特許第6719295号(P6719295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719295
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】貼合装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20200629BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B29C63/02
   B65H37/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-128022(P2016-128022)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-1465(P2018-1465A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】安福 喜代志
(72)【発明者】
【氏名】池元 直
(72)【発明者】
【氏名】正木 成人
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−139108(JP,A)
【文献】 特開2007−160697(JP,A)
【文献】 特開2010−214838(JP,A)
【文献】 特表2013−512796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム同士を貼り合わせる貼合装置において、
長尺で一方の表面にセパレータが配置された第1フィルムを搬送する第1搬送部と、
長尺の第2フィルムを搬送する第2搬送部と、
前記第1フィルムから前記セパレータを残して前記第1フィルムだけを所定の大きさと形状にハーフカットしてシート状個片を形成するハーフカット処理部と、
ハーフカットして形成された前記第1フィルムの前記シート状個片を吸着保持する吸着保持部と、
ハーフカットして形成された前記第1フィルムの前記シート状個片以外の残余部分及び前記セパレータをブレードによって反転して、前記吸着保持部に吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を前記セパレータから剥離する剥離部と、
前記吸着保持部において、前記第1フィルムの前記シート状個片を吸着する第1吸着動作と、前記第1吸着動作後に吸着動作を、全体的に停止するか、全体的に緩めるか、部分的に停止するか、部分的に緩めるかのいずれかを行う吸着制御動作と、前記吸着制御動作後に前記第1フィルムの前記シート状個片を再び吸着する第2吸着動作とを順に実施するように制御する吸着動作制御部と、
剥離して前記吸着保持部で吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を、前記剥離部から前記第1フィルムの前記シート状個片と前記第2フィルムとの貼合わせ位置へ移動させる移送機構部と、
前記貼合わせ位置にて、前記第2吸着動作を実施している前記吸着保持部に吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を、前記第2フィルムに対して貼り付ける貼付部と、
を備える貼合装置。
【請求項2】
前記吸着保持部は、
吸引孔を有する領域を複数個有する吸着盤と、
前記吸着盤のそれぞれの領域の前記吸引孔に連通する吸引機構部と吸引孔を備え、
前記吸着動作制御部での前記吸着制御動作は、
すべての領域のうち少なくとも1つの領域の前記吸引孔での前記吸引機構部による吸引動作を維持した状態で、残りの領域の前記吸引孔での前記吸引機構部による吸引動作を、一時的に停止するか、又は一時的に緩めるように制御する、請求項1に記載の貼合装置。
【請求項3】
前記吸着動作制御部での前記吸着制御動作は、
すべての領域のうちいずれか一端部の領域又は中央部の領域の前記吸引孔での前記吸引機構部による吸引動作を維持した状態で、残りの領域の前記吸引孔での前記吸引機構部による吸引動作を、停止するか、又は緩めるように制御する、請求項2に記載の貼合装置。
【請求項4】
前記吸着動作制御部での前記吸着制御動作は、
前記残りの領域のうち少なくとも1つの領域の前記吸引孔での前記吸引機構部による吸引動作を、再稼働するか、又は緩めていた吸引動作を元に戻したのちに、前記吸引動作を維持していた領域での前記吸引機構部による吸引動作を、停止するか、又は緩めるように制御する、請求項2又は請求項3に記載の貼合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールフィルムから取り出したフィルムを別のロールフィルムに貼着する貼合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻かれた基材上に配置された各種機能フィルムを、テンション管理しながらロール状の基材から取り出して、別のロールに貼り合わせて搬送する技術が一般的に知られている。
