特許第6718970号(P6718970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6718970
(24)【登録日】2020年6月17日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   H04R1/10 103
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-543517(P2018-543517)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2016079509
(87)【国際公開番号】WO2018066071
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆介
(72)【発明者】
【氏名】柿山 和範
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055177(JP,A)
【文献】 特開2008−205585(JP,A)
【文献】 特開2010−041632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドバンドと、
放音装置を内部に有する放音部と、
上下方向に沿う回動軸を中心として前記放音部を回動可能に前記ヘッドバンドに連結する連結部と、
前記放音部の回動範囲を調整する調整部と、を備えることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、第1回動範囲と、前記第1回動範囲より狭い第2回動範囲との一方に前記回動範囲を切り替えることを特徴とするヘッドホン。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、
前記放音部と当接して、前記第1回動範囲及び前記第2回動範囲のそれぞれにおける一端を規定する第1固定規定部と、
前記放音部と当接して、前記第1回動範囲における他端を規定する第2固定規定部と、
前記放音部と当接して、前記第2回動範囲における他端を規定する移動規定部と、
前記移動規定部を移動させて、前記第1回動範囲と前記第2回動範囲との一方に前記回動範囲を切り替える切替部と、を備えることを特徴とするヘッドホン。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッドホンにおいて、
前記放音部は、前記回動軸に沿う軸部を備え、
前記軸部は、径方向内側に凹む凹部を外周に有し、
前記第1固定規定部及び前記第2固定規定部は、それぞれ前記凹部の一端縁及び他端縁に当接可能に前記凹部内に配置され、
前記移動規定部は、前記切替部によって前記凹部の内外に移動されることを特徴とするヘッドホン。
【請求項5】
請求項4に記載のヘッドホンにおいて、
前記切替部は、前記移動規定部を前記回動軸に直交する方向に移動させるスライド部材であることを特徴とするヘッドホン。
【請求項6】
請求項1に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、
前記放音部と当接して、前記回動範囲における一端を規定する固定規定部と、
前記回動軸の周方向に沿って移動し、前記放音部と当接して、前記回動範囲における他端を規定する移動規定部と、を備えることを特徴とするヘッドホン。
【請求項7】
請求項6に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、前記回動軸の周方向に沿って前記移動規定部を移動させるダイヤルを有することを特徴とするヘッドホン。
【請求項8】
請求項2に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、
前記回動範囲における一端を規定する一端側規定部と、
前記回動軸に沿う方向において位置を違えて配置され、かつ、前記回動軸の周方向において位置を違えて配置されて、前記回動範囲における他端を規定する複数の他端側規定部と、
前記回動軸に沿って移動可能に前記放音部に設けられ、前記一端側規定部と前記複数の他端側規定部のいずれかとに当接されて、前記回動軸を中心とする前記放音部の回動を規制する回動規制部と、を有することを特徴とするヘッドホン。
【請求項9】
請求項1に記載のヘッドホンにおいて、
前記調整部は、前記回動軸の周方向に沿って所定角度毎に前記放音部を係止する係止部を有することを特徴とするヘッドホン。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のヘッドホンにおいて、
前記放音部、前記連結部及び前記調整部は、それぞれ一対設けられ、
前記回動範囲は、一対の前記放音部の放音面が互いに対向する位置を0°とした場合に、0°以上、90°以下の回動角度範囲内で調整されることを特徴とするヘッドホン。
【請求項11】
ヘッドバンドと、
放音装置を内部に有する放音部と、
前記ヘッドバンドに設けられ、上下方向に沿う回動軸を中心として前記放音部を回動可能に支持する連結部と、
前記放音部の回動が規制される位置を調整する調整部と、を備えることを特徴とするヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の耳を覆うように、使用者の頭部に装着されるヘッドホンが知られている。このようなヘッドホンとして、左右の耳に装着される一対のハウジングが、頭部に装着されるヘッドバンドの端部に設けられた連結部に回動可能に連結されたヘッドホンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のヘッドホンでは、一対のハウジングのそれぞれは、スピーカーユニットを収容した本体部と、当該本体部を支持するハンガーとを有する。そして、ヘッドホンの基準使用姿勢では、各本体部の放音面が互いに対向するが、各ハウジングを互いに反対方向に回動させることによって、各放音面が後方を向く姿勢に変更できる。すなわち、当該ヘッドホンでは、基準使用姿勢を基準としてハウジングを90°回動させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−5058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、DJ(Disc Jockey)等の一部の使用者は、一般的な使用者とは異なる形態でヘッドホンを用いることが多い。