特許第6719207号(P6719207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6719207偏心ブッシュを備えた金型装置及びそれを用いたかしめ位置調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719207
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】偏心ブッシュを備えた金型装置及びそれを用いたかしめ位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20200629BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20200629BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20200629BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B21D28/00 D
   B21D39/03 B
   B21D28/34 L
   B21D28/02 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-256876(P2015-256876)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119288(P2017-119288A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年10月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】豊丸 陽平
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−243614(JP,A)
【文献】 特開平10−277668(JP,A)
【文献】 特開平03−011957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/00 − 28/34
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンドパンチを備えた上金型と、前記ベンドパンチと対となるダイ孔が形成されたダイを備えた下金型と、前記上金型と共に昇降し、打抜き加工時に被打抜き材を前記下金型に押し当てると共に、前記ベンドパンチの先端部を前記ダイ孔に案内するストリッパープレートとを有する金型装置において、
前記ストリッパープレートには、前記ベンドパンチの先端部を貫通させて、該ベンドパンチの軸心位置と前記ダイ孔の軸心位置の間に生じている軸ずれに応じて、該ベンドパンチの先端部を該軸ずれの方向と反対方向に該軸ずれのずれ幅だけ移動させて、該ベンドパンチの先端部の軸心位置と該ダイ孔の軸心位置の軸ずれを修正する偏心ブッシュが装着され、該偏心ブッシュの外周部には、第1の溝部が軸方向に沿って形成され、前記ストリッパープレートは、前記偏心ブッシュが嵌入可能な装着部を有し、該装着部の外周部には、前記第1の溝部と対となって貫通部を形成する第2の溝部が形成され、前記貫通部には、前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部を固定する位置決めピンが嵌入されていることを特徴とする金型装置。
【請求項2】
請求項1記載の金型装置において、前記偏心ブッシュは円柱形状であって、該偏心ブッシュの内部の偏心した位置には、前記ベンドパンチの先端部が貫通する案内部が軸方向に沿って形成され、前記第1の溝部は、前記案内部に対して前記偏心ブッシュの外周部の予め設定された周方向角度位置に形成され、前記貫通部は、断面円形形成され、前記位置決めピンは、前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部の周方向角度位置を固定することを特徴とする金型装置。
【請求項3】
請求項2記載の金型装置において、前記案内部は、前記偏心ブッシュの軸心位置に対して任意の方向に3〜10μmの範囲で偏心した位置に形成されていることを特徴とする金型装置。
【請求項4】
請求項3記載の金型装置において、前記偏心ブッシュの軸心と前記案内部の軸心を結ぶ線分を該偏心ブッシュの軸心側に延長した直線と前記偏心ブッシュの外周輪郭線とが交わる位置を起点とし、Nを8以上の整数として、前記第1の溝部は、前記外周輪郭線をN等分する周方向角度位置のいずれか1に対応する周方向角度位置に形成され、前記第2の溝部は、前記装着部の外周部の設定された周方向角度位置に1つ形成されていることを特徴とする金型装置。
【請求項5】
