(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋳造により製作されており、且つ電力系統の電気回路を構成している通電用導体を内部空間に収容し、外部から当該内部空間にアクセスするためのアクセスホールが形成された金属製の容器本体と、
合成樹脂を含む材料で構成されており、前記容器本体の外側を囲うカバーと、
を備え、
当該カバーは、
前記容器本体の外面に沿う形状に予め成形された複数の片を有し、
当該複数の片の端部同士が結合されて構成されていて、
前記端部のうち一方には、横断面において、所定の方向に突出するよう湾曲している凸状部を有し、
前記端部のうち他方には、当該凸状部を受け入れ可能に湾曲している凹状部を有し、
当該凹状部が当該凸状部を受け入れることにより端部同士が嵌め合される
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置用容器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0014】
〔第1の実施形態〕
(ガス絶縁開閉装置の例)
まず、本実施形態のガス絶縁開閉装置の一例について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態のガス絶縁開閉装置の構成を示す縦断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、六フッ化硫黄等の電気絶縁性を有する不活性ガスの絶縁耐力を利用して、高圧のガスを電気接点の間に生じるアーク放電に吹き付けて消弧する、いわゆる「ガス遮断器」として構成されている。ガス絶縁開閉装置1は、電力系統の電気回路を構成する電気接点10,15,20,25を有している。具体的には、当該電気回路が閉じているときに通電する主接触子10,20と、主接触子10,20にアーク放電が生じることを避けるため、電流を遮断する遮断動作に伴って生じるアーク放電を誘引するアーク接触子15,25が、設けられている。
【0016】
主接触子10,20には、固定主接触子10と、主回路が閉じて電流が流れる閉路位置において固定主接触子10と接し、且つ固定主接触子10に対して移動可能に構成された可動主接触子20がある。同様に、アーク接触子15,25には、固定アーク接触子15と、閉路位置において、固定アーク接触子15と接し、且つ固定アーク接触子15に対して移動可能に構成された可動アーク接触子25がある。
【0017】
可動主接触子20および可動アーク接触子25は、遮断動作において、これらを操作するための操作機構(図示せず)により駆動されて、それぞれ、固定主接触子10および固定アーク接触子15から離間する方向に移動可能に構成されている。
【0018】
可動アーク接触子25は、固定アーク接触子15と同軸に設けられており、円環状をなしている。一方、可動主接触子20は、可動アーク接触子25と同軸に設けられており、円環状をなしている。可動主接触子20は、可動アーク接触子25及び絶縁ノズル部材22の径方向外側を囲うように構成されている。
【0019】
なお、以下の説明において、可動主接触子20及び可動アーク接触子25が移動する方向が、ガス絶縁開閉装置1及び容器30の軸方向であり、単に「軸方向」と記す。また、当該軸方向に垂直な方向を単に「径方向」と記す。
【0020】
また、ガス絶縁開閉装置1は、固定接触子10,15と同軸に設けられており、且つ略円筒状をなしており、且つ固定主接触子10から軸方向に延びて不活性ガスを軸方向に導いて冷却する排気冷却筒12を有している。固定主接触子10は、排気冷却筒12に結合されている。一方、固定アーク接触子15は、径方向に延びている導体17を介して、排気冷却筒12に結合されている。
【0021】
また、ガス絶縁開閉装置1は、遮断動作中において、可動アーク接触子25と固定アーク接触子15との間に生じるアークに対して、不活性ガスを吹き付ける絶縁ノズル部材22を有している。絶縁ノズル部材22は、電気絶縁体で構成されており、固定接触子10,15及び可動接触子20,25と同軸に設けられている。
【0022】
絶縁ノズル部材22は、可動主接触子20の径方向内側に結合されており、可動アーク接触子25に対して径方向外側に所定の間隔をあけて配置されている。絶縁ノズル部材22の先端部22aは、固定アーク接触子15に向けて延びており、固定アーク接触子15に向かうに従って先細となるように構成されている。
【0023】
絶縁ノズル部材22の内部には、固定アーク接触子15と可動アーク接触子25との間に生じるアーク放電を通し、且つ不活性ガスを貫流させるためのノズル通路23が形成されている。ノズル通路23には、遮断動作時に、後述するパッファ室からの不活性ガスが流入する。
【0024】
また、ガス絶縁開閉装置1は、可動アーク接触子25から軸方向遮断側に延びており、可動アーク接触子25を操作する操作ロッド27を有している。操作ロッド27は、略円筒状をなしている中空部27aと、中実部27cとを有している。可動アーク接触子25は、中空部27aに結合されている。操作ロッド27は、図示しない操作機構により駆動されて、可動アーク接触子25と共に軸方向に移動する。中実部27cのうち、操作機構側は、電気絶縁体として構成されている。