例えば、DJは、場内に流れている音楽、及び、次に流す音楽のそれぞれをモニタリングする必要があるため、一方の耳で場内に流れている音楽を聞き、他方の耳で次に流す音楽をモニタリングすることがある。この場合、例えばDJは、左右のハウジングのうち、一方のハウジングを耳に当て、他方のハウジングを顎等によって押さえたり、或いは、当該他方のハウジングを後頭部に当てたりする等してヘッドホンを装着する場合がある。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に記載のヘッドホンでは、ハウジングは、上記基準使用姿勢に位置する場合、及び、当該基準使用姿勢から90°回動された場合の2箇所でしか回動が規制されない。このため、上記他方のハウジングを顎等で押さえようとしたり、後頭部に当てようとしたりすると、当該他方のハウジングが回動されすぎてしまい、安定しづらい。このことから、上記特許文献1に記載のヘッドホンには、安定して装着しづらいという問題が一例として挙げられる。
一方で、ハウジングの回動範囲を90°より小さくすることが考えられるが、この場合には、ヘッドホンの厚さ寸法(奥行き寸法)が小さくなりづらい。このことから、当該ヘッドホンの収納時にスペースが大きくなるという問題が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題点などに鑑みて、利便性を向上できるヘッドホンを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るヘッドホンは、ヘッドバンドと、放音装置を内部に有する放音部と、上下方向に沿う回動軸を中心として前記放音部を回動可能に前記ヘッドバンドに連結する連結部と、前記放音部の回動範囲を調整する調整部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様に係るヘッドホンは、ヘッドバンドと、放音装置を内部に有する放音部と、前記ヘッドバンドに設けられ、上下方向に沿う回動軸を中心として前記放音部を回動可能に支持する連結部と、前記放音部の回動が規制される位置を調整する調整部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンを示す正面図。
図2】上記第1実施形態における基準位置に位置する放音部を上方から見た図。
図3】上記第1実施形態における第1規制位置に位置する放音部を上方から見た図。
図4】上記第1実施形態における第2規制位置に位置する放音部を上方から見た図。
図5】上記第1実施形態における軸部と調整部の一部とを示す斜視図。
図6】上記第1実施形態における放音部が基準位置に位置する状態の調整部を示す模式図。
図7】上記第1実施形態における放音部が第1規制位置に位置する状態の調整部を示す模式図。
図8】上記第1実施形態における放音部が第2規制位置に位置する状態の調整部を示す模式図。
図9】上記第1実施形態における他の操作部を示す斜視図。
図10】本発明の第2実施形態に係るヘッドホンが備える調整部の構成及び軸部の回動範囲を示す模式図。
図11】本発明の第3実施形態に係るヘッドホンが備える放音部及び調整部の構成を示す模式図。
図12】本発明の第4実施形態に係るヘッドホンが備える放音部及び調整部の構成を示す模式図。
図13】上記第4実施形態における放音部の回動状態を上方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
[ヘッドホンの全体構成]
図1は、本実施形態に係るヘッドホン1を示す正面図である。
本実施形態に係るヘッドホン1は、使用者の頭部に装着されて、当該使用者の各耳に音声を出力するものである。このヘッドホン1は、図1に示すように、ヘッドバンド2と、2つの放音部3(3L,3R)と、2つの連結部4(4L,4R)と、2つの調整部5(5L,5R)と、を備える。
なお、以下の説明では、正面側(前側)及び背面側(後側)を、ヘッドホン1を装着した使用者にとっての正面側(前方)及び背面側(後方)とする。同様に、上方及び下方を、使用者にとっての上方及び下方とし、左側及び右側を、使用者にとっての左側及び右側とする。
【0011】
本実施形態に係るヘッドホン1は、上下方向に沿う回動軸を中心としてそれぞれの放音部3が回動可能に各連結部4に支持されており、当該各連結部4に設けられた調整部5によって、各放音部3の回動範囲を調整可能に構成されている点を特徴の1つとしている。
【0012】
図2は、基準位置に位置する放音部3を上方から見た図である。図3は、第1規制位置に位置する放音部3を上方から見た図である。図4は、第2規制位置に位置する放音部3を上方から見た図である。
具体的に、放音部3は、連結部4によって回動可能に支持されている。そして、放音部3は、図2に示すように、ヘッドホン1が通常使用される状態である、各放音部3の放音面3Sが互いに対向する基準位置(図1に示した状態の各放音部3の位置)を0°とした場合に、当該基準位置から、各放音部3が背面側を向く第1規制位置までの90°以下の範囲(第1回動範囲)で回動可能である。また、調整部5によって、当該放音部3の回動範囲を、基準位置から第2規制位置までの45°以下の範囲(第2回動範囲)に切り替えることができる。このように、ヘッドホン1の使用状態に応じて、各放音部3の向き及び規制位置を調整できる。
以下、ヘッドホン1の各構成について説明する。
【0013】
[ヘッドバンドの構成]
ヘッドバンド2は、図1に示すように、頭部に装着される円弧状部材である。このヘッドバンド2は、左耳に応じて配置される放音部3Lと、右耳に応じて配置される放音部3Rと、を懸架する。このようなヘッドバンド2の左側の端部には、当該端部と放音部3Lとを連結する連結部4Lが設けられ、右側の端部には、当該端部と放音部3Rとを連結する連結部4Rが設けられている。
なお、このようなヘッドバンド2における左右の端部近傍に、当該ヘッドバンド2の円弧形状に沿って伸縮可能な伸縮機構を設けてもよい。
【0014】
[放音部の構成]
一対の放音部3(左側及び右側の放音部をそれぞれ3L,3Rとする)は、入力される音声信号に応じた音声を出力する。これらのうち、左側の放音部3Lは、左耳を覆い、右側の放音部3Rは、右耳を覆うように配置される。このような放音部3は、それぞれ、ハウジング31と、放音装置としてのスピーカー32と、パッド33と、ハンガー34と、を備えて構成されている。