請求項3記載の金型装置において、前記第1の溝部は、前記偏心ブッシュの軸心と前記案内部の軸心を結ぶ直線が前記偏心ブッシュの外周輪郭線と交わる位置に該偏心ブッシュの軸心を挟んで対向して形成され、前記第2の溝部は、前記装着部の外周部の設定された周方向角度位置と、該設定された周方向角度位置に対して90度、135度、及び225度の周方向角度位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする金型装置。
【請求項6】
上金型にベンドパンチを、下金型に該ベンドパンチと対となるダイ孔が形成されたダイをそれぞれ設け、前記上金型と共に昇降するストリッパープレートにより、打抜き加工時に被打抜き材を前記下金型に押し当てると共に、前記ダイ孔に案内される前記ベンドパンチの先端部の軸心位置を調整して形成されるかしめ接合部によるかしめ位置調整方法であって、
前記ベンドパンチの先端部を貫通させ、該ベンドパンチの軸心位置と前記ダイ孔の軸心位置の間に生じている軸ずれに応じて、該ベンドパンチの先端部を該軸ずれの方向と反対方向に該軸ずれのずれ幅だけ移動させて、該ベンドパンチの先端部の軸心位置と該ダイ孔の軸心位置の軸ずれを修正する偏心ブッシュの外周部に第1の溝部を軸方向に沿って形成して該偏心ブッシュを前記ストリッパープレートに設けた装着部に装着し、該装着部の外周部に前記第1の溝部と対となって貫通部を形成する第2の溝部を設け、前記貫通部に位置決めピンを嵌入して前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部を固定することを特徴とするかしめ位置調整方法。
【請求項7】
請求項6記載のかしめ位置調整方法において、前記偏心ブッシュを円柱形状とし、該偏心ブッシュの内部の偏心した位置に前記ベンドパンチの先端部が貫通する案内部を軸方向に沿って形成し前記第1の溝部を該案内部に対して前記偏心ブッシュの外周部の予め設定された周方向角度位置形成すると共に、前記貫通部を断面円形形成する前記第2の溝部を前記装着部の軸方向に沿って設け、前記位置決めピンを前記貫通部に嵌入して、前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部の周方向角度位置を固定することを特徴とするかしめ位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンドパンチ先端部の軸心位置を調整する偏心ブッシュを備えた金型装置及びそれを用いたかしめ位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(A)に示すように、被打抜き材80をストリッパープレート81により下金型のダイ82に押し当てながらベンドパンチ83の先側をダイ82のダイ孔84に案内して、ベンドパンチ83とダイ孔84を用いて被打抜き材80にかしめ接合部85(被打抜き材80の下面側に形成されるかしめ突起86と、上面側に形成されるかしめ凹部87を有する)を形成する場合、ベンドパンチ83の軸心位置とダイ孔84の軸心位置との間に軸ずれ(軸ずれ方向と軸ずれ幅δで規定される)が存在すると、かしめ突起86の軸心位置とかしめ凹部87の軸心位置との間にも同様の軸ずれが生じる。このため、図5(B)に示すように、被打抜き材80から、かしめ接合部85が設けられた鉄心片88を打抜き形成し、かしめ接合部85を介して上下方向にかしめ積層して積層鉄心89を形成すると、下側の鉄心片88と上側の鉄心片88との間にも軸ずれに相当するずれが生じているため、積層鉄心89の軸心が傾いてしまう(積層鉄心89が傾く)という問題が生じる。
一方、従来から、内径打抜きに使用するパンチとダイをそれぞれ偏心ブッシュを介して保持することにより、パンチとダイのそれぞれの軸心を調整して、回転子積層鉄心の内径部と外径部の同軸度を高精度に打抜くことが可能な金型が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−277668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層鉄心89の傾き角度と傾き方向(傾き角度は、かしめ接合部85に生じている軸ずれ幅δの合計距離に依存し、傾き方向は軸ずれ方向に一致する)は、打抜き形成した鉄心片88を積層して積層鉄心89を形成しなければ分からない。このため、特許文献1に記載された金型におけるパンチの軸心位置の調整方法を、ベンドパンチ83の軸心位置の調整に適用しようとすると、ベンドパンチ83の軸心位置を様々な方向に様々な距離だけ移動させた偏心ブッシュを予め準備しておく必要がある。このため、偏心ブッシュの作製には時間と費用を要するという問題、作製した多数の偏心ブッシュを保管しなければならないという問題が生じる。更に、ベンドパンチ83は金型に複数設けられているため、偏心ブッシュを用いてベンドパンチ83の軸心位置を調整することは、非常に煩雑な作業になるという問題も生じる。
