特許第6719275号(P6719275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719275
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ホースドラムを備えた杭圧入機
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   E02D7/20
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-102414(P2016-102414)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2016-217129(P2016-217129A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103776(P2015-103776)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年4月7日愛知県名古屋市の工事現場にホースドラムを備えた杭圧入機を納入
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
(72)【発明者】
【氏名】池田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】大井 孝仁
【審査官】 田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−019215(JP,A)
【文献】 特開2000−144733(JP,A)
【文献】 特開平11−349233(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3064601(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−7/30
E02D 9/00−9/04
E02D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックで把持した杭を地盤に圧入する際に杭先端部に流体を供給するホースを、巻き取り及び繰り出しが可能なホースドラムを備えた杭圧入機において、
前記チャックは、杭圧入機本体に対して水平方向にスライドするスライドフレームに対して旋回自在に設けられた旋回基台に支持され、
前記旋回基台を旋回させると、前記ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置が、圧入が完了した杭の真上に位置するように、前記ホースドラムは前記杭圧入機の進行方向前方に向かって前記旋回基台の右側または左側の側方に設けられていることを特徴とする、ホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項2】
チャックで把持した杭を地盤に圧入する際に杭先端部に流体を供給するホースを、巻き取り及び繰り出しが可能なホースドラムを備えた杭圧入機において、
前記チャックは、杭圧入機本体に対して水平方向にスライドするスライドフレームに対して旋回自在に設けられた旋回基台に支持され、
前記旋回基台を旋回させ、かつ前記スライドフレームをスライドさせると、前記ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置が、圧入が完了した杭の真上に位置するように、前記ホースドラムは前記杭圧入機の進行方向前方に向かって前記旋回基台の右側または左側の側方に設けられていることを特徴とする、ホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項3】
前記ホースドラムは、アーム部材によって支持されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項4】
前記アーム部材は、前記旋回基台に対して起伏する方向に回動自在となるように前記旋回基台に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項5】
前記アーム部材は、前記旋回基台に対して水平方向に旋回自在となるように前記旋回基台に設けられていることを特徴とする、請求項3または4のいずれか一項に記載のホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項6】
前記ホースドラムは前記旋回基台に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホースドラムを備えた杭圧入機。
【請求項7】