【0015】
ハウジング31は、円筒状に形成され、上記スピーカー32を内部に収容する。このハウジング31は、前後方向に沿う回動軸AX1を中心として上下に回動可能にハンガー34に支持されている。なお、図示を省略するが、左右のハウジング31のうち、一方のハウジング31には、音響装置と接続される入力コードが設けられている。この入力コードを介して、音響機器から出力された左耳及び右耳用の音声信号のうち一方の音声信号が、当該一方のハウジング31内に配置されたスピーカー32に入力される。また、他方の音声信号は、ヘッドバンド2内に設けられた信号線(図示省略)を介して、他方のハウジング31内に収容されたスピーカー32に入力される。なお、上記音声信号を無線にて受信可能に構成されている場合には、当該入力コードは無くてもよい。
パッド33は、ハウジング31の使用者の側頭部側となる放音面に取り付けられている。このようなパッド33は、頭部に接触した際のフィット感を高めるために、クッション性を有する材料(例えば低反発ウレタン)により構成できる。
【0016】
ハンガー34は、ハウジング31を支持し、それぞれ対応する連結部4に支持される。これらハンガー34は、支持部35と、軸部36(図5参照)と、を有する。
支持部35は、ハウジング31の周方向に沿うように、半円形の円弧状に形成されている。この支持部35は、両端にてハウジング31における直径方向の両端を支持する。これにより、上記のように、ハウジング31は、ハンガー34に、水平方向に沿う上記回動軸AX1を中心として上下に回動可能に支持される。このような支持部35は、ヘッドホン1を正面側から見た際に上下方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0017】
図5は、軸部36と後述する調整部5の一部とを示す斜視図である。
軸部36は、支持部35から上方に突出し、対応する連結部4に回動可能に支持される部位である。この軸部36は、ハンガー34が連結部4に支持される際には、当該軸部36の中心軸が上下方向に沿うように配置される。このような軸部36は、図5に示すように、先端部(支持部35とは反対側の端部)に、当該軸部36の周方向に沿って形成された凹部37を有する。
この凹部37内には、後述する調整部5を構成する固定規定部51(図5では図示省略)が配置される。また、ヘッドホン1の使用状態に応じて、当該調整部5を構成する移動規定部52が配置される。
【0018】
[連結部の構成]
一対の連結部4(左側及び右側の連結部をそれぞれ4L,4Rとする)のそれぞれは、図1に示したように、ヘッドバンド2における左右両端に設けられる。そして、各連結部4は、ヘッドバンド2と、対応する放音部3のハンガー34とを連結する。具体的に、連結部4Lは、放音部3Lが有する軸部36を回動可能に支持し、連結部4Rは、放音部3Rが有する軸部36を回動可能に支持する。これら連結部4内には、上記軸部36の先端部が位置する他、対応する調整部5が設けられている。
【0019】
[調整部の構成]
図6は、放音部3が上記基準位置に位置する状態の調整部5を示す模式図であり、調整部5を構成する固定規定部51に上記凹部37の一方の端縁371が当接し、移動規定部52が当該凹部37内から退避された状態を示す模式図である。
調整部5(左側及び右側の調整部をそれぞれ5L,5Rとする)は、対応する軸部36と係合して、当該軸部36、ひいては、放音部3の回動範囲を調整する。本実施形態では、調整部5は、それぞれ上記した第1回動範囲及び第2回動範囲のうちの一方に、放音部3の回動範囲を切り替える。このような調整部5は、図5及び図6に示すように、固定規定部51(図5では図示省略)、移動規定部52、切替部53及び操作部54(図6では図示省略)を有する。
【0020】
[固定規定部の構成]
固定規定部51は、図6に示すように、軸部36の軸方向に沿って見て略台形状に形成されており、上記凹部37内に配置される。この固定規定部51は、軸部36の回動に伴って凹部37の一方の端縁371又は他方の端縁372に当接して、当該軸部36の更なる回動を規制し、これにより、当該軸部36の回動範囲(第1回動範囲)を規定する。
このような固定規定部51は、第1固定規定部511と、当該第1固定規定部511とは反対側に位置する第2固定規定部512と、を有する。
【0021】
第1固定規定部511には、上記凹部37の一方の端縁371が当接される。この第1固定規定部511に端縁371が当接される軸部36の位置が、基準位置である。そして、当該基準位置に軸部36が位置する状態では、ヘッドホン1は、図1及び図2に示したように、各放音部3の放音面3Sが互いに対向する姿勢となる。すなわち、この姿勢では、各放音部3による放音方向が使用者の左右の耳に向かう方向となる。以下、この姿勢を、通常使用姿勢とする。
【0022】
図7は、放音部3が上記第1規制位置に位置する状態の調整部5を示す模式図である。詳述すると、図7は、凹部37の端縁372が第2固定規定部512に当接した状態を示す模式図である。なお、図7に示す状態では、移動規定部52は、凹部37内から退避されている。
第2固定規定部512は、上記第1固定規定部511とともに、軸部36の回動範囲(第1回動範囲)を規定する。この第2固定規定部512には、図7に示すように、軸部36が、上記基準位置から回動軸AX2を中心として+D1方向に90°回動された場合に、上記凹部37における他方の端縁372が当接される。この第2固定規定部512によって、軸部36の90°以上の回動が規制され、当該軸部36は、第1規制位置に位置付けられる。
この状態では、図3に示したように、ヘッドホン1は、各放音部3の放音面3Sが同じ側(本実施形態では背面側)を向く姿勢となる。この姿勢は、ヘッドホン1を収容容器内に収納したり、当該ヘッドホン1を携帯したりする際に採用される姿勢である。以下、この姿勢を、収納姿勢とする。
このように、ヘッドホン1では、一方の端縁371が第1固定規定部511に当接する状態から、他方の端縁372が第2固定規定部512に当接する状態までの90°の回動範囲(第1回動範囲)内で、ハンガー34、ひいては、放音部3を回動可能に構成されている。
【0023】
[移動規定部の構成]
