(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充填包装体には、上記で言及したバリア性及び易開封性の他、製造上の要請、販売時のディスプレイの都合等に基づく種々の機能が更に要求される。
【0007】
例えば、充填包装体を製造するときには、シール部に内容物が付着することがよくある。特に、内容物を充填しながら包装体の製造を行う所謂「製袋充填」を行う場合には、シール部への内容物の付着は不可避である。従って、製袋充填に用いられる製袋材料には、シール部に内容物(夾雑物)が付着しても高いシール性能を発揮する「夾雑物シール性」又は「夾雑シール性」が要求される。
【0008】
包装体のシールは、ヒートシールによることが一般的である。しかしながら、ヒートシールは一般的に一袋当たり数秒間(典型的な夾雑物シールにおいては1〜3秒間)の工程時間を要し、スピードが十分に速いとは言えない。この点、超音波を印加することによってシールする超音波シールの場合には、一袋当たりの工程時間が1秒未満(例えば0.1〜0.5秒間)ですむ。そのため、製袋工程時間を短縮すべき要請から、超音波シールを採用した場合に良好なシール性を有する製袋材料が要求される。
【0009】
更に、小売店において充填包装体を販売するときには、包装体を商品陳列棚に立てた状態で配置し、消費者が商品デザインを視認・認識し易いようにしたいとの要請がある。従って製袋材料には、底辺部にマチを作って立てた状態で配置したときに、陳列に耐える十分な自立性(スタンディング性能)を有することが好ましい。
【0010】
上記の特許文献1及び2には、シール方法を超音波シールによってもよいこと、及び包装体の形態をスタンディングパウチとしてもよいことが記載されている。しかしながら、これらの特許文献においては、上記のことが製袋材料の適用可能性として一般的に記載されているにすぎず、製袋材料を如何なる材料を用いてどのような構成としたときにこれらの性能が良好に発揮されるかについての検討はなされていない。これらの特許文献は更に、夾雑物シール性については一切の言及をしていない。
【0011】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波シールを採用した場合に夾雑物シール性に優れた充填包装体を製造するための製袋材料を提供することであり、好ましくは更に、快適な手切れ性及び良好な自立性をも具備する充填包装体を製造するための製袋材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記のとおりに要約される。
【0013】
[1] 外層及びシーラント層を有し、
前記シーラント層が、引張弾性率が200MPa以上500MPa以下の熱可塑性樹脂から成る膜厚10μm以上50μm以下の層であることを特徴とする、積層フィルム。
【0014】
[2] 前記外層とシーラント層との間にバリア層及び易引裂層を更に有し、前記シーラント層と易引裂層とが接着剤を介して又は介さずに隣接している、[1]に記載の積層フィルム。
【0015】
[3] 総膜厚が50μm以上100μm以下であり、引裂強度が0.6N未満である、[2]に記載の積層フィルム。
【0016】
[4] 前記易引裂層がポリエステル、ポリアミド、及びポリオレフィンから選択される樹脂の1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムから成る層であり、
前記シーラント層がLLDPEから成る層である、[2]又は[3]に記載の積層フィルム。
【0017】
[5] 超音波による夾雑物シール工程を伴う製袋充填に用いられる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【0018】
[6] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層フィルムのシーラント層同士を超音波シールする工程を含むことを特徴とする、製袋方法。
【0019】
[7] 前記超音波シールする工程が、超音波による夾雑物シール工程である、[6]に記載の製袋方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の積層フィルムは、超音波シールを採用した場合に良好なシール性を発現することができ、夾雑物シール性に優れる充填包装体を製造することができる。本発明の好ましい態様の積層フィルムから得られた充填包装体は、良好な手切れ性、良好な自立性等の付加的な性能を更に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の積層フィルムは、外層及びシーラント層を有し、