【0025】
ガス絶縁開閉装置1は、操作ロッド27の径方向外側に設けられており、当該操作ロッド27を軸方向に移動可能に支持する支持部材21を有している。支持部材21は、略円筒状をなしており、操作ロッド27と同軸に設けられている。なお、支持部材21のうち、操作機構側の部分21cは、電気絶縁体で構成されている。一方、支持部材21のうち、可動接触子20,25側の部分(以下、導体部と記す)21aは、導体で構成されている。
【0026】
また、ガス絶縁開閉装置1は、主回路を構成する棒状の導体14,24を有している。主回路が開かれた状態、すなわち
図1に示す開路位置において、導体14は、排気冷却筒12に結合されており、固定接触子10,15と電気的に接続されている。一方、導体24は、開路位置において、支持部材21のうち導体部21aに結合されており、可動接触子20,25と電気的に接続されている。
【0027】
また、ガス絶縁開閉装置1は、遮断動作中において、絶縁ノズル部材22のノズル通路23に不活性ガスの流れを形成するための機構(以下、パッファ機構と記す)28を有している。パッファ機構28は、中空部27aから径方向外側に所定の間隔をあけて設けられており、略筒状をなしているシリンダ28cを含んでいる。シリンダ28cには、可動主接触子20と絶縁ノズル部材22が結合されている。シリンダ28cは、操作ロッド27に結合されており、図示しない操作機構により駆動されて、操作ロッド27、可動主接触子20及び絶縁ノズル部材22と共に軸方向に一体に移動する。
【0028】
また、パッファ機構28は、径方向においてシリンダ28cと中空部27aとの間に設けられており、ノズル通路23に連通する空間を画定するピストン28aを有している。ピストン28aは、軸方向において絶縁ノズル部材22と対向して設けられている。ピストン28a、シリンダ28c、操作ロッド27及び絶縁ノズル部材22は、ノズル通路23に連通する空間(以下、パッファ室と記す)29を画定している。
【0029】
以上に説明した本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、電力系統の電気回路を構成しており、且つ主回路電流が通電可能な導体(以下、通電用導体と記す)として、導体14、排気冷却筒12、固定接触子10,15、可動接触子20,25、支持部材21の導体部21a、操作ロッド27の中空部27a、パッファ機構28のピストン28a及びシリンダ28cがある。なお、このような通電用導体は、主導電部(main conductive part)とも呼称される。
【0030】
本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、六フッ化硫黄等の不活性ガスの絶縁耐力を利用し、高圧の不活性ガスを、固定アーク接触子15と可動アーク接触子25との間に生じるアーク放電に吹き付けて消弧する、いわゆる「ガス遮断器」として構成されている。ガス絶縁開閉装置1は、これら導体を収容すると共に、内部空間33に不活性ガスが充填される容器30すなわちガス絶縁開閉装置用容器を有している。
【0031】
(ガス絶縁開閉装置用容器の構成)
本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の全体構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の構成を示す縦断面図である。
【0032】
本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器(以下、単に「容器」と記す)30は、
図2に示すように、鋳造により製作されており、金属製の本体(以下、容器本体と記す)31を有している。容器本体31のうち開口の縁部には、それぞれ本体フランジ81,82,83,84が形成されている。容器30は、これら本体フランジ81,82,83,84を介して、ガス絶縁開閉装置1を構成する他の容器や機器と結合される。
【0033】
容器本体31は、金属製であり、鋳造により製作されている。すなわち容器本体31は、いわゆる鋳物として構成されている。容器本体31は、例えば、アルミ合金で構成することができる。容器本体31は、主回路電流が通電する導体(いわゆる通電用導体)を囲う金属製の容器、いわゆるメタル・エンクロージャ(metal enclosure)として構成されている。
【0034】
容器本体31の内側には、上述した導体を収容可能な内部空間33が形成されている。なお、以下の説明において、容器30のうち、容器本体31に対して内部空間33が形成される側を、単に「内側」と記し、当該内側とは反対側を、単に「外側」と記す。
【0035】
容器本体31は、所定の圧力の不活性ガス、いわゆる絶縁ガスが内部空間33に充填されて密閉される。絶縁ガスには、電気絶縁性が比較的高い不活性ガス、例えば、六フッ化硫黄(SF