前記ホースドラム及び該ホースドラムを支持する支持機構を構成する各部材は、該ホースドラムが最も伏せた状態において、前記旋回基台の上面と同一の高さ又は前記旋回基台の上面よりも高さが低くなるように設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホースドラムを備えた杭圧入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースドラムを備えた杭圧入機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭圧入機は、既設の杭から反力を取った状態で、新たな杭を下降させることにより地盤に圧入するものである。より詳述すると、この杭圧入機は、先に圧入された既設の杭を掴むクランプを下部に備えたサドルと呼ばれる本体と、当該サドルに対して前後にスライド移動するスライドフレームと、スライドフレーム上に設けられたマストと、マストの前方において油圧シリンダにより昇降可能で、かつ、杭を掴むチャックとを備えている。そして既に打ち込まれた杭を前記クランプで掴んで、既設の杭から反力を取った状態で、チャックで把持した杭を、チャックを降下させることにより地盤に圧入する。
【0003】
ところで、杭を圧入する地盤の状況によっては、圧入負荷の軽減や施工効率向上の目的で、ジェット水(高圧水)を地盤に噴射しながら杭を圧入する場合がある。かかる場合、ジェット水はホースを介して圧入部に供給される。ジェット水は杭の先端部付近に取り付けられたノズルから供給されるが、当該ホースを杭の圧入部近傍まで繰り出したり、圧入後に当該ホースを引き抜いて巻き取るため、回転自在なドラム(リール)を有するホースドラム(ホースリール)が用いられる。そして圧入後に前記ホースを引き抜いて巻き取る際には、杭先端部にノズルを固定するノズルソケットの構造や、巻き取る際の作業の円滑性等の観点から、前記ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置を、圧入が完了した杭の真上、より好ましくは地中に進入したホースの真上に位置させる必要がある。
【0004】
このような要請に応えるものとして、ホースドラムを装着した杭圧入機において、ホースドラムを杭圧入時には上方に回動させて退避させ、ホース引抜時には下方に回動させるものが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−19215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、杭圧入機の作業環境によっては、杭圧入機の上方に十分な高さが取れない場合がある。例えば橋梁の下方にて杭圧入作業を行う際には、高さ制限を受けてしまう。この点に関し、特許文献1に記載の技術は、従来一般の杭圧入機よりも全高が抑えられているが、依然として本体の上部にホースドラムが装着されているため、特に杭圧入作業時においては、ホースドラムを上方に起こしてチャックと干渉しない位置まで退避させるようにしているので、全高が高くなり、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ホースドラムを有する杭圧入機において、杭圧入作業時においても全高を従来よりも低く抑えることができるようにして、高さ制限を受ける作業環境においても適切に杭の圧入作業を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、チャックで把持した杭を地盤に圧入する際に杭先端部に流体を供給するホースを、巻き取り及び繰り出しが可能なホースドラムを備えた杭圧入機において、前記チャックは、杭圧入機本体に対して水平方向にスライドするスライドフレームに対して旋回自在に設けられた旋回基台に支持され、前記旋回基台を旋回させると、前記ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置が、圧入が完了した杭の真上に位置するように、前記ホースドラムは前記杭圧入機の進行方向前方に向かって前記旋回基台の右側または左側の側方に設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、チャックは、スライドフレームに対して旋回自在に設けられた旋回基台に支持されており、ホースドラムは、杭圧入機の進行方向前方に向かって前記旋回基台の右側または左側の側方に設けられているので、杭圧入時においてもチャックと干渉することはなく、それゆえホースドラムの取り付け位置の自由度が高く、全高を低く抑えることが可能である。そして杭の圧入が終了し、ホースを引き抜く際には、旋回基台を旋回させることで、チャックを圧入位置から移動させ、ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置を、圧入が完了した杭の真上に位置させることができる。
なお本発明における流体には、水、各種の薬液、空気、並びにこれらを任意に組み合わせたものが含まれる。
【0010】
また、前記旋回基台を旋回させ、かつ前記スライドフレームをスライドさせると、前記ホースドラムにおけるホースの巻き取り位置が、圧入が完了した杭の真上に位置するように、前記ホースドラムは、前記杭圧入機の進行方向前方に向かって前記旋回基台の右側または左側の側方に設けられているように構成してもよい。
【0011】