また、ストリッパープレート81の位置を調整することによりベンドパンチ83の先端部の案内位置を修正して、ベンドパンチ83の先端部の軸心位置とダイ孔84の軸心位置との間の軸ずれを解消することも考えられる。しかしながら、ベンドパンチ83が複数存在すると、ベンドパンチ83毎に軸ずれは異なるため、ストリッパープレート81の位置を調整すると、全てのベンドパンチ83に同一内容の軸ずれ修正操作が行われることになって、好ましくない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ベンドパンチ先端部の軸心位置をダイ孔に対して容易かつ高精度に調整可能な偏心ブッシュを備えた金型装置及びそれを用いたかしめ位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の本発明に係る金型装置は、ベンドパンチを備えた上金型と、前記ベンドパンチと対となるダイ孔が形成されたダイを備えた下金型と、前記上金型と共に昇降し、打抜き加工時に被打抜き材を前記下金型に押し当てると共に、前記ベンドパンチの先端部を前記ダイ孔に案内するストリッパープレートとを有する金型装置において、
前記ストリッパープレートには、前記ベンドパンチの先端部を貫通させて、該ベンドパンチの軸心位置と前記ダイ孔の軸心位置の間に生じている軸ずれに応じて、該ベンドパンチの先端部を該軸ずれの方向と反対方向に該軸ずれのずれ幅だけ移動させて、該ベンドパンチの先端部の軸心位置と該ダイ孔の軸心位置の軸ずれを修正する偏心ブッシュが装着され、該偏心ブッシュの外周部には、第1の溝部が軸方向に沿って形成され、前記ストリッパープレートは、前記偏心ブッシュが嵌入可能な装着部を有し、該装着部の外周部には、前記第1の溝部と対となって貫通部を形成する第2の溝部が形成され、前記貫通部には、前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部を固定する位置決めピンが嵌入されている。
【0007】
前記目的に沿う第2の本発明に係るかしめ位置調整方法は、上金型にベンドパンチを、下金型に該ベンドパンチと対となるダイ孔が形成されたダイをそれぞれ設け、前記上金型と共に昇降するストリッパープレートにより、打抜き加工時に被打抜き材を前記下金型に押し当てると共に、前記ダイ孔に案内される前記ベンドパンチの先端部の軸心位置を調整して形成されるかしめ接合部によるかしめ位置調整方法であって、
前記ベンドパンチの先端部を貫通させ、該ベンドパンチの軸心位置と前記ダイ孔の軸心位置の間に生じている軸ずれに応じて、該ベンドパンチの先端部を該軸ずれの方向と反対方向に該軸ずれのずれ幅だけ移動させて、該ベンドパンチの先端部の軸心位置と該ダイ孔の軸心位置の軸ずれを修正する偏心ブッシュの外周部に第1の溝部を軸方向に沿って形成して該偏心ブッシュを前記ストリッパープレートに設けた装着部に装着し、該装着部の外周部に前記第1の溝部と対となって貫通部を形成する第2の溝部を設け、前記貫通部に位置決めピンを嵌入して前記装着部内の前記偏心ブッシュの前記第1の溝部を固定する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る金型装置及び第2の発明に係るかしめ位置調整方法においては、軸ずれが生じているベンドパンチに対して、軸ずれに応じてベンドパンチの先端部の位置を調整することができ、ベンドパンチの先端部の軸心位置とダイ孔の軸心位置の軸ずれを修正することが可能になる。これによって、かしめ位置のずれを防止することができ、形状精度の高いかしめ積層体を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る金型装置により被打抜き材に形成されるかしめ接合部の説明図、(B)は形成したかしめ接合部によるかしめ積層状態を示す説明図である。
図2】(A)は同金型装置の偏心ブッシュの説明図、(B)はストリッパープレートに形成された装着部の説明図、(C)は偏心ブッシュの装着状態を示す説明図である。
図3】(A)は軸ずれを起こした積層体の平面図、(B)は軸ずれを修正するためにストリッパープレートに装着された偏心ブッシュの説明図である。
図4】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る金型装置の偏心ブッシュの説明図、(B)はストリッパープレートに形成された装着部の説明図、(C)は偏心ブッシュの装着状態を示す説明図である。
