特許第6718942号(P6718942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6718942故障予防装置、プレスシステム、故障予防装置の制御方法、制御プログラム、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6718942
(24)【登録日】2020年6月17日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】故障予防装置、プレスシステム、故障予防装置の制御方法、制御プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/28 20060101AFI20200629BHJP
   B30B 15/14 20060101ALI20200629BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B30B15/28 K
   B30B15/14 N
   B30B15/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-221313(P2018-221313)
(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-82144(P2020-82144A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝也
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−151352(JP,A)
【文献】 特開2017−113798(JP,A)
【文献】 特開2018−167328(JP,A)
【文献】 特開2003−117700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00 − 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機を駆動するためのサーボモータの駆動電流を計測して、該プレス機の故障を予防する故障予防装置であって、
上記サーボモータを駆動するサーボアンプから該サーボモータに供給される駆動電流の計測値を取得する計測値取得部と、
上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出部と、
上記判定用計測データと閾値とを比較して上記プレス機の故障の発生可能性を判定する故障可能性判定部と、
上記故障可能性判定部が故障の発生可能性が高いと判定した場合、その旨を通知する通知部と、を備え
上記判定用計測データ算出部は、1ショット毎の上記計測値の最大値を取得し、当該最大値の所定期間における平均値または最大値を上記判定用計測データとして算出することを特徴とする故障予防装置。
【請求項2】
上記判定用計測データの時系列変化を表示させる表示制御部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の故障予防装置。
【請求項3】
上記通知部は、故障の発生可能性が高い旨の通知をユーザに対して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の故障予防装置。
【請求項4】
上記通知部は、ユーザに提示するための外部の装置に故障の発生可能性が高い旨の通知を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の故障予防装置。
【請求項5】
プレス機と、該プレス機に備えられたサーボモータの駆動電流の計測値を取得する計測装置と、該計測値から算出された判定用計測データを用いて上記プレス機の故障の発生可能性を判定し、故障の発生可能性が高いと判定した場合、その旨を通知する監視サーバとを含むプレスシステムであって、
上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出部を備え
さらに、
上記判定用計測データと閾値とを比較して上記プレス機の故障の発生可能性を判定する故障可能性判定部と、
上記故障可能性判定部が故障の発生可能性が高いと判定した場合、その旨を通知する通知部と、を備え、
上記判定用計測データ算出部は、1ショット毎の上記計測値の最大値を取得し、当該最大値の所定期間における平均値または最大値を上記判定用計測データとして算出することを特徴とするプレスシステム。
【請求項6】
プレス機を駆動するためのサーボモータの駆動電流を計測して、該プレス機の故障を予防する故障予防装置の制御方法であって、
上記サーボモータを駆動するサーボアンプから該サーボモータに供給される駆動電流の計測値を取得する計測値取得ステップと、
上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出ステップと、
上記判定用計測データと閾値とを比較して上記プレス機の故障の発生可能性を判定する故障可能性判定ステップと、
上記故障可能性判定ステップで故障の発生可能性が高いと判定した場合、その旨を通知する通知ステップと、を含み、
