特許第6719332号(P6719332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719332
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20200629BHJP
   H02M 3/335 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   H02J7/10 B
   H02M3/335
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-163721(P2016-163721)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-33232(P2018-33232A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】大中 智貴
(72)【発明者】
【氏名】福井 規生
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−121103(JP,A)
【文献】 特開平11−32444(JP,A)
【文献】 特開2006−14526(JP,A)
【文献】 特開2006−129619(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0153560(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0203763(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0057825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H02M 3/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源から供給される直流電力を定電圧の直流電力に変換するDC−DCコンバータと、
前記DC−DCコンバータが出力する直流電圧で二次電池を充電する充電回路と、
前記入力電源の電圧を検出する電源電圧検出回路と、
前記DC−DCコンバータの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、
前記入力電源の電圧に基づいて、前記充電回路及び前記出力電圧設定回路を制御する制御装置と、を備え、
前記充電回路は、前記二次電池に直列に接続され、前記二次電池の充電電流を制限する充電電流制限抵抗を含み、前記充電電流制限抵抗は、前記DC−DCコンバータの出力電圧が定格充電電圧であるときに前記二次電池の充電電流が最大充電電流となる抵抗値を有し、
前記出力電圧設定回路は、前記DC−DCコンバータの出力電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路の分圧比を変更する分圧比変更回路と、を含み、
前記DC−DCコンバータは、前記分圧回路の分圧点の電圧が所定電圧に維持されるように出力電圧を制御し、
前記制御装置は、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧に設定して前記二次電池の充電を開始し、前記入力電源の電圧が第1閾値電圧以下に低下したことを条件として、前記二次電池の充電電流が前記最大充電電流より低い電流に制限されるように、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧より低い充電電圧に設定するように前記分圧比変更回路を制御する、充電装置。
【請求項2】
前記分圧比変更回路は、前記DC−DCコンバータの出力と前記分圧回路の前記分圧点との間に介在する直列接続されたトランジスタ及び抵抗器と、前記DC−DCコンバータの出力と前記制御装置との間に介在する直列接続された2つの抵抗器と、から構成され、
前記トランジスタは、前記2つの抵抗器の接続点の電圧で制御される、充電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充電装置において、前記制御装置は、前記入力電源の電圧が前記第1閾値電圧以下に低下した後は、前記第1閾値電圧より高い第2閾値電圧以上に前記入力電源の電圧が上昇したことを条件として、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧に設定する、充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素二次電池等の二次電池の充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池等の二次電池は、充電することによって繰り返し使用することが可能であり、様々な分野で広く利用されている。このような二次電池を充電する充電装置においては、二次電池を充電する上で、充電電圧及び充電電流を適切に制御する必要がある。そして出来るだけ短時間で二次電池の充電を完了させる上では、二次電池が劣化しない範囲で、出来るだけ大きい充電電流で充電を行うのが望ましい。