図8は、放音部3が上記第2規制位置に位置する状態の調整部5を示す模式図である。詳述すると、図8は、凹部37内に移動規定部52が配置された状態を示す模式図である。
移動規定部52は、図6ないし図8に示すように、切替部53と一体化されており、当該切替部53の移動に伴って、上記端縁372が当接可能な位置に配置される。
このように、移動規定部52が凹部37内に移動されると、軸部36は、上記基準位置と、端縁372が移動規定部52に当接する位置との間の回動範囲(第2回動範囲)内で回動可能となる。この移動規定部52に端縁372が当接される位置が、第2規制位置である。
なお、端縁372が移動規定部52に当接した場合の軸部36の回動角は、上記基準位置を0°とした場合、本実施形態では45°に設定されている。すなわち、本実施形態では、第2回動範囲は、0°以上、45°以下である。
【0024】
[切替部の構成]
切替部53は、操作部54によって、軸部36の中心軸(回動軸AX2)に直交する+D2方向及び当該+D2方向とは反対方向である−D2方向に移動されるスライド部材である。この切替部53が、+D2方向に移動されると、図6及び図7に示すように、当該切替部53の一部である移動規定部52が凹部37外に退避される。このため、軸部36の回動範囲は、上記第1回動範囲に設定される。一方、切替部53が、−D2方向に移動されると、移動規定部52が凹部37内に挿入される。これにより、軸部36の回動範囲は、上記第2回動範囲に設定される。
【0025】
[操作部の構成]
操作部54は、使用者によって操作されて、切替部53を移動させる部材である。この操作部54は、図1に示した本体部541と、図5に示した作動部542と、を有する。
本体部541は、軸部36と同軸で回動されるダイヤルであり、使用者によって操作可能に外部に露出している。なお、本体部541は、軸部36とは独立して回動される。
作動部542は、上記切替部53と係合しており、本体部541の回動に伴って、当該切替部53を+D2方向及び−D2方向に移動させる。
このような操作部54が操作されることによって、切替部53、ひいては、移動規定部52が凹部37の内外に移動され、これにより、軸部36の回動範囲が第1回動範囲及び第2回動範囲のいずれかに切り替えられる。
【0026】
[操作部の他の構成]
図9は、他の操作部54(本体部541A)を示す斜視図である。
なお、操作部54は、ダイヤルとして構成された本体部541に代えて、図9に示すように、スライドスイッチにより構成された本体部541Aを採用してもよい。この場合でも、当該本体部541Aの一方及び他方へのスライド移動に伴って作動部542が、切替部53を+D2方向及び−D2方向にスライド移動させることによって、上記回動範囲を第1回動範囲及び第2回動範囲のいずれかに切り替わるように構成できる。
また、これら本体部541,541Aは、少なくとも一部が外部に露出するように設けられていれば、当該本体部541,541Aの位置は限定されない。このため、図1及び図9に示すように、本体部541,541Aは、連結部4において使用者とは反対側に露出されていてもよく、連結部4における正面側及び背面側のいずれかの位置に設けられていてもよい。更に、本体部541,541Aは、連結部4において使用者に対向する面に設けられていてもよい。
【0027】
[第1実施形態の作用効果]
各放音部3(3L,3R)の回動範囲を0°以上、90°以下の上記第1回動範囲に切り替えれば、各放音部3(3L,3R)の放音面3Sが左右の耳に向くように、当該各放音部3を回動させることができる。また、各放音部3をそれぞれ反対方向に90°回動させれば、各放音面3Sが同じ方向を向くように、当該各放音部3を回動させることができる。これにより、上記通常使用姿勢と上記収納姿勢とのそれぞれの姿勢に、ヘッドホン1の姿勢を切り替えることができる。そして、収納姿勢の場合、ヘッドホン1の厚さ寸法(前後方向の寸法)を小さくすることができるので、ヘッドホン1の収納性及び携帯性を向上させることができる。
一方、各放音部3の回動範囲を上記第2回動範囲に調整すれば、DJ等の使用者が通常使用姿勢とは異なる姿勢でヘッドホン1を使用する場合でも、各放音部3が使用者の身体に沿うようにヘッドホン1を装着でき、当該放音部3が使用者にとって邪魔になることを抑制できる。従って、ヘッドホン1の装着性を向上させることができる。
このように、調整部5によって、ヘッドホン1の使用状態に応じて上記回動範囲を調整できるので、当該ヘッドホン1の利便性を向上させることができる。
【0028】
調整部5は、上記基準位置を0°とした場合の0°以上、90°以下の第1回動範囲と、当該第1回動範囲より狭い、0°以上、45°以下の第2回動範囲との一方に、軸部36、ひいては、放音部3の回動範囲を切り替える。これによれば、上記した効果を奏する第1回動範囲及び第2回動範囲に、各放音部3の回動範囲を容易に切り替えることができる。
【0029】
調整部5は、放音部3の軸部36における凹部37の端縁371に当接して、第1回動範囲及び第2回動範囲のそれぞれの一端を規定する第1固定規定部511と、端縁372に当接して、第1回動範囲の他端を規定する第2固定規定部512と、端縁372に当接して、第2回動範囲の他端を規定する移動規定部52と、当該移動規定部52を移動させて、第1回動範囲と第2回動範囲との一方に、放音部3の回動範囲を切り替える切替部53と、を備える。これによれば、切替部53によって、移動規定部52を移動させることにより、放音部3の回動範囲を、第1回動範囲と第2回動範囲との一方に切り替えることができる。従って、当該回動範囲の切替を確実かつ容易に実施できる。
【0030】
放音部3は、回動軸AX2に沿う軸部36を備え、当該軸部36は、径方向内側に凹む凹部37を外周に有する。また、第1固定規定部511及び第2固定規定部512は、それぞれ、凹部37における一方の端縁371及び他方の端縁372に当接可能に凹部37内に配置される。更に、移動規定部52は、切替部53によって凹部37の内外に移動される。これによれば、移動規定部52を凹部37外に移動させることによって、上記回動範囲を第1回動範囲に切り替えることができる。また、当該移動規定部52を凹部37内に移動させることによって、上記回動範囲を第2回動範囲に切り替えることができる。従って、回動範囲の切替機構を簡易に構成できる。
【0031】