図5】(A)はベンドパンチの軸心位置とダイ孔の軸心位置との間に軸ずれが生じている状態で被打抜き材に形成されるかしめ接合部の説明図、(B)は軸ずれが生じているベンドパンチとダイ孔により形成したかしめ接合部によるかしめ積層状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る金型装置10は、ベンドパンチ11を備えた上金型12と、ベンドパンチ11と対となるダイ孔13が形成されたダイ14を備えた下金型15と、上金型12と共に昇降し、打抜き加工時に被打抜き材16を下金型15(ダイ14)に押し当てると共に、ベンドパンチ11の先端部をダイ孔13に案内するストリッパープレート17とを有している。そして、ストリッパープレート17には、ベンドパンチ11の先端部を貫通させて、ベンドパンチ11の軸心位置とダイ孔13の軸心位置の間に生じている軸ずれに応じて、ベンドパンチ11の先端部を軸ずれの方向と反対方向に軸ずれのずれ幅だけ移動させて、ベンドパンチ11の先端部の軸心位置をダイ孔13の軸心位置に一致させる偏心ブッシュ18が装着されている。なお、符号19は、上金型12に設けられてベンドパンチ11を保持するパンチプレートである。
【0011】
偏心ブッシュ18により、ベンドパンチ11の先端部の軸心位置をダイ孔13の軸心位置に一致させることができ、被打抜き材16にかしめ接合部20が形成された際、図1(A)に示すように、被打抜き材16の下側(ダイ14側)に形成されるかしめ突起21の軸心位置と、被打抜き材16の上側(ストリッパープレート17側)に形成されるかしめ凹部22の軸心位置を一致させる(軸ずれを防止する)ことができる。これにより、図1(B)に示すように、被打抜き材16から形成される打抜き片23を、かしめ接合部20を介して上下方向にかしめ積層して積層体24を形成すると、下側の打抜き片23と上側の打抜き片23との間にはずれが発生せず、積層体24の軸心が傾くことはない。以下、詳細に説明する。
【0012】
図2(A)に示すように、偏心ブッシュ18は円柱形状であって、偏心ブッシュ18の内部の偏心した位置、例えば、偏心ブッシュ18の軸心位置に対して任意の方向に3〜10μmの範囲で偏心した位置には、ベンドパンチ11の先端部が貫通する案内部25(断面形状は、ベンドパンチ11の断面形状と相似形状を有する)が軸方向に沿って形成されている。また、案内部25に対して偏心ブッシュ18の外周部の予め設定された周方向角度位置、例えば、偏心ブッシュ18の軸心と案内部25の軸心を結ぶ線分を偏心ブッシュ18の軸心側に延長した直線と偏心ブッシュ18の外周輪郭線とが交わる位置(以下、外周部の0度位置という)を起点として、外周輪郭線を8等分する周方向角度位置(0度位置、45度位置、90度位置、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、及び315度位置)のいずれか1に対応する周方向角度位置には、第1の溝部26が軸方向に沿って形成されている。
【0013】
図2(B)に示すように、ストリッパープレート17は、偏心ブッシュ18が嵌入可能な装着部27を有し、装着部27の外周部の設定された周方向角度位置(金型装置10に設定した座標系を用いて位置が特定可能)には、第1の溝部26と対となって(と対向して)断面円形の貫通部28(図2(C)参照)を形成する第2の溝部29が1つ軸方向に沿って形成されている。そして、貫通部28には、装着部27内の偏心ブッシュ18の第1の溝部26(装着部27内で第2の溝部29に対向する第1の溝部26)の周方向角度位置を固定する位置決めピン30が嵌入されている。
【0014】
従って、案内部25が3〜10μmの範囲で偏心した位置に形成され、第1の溝部26が、0度位置、45度位置、90度位置、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、及び315度位置にそれぞれ形成された8種類の偏心ブッシュ18を予め作製しておくと、8種類の中から偏心ブッシュ18を選択して装着部27内に、偏心ブッシュ18に形成された第1の溝部26が、装着部27の外周部に形成された第2の溝部29に対向するように嵌入することにより、案内部25を装着部27(偏心ブッシュ18)の軸心位置に対して(ストリッパープレート17内において)8方向の中から目的とする方向に、3〜10μmの範囲で偏心させることができる。
【0015】
例えば、図2(C)において、(a)に示すように、0度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を偏心ブッシュ18の軸心位置から第2の溝部29側に向けて(従って、0度方向に向けて)偏心させることが、(b)に示すように、45度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して45度傾いた方向に偏心させることが、(c)に示すように、90度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して90度傾いた方向に偏心させることができ、(d)に示すように、135度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して135度傾いた方向に偏心させることができる。
【0016】
