような装置を作動させるために接続される。
【0042】
メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)を含んでよい。メモリはまた、ディスクドライブ、テープドライブ、サムドライブなどの取外し可能媒体、またはそれらの組み合わせを含んでよい。RAMは、CPUのプログラムの実行中に使用されるデータを格納するデータメモリとして機能し、作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行される各ステップを含むプログラムを記憶するためのプログラムメモリとして機能してもよい。プログラムは、ROMに常駐してもよく、また本明細書に開示される方法を実施するCPUまたは他のプロセッサが実行するために格納されたコンピュータ可読命令として、取外し可能媒体上又は任意の他の有形かつ非一時的コンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、1つ以上のプロセッサに命令を提供するか、または其の提供に関与する有形の非一時的機械符号化媒体を指す。例えば、コンピュータ可読媒体は、1つ以上の光または磁気メモリディスク、フラッシュドライブおよびカード、リードオンリーメモリ、または典型的にはメインメモリを構成するDRAMなどのランダムアクセスメモリであってもよい。「有形の媒体」および「非一時的な媒体」という用語はそれぞれ、有形でもなく非一時的でもない伝搬信号を排除する。キャッシュされた情報は、コンピュータ可読媒体に記憶されると考えられる。コンピュータ可読媒体の一般的な手段は、当該技術において周知であるので、本明細書ではより詳細に説明する必要はない。
【0044】
製品条件(状態)測定ユニット201は、無線周波数環境発電ボード266を介して無線で給電される。無線周波数電力信号264は、無線周波数電力信号源260によって生成され、チャンバ内の給電アンテナ262を使用してチャンバ210内で送信される。多数の測定ユニットに電力を供給し、すべての測定ユニット201との視線通信を確立するために、多数の電力供給アンテナ262をチャンバ内で使用してもよい。測定ユニット201の無線高周波電力の使用で、凍結乾燥プロセスにおいて双方とも問題となる電源線と電池の必要性が排除される。測定ユニット201の通信と電力供給の双方が無線で行われるため、凍結乾燥チャンバ内の測定バイアルの位置が追尾されて、測定ユニットの固有のIDコードと関連付けられる自動的装填システムに於いて、これら測定ユニットを使用してもよい。
【0045】
図4に示すプロセス制御設備400は、図4は、バイアルのサブセットにおける温度などの製品条件(状態)を測定し、また凍結乾燥プロセスを制御するための製品条件(状態)測定ユニットの利用を実証する。図4に示すバイアル450のバッチのうち、4個のバイアル220のみに製品条件(状態)測定ユニット201が取り付けられる。バッチ450の残留バイアル250には、閉塞用途に作られた市販のストッパのような標準的なクロージャ252が取り付けられている。
【0046】
凍結乾燥チャンバ内の測定ユニット201の位置は、履歴測定データまたはチャンバの定性的特性に基づいて選択してもよい。周知のように、例えば、チャンバ内の一定の場所は、プロセス開発中に収集されたデータに基づき、または過去の生産データに基づき、凍結乾燥サイクル中の最暖温バイアル又は最冷温バイアルを含む、またはバッチ450の最も代表的なバイアルを含むことが予期される。これらの場所のバイアルには、測定ユニット201が取り付けられている。測定ユニット201が取り付けられたバイアル220で取得された測定値は、バイアルのバッチ450全体の処理条件(状態)を制御するために使用される。
【0047】
センサ228からの測定データは、測定ユニット201から測定処理モジュール230に無線送信される。各測定ユニット201について、送信されたデータは、測定値が取得されたチャンバ(行、列およびシェルフ)内の位置を探索するために測定処理ユニット230によって使用される固有のIDコードを含む。
【0048】
処理済みデータは、その後、プロセスコントローラ235に送信される。バイアル220から受信した測定データを使用して、プロセスコントローラ235は、バッチ450内の全てのバイアル中の製品条件(状態)プロファイルを最適化するために、凍結乾燥プロセスをリアルタイムで制御することができる。設備400において、プロセスコントローラ235は、凍結乾燥チャンバ内の棚212への熱伝達流体の流れを制御する、これにより支持されたバイアルへの熱伝達を制御する。例えば、チャンバ内の1以上のバイアル220内の温度に基づいて、棚への熱伝達流体の全体的な流れを制御してもよい。チャンバ内の最暖温バイアルに基づいて、チャンバ内の全体的な棚温度を低下させてもよい。
【0049】