【0003】
さらに、特許文献1のように、フィルム同士を貼合する技術も一般的に知られている。例えば、図14及び図15に示すように、一定のテンション110で張られかつロール状態で供給されるフィルム103に対して、厚み方向において、セパレータ101を残して機能フィルム102のみをカットするハーフカットを行う。そして、図示しない剥離ブロック上でセパレータ101のみを鋭角に送ることにより、セパレータ101から機能フィルム102のみを剥離し、機能フィルム102を、図示しない貼合台で吸着固定される。貼合台に吸着固定された機能フィルム102を貼合台で搬送しながら、機能フィルム102の位置調整を行い、機能フィルム102を貼合対象物のロールに貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−139108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、機能フィルムを切り出すロールと貼合対象物のロールとには、それぞれ、一定のテンションが張られているが、セパレータの剥離によりロールに作用していたテンションが無くなるとともに、ハーフカットされた機能フィルム102では、縮む力105が発生している。この結果、機能フィルム102には、どのような応力が発生して残留しているか不明な状態であり、そのような不明な状態のまま、機能フィルム102と貼合対象物との貼合が行われるため、貼合後にどのような反りが発生するか全く不明なものとなり、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合ができなかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、貼合後の反りを効果的に防止できて、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合が可能な貼合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の第1態様によれば、フィルム同士を貼り合わせる貼合装置において、
長尺で一方の表面にセパレータが配置された第1フィルムを搬送する第1搬送部と、
長尺の第2フィルムを搬送する第2搬送部と、
前記第1フィルムから前記セパレータを残して前記第1フィルムだけを所定の大きさと形状にハーフカットしてシート状個片を形成するハーフカット処理部と、
ハーフカットして形成された前記第1フィルムの前記シート状個片を吸着保持する吸着保持部と、
ハーフカットして形成された前記第1フィルムの前記シート状個片以外の残余部分及び前記セパレータをブレードによって反転して、前記吸着保持部に吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を前記セパレータから剥離する剥離部と、
前記吸着保持部において、前記第1フィルムの前記シート状個片を吸着する第1吸着動作と、前記第1吸着動作後に吸着動作を、全体的に停止するか、全体的に緩めるか、部分的に停止するか、部分的に緩めるかのいずれかを行う吸着制御動作と、前記吸着制御動作後に前記第1フィルムの前記シート状個片を再び吸着する第2吸着動作とを順に実施するように制御する吸着動作制御部と、
剥離して前記吸着保持部で吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を、前記剥離部から前記第1フィルムの前記シート状個片と前記第2フィルムとの貼合わせ位置へ移動させる移送機構部と、
前記貼合わせ位置にて、前記第2吸着動作を実施している前記吸着保持部に吸着保持された前記第1フィルムの前記シート状個片を、前記第2フィルムに対して貼り付ける貼付部と、
を備える貼合装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記第1態様によれば、前記吸着動作制御部で、前記吸着保持部において、前記吸着動作後に吸着動作を、全体的に停止するか、全体的に緩めるか、部分的に停止するか、部分的に緩めるかのいずれかを行う吸着制御動作を行うことによって、前記吸着保持部に保持されていたシート状個片のテンションを解放することができる。この結果、貼合後の反りを効果的に防止できて、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる貼合装置の全体の斜視図
図2】実施形態にかかる貼合装置で実施する貼合方法の概略工程図
図3】ハーフカット後の剥離前の装置状態の説明図
図4】ハーフカットされた機能フィルムを吸着盤に吸着する説明図
図5】ハーフカットされた機能フィルムをロールから剥離する説明図
図6】剥離された機能フィルムにかかっている応力を表す説明図
図7】吸着を停止又は緩めることで機能フィルムにかかっている応力をリセットし、再度しっかりと吸着した状態を表した説明図
図8】吸着盤の平面図
図9】吸着盤の吸引孔の領域分割を説明する図