切替部53は、移動規定部52を軸部36の回動軸AX2に直交する方向である+D2方向及び−D2方向に移動させるスライド部材である。これによれば、切替部53をスライド移動させて移動規定部52を移動させることによって、上記回動範囲の切替を実施できる。この際、スライドスイッチにより構成された本体部541Aを有する操作部54によって、移動規定部52を移動させるように構成できるので、上記回動範囲の切替を容易に実施できる他、当該回動範囲の切替構造を簡易に構成できる。
【0032】
ヘッドホン1は、上記のように、ヘッドバンド2の左右にそれぞれ設けられる放音部3(3L,3R)、連結部4(4L,4R)及び調整部5(5L,5R)を備える。そして、上記回動範囲は、各放音面3Sが互いに対向する際の放音部3の位置を0°とした場合に、0°以上、90°以下の回動角度範囲内で調整される。これによれば、各放音部3の回動角が0°である場合に、当該各放音部3を左右の耳に装着可能な通常使用姿勢とすることができる。また、各放音部3の回動角が90°である場合に、当該各放音部3の放音面3Sが同じ方向を向くように各放音部3を配置でき、これにより、ヘッドホン1の収納性及び携帯性を向上させることができる。そして、0°以上で、かつ、90°より小さい角度までの第2回動範囲に上記回動範囲が設定されることによって、ヘッドホン1の装着性を向上させることができる。
従って、ヘッドホン1の利便性を確実に向上させることができる。
【0033】
本実施形態に係るヘッドホン1は、ヘッドバンド2と、スピーカー32を内部に有する放音部3と、ヘッドバンド2に設けられ、上下方向に沿う回動軸を中心として放音部3を回動可能に支持する連結部4と、放音部3の回動が規制される位置を調整する調整部5と、を備えるものということができる。これらのうち、調整部5は、本実施形態では、放音部3の回動範囲を、第1回動範囲及び第2回動範囲のうち一方に切り替えることによって、放音部3の回動が規制される位置である第1規制位置及び第2規制位置のうち一方に切り替える。これによれば、上記したヘッドホン1と同様の効果を奏することができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るヘッドホンは、上記ヘッドホン1と同様の構成を備えるが、調整部が上記放音部(軸部)の回動範囲を上記基準位置から所定角度範囲内で任意に設定可能な点において相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一又は略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図10は、本実施形態に係るヘッドホンが備える調整部5Aの構成及び軸部36の回動範囲を示す模式図である。
本実施形態に係るヘッドホンは、調整部5に代えて調整部5Aを備える他は、上記ヘッドホン1と同様の構成及び機能を有する。
調整部5Aは、調整部5と同様に、ヘッドバンド2の左右両端にそれぞれ設けられた各連結部4(4L,4R)の内部に設けられ、それぞれ放音部3の回動範囲を調整する。この調整部5Aは、図10に示すように、上記固定規定部51と、移動規定部52Aと、当該移動規定部52Aを使用者の操作に応じて移動させる操作部(図示省略)と、を有する。
なお、操作部は、上記操作部54と同様の構成、すなわち、ダイヤルである本体部541を有する構成であり、当該本体部541の回動軸は、軸部36の回動軸AX2と同軸上に設定されている。
【0036】
移動規定部52Aは、固定規定部51とともに軸部36の凹部37内に配置されるが、当該固定規定部51とは、軸部36の軸方向に沿う位置が異なる。そして、移動規定部52Aは、上記操作部に対する操作に応じて、軸部36の周方向(+D1方向及び−D1方向)に沿って移動されて、当該軸部36の回動範囲を規定する。
具体的に、移動規定部52Aが、固定規定部51と重なる位置に配置されている場合には、軸部36の回動範囲は、当該固定規定部51の第1固定規定部511と端縁371とが当接する基準位置から、第2固定規定部512と端縁372とが当接する第1規制位置までの0°以上、90°以下の第1回動範囲に規定される。
【0037】
一方、移動規定部52Aが、固定規定部51と重なる位置から−D1方向に移動されると、軸部36が+D1方向に回動された際に、上記端縁372が移動規定部52Aと当接され、軸部36の更なる+D1方向への回動が規制される。この場合、軸部36の回動範囲は、上記第1回動範囲より狭められ、端縁371と固定規定部51とが当接する基準位置から、端縁372と移動規定部52Aとが当接する第2規制位置との間の範囲(第2回動範囲)に設定される。
この移動規定部52Aの凹部37内の位置は、上記のように、使用者が任意に調整できる。なお、移動規定部52Aは、図10において固定規定部51に対して−D1方向側の領域に移動可能であり、当該固定規定部51に対して+D1方向側には移動できないように構成されている。
【0038】
[第2実施形態の作用効果]
以上説明した本実施形態に係るヘッドホンによれば、上記ヘッドホン1と同様の効果を奏することできる他、以下の効果を奏することができる。
調整部5Aは、放音部3の軸部36における凹部37の端縁371と当接して、当該放音部3の回動範囲における一端を規定する固定規定部51(第1固定規定部511)と、軸部36の回動軸AX2の周方向(+D1方向及び−D1方向)に沿って移動し、当該凹部37の端縁372と当接して、当該放音部3の回動範囲における他端を規定する移動規定部52Aと、を備える。これによれば、移動規定部52Aの位置に応じて、放音部3の回動範囲を任意に設定でき、放音部3(軸部36)の回動が規制されて、それ以上回らなくなる位置を任意に設定できる。
【0039】
調整部5Aは、回動軸AX2の周方向に沿って移動規定部52Aを移動させるダイヤルによって構成された本体部541を有する操作部を備える。これによれば、本体部541に対する回動操作によって、移動規定部52Aを所望の位置に位置付けしやすくすることができる。また、当該本体部541の回動軸は、軸部36の回動軸AX2と同軸上に設定されているので、使用者が感覚的に上記回動範囲を設定できる。従って、当該回動範囲の設定操作を実施しやすくすることができる。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係るヘッドホンは、上記ヘッドホン1と同様の構成を備えるが、調整部が所定角度毎に放音部(軸部)の回動範囲を設定可能な点において相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一又は略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図11は、本実施形態に係るヘッドホンが備える軸部36B及び調整部5Bの構成を示す模式図である。なお、図11は、後述する回動規制部52Bの端縁53B2と他端側規定部51B4とが当接している状態を示している。
