特許第6718905号(P6718905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6718905
(24)【登録日】2020年6月17日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】リチウムイオンキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/64 20130101AFI20200629BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200629BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20200629BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20200629BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20200629BHJP
【FI】
   H01G11/64
   H01M10/052
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M10/0569
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-55207(P2018-55207)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2019-169564(P2019-169564A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2018年10月16日
【審判番号】不服2019-5614(P2019-5614/J1)
【審判請求日】2019年4月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】続木 武男
【合議体】
【審判長】 五十嵐 努
【審判官】 國分 直樹
【審判官】 石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−218910(JP,A)
【文献】 特開2003−168427(JP,A)
【文献】 特開2007−165125(JP,A)
【文献】 特開2011−204828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/64
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極がセパレータを介して積層された蓄電素子と、
前記正極の活物質および前記負極の活物質、または前記セパレータに含浸された電解液とを有し、
前記電解液は、
環状カーボネートの溶媒と、
前記溶媒に電解質として添加され、かつ前記溶媒に対する添加量が0.8mol/L以上1.6mol/L以下のLiPFと、
前記電解液に対する添加量が0.1wt%以上5.0wt%以下エチルメチルカーボネートと、
前記電解液に対する添加量が0.1wt%以上1.0wt%以下のビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとからなることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液を用いた電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の電気化学デバイスは、溶媒の電気分解電圧が高いために耐電圧を高くすることができ、大きなエネルギーを蓄えることが可能である。
【0003】
近年、電気化学デバイスは、高温状態における信頼性の確保が求められている。高温信頼性に関しては、電解質であるPF等のアニオンが分解してフッ化水素等の分解物が発生する、電解液が負極近傍で還元分解して高抵抗な被膜を形成する等により、セルの諸特性が悪化していると考えられている。
【0004】
上記問題を解決するために、例えば特許文献1は、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)とリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)とを一定の割合で混合した電解液を用いたリチウムイオン電池を開示している。特許文献2は、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)に、高温貯蔵特性を向上させるために一部LiBFを加えた電解液を用いたリチウムイオン電池を開示している。特許文献3は、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとの混合溶媒を用いた電解液にメチレンビススルホネート誘導体を添加することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性や短期間の高温保持試験後の特性が改善できる電解液を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−236990号公報
【特許文献2】特開2003−346898号公報