上記判定用計測データ算出ステップでは、1ショット毎の上記計測値の最大値を取得し、当該最大値の所定期間における平均値または最大値を上記判定用計測データとして算出することを特徴とする故障予防装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の故障予防装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記計測値取得部、上記判定用計測データ算出部、および上記故障可能性判定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項8】
請求項記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機の故障を予防する故障予防装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属等の加工において、プレス機械等の加工機械が用いられている。プレス機械は、スライドに金型を装着し、金型により鉄板等の被加工部材がプレスされることにより成果物が生成される。プレス機械は大掛かりなものが多く、仮にプレス機械が何らかの異常により損傷した場合、その復旧には相当な手間と時間を要する。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、プレス機械の各部の状態を検出することにより、プレス機械を総合的に保全するシステムが記載されている。具体的には、プレス機械の各部に設けられ、各部の状態を検出するための複数のセンサと、各センサの検出値をモニタし、予め設定された基準値との比較から検出値が異常レベルの場合にアラーム信号を出力するモニタ装置と、モニタ装置からのアラーム信号に基づいて各異常内容を表示する表示装置と、モニタ装置に対して、各センサの検出値のモニタタイミングを指定するタイミング指定手段とを備えたプレス機械用予知保全システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、荷重異常を早期に検出して金型破損を防止するサーボプレスの金型保護装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−162000号公報(1993年6月29日公開)
【特許文献2】特開平11−58099号公報(1999年3月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にはモニタリングユニットにより各種センサからのセンシングデータを取得することが記載されているのみであり、その具体的な方法までは記載されていない。よって、さらに改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易かつ的確にプレス機の故障を予防できる故障予防装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る故障予防装置は、プレス機を駆動するためのサーボモータの駆動電流を計測して、該プレス機の故障を予防する故障予防装置であって、上記サーボモータを駆動するサーボアンプから該サーボモータに供給される駆動電流の計測値を取得する計測値取得部と、上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出部と、上記判定用計測データと閾値とを比較して上記プレス機の故障の発生可能性を判定する故障可能性判定部と、上記故障可能性判定部が故障の発生可能性が有ると判定した場合、その旨を通知する通知部と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、サーボモータを駆動するサーボアンプから供給される駆動電流を計測して故障の発生可能性を判定する。そして、サーボアンプから供給される駆動電流の測定は容易かつ確実なので、容易な処理で、かつ的確にプレス機の故障の発生可能性を判定することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る故障予防装置では、上記判定用計測データ算出部は、1ショット毎の上記計測値の最大値を取得し、当該最大値の所定期間における平均値または最大値を判定用計測データとして算出するものであってもよい。
【0011】
上記の構成によれば、プレス機の故障の発生可能性の判定に、駆動電流値をそのまま用いるのではなく、1ショットにおける駆動電流値の最大値の所定期間における平均値または最大値を用いる。これにより、駆動電流値をそのまま用いるよりも処理負荷を軽減できる。また、本来であれば無視できるにもかかわらず、何らかの理由により駆動電流値が一時的に異常な値になったときに直ちに警告を発してしまうことを防止することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る故障予防装置では、上記判定用計測データの時系列変化を表示させる表示制御部を備えているものであってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、作業者に対し、時系列で判定用計測データを視覚的に確認させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る故障予防装置では、上記通知部は、故障の発生可能性が高い旨の通知をユーザに対して行うものであってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、故障の発生可能性が高いことを故障予防装置から直接、ユーザに通知することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