【0003】
しかし二次電池を充電する充電装置へ電力を供給する入力電源は、その電力供給能力が必ずしも一定でない場合も少なくない。例えばその入力電源が他の機器へも電力を供給しており、しかもその機器の負荷が変動し得るような場合には、充電装置へ供給可能な最大電力が変動し得ることになる。そのため例えば充電装置において、常に最短時間で充電可能な大きさの最大充電電流で二次電池が充電される構成になっていると、入力電源の電力供給能力が不足して入力電源の電圧が低下したときに、最小限必要な電圧の充電電圧が得られず二次電池の充電を中断せざるを得なくなる虞が生ずる。
【0004】
このような課題を解決することを目的とした従来技術の一例としては、DC−DCコンバータの出力電圧で二次電池を充電する際に、入力電源である太陽電池等の電圧の変動に応じてDC−DCコンバータの出力電流特性(電圧垂下開始電流)を調整する電源装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。また他の従来技術としては、二次電池の充電中に入力電圧の低下を検出したときに、現在の充電電流で二次電池の充電を継続可能か否か判定する演算処理を行い、その演算処理結果に応じて、充電電流制御手段の演算増幅回路の設定を変更して充電電流を低い値に設定する充電装置が公知である(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−014526号公報
【特許文献2】特開2006−129619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来技術は、いずれも装置構成が大掛かりで制御手順も複雑であるため、充電装置の小型化及び低コスト化が困難であるという課題がある。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池の充電を継続可能な充電装置の小型化及び低コスト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、入力電源から供給される直流電力を定電圧の直流電力に変換するDC−DCコンバータと、前記DC−DCコンバータが出力する直流電圧で二次電池を充電する充電回路と、前記入力電源の電圧を検出する電源電圧検出回路と、前記DC−DCコンバータの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、前記入力電源の電圧に基づいて、前記充電回路及び前記出力電圧設定回路を制御する制御装置と、を備え、前記充電回路は、前記二次電池に直列に接続され、前記二次電池の充電電流を制限する充電電流制限抵抗を含み、前記充電電流制限抵抗は、前記DC−DCコンバータの出力電圧が定格充電電圧であるときに前記二次電池の充電電流が最大充電電流となる抵抗値を有し、前記制御装置は、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧に設定して前記二次電池の充電を開始し、前記入力電源の電圧が第1閾値電圧以下に低下したことを条件として、前記二次電池の充電電流が前記最大充電電流より低い電流に制限されるように、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧より低い充電電圧に設定する、充電装置である。
【0009】
二次電池の充電は、充電電圧を定格充電電圧に設定して開始される。それによって二次電池は、最大充電電流で定電流充電される。このとき二次電池の充電電圧は、定格充電電圧まで徐々に上昇させるのが好ましい。ここで最大充電電流は、例えば二次電池が劣化しない範囲で流すことが可能な充電電流の最大値であり、二次電池を最短時間で充電することが可能な大きさの電流である。したがって入力電源の電力供給能力に十分な余裕があり、二次電池の充電状態が満充電になるまで最大充電電流で充電することが可能であれば、最短時間で二次電池を満充電にすることができる。
【0010】