図10】変形例にかかる吸着盤の吸引孔の領域分割を説明する図
図11】貼合対象物のロールテンションを調整した装置状態の説明図
図12】カメラで両材料のアライメントマークを認識して調整する説明図
図13】吸着盤を上昇させて貼合対象物に貼付する説明図
図14】ハーフカット前のロールテンションのかかった状態の説明図
図15】ハーフカットによってシート化される事により縮む方向に応力がかかる事を表す説明図
図16】は貼合された機能フィルムの状態を表している説明図であり、(a)は貼合する両方の材料が共に前工程までのテンションと応力が同じであれば位置ズレは起きない事を表す説明図であり、(b)は貼合時に発生する不明な応力が加わる事でフィルムの伸び縮みにより発生する微妙なズレを表す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の知見)
まず、本発明を説明する前に、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合ができない理由について説明する。
【0011】
図14及び図15で先に説明したように、センサ基材のような機能フィルム102などがセパレータ101上に何層にも積層されて構成されかつロールテンション110が加えられた基材シート103において、機能フィルム102に対してのみ、図15のようにハーフカット104を入れると、機能フィルム102に縮む力105が働く。このとき、機能フィルム102の厚み又は材料によって、機能フィルム102に作用する応力は不明であり、ロールのテンション110の調整だけで、機能フィルム102に作用する応力を制御するのは困難である。その上、機能フィルム102をセパレータ101から剥離することにより、機能フィルム102には、どのような応力が残留しているか全く不明な状態となる。そのような不明な状態のまま、機能フィルム102が吸着盤などで吸着保持されて、機能フィルム102と貼合対象物との貼合が行われるため、貼合後にどのような反りが発生するか全く不明なものとなり、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合ができなかった。
【0012】
特に、フォトリソグラフ又はエッチングで形成されたパターンは、定められたロールテンションで加工されており、貼合するときに発生する不明な応力がパターンに加わると、フィルムの伸び縮みにより、図16の上側(a)に示す理想的な貼合に対して、下側(b)に示すように、微妙なズレが発生して貼合することになり、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合ができなかった。
【0013】
そこで、発明者らは、吸着盤などで吸着保持されている機能フィルム102において、吸着保持を一旦停止又は緩和して、残留している応力を解放することを想到して発明をするに至ったものである。
【0014】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明における第1実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1の実施形態にかかる貼合方法を実施できる貼合装置は、図1及び図3に示すように、フィルム同士を貼り合わせる貼合装置であって、第1搬送部11と、第2搬送部12と、ハーフカット処理部13と、吸着保持部14と、剥離部15と、吸着動作制御部17と、移送機構部18と、貼付部19とを備えて構成している。
【0016】
この貼合装置では、図2に示すように、第1搬送部11側では、第1搬送部11から第1フィルム1が搬出された(巻き戻された)のち、ハーフカット工程S11と、吸着及び剥離工程S12と、移送工程S13とを行う一方、第2搬送部12側では、第2搬送部12から第2フィルム4が搬出された(巻き戻された)のち、必要に応じてセパレータ剥離工程S21と、貼付部19での吸着工程S22と、貼付部19でのアライメント工程S23と、貼付工程S24とを経て、第2フィルム4が巻き取られるものである。
【0017】
第1搬送部11は、一定のロールテンション20で、長尺で一方の表面にセパレータ3が配置された第1フィルム1を第1フィルム1の搬送方向沿いに搬送する。第1フィルム1は、長尺の樹脂フィルムのセパレータ3側の一方面、セパレータ3側とは反対側の他方面のうちいずれかに第1導電パターンが長手方向に一定間隔で多数個形成された機能フィルムである。例えば、導電パターンとして一種の電極と当該電極から引き出された配線とを形成したセンサ基材用フィルムである。第1搬送部11としては、具体的には、図1及び図3に示すように、第1フィルム巻戻ローラ11aから巻き戻された第1フィルム1を多数の案内ローラ11cで案内するとともに、ハーフカット処理部13と吸着保持部14と剥離部15とに案内したのち、第1機能フィルム2以外の第1フィルム1を第1フィルム巻取ローラ11bで巻取るようにしている。
【0018】
