(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719273
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】溶鋼用の浸漬装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/46 20060101AFI20200629BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20200629BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20200629BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20200629BHJP
G01N 33/205 20190101ALI20200629BHJP
【FI】
C21C5/46 D
C21C7/00 R
F27D21/00 D
G01N1/10 S
G01N33/205 100
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-100620(P2016-100620)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-2396(P2017-2396A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】15171672.7
(32)【優先日】2015年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット・ブルークマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・コイパース
【審査官】
田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−083742(JP,U)
【文献】
特開昭60−203856(JP,A)
【文献】
特開昭49−046788(JP,A)
【文献】
実開昭59−035867(JP,U)
【文献】
特開昭51−108610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/28− 5/50
C21C 7/00− 7/10
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼用の浸漬装置であって、
測定用ヘッドと、前記測定用ヘッド用のキャリヤ(2)と、前記キャリヤ(2)に着脱自在に連結される前記ランス(1)と、を含み、
前記ランス(1)及びキャリヤ(2)は1つ以上の電気的コネクタ(13、14)を被覆し、
前記ランス(1)の装着中、及び又は、前記ランス(1)の取り外し中に前記ランス(1)の連結面(6)をワイプする1つ以上のフィンであるワイプ手段(5)を有し、
前記ランス(1)の前記連結面(6)は、前記ランス(1)の管状端部(10)の内面であり、前記ワイプ手段(5)は、着脱自在の連結要素(3)の管状表面(8)から又は前記キャリヤ(2)の管状表面から突出し、
前記フィンと前記連結面(6)との間がガス密連結される浸漬装置。
【請求項2】
前記ワイプ手段(5)が、ワンピース構造で作製される着脱自在の連結要素(3)の一部である請求項1に記載の浸漬装置。
【請求項3】
前記ワイプ手段(5)が、ランス(1)の連結面(6)に押接される請求項1又は2に記載の浸漬装置。
【請求項4】
前記ワイプ手段(5)が、着脱自在の連結要素(3)の管状表面(8)から、あるいはキャリヤ(2)の管状表面から、1つ以上のスリット(9)により分離される請求項1〜3の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項5】
前記ワイプ手段(5)がリング形状を有する請求項1〜4の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項6】
前記ワイプ手段(5)が、前記ランス(1)の連結面(6)と着脱自在の連結要素(3)との間のガス密連結を提供する請求項1〜5の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項7】
前記ワイプ手段(5)が前記ガス密連結の一部を構成する請求項1〜6の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項8】