本実施形態に係るヘッドホンは、放音部3及び調整部5に代えて放音部3B及び調整部5Bを備える他は、上記ヘッドホン1と同様の構成及び機能を有する。
放音部3Bは、軸部36に代えて軸部36Bを有する他は、上記放音部3と同様の構成及び機能を有する。この軸部36Bは、詳しい図示を省略するが、軸部36と同様に、支持部35(図1参照)から上方に突出し、対応する連結部4に回動可能に支持される。この軸部36Bは、図11に示すように、軸部36とは異なり、凹部37が形成されていない。この凹部37の代わりに、軸部36Bには、後述する凹部53Bを有する回動規制部52Bが設けられる。
【0042】
調整部5Bは、調整部5と同様に、ヘッドバンド2の左右両端にそれぞれ設けられた連結部4(4L,4R)の内部にそれぞれ設けられ、放音部3Bの回動範囲を調整する。この調整部5Bは、図11に示すように、多段規定部51Bと、回動規制部52Bと、操作部(図示省略)と、を有する。
【0043】
これらのうち、回動規制部52Bは、外周の一部に凹部53Bが形成された円筒状に形成され、上記軸部36Bに設けられて、当該軸部36Bと一体的に回動する。
凹部53Bは、軸部36Bの周方向、すなわち、回動規制部52Bの周方向に沿って、上記凹部37(図6参照)と同様に形成されている。このような凹部53Bにおける+D1方向側の端縁53B1は、軸部36Bが上下方向に沿う回動軸AX2を中心として−D1方向に回動される際に、多段規定部51Bの一端側規定部51B1と当接し得る。
また、−D1方向側の端縁53B2は、軸部36Bが+D1方向に回動される際に、多段規定部51Bの他端側規定部51B2〜51B4のいずれかと当接し得る。
このような回動規制部52Bは、使用者によって操作される操作部によって、軸部36Bの軸方向に沿って移動される。
【0044】
多段規定部51Bは、それぞれ凹部53B内に位置して、軸部36Bの回動範囲を規定する一端側規定部51B1及び複数の他端側規定部51B2〜51B4を有する。本実施形態では、多段規定部51Bは、3つの他端側規定部51B2〜51B4を有する。
一端側規定部51B1には、上記のように、端縁53B1が当接され得る。この一端側規定部51B1と端縁53B1とが当接する位置が、本実施形態では基準位置であり、この状態では、放音部3は、図1及び図2に示した上記通常使用姿勢となる。
【0045】
他端側規定部51B2〜51B4は、多段規定部51Bにおいて一端側規定部51B1とは反対側にそれぞれ位置する。これら他端側規定部51B2〜51B4は、凹部53B内において軸部36Bの周方向における位置がそれぞれ異なるとともに、当該軸部36Bの軸方向(回動軸AX2と一致)における位置がそれぞれ異なる。
具体的に、他端側規定部51B2は、一端側規定部51B1に対して−D1方向側に位置し、他端側規定部51B3は、他端側規定部51B2に対して−D1方向側に位置し、更に、他端側規定部51B4は、他端側規定部51B3に対して−D1方向側に位置している。なお、本実施形態では、他端側規定部51B3,51B4は、他端側規定部51B2の位置を0°として、−D1方向に22.5°間隔で配置されている。
また、他端側規定部51B3は、他端側規定部51B2に対して軸部36Bの軸方向における一方側に位置し、他端側規定部51B4は、他端側規定部51B3に対して更に当該一方側に位置する。なお、一端側規定部51B1は、軸部36Bの軸方向に沿って延出しており、回動規制部52Bがどの位置に在っても、上記端縁53B1と当接可能に構成されている。
【0046】
[放音部の回動範囲]
回動規制部52Bが、軸部36Bの軸方向において一端側規定部51B1及び他端側規定部51B2と同じ位置に位置する場合(当該軸方向に対する直交面のうち、一端側規定部51B1及び他端側規定部51B2が含まれる直交面上に回動規制部52Bが位置する場合)では、当該回動規制部52Bの回動範囲、すなわち、軸部36B(放音部3B)の回動範囲は、上記基準位置から、上記端縁53B2が他端側規定部51B2に当接する位置(第1規制位置)までの範囲となる。この場合の回動範囲は、上記基準位置と第1規制位置との間の0°以上90°以下の範囲となる。なお、他端側規定部51B2と端縁53B2とが当接した状態では、放音部3Bは、図3に示した上記収納姿勢となる。
【0047】
一方、回動規制部52Bが、軸部36Bの軸方向において一端側規定部51B1及び他端側規定部51B3と同じ位置に位置する場合では、軸部36B(放音部3B)の回動範囲は、上記基準位置から、上記端縁53B2が他端側規定部51B3に当接する位置(第2規制位置)までの範囲となる。この場合の回動範囲は、上記基準位置と第2規制位置との間の0°以上、67.5°以下の範囲となる。
同様に、回動規制部52Bが、軸部36Bの軸方向において一端側規定部51B1及び他端側規定部51B4と同じ位置に位置する場合では、軸部36B(放音部3B)の回動範囲は、上記基準位置から、上記端縁53B2が他端側規定部51B4に当接する位置(第3規制位置)までの範囲となる。この場合の回動範囲は、上記基準位置と第3規制位置との間の0°以上、45°以下の範囲となる。
【0048】
このように、軸部36Bの軸方向における回動規制部52Bの位置を調整することにより、当該軸部36B、ひいては、放音部3Bの回動範囲を、0°以上、45°以下の範囲と、0°以上、67.5°以下の範囲と、0°以上、90°以下の範囲とのいずれかに調整可能となる。なお、本実施形態では、0°以上、90°以下の範囲が、本発明の第1回動範囲に相当し、0°以上、45°以下の範囲、及び、0°以上、67.5°以下の範囲のそれぞれが、本発明の第2回動範囲に相当する。
【0049】
[第3実施形態の作用効果]
以上説明した本実施形態に係るヘッドホンによれば、上記ヘッドホン1と同様の効果を奏することができる他、以下の効果を奏することができる。