【特許文献3】国際公開第2012/017999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにLiBFとLiBETIとを一定の比率で混合した電解液を用いると、電解質の耐熱性の高さとLiBETIの電気伝導度の高さから、LiPFを電解質とした電解液と比べて高温における電解液の安定性は向上するものの、LiBETIは正極電位が4V(vs Li/Li)付近で集電箔(アルミニウム)を腐食するため、長期信頼性に課題がある。
【0007】
特許文献2では、LiPFに一部LiBFを混合した電解液を用いて高温貯蔵後の電池の劣化を抑制することが開示されているが、高温(60℃)ではLiPFがあまり熱分解しないために効果があっても、85℃の環境ではLiPFの熱分解が無視できなくなり、電池の信頼性の向上は見込めない。
【0008】
特許文献3では、長期間にわたって高温保持すると、負極表面の皮膜がさらに形成される点、電解液の分解などが起こる点などの問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり高温信頼性を向上させることができるリチウムイオンキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリチウムイオンキャパシタは、正極および負極がセパレータを介して積層された蓄電素子と、前記正極の活物質および前記負極の活物質、または前記セパレータに含浸された電解液とを有し、前記電解液は、環状カーボネートの溶媒と、前記溶媒に電解質として添加され、かつ前記溶媒に対する添加量が0.8mol/L以上1.6mol/L以下のLiPFと、前記電解液に対する添加量が0.1wt%以上5.0wt%以下エチルメチルカーボネートと、前記電解液に対する添加量が0.1wt%以上1.0wt%以下のビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リチウムイオンキャパシタの高温信頼性を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リチウムイオンキャパシタの分解図である。
図2】正極、負極およびセパレータの積層方向の断面図である。
図3】リチウムイオンキャパシタの分解図である。
図4】リチウムイオンキャパシタの外観図である。
図5】試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0020】
(実施形態)
まず、電気化学デバイスの一例として、リチウムイオンキャパシタについて説明する。図1は、リチウムイオンキャパシタ100の分解図である。図1で例示するように、リチウムイオンキャパシタ100は、正極10および負極20がセパレータ30を介して捲回された構造を有する蓄電素子50を備える。蓄電素子50は、略円柱形状を有している。正極10には、引出端子41が接続されている。引出端子42は、負極20に接続されている。
【0021】
図2は、正極10、負極20およびセパレータ30の積層方向の断面図である。図2で例示するように、正極10は、正極集電体11の一面に正極電極層12が積層された構造を有している。正極10の正極電極層12上に、セパレータ30が積層されている。セパレータ30上に、負極20が積層されている。負極20は、負極集電体21の正極10側の面に負極電極層22が積層された構造を有している。負極20の負極集電体21上に、セパレータ30が積層されている。蓄電素子50においては、これらの正極10、セパレータ30、負極20およびセパレータ30の積層単位が捲回されている。なお、正極電極層12は、正極集電体11の両面に設けられていてもよい。負極電極層22は、負極集電体21の両面に設けられていてもよい。
【0022】
図3で例示するように、蓄電素子50と略同一の径を有する略円柱形状の封口ゴム60の2つの貫通孔に引出端子41および引出端子42がそれぞれ挿入されている。また、蓄電素子50は、有底の略円筒形状の容器70内に収容されている。図4で例示するように、封口ゴム60が容器70の開口周辺でかしめられている。それにより、蓄電素子50の密封性が保たれている。非水電解液は、容器70内に封入され、正極10の活物質および負極20の活物質、またはセパレータ30に含浸されている。
【0023】
(正極)
正極集電体11は、金属箔であり、例えばアルミニウム箔などである。このアルミニウム箔は、孔空き箔であってもよい。正極電極層12は、電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタの電極層に用いられる公知の材質及び構造を有していればよく、例えばポリアセン(PAS)、ポリアニリン(PAN)、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の活物質を含有し、電気二重層キャパシタ等の電極層に用いられる導電助剤やバインダ等の他の成分も必要に応じて含有している。
【0024】
(負極)
負極集電体21は、金属箔であり、例えば銅箔などである。この銅箔は、孔空き箔であってもよい。負極電極層22は、例えば難黒鉛化炭素、グラファイト、錫酸化物、珪素酸化物等の活物質を含有し、カーボンブラックや金属粉末等の導電助剤や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のバインダも必要に応じて含有している。
【0025】
(セパレータ)
セパレータ30は、例えば、正極10と負極20との間に設けられることにより、これら両電極の接触に伴う短絡を防止する。セパレータ30は、空孔内に非水電解液を保持することにより、電極間の導電経路を形成する。セパレータ30の材質としては、例えば、多孔性の、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系樹脂等を用いることができる。