6)が用いられる。内部空間33には、例えば、0.6MPa程度の圧力で絶縁ガスが充填される。
【0036】
また、内部空間33には、容器30の外側から当該内部空間33に侵入した水分や、上述したアーク放電等により内部空間33に生じたガスを吸着させるための吸着材(図示せず)が配置される。このような吸着材には、例えば、ゼオライト(zeolite)が用いられる。
【0037】
また、本実施形態の容器30は、支持脚88の上に配置されて屋外に設置される。以下の説明において、鉛直方向のうち上側を「鉛直上側」と記して図に矢印Uで示し、下側を「鉛直下側」と記して図に矢印Dで示す。
【0038】
また、容器本体31には、上述した本体フランジ81,82,83,84の開口とは別に、容器30の外側から内部空間33にアクセスするための貫通穴(以下、アクセスホールと記す)35が形成されている。
【0039】
本実施形態において、アクセスホール35は、
図1に示すように、容器本体31のうち電気接点10,15,20,25及び絶縁ノズル部材22と径方向に対向する位置に形成されている。アクセスホール35は、略円形をなしている。当該アクセスホール35を通して、上述した電気接点10,15,20,25及び絶縁ノズル部材22を、容器30の外側から定期的に点検することが可能となる。また、内部空間33に配置された吸着材を、当該アクセスホール35を通して定期的に交換することもできる。
【0040】
ガス絶縁開閉装置1を作動させる際、すなわち上述した通電用導体(主導電部)に主回路電流を流す前に、アクセスホール35は、閉じる必要がある。容器本体31のうち、アクセスホール35の開口縁部には、図示しないフランジが形成されており、当該フランジに金属製の内蓋(図示せず)がボルト等を用いて結合されている。アクセスホール35を塞ぐことにより容器30の内部空間33は密閉される。なお、内蓋の周辺構成については、従来技術であるため、説明及び図示を省略する。
【0041】
このようなガス絶縁開閉装置1においては、何らかの異常な事象により地絡事故等が生じて、例えば、可動主接触子20やシリンダ28cと、容器本体31との間にアーク放電が生じることがある。容器本体31内において予測されないアーク放電が生じると、当該アーク放電の発生により不活性ガスが高温となり、膨張して内部空間33の圧力が急激に上昇する場合がある。鋳造により製作された容器本体31は、内部空間33の圧力上昇に耐えられなくなると脆性破壊が生じる。容器本体31が脆性破壊により破裂すると、その破片が容器本体31の外側に飛散する虞がある。
【0042】
本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、
図1及び
図2に示すように、容器本体31の破片が外側に飛散することを防止するために、容器本体31の外側を覆う複数のカバー50,50B,50C,50D,50Eを有している。これらカバー50,50B,50C,50D,50Eは、支持脚88を除き、容器本体31の外面全体を覆っている。
【0043】
カバー50は、容器本体31のうち軸方向の中央(いわゆる胴体部)の外側を囲っている。カバー50B,50Cは、容器本体31のうち、それぞれ本体フランジ81,82近傍の端部(いわゆる水平フランジ近傍部)の外側を囲っている。カバー50D,50Eは、ぞれぞれ、導体14,24が通る本体フランジ83,84近傍の端部(いわゆる口出し部)の外側を囲っている。
【0044】
これらカバー50,50B,50C,50D,50Eは、それぞれ、合成樹脂を含む材料で構成されており、本実施形態においては、化学繊維を強化材とし、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を母材とする複合材料、いわゆる繊維強化プラスチックで構成されている。なお、各図においては、強化材としての化学繊維の表示を省略している。
【0045】
各カバー50〜50Eは、容器本体31の外面31cに沿う形状に予め成形された複数の片(piece)を有している。各カバー50〜50Eは、それぞれ、複数の片の端部同士が結合されて構成されている。
【0046】
以下に、容器本体31の軸方向中央(いわゆる胴体部)を囲うカバー50について、
図3及び
図4を用いて一例を説明する。
図3は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の構成を示す横断面図であり、
図2のIII−III線による断面図である。
図4は、
図3に示す周方向端部周辺の拡大断面図である。なお、容器30が有するその他のカバー50B,50C,50D,50Eについては、カバー50と同様の構造を有しているため、説明を省略する。
【0047】
図3に示す横断面において、カバー50は、容器本体31の外側を囲う略円筒状をなしている。カバー50は、互いに結合される2つの片(以下、半体と記す)51,52から構成されている。各半体51,52の横断面は、容器本体31の外面31cの形状すなわち円環状に合わせて、略円弧状をなしている。
【0048】