別の実施例では、個々の棚または個々の棚領域への熱伝達流体の流れは個別に制御される。特定の棚上のバイアル内で、プロセス全体の速度よりも遅い速度で昇華が起こっていることが判明した場合、その特定の棚または領域への熱伝達流体の流速またはその温度は、その棚から支持されたバイアルへの熱伝達率を高めるように、またこれらのバイアルの昇華速度をプロセス全体に合わせて戻すように調整されてもよい。
【0050】
密に配置された容量性センサ228は、バイアル220内の製品充填に沿った勾配の正確な測定を可能にするためにプローブ226(図3)に沿って配分される。各プローブは、最大7個以上の容量センサを含み、多数の測定ユニット201(最大理論限界値232)を、凍結乾燥チャンバ内の数万個のバイアルの負荷マトリクス全体にわたって、配置してもよい。
【0051】
製品が乾燥するにつれて、昇華最前部510は、乾燥ベクトル483(図4)に沿ってバイアルを通って伝播する。各バイアルにおいて、昇華最前部510は、凍結水を含む凍結製品481を凍結乾燥プロセスが完了した乾燥製品482から分離する。凍結乾燥プロセスが進行するにつれて、溶媒蒸気の物質移動に対する、発現した抵抗の増加により、最前部の温度が上昇する。昇華最前部を追尾することは、プロセスの特徴化にとって重要な、乾燥の終了または製品の均一性の特徴化を定量化するためには、有用なプロセス分析技術となり得る。昇華最前部の位置は、測定ユニット201が取り付けられたバイアル220内でのみ測定されるが、バッチ450全体の処理条件(状態)は、これらの測定値に基づいて制御されてもよい。
【0052】
現在の技術では、プローブ上の単一の温度ポイントのみの測定が許容されるが、此れは翻って、プロセスの終了近傍まで測定が氷界面に無いため、控えめなプロセス制御に至ることとなる。対照的に、本明細書に記載の技術は、製品充填に伴って高い空間分解能温度プロファイルを提供することができる。その特性は、処理中に昇華最前部を正確に位置決めする際に効果的に利用され得る。
【0053】
図5に示す実施例プロセス501では、昇華最前部510が乾燥ベクトル483に沿って伝播している。昇華最前部510は、凍結乾燥プロセス中に、凍結製品481を乾燥製品482から分離する。グラフ550は、所与の時間tにおけるセンサ228からの製品条件(状態)測定値の理論上の単一走査を示す。図示の例では、冷凍製品481内の温度プロファイル551は、棚212により近傍のセンサによって測定されたより高い温度を示しており、かつ昇華最前部510を表すライン553に向かって低下する温度を示している。他方、乾燥製品482の温度プロファイル552は、下部の凍結製品からの距離に従って上昇している。グラフ550に示される温度プロファイルは単なる例示であり、所与のプロセスに対する正確なプロファイルは、異なるプロセス速度、異なる製品タイプ、および異なるバイアル配置構成に対して変化するであろう。
【0054】
バイアル内の乾燥ベクターに沿った温度プロファイルの分析により、昇華最前部の位置の確定がなされるであろう。分析には、例えば、最大値、最小値、変曲点、不連続性、または別のパラメータの決定することを含み得る。
【0055】
現在の通信技術を使用して、センサは1マイクロ秒当たり最大1サンプルの速度でサンプリングされ得る。プロファイルに沿った温度変化の最大率または最小率を決定するため、または昇華最前部の位置を特定するために使用され得る別の時間領域パラメータを決定するために、所与のプローブの多数サンプルを経時的に使用してもよい。したがって、特定のプロセスにおける昇華最前部の位置は、プロファイルに基づくパラメータ、速度に基づくパラメータ、または温度測定から導き出された別のパラメータを使用して、確定し得る。特定のプロセスで使用する最良のパラメータは、実験的に決定し得る。
【0056】
乾燥ベクトルに沿った昇華最前部の伝播速度を決定してよく、またプロセスを制御するために使用してもよい。
【0057】
さらに、同一の感知装置は、プロセス終了(大気圧)監視ツールとして、各プローブ上の同一の容量性センサを使用することで湿度を測定することができる。例えば、ひとたび凍結乾燥プロセスが完了すると(且つ大気圧に戻す)、プローブ中の各センサによって製品中の湿度が測定され、バイアル内の製品の残留水分プロファイルが生成される。これは、残留水分を測定するために現在使用されている技術よりも大幅に改善されている。そのような既知の技術の1つでは、バイアル中の全製品に対する全体的な平均残留水分を、乾燥減量技術またはカールフィッシャー滴定技術のような分析技術を用いた破壊試験として、製造プロセス後に測定する。製品が載置される棚を横断する熱伝達が変化するため、残留水分には位置依存性がある。結果として、その熱伝達の変化を理解するために、典型的な開発サイクルで多数サンプルを採取するものとする。このような計装とその使用は高価で時間がかかる。本明細書に記載されている当該技術の利用は、このような残留湿気試験に関連するコストと時間の双方の低減に有用となろう。