前記キャリヤ(2)が厚紙管を含む請求項1〜7の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項9】
測定用ヘッドが、溶鋼用サンプラ、又は溶鋼温度、溶鋼の酸素含有量、溶鋼の炭素含有量あるいは溶鋼の浴レベルを検出するセンサを含む請求項1〜8の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項10】
前記ランス(1)が金属製である請求項1〜9の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項11】
前記ランス(1)及びキャリヤ(2)が内部配線(11、12)を被覆する請求項1〜10の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項12】
前記ガス密連結を提供する少なくとも1つのOリングを更に備える請求項1〜11の何れか1項に記載の浸漬装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の浸漬装置を使用して溶鋼を制御する製鋼方法であって、溶鋼制御用に使用されるキャリヤ(2)及び測定用ヘッドが、その使用後に交換されるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼用の浸漬装置にして、測定用ヘッド用のキャリヤ、及び、前記キャリヤに着脱自在に連結した、あるいは、着脱自在の管状連結要素により前記キャリヤに連結し得るランス、を含み、前記管状連結要素が、前記ランスから前記着脱自在の管状連結要素までのガス通路及び前記ランスの連結面と前記着脱自在の管状連結要素との間のガス密連結を含む浸漬装置に関する。本発明は製鋼方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ランス及びキャリヤを含む浸漬装置はEP0143498A2により既知のものである。浸漬装置のランスは着脱自在の管状連結要素あるいはUS2014/0318276A1により既知の如き連結ピースに連結されあるいは連結され得る。
キャリヤの測定用ヘッドは、溶解点が600℃以上の、特にはメタルメルトあるいは氷晶石メルト、特には溶鉄あるいは溶鋼からのサンプル採取用のサンプラを含み得る。キャリヤは、浸漬端と、前記浸漬端上に配置したサンプルチャンバアセンブリとを含み得る。前記サンプルチャンバアセンブリは、入口開口と、メルト用の、キャリヤ内部に少なくとも部分的に配置され得るサンプルキャビティとを有し得る。
キャリヤの測定用ヘッドは1つあるいは1つ以上のセンサを含み得る。センサ出力端子がランスの接点端部に電気的に装着される。
【0003】
ランスは、測定用ヘッドを有するキャリヤを自動操作あるいは手動操作する上で役立つ。ランスを使用して測定用ヘッドを含むキャリヤをメタルメルト中に浸漬させ、そして測定、及び又は、サンプルを入手後にメタルメルトから引き上げる。測定用ヘッドを有するキャリヤは使い捨て品であり、一度使用した後は廃棄されるがランスは多数回使用される。
【0004】
測定及び冶金サンプル入手用の測定用ヘッドを持つ使い捨て式キャリヤは、例えばUS5515739やUS8479579B2に記載される。これらの装置は一般に、温度、酸素含有量、炭素含有量、湯面レベル、そして溶鋼の代表的サンプル、の1つあるいは1つ以上を検出するセンサを備える測定用ヘッドを含む。この測定用ヘッドは、内部の配線や電気的接続部を保護するキャリヤで支持される。前記キャリヤは厚紙管の層で覆われる。厚紙管の外周部は溶鋼中に浸漬される間に急速に劣化するが、測定値が入手され且つ冶金学的メタルサンプルが鋼浴から引き上げられる間の数十秒間は持ち堪えるに十分な厚さを有する。ランスから測定用ヘッドが外されて冶金学的サンプルが回収され、使用済みプローブが廃棄される。センサのDC電圧データがコンピュータに自動送信され、コンピュータは実際の鋼浴状態を予測モデルと比較し、製鋼処理をターゲット要件で完了するため実施すべき次のアクションを提案する。
【0005】
入力データの精度はプローブの出力コネクタとランスの受け用接点との間の高品質な電気的接続に依存する。他方、例えば、センサのコネクタは一回のみ使用され、センサは使用後に廃棄されるため、ランスの受け用接点は反復使用に耐えるよう設計されるべきである。厚紙で覆われた前記キャリヤは溶鋼に浸漬されると過熱され、厚紙及びキャリヤに含まれる水蒸気、タール、樹脂を放出する。これらのタールや樹脂は水蒸気によって運ばれ、電気接点の冷えた金属部分及びそのハウジング上に付着してセンサの電気的信号を妨害し且つ劣化させ、かくしてデータを入手不可能とするあるいは誤データ化する。タールや樹脂はランスを連続使用する毎に付着量が増え、硬化するとバリヤとなり、かくして次回の電気的接続時には労力及び時間を共に要する厳密な洗浄管理が必要となる。これに対処するべく、補助ランスの内側中空部を通して少量の窒素パージガスを流下させ、ランスの連結端部位置で放出させて接点から蒸気を除去する。このパージにより問題は改善されるが完全には解消されない。補助ランスのそのような内側中空部は本発明により意図されるガス通路の一部である。