第2搬送部12は、一定のテンションで、長尺の第2フィルム4を第2フィルム4の搬送方向沿いに搬送する。第2フィルム4は、長尺の樹脂フィルムの両面に第2導電パターンが長手方向に一定間隔で多数個形成された機能フィルムである。例えば、導電パターンとして表裏合わせて2種の電極と当該電極から各々引き出された配線とを形成したセンサ基材用フィルムである。なお、第2フィルム4も、一方面にセパレータが配置されていて、貼付部19に搬送される前に剥離されてもよい。この第2フィルム4の導電パターンに対して第1フィルム1から抜き出したシート状個片2の導電パターンを高精度に位置合わせして、第2フィルム4と第1フィルム1から抜き出したシート状個片2とを貼合させるのが、この貼付装置である。第2搬送部12としては、具体的には、図1及び図3に示すように、第2フィルム巻戻ローラ12aから巻き戻された第2フィルム4を多数の案内ローラ12cで案内するとともに、貼付部19の第1フィルム1から抜き出されたシート状個片2を第2フィルム4との貼合わせ位置92に案内したのち、第2フィルム4にシート状個片2が貼合された状態で第2フィルム巻取ローラ12bで巻取るようにしている。第2フィルム巻戻ローラ12aの近傍には、第2フィルム4のテンションを検出して、テンションを制御できる機構12dが配置されている(図11を参照)。
【0019】
ハーフカット処理部13は、ハーフカット工程S11を実施するものであり、第1フィルム1からセパレータ3を残して第1フィルム1だけを所定の大きさと形状とに、厚み方向にハーフカットして、多数のシート状個片2すなわち第1機能フィルム2を形成する。ハーフカット処理部13は、図3に示すように、第1フィルム巻戻ローラ11aの近傍に配置されて、ハーフカット部7でハーフカットされて生ずるシート状個片2をセパレータ3と共に、吸着保持部14と剥離部15とに案内ローラ12cで案内される。
【0020】
吸着保持部14及び剥離部15は、吸着及び剥離工程S12を実施するものである。
【0021】
吸着保持部14は、図3に示すように、剥離部15の近傍でかつハーフカット処理部13側に配置されている。吸着保持部14は、第1フィルム1の搬送が間欠的に停止されて剥離部15の近傍の吸着保持位置91に停止し、かつ、セパレータ3上の、ハーフカットされることにより第1フィルム1から生じたシート状個片2を吸着保持する。吸着保持部14は、図8に示す多数の吸引孔41を有して第1フィルム1のうちシート状個片2のみに全面を吸着保持可能な吸着盤42と、吸着盤42の各吸引孔41に連通する真空吸引装置などの吸引機構部47とを備え、吸着動作制御部17で吸引機構部47による吸引動作(すなわち吸着動作)を制御している。吸着盤42は、図4に示すように昇降装置14bにより上下方向沿いに昇降するとともに、図5に示すように第1移動装置14cにより第1フィルム1の搬送方向沿いに移動可能としている。よって、吸着盤42の下部には、昇降装置14bと第1移動装置14cとが配置され、さらには、移送機構部18と連結されるか又は移送機構部18に支持されて、移送機構部18で吸着盤42が、第1フィルム1の搬送方向と直交する方向沿いに、剥離部15と、第1フィルム1のシート状個片2と貼合わせ装置92との間を往復移動可能としている。昇降装置14bと第1移動装置14cと移送機構部18とは、それぞれ、例えばサーボモータなどのアクチュエータを利用して構成される直線的に往復移動可能な駆動装置であって高精度で位置決めできる機構が良い。
【0022】
剥離部15は、案内板15aでセパレータ3及び第1フィルム1を第1フィルム1の搬送方向沿いに案内しつつ、ハーフカットして形成された第1フィルム1のシート状個片2以外の残余部分1a及びセパレータ3を、案内板15aの先端に固定されたブレード16によって鋭角に反転して、吸着保持位置91で吸着保持部14に吸着保持された第1フィルム1のシート状個片2を、セパレータ3から円滑に剥離する。このとき、図5に示すように、第1フィルム1を第1搬送部11で搬送方向沿いに搬送するとともに、吸着保持部14も第1移動装置14cにより第1フィルム1の搬送方向沿いに第1フィルム1の搬送速度と同じ速度で同期して移動しつつ、この剥離動作が行われる。
【0023】
剥離動作によりセパレータ3から剥離された第1フィルム1のシート状個片2は、図6に示すように、吸着保持部14の吸着盤14aに吸着保持されている(下記の第1吸着動作S41を参照。)が、この状態では、従来と同様に、縮む力81の他、剥がした力82及び吸着力83などの力が作用して、不明な応力が残留している。この残留している不明な応力は、吸着動作制御部17での以下の動作で解消することができる。
【0024】
吸着動作制御部17は、吸着保持部14において、吸引機構部47による吸引動作を制御することにより、第1吸着動作S41と、吸着制御動作S42と、第2吸着動作S43とを順に実施する。これらの一連の動作は、剥離動作から貼合わせ位置92への移送動作終了までの間に行われる。よって、例えば、剥離動作開始から剥離動作終了までに第1吸着動作S41を行い、剥離動作終了後から移送開始前に吸着制御動作S42を行い、移送開始後から移送終了までに第2吸着動作S43を行うことができる。又は、剥離動作開始から移送動作終了までに第1吸着動作S41を行い、移送動作終了後に吸着制御動作S42と第2吸着動作S43とを順に行うこともできる。