前記シーラント層が、引張弾性率が200MPa以上500MPa以下の熱可塑性樹脂から成る膜厚10μm以上50μm以下の層であることを特徴とする。本発明の好ましい態様における積層フィルムは、前記外層とシーラント層との間にバリア層及び易引裂層を更に有し、前記シーラント層と易引裂層とが接着剤を介して又は介さずに隣接している。ここで、シーラント層と易引裂層とが直接に接触していることは本発明の要件ではない。これら両層を相互に固定するために、これらの層の間に当業界で通常用いられる接着剤から成る層が介在している場合も、本発明の範囲に包含される。両層間に接着剤を介さずに両層が直接に接触している場合としては、例えば、両層の界面が融合している場合等を例示することができる。
【0024】
すなわち、上記好ましい態様における本発明の積層フィルムを
図1に示した。
図1の積層フィルムは、外層1と、バリア層3と、易引裂層4と、シーラント層2と、をこの順に有し、前記シーラント層2が上記の膜厚及び引張弾性率を有するものである。これらの各層は、各層間に接着剤を介して又は介さずに、相互に隣接して存在することができる。
【0025】
本発明は、上述のとおり、ヒートシール用として従来知られている積層フィルムをそのまま超音波シールに転用した場合に良好なシール性が実現されないことに鑑みてなされたものであり、超音波シールに適した製袋材料としての積層フィルムを提供するものである。
【0026】
ヒートシールは、シーラント層を熱により融解し、シーラント層同士の界面で融解した材料が融合することにより、シールを形成する。そのため、シーラント層を構成する材料としては、比較的柔らかく、融合し易い材料が選択される。また、融解した材料が融合する範囲が、材料の厚さ方向に大きいほどシール性が強くなることが予測されるから、シーラント層の厚さは比較的厚く設計される。一般的には、例えば100μm程度の厚さが採用されている。
【0027】
これに対して超音波シールは、超音波の印加によってシーラント層を振動させ、隣接するシーラント層同士の摩擦熱によって融解させ、両者を融合させることにより、シールを形成する。しかしながら、超音波シール用として従来知られている積層フィルムを用いて超音波による夾雑物シールを行うと、十分なシール性が得られないことが分かった。
【0028】
本発明者らが上記の現象について詳細に検討したところ、超音波による夾雑物シールの場合には、シール時にシーラント層間に夾雑物が存在してシーラント層同士の摩擦が起こり難くなることと、柔らかくて厚いシーラント層に振動が吸収されて減衰することとが相俟って、十分なシール性能が得られなくなることを見出した。
【0029】
そこで本発明においては、超音波による夾雑物シールに適したシーラント層として、比較的硬い材料から成る薄い層を配置して、超音波によって生成する振動を有効に利用することにより、良好なシール性を実現したものである。
【0030】
ここで、シーラント層の厚さが薄いことは、同時に、包装体開封時の手切れ性が向上されるとの結果ももたらした。
【0031】
更に、本発明の構成のシーラント層を有する積層フィルムは極めて高度の夾雑物シール性を示すので、良好なシールを得るための超音波の印加がごく短時間で足り、従って、包装体の内容物に対する超音波の影響を極めて小さくすることも可能となったのである。
【0032】
以下、本発明の積層フィルムが有する各層について、順次詳説する。
【0033】
<外層>
本発明の積層フィルムにおける外層は、包装体の製造後に加えられる物理的衝撃から包装体及び内容物を保護するに足る耐衝撃性を具備し、好ましくはバリア性を兼ね備える材料から成ることが適切である。また、包装体に印刷を施す場合には、印刷工程の実施によって後述のバリア層等にダメージが及ぶ場合があるため、これを補完するために外層が必要である。
【0034】
本発明における外層を構成する材料として適切な例としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等を挙げることができる。これらの材料の具体例としては、
ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を;
ポリオレフィンとして、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を;
ポリアミドとして、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン等を;
それぞれ挙げることができる。
【0035】
外層は、延伸された材料を用いて構成されていることが好ましい。延伸された材料を用いることにより、外層の耐衝撃性及び耐熱性をより高めることができる。この延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。
【0036】
外層の厚さは特に限定されない。得られる包装体に十分な強度を与えるためには、例えば、5μm以上とすることができ、10μm以上とすることが好ましい。一方で外層の厚さの上限値は、シール時の超音波印加による振動の減衰を回避するとともに、充填包装物を陳列した時の内容物の視認性を良くするとの観点から、20μm程度が好ましい。
【0037】
<バリア層>
本発明の積層フィルムにおいて好ましく使用されるバリア層は、外界からのガス(特に酸素)、水分、光の侵入を抑制し、内容物を保護する機能を有する層である。このようなバリア層を構成する材料としては、例えば、アルミニウム箔を用いることができる他、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等から成る基材フィルムの片面又は両面にバリア性を有する蒸着層を設けて成る材料(蒸着膜)を用いることができる。前記バリア性を有する蒸着層は、例えば、アルミニウム、シリカ等の蒸着膜であることができる。
【0038】
バリア層の厚さは、好ましくは5μm以上10μm以下である。
【0039】
バリア層が蒸着膜であるとき、その基材フィルムは前述の外層又は後述の易引裂層の役割を兼ねていてもよい。
【0040】
<易引裂層>
本発明の積層フィルムにおいて好ましく使用される易引裂層は、包装体を開封する場合に、消費者の手による引裂き開封を容易化する機能を有する。本発明の積層フィルムにおいては、この易引裂層が後述のシーラント層と隣接して存在することにより、積層フィルム全体の引き裂き性が良好となる。易引裂層とシーラント層とが密着すると易引裂層の引裂き性能が、好ましくは積層フィルム中で最も厚いシーラント層に伝播して、積層フィルム全体の引裂き性が向上するものと考えられる。
【0041】
易引裂層は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等から成る材料から構成されることができる。これら材料として具体的には、
ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を;
ポリアミドとして、例えば、ナイロン等を;
ポリオレフィンとして、例えば、ポリプロピレン(PP)等を;
それぞれ挙げることができる。
【0042】
これらの材料は、包装体の開封に適した引裂き方向性を有していることが好ましい。例えば、上記の材料をも強いて得られた1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムが、本発明における易引裂層として好ましい。特に好ましく2軸延伸PET、2軸延伸ナイロン(例えば、出光ユニテック(株)製「ユニアスロンTB1000」、ユニチカ(株)製「エンブレムNCBC」等)又は2軸延伸PETのフィルム(例えば、ユニチカ(株)製「エンブレットPCBC」等)である。
【0043】
易引裂性のフィルム材料は、種々の市販品が市場に提供されており、これらの市販品から適当な性状のものを選択して使用することができる。例えば、出光ユニテック(株)製「ユニアスロンTB1000」、ユニチカ(株)製「エンブレムNCBC」、「エンブレットPCBC」等である。
【0044】
本発明における易引裂層の厚さは、
好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり;そして、
好ましくは40μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
【0045】
<シーラント層>