【0006】
こうした条件及び解決策はJP2000−28438Aに十分に記載されている。浸漬装置は、DC電圧信号をデジタル化し、それらを先ず、アンテナ線で、次いで無線で送信する電子回路を備え、かくして、ランスの電気的接点部材上に水、タール及び樹脂が付着する問題を排除はしないが回避する。無線トランスミッタを追加する上での技術努力は洗浄の時間及び費用に比肩されるため、使用されるのは希である。
【0007】
US2014/0318276A1に記載されるようなサンプラではランスからサンプリングチャンバにパージされる不活性ガスを使用できる。このような急速分析サンプルを得るにはガス圧力に再現性を持たせる必要があるため、ランス測定システムの無故障運転を妨げていた水、タール及び樹脂凝縮物の生じない電気的及びガス接触システムが必要となる。
【0008】
管状端部を有するランスはその外周部上にO−リングシールを含み得る。このO−リングシールを含む管状端部は、各々キャリヤであるところのランスと連結用部材との間にガス密連結を提供するべく、連結部材あるいはキャリヤの着脱自在の管状連結要素に挿入される必要がある。かくして、ランス及び連結部材はサンプリングチャンバに配向され得るガス通路を提供する。
【0009】
かくしてパージガスは浸漬中は予測通り流動するが、連結部材を外すとO−リング上にタールや樹脂が付着し、それらがランスの管状端部と別の連結部材の管との間のガス密連結を妨害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP0143498A2
【特許文献2】US2014/0318276A1
【特許文献3】US5515739
【特許文献4】US8479579B2
【特許文献5】JP2000−28438A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
無故障運転を可能にする溶鋼用浸漬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は請求項1に記載される特徴構成を含む浸漬装置により解消される。従属形式請求項は本発明の実施態様に対して参照される。
請求項1の記載に従う溶鋼用浸漬装置は、測定用ヘッド、測定用ヘッド用キャリヤ、前記キャリヤに着脱自在に連結した、あるいは前記キャリヤに着脱自在の管状連結要素により連結され得るランスを含む。ランスからキャリヤに至るガス通路が形成される。管状連結要素あるいはキャリヤは1つあるいは1つ以上のワイプ手段を含み、前記ワイプ手段は、夫々キャリヤである管状連結要素をランスに装着する間、及び又は、前記管状連結要素を夫々キャリヤであるランスから外す間にランスの連結面を払拭する。
【0013】
かくして、連結要素と一緒にキャリヤを交換することでランスの連結面が洗浄され、それが、ランスの管状端部と、管状連結要素との間のガス密連結を保証し、且つ、無故障運転を可能とする。
本発明の好ましい実施態様ではワイプ手段は洗浄効果を良好化し得る1つあるいは1つ以上のフィンである。
本発明の好ましい実施態様ではワイプ手段と管状連結要素とはワンピース構造で作製される。その利点の一つはパーツ数が減少することである。
【0014】
本発明の好ましい実施態様では、1つあるいは1つ以上のワイプ手段は管状連結要素をランスに連結するとランスの連結面に押接され、かくして洗浄効果を良好化し得る。キャリヤとランスとを直結した場合も同様の効果を得られる。
本発明の好ましい実施態様ではワイプ手段は、各々キャリヤである管状連結要素の管状表面から突出され、かくして洗浄効果を良好化し得る。
【0015】
本発明の好ましい実施態様ではワイプ手段は、各々キャリヤである管状連結要素の管状面から1つあるいは1つ以上のスリットにより分離され、かくして、ワイプ手段の動きがより柔軟化されることで洗浄効果を良好化し得る。
本発明の好ましい実施態様では1つあるいは1つ以上のワイプ手段はリング形状を有し、かくして、ランスの連結面と、各々キャリヤである着脱自在の管状連結要素との間のガス密連結を可能とする。