前記ホースドラムは、旋回基台に直接設けられていてもよいが、アーム部材を介して旋回基台に設けられていてもよい。取り付け位置の自由度がより高まるからである。
【0012】
前記アーム部材は、前記旋回基台に対して起伏する方向に回動自在となるように前記旋回基台に設けられていてもよい。
【0013】
前記アーム部材は、前記旋回基台に対して水平方向に旋回自在となるように前記旋回基台に設けられていてもよい。
【0014】
前記ホースドラムは前記旋回基台に対して着脱自在に設けられていてもよい。
【0015】
前記ホースドラム及び該ホースドラムを支持する支持機構を構成する各部材は、該ホースドラムが最も伏せた状態において、前記旋回基台の上面と同一の高さ又は前記旋回基台の上面よりも高さが低くなるように設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホースドラムを有する杭圧入機において、杭圧入作業時においても全高を従来よりも低く抑えることができるので、高さ制限を受ける作業環境においても適切に杭の圧入作業を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態にかかる杭圧入機を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図2図1の杭圧入機において、ホースの巻き取り位置にホースドラムが位置するようにマストが旋回したときの様子を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図3】直角方向に杭が圧入されるときの杭圧入機を示し、(a)は圧入時の平面図、(b)はホースの巻き取り位置にホースドラムが位置するようにマストが旋回したときの平面図である。
図4】ホースドラムをマストから離隔させるように、外側に旋回させる様子を示す杭圧入機の平面図である。
図5】ホースドラムを起伏方向に回動させる様子を示す杭圧入機の側面図である。
図6】別の実施形態にかかる杭圧入機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態にかかるホースドラムを備えた杭圧入機について説明する。図1は、ホースドラムを備えた杭圧入機(以下、「杭圧入機」という)1の構成を示しており、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は正面図であり、杭圧入機1の本体となるサドル10の両側下部には、クランプ11が複数設けられている。クランプ11は、既に圧入を終えた既設の杭Pの上端部を把持し、サドル10を杭P上部に固定している。
【0019】
サドル10の上部には、サドル10に対して進行方向(図1(b)における左右方向)にスライド自在なスライドフレーム12が設けられている。スライドフレーム12上には、旋回基台となるマスト20がスライドフレーム12の中央部に設定された点Fを中心として、スライドフレーム12に対して回転自在に構成されている(図1(a)の往復矢印A参照)。マスト20の回転は、マスト20の例えば下面側に設けられたモータなどの回転駆動源Mによって行われる。
【0020】
マスト20の進行方向前方側は、湾曲したアーム21、22によって平面視でC字型に成形されている。チャックフレーム30は、この湾曲したアーム21、22によって、垂直方向にスライド自在に保持される。すなわち、アーム21、22の内側には、それぞれガイド溝21a、22aが形成されており、チャックフレーム30の両側に設けられたガイド31、32が、ガイド溝21a、22aにスライド自在に収められている。
【0021】
チャックフレーム30は、シリンダの伸縮動作によって昇降する。すなわち、マスト20の進行方向前方側の湾曲したアーム21、22には、固定部23、24によって各々油圧シリンダ25、26が固定されており、油圧シリンダ25、26の伸縮部(ロッド)の上端部は、固定部材27、28によって各々チャックフレーム30と固定されている。したがって、油圧シリンダ25、26を作動させて伸縮部を伸縮させることにより、チャックフレーム30は上下動する。なお図1(b)、(c)は、伸縮部が収縮した状態を示している。
【0022】
チャックフレーム30の内周には、側面一部が縦方向に開口した、平面視がC字型で、全体として筒形状を有するチャック40が、回転自在に取り付けられている。またこのチャック40は、チャックフレーム30とは上下方向には一体となるように、チャックフレーム30に取り付けられている。したがって、前記した油圧シリンダ25、26の作動により、チャックフレーム30と共にチャック40が上下動する。
【0023】
チャック40の内側下部には、固定爪41と可動爪42とが水平方向に対向して設けられている。可動爪42は、油圧シリンダ(図示せず)によって、固定爪41に対して接近離隔する。圧入対象となる杭PDは、チャック40の固定爪41と可動爪42とによって把持される。
【0024】