本実施形態において、半体51,52は、容器30の径方向のうち鉛直方向(図に矢印U及び矢印Dで示す)と垂直な水平方向(図に矢印H1及び矢印H2で示す)にカバー50が2つに分割された形状をなしている。容器本体31とカバー50との間には、その全周に亘って微小な空隙40が形成されている。なお、
図3には、理解を容易にするために、空隙40すなわち容器本体31とカバー50との径方向の距離を比較的大きく表示している。
【0049】
なお、以下の説明において、当該水平方向のうち、
図3及び
図4に矢印H1で示す一方の半体51側を、以下「第1側」と記す。また、矢印H2で示す、水平方向のうち第1側とは反対側すなわち他方の半体52側を、「第2側」と記す。また、2つの半体51,52のうち、水平方向第1側にある半体51を、「第1半体51」と記し、水平方向第2側にある半体52を、「第2半体52」と記す。
【0050】
第1半体51のうち周方向(
図3に矢印Cで示す)の端部(以下、周方向端部と記す)53,55は、それぞれ径方向外側に突出している。同様に、第2半体52の周方向端部54,56は、それぞれ径方向外側に突出している。第1半体51と第2半体52は、
図3に示すように、周方向端部53,54同士と、周方向端部55,56同士が、それぞれ嵌め合された状態で結合されている。本実施形態において、これら半体51,52の周方向端部53,54,55,56は、軸方向(
図1及び
図2に矢印Aで示す)に沿って直線状に延びている。
【0051】
本実施形態において、周方向端部53,54のうち、水平方向第2側にある第2半体52の周方向端部54は、
図4に示すように、容器30の軸方向に垂直な横断面において、第1側に突出するよう湾曲している部分(以下、凸状部と記す)54aが形成されている。一方、水平方向第1側にある第1半体51の周方向端部53には、当該凸状部54aを受け入れ可能に湾曲している部分(以下、凹状部と記す)53cが形成されている。
【0052】
第1半体51と第2半体52とを突き合わせると、凹状部53cが凸状部54aを受け入れることにより周方向端部53,54同士が嵌め合される。なお、
図3に示すように、周方向端部53,54と同様に、周方向端部55,56にも、凸状部及び凹状部が形成されており、周方向端部55,56同士が嵌め合される。
【0053】
半体の周方向端部同士を嵌め合せる際、凸状部及び凹状部のうち少なくとも一方には、これらを接着するための接着剤が塗布される。このような接着剤には、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするものを用いることができる。接着剤が固化することにより、第1半体51と第2半体52は、互いに結合される。なお、本実施形態において、周方向端部同士の嵌め合いには、すきまばめが用いられているが、中間ばめ、しまりばめ等により嵌め合されるものとしても良い。
【0054】
以上のように構成されたカバー50には、
図3に示すように、容器本体31のアクセスホール35に対向して開口58が形成されている。本実施形態において、開口58は、アクセスホール35に比べて内径が大きい略円形をなしている。アクセスホール35と開口58は、容器30の径方向に対向しており、同軸に配置されている。
【0055】
本実施形態の容器30は、カバー50の開口58を外側から塞ぐ蓋(以下、外蓋と記す)60(
図6参照)を有している。外蓋60は、いわゆる「バヨネット締結」により、カバー50の開口58の縁部に固定されるものであり、以下に
図5〜
図7を用いて説明する。
【0056】
図5は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器のうち本体の外側を覆うカバーに形成された開口と、当該開口を塞ぐ外蓋を、カバーの内側から見た外観図である。
図6は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器のうちカバーの開口を塞ぐ外蓋を、内側から見た部品外観図である。
図7は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器において、カバーに外蓋を固定する方法を説明する説明図であり、(a)は、外蓋の爪状突起を、カバーの外側からスロットに挿入する前の態様を示し、(b)は、爪状突起をスロットに挿入して蓋本体をカバーに当接させた態様を示し、(c)は、外蓋を摩擦力によりカバーと係合させた態様を示している。
【0057】
図5及び
図6に示すように、外蓋60は、略板状をなしている本体(以下、蓋本体と記す)61と、蓋本体61から内側、すなわち径方向をカバー50及び容器本体31側に突出しており、且つ爪状をなしている爪状突起66を有している。
【0058】
本実施形態において、蓋本体61は、略円板状をなしており、カバー50の外面形状に合わせて僅かに湾曲している。蓋本体61は、開口58を覆うように、開口58に比べて外径が大きく構成されている。
【0059】
爪状突起66は、カバー50のうち開口58の縁部と係合可能に構成されており、本実施形態においては、カバー50と同じ種類の材料で構成されている。なお、爪状突起66は、蓋本体61と同じ材料で一体に成形されているものとしても良いし、蓋本体61とは別に製作されて、蓋本体61と結合されているものとしても良い。