本発明の好ましい実施態様では、ランスの連結面はランスの管状端部の内側表面である。かくして前記連結面が保護され、それが連結面の汚染を防止する。
本発明の好ましい実施態様では、ワイプ手段は金属あるいはプラスチックから形成され、それが洗浄効果を良好化し得る。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、ワイプ手段はランスの連結面と各々キャリヤである着脱自在の管状連結要素との間のガス密連結を提供する。ガス密連結を提供するためのO−リングの如き他のパーツを使用し得るが、必須ではなく、かくしてパーツ数が減少されたガス密連結を提供する。
本発明の好ましい実施態様では、キャリヤは厚紙管を含む。
本発明の好ましい実施態様では、測定用ヘッドは溶鋼用サンプラ、あるいは、溶鋼温度、溶鋼の酸素含有量、溶鋼の炭素含有量、あるいは溶鋼の浴レベルを検出するセンサを含む。
本発明の好ましい実施態様では、ランスは安定性の理由から金属で形成される。
本発明の好ましい実施態様ではランス及びキャリヤは内部配線、及び又は、1つあるいは1つ以上の電気的接続部を被覆する。
【発明の効果】
【0017】
無故障運転を可能にする溶鋼用浸漬装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の浸漬装置の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に従う溶鋼用浸漬装置のあるセクションは測定用ヘッド用のキャリヤを含み、前記キャリヤは、
図1に示すように中空管2と、中空管形態のランス1とを含む。ランス1は着脱自在の管状連結要素3により、前記中空管2を含むキャリヤに連結され得る。
浸漬装置は、管状のランス1と、管状連結要素3と、管状のキャリヤ2とを共連結した場合に提供されるガス通路4を含む。
【0020】
着脱自在の管状連結要素3は、この管状連結要素3の外周部上の3枚のリング状フィン5の形態のワイプ手段を含み、このワイプ手段は、管状連結要素3をランス1に挿入する間、及び、ランス1から管状連結要素3を外す間にランス1の内側連結面6をワイプする。フィン5及び管状連結要素3は、複数ピースの製造及び管状連結要素3へのフィン5の装着を共に回避するためにワンピース構造で作製される。更に、このワンピース構造で製造することで、フィン5が信頼下及びガス密態様下に管状連結要素3に連結される利点が有る。フィン5が内側連結面6の周囲(破線7で表わす)を越えて伸延されるため、フィン5は、管状連結要素3がランス1に連結されるとランス1の内側連結面6に押接される。その結果、フィン5と内側連結面6との間にガス密連結が形成される。各フィン5が管状連結要素3を円状に包囲するため、管状連結要素3がランス1に挿入されるとランス1と管状連結要素3との間にガス密連結が形成される。
【0021】
フィン5は
図1に示すように管状連結要素3の管状外面8から突出する。フィン5は円状スリット9により管状連結要素3の隣り合う管状外面8から分離されることで柔軟性が高まり、かくして良好な洗浄効果と信頼下のガス密連結の形成を可能にする。
ランス1の内側連結面6はランス1の管状端部10の内側表面である。ランス1の内径は、
図1に示すように管状端部10の内径と比較して減少させ得る。
【0022】
キャリヤの中空管2は厚紙管であり得る。ランス1は金属製であり得、管状連結要素3はプラスチック製であり得る。ランス1及びキャリヤの中空管2は内部配線11、12と、電気的コネクタ13、14とを被覆する。キャリヤの中空管2の電気的コネクタ14は、ランス1を管状連結要素3を介してキャリヤの中空管2に装着するとランス1の電気的コネクタ13に挿入される。
【0023】
キャリヤ及びランス1の中空管2用のリング形状のストッパ15が管状連結要素3の外面8から突出され、それにより連結部の取り扱いを容易化させる。
キャリヤの中空管2の内径は、テーパ付き端部17を除き、管状連結要素の外面16の直径と比較して減少される。従って、外面16を含む端部をガス密態様下にキャリヤの中空管2に導入可能である。
【0024】
キャリヤは、例えば厚紙製の外側中空シャフトを含み得る。前記外側中空シャフトの浸漬端には測定用ヘッドを装着できる。キャリヤの外側中空シャフトは長さが2〜3m、例えば約2.5mであり得る。ランス1をキャリヤに連結するとキャリヤの外側中空シャフトはランス1の一部を被覆し得る。
【符号の説明】
【0025】
1 ランス
2 中空管
3 管状連結要素
4 ガス通路
5 リング状フィン/フィン
6 内側連結面
8 管状外面/外面
9 円状スリット
10 管状端部
11 内部配線
13、14 電気的コネクタ
15 ストッパ
16 外面
17 端部