マスト20の側方、本実施の形態ではマスト20の進行方向前方側に向かって右側には、水平方向に張り出すブラケット50が設けられている。ブラケット50の上面には、円盤状の支持基盤51が、ブラケット50の上面において、平面視で回転自在となるように取り付けられている。この支持基盤51は、ハンドル52の操作によって回転する。
【0025】
支持基盤51の上面には、アーム部材53の基部を起伏方向に回動自在に支持する軸受ブラケット54が固定されている。そしてアーム部材53の自由端側には、ホースドラム(リール)55が回転自在に設けられている。このホースドラム55は、ホースドラム55の回転によってホース56の繰り出し、巻き取りが可能である。ホースドラム55の回転は、モータ等の回転駆動源(図示せず)によって行われる。ホースドラム55の側面には、スイベルジョイントなどの供給部55aが設けられている。ホースドラム55の内部で、ホース56の基端部がこの供給部55aと接続されている。したがって供給部55aに高圧ポンプ等で水を圧送することで、ホース56の先端部からジェット水が噴出するようになっている。なお本実施の形態では、流体として水を用いているが、これは一例であり、もちろんこれに限らず、例えば現場環境などに応じて、各種の薬液、空気を用いることができ、さらには水も含めたこれらの流体を組み合わせた流体も用いることができる。
【0026】
なおホース56の先端部にはノズル(図示せず)が取り付けられており、このノズルは圧入対象である杭PDの先端部付近に固定されたノズルソケット(図示せず)に取り付けられている。したがって杭PDの地盤への圧入と共に、ノズルと共にホース56は地盤中に進入する。
【0027】
アーム部材53と支持基盤51との間には、油圧シリンダ57が設けられている。したがって、この油圧シリンダ57の作動によってロッド57aが伸縮することにより、アーム部材53は起伏方向に回動し、それに伴ってアーム部材53に支持されているホースドラム55も起伏方向に回動する(図1(b)の往復矢印B参照)。このホースドラム55は、最も起こした状態と最も伏せた状態との間の任意の位置で停止可能である。また既述したように、ハンドル52の操作により、支持基盤51は回転するので、それによってアーム部材53、ホースドラム55は旋回する(図1(a)の往復矢印C参照)。
【0028】
実施の形態にかかる杭圧入機1は、以上のように構成されている。そして杭PDの圧入施工の際には、図1に示したように、圧入対象の杭PDをチャック40の固定爪41、可動爪42で把持した状態で油圧シリンダ25、26を作動させることで、チャックフレーム30と共にチャック40が下降して、杭PDは地中に順次圧入される。杭PDの圧入に伴って、ホースドラム55からホース56が繰り出される。ホース56にはジェット水が供給されているので、杭PD先端部のノズル(図示せず)から地盤中にジェット水が供給される。これによって杭PDを地盤に圧入する際の圧入負荷が軽減され、圧入が円滑に行われる。
【0029】
そして所定の圧入動作が完了すると、圧入を終えた杭PDからホース56を引き抜く作業が行われるが、まずホース56の引抜に先立って、チャック40は、把持していた杭PDをリリースする。次いでマスト20が旋回する際にチャック40が杭PDと干渉しない位置にまで、チャック40を一旦上昇させる。
【0030】
その後、図2(a)に示したように、回転駆動源Mを作動させて、マスト20を旋回させる。これによってチャックフレーム30、チャック40は圧入完了位置から退避する。そしてホース56の巻き取り位置H、すなわちホース56がホースドラム55の巻き取り部分から出ている位置が、圧入された杭PDにおけるホース56の進入位置、すなわち杭PDにおけるノズル(図示せず)の固定位置の真上(所定位置)に位置するまでマスト20を旋回させる。
【0031】
かかる場合、マスト20を旋回させた際に、ホース56の巻き取り位置Hが前記所定位置に位置するように、予めマスト20に対するブラケット50の取り付け位置を設定しておくことにより、そのような旋回動作のみで、直ちにホース56の巻き上げ作業が行える。
【0032】
またたとえば設計上の観点からそのような位置にブラケット50が取り付けられない場合には、マスト20の旋回後、適宜スライドフレーム12を前後方向にスライドさせることにより、前記所定位置の真上に巻き取り位置Hが位置するように調整することができる。さらにまた油圧シリンダ57を作動させて、ホースドラム55を起伏させることにより、そのような微調整を行うことも可能である。また上部の高さが制限されているような環境においても、ホースドラム55を伏せて高さを抑え、巻き取り作業が行える。
【0033】
以上のように、実施の形態にかかる杭圧入機1によれば、ホースドラム55は旋回基台となるマスト20の側方に配置されているので、杭圧入機1全体の全高を低く抑えることが可能である。したがって杭圧入作業時においても全高を従来よりも低く抑えることができ、高さ制限を受ける作業環境においても適切に杭の圧入作業を行うことができる。しかもホースドラム55はマスト20の側方に位置しているので、杭PDの圧入作業の際に邪魔にならず、圧入作業を好適に行うことが可能である。また圧入作業後、マスト20を旋回させることで、ホース56の巻き取り位置を、杭PDの真上、さらにはホース56の地中への進入位置の真上に位置させることができるので、圧入作業後のホース56の巻き取り作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0034】