他方、入力電源の電力供給能力が不足して入力電源の電圧が第1閾値電圧以下に低下した場合には、二次電池の充電電流が最大充電電流より低い電流に制限されるように、定格充電電圧より低い電圧に充電電圧が設定されて引き続き二次電池の充電が行われる。このときの充電電圧は、定格充電電圧より低い電圧であるとともに、二次電池を満充電まで最適な充電電流で充電することが可能な大きさの電圧である。二次電池の充電電圧を定格充電電圧より低い充電電圧に下げることによって、最大充電電流より小さい電流で二次電池の定電流充電が行われることになり、その結果、二次電池の充電で消費される電力が小さくなる。
【0011】
つまり入力電源の電力供給能力が低下したときには、二次電池の充電で消費される電力が小さくなるので、その分だけ充電時間は長くなるものの、必要最小限の電圧以上の充電電圧を維持して二次電池の充電を継続することができる。それによって入力電源の電力供給能力が低下したときに、二次電池の充電電圧が必要最小限の電圧未満に低下して二次電池の充電を中断せざるを得なくなる虞を低減することができるので、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池の充電を継続することができる。
【0012】
そして本発明に係る充電装置において、二次電池の充電電圧は、DC−DCコンバータの出力電圧によって規定され、二次電池の充電電流は、二次電池に直列に接続される電流制限抵抗によって規定される。そのため二次電池の充電に消費される電力は、DC−DCコンバータの出力電圧が可変設定されることで自動的に増減調整されることになる。つまり本発明に係る充電装置は、二次電池の充電電流が最大充電電流より低い電流に制限されるように、入力電源の電圧の低下に応じてDC−DCコンバータの出力電圧が可変設定されるシンプルな構成であるため、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池の充電を継続できる充電装置を小型で低コストに構成することができる。
【0013】
これにより本発明の第1の態様によれば、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池の充電を継続可能な充電装置の小型化及び低コスト化を実現できるという作用効果が得られる。
【0014】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記制御装置は、前記入力電源の電圧が前記第1閾値電圧以下に低下した後は、前記第1閾値電圧より高い第2閾値電圧以上に前記入力電源の電圧が上昇したことを条件として、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記定格充電電圧に設定する、充電装置である。
入力電源の電力供給能力が不足して入力電源の電圧が第1閾値電圧以下に低下した場合には、二次電池の充電電流が最大充電電流より低い電流に制限されるように、定格充電電圧より低い電圧に充電電圧が設定されて引き続き二次電池の充電が行われる。そして充電中に入力電源の電力供給能力が回復して入力電源の電圧が第2閾値電圧以上に上昇した場合には、DC−DCコンバータの出力電圧の設定が定格充電電圧に変更される。つまり充電中に入力電源の電力供給能力が回復した場合には、その後は最大充電電流で二次電池が定電流充電される。したがって本発明の第2の態様によれば、入力電源の電力供給能力の変動に応じて柔軟かつ的確に充電電流を自動的に設定して二次電池を充電することができる。
【0015】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記出力電圧設定回路は、前記DC−DCコンバータの出力電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路の分圧比を変更する分圧比変更回路と、を含み、前記DC−DCコンバータは、前記分圧回路の分圧点の電圧が所定電圧に維持されるように出力電圧を制御する、充電装置である。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、極めてシンプルな回路構成でDC−DCコンバータの出力電圧を可変設定することができるので、本発明に係る充電装置において、さらなる小型化及び低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池の充電を継続可能な充電装置の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る充電装置の構成を図示した回路図。
図2】入力電源の電力供給能力に十分な余裕がある場合の充電制御の一例を図示したタイミングチャート。
図3】入力電源の電力供給能力が不足している場合の充電制御の一例を図示したタイミングチャート。