調整部5Bは、放音部3Bの回動範囲における一端を規定する一端側規定部51B1と、軸部36Bの軸方向に沿う方向(回動軸AX2に沿う方向と一致)において位置を違えて配置され、かつ、回動軸AX2の周方向において位置を違えて配置されて、放音部3Bの回動範囲における他端を規定する他端側規定部51B2〜51B4と、回動軸AX2に沿って移動可能に軸部36Bに設けられ、一端側規定部51B1と他端側規定部51B2〜51B4のいずれかとに当接されて、回動軸AX2を中心とする放音部3Bの回動を規制する回動規制部52Bと、を有する。これによれば、回動規制部52Bが、他端側規定部51B2〜51B4のいずれかに当接する位置に、回動軸AX2に沿って移動されることにより、当該放音部3Bの回動範囲を切り替えることができる。従って、放音部3Bの回動範囲を確実に切り替えることができ、放音部3B(軸部36B)の回動が規制されて、それ以上回らなくなる位置を確実に切り替えることができる。
【0050】
[第3実施形態の変形]
上記第3実施形態では、回動規制部52Bが軸部36Bの軸方向に沿って移動されることにより、当該回動規制部52Bの端縁53B2が当接される規定部が、他端側規定部51B2〜51B4から選択された。しかしながら、これに限らず、上記第1及び第2実施形態にて示した軸部36のように、回動規制部52Bは、軸部36Bと一体化され、当該軸部36Bの軸方向に沿って移動されない構成としてもよい。すなわち、軸部36B及び回動規制部52Bに代えて、上記軸部36を採用してもよい。
この場合、例えば、当該軸方向における凹部の位置は変わらずに、当該軸方向に沿って多段規定部51Bを移動可能とし、これにより、当該凹部の端縁が当接し得る他端側規定部51B2〜51B4を変更可能に構成してもよい。
【0051】
また、操作部に対する使用者の操作に応じて、他端側規定部51B2から、他端側規定部51B3,51B4が突出するように構成してもよい。
例えば、図示を省略するが、他端側規定部51B3,51B4が、他端側規定部51B2と同じ位置に配置されて、軸部36の回動範囲が0°以上、90°以下とされた状態から上記操作部が操作されると、上記第2規制位置まで、各他端側規定部51B3,51B4(少なくとも他端側規定部51B3)が突出して、上記端縁372が他端側規定部51B3に当接可能となるように構成してもよい。この場合の軸部36の回動範囲は、0°以上、67.5°以下となる。
また、更に上記操作部が操作されると、上記第3規制位置まで、他端側規定部51B4が突出して、上記端縁372が他端側規定部51B4に当接可能となるように構成してもよい。この場合の軸部36の回動範囲は、0°以上、45°以下となる。
このような構成を有する調整部であっても、上記第3実施形態に係るヘッドホンと同様の効果を奏することができる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態に係るヘッドホンは、上記ヘッドホン1と同様の構成を有するが、上記回動範囲において所定角度毎に軸部、ひいては、ハンガーを係止可能に構成されている点で相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一又は略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図12は、本実施形態に係るヘッドホン1Cが備える放音部3C及び調整部5Cの構成を示す模式図である。
本実施形態に係るヘッドホン1Cは、図12に示すように、放音部3及び調整部5に代えて、放音部3C及び調整部5Cを備える他は、上記ヘッドホン1と同様の構成を有する。
放音部3Cは、軸部36に代えて軸部36Cを有する他は、放音部3と同様の構成を有し、軸部36Cは、凹部37の他、切欠36C1〜36C7を有する。
切欠36C1〜36C7は、軸部36Cの外周面に沿って等間隔に形成され、本実施形態では、当該軸部36Cの中心軸を中心として15°毎に形成されている。そして、これら切欠36C1〜36C7のいずれかには、後述する調整部5Cを構成する挿入部5C1が挿入される。
【0054】
調整部5Cは、上記調整部5,5A,5Bと同様に、各連結部4内に配置され、軸部36C、ひいては、放音部3Cの回動範囲を調整する。この調整部5Cは、軸部36Cの凹部37内に配置される上記固定規定部51を有する他、凸状の挿入部5C1と、付勢部5C2と、を有する。
これらのうち、付勢部5C2は、連結部4の内面に取り付けられて、挿入部5C1を軸部36C側に付勢する。このような付勢部5C2は、例えば圧縮コイルばねや、ゴム等により形成された弾性部材によって構成できる。
【0055】
挿入部5C1は、切欠36C1〜36C7のいずれかに挿入されて、軸部36Cを係止し、これにより、当該軸部36Cの回動を規制する。この挿入部5C1は、凹部37の端縁371が第1固定規定部511に当接する場合、すなわち、軸部36Cの回動角が0°の場合に、切欠36C1〜36C7のうち最も+D1方向側に位置する切欠36C1に挿入される。また、挿入部5C1は、凹部37の端縁372が第2固定規定部512に当接する場合、すなわち、軸部36Cの回動角が90°である場合に、切欠36C1〜36C7のうち最も−D1方向側に位置する切欠36C7に挿入される。他方、軸部36Cの回動角が45°である場合には、挿入部5C1は、切欠36C1〜36C7のうち中央に位置する切欠36C4に挿入される。
【0056】
図13は、放音部3Cの回動状態を上方から見た図である。
このような挿入部5C1が切欠36C1〜36C7のいずれかに挿入されることにより、固定規定部51に端縁371,372が当接する軸部36Cの0°以上、90°以下の回動範囲内の任意の位置で、当該軸部36Cが係止される。これにより、図13に示すように、放音部3Cを、上記0°以上、90°以下の回動範囲において15°単位で+D1方向及び−D1方向に回動できる。
この際、放音部3Cを回動させて、切欠36C1〜36C7のいずれかに挿入部5C1が挿入される際のクリック感を使用者に付与できる。従って、使用者が放音部3Cの回動角を把握しやすくすることができる。
【0057】
[第4実施形態の作用効果]
以上説明した本実施形態に係るヘッドホン1Cによれば、以下の効果を奏することができる。