る故障予防装置では、上記通知部は、ユーザに提示するための外部の装置に故障の発生可能性が高い旨の通知を行うものであってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、故障予防装置を、プレス機とユーザに提示するための外部装置とを介する装置(例えば、管理サーバ)として用いることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプレスシステムは、プレス機と、該プレス機に備えられたサーボモータの駆動電流の計測値を取得する計測装置と、該計測値から算出された判定用計測データを用いて上記プレス機の故障の発生可能性を判定し、故障の発生可能性が高いと判定した場合、その旨を通知する監視サーバとを含むプレスシステムであって、上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出部を備えていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、サーボモータを駆動するサーボアンプから供給される駆動電流を計測して故障の発生可能性を判定する。そして、サーボアンプから供給される駆動電流の測定は容易かつ確実なので、容易な処理で、かつ的確にプレス機の故障の発生可能性を判定することができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る故障予防装置の制御方法は、プレス機を駆動するためのサーボモータの駆動電流を計測して、該プレス機の故障を予防する故障予防装置の制御方法であって、上記サーボモータを駆動するサーボアンプから該サーボモータに供給される駆動電流の計測値を取得する計測値取得ステップと、上記計測値から上記プレス機の故障の発生可能性を判定するための判定用計測データを算出する判定用計測データ算出ステップと、上記判定用計測データと閾値とを比較して上記プレス機の故障の発生可能性を判定する故障可能性判定ステップと、上記故障可能性判定ステップで故障の発生可能性が有ると判定した場合、その旨を通知する通知ステップと、を含むことを特徴としている。
【0021】
本発明の各態様に係る故障予防装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記故障予防装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記故障予防装置をコンピュータにて実現させる故障予防装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、サーボモータを駆動するサーボアンプから供給される駆動電流を計測して故障の発生可能性を判定する。そして、サーボアンプから供給される駆動電流の測定は容易かつ確実なので、容易な処理で、かつ的確にプレス機の故障の発生可能性を判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るプレスシステムの要部構成を示す機能ブロック図である。
図2】サーボアンプの構成を示す図である。
図3】判定用計測データの表示例を示す図である。
図4】本実施形態における処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の変形例を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の変形例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔全体概要〕
まず、図1を参照して、本実施形態に係るプレスシステム100について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るプレスシステム100は、サーボプレス(プレス機)1、計測装置(故障予防装置)2、監視サーバ(故障予防装置)3、担当者端末4を含む。
【0025】
サーボプレス1は、図示しないスライド、上金型、下金型等を備え、被加工部材を下金型に位置させて、上金型をスライドとともに降下させることにより、プレス加工を行うものである。なお、本実施形態では、1回のプレス加工、すなわち、上金型をスライドとともに降下させる1回の処理を1ショットと呼ぶ。また、本実施形態では、同じ金型を同じ状態で用いた場合、同一ロットによる処理と定義する。すなわち、プレス部11に金型をセットしてから、次に金型を変更または調整(パラメータの変更等)するまでの間の処理のことを同一ロットによる処理と言う。金型の調整には、例えば、段替え、メンテナンス等が含まれる。
【0026】
加工後の被加工部材は図示されないルートで搬出される。また、プレス加工時に発生したスクラップはスクラップ排出用のスクラップシューター上に落下する。なお、図1では、プレス部11が1つの場合を例に挙げているが、プレス部11は1つに限られるものではなく2つ以上であってもよい。
【0027】
計測装置2は、サーボプレス1におけるサーボモータ12の駆動電流を取得し、後述する処理を行って判定用計測データを算出し、監視サーバ3に送信する。
【0028】