【0025】
第1吸着動作S41は、第1フィルム1のシート状個片2を吸着盤14aの全ての吸引孔41で吸着する。
【0026】
吸着制御動作S42は、図7に示すように、第1吸着動作S41後に吸着動作を、全体的に停止するか、全体的に緩めるか、部分的に停止するか、部分的に緩めるかのいずれかを行う。この吸着制御動作S42により、吸着盤14aにシート状個片2が吸着保持されているとき、シート状個片2に残留している不明な応力を、シート状個片2から解放するようにしている。よって、シート状個片2に対する吸引孔41による吸着保持力をすべて停止すれば、確実に解放できるが、その際、応力の影響等によりシート状個片2が吸着盤14aの当初に吸着保持した位置から大きく位置ずれして、アライメントの認識時に視野角から外れることが懸念される。そのような場合には、吸着保持力を全体的に緩めるか、すべての吸引孔41のうちの一部の吸引孔41による吸着保持力を維持しつつ残りの吸引孔41による吸着保持力を停止して部分的に停止するか、又は、すべての吸引孔41のうちの一部の吸引孔41による吸着保持力を維持しつつ残りの吸引孔41による吸着保持力を低下させて部分的に緩めるようにすればよい。このようにすれば、シート状個片2が、吸着盤14aの当初に吸着保持した位置から大きく位置ずれすることを防止することができる。
【0027】
この動作は、図8に示す吸着盤14aに多数配列された吸引孔41を、例えば図9に示すように複数の(例えば6列の)縦列の領域43に分割し、各領域43毎に吸引孔41による吸着保持力を独立して制御できるように吸着動作制御部17で吸引機構部47を制御すればよい。具体的には、真空吸引装置及び真空を発生させる機構と各領域43とを連結する連結通路に制御弁をそれぞれ配置し、吸着動作制御部17で各制御弁を開閉制御すれば、各領域43毎の吸着保持力を吸着維持、吸着停止、及び緩めるなどの動作制御を行うことができる。
【0028】
吸着盤14aにおける吸引孔41の領域の分け方としては、図9に示すものに限らず、図10(a)に示すように横方向の領域44に分けたり、図10(b)に示すようにマトリックス状の領域45に分けたり、図10(c)に示すように同心円状の領域46に分けたりすることができる。このように、吸着盤14aにおける吸引孔41を複数の領域に分割したのち、任意の領域毎に吸着保持力を吸着維持、吸着停止、及び緩めるなどの動作制御を行うほか、特定の領域での吸着保持力を吸着維持しつつ、残りの領域での吸着保持力を吸着停止又は緩めるなどの動作制御を行うようにしてもよい。
【0029】
さらに、残りの領域のうち、少なくとも1つの領域の吸引孔41での吸引機構部47による吸引動作を、再稼働するか、又は再強化したのちに、吸引動作を維持していた領域での吸引機構部47による吸引動作を、停止するか、又は緩めるように制御するようにしてもよい。このようにすれば、すべての領域で、残留している不明な応力をすべて解放することができる。
【0030】
よって、例えば、分割された領域のうち、いずれか一端部の領域(例えば、図9の右端又は左端の領域、図10(a)の上端又は下端の領域)の吸引孔41での吸引機構部47による吸引動作を維持した状態で、残りの領域の吸引孔で41の吸引機構部47による吸引動作を、停止するか、又は緩めるように制御すれば、一端部が支持された状態で、一端部を除く他の領域の残留応力を解放することができ、その後、他端部を吸着維持して一端部の吸着を停止して、一端部の領域の残留応力を解放すれば、残留応力をより円滑に解放することができる。同様に、例えば、分割された領域のうち、中央部の領域(例えば、図10(c)の中心の領域)の吸引孔41での吸引機構部47による吸引動作を維持した状態で、残りの領域の吸引孔で41の吸引機構部47による吸引動作を、停止するか、又は緩めるように制御すれば、中央部が支持された状態で、中央部を除く他の領域の残留応力を解放することができ、その後、中央部以外の部分を吸着維持して中央部の吸着を停止して、中央部の領域の残留応力を解放すれば、残留応力をより円滑に解放することができる。
【0031】
第2吸着動作S43は、吸着制御動作S42後に、残留している応力が無くなったと思われる第1フィルム1のシート状個片2を吸着盤14aに再び吸着して、貼合動作に備える。
【0032】
移送機構部18は、移送工程S13を実施するものであり、吸着保持部14を支持するか、又は、吸着保持部14と一体的に設けられている。移送機構部18は、吸着保持部14の吸着盤14aを、剥離部15と、貼付部19の第1フィルム1のシート状個片2と第2フィルム4との貼合わせ位置92との間で往復移動可能に配置している。剥離部15で剥離した第1フィルム1のシート状個片2を吸着保持した吸着保持部14の吸着盤14aを、第1フィルム1の搬送方向とは直交する横方向に移動し、第2フィルム4の搬送方向を横切って、図11図13に示すように、貼合わせ位置92の貼付部19の下方まで移動させる。