図4】二次電池の充電中に入力電源の電力供給能力が回復した場合の充電制御の一例を図示したタイミングチャート。
図5】出力電圧設定回路の要部を図示した回路図。
図6】出力電圧設定回路の要部を図示した回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0020】
<充電装置10の構成>
本発明に係る充電装置10の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る充電装置10の構成を図示した回路図である。
【0021】
充電装置10は、DC−DCコンバータ11、充電回路12、電源電圧検出回路13、出力電圧設定回路14、充電制御部15を備える。二次電池20は、例えばニッケル水素二次電池等の二次電池である。
【0022】
DC−DCコンバータ11は、入力端子INとグランド端子GNDに接続される入力電源(図示省略)から供給される直流電力を定電圧の直流電力に変換する定電圧電源である。より具体的にはDC−DCコンバータ11は、充電装置10の入力電圧Veを降圧して定電圧出力する降圧コンバータである。DC−DCコンバータ11は、特に降圧コンバータに限定されるものではなく、例えば昇圧コンバータでもよいし、昇降圧コンバータでもよい。
【0023】
充電回路12は、DC−DCコンバータ11が出力する直流電圧で二次電池20を充電する回路であり、トランジスタQ1及び充電電流制限抵抗R8を含む。トランジスタQ1は、DC−DCコンバータ11から二次電池20への充電経路を開閉する半導体スイッチであり、当該実施例においてはNPN型バイポーラトランジスタである。トランジスタQ1は、コレクタがDC−DCコンバータ11の出力に接続されており、エミッタが二次電池20の正極に接続される。またトランジスタQ1は、ベースが充電制御部15に接続されており、充電制御部15によってON/OFF制御される。
【0024】
充電電流制限抵抗R8は、二次電池20に直列に接続され、二次電池20の充電電流Ioutを制限する抵抗である。充電電流制限抵抗R8は、DC−DCコンバータ11の出力電圧が定格充電電圧V1であるときに二次電池20の充電電流Ioutが最大充電電流(第1充電電流I1(図2図4))となる抵抗値を有する。
【0025】
電源電圧検出回路13は、充電装置10の入力電圧Veを検出する回路であり、2つの抵抗R1、R2を含む分圧回路である。抵抗R1は、一端が入力端子INに接続されており、他端が抵抗R2の一端に接続されている。抵抗R2の他端は、グランド端子GNDに接続されている。抵抗R1と抵抗R2の接続点は、充電制御部15に接続されている。
【0026】
出力電圧設定回路14は、DC−DCコンバータ11の出力電圧を設定する回路であり、分圧回路141及び分圧比変更回路142を含む。
【0027】
分圧回路141は、DC−DCコンバータ11の出力電圧を分圧する回路であり、2つの抵抗R3、R4を含む。抵抗R3は、一端がDC−DCコンバータ11の出力に接続されており、他端が抵抗R4の一端に接続されている。抵抗R4の他端は、グランド端子GNDに接続されている。抵抗R3と抵抗R4との接続点(分圧点)は、DC−DCコンバータ11のフィードバック制御端子に接続されている。DC−DCコンバータ11は、抵抗R3と抵抗R4との接続点の電圧が所定電圧に維持されるように出力電圧を制御する。
【0028】
分圧比変更回路142は、分圧回路141の分圧比を変更する回路であり、3つの抵抗R5〜R7及びトランジスタQ2を含む。抵抗R5は、一端が抵抗R3と抵抗R4との接続点に接続されており、他端がトランジスタQ2のコレクタに接続されている。抵抗R6は、一端がDC−DCコンバータ11の出力に接続されており、他端が抵抗R7の一端に接続されている。抵抗R7の他端は、充電制御部15に接続されている。この抵抗R7と充電制御部15の間に、アンプ又はD/Aコンバータを接続してもよい。トランジスタQ2は、分圧回路141の抵抗R3に対する抵抗R5の並列接続を開閉する半導体スイッチであり、当該実施例においてはPNP型バイポーラトランジスタである。トランジスタQ2は、コレクタが抵抗R5の他端に接続されており、エミッタがDC−DCコンバータ11の出力に接続されており、ベースが抵抗R6と抵抗R7との接続点に接続されている。
【0029】
充電制御部15は、公知のマイコン制御装置であり、二次電池20の充電制御を実行する制御装置である。また充電制御部15は、マイコン制御装置以外にもアンプを用いた制御回路でもよい。充電制御部15は、さらに充電装置10の入力電圧Veに基づいて充電回路12及び出力電圧設定回路14を制御する。より具体的には充電制御部15は、抵抗R1と抵抗R2の接続点の電圧に基づいて、トランジスタQ1のON/OFF制御、トランジスタQ2のベース電流制御を実行する。
