特許第6719265号(P6719265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719265
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】マウスピース
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20200629BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A61F5/56
   A61M16/06 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-88347(P2016-88347)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-196051(P2017-196051A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】雪田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 真紀
(72)【発明者】
【氏名】土谷 穏史
【審査官】 國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−086591(JP,A)
【文献】 特許第5319421(JP,B2)
【文献】 国際公開第2006/070805(WO,A1)
【文献】 特開2003−290358(JP,A)
【文献】 特表2007−501641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56
A61M 16/06
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎側の歯列と唇との間に配置され、前記上顎側の歯列に装着されたマウスガードとは別部材として設けられ前記マウスガードと当接された上側ピースと、
下顎側の歯列に装着される下側ピースと、
前記上側ピース及び前記下側ピースの前記歯列における手前方の外壁面に設けられ、前記上側ピースに対する前記下側ピースの相対位置を調節する調節部材と、
を備えるマウスピース。
【請求項2】
前記調節部材は、
前記上側ピース又は前記下側ピースの一方の前記外壁面に設けられた固定部と、
雄ねじ部を有し、前記固定部に軸周りに回転可能に装着された調節ボルトと、
前記上側ピース又は前記下側ピースの他方の前記外壁面に設けられ、前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を有する移動部と、
を備える、請求項1に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、睡眠時無呼吸症候群や顎関節症等の治療において、下顎が上顎に対して奥方に移動することを防ぐ医療用のマウスピースが用いられている。このマウスピースとして、例えば特許文献1には、上顎側に装着される上顎側装着体と、下顎側に装着される下顎側装着体と、上顎側装着体に対して下顎側装着体を進退動可能に連結する調整器具と、を備える気道確保装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、下歯列に被さるベースユニットと、連結ワイヤによってベースユニットに連結され、上歯列の前側に位置決めされる上顎骨整復フランジと、を備える歯科用器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5319421号公報
【特許文献2】特許第5008394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている気道確保装置では、上顎側装着体が上顎の歯列全体を覆う形状とされているため、上顎側装着体が大型化していた。また、特許文献2に開示されている歯科用器具では、上顎骨整復フランジに対してベースユニットの位置を調整する調整セグメントがベースユニットの後側区分に設けられているため、ベースユニットの後側区分の幅が厚くなっていた。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、小型のマウスピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のマウスピースは、上顎側の歯列と唇との間に配置される上側ピースと、下顎側の歯列に装着される下側ピースと、前記上側ピース及び前記下側ピースの前記歯列における手前方の外壁面に設けられ、前記上側ピースに対する前記下側ピースの相対位置を調節する調節部材と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、調節部材が上側ピース及び下側ピースの歯列における手前方の外壁面に設けられている。このため、調節部材を口腔外に露出するように配置することができ、マウスピースを装着した状態で上側ピースに対する下側ピースの位置を調節することができる。
【0009】
また、調節部材を口腔外に露出するように配置することで、調節部材が歯列奥方に設けられている構成と比較して、口腔内におけるマウスピースの幅を薄くすることができる。さらに、上側ピースが上顎側の歯列と唇との間に配置されるため、上側ピースが上顎側の歯列に装着される構成と比較して、上側ピースを小型化することができる。
【0010】
請求項2に記載のマウスピースは、請求項1に記載のマウスピースであって、前記調節部材は、前記上側ピース又は前記下側ピースの一方の前記外壁面に設けられた固定部と、雄ねじ部を有し、前記固定部に軸周りに回転可能に装着された調節ボルトと、前記上側ピース又は前記下側ピースの他方の前記外壁面に設けられ、前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を有する移動部と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、調節ボルトが固定部に装着されており、調節ボルトの雄ねじ部に移動部の雌ねじ部が螺合されている。ここで、調節ボルトを軸周りに回転させると、ボルトの雄ねじ部に対する移動部の雌ねじ部の位置、すなわち固定部に対する移動部の相対位置が変化する。このため、上側ピースに対する下側ピースの相対位置を無段階に調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型のマウスピースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るマウスピースを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るマウスピースを示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るマウスピースの調節器具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るマウスピースの一例について、図1図3を用いて説明する。本実施形態のマウスピース10は、いびきや歯軋り、睡眠時の無呼吸等を低減又は防止するために用いられる睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースである。
