【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月3日発行 「第63回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集(2016 東京工業大学 大岡山キャンパス)、21p−S321−2、03−514」にて公開 平成28年3月3日発行 「第63回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集(2016 東京工業大学 大岡山キャンパス)、21p−S321−3、03−515」にて公開
【文献】
J.A.Bossard et al.,"Genetic Algorithm Synthesis of Planar Zero Index Metamaterials for the Infrared with Application to Electromagnetic Cloaking",2007 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium,2007年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
400nm以上2000nm以下の特定の波長の電磁波に対して共振する複数の微細共振器が、前記特定の波長の電磁波を透過し、かつ、厚さが50μm以下である樹脂フィルムの面内方向及び厚さ方向に配置されているメタマテリアルフィルム。
400nm以上2000nm以下の波長域に対する前記樹脂フィルムの積分球を検出器とした分光光度計によって測定された光透過率が、全域に亘り75%以上である請求項1又は請求項2に記載のメタマテリアルフィルム。
支持基板上に、樹脂又は樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、400nm以上2000nm以下の特定の波長の電磁波を透過し、かつ、厚さが50μm以下である第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層上に、前記第1樹脂層の面内方向に配置され、前記特定の波長の電磁波に対して共振する複数の微細共振器を形成する微細共振器形成工程と、
前記複数の微細共振器が形成された前記第1樹脂層を前記支持基板から剥離する剥離工程と、
前記微細共振器形成工程の後、前記剥離工程の前に、前記複数の微細共振器が形成された前記第1樹脂層上に、前記樹脂又は前記樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、前記特定の波長の電磁波を透過し、かつ、厚さが50μm以下である第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、
を有するメタマテリアルフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るメタマテリアルフィルムについて説明する。
本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、数値範囲の上限のみに単位が付されている場合はその数値範囲全体にわたって同じ単位であることを意味する。
また、本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0021】
[メタマテリアルフィルム]
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、400nm以上2000nm以下の特定の波長の電磁波(以下、「特定電磁波」と称する場合がある。)に対して共振する複数の微細共振器(以下、「メタマテリアル」と称する場合がある。)が、前記特定の波長の電磁波(特定電磁波)を透過し、かつ、厚さが50μm以下である樹脂フィルムの面内方向(面内方向とは、樹脂フィルム面に平行する方向をいう)に配置されている。
【0022】
図1は、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムの一例を概略的に示し、
図2は、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを、曲面を有する対象物に装着した状態の一例を示している。本実施形態に係るメタマテリアルフィルム10は、厚みが50μm以下の樹脂フィルム14を基材フィルムとしてメタマテリアル12が配置されているため、可撓性に優れている。したがって、本実施形態に係るメタマテリアルフィルム10を、例えば。
図2に示すように曲面を有する対象物20に貼り付けた場合、メタマテリアル12が曲面の接線方向にセルフアラインに並ぶことから、簡単に3次元実装が可能となる。
以下、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムの構成について具体的に説明する。
【0023】
<微細共振器(メタマテリアル)>
本実施形態における微細共振器(メタマテリアル)は、400nm以上2000nm以下の特定の波長の電磁波に対して共振する構造体であり、メタマテリアルフィルムの用途に応じて選択すればよい。
【0024】
メタマテリアルのサイズ及び形状は、特定電磁波が入射したときに共振によって誘導電流が生じればよく、透過すべき電磁波の波長等に応じて選択すればよい。
メタマテリアルの形状としては、C型、U型、V型、L型、格子型、螺旋型など種々の形状が挙げられる。
また、メタマテリアルのサイズは、対象とする電磁波の波長によるが、例えば、可視光〜マイクロ波のうちの特定の波長の電磁波を透過させる場合、樹脂フィルムの面内方向におけるメタマテリアルの長さは数百nm〜数十μm程度であることが好ましい。
また、メタマテリアルの厚み(樹脂フィルムの厚さ方向における長さ)は、数十nm程度であることが好ましい。
【0025】
例えば、
図3に示すようなサイズを有するCリング状(四角形のリングの一部が開放されている形状)のメタマテリアル12の場合、メタマテリアルの動作周波数は金属構造体(メタマテリアル)の共振周波数となり、LC共振周波数ω
LCは下記のようにして求められる(J. Zhou et al., Phys. Rev. Lett. 95, 223902 (2005))。
【0027】
c:光速
ε
0:真空における誘電率
ε
c:ギャップを構成する材料における比誘電率
μ
0:真空における透磁率
【0028】
メタマテリアルを構成する材料は、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムに対して特定電磁波が入射したときに共振によってメタマテリアルに誘導電流が生じる材料であればよく、金属、合金、金属酸化物等の金属化合物、導電性ポリマー等の導電性材料が挙げられる。
特に、導電性、成膜性等の観点から、金、銀、銅、アルミニウムが好ましい。
【0029】
メタマテリアルは樹脂フィルムの表面に配置されていてもよいが、樹脂フィルム中に埋設されていることが好ましい。メタマテリアルが樹脂フィルム中に埋設されていることでメタマテリアルの離脱を防ぐことができる。
【0030】
また、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、形状及び/又はサイズが互いに異なるメタマテリアル(異種のメタマテリアル)が配置されていてもよい。このような異種のメタマテリアルが配置されていることで、種々の波長の電磁波に対して動作するメタマテリアルフィルムとすることができる。
また、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、メタマテリアルが樹脂フィルムの面内方向と厚さ方向に3次元的に配置されていてもよい。
例えば、樹脂フィルムの面内方向に異種のメタマテリアルが配置されている形態、フィルムの面内方向に同種のメタマテリアルが配置され、かつ、フィルムの厚さ方向に異種のメタマテリアルが配置されている形態、フィルムの面内方向及び厚さ方向に異種のメタマテリアルが配置されている形態が挙げられる。
【0031】
<樹脂フィルム>
本実施形態における樹脂フィルムは、メタマテリアルが少なくとも面内方向に配置された状態で固定する基材フィルムである。本実施形態における樹脂フィルムは、メタマテリアルが共振する特定の波長の電磁波(特定電磁波)を透過し、かつ、50μm以下の厚さを有する。
なお、樹脂フィルムは、入射する特定電磁波を100%透過しなくてもよいが、本実施形態における樹脂フィルムは、メタマテリアルが透過する特定電磁波の吸収率が高いと、メタマテリアルの機能を十分に発揮できない。特定電磁波が樹脂フィルムを透過してメタマテリアルによる機能を発揮させるため、樹脂フィルムは、特定電磁波に対する透過率は高いほど好ましい。樹脂フィルムの特定電磁波に対する透過率は、75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0032】