【0058】
本開示の実施の形態は、図6を参照して説明される凍結溶媒を含有する製品を凍結乾燥する方法600を含む。この製品は、バイアル開口部を有する複数のバイアル内に存在して、凍結乾燥チャンバ内に配置される。
【0059】
製品を、凍結溶媒を昇華させる処理条件(状態)に供する(工程610)。真空圧に加えて、これらの条件(状態)は、典型的には、低温条件(状態)、および昇華のためのエネルギーを提供するためのバイアルへの熱伝達を含む。
【0060】
複数バイアルのサブセットは、凍結乾燥チャンバ内での測定の空間サンプリングを提供するように選択されてもよい。このサブセットは、例えば、チャンバ内の予想される最暖温バイアルと最冷温バイアルを含む様に選定されてもよい。凍結乾燥プロセス中において、製品が処理条件(状態)に供されている時に、製品内に延在する単一の伸長測定プローブに沿って配置された製品条件(状態)センサの、2mm未満のピッチを有する線形アレイを使用して昇華最前部の位置が測定される(工程620)。昇華最前部の位置は、製品状態センサのアレイを使用して生成された高空間分解能温度プロファイルに基づいて測定してもよい。
【0061】
そして、昇華最前部の測定位置に基づいて、チャンバ内のプロセス条件(状態)が制御される(工程630)。例えば、複数の製品バイアルは、棚に支持されたバイアルに熱を伝達するための調整可能な熱伝達システムを有する複数の棚上に配置されてもよい。そして、温度および圧力条件(状態)は、棚への熱伝達流体の全体流を調整することによって、昇華最前部の測定位置に基づいて制御してもよく、あるいは特定の棚上に位置決めされたバイアル内の昇華最前部の測定位置に基づいて、特定の棚から支持バイアルへの熱伝達を個々に調整することによって、制御してもよい。
【0062】
一の実施の形態では、次いで製品は周囲条件(状態)に戻され(工程640)、製品が周囲条件(状態)に供されている間、製品条件(状態)センサの線形アレイを使用して製品の湿度プロファイルが測定される(工程650)。その測定値は、例えば、製品が保持する残留水分を決定し、それによってプロセスの有効性を評価するために使用され得る。
【0063】
提案の解決法では、最適条件(状態)を維持するために、マルチネットワーク機能性を利用して、導入した多数のプローブを同時に監視し、最暖温プローブに基づく、あるいはチャンバ全体からの読取り値の空間分析に基づいてバイアルへの熱伝達率などのプロセス条件(状態)を調整する。システムはまた、センサ毎に、昇華最前部の通過に関連する急速な温度移動を検出し、出力に基づいてプロセス制御を調整する。
【0064】
本明細書で説明された製品条件(状態)検知システムの別の確認済み用途は、バリアシステム内の温度および湿度を監視することが重要な環境アイソレータなどの製薬用途に於けるものである。アイソレータは、完全閉鎖環境に対して、人間が処理領域に直接介入することを最小限に抑えつつ機械を分離し得る専用の空気回路構成を、提供するものである。現在のところ、本開示で提案されているような、低い空間分解能で温度および湿度を測定する効率的な手段はない。本明細書で説明されている無線湿度/温度感知装置は、大気圧(大気圧+/− 25Pa)またはその近傍で動作するような用途に有用である。
【0065】
特に、温度と湿度のための単一の静電容量性センサの別々の較正値を利用することにより、温度と湿度を空間の単一点で同時に測定することができる。測定精度を高めるために、アレイ内の多数センサを平均化してもよい。
【0066】
本発明の教示を包含する多様な実施の形態を本明細書で詳細に例示かつ説明したが、当業者はこれらの教示を従前通り包含するその他多種多様な実施の形態を容易に考案することができであろう。本発明は、その適用において、明細書説明に記載の、若しくは図面に例示の構成要素の構成と配置について、好適な実施の形態の詳細に限定されない。本発明は、他の実施の形態が実施可能であり、様々な方法で実行可能、または実施可能である。また、本明細書で使用する語法および用語は、説明目的のためのものであり、限定するものと見なすべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む」「備える」または「有する」およびそれらの変形等を使用することは、その後に列挙される項目およびその等価物ならびに追加項目を包含することを意味する。特段に特定されないまたは限定されない限り、用語「搭載された」、「接続された」、「支持された」および「結合された」およびそれらの変形は広義に用いられ、直接的および間接的な搭載、接続、支持および結合を包含する。さらに、「接続された」および「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6