【0026】
なお、蓄電素子50と非水電解液を容器70内に封入する際に、リチウム金属シートを負極20と電気的に接続する。これにより、リチウム金属シートのリチウムが非水電解液内に溶解するとともに、リチウムイオンが負極20の負極電極層22にプレドープされる。これにより、充電前の状態で負極20の電位が正極10の電位に比べて例えば3V程度低くなる。
【0027】
また、本実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ100は、捲回構造の蓄電素子50が円筒型の容器70に封入された構造を有しているが、それに限られない。例えば、蓄電素子50は、積層構造を有していてもよい。また、この場合の容器70は、角型の缶等であってもよい。
【0028】
(非水電解液)
非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解させ、さらに添加剤を加えて作製することができる。まず、非水溶媒として、環状カーボネートを用いる。環状カーボネートは、環状炭酸エステルである炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)等である。環状炭酸エステルは、高い誘電率を有しているため、リチウム塩を良く溶かす性質を有している。また、環状炭酸エステルを非水溶媒に用いた非水電解液は、高いイオン電導度を有している。したがって、環状カーボネートを非水溶媒として用いると、リチウムイオンキャパシタ100の初期特性が良好となる。また、環状カーボネートを非水溶媒として用いた場合、負極20上に被膜が形成された後は、リチウムイオンキャパシタ100の動作時の十分な電気化学的安定性が実現される。
【0029】
電解質には、リチウム塩であるLiPFを用いる。LiPFは、汎用的なリチウム塩の中でも高い解離度を有しているため、リチウムイオンキャパシタ100の良好な初期特性(容量およびDCR)を実現する。非水電解液における電解質の濃度(電解液濃度)が高すぎると、電解液の粘度が上昇するために、必要な量のイオンが電極に供給されるまでに時間がかかるため、初期内部抵抗が上昇するおそれがある。一方、電解液濃度が低すぎると、必要な量のイオンが電極に供給されなくなる、もしくは供給されるまでに時間がかかるために、初期容量が低下し初期内部抵抗が上昇するおそれがある。そこで、電解液濃度に、上限および下限を設ける。本実施形態においては、電解液濃度を0.8mol/L以上1.6mol/L以下とする。電解液濃度は、1.0mol/L以上1.4mol/L以下であることが好ましい。なお、本実施形態においては、電解質にLiBFTIを用いないため、正極10の腐食が抑制される。
【0030】
(第1添加剤)
非水電解液に添加する第1添加剤として、鎖状カーボネートを用いる。鎖状カーボネートを用いるのは、リチウムイオンキャパシタ100が高温に晒された場合の容量維持率を高くし、内部抵抗変化を小さくするためである。これは、鎖状カーボネートを電解液に少量添加する事で電解液の粘度が低下し、その結果、被膜形成材が負極20により均一に作用して、更に薄く均質で強固な被膜が形成されるからであると考えられる。鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等を用いることができる。これらを組み合わせて第1添加剤として用いてもよい。非水電解液における第1添加剤の濃度が低すぎると、第1添加剤の効果を十分に得ることが困難となる。そこで、非水電解液における第1添加剤の濃度に下限を設ける。一方、非水電解液における第1添加剤の濃度が高すぎると、電解液中のLiPFの解離が妨げられ、高温でLiPFの熱分解が促進されるおそれがある。そこで、非水電解液における第1添加剤の濃度に上限を設ける。本実施形態においては、非水電解液における第1添加剤の濃度は、0.1wt%以上10.0wt%未満とする。なお、非水電解液における第1添加剤の濃度は、9.0wt%以下であることが好ましく、5.0wt%以下であることがより好ましい。また、非水電解液における第1添加剤の濃度は、0.5wt%以上であることが好ましく、1.0wt%以上であることがより好ましい。
【0031】
(第2添加剤)
リチウムイオンキャパシタ100が高温に晒された場合の内部抵抗変化をさらに小さくするために、第1添加剤の他に、さらに炭酸エステル、スルホン酸エステル、およびリチウムのオキサラト錯体塩の少なくともいずれかを第2添加剤として添加してもよい。この第2添加剤は、非水電解液の非水溶媒よりも還元電位が高く、負極20に作用して安定な被膜を形成する。炭酸エステルとして、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等を用いることができる。スルホン酸エステルとして、ビス(エタンスルホン酸)メチレン(MBES)等を用いることができる。リチウムのオキサラト錯体塩として、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiPF(C)、テトラフルオロオキサラトリン酸リチウム(LiPF(C))等を用いることができる。第2添加剤の効果を十分に得るために、第2添加剤濃度に下限を設けることが好ましい。一方、非水電解液における第2添加剤濃度が高すぎると、負極20上に厚い被膜が形成されるために初期の内部抵抗が高くなり、また内部抵抗変化も大きくなるおそれがある。