例えば、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを可視光を対象とする機能性フィルムとして用いる場合、樹脂フィルムは、可視光全域で吸収が少ないことが好ましい。具体的には、本実施形態における樹脂フィルムは、波長400〜2000nmの電磁波に対する透過率が、全域に亙って65%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。なお、本実施形態における樹脂フィルムの上記透過率は、積分球を検出器とした分光光度計によって測定される値である。
【0033】
本実施形態における樹脂フィルムは、特定電磁波に対して透過性を有し、50μm以下の厚さに成膜することができ、メタマテリアルを固定することができる有機材料によって構成される。
本実施形態における樹脂フィルムを構成する材料としては、光透過性、成膜性、耐熱性、靭性、機械的特性などの観点から、好ましい樹脂としてポリイミド、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、脂環式エポキシ、フッ素樹脂等が挙げられ、ポリイミドがより好ましい。特に、耐熱性、耐薬品性のほかに、波長400nm〜2000nmの全域で高い光透過性を発揮する点から、国際公開第2010/113412号に記載されているポリイミドを含有するポリイミドフィルム、及び、国際公開第2010/100874号に記載されているポリイミドを含有するポリイミドフィルムが好ましい。具体的には、下記の第1実施形態のポリイミド及び第2実施形態のポリイミドが好ましい。これらのポリイミドを用いて成膜したポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性等のほか、可視光全域にわたって極めて高い光透過性を有するため、樹脂フィルム中にメタマテリアルが埋設されていても、フィルムに入射した光がメタマテリアルに到達してメタマテリアルの特性を発揮することができる。
【0034】
1−1.第1実施形態のブロックポリイミド
下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含む、ブロックポリイミド。
【化4】
【0035】
式(1A)または式(1B)において、mは、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、nは、式(1B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、かつmの平均値:nの平均値=1:9〜10:0である。式(1A)または式(1B)において、RおよびR”はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である。RとR”は互いに同じでも異なっていてもよい。式(1B)においてR’は、炭素数4〜51の2価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式である。
なお、本明細書において「ブロックポリイミド」とは、分子中に(1A)の繰返し構造であってmが4以上である構造と、(1B)の繰返し構造であってnが4以上である構造とを、それぞれ1以上有する構造をいう。
【0036】
前記ブロックポリイミドは、式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含む。式(1A)で表される繰返し構造単位のジアミンユニットが、シクロヘキサンジアミン由来のジアミンユニットであることを特徴とする。
【化5】
【0037】
式(1A)と式(1B)におけるmとnは、各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数を示す。mの平均値とnの平均値はそれぞれ独立して、2〜1000であることが好ましく、5〜500であることがさらに好ましい。mの平均値とは、ブロックポリイミドに含まれる、式(1A)で表される繰返し構造単位の総数を、式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックの総数で割った値である。nの平均値とは、ブロックポリイミドに含まれる、式(1B)で表される繰返し構造単位の総数を、式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックの総数で割った値である。
【0038】
各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、後述の式(2A’)で表されるオリゴマーと標識付封止剤とを反応させて、第1の標識付オリゴマーを得る。同様に、後述の式(2B’)で表されるオリゴマーと標識付封止剤とを反応させて第2の標識付オリゴマーを得る。そして、それぞれのオリゴマーの標識付きの末端基数を、1H−NMR測定法などにより定量することによって、各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数を求めることもできる。
【0039】
さらに、第1実施形態のブロックポリイミドに含まれる、式(1A)で表される全てのブロックにおいて、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、後述の式(2A’)で表されるオリゴマーと式(2B’)で表されるオリゴマーとの相溶性を損なわない観点では、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数は50以下であることが好ましい。このように、ブロックポリイミドに含まれる式(1A)で表されるブロックの全てが、一定数以上の繰返し構造単位を含むことで、そのブロック由来の特性が得られやすくなる。
【0040】
さらに、mとnの比率は、mの平均値:nの平均値=1:9〜10:0であることが好ましく、mの平均値:nの平均値=2:8〜10:0であることがより好ましい。
【0041】
ブロックポリイミドに含まれる、式(1A)で表される繰返し構造単位の総数と、式(1B)で表される繰返し構造単位の総数との比も、(1A):(1B)=1:9〜10:0であることが好ましく、(1A):(1B)=2:8〜10:0であることがより好ましい。
【0042】
また、式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックを有する第1実施形態のブロックポリイミドは、式(1A)で表される繰返し構造単位を含むランダムポリイミドと比較して、シクロヘキサンジアミン由来の特性、特に低熱膨張係数を発現しやすい。
【0043】
式(1A)におけるシクロヘキサン骨格は、式(1A−1)で表されるトランス体と、式(1A−2)で表されるシス体とを有する。
【化6】
【0044】
式(1A)におけるシクロヘキサン骨格のトランス体とシス体との比率は、トランス体:シス体=10:0〜5:5であることが好ましく、トランス体:シス体=10:0〜7:3であることがより好ましい。トランス体の割合が高くなると、一般的に分子量が増大しやすいため、自己支持性のある膜の形成が容易になり、フィルム形成しやすくなる。
【0045】
式(1A)におけるRは4価の基を示す。Rは、炭素数4〜27であることが好ましい。さらにRは、脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか;環式脂肪族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか;または芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。
【0046】
式(1A)におけるRは、テトラカルボン酸二無水物から誘導される基であり、テトラカルボン酸二無水物は、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物でありうる。
【0047】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、4,4’−イソフタロイルジフタリックアンハイドライドジアゾジフェニルメタン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジアゾジフェニルメタン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−チオキサントンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラキノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−キサントンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0048】