【0030】
<充電装置10の動作>
充電装置10の動作について、図2図4を参照しながら説明する。
図2は、充電装置10の動作を図示したタイミングチャートであり、入力電源の電力供給能力に十分な余裕がある場合の充電制御の一例を図示したものである。
【0031】
充電制御部15は、DC−DCコンバータ11の出力電圧を定格充電電圧V1に設定して二次電池20の充電を開始する(タイミングT1)。より具体的には充電制御部15は、充電制御電圧Vを下げた状態でトランジスタQ1をONする。するとトランジスタQ2のベース電流IQ2Bは最大となるため、充電電圧Vout及び充電電流Ioutは最小で動作開始する。充電制御電圧Vを徐々に上げていくことによりトランジスタQ2のベース電流IQ2Bは徐々に低下していく。それによって二次電池20の充電電圧Vout及び充電電流Ioutが上昇していくとともに、充電装置10の入力電圧Veが低下していく。
【0032】
入力電源の電力供給能力に十分な余裕がある場合には、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下する前に、二次電池20の充電電圧Voutが定格充電電圧V1まで上昇し、それによって二次電池20の充電電流Ioutが第1充電電流I1まで上昇する(タイミングT2)。したがって二次電池20は、最大充電電流である第1充電電流I1で充電される。ここで最大充電電流は、例えば二次電池20が劣化しない範囲で流すことが可能な充電電流Ioutの最大値であり、二次電池20を最短時間で充電することが可能な大きさの電流である。
【0033】
充電制御部15は、二次電池20の充電中、つまりトランジスタQ1がONしている間は、例えばサーミスタ等の感温素子(図示省略)で検出した二次電池20の温度から二次電池20の充電状態を検出する。そして充電制御部15は、二次電池20の充電状態が満充電になった時点で、トランジスタQ1をOFFして二次電池20の充電を終了する(タイミングT3)。このように入力電源の電力供給能力に十分な余裕がある場合には、最大充電電流である第1充電電流I1で二次電池20を充電することができるので、最短時間で二次電池20を満充電にすることができる。
【0034】
図3は、充電装置10の動作を図示したタイミングチャートであり、入力電源の電力供給能力が不足している場合の充電制御の一例を図示したものである。
【0035】
充電制御部15は、DC−DCコンバータ11の出力電圧を定格充電電圧V1に設定して二次電池20の充電を開始する(タイミングT11)。それによって二次電池20の充電電圧Vout及び充電電流Ioutが上昇していくとともに、充電装置10の入力電圧Veが低下していく。そして入力電源の電力供給能力が不足している場合には、二次電池20の充電電圧Voutが定格充電電圧V1まで上昇する前に、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下する(タイミングT12)。
【0036】
第1閾値電圧Vth1は、定格充電電圧V1及び最大充電電流(第1充電電流I1)で二次電池20を定電流充電する上で、入力電源の電力供給能力が不足している状態を検出するためのものである。そのため第1閾値電圧Vth1は、例えば定格充電電圧V1を出力可能なDC−DCコンバータ11の入力電圧の下限と同じ電圧か、それよりも高い電圧に設定される。また第1閾値電圧Vth1は、例えば充電装置10の入力電圧Veの定格値と検出値との電位差ΔVとして設定してもよい。
【0037】
充電制御部15は、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下した時点で、充電制御電圧Vの上昇を止め、印加している電圧をひとつ前の状態に戻す(タイミングT12)。それによって分圧回路141の抵抗R4に流れる電流が固定される。そうすることにより分圧回路141の分圧比が変更される。その分圧比の変更によって、分圧回路141の分圧点(抵抗R3とR4の接続点)の電圧が上昇するため、DC−DCコンバータ11の出力電圧が低下し、その結果、二次電池20の充電電流が最大充電電流(第1充電電流I1)より低い電流に制限されるように、自動的にDC−DCコンバータ11の出力電圧が充電電圧V2に低下する。つまり充電制御部15は、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下したことを条件として、二次電池20の充電電流が最大充電電流(第1充電電流I1)より低い電流(第2充電電流I2)に制限されるように、DC−DCコンバータ11の出力電圧を定格充電電圧V1より低い充電電圧V2に設定する。この充電電圧V2は、定格充電電圧V1より低い電圧であるとともに、入力電源の供給能力最大限の電流で二次電池20を満充電まで充電することが可能な大きさの電圧であり、例えば二次電池20の必要最小限の充電電圧と同じ電圧か、それよりも高い電圧に設定される。