本発明の積層フィルムにおけるシーラント層は、超音波印加時の振動に起因する摩擦によって溶融して相互に融着することができ、好ましくは内容物のレトルト処理に耐える耐熱性を有する材料から成る。この材料として具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、ポリメチルペンテン、ポリブテン等の材料を挙げることができる。これらのうち、良好な超音波シール性、特に超音波の印加によって良好な夾雑物シール性能を示すことから、LLDPEが好ましい。
【0046】
本発明におけるシーラント層は、比較的硬い材料から成る比較的薄い層である。このことは、引張弾性率(ヤング率)が200MPa以上500MPa以下であり、膜厚が10μm以上50μm以下であることによって担保される。
【0047】
シーラント層の引張弾性率は、JIS K7127に準拠して定法により測定することができる。特に推奨される測定方法は後述の実施例において採用した条件下の測定である。シーラント層の引張弾性率は、超音波による振動の減衰を抑制して良好な夾雑物シール性を担保するために、好ましくは225MPa以上であり、より好ましくは250MPa以上である。一方で、摩擦によって溶融して強固なシールの形成を担保するとの観点から、シーラント層の引張弾性率は、400MPa以下であることが好ましく、より好ましくは350MPa以下である。
【0048】
シーラント層の厚さは、溶融によって強固なシールを形成するとの観点から、25μmを超えることが好ましく、より好ましくは30μm以上である。一方で、超音波による振動の減衰を可能な限り抑制するとの観点から、シーラント層の厚さは50μm以下とすることが好ましい。
【0049】
本発明におけるシーラント層は、上記の要件を満たす他、融解熱量が110J/g以下であることが、超音波シール性、特に超音波による夾雑物シール性をより向上させる観点から好ましい。この観点から、シーラント層の融解熱量は、より好ましくは107.5J/g以下であり、更に好ましくは105J/g以下である。一方で、強固なシールを形成するとの観点から、シーラント層の融解熱量は、より好ましくは50J/g以上であり、更に好ましくは75J/g以上である。
【0050】
<各層における任意要件>
上記の各層は、必要に応じて適宜の添加剤を含有していてもよい。ここで使用される添加剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0051】
本発明の積層フィルムは、包装体としたときの内容物の識別のため、或いは商品として陳列されたときの消費者へのアピールのため、品名、商品ロゴ等の印刷を施すことが想定される。印刷は、外層とバリア層との間、又はバリア層と易引裂層と間に施すことが好ましい。印刷は、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷等の適宜の印刷法によることができる。
【0052】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、上記のとおり、外層及びシーラント層を有する。本発明の好ましい態様においては、上記に説明した各層を、外層、バリア層、易引裂層、及びシーラント層の順に有する。ここで、易引裂層とシーラント層とが接着剤を介して又は介さずに隣接して存在していることが、積層フィルム全体の開封性(手切れ性)を良好にするための要件である。同じフィルム材料を用いた場合であっても、積層順を変えて、例えば、外層、易引裂層、バリア層、及びシーラント層の順に積層すると、良好な引裂性を有する積層フィルムは得られない(後述の比較例6参照)。積層フィルムの手切れ性は引裂強度と関連する。本発明の積層フィルムの好ましい引裂き強度については後述する。
【0053】
本発明の積層フィルムにおける各層間は、適当な接着剤によって固定されていることが好ましい。この場合の接着剤は、積層フィルムの製造方法に応じて当業者が適宜に選択することができる。例えば、ドライラミネート用接着剤、プリントラミネート用接着剤、押出ラミネート用AC剤等である。接着剤の量は、フィルム単位面積当たりの接着材料として、層間ごとに、例えば0.5g/m
2以上とすることができ、好ましくは1g/m
2以上である。一方でこの接着剤の量は、例えば10g/m
2以下とすることができ、好ましくは5g/m
2以下である。
【0054】