脂環族テトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸−6−酢酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0049】
テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、芳香環上の水素原子の一部もしくは全ては、フルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基などから選ばれる基で置換されていてもよい。また、テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、目的に応じて、エチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、ニトリロ基、及びイソプロペニル基などから選ばれる架橋点となる基を有していてもよい。テトラカルボン酸二無水物には、好ましくは成形加工性を損なわない範囲内で、ビニレン基、ビニリデン基、およびエチニリデン基などの架橋点となる基を、主鎖骨格中に組み込まれていてもよい。
【0050】
なお、テトラカルボン酸二無水物の一部は、ヘキサカルボン酸三無水物類、オクタカルボン酸四無水物類であってもよい。ポリアミドまたはポリイミドに分岐を導入するためである。
【0051】
これらテトラカルボン酸二無水物は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
式(1B)におけるR’は1,4−シクロヘキシレン基以外の2価の基を示す。R’の炭素数は4〜51であることが好ましい。さらにR’は、脂肪族基、単環式脂肪族基(ただし、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか;環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか;または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。
【0053】
式(1B)におけるR’は、ジアミンから誘導される基であり、ジアミンはポリアミド酸やポリイミドを製造できる限り特に制限されない。
【0054】
ジアミンの第一の例は、ベンゼン環を有するジアミンである。ベンゼン環を有するジアミンの例には、
〔1〕p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミンなどのベンゼン環を1つ有するジアミン;
〔2〕3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタンなどのベンゼン環を2つ有するジアミン;
〔3〕1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジンなどのベンゼン環を3つ有するジアミン;
〔4〕4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン環を4つ有するジアミン;
〔5〕1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼンなどのベンゼン環を5つ有するジアミン;
〔6〕4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホンなどのベンゼン環を6つ有するジアミンが含まれる。
【0055】
ジアミンの第二の例には、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノンなどの芳香族置換基を有するジアミンが含まれる。
【0056】
ジアミンの第三の例には、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンなどのスピロビインダン環を有するジアミンが含まれる。
【0057】
ジアミンの第四の例には、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどのシロキサンジアミン類が含まれる。
【0058】
ジアミンの第五の例には、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルなどのエチレングリコールジアミン類が含まれる。
【0059】
ジアミンの第六の例には、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどのアルキレンジアミン類が含まれる。
【0060】
ジアミンの第七の例には、シクロブタンジアミン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン〔トランス−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを含むビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン〔またはメチレンビス(シクロヘキシルアミン)〕、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデンなどの脂環族ジアミン類などが含まれる。
【0061】
式(1B)におけるR’’は4価の基であり、テトラカルボン酸二無水物由来の基である。R’’の例には、式(1A)におけるRと同様の基が含まれる。
【0062】
式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドまたはポリイミドオリゴマーは、非プロトン性極性溶媒に溶解することが好ましい。非プロトン性極性溶媒とは、例えば非プロトン性アミド系溶媒が有効であり;非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミドなどが含まれ;これらアミド系溶媒の中でも、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。溶解するとは、溶解量が10g/l以上であり、好ましくは100g/l以上であることを意味する。
【0063】
後述の通り、第1実施形態のブロックポリイミドは、式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドオリゴマーと、式(2A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸オリゴマーとを、非プロトン性極性溶媒中にて反応させて、ブロックポリアミド酸イミドを得て;それをイミド化することで得られる。ここで、式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドが非プロトン性極性溶媒に溶解できれば、式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドオリゴマーと、式(2A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸オリゴマーとが均一に混合され、容易にブロックポリアミド酸イミドを得ることができる。
【0064】
第1実施形態のブロックポリイミドの、p−クロロフェノール/フェノール=9/1(重量)の混合溶媒とする溶液(濃度0.5g/dl)の35℃で測定した対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましい。この範囲であれば、実用的な分子量であり、所望の固形分濃度で塗布が容易となる。対数粘度が高すぎる場合、一般的に重合が困難となり、また、溶解性が低くなることがある。
【0065】
1−2.第1実施形態のブロックポリアミド酸イミド
第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドは、下記式(2A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを有する。ただし、m:n=10:0である時は例外的に式(2A)のみで示される。
【化7】
【0066】
第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドは、前述のポリイミドの前駆体ともなる。したがって、式(2A)におけるRやmは、式(1A)におけるRやmと同様に定義される。また式(2B)におけるR’、R’’やnは、式(1B)におけるR’、R’’やnと同様に定義される。
【0067】
N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたときの、第1実施形態のブロックポリアミド酸イミド溶液(濃度0.5g/dl)の35℃での対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましい。ポリアミド酸溶液の塗布が容易になるので、ワニスとしての有用性が高まる。