【0015】
マウスピース10はアクリル系樹脂で構成されており、図1に示すように、上側ピース12と、下側ピース14と、上側ピース12に対する下側ピース14の相対位置を調節する調節部材16と、を備えている。
【0016】
上側ピース12は、上顎の歯列の曲線に沿って湾曲した板状部材であり、長手方向の長さが歯列の1番〜3番の外面を覆う長さとされている。一方、下側ピース14は、歯列の形状に沿った溝18を有しており、下顎の歯列全体を覆う大きさとされている。
【0017】
上側ピース12及び下側ピース14は別部材とされており、上側ピース12及び下側ピース14の歯列における手前方(歯列の1番〜2番)の外壁面12A、14Aに設けられた調節部材16によって、互いに連結されている。
【0018】
調節部材16は、固定部20と、固定部20に対してボルト22を介して相対移動可能に取付けられた移動部24と、を備えている。なお、ボルト22は、図2図3に示すように、六角形形状の溝26Aを有する頭部26と、雄ねじ部28と、頭部26と雄ねじ部28との間に形成された非雄ねじ部30と、を備えている。
【0019】
図1図2に示すように、固定部20は上側に凸となる略半円弧形状とされており、長手方向一端面(図3における左端面)が図3に示すワイヤ32によって上側ピース12の外壁面12Aに固定されている。
【0020】
また、固定部20の長手方向他端側(図3における右端側)の内周面には、雌ねじ部34A及び非雌ねじ部34Bを有する円筒形状の装着部34が一体形成されている。装着部34の雌ねじ部34Aにボルト22の雄ねじ部28を螺合することにより、固定部20にボルト22が装着されている。
【0021】
なお、ボルト22の固定部20への装着状態では、図3に示すように、ボルト22の雄ねじ部28が装着部34の非雌ねじ部34Bに位置し、ボルト22の非雄ねじ部30が装着部34の雌ねじ部34Aに位置する。このため、ボルト22の雄ねじ部28を装着部34の雌ねじ部34Aに再び螺合させない限り、ボルト22は長手方向に移動することなく軸周りに回転可能とされている。
【0022】
ボルト22の固定部20への装着状態では、ボルト22の頭部26の先端面(図3における右端面)と固定部20の長手方向他端面(図3における右端面)とが略同一面に位置している。また、ボルト22の頭部26の後端面(図3における左端面)は、装着部34の先端面(図3における右端面)に当接している。
【0023】
図1図2に示すように、移動部24は、下側に凸となる略半円弧形状とされており、長手方向一端面(図3における左端面)が図3に示すワイヤ36によって下側ピース14の外壁面14Aに固定されている。なお、移動部24の長手方向の長さは、固定部20の長手方向の長さより短くされている。
【0024】
また、移動部24の長手方向の略中央部の内周面には、雌ねじ部38Aを有する円筒形状の螺合部38が一体形成されており、螺合部38の雌ねじ部38Aにボルト22の雄ねじ部28が螺合されている。
【0025】
マウスピース10を装着する場合には、調節部材16によって上側ピース12と下側ピース14とが互いに連結された状態で、下側ピース14を下顎の歯列に被せ、上側ピース12を上顎の手前方(歯列の1番〜3番)の外面と唇の裏側との間に配置する。
【0026】
このとき、調節部材16は、先端(長手方向他端)が口腔外に露出した状態で保持される。また、上顎の歯列には図示しない別部材のマウスガードが装着されており、上側ピース12はマウスガードを介して上顎の歯列に当接する。
【0027】
この状態で、下側ピース14の位置を調節する場合、図示しないドライバーをボルト22の頭部26の溝26Aに差込んでボルト22を軸周りに回転させることにより、螺合部38の雌ねじ部38Aを、ボルト22の雄ねじ部28に沿ってボルト22の頭部26方向に移動させる。
【0028】
これにより、移動部24がボルト22の長手方向に沿って調節部材16の先端方向(図3における右方向)へ移動する。一方、ボルト22は固定部20の装着部34に対して長手方向に移動することなく軸周りに回転可能とされているため、固定部20の位置は変化しない。
【0029】
このため、移動部24のみが調節部材16の先端方向(図3における右方向)に移動し、上側ピース12に対して下側ピース14が歯列手前方に移動する。なお、ドライバーによりボルト22を反対向きに回転させることにより、下側ピース14の位置を元の位置(図1図3に示す位置)に戻すことができる。
【0030】
本実施形態によれば、マウスピース10を装着することにより、調節部材16によって下側ピース14の位置を無段階に調節し、下顎を上顎に対して手前方に引出すことができる。ここで、マウスピース10の装着時に調節部材16が口腔外に露出しているため、ドライバーによって口腔外からボルト22を容易に回転させることができ、容易に下側ピース14の位置を調節することができる。
【0031】
なお、調節部材16が口腔外に露出して保持されるため、調節部材が歯列奥方等の口腔内に設けられている構成と比較して、口腔内におけるマウスピース10の幅を薄くすることができる。
【0032】
さらに、上側ピース12が歯列の外面のみを覆う板状部材とされているため、歯列全体を覆う構成と比較して、上側ピース12を小型化することができる。このため、マウスピース10の装着時の不快感を軽減することができる。
【0033】
なお、本発明について実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、上側ピース12が歯列の1番〜3番の外面を覆う大きさとされていたが、上顎の歯列の外面と唇の裏側との間に保持でき、下側ピース14の位置を保持することができる強度とされていれば、どのような大きさ、形状とされていてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、調節部材16が上側ピース12及び下側ピース14の外壁面12A、14Aにワイヤ32、36によって固定されていたが、調節部材16の固定方法は上記実施形態には限られない。例えば、調節部材16の一端に基部を形成し、調節部材16の基部をインサートして上側ピース12及び下側ピース14を成形することにより、調節部材16を上側ピース12及び下側ピース14に固定してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、上側ピース12に調節部材16の固定部20を固定し、下側ピース14に調節部材16の移動部24を固定していたが、上側ピース12に移動部24を固定し、下側ピース14に固定部20を固定してもよい。このとき、上側ピース12を下側ピース14に対して歯列奥方へ移動させることにより、下顎を上顎に対して手前方に位置させることができる。
【0037】
また、調節部材16の外周面には、目盛りが形成されていてもよい。目盛りを形成することで、上側ピース12に対する下側ピース14の相対位置を容易に目視することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 マウスピース
12 上側ピース
12A 外壁面
14 下側ピース
14A 外壁面
16 調節部材
20 固定部
22 ボルト(調節ボルト)
24 移動部
28 雄ねじ部
38A 雌ねじ部
図1
図2
図3