調整部5Cは、軸部36Cの回動軸AX2の周方向に沿って所定角度(本実施形態では15°)毎に当該軸部36Cを係止する係止部としての挿入部5C1を有する。これによれば、当該挿入部5C1が軸部36Cの切欠36C1〜36C7のいずれかに挿入されることによって、放音部3Cが上記角度毎に係止される。このため、当該放音部3Cを所望の角度に位置付けやすくすることができる他、当該放音部3Cが不意に回動することを抑制できる。
【0058】
なお、上記ヘッドホン1Cでは、調整部5Cは、凹部37の内側に配置される固定規定部51を有し、当該固定規定部51に端縁371,372が当接する範囲に、放音部3C(軸部36C)の回動範囲が規定されるとした。しかしながら、上記調整部5Cは、係止部として機能する挿入部5C1及び付勢部5C2を有することから、当該固定規定部51は無くてもよい。なお、このような固定規定部51が設けられていれば、挿入部5C1と切欠36C1〜36C7との係合が解除されて、放音部3Cが一周以上回動(回転)してしまうことを抑制できる。
【0059】
[実施形態の変形]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記各実施形態では、放音部の回動範囲は、上記基準位置を0°とした場合に90°以下の範囲に設定されるとした。しかしながら、これに限らず、放音部の最大回動角は、適宜変更可能である。すなわち、放音部の最大回動角は、90°より大きくてもよく、例えば、180°であってもよい。なお、放音部の回動角が360°以上となると、内部に設けられた放音装置を接続するコードが捻じれる可能性があるため、最大回動角は、360°より小さいことが好ましい。
なお、基準位置に放音部が位置する場合、ヘッドホンは、上記通常使用姿勢を取るとした。しかしながら、これに限らず、基準位置は、他の姿勢となった際の放音部の位置でもよい。
更に、固定規定部51の第1固定規定部511及び一端側規定部51B1は移動されない構成としたが、移動規定部52,52Aのように、操作部に対する操作に応じて移動可能としてもよい。
【0060】
上記第1実施形態では、第2回動範囲は、基準位置を0°とした場合の0°以上、45°以下の範囲とした。上記第3実施形態では、第2回動範囲は、基準位置を0°とした場合の0°以上、22.5°以下の範囲とし、第3回動範囲は、0°以上、45°以下の範囲とした。しかしながら、これに限らず、各回動範囲内の最大角度は、第1回動範囲の最大角度未満であれば、適宜変更可能である。ここで、当該各角度範囲内の最大角度が、40°以上、60°以下の範囲であれば、DJ等の使用者が通常とは異なる形態でヘッドホンを装着する場合であっても、各放音部3を使用者の身体に沿うように配置でき、一対の放音部3のうち一方が邪魔になることを抑制できる。
【0061】
上記第3実施形態では、多段規定部51Bは、回動軸AX2に沿う方向において位置を違えて配置され、かつ、回動軸AX2の周方向において位置を違えて配置される3つの他端側規定部51B2〜51B4を有するとした。しかしながら、これに限らず、他端側規定部の数は、適宜変更可能である。また、他端側規定部51B2〜51B4の角度間隔も、22.5°に限らず、例えば15°等、適宜変更可能である。
【0062】
上記第2実施形態では、第1回動範囲を規定する凹部37内の所定位置に移動規定部52Aを移動可能に構成されているとした。また、上記第4実施形態では、軸部36Cが有する複数の切欠36C1〜36C7のいずれかに挿入部5C1が挿入されることによって、当該軸部36Cの回動が規制されるとした。このような上記第2実施形態の構成と、上記第4実施形態の構成とを組み合わせてもよい。例えば、移動規定部52Aの外側の面に凸状の挿入部を設け、当該移動規定部52Aの移動範囲に応じて当該移動規定部52Aの外側に、挿入部が挿入される凹状部材を所定角度(例えば15°)毎に配置し、これら凹状部材を移動規定部52A側に付勢する付勢部材を設けてもよい。この場合、操作部によって移動規定部52Aを移動させる際に、上記クリック感を生じさせることができる他、移動後の移動規定部52Aを係止できる。
【0063】
上記第4実施形態では、放音部3Cの軸部36Cには、当該軸部35Cの中心軸を中心として15°毎に切欠36C1〜36C7が形成され、当該切欠36C1〜36C7のいずれかに係止部としての挿入部5C1が挿入されることによって、軸部36C、ひいては、放音部3Cの回動が規制されるとした。しかしながら、これに限らず、当該切欠の形成間隔(形成角度)や数は、適宜変更可能である。例えば、切欠は、20°毎に形成されていてもよい。
【0064】
上記各実施形態では、放音部3,3B,3Cは、ハウジング31を支持し、かつ、調整部5,5A,5B,5Cと係合する軸部36,36B,36Cを有するハンガー34を備えるとした。しかしながら、これに限らず、放音部は、ハウジングを回動可能に支持し、かつ、ヘッドバンドに設けられた連結部に連結されるハンガーを有さない構成としてもよい。この場合、放音部が有する軸部36,36B,36Cは、放音部においてどの部位に位置していてもよい。例えば、軸部は、ハウジングに設けられていてもよく、当該ハウジングが連結部、ひいては、ヘッドバンドに直接連結されていてもよい。
【0065】
上記各実施形態では、ヘッドバンド2の左右に、放音部3,3B,3C、連結部4及び調整部5,5A,5B,5Cがそれぞれ設けられるとした。すなわち、ヘッドホンは、ヘッドバンドと、それぞれ一対の放音部、連結部及び調整部と、を備えるとした。しかしながら、これに限らず、ヘッドバンドにおける左右の一方にのみ、放音部、連結部及び調整部が設けられる構成としてもよく、また、調整部のみが、ヘッドバンドの左右の一方にのみ設けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1C…ヘッドホン、2…ヘッドバンド、3,3B,3C…放音部、32…放音装置、36,36B,36C…軸部、37…凹部、4…連結部、5,5A,5B,5C…調整部、51…固定規定部、511…第1固定規定部、512…第2固定規定部、52,52A…移動規定部、53…切替部、541…本体部(ダイヤル)、541A…本体部、51B1…一端側規定部、51B2,51B3,51B4…他端側規定部、52B…回動規制部、5C1…挿入部(係止部)。
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