【0068】
第1実施形態のポリアミド酸イミドは、それをワニス成分として用いることができる。ワニスには、第1実施形態のポリアミド酸イミドと溶媒とが含まれるが、ポリアミド酸イミドの濃度は特に限定されない。最終的な膜厚が10μm以下となるような薄膜を形成する場合には、より希薄なワニスとする方が膜厚制御が行いやすい。ワニスの溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。
【0069】
1−3.第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドとポリイミドの製造方法
第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドは、前記式(2A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸(ポリアミド酸オリゴマー)と、前記式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミド(ポリイミドオリゴマー)とを反応させることによって得ることができる。当該反応は、溶媒中で行うことが好ましく、非プロトン性の極性溶媒中で行うことがより好ましい。
【0070】
第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドは、式(2A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸オリゴマーを原料とするが、当該ポリアミド酸オリゴマーは、下記式(2A’)で表されるように、アミン末端のポリアミド酸オリゴマーであることが好ましい。式(2A’)におけるRとmは、式(2A)におけるRとmと同様に定義される。N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたときの、前記ポリアミド酸オリゴマー溶液(濃度0.5g/dl)の35℃での対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましく、0.3〜3.0dl/gであることがより好ましい。
【化8】
【0071】
また、第1実施形態のブロックポリアミド酸イミドは、式(2B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドオリゴマーを原料とするが、当該ポリイミドオリゴマーは、下記式(2B’)であらわされるように、酸無水物末端のポリイミドオリゴマーであることが好ましい。式(2B’)におけるR’とR”とnは、式(2B)におけるR’とR”とnと同様に定義される。N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたときの、前記ポリイミドオリゴマー溶液(濃度0.5g/dl)の35℃での対数粘度は、0.01〜3.0dl/gであることが好ましく、0.05〜2.0dl/gであることがより好ましい。
【化9】
【0072】
なお、式(2A)で表されるポリアミド酸オリゴマーの末端を、酸無水物末端としたり;式(2B)で表されるポリイミドオリゴマーの末端を、アミン末端としたりすると、加熱イミド化反応においてゲル化しやすい。ゲル化の原因は明確ではないが、過剰なアミン部分や酸無水物構造が、イミド結合以外の余剰な結合を形成し、架橋構造が形成されるからであると推定される。
【0073】
式(2A’)で表されるポリアミド酸オリゴマーは、式(3)で示される1,4−シクロヘキサンジアミンと、式(4)で示されるテトラカルボン酸二無水物との脱水重縮合反応により得られる。ここで、脱水重縮合反応させる式(3)のジアミンと、式(4)のテトラカルボン酸二無水物とのモル比率(式(4)のテトラカルボン酸二無水物/式(3)のジアミン)は、0.5以上であって1.0未満であることが好ましく、0.7以上であって1未満であることがより好ましい。分子量が適切に制御されたアミン末端ポリアミド酸オリゴマーを得るためである。ただし、m:n=10:0であり、式(2A)のみで形成される場合には、式(3)で表されるシクロヘキサンジアミンのモル数をX,式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9〜1.1とすることが好ましく、0.95〜1.05とすることがより好ましく、0.97〜1.03とすることがさらに好ましく、0.99〜1.01とすることが特に好ましい。
【化10】
【0074】
式(3)で示される1,4−シクロヘキサンジアミンは、式(3−1)で表されるトランス体と、式(3−2)で表されるシス体とからなる。反応に供される1,4−シクロヘキサンジアミンのうち、トランス体:シス体=10:0〜5:5であることが好ましい。トランス体の比率を高くすると、得られるポリイミドをフィルム化したときに、自己支持性のある膜の形成が容易になり、フィルム形成性が高まる。
【化11】
【0075】
式(4)におけるRは、前記式(1A)におけるRと同様に定義される4価の基である。
【0076】
式(2B’)で表されるポリイミドオリゴマーは、式(5)で示されるジアミンと、式(6)で示されるテトラカルボン酸二無水物との脱水縮合反応およびイミド化反応により得られる。ここで脱水縮合反応させる式(5)のジアミンと、式(6)のテトラカルボン酸二無水物とのモル比率(式(5)のジアミン/式(6)のテトラカルボン酸二無水物)は、0.5以上であって1.0未満であることが好ましく、0.7以上であって1未満であることがより好ましい。分子量が適切に制御された酸無水物末端のポリイミドオリゴマーを得るためである。
【化12】
【0077】
ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物との脱水縮合反応は、反応溶媒中で行うことが好ましく;反応溶媒は、非プロトン性極性溶媒または水溶性アルコール系溶媒などでありうるが、好ましくは非プロトン性極性溶媒である。非プロトン性極性溶媒の例には、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等;エーテル系化合物である、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。水溶性アルコール系溶媒の例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコールなどが含まれる。
【0078】
脱水縮合反応の溶媒は、これらの溶剤を単独、もしくは二種以上を混合して用いることができる。なかでも、溶媒の好ましい例には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンもしくはこれらの組み合わせが含まれる。
【0079】
式(2A)で構成されるポリアミド酸オリゴマー(好ましくは式(2A’)で示される)と、式(2B)で構成されるポリイミドオリゴマー(好ましくは式(2B’)で示される)とを、非プロトン性極性溶媒中で混合して、ブロックポリアミド酸イミドを得る。非プロトン性極性溶媒は、式(2B)で構成されるポリイミドオリゴマーを溶解させればよく特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドンなどでありうる。混合方法には、例えば、スリーワンモータ、ホモミキサ、プラネタリミキサ、ホモジナイザ、高粘度材料撹拌脱泡ミキサなどによる混合があり、10〜150℃の範囲で加温しながら混練してもよい。
【0080】
得られたブロックポリアミド酸イミドは、イミド化することによりブロックポリイミドに変換されてもよい。イミド化の手段は特に限定されないものの、熱的または化学的に行えばよい。イミド化するには、例えば以下の手法があるが特に限定されない。もちろん前述の通り、ワニスを塗膜として、それをイミド化してもよい。
(1)溶媒中のブロックポリアミド酸イミドを、100〜400℃に加熱して、イミド化する方法(熱イミド化)
(2)溶媒中のブロックポリアミド酸イミドを、無水酢酸などのイミド化剤を用いて化学的にイミド化する方法(化学イミド化)
(3)溶媒中のブロックポリアミド酸イミドを、触媒存在下または不存在下、共沸脱水用溶媒の存在下においてイミド化する方法(共沸脱水閉環法)
【0081】
2−1.第2実施形態のポリイミド酸
第2実施形態のポリアミド酸は、下記式(1)で示される繰り返し単位を有する。つまり、ポリアミド酸のジアミンユニットが、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットである繰り返し単位を有する。
【化13】
【0082】
第2実施形態のポリアミド酸の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニット(X)は、以下の2種類のいずれかの幾何異性体(シス体/トランス体)をとりうる。トランス体のユニットは式(X1)で示され、シス体のユニットは式(X2)で示される。