【0038】
二次電池20の充電電流が最大充電電流(第1充電電流I1)より低い電流に制限されるように、DC−DCコンバータ11の出力電圧が充電電圧V2に低下することによって、二次電池20の充電電流Ioutが第2充電電流I2まで低下し、それによって二次電池20の充電電圧Voutが充電電圧V2まで低下する(タイミングT13)。つまり入力電源の電力供給能力が不足して充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下した場合には、二次電池20の充電電流が最大充電電流(第1充電電流I1)より低い電流(第2充電電流I2)に制限されるように、定格充電電圧V1より低い充電電圧V2で引き続き二次電池20の充電が行われる。そして二次電池20の充電電圧Voutを充電電圧V2に下げることによって、最大充電電流より小さい第2充電電流I2で二次電池20の定電流充電が行われることになり、その結果、二次電池20の充電で消費される電力が小さくなる。そして充電制御部15は、二次電池20の充電状態が満充電になった時点で、トランジスタQ1及びQ2をOFFして二次電池20の充電を終了する(タイミングT14)。
【0039】
このように入力電源の電力供給能力が低下したときには、二次電池20の充電で消費される電力が小さくなるので、その分だけ充電時間は長くなるものの、入力電源の電力供給能力の最大限の充電電流(第2充電電流I2)を維持して二次電池20の充電を継続することができる。それによって入力電源の電力供給能力が低下したときに、二次電池20の充電電圧Voutが必要最小限の電圧未満に低下して二次電池20の充電を中断せざるを得なくなる虞を低減することができるので、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池20の充電を継続することができる。
【0040】
そして本発明に係る充電装置10において、二次電池20の充電電圧Voutは、DC−DCコンバータ11の出力電圧によって規定され、二次電池20の充電電流Ioutは、二次電池20に直列に接続される充電電流制限抵抗R8によって規定される。そのため二次電池20の充電に消費される電力は、DC−DCコンバータ11の出力電圧が可変設定されることで自動的に増減調整されることになる。つまり本発明に係る充電装置10は、二次電池10の充電電流が最大充電電流より低い電流に制限されるように、充電装置10の入力電圧Veの低下に応じてDC−DCコンバータ11の出力電圧が可変設定されるシンプルな構成であるため、小型で低コストに構成することができる。したがって本発明によれば、入力電源の電力供給能力が変動しても二次電池20の充電を継続可能な充電装置10の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0041】
図4は、充電装置10の動作を図示したタイミングチャートであり、二次電池20の充電中に入力電源の電力供給能力が回復した場合の充電制御の一例を図示したものである。
【0042】
充電制御部15は、DC−DCコンバータ11の出力電圧を定格充電電圧V1に設定して二次電池20の充電を開始する(タイミングT21)。それによって二次電池20の充電電圧Vout及び充電電流Ioutが上昇していくとともに、充電装置10の入力電圧Veが低下していく。そして入力電源の電力供給能力が不足している場合には、二次電池20の充電電圧Voutが定格充電電圧V1まで上昇する前に、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下する(タイミングT22)。
【0043】
充電制御部15は、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下した時点で、充電制御電圧Vの上昇を止め、印加している電圧をひとつ前の状態に戻す(タイミングT22)。それによってDC−DCコンバータ11の出力電圧が充電電圧V2に低下する。そして二次電池10の充電電流が最大充電電流より低い電流に制限されるように、DC−DCコンバータ11の出力電圧が充電電圧V2に低下することによって、二次電池20の充電電圧Voutが充電電圧V2まで低下し、それによって入力電源の供給能力の最大限で二次電池20の充電電流Ioutを流し続けることができる(タイミングT23)。
【0044】