同様に、(e)に示すように、180度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して180度傾いた方向に、(f)に示すように、225度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して225度傾いた方向に、(g)に示すように、270度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して270度傾いた方向に、(h)に示すように、315度位置に形成された第1の溝部26と第2の溝部29を対向させると、案内部25を0度方向に対して315度傾いた方向にそれぞれ偏心させることができる。
【0017】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る金型装置10を使用した偏心ブッシュ18によるかしめ位置調整方法について説明する。
先ず、金型装置10の上金型12にベンドパンチ11を、下金型15にベンドパンチ11と対となるダイ孔13が形成されたダイ14をそれぞれ設け、上金型12と共に昇降するストリッパープレート17により、打抜き加工時に被打抜き材を下金型15に押し当てると共に、ベンドパンチ11の先端部をダイ孔13に案内してかしめ接合部20を形成し、図3(A)に示すように、かしめ接合部20が形成された被打抜き材から打抜き片31を形成しながら、かしめ接合部20を介してかしめ接合して積層体32を作製する。
【0018】
次いで、得られた積層体32を測定台(図示せず)に載置し、積層体32と並べて測定台に載置したスタンド(図示せず)を積層体32を中心とする円周上で位置を変えながら、スタンドに昇降可能に取付けた図示しないダイヤルゲージ(積層体32の軸心の傾きを測定する測定器の一例)の先端部を積層体32の側面に当接させて、積層体32の傾き方向と傾き角度を求める。そして、積層体32の傾き方向と傾き角度から、打抜き片31のかしめ接合部20に生じている軸ずれの方向とずれ幅を算出する。
【0019】
かしめ接合部20に生じている軸ずれの方向とずれ幅が求まると、ストリッパープレート17に形成した装着部27の外周部に形成した第2の溝部29に、偏心ブッシュ18の第1の溝部26を対向させた際に、偏心ブッシュ18の偏心方向がかしめ接合部20に生じている軸ずれの反対方向に一致するか又は近く、かつ偏心ブッシュ18の軸心位置に対する偏心量がかしめ接合部20に生じている軸ずれのずれ幅に一致するか又は近い偏心ブッシュ18を選定する。そして、選定した偏心ブッシュ18を、図3(B)に示すように、ストリッパープレート17の装着部27に嵌入させ、第1の溝部26と第2の溝部29が対向して形成される貫通部28に位置決めピン30を嵌入して、装着部27内の偏心ブッシュ18の第1の溝部26の周方向角度位置を固定する。
これによって、ベンドパンチ11の軸心位置とダイ孔13の軸心位置の間に軸ずれが存在しても、ベンドパンチ11の先端部の軸心位置とダイ孔13の軸心位置との間の軸ずれを修正することができる。
【0020】
本発明の第2の実施の形態に係る金型装置は、第1の実施の形態に係る金型装置10と比較して、図4(A)、(B)に示すように、偏心ブッシュ33に2つの第1の溝部34、35が形成されていること(なお、案内部36は、第1の溝部35側に偏心して設けられている)、ストリッパープレート37の装着部38の外周部に4つの第2の溝部39、40、41、42が形成されていることが特徴となっている。このため、第1の実施の形態と同一の構成部材には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0021】
第1の溝部34、35は、偏心ブッシュ33の軸心と案内部36の軸心を結ぶ直線が偏心ブッシュ33の外周輪郭線と交わる位置に偏心ブッシュ33の軸心を挟んで対向して形成されている。
また、第2の溝部39は、装着部38の外周部の設定された周方向角度位置(金型装置10に設定した座標系を用いて位置を特定することができ、以下、外周部の0度位置という)に形成され、第2の溝部40、41、及び42は、外周部の0度位置に対して90度、135度、及び225度となる外周部の周方向角度位置にそれぞれ形成されている。
【0022】
従って、図4(C)において、(a)に示すように、第1の溝部34と第2の溝部39を対向させて形成される貫通部43に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置に対して位置決めピン30から遠ざかる方向、即ち、偏心ブッシュ33の軸心位置から第2の溝部39の中心位置に向かう方向(以下、0度方向という)に対して反対方向(180度方向)に偏心させることができ、(b)に示すように、第1の溝部35と第2の溝部40を対向させて形成される貫通部44に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置から位置決めピン30側に向かう方向(0度方向に対して反時計回りに90度傾いた方向)に偏心させることができ、(c)に示すように、第1の溝部35と第2の溝部42を対向させて形成される貫通部45に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置から位置決めピン30側に向かう方向(0度方向に対して時計回りに135度傾いた方向)に偏心させることができ、(d)に示すように、第1の溝部34と第2の溝部41を対向させて形成される貫通部46に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置に対して位置決めピン30から遠ざかる方向(0度方向に対して時計回りに45度傾いた方向)に偏心させることができる。