【化14】
【0083】
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比(モル比)は、40/60〜0/100であることが好ましく、20/80〜0/100であることがより好ましい。第2実施形態のポリアミド酸から得られるポリイミドのガラス転移温度は、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比によって制御されうる。つまり、トランス体(X1)の割合の向上にしたがって、得られるポリイミドのガラス転移温度が高まり、つまり耐熱性が高まる。
【0084】
ポリアミド酸に含まれる1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比は、核磁気共鳴分光法によって測定されうる。
【0085】
前記シス/トランス比は、ポリアミド酸の原料モノマーである1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンにおける、シス/トランス比によって調整されうる。つまり、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、その幾何異性を保ったまま、酸二無水物と反応してポリアミド酸を与える。
【0086】
ポリアミド酸のジアミンユニットには、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミン由来のユニットが含まれていてもよい。例えば、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、他のジアミンとが、ポリアミド酸にランダムに配列されていてもよい。ただし、ポリアミド酸の全ジアミンユニットのうちの10〜100モル%は、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のジアミンユニットであることが好ましい。
【0087】
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミン(他のジアミン)は、ポリアミド酸、ポリイミドを製造できる限り特に限定されない。
【0088】
他のジアミンの第一の例は、ベンゼン環を有するジアミンである。ベンゼン環を有するジアミンの例は、前記第1実施形態における〔1〕〜〔6〕で挙げたジアミンと同様である。
また、他のジアミンの第二の例〜第七の例として、前記第1実施形態におけるジアミンの第二の例〜第七の例が挙げられる。
【0089】
第2実施形態のポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸ユニットは、特に限定されない。つまり、式(1)における置換基Rは、炭素数4〜27である4価の有機基であればよい。置換基Rは、脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基でありうる。あるいは置換基Rは、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基でありうる。
【0090】
式(1)における置換基Rは、第2実施形態のポリアミド酸またはポリイミドの原料となるテトラカルボン酸二無水物に由来する基である。テトラカルボン酸二無水物は特に限定されず、ポリアミド酸またはポリイミドを製造できればよい。テトラカルボン酸二無水物は、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物でありうる。
【0091】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例及び脂環族テトラカルボン酸二無水物の例は、前記第1実施形態で挙げた例と同様である。
【0092】
さらに式(1)における置換基Rは、例えば下記式(R1)〜(R4)で表されうる。
【化15】
〔−Y−は、単結合,−CO−,−O−,−SO
2−,−S−,−CH
2−,−C(CH
3)
2−,−CF
2−,−C(CF
3)
2−,−O−Ph−O−,−O−Ph−C(CH
3)
2−Ph−O−を示す〕
【0093】
置換基Rの構造を、得ようとするポリイミドフィルムの特性に応じて、決定することができる。置換基Rを適切に選択すれば、成形後のポリイミドフィルムの立体安定性が高まりうる効果に加えて、熱線膨張係数、寸法安定性、機械的強度、柔軟性や接着性などのフィルム特性を任意に制御されうる。
【0094】
このように、ポリアミド酸またはポリイミドの用途に応じて、置換基Rを選択することが好ましい。また、置換基Rは1種単独であってもよく、2種以上の組合せであってもよい。例えば、2種以上のRが、ポリアミド酸にランダムに配列されていてもよい。
【0095】
第2実施形態のポリアミド酸には、式(1)で示される繰り返し単位の他に、第2実施形態の効果を損なわない限り、他の繰り返し単位を有していてもよい。
【0096】
第2実施形態のポリアミド酸は、モノマーユニットが相違する2種以上のポリアミド酸の混合物(ブレンド)であってもよい。ブレンドされる2種以上のポリアミド酸のうち、全てが式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸であってもよいし;一部だけが式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸であり、残りは式(1)で表される繰り返し単位を有しないポリアミド酸であってもよい。
【0097】
N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたときの、第2実施形態のポリアミド酸溶液(濃度0.5g/dl)の35℃での対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましい。ポリアミド酸溶液の塗布が容易になるからである。
【0098】
第2実施形態のポリアミド酸は、それをワニス成分として用いることができる。ワニスには、第2実施形態のポリアミド酸と溶媒とが含まれるが、ポリアミド酸の濃度は特に限定されない。最終的な膜厚が10μm以下となるような薄膜を形成する場合には、より希薄なワニスとする方が膜厚制御が行いやすい。
【0099】
2−2.第2実施形態のポリアミド酸の製造方法
第2実施形態のポリアミド酸は、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物とを反応(重合反応)させることにより得られる。
【0100】
原料となるジアミンに含まれる1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、下記式で示されるトランス体(Y1)と、シス体(Y2)とが含まれうる。原料となる1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス体(Y2)/トランス体(Y1)の比率は、40/60〜0/100であることが好ましく、20/80〜0/100であることがより好ましい。原料のシス体(Y2)/トランス体(Y1)の比率が、合成されるポリアミド酸の繰り返し単位(1)のシス体(Y2)/トランス体(Y1)と一致する。
【化16】
【0101】
原料となるテトラカルボン酸二無水物は下記式(3A)で示される。式(3A)におけるRは、式(1)におけるRと同様に定義される。
【化17】
【0102】
原料に含まれるジアミンのモル数をX,テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9〜1.1とすることが好ましく、0.95〜1.05とすることがより好ましく、0.97〜1.03とすることがさらに好ましく、0.99〜1.01とすることが特に好ましい。
【0103】
第2実施形態のポリアミド酸は、例えば、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを、非プロトン性極性溶媒または水溶性アルコール系溶媒中で重合することにより得られる。非プロトン性極性溶媒の例には、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等;エーテル系化合物である、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。水溶性アルコール系溶媒の例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコールなどが含まれる。
【0104】
これらの溶剤を単独、もしくは2種以上を混合して用いることができる。なかでも、溶媒の好ましい例には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンもしくはこれらの組み合わせが含まれる。