ところで、杭は必ずしも平面視で直線上に連続して次々と圧入施工されるものではなく、施工場所によっては途中で、平面視で曲線状に施工されたり、既設の杭に対して平面視で直角方向に圧入される場合がある。
【0035】
図3(a)はかかる場合を示しており、圧入される杭PDは既設の杭Pに対して、直角になるように圧入されている。なおこの例では、ブラケット50は、マスト20の進行方向前方側に向かって左側に取り付けられている。かかる場合も杭PDの圧入作業が完了すると、マスト20を旋回させて、圧入完了位置から退避させることで、図3(b)に示したように、ホース56の巻き取り位置Hを、杭PDのホースの地中への進入位置の真上に位置させることができる。なお図3に示した場合では、マスト20を旋回させた後、スライドフレーム12を図3(b)の矢印Eに示したように、後方にスライドさせて、所定位置にホース56の巻き取り位置Hが位置するように調整している。
【0036】
また本実施の形態にかかる杭圧入機1によれば、図4に示したように、支持基盤51を回転させることにより、ホースドラム55をアーム部材53ごと、マスト20から離れる方向に旋回させることができる。そしてそのようにホースドラム55をアーム部材53ごとマスト20から離隔させることにより、マスト20の側方のスペースを広く開放させることができる。これによって、たとえばサドル10に対する作業員の足場となる作業ステージの取り付け、取り外し作業や各種の保守作業を容易に行うことが可能である。
【0037】
そして図5に示したように、アーム部材53に回転自在に支持されたホースドラム55は、アーム部材53ごと起伏させることができるから、杭圧入機1を現場に搬入したり、現場から搬出したり、あるいは搬送する際に、杭圧入機1の全高を低く抑えることが可能である。
【0038】
一方、杭圧入機1の自走時にはマスト20が持ち上がるため、マスト20に支持されている他の部材はマスト20と一体となって持ち上がることになる。かかる場合、マスト20の上面よりも上方に他の部材が位置していると、杭圧入機1の上方の作業空間がその分狭くなることになる。
【0039】
そこで図6に示したように、ホースドラム55及びホースドラム55を支持する支持機構を構成する各部材(図6に示す例ではブラケット50、支持基盤51、ハンドル52、アーム部材53、軸受ブラケット54、油圧シリンダ57)は、ホースドラム55が最も伏せた状態(以下、「最伏状態」という)においてマスト20の上面Uよりも高さが低くなるように設けられていてもよい。但し、マスト20の旋回時におけるブラケット50とサドル10との干渉を避けるためには、ブラケット50の下端はマスト20の下面よりも上方に位置する必要がある。
【0040】
かかる構成の杭圧入機1によれば、最伏状態において、ブラケット50、支持基盤51、ハンドル52、アーム部材53、軸受ブラケット54、ホースドラム55、油圧シリンダ57がマスト20の上面Uよりも下方に位置しているため、これらが最伏状態でマスト20の上面Uの上方に位置する構造に比べて、杭圧入機1の上方の作業空間を更に広げることができる。また、ホースドラム55及びホースドラム55を支持する支持機構を構成する各部材は、マスト20の上面Uと同一の高さに設けられていてもよい。かかる場合も、最伏状態でマスト20の上面Uの上方に各部材が位置する構造に比べて、杭圧入機1の上方の作業空間を広げることができる。なお、図6では説明の便宜上、ホースドラム55やホースドラム55の支持機構を構成する各部材の高さを変えずに、マスト20の上面の位置を図1図5に示すマスト20の上面の位置に対して高くなるよう図示したが、例えば、ホースドラム55やホースドラム55の支持機構を構成する各部材の形状や固定方法を変更することにより各部材の高さを低く抑えて、最伏状態でこれら各部材がマスト20の上面と同一の高さ又はマスト20の上面よりも高さが低くなるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ホースドラムを有する杭圧入機に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 杭圧入機
10 サドル
11 クランプ
12 スライドフレーム
20 マスト
21、22 アーム
21a、21b ガイド溝
23、24 油圧シリンダ
25、26 固定部
27、28 固定部材
30 チャックフレーム
31、32 ガイド
40 チャック
41 固定爪
42 稼働爪
50 ブラケット
51 支持基盤
52 ハンドル
53 アーム部材
54 軸受ブラケット
55 ホースドラム
55a 供給部
56 ホース
57 油圧シリンダ
57a ロッド
M 回転駆動源
P、PD 杭
図1
図2
図3
図4
図5
図6