そこで、非水電解液における第2添加剤濃度に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、非水電解液における第2添加剤濃度は、0.1wt%以上であることが好ましく、0.2wt%以上であることがより好ましく、0.5wt%以上であることがさらに好ましい。また、非水電解液における第2添加剤濃度は、5.0wt%以下であることが好ましく、3.0wt%以下であることがより好ましく、1.0wt%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態においては、環状カーボネートを非水溶媒とし、0.8mol/L以上1.6mol/L以下のLiPFを電解質とする非水電解液において、非水電解液に対する添加量が0.1wt%以上10.0wt%未満の鎖状カーボネートを含むことから、リチウムイオンキャパシタ100を高温に晒した場合であっても、良好な容量維持率が得られるとともに、内部抵抗変化を十分に低減できる。したがって、高温信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、電気化学デバイスとしてリチウムイオンキャパシタの電解液に着目したが、それに限られない。例えば、本実施形態に係る非水電解液を、電気二重層キャパシタなどの他の電気化学デバイスの電解液として用いることもできる。
【実施例】
【0034】
上記実施形態に従って、リチウムイオンキャパシタを作製し、特性について調べた。
【0035】
(実施例1)
正極10の活物質として、PASを用いた。カルボキシメチルセルロースおよびスチレンブタジエンゴムをバインダとしてスラリを調製し、調製されたスラリを孔空き加工の施されたアルミ箔上に塗布してシート状に作製した。負極20の活物質として、フェノール樹脂原料から成る難黒鉛化炭素を用いた。カルボキシメチルセルロースおよびスチレンブタジエンゴムをバインダとしてスラリを調製し、調製されたスラリを孔空き加工の施された銅箔上に塗布してシート状に作製した。これらの電極間にセルロース系のセパレータ30を挟み、超音波溶接により引出端子41を正極集電体11に取り付け、引出端子42を負極集電体21に取り付けてからこれらを捲回し、ポリイミドの粘着テープで蓄電素子50を固定した。作製した蓄電素子50に封口ゴム60を取付けて約180℃で真空乾燥した後、負極20にリチウム箔を貼りつけ、蓄電素子50を容器70に入れた。その後、PC(100vol%)にLiPFを溶解した溶液(1.10mol/L)に対して、第1添加剤としてEMCを3.0wt%添加し、さらに第2添加剤としてVCを0.1wt%添加し、得られた非水電解液を容器70に注入した後、封口ゴム60の部分をかしめることで、リチウムイオンキャパシタ100を作製した。
【0036】
(実施例2)
実施例2では、VCの添加量を0.5wt%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0037】
(実施例3)
実施例3では、VCの添加量を1.0wt%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0038】
(実施例4)
実施例4では、EMCの添加量を0.1wt%とした。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0039】
(実施例5)
実施例5では、EMCの添加量を1.0wt%とした。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0040】
(実施例6)
実施例6では、EMCの添加量を5.0wt%とした。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0041】
(実施例7)
実施例7では、EMCの添加量を9.0wt%とした。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0042】
(実施例8)
実施例8では、EMCの代わりにDMCを3.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0043】
(実施例9)
実施例9では、EMCの代わりにDECを3.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0044】
(実施例10)
実施例10では、非水溶媒としてPC(80vol%)およびEC(20vol%)を用いた。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0045】
(実施例11)
実施例11では、VCの代わりにFECを1.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0046】
(実施例12)
実施例12では、VCの代わりにFECを3.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0047】
(実施例13)
実施例13では、VCの代わりにFECを5.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0048】
(実施例14)
実施例14では、VCの代わりにMBESを1.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0049】
(実施例15)
実施例15では、VCの代わりにLiB(Cを1.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0050】
(実施例16)