【0105】
重合反応の手順に特に制限はない。例えばまず、撹拌機及び窒素導入管を備えた容器を用意する。窒素置換した容器内に前述の溶媒を投入し、ポリイミドの固形分濃度が30重量%となるようにジアミンを加えて、温度調整して攪拌及び溶解させる。この溶液に、ジアミン化合物に対して、モル比率が1となるようにテトラカルボン酸二無水物を加え、温度を調整して1〜50時間程度攪拌することにより、ポリアミド酸を得ることができる。
【0106】
2−3.第2実施形態のポリイミド
第2実施形態のポリイミドは、下記式(2)で示される繰り返し単位を含む。つまり、ポリイミドのジアミンユニットが、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットである繰り返し単位を有する。
【化18】
【0107】
式(2)における置換基Rは、式(1)における置換基Rと同様である。
【0108】
第2実施形態のポリイミドの1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニット(X)は、前述のポリアミド酸と同様に、以下の2種類のいずれかの幾何異性体(シス体/トランス体)となりうる。トランス体のユニットは式(X1)で示され、シス体のユニットは式(X2)で示される。
【化19】
【0109】
さらに、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス(X2)/トランス(X1)比率(モル比)は、40/60〜0/100であることが好ましく、20/80〜0/100であることがより好ましい。ポリイミドのガラス転移温度を高めるためである。例えば、第2実施形態のポリイミドのガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は、例えば、シス体(X2)/トランス体(X1)比率と、式(2)における置換基Rの構造を適宜設定することにより調整されうる。
【0110】
p−クロロフェノール/フェノール=9/1(重量)の混合溶媒としたときの、第2実施形態のポリイミド溶液(濃度0.5g/dl)の35℃で測定した対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましい。この範囲であれば、実用的な分子量であり、所望の固形分濃度で塗布が容易となる。対数粘度が高すぎる場合、一般的に重合が困難となり、また、溶解性が低くなることがある。
【0111】
第2実施形態のポリイミドは、前述のポリアミド酸をイミド化(イミド閉環)して得ることができる。特に、前述のポリアミド酸ワニスの塗布膜を加熱および乾燥させて、ポリイミドフィルムを得ることもできる。例えば、金属やガラス等の基板上に、成形後のポリイミドフィルムの厚さが0.1μm〜1mm程度となるようにポリアミド酸ワニスを塗布した後、20℃〜400℃、好ましくは150℃〜350℃、さらに好ましくは200℃〜300℃で、1秒〜10時間程度加熱および乾燥することにより重合させればポリイミドフィルムが形成される。その後、基板からポリイミドフィルムを剥離するか、もしくは基板を溶解除去することなどにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0112】
第2実施形態のポリイミドワニスの塗布手段は、特に限定されないが、例えば、ダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータなどの公知のものが使用できる。
【0113】
2−4.ポリイミド樹脂組成物
第2実施形態のポリイミドに、必要に応じて各種添加剤をさらに添加してポリイミド樹脂組成物としてもよい。
【0114】
なお、本実施形態における樹脂フィルムとしては、市場で入手可能な樹脂を用いて成膜してもよく、光透過性、耐熱性、耐薬品性等の観点から、ECRIOS(登録商標、三井化学株式会社製)を用いて成膜したポイミドフィルムが好ましい。
【0115】
(厚み)
本実施形態における樹脂フィルムは、50μm以下の厚みを有する。
対象とする特定電磁波の波長にもよるが、本実施形態における樹脂フィルムの厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることが好ましい。特に樹脂フィルムの厚さが1μm以下であれば、後述するように複数枚の本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを重ねて積層した場合に、各フィルム中のメタマテリアルのフィルム間の距離(厚さ方向の距離)も小さくなり、可視光領域にも対応し易い。
なお、樹脂フィルムの厚みが薄過ぎるとメタマテリアルフィルムの強度が小さくなり、破断し易くなる。そのため、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムの厚みは500nm以上であることが好ましい。
【0116】
(積層型のメタマテリアルフィルム)
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、2枚以上積層した積層型のメタマテリアルフィルムであってもよい。例えば、各層(各メタマテリアルフィルム)ごとに微細金属周期構造(メタサーフェス)を設計し、設計に基づいて同一平面内でメタマテリアルを作製する。例えば
図4に示すように、メタマテリアルフィルム10A〜10Eを、3次元的に重ね合わせることで、種々の電磁波を透過する積層型のメタマテリアルフィルムとすることもできる。
【0117】
複数のメタマテリアルフィルムを積層する場合、各メタマテリアルフィルムに配置されているメタマテリアルは、同種のメタマテリアルであってもよいし、フィルム毎にメタマテリアルの形状及び/又はサイズが異なるメタマテリアルが配置されていてもよい。また、メタマテリアルフィルム(樹脂フィルム)の厚みが異なるメタマテリアルフィルムを積層してもよい。本実施形態に係るメタマテリアルフィルムの厚みは1枚当たり50μm以下であるため、例えば、
図5に示すように厚み(d1、d3、d3)が異なるメタマテリアルフィルム14X,14Y,14Zを積層しても十分な可撓性を有し、曲面に実装することができる。
【0118】
なお、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを積層して対象物に実装する場合、樹脂フィルムの片面にメタマテリアルが配置されたメタマテリアルフィルムを積層してもよいし、樹脂フィルム中にメタマテリアルが埋設されたメタマテリアルフィルムを積層してもよい。樹脂フィルムの片面にメタマテリアルが配置されたメタマテリアルフィルムを積層すればフィルムの厚さ方向におけるメタマテリアルの間隔を小さくすることができ、一方、樹脂フィルム中にメタマテリアルが埋設されたメタマテリアルフィルムを積層すれば、フィルム間に空気が侵入し難いという利点がある。
【0119】
また、
図4及び
図5に示す形態では、各層ごとに設計したメタマテリアルを同一平面内で形成したメタマテリアルフィルムを積層しているが、例えば、樹脂層の成膜とメタマテリアルの形成を交互に繰り返してメタマテリアルが樹脂フィルムの面内方向と厚さ方向に3次元的に配置されたメタマテリアルフィルムとしてもよい。
【0120】
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは厚みが薄いため、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを重ね合わせることで、樹脂フィルムの面内方向だけでなく、厚さ方向においても目的とする電磁波の波長よりも短い間隔でメタマテリアルが配置した積層型のメタマテリアルフィルムを得ることができる。
【0121】
(メタマテリアルフィルムの製造方法)
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを製造する方法は特に限定されないが、例えば、支持基板上に、樹脂又は樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、特定の波長の電磁波を透過し、かつ、厚さが50μm以下である第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層上に、前記第1樹脂層の面内方向に配置され、前記特定の波長の電磁波に対して共振する複数の微細共振器を形成する微細共振器形成工程と、
前記複数の微細共振器が形成された前記第1樹脂層を前記支持基板から剥離する剥離工程と、
を有するメタマテリアルフィルムの製造方法が挙げられる。
【0122】