監視サーバ3は、計測装置2から受信した判定用計測データからサーボプレス1の故障の発生可能性を判定し、可能性があると判定した場合、その旨を担当者(ユーザ)端末4に通知する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るプレスシステム100では、サーボプレス1のサーボモータ12の駆動電流値からサーボプレス1の故障の発生可能性を判断するものである。駆動電流値が高いということはそれだけサーボモータ12の負担が大きいということになり、サーボモータ12の駆動に伴う振動も大きくなる。また、サーボモータ12により駆動されるプレス部11自体の振動も大きくなる。このような振動が継続することにより、またはこのような振動とプレス部11が共振することによりサーボプレス1そのものに故障が発生する可能性が高まる。
【0030】
本実施形態は、このような駆動電流値に着目し、駆動電流値を計測することにより、容易かつ的確にサーボプレス1の故障の発生可能性を判断するものである。
〔各装置の構成〕
次に、図1を参照してサーボプレス1、計測装置2、および監視サーバ3の要部構成について説明する。図1は、プレスシステム100の要部構成を示すブロック図である。
【0031】
〔サーボプレス1〕
図1に示すように、サーボプレス1は、プレス部11およびプレスPLC(Programmable Logic Controller)14を含む。プレス部11はサーボモータ12およびサーボアンプ13を含む。サーボアンプ13から駆動電流をサーボモータ12に供給することによりサーボモータ12を駆動し、上述したプレス加工を実現する。また、サーボモータ12を駆動させるための駆動電流の値を計測装置2に送信している。サーボアンプ13の詳細については後述する。
【0032】
また、プレスPLC14は、プレス部11の動作を制御する。
【0033】
計測装置2は、判定用計測データ算出部(計測値取得部)21および記憶部22を含む。記憶部22には、サーボアンプ13から送信された駆動電流値(計測データ)が格納されている。
【0034】
判定用計測データ算出部21は、駆動電流値を用いて、監視サーバ3が故障可能性を判定するために用いる判定用計測データを算出する。具体的には、判定用計測データ算出部21は、例えば、駆動電流値の1ショットにおける最大値を所定期間分(例えば1時間)、取得し、当該所定期間における最大値の平均値を当該所定期間における判定用計測データとしてもよい。また、当該所定期間に代えて、所定ショット数としてもよいし、当該所定期間における平均値ではなく、最大値としてもよい。そして、判定用計測データ算出部21は、算出した判定用計測データを監視サーバ3に送信する。
【0035】
監視サーバ3は、閾値設定部31、判定用計測データ取得部32、故障可能性判定部33、記憶部34、およびWebサイト作成部(表示制御部)35を含む。
【0036】
閾値設定部31は、故障可能性判定部33が故障可能性を判定するための閾値を設定し、記憶部34に格納する。閾値は、過去に故障があったときの値、または当該値よりも小さい値が設定される。
【0037】
判定用計測データ取得部32は、計測装置2から、計測装置2が算出した判定用計測エータを取得し記憶部34に格納する。
【0038】
故障可能性判定部33は、記憶部34に格納されている判定用計測データ341と閾値342とを用いてサーボプレス1の故障可能性を判定する。具体的には、故障可能性判定部33は、判定用計測データ341の値が閾値342を超えたとき、故障の可能性があると判定する。
【0039】
記憶部34には、閾値設定部31が設定した閾値である閾値342、および判定用計測データ取得部32が取得した判定用計測データである判定用計測データ341が格納されている。
【0040】
Webサイト作成部35は、判定用計測データ341の推移を確認できるWebサイトを作成する。作業者は当該Webサイトを確認することにより、判定用計測データ341の推移を目視で確認することができる。
【0041】
図3に表示例を示す。図3に示す例では、横軸に時間、縦軸に判定用計測データをとったグラフとして、判定用計測データの時系列変化が示されている。図3に示す例では、時間の経過とともに徐々に判定用計測データの値が上がり、時刻tにおいて閾値を超えていることがわかる。なお、本実施形態では、時刻tの時点で、担当者端末4にサーボプレス1の故障の発生可能性があることを示すメールが送信される。担当者端末4にメールが送信されることにより、担当者がサーボプレス1の現場に行き、状況を目視で確認することができる。
【0042】
〔サーボアンプの構成〕
次に、図2を参照してサーボアンプ13の構成について説明する。図2は、サーボアンプ13の要部構成を示す図である。
【0043】
プレス部11では、サーボモータ12にエンコーダ121を搭載し、サーボモータ12のモータ軸の回転位置および回転速度をサーボモータ12にフィードバックしている。サーボアンプ13は、コントローラ(図示せず)からの指令値とフィードバック信号との誤差を演算し、この誤差を0にするようモータ回転を制御することにより、適切なプレスを実現している。
【0044】
図2に示すように、サーボアンプ13は、整流器131、インバータ132、位置調節部133、速度調節部134、および電流調節部135を含む。
【0045】
整流器131は電源から供給された三相交流を直流に変換しインバータ132に供給する。インバータ132は、供給された直流をサーボモータ12に適した交流に変換し、駆動電流としてサーボモータ12に供給する。
【0046】