本発明の積層フィルムの厚さ(総膜厚)は、120μm以下とすることが、良好な超音波シール性を実現する観点から好ましい。積層フィルムの厚さは、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは85μm以下であり、特に好ましくは80μm以下である。一方で、積層フィルムに実用的な幾何的強度を付与するとの観点から、積層フィルムの厚さは、好ましくは35μm以上であり、更に好ましくは50μm以上であり、特に好ましくは60μm以上である。
【0055】
前述のとおり、積層フィルムの手切れ性は引裂強度と関連する。積層フィルムについてJIS K7128−1に準拠して測定した引裂強度が0.60N以下であると、該積層フィルムの手切れ性は良好であると評価することができる。従って、本発明の積層フィルムについて上記基準で測定した引裂強度は、0.60N以下であることが好ましく、より好ましくは0.55N以下であり、より好ましくは0.50N以下である。一方で、使用者が意図するとき以外の不意の開封を避けるため、引裂強度は、好ましくは0.20N以上であり、より好ましくは0.30N以上である。
【0056】
本発明の積層フィルムについてJIS K7127に準拠して測定した引張弾性率は、800MPa以上であることが好ましい。この値は、より好ましくは900MPa以上以下であり、更に好ましくは1,000MPa以上である。一方で積層フィルムの引張弾性率は、好ましくは2,200MPa以下であり、より好ましくは2,000MPa以下である。この範囲の引張弾性率を有するフィルムから製造された包装体は、超音波シール性に優れ、特に、超音波の印加によって良好な夾雑物シール性を示すことから好ましい。
【0057】
夾雑物シール性が良好であると評価することのできる夾雑物シール強度は、内容物によって相違する。しかしながら一般的な指標として、ストログラフ((株)東洋精機製作所製 VES10)を用いて測定した溶着強度が8.0N/15mm以上であると好ましく、10.0N/15mm以上であると更に好ましい。
【0058】
本発明の積層フィルムは、好ましくはディスプレイ性に優れるスタンディングパウチとして適用される。包装体の自立性は、材料フィルムの曲げ剛性と関係することが知られている。この曲げ剛性が概ね25N・mm
2以上のフィルムから製造された包装体は、スタンディングパウチとしたときの自立性に優れると評価することができる。従って、本発明の積層フィルムについて、引張弾性率及び断面2次モーメントから弾性曲線方程式を用いて算出した曲げ剛性は、25N・mm
2以上であることが好ましく、より好ましくは30N・mm
2以上であり、更に好ましくは40N・mm
2以上である。この値は、好ましくは100N・mm
2以下であり、より好ましくは75N・mm
2以下である。
【0059】
<積層フィルムの製造方法>
以上説明してきたような本発明の積層フィルムは、上記の各層を所定の順序で積層する他は、公知の方法によって製造することができる。例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等、又はこれらの組み合わせにより、製造することができる。これらのうち、ドライラミネート法が好適である。
【0060】
<製袋方法>
本発明の積層フィルムは、上記のとおり超音波シール性に優れ、特に、超音波の印加による夾雑物シール性に優れる。従って、本発明の積層フィルムは、超音波によるシール工程を伴う製袋充填に用いることが好ましく、超音波による夾雑物シール工程を伴う製袋充填に用いることが好ましい。つまり、本発明の製袋方法は、積層フィルムのシーラント層同士を超音波シールする工程を含むことが好ましい。
【0061】
製袋に際しては、先ず、本発明の積層フィルムを、そのシーラント層同士が相対するように対向させ、又は折り曲げ、相対向する2辺又は折曲げ部に対向する1辺をヒートシールし、相対向する2辺が閉じた筒状の成形体とする。この成形体において、閉じた2辺が包装体の底辺及び頂辺を構成することとなる。このとき、2辺のうちの片方を、山折り、谷折り、及び山折りの順で、折り曲げ部がM字型となるように構成することにより、スタンディングパウチ型の包装体を製造することができる。
【0062】