なお、樹脂フィルム中にメタマテリアルが埋設されたメタマテリアルフィルムを製造する場合は、微細共振器形成工程の後、剥離工程の前に前記複数の微細共振器が形成された前記第1樹脂層上に、前記樹脂又は前記樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、前記特定の波長の電磁波を透過し、かつ、厚さが50μm以下である第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程を行うメタマテリアルフィルムの製造方法が挙げられる。
以下、樹脂フィルム中にメタマテリアルが埋設されたメタマテリアルフィルムを製造する方法について説明する。
図6は、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを製造する方法の一例を示している。
【0123】
−第1樹脂層形成工程−
第1樹脂層形成工程では、支持基板30上に、樹脂又は樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、厚さが50μm以下である第1樹脂層14Aを形成する(
図6(A))。
支持基板30としては、平面を有し、平面上に樹脂層及び微細共振器12を形成する際に、変形、溶解、溶融などが生じず、第1樹脂層14Aを剥離することができる基板を用いることができる。例えば、ガラス基板、シリコン基板、InP基板などが挙げられる。
【0124】
樹脂又は樹脂前駆体を含む塗布液(以下「樹脂溶液」と称する場合がある。)は、例えば、樹脂フィルムを形成し得る樹脂又は樹脂前駆体と溶媒を含む。
例えば、樹脂フィルムとしてポリイミドフィルムを形成する場合は、ポリイミド前駆体と溶媒を含む樹脂溶液を用い、基板上に塗布して塗膜を形成した後、加熱によりイミド化させることで、固化したポリイミド層を形成することができる。
【0125】
なお、樹脂溶液を塗布する手段は特に限定されず、例えば、スピンコータ、ダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータなどの公知の塗布手段を使用できる。
【0126】
−微細共振器形成工程−
微細共振器形成工程では、前記第1樹脂層14A上に、前記第1樹脂層14Aの面内方向に配置された複数の微細共振器(メタマテリアル)12を形成する。
第1樹脂層14A上に微細共振器12を形成する方法は、第1樹脂層14A上の面内方向に、所望のサイズ、形状及び位置に微細共振器12を配置させることができれば特に限定されない。第1樹脂層14A上に微細共振器12を形成する方法としては、例えば、リフトオフ法、すなわち、第1樹脂層14A上に、複数の微細共振器を形成する位置において第1樹脂層14Aが露出したレジストパターン16を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン16が形成された面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、レジストパターン16を溶解することにより、レジストパターン16上に形成されている金属膜を除去するレジストパターン溶解工程と、を有する方法が挙げられる。
例えば、第1樹脂層14A上に、微細共振器12を形成する位置及び形状に対応して孔18が形成されたレジストパターン16を形成する(
図6(B))。例えば、第1樹脂層14A上にレジストを塗布した後、電子線描画によってレジストパターン16を形成することができる。
次いで、微細共振器12を構成する金属材料で蒸着を行った後、リフトオフ法によって第1樹脂層14Aにダメージを与えずにレジストパターン16を除去する(
図6(C))。これにより第1樹脂層14A上の所定の位置に微細共振器12を配置させることができる。
【0127】
なお、微細共振器12を形成するための金属層は、スパッタリング、蒸着、その他の気相法、無電解めっき等の各種電解めっき等により形成することもできる。
また、第1樹脂層14A上の微細共振器12の形成は、例えばマスク蒸着によって行うこともできる。
【0128】
−第2樹脂層形成工程−
第2樹脂層形成工程では、前記複数の微細共振器12が形成された前記第1樹脂層14A上に、前記樹脂又は前記樹脂前駆体を含む塗布液を塗布して、厚さが50μm以下である第2樹脂層14Bを形成する(
図6(D))。第2樹脂層14Bは、微細共振器12が形成された第1樹脂層14A上に、第1樹脂層14Aと同様にして形成すればよい。
上記のように第1樹脂層14A、微細共振器12及び第2樹脂層14Bを順次形成することで、第1樹脂層14Aと第2樹脂層14Bが一体化した樹脂フィルム14が形成されるとともに、樹脂フィルム14中に微細共振器12が縦横に(2次元的に)配置される。
【0129】
−剥離工程−
剥離工程では、前記複数の微細共振器12が形成された前記第1樹脂層14Aを前記支持基板30から剥離する(
図6(E))。
例えば、支持基板30としてシリコン基板又はInP基板を用いた場合、支持基板30の表面は結晶構造を有し、劈開によって第1樹脂層14Aを剥離することができる。
剥離により、微細共振器12が、樹脂フィルム14の面内方向に配置され、かつ、樹脂フィルム14中に埋設されたメタマテリアルフィルム10を得ることができる。
【0130】
なお、樹脂フィルムの面内方向だけでなく、厚さ方向にも微細共振器(メタマテリアル)が配置されたメタマテリアルフィルムを製造する場合は、第2樹脂層形成工程後、第2樹脂層上に、設計に基づいた形状、サイズ、及び配置で2段目の微細共振器を形成した後、第3樹脂層を形成する。必要に応じて3段目以降の微細共振器及び第4以降の樹脂層を形成した後、剥離工程を行えばよい。
このような方法によれば、樹脂フィルムの面内方向及び厚さ方向において、目的とする電磁波の波長よりも短い間隔で微細共振器(メタマテリアル)が3次元的に配列したメタマテリアルフィルムを得ることができる。
【0131】
(用途)
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、可撓性を有し、メタマテリアルの形状を変えることで、ミリ波・THz波から可視光に至るまで広帯域に応用可能であるため、各用途に応じてメタマテリアルを曲面や凹凸面に実装することが可能となる。
例えば、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、例えば膜厚約1μmの有機薄膜(樹脂フィルム)内にメタマテリアルを実装することで、所望の光学特性(誘電率・透磁率)を持ったフィルムを実現できる。
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを隆起した表面に貼り付けた場合、フィルム内部のメタマテリアルは曲面の接線方向にセルフアラインに並ぶことから、簡単に3次元実装が可能となる。
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、例えば、特定の電磁波の回避などに利用することができ、例えば、飛行機の表面に貼り付けることでマイクロ波レーダーを回避することができる。
また、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムを重ね合わせることで、特定の誘電率および透磁率の分布を作り出すことができ、それにより光学迷彩を実現することが可能となる。
【0132】
本実施形態に係るメタマテリアルフィルムは、メタマテリアル自体の形状に変化を与える構成や外部環境に変化を与える構成を適用したデバイスとすることもできる。
図7は、本実施形態に係るメタマテリアルフィルムと液晶とを組み合わせたデバイス40の一例を示し、
図8は、
図7に示す1ユニット46の構成を概略的に示している。
図7に示すデバイスでは、本実施形態に係るメタマテリアルフィルム40A,40Bのメタマテリアルが配置されているフィルムの面上に、各メタマテリアル42を挟むように配置された制御配線44A,44Bがパターニングされている。このような構成を有する2枚のメタマテリアルフィルム40A,40Bの間に液晶48を配置し、
図8に示すように制御配線44A,44Bに電圧を印加することで液晶48の配向が変化し、メタマテリアルの外部環境が変化する。このような構成を有するデバイス40によれば、メタマテリアルフィルムの光学特性を変化させることができ、高周波全域で、柔軟な光学特性の設計が可能となる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
<実施例1>
[ポリアミド酸またはそのオリゴマーの合成]
【0135】
(合成例1−2)