実施例16では、VCの代わりにLiPF(Cを1.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0051】
(実施例17)
実施例17では、VCの代わりにLiPF(C)を1.0wt%添加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0052】
(実施例18)
実施例18では、EMCの代わりにDMCを3.0wt%添加し、第2添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0053】
(実施例19)
実施例19では、第2添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0054】
(実施例20)
実施例20では、EMCの代わりにDECを3.0wt%添加し、第2添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、第1添加剤も第2添加剤も添加しなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0056】
(比較例2)
比較例2では、第1添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0057】
(比較例3)
比較例3では、第1添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例11と同様とした。
【0058】
(比較例4)
比較例4では、第1添加剤を添加しなかった。その他の条件は、実施例14と同様とした。
【0059】
(比較例5)
比較例5では、EMCの添加量を18.0wt%とした。その他の条件は、実施例3と同様とした。
【0060】
(評価方法)
実施例1〜20および比較例1〜5のリチウムイオンキャパシタを作製後、初期特性として、室温における静電容量及び内部抵抗を測定した。その後、85℃の恒温槽中で3.8Vの電圧で1000時間連続充電するフロート試験を行った。フロート試験後、セルを室温まで放冷し、静電容量および内部抵抗を測定し、試験前後の変化率を算出した。この結果(容量維持率及び内部抵抗変化率)を図5に示す。
【0061】
(初期特性)
実施例1〜20および比較例1〜5において、初期特性における静電容量および内部抵抗は、良好な値を示した。これは、環状カーボネートを非水溶媒とし、LiPFの濃度を0.8mol/L以上1.6mol/L以下としたからであると考えられる。なお、実施例4〜7の結果からすると、第1添加剤の添加量が多くなるほど、初期の内部抵抗が低くなることが確認された。
【0062】
(高温信頼性)
比較例1では、容量維持率が低くなり、内部抵抗変化率が大きくなった。これは、実施例1と比較例1との比較結果から、非水電解液に第1添加剤も第2添加剤も添加しなかったからであると考えられる。次に、比較例2では、比較例1との比較において容量維持率の低下および内部抵抗変化率の増加は抑制されたものの、内部抵抗変化率は200%以上であり十分に小さくならなかった。これは、実施例3と比較例2との比較結果から、非水電解液に第1添加剤を添加しなかったからであると考えられる。次に、比較例3では、比較例1との比較において容量維持率の低下および内部抵抗変化率の増加は抑制されたものの、内部抵抗変化率は200%以上であり十分に小さくならなかった。これは、実施例11と比較例3との比較結果から、非水電解液に第1添加剤を添加しなかったからであると考えられる。次に、比較例4では、比較例1との比較において容量維持率の低下および内部抵抗変化率の増加は抑制されたものの、内部抵抗変化率は200%以上であり十分に小さくならなかった。これは、実施例14と比較例4との比較結果から、非水電解液に第1添加剤を添加しなかったからであると考えられる。次に、比較例5では、容量維持率が低くなった。これは、実施例3と比較例5との比較結果から、第1添加剤の添加量が多すぎたためであると考えられる。
【0063】
これらに対して、実施例1〜実施例20では、容量維持率の低下が抑制されるとともに、内部抵抗変化率が十分に小さくなった(200%未満)。これは、環状カーボネートを非水溶媒とし、0.8mol/L以上1.6mol/L以下のLiPFを電解質とする非水電解液において、非水電解液に対する添加量が0.1wt%以上10.0wt%未満の鎖状カーボネートを含んでいたからであると考えられる。
【0064】
なお、実施例18〜20と実施例1〜17とを比較すると、実施例1〜17では、内部抵抗変化率がより小さくなった。これは、実施例1〜17では、第2添加剤を添加したからであると考えられる。実施例1〜17と実施例18〜20との比較結果からすると、第1添加剤および第2添加剤の種類は影響していないことがわかる。
【0065】
また、実施例1〜3の各結果を比較すると、第2添加剤の添加量を0.5wt%以上とすることが好ましいことがわかる。一方で、実施例11〜13の各結果を比較すると、第2添加剤の添加量を3.0wt%以下とすることが好ましいことがわかる。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 正極
11 正極集電体
12 正極電極層
20 負極
21 負極集電体
22 負極電極層
30 セパレータ
41,42 引出端子
50 蓄電素子
60 封口ゴム
70 容器
100 リチウムイオンキャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5