ここで、積層フィルムの易引裂層がその引裂強度に方向性を有する場合、引裂強度の弱い方の方向が筒状体の開口方向と一致するように構成することが好ましい。このような構成とすることにより、得られる包装体において高さ方向に直交する方向の開封が容易となるから、該包装体の内容物の消費(例えば開封部からの飲用)が容易となる利点が得られる。
【0063】
次いで上記のような通常の成形体を、超音波シール装置を備えた市販の製袋機に装着して製袋を行う。ここで、製袋機として内容物を充填しながら製袋を行う製袋充填機を用い、超音波シールが夾雑物シールである態様で製袋充填を行うことが、本発明の積層フィルムの利点が最大に発揮される点で好ましい。製袋充填に供される内容物としては、例えば、食品、調味料、医薬品、サプリメント等の任意の液体、粘稠体、又は粉体等であることができる。
【0064】
本発明の積層フィルムを用いて上記のようにして得られた包装体は、優れたシール性によって内容物が漏洩することがなく、開封時の手切れ性に優れるから消費者が容易且つ快適に開封することができ、更に該包装体がスタンディングパウチであるときには自立性に優れるから消費者にアピールするディスプレイが可能である。
【実施例】
【0065】
以下の実施例及び比較例において、各層を構成する材料として使用した樹脂フィルムの詳細は下記表1のとおりである。
【0066】
【表1】
【0067】
<夾雑物シール性の評価>
[実施例1〜3及び比較例1〜4]
実施例1〜3及び比較例1〜3においては、夾雑物シールが困難な練乳を内容物とした場合の夾雑物シール性について評価した。
【0068】
(1)積層フィルムの製造
外層として、片面に試料識別のための記号を筆記したPETを用いた。バリア層としてはALを、易引裂層としては引裂Nyを、シーラント層としては表2に記載した種類のLLDPEを、それぞれ用いた。これらの層を上記に記載の順で、各層間にドライラミネート接着剤(ロックペイント社製、品名「RU−50」)3g/m
2を介在させてドライラミネートすることにより、積層フィルムを製造した。外層は印刷面をバリア層側に向けて積層した。これらの実験例における積層フィルムは、シーラント層の種類が異なる他は、外層、バリア層、及び易引裂層の構成において同一である。
【0069】
(2)製袋充填の実施
上記で得られた各積層フィルムを用いて製袋充填を実施した。製袋充填の手順につき、
図2を参照しながら説明する。
【0070】
積層フィルム5を2枚準備し、シーラント層が内側になるように重ねて縦振動の超音波シール装置を備えた製袋充填機にセットした(
図2(a))。これらフィルムは、縦長であり、フィルムの幅方向(流れ方向に直交する方向)が得られる充填包装体の高さ方向となる。
【0071】
これら2枚のフィルム5の2枚の幅方向端部12の両方(得られる充填包装体の頂部及び底部)をヒートシールして筒状体とした(
図2(b))。更に、この筒状のフィルムの底部13−1(得られる充填包装体の一方の側端部)を流れ方向に直交する方向に超音波シールして袋状とした後、ノズル10から内容物11の充填を開始した。超音波シールは、出力300Jにて幅65mmの領域で0.3秒間行い、内容物11としては練乳を使用した。練乳は、当業界において、夾雑物シールが最も困難な内容物として知られている。
【0072】
内容物11の充填が1ポーション分を超えた時点で
図2(d)の13−2の部分を上記と同様の条件で超音波シール(夾雑物シール)して、内容物11をフィルム内に密封した。
【0073】
次いで、13−2超音波シール部分の中央を切断することにより、内容物11として30gの練乳が充填された、縦110mm、横55mm、及び底幅40mmの縦長の充填包装体20を製造した。
【0074】
(3)夾雑物シール性の評価(内容物が練乳である場合)
上記で得られた充填包装体の超音波シール部(夾雑物シール部)につき、JIS K6854−3に準拠してT型剥離試験を行い、夾雑物シール強度(練乳)を調べた。結果は表2に示した。
【0075】
【表2】
【0076】
シーラント層の融解熱量は、熱による融解のし易さを示すパラメータである。ヒートシールの場合は融解熱量が低いほどシール性能が高くなる傾向が知られている。
【0077】
しかし、超音波による夾雑物シールの場合には、融解熱量が低くても、引張弾性率が低いシーラント層を用いた場合には、充填物を内包する袋体としてのシール性が不足することが分かった(比較例3)。
【0078】