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)16.0g(0.140モル)と、有機溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)168gとを加え攪拌した。透明溶液としたところへ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)37.1g(0.126モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後しばらくして塩が析出し、不均一系のまま粘度が増大した。オイルバスを外してから、更に18時間室温で攪拌し、末端にCHDA由来のアミノ基を有するポリアミド酸オリゴマーを含む溶液(ポリアミド酸オリゴマーワニス)を得た。
【0136】
(合成例2−2)
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、ノルボルナンジアミン(NBDA)12.3g(0.0800モル)と、N−メチルピロリドン(NMP)125gとを加えて攪拌した。透明溶液としたところへ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4g(0.100モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後、一時的に塩が析出したが、すぐに粘度増大を伴いながら再溶解し均一透明溶液となることを確認した。
【0137】
該セパラブルフラスコに冷却管とディーンスターク型濃縮器を取付けて、キシレン80.0gを反応溶液に追加して、脱水熱イミド化反応を180℃で4時間攪拌しながら行った。キシレン留去後、末端にBPDA由来の酸無水物構造を有するポリイミドオリゴマー溶液(ポリイミドオリゴマーワニス)を得た。
【0138】
合成例1−2で得られたポリアミド酸オリゴマーワニス35.0gと、合成例2−2で得られたポリイミドオリゴマーワニス16.8gとを混合し、高粘度材料撹拌脱泡ミキサ(または混練・混和泡取り装置)(株式会社ジャパンユニックス社製,製品名:UM−118)を用いて合計10分間攪拌して、ブロックポリアミド酸イミドワニスAを得た。
得られたブロックポリアミド酸イミドワニスAの固有対数粘度は、後述する方法で測定したところ、0.74dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。また、得られるブロックポリアミド酸イミドは、ポリアミド酸オリゴマーと、ポリイミドオリゴマーとがそれぞれランダム化されることなく、ポリマー化したものであり、ポリアミド酸ブロックの数:イミドブロックの数は、ほぼ1:1である。
得られたブロックポリアミド酸イミドワニスAから得られるポリイミド膜のガラス転移点(Tg)は、後述する方法で測定したところ、280℃であった。
【0139】
[メタマテリアルフィルムの作製]
(第1ポリイミド層の形成)
支持基板(InP)上に、ブロックポリアミド酸イミドワニスAをスピンコート(2000rpm 5s、6000rpm 60s)によって塗布して、ポリイミド前駆体膜を形成した。
次いで、支持基板上のポリイミド前駆体膜を熱処理(260℃ 2h)により硬化させて第1ポリイミド層(1000nm)を形成した。
【0140】
(メタマテリアルの形成)
さらに、第1ポリイミド層上に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を塗布して、170℃で加熱してPMMA膜(200nm)を形成し、PMMA膜に電子ビームよってCリングを縦横に描画した。
次いで、Ti及びAuの蒸着膜を形成した後、リフトオフプロセスとしてアセトンでPMMAを溶解除去した。これにより第1ポリイミド層上にTi(10nm)/Au(30nm)のCリングアレイ(メタマテリアル)を形成した。
なお、ここでは、サイズが異なる5種類のCリング(メタマテリアル)を形成した(
図10においてa=150、300、500、700、900nm)。
【0141】
(第2ポリイミド層の形成)
第1ポリイミド層上にCリングアレイ(メタマテリアル)を形成した後、第1ポリイミド層上に、第1ポリイミド層の形成と同様にして再度ポリイミドワニスの塗布及び硬化(熱処理)を行った。
【0142】
(剥離)
最後に、支持基板(InP)を裏面から劈開することで、支持基板からフィルムの剥離を行った。これにより、第1ポリイミド層と第2ポリイミド層が一体化したポリイミドフィルムの内部で多数のメタマテリアルがフィルムの面内方向に配置されたメタマテリアルフィルムを得た。
図9は、(A)作製したメタマテリアルフィルムと、(B)メタマテリアルフィルムの一部を拡大したメタマテリアルの配置を示している。
図9(B)及び
図10に示す形状及びサイズを有するCリング状のメタマテリアル12がフィルムの面内方向に規則的に配列していた。
【0143】
[測定]
作製したメタマテリアルを透過フーリエ変換赤外分光光度計(透過FTIR、JASCO社製)を用いて透過スペクトルを測定した。メタマテリアルのサイズごとの透過スペクトルを
図11(A)に示す。なお、ポリイミドフィルム単体の透過特性(樹脂フィルムの光透過率)は、後述する方法で測定し、バックグラウンドとして除去している。また、入射電界の向きが、Cリングのギャップに対して水平になるよう調節した。
図11(A)において2ヶ所の透過強度の減少は、それぞれLC共振、Mie共振に依るものであり、LC共振が起きる周波数帯でフィルムの光学特性(誘電率・透磁率)が変化する。Cリングのサイズ減少に伴って、共振周波数が30THzから150THzまで高周波側へシフトしており、これは理論解析で得た傾向(
図11(B))とも一致している。
【0144】
−ポリアミド酸の固有対数粘度(η)−
固形分濃度が0.5g/dLとなるように、ポリアミド酸をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解して、ポリアミド酸溶液を作製した。得られた溶液の粘度を、ウベローデ粘度計を用いて35℃で測定を行った。
【0145】
−ガラス転移温度(Tg)−
島津製作所製TMA−50型を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分、単位断面積あたりの荷重14g/mm
2で測定した。
【0146】
−樹脂フィルムの光透過率−
積分球つき分光光度計(UV−vis測定装置、HITACHI製、U−4100)に、測定フィルム10μmが反射板と積分球の間に配置されるように設置し、反射吸収スペクトルを測定した(測定範囲300〜2500nm)。
【0147】
<実施例2>
[ポリアミド酸の合成]
(合成例3−1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(14BAC)7.8g(0.055モル)、ノルボルナンジアミン(NBDA)8.5g(0.055モル)と、有機溶媒としてN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)178gとを加えて撹拌した。1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス/トランス比は、後述する方法で算出したところ、9/91であった。
【0148】
ここに、粉状の3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)16.2g(0.055モル)と、ピロメリット酸無水物(PMDA)12.0g(0.055モル)を装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後、約3分で塩の析出が生じた。その後、速やかに再溶解していく様子を確認した。オイルバスを外してから、さらに18時間室温で攪拌し、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体ポリマー:合成例3−1のポリアミド酸)を含む溶液(ポリイミドワニスB)を得た。得られたポリアミド酸の固有対数粘度は、0.94dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。
得られたポリアミド酸から得られるポリイミド膜のガラス転移温度は275℃であった。
【0149】
−シス/トランス体比の算出−
未精製および精製した14BAC各種について、
1H−NMR(溶媒CDCl3)測定を行い、所定磁場範囲におけるシグナルの強度比より、シス/トランス比を算出した。すなわち、シス体由来のNH
2CH
2(2.607ppm、ダブレット)と、トランス体由来のNH
2CH
2(2.533ppm、ダブレット)との比率から求めた。
【0150】
[メタマテリアルフィルムの作製]
第1樹脂層及び第2樹脂層を形成するための塗布液として、ブロックポリアミド酸イミドワニスAをポリイミドワニスBに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてメタマテリアルフィルムを作製した。作製したメタマテリアルフィルムについて透過FTIRによる測定を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。