充電制御部15は、二次電池20の充電状態が満充電になる前に、入力電源の電力供給能力が回復し、充電装置10の入力電圧Veが第2閾値電圧Vth2以上に上昇した場合には、その時点で充電制御電圧Vの上昇を開始する(タイミングT24)。それによって分圧回路141の抵抗R3に対して抵抗R5が並列に接続されていない状態になるので、分圧回路141の分圧比が元の分圧比に変更される。その分圧比の変更によって、分圧回路141の分圧点(抵抗R3とR4の接続点)の電圧が低下するため、DC−DCコンバータ11の出力電圧が上昇し、その結果、DC−DCコンバータ11の出力電圧が定格充電電圧V1に上昇する。つまり充電制御部15は、充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下した後は、第1閾値電圧Vth1より高い第2閾値電圧Vth2以上に充電装置10の入力電圧Veが上昇したことを条件として、DC−DCコンバータ11の出力電圧を定格充電電圧V1に設定する。
【0045】
第2閾値電圧Vth2は、定格充電電圧V1及び最大充電電流(第1充電電流I1)で二次電池20を定電流充電することが可能な程度に、入力電源の電力供給能力が回復したことを検出するためのものである。そのため第2閾値電圧Vth2は、少なくとも第1閾値電圧Vth1以上の電圧に設定され、好ましくは第1閾値電圧Vth1よりも高い電圧に設定される。また第2閾値電圧Vth2は、例えば充電装置10の入力電圧Veの定格値と検出値との電位差ΔVとして設定してもよい。
【0046】
DC−DCコンバータ11の出力電圧が定格充電電圧V1に上昇することによって、二次電池20の充電電圧Vout及び充電電流Ioutが上昇していくとともに、充電装置10の入力電圧Veが低下していく。そして充電装置10の入力電圧Veが第1閾値電圧Vth1以下に低下する前に、二次電池20の充電電圧Voutが定格充電電圧V1まで上昇し、それによって二次電池20の充電電流Ioutが第1充電電流I1まで上昇する(タイミングT25)。したがって二次電池20は、入力電源の電力供給能力が回復した後は最大充電電流である第1充電電流I1で充電される。そして充電制御部15は、二次電池20の充電状態が満充電になった時点で、トランジスタQ1をOFFして二次電池20の充電を終了する(タイミングT26)。
【0047】
このように入力電源の電力供給能力が不足していて充電電圧V2で二次電池20の充電が行われている場合であっても、充電中に入力電源の電力供給能力が回復した場合には、DC−DCコンバータ11の出力電圧の設定が充電電圧V2から定格充電電圧V1に変更される。つまり充電中に入力電源の電力供給能力が回復した場合には、その後は最大充電電流(第1充電電流I1)で二次電池20が定電流充電される。それによって入力電源の電力供給能力の変動に応じて柔軟かつ的確に充電電流Ioutを設定して二次電池20を充電することができる。
【0048】
図5及び図6は、出力電圧設定回路14の要部を図示した回路図であり、図5は、トランジスタQ2がOFFしている状態、図6は、トランジスタQ2がONしている状態をそれぞれ図示したものである。
【0049】
電流i3は、抵抗R3に流れる電流である。電流i4は、抵抗R4に流れる電流である。電流i5は、抵抗R5に流れる電流である。電圧Vfeは、抵抗R3と抵抗R4との接続点の電圧である。前述したようにDC−DCコンバータ11は、電圧Vfeが一定の電圧に維持されるように出力電圧を制御する。二次電池20を充電しているときのDC−DCコンバータ11の出力電圧、つまり充電電圧Voutは、以下の式(1)で表される。
Vout=R3×i3+Vfe ・・・(1)
トランジスタQ2がOFFしている状態(図5)では、i3=i4となる。また電圧Vfeは、以下の式(2)で表される。
Vfe=R4×i4 ・・・(2)
他方、トランジスタQ2がONしている状態(図6)では、二次電池20の充電電流が定電流制御となる。そしてi4=i3+i5となるため、電圧Vfeは、以下の式(3)で表される。
Vfe=R4×(i3+i5) ・・・(3)
DC−DCコンバータ11は、電圧Vfeが一定の電圧に維持されるように出力電圧を制御するため、トランジスタQ2のベース電流IQ2Bが増加するに従って電流i5が増加すると、それによって電流i3が減少していく。そして電流i3が減少していくと、それに従って充電電圧Voutが低下していくことになる。
【符号の説明】
【0050】
10 充電装置
11 DC−DCコンバータ
12 充電回路
13 電源電圧検出回路
14 出力電圧設定回路
15 充電制御部
20 二次電池
141 分圧回路
142 分圧比変更回路
R8 充電電流制限抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6