超音波による夾雑物シールの場合には、融解熱量がある程度高くても、引張弾性率が高いシーラント材料を、比較例薄い層として用いることが、良好なシール性を得るために重要であることが分かった(実施例1〜3)。
【0079】
<積層フィルム、充填製袋を用いた、引裂き性・夾雑物シール性(内容物が水)・自立性の評価>
[実施例4〜10]
実施例4〜10においては、内容物として水を用いて充填製袋を行い、得られた充填包装体の引裂き性、夾雑物シール性(水)、及び自立性について評価した。
【0080】
(1)積層フィルムの製造
実施例4における積層フィルムとしては、上記実施例1で得られた積層フィルムを用いた。
実施例5〜10においては、層構成を表3に記載のとおりとした他は、上記実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
【0081】
(2)積層フィルムの評価
i)引裂強度の測定
積層フィルムの引裂強度の測定は、JIS K7128−1に準拠して、23℃及び相対湿度:50%の環境下において、トラウザー法により行った。試験速度は200mm/分とし、引裂きの方向はフィルムのMD方向とした。
【0082】
ii)引張弾性率の測定及び曲げ剛性の評価
積層フィルムの引張弾性率(ヤング率)の測定は、JIS K7127に準拠して、23℃及び相対湿度:50%の環境下において、引張速度:100mm/分にて行った。
【0083】
積層フィルムの曲げ剛性は、上記で測定した引張弾性率と、積層フィルムの総膜厚から算出した断面2次モーメントと、から弾性曲線方程式を用いて算出した。
【0084】
(3)製袋充填の実施
上記で得た各積層フィルムを、シーラント層が内側になるように山折り、谷折り、及び山折りの順で、折り曲げ部がM字型となるように折り曲げた。このM字型の折り曲げ部が得られる充填包装体の底部となり、反対側の端部が頂部となる。
【0085】
この折り曲げたフィルムを、縦振動の超音波シール装置を備えた製袋充填機にセットし、これを筒状体とする際に、ヒートシールを前記折り曲げ部の反対側の側端部(得られる充填包装体の頂部)のみに行い、内容物として水を用いた他は上記実施例1と同様にして、縦110mm、横55mm、及び底幅40mmの縦長の充填包装体(スタンディング袋)を製造した。
【0086】
(4)スタンディング袋の評価
i)夾雑物シール性の評価
上記で得られた充填包装体の超音波シール部(夾雑物シール部)につき、JIS 6854−3に準拠してT型剥離試験を行い、夾雑物シール強度(水)を調べた。結果は表3に示した。
【0087】
ii)自立性の評価
得られたスタンディング袋を構成する積層フィルムの引張弾性率及び断面2次モーメントから弾性曲線方程式を用いて曲げ剛性を算出し、算出した値が概ね25N・mm
2以上のフィルムから製造された包装体を、スタンディングパウチとしたときの自立性に優れると評価した。
【0088】
上記の評価結果は表3に示した。
<実施例11>
バリア層及び易引裂層の積層順を入れ替えた他は実施例4と同様にして積層フィルムを製造し、これを用いて製袋充填を行い、評価した。結果は、得られた積層フィルムの総厚さとともに、表3に示した。
【0089】
【表3】
【0090】
外層及びバリア層として市販のコーティングフィルムを用いた実施例8は自立性に劣っていた。積層フィルムの曲げ剛性が低いことに起因すると考えられる。この実施例8に対してシーラント層の膜厚を厚くした実施例9及び10では、充填包装体の自立性は確保されたが、引裂強度が増大し、手切れ性に劣る結果となることが分かった。
【0091】
これらに対して、本発明の典型的な実施態様である実施例4の積層フィルムは引裂強度が0.34Nと低く、良好な手切れ性を示すことが確認された。しかし、同種のフィルムを使用しながら各層の積層順が変更された実施例11の積層フィルムは引裂強度が高い値を示し、手切れ性に劣ることが分かった。
【0092】
この現象は、易引裂層が、積層フィルム中で最も厚い層であるシーラント層と隣接して配置されている実施例4の場合には、該易引裂層の易引裂性がシーラント層に伝播し、その結果積層フィルム全体の引裂き性が向上したことによるものと考えられる。
【0093】
上記実施例4〜11の充填包装体は、使用したシーラント層が本発明所定の要件を充足するものであるため、内容物として水の代わりに夾雑物シールが困難な練乳を用いた場合であっても、優れた夾雑物シール性を示すものと推定される。