【0033】
貼付部19は、図11図13に示すように、吸着保持部14と協働して、吸着工程S22とアライメント工程S23と貼付工程S24とを行うものである。貼付部19は、貼合わせ位置92に配置され、真空吸引装置などの吸引機構部19aに接続された多数の吸引孔41を有する吸着盤として機能し、第2フィルム4の貼り付け位置を吸着保持する。よって、貼付部19で吸着保持された第2フィルム4の貼り付け位置に対して、吸着盤14aに吸着保持されたシート状個片2の高精度な位置決め、すなわち、第2フィルム4に形成されている導電パターンに対して、シート状個片2が有する導電パターンの高精度な位置決めを行うとともに、吸着盤14aを上方に移動させて、貼り付け動作を行うものである。
【0034】
すなわち、第2吸着動作S43を実施している吸着保持部14に吸着保持された第1フィルム1のシート状個片2を、貼付部19で吸着保持された第2フィルム4に対して貼り付ける。このとき、シート状個片2が四角形の場合、図16に示すように、四隅に第1アライメントマーク69を形成しておくとともに、対応する、第2フィルム4の貼付位置の四角形の領域の四隅に第2アライメントマーク70を形成しておく。これらの位置決めマークは、四隅に対応して4か所に配置されたカメラ48で両部材2,4の第1及び第2アライメントマーク69,70をそれぞれ認識して、シート状個片2すなわち吸着盤14aを高精度で位置調整する。このとき、例えば、吸着保持部14の第1移動装置14cで第2フィルム4の搬送方向沿いの位置調整を行い、移送機構部18で第2フィルム4の搬送方向と直交する横方向沿いの位置調整を行うことにより、高精度でアライメント調整を行う。その後、昇降装置14bにより吸着盤14aを上昇させて、貼付部19で吸着保持された第2フィルム4に対してシート状個片2を高精度で貼り付ける。
【0035】
カメラ48は、吸着保持部14に予め備えていてもよい。
【0036】
前記実施形態によれば、吸着保持を一時的に停止又は緩和して、シート状個片2に残留していた応力を解放したのち、貼合するため、シート状個片2には残留応力が無く、フィルム対フィルムであってもシートの伸び縮みによる位置ズレが起きず、貼合後の反りを効果的に防止できて、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合が可能となり、品質向上に繋がる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、残留応力を解放するため、吸着保持力の停止又は緩和以外に、吸着保持力の停止する上にエアなどを吸引孔41から少量吹き出して、残留応力をより解放しやすくしてもよい。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第2フィルム4も、長尺の樹脂フィルムの一方面のみに第2導電パターンが長手方向に一定間隔で多数個形成された機能フィルムであってもよい。また、第1フィルム1及び第2フィルム4の一方が、絵柄パターンが長手方向に一定間隔で多数個形成された加飾フィルムであってもよい。さらには、フィルム状の有機LEDと機能フィルム又は加飾フィルムとの貼り合せにも適用可能である。
【0039】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる貼合装置は、貼合後の反りを効果的に防止できて、±10μmオーダーでの高精度な位置での貼合が可能であり、ロールフィルムから取り出したフィルムを別のロールフィルムに貼着する場合に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 第1フィルム
1a シート状個片以外の残余部分
2 シート状個片
3 セパレータ
4 第2フィルム
7 ハーフカット部
11 第1搬送部
11a 第1フィルム巻戻ローラ
11a 第1フィルム巻取ローラ
11c 案内ローラ
12 第2搬送部
12a 第2フィルム巻戻ローラ
12b 第2フィルム巻取ローラ
12c 案内ローラ
13 ハーフカット処理部
14 吸着保持部
15 剥離部
15a 案内板
16 ブレード
17 吸着動作制御部
18 移送機構部
19 貼付部
19a 吸引機構部
20 ロールテンション
41 吸引孔
42 吸着盤
43,44,45,46 領域
47 吸引機構部
48 カメラ
91 吸着保持位置
92 貼合わせ位置
S11 ハーフカット工程
S12 吸着及び剥離工程
S13 移送工程
S21 剥離工程
S22 吸着工程
S23 アライメント工程
S24 貼付工程
S41 第1吸着動作
S42 吸着制御動作
S43 第2吸着動作
図1
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図3
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