そして、サーボアンプ13では、位置調節部133が、指令された位置とサーボモータ12に設けられたエンコーダ121から取得したフィードバック信号(位置情報)との差分を元に速度指令を生成し速度調節部134に送信する。速度調節部134は、位置調節部133から送信された速度指令とエンコーダ121から取得したフィードバック信号(速度情報)との差分を元に電流指令を生成し電流調節部135に送信する。電流調節部135は、速度調節部134から送信された電流指令とインバータ132の出力との差分を元にインバータ132から出力する駆動電流を調節する。これにより、適切に調整された駆動電流をサーボモータ12に供給することができる。
【0047】
また、本実施形態では、インバータ132の出力側に電流計15が設けられ、計測した駆動電流値を計測装置2に送信している。なお、電流計15は、サーボアンプ13の内部に設けられてもよいし、サーボアンプ13の外部に設けられていてもよい。
【0048】
〔処理の流れ〕
次に、図4を参照してプレスシステム100における処理の流れを説明する。図4は、プレスシステム100の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
図4に示すように、プレス部11によるプレス処理が開始すると(S101)、上死点ONの時点で(S102でYES)、プレスPLC14は、計測装置2に対しサーボモータ12の駆動電流値の計測値の保存指示を送信する(S201)。そして、計測装置2は、当該指示に従い駆動電流値の計測値の保存を開始する(S301、計測値取得ステップ)。そして、プレス部11によるプレス処理が上死点まで戻り、上死点OFFとなると(S103でYES)、プレスPLC14は、計測装置2に対しサーボモータ12の駆動電流値の計測値の保存終了指示を送信する(S202)。そして、計測装置2は、当該指示に従い駆動電流値の計測値の保存を終了する(S302)。ここまでが、プレス処理の1ショットとなる。プレス部11は、プレス処理が終了しない限り(S104でNO)、ステップS102の戻り、プレス処理を繰り返す。
【0050】
計測装置2は、1ショット毎に、駆動電流値の最大値を算出する(S303)。そして、ショット数が所定数を超えると(S304でYES)、計測装置2の判定用計測データ算出部21は、所定期間(または所定ショット数)における最大値の平均値を判定用計測データとして算出する(S305、判定用計測データ算出ステップ)。そして、算出した判定用計測データを監視サーバ3に送信する。
【0051】
監視サーバ3は、取得した、判定用計測データを保存する(S401)。そして、監視サーバ3の故障可能性判定部33は、判定用計測データが閾値を超えたか否かを判定し(S402、故障可能性判定ステップ)、閾値を超えた場合(S402でYES)、担当者端末4に対し、警告を送信する(S403、通知ステップ)。
【0052】
以上により、本実施形態によれば、サーボモータ12の駆動電流値を観測するのみで、サーボモータ12の故障可能性を的確に判断することができる。また、駆動電流値をそのまま閾値を比較して故障可能性を判断するのではなく、ショット毎の最大値の所定期間における平均値を用いて判断している。これにより、ショット毎の駆動電流値を用いる場合と比較して、処理負荷を軽減することができる。
〔変形例〕
上述した実施形態では、プレスシステム100に、サーボプレス1、計測装置2、監視サーバ3、および担当者端末4が含まれる構成として説明した。本実施形態はこれに限られるものではなく、計測装置2および監視サーバ3を1つのサーバで実行してもよい。
【0053】
図5に、計測装置2および監視サーバ3を1つのサーバで実行する場合の機能ブロック図を示す。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5に示す例では、管理サーバ300に上述した計測装置2および監視サーバ3が含まれている。
【0054】
また、担当者端末4において、計測装置2および監視サーバ3の機能を果たすものであってもよい。図6に、担当者端末(故障予防装置)4’において、計測装置2および監視サーバ3の機能を実行する例を示す。図6に示すように、この場合、担当者端末4’に閾値設定部31、記憶部34、判定用計測データ算出部21、故障可能性判定部33が含まれ、さらに、故障可能性有りと判定された場合にその旨を作業者に通知する通知部41が含まれる。
【0055】
〔ソフトウェアによる実現例〕
計測装置2および監視サーバ3の制御ブロック(特に判定用計測データ算出部21、および故障可能性判定部33)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0056】
後者の場合、計測装置2および監視サーバ3は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 サーボプレス(プレス機)
2 計測装置(故障予防装置)
3 監視サーバ(故障予防装置)
4 担当者端末
4’ 担当者端末(故障予防装置)
11 プレス部
12 サーボモータ
13 サーボアンプ
14 プレスPLC
15 電流計
21 判定用計測データ算出部(計測値取得部)
31 閾値設定部
32 判定用計測データ取得部
33 故障可能性判定部
35 Webサイト作成部(表示制御部)
41 通知部
100 プレスシステム
121 エンコーダ
131 整流器
132 インバータ
133 位置調節部
134 速度調節部
135 電流調節部
300 管理サーバ(故障予防装置)

図1
図2
図3
図4
図5
図6