【0023】
同様に、(e)に示すように、第1の溝部35と第2の溝部39を対向させて形成される貫通部47に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置から位置決めピン30側に向かう方向(0度方向)に偏心させることができ、(f)に示すように、第1の溝部34と第2の溝部40を対向させて形成される貫通部48に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置に対して位置決めピン30から遠ざかる方向(0度方向に対して時計回りに90度傾いた方向)に偏心させることができ、(g)に示すように、第1の溝部35と第2の溝部41を対向させて形成される貫通部49に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置から位置決めピン30に向かう方向(0度方向に対して反時計回りに135度傾いた方向)に偏心させることができ、(h)に示すように、第1の溝部34と第2の溝部42を対向させて形成される貫通部50に位置決めピン30を嵌入させると、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置に対して位置決めピン30から遠ざかる方向(0度方向に対して反時計回りに45度傾いた方向)に偏心させることができる。
【0024】
以上のように、第2の実施の形態に係る金型装置では、一つの偏心ブッシュ33を用いて、案内部36を偏心ブッシュ33の軸心位置から8方向に向けて偏心させることができる。従って、本発明の第2の実施の形態に係る金型装置で使用する偏心ブッシュ33によるかしめ位置調整方法では、軸心位置に対する案内部36の偏心量が3〜10μmの範囲で変化している複数種類の偏心ブッシュ33を予め作製しておき、形成した積層体のかしめ接合部に生じている軸ずれの方向とずれ幅を求め、複数種類の偏心ブッシュ33の中から、軸心位置に対する案内部36の偏心量が、かしめ接合部に生じているずれ幅に一致するか又は近い偏心ブッシュ33を選択する。
【0025】
次いで、偏心ブッシュ33を装着部38に嵌入させた際に、偏心ブッシュ33の案内部36の偏心方向が、かしめ接合部に生じている軸ずれの反対方向に一致するか又は反対方向に近い方向となるような第1の溝部34、35と第2の溝部39〜42の組合わせを求める。そして、求めた組合わせにより第1の溝部34、35と第2の溝部39〜42で形成される貫通部43〜50に位置決めピン30を嵌入する。これによって、ベンドパンチ11の軸心位置とダイ孔13の軸心位置の間に軸ずれが存在しても、ベンドパンチ11の先端部の軸心位置をダイ孔13の軸心位置に一致させることができる。
【0026】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、第1の実施の形態では、第1の溝部を外周輪郭線を8等分(N=8)する周方向角度位置のいずれか1に対応する周方向角度位置に形成したが、8以上の整数等分(製造上は、8以上の偶数等分が好ましい)する周方向角度位置のいずれか1に対応する周方向角度位置に形成することもできる。Nを大きくすることにより、ベンドパンチの先端部の軸心位置とダイ孔の軸心位置の軸ずれの方向修正を精度よく行うことができる。
また、第1、第2の実施の形態では、偏心ブッシュは円柱形状で説明したが、四角柱形状であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10:金型装置、11:ベンドパンチ、12:上金型、13:ダイ孔、14:ダイ、15:下金型、16:被打抜き材、17:ストリッパープレート、18:偏心ブッシュ、19:パンチプレート、20:かしめ接合部、21:かしめ突起、22:かしめ凹部、23:打抜き片、24:積層体、25:案内部、26:第1の溝部、27:装着部、28:貫通部、29:第2の溝部、30:位置決めピン、31:打抜き片、32:積層体、33:偏心ブッシュ、34、35:第1の溝部、36:案内部、37:ストリッパープレート、38:装着部、39、40、41、42:第2の溝部、43、44、45、46、47、48、49、50:貫通部
図1
図2
図3
図4
図5