【0060】
爪状突起66は、
図6及び
図7に示すように、蓋本体61から内側に突出する部分(以下、内側突出部と記す)67と、当該内側突出部67からカバー50に沿う方向に延びている部分(以下、頭部と記す)68とを有している。本実施形態において、頭部68は、開口58の周方向に円弧状に延びている。
【0061】
カバー50のうち開口58の径方向外側には、当該カバー50を貫通している細長い貫通孔(以下、スロットと記す)59が複数(3つ)形成されている。複数のスロット59は、それぞれ対応する爪状突起66の頭部68が挿通可能に構成されている。
【0062】
本実施形態において、爪状突起66は、
図5及び
図6に示すように、蓋本体61の周方向に所定の間隔をあけて複数配列されている。複数のスロット59は、複数の爪状突起66にそれぞれ対応して設けられており、開口58の径方向外側に所定の間隔をあけて複数配列されている。
【0063】
各スロット59は、カバー50の開口58の径方向外側において、当該開口58の周方向に延びている。同様に、爪状突起66の頭部68は、当該周方向に延びている。頭部68は、
図7(a)に寸法D6で示す「周方向長さ」が、寸法D5で示すスロット59の周方向長さに比べて短くなるよう構成されている。
【0064】
このようなスロット59が形成されたカバー50に外蓋60を固定する方法について
図5〜
図7を用いて説明する。
【0065】
まず、カバー50の開口58の外側において、
図5に示すように、外蓋60の蓋本体61が開口58を覆うように配置する。
図7(a)に矢印Eで示すように、カバー50(本実施形態においては半体52)の外側からスロット59に外蓋60の爪状突起66を挿入し、
図7(b)に示すように、外蓋60の蓋本体61をカバー50に当接させる。これにより、爪状突起66のうち頭部68は、カバー50に比べて内側に突出する。
【0066】
そして、
図6及び
図7(b)に矢印Fで示すように、外蓋60を回転させてカバー50に固定する。外蓋60の蓋本体61と頭部68との間には、カバー50のうちスロット59の縁部59aが挟み込まれる。外蓋60は、蓋本体61とカバー50との間および頭部68とカバー50との間にそれぞれ生じる摩擦力により、カバー50と係合する。このようにして、外蓋60は、カバー50の開口58の縁部に固定される。
(まとめ)
以上に説明したように本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30は、
図2に示すように電力系統の電気回路を構成している通電用導体を内部空間33に収容し、外部から当該内部空間33にアクセスするためのアクセスホール35が形成された金属製の容器本体31を有しており、当該容器本体31は、鋳造により製作された、いわゆる鋳物である。
【0067】
容器30は、さらに、合成樹脂を含む材料で構成されており、前記容器本体31の外側を囲うカバー50,50B,50C,50D,50Eを有している。カバー50,50B,50C,50D,50Eは、容器本体31の外面31cに沿う形状に予め成形された複数の片、例えば、半体51,52を有し、当該複数の片の端部同士、すなわち半体51,52の周方向端部同士が結合されて構成されている。
【0068】
本実施形態によれば、複数の片の端部同士を結合するだけで、容易に容器本体31の外側を当該複数の片により構成されたカバーで囲うことができ、鋳造により製作された容器本体31が運転時に内部空間33の圧力上昇により脆性破壊した場合であっても、当該容器本体31の破片が外部に飛散することを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の容器30において、カバー50は、アクセスホール35と容器30の径方向に対向して開口58が形成されている。容器30は、当該開口58を外側から塞ぐ外蓋60を、さらに有するものとした。
図1に示す電気接点10,15,20,25等の通電用導体の点検等を行う際、外蓋60を矢印F(
図6及び
図7参照)とは逆向きに回転させてカバー50から取り外し、カバー50の開口58を露出させる。そして、当該開口58を通してアクセスホール35を塞ぐ内蓋(図示せず)を取り外す作業を行う。
【0070】
本実施形態によれば、定期的な点検時においてカバー50を容器本体31から取り外すことなく、外蓋60及び内蓋(図示せず)を取り外すだけで、容器30の外側から内部空間33にある通電用導体にアクセスすることできる。
【0071】
なお、本実施形態において外蓋60の蓋本体61は、略円板状をなしているものとしたが、蓋本体の形状は、カバー50の外面の形状に合ったものであれば良く、略矩形の湾曲した板状をなしているものとしても良い。また、外蓋60の爪状突起66は、3つ設けられているものとしたが、当該爪状突起は、複数又は単数設けられていれば良い。
【0072】
また、本発明に係る外蓋は、このような爪状突起66がカバー50と係合して固定される態様に限定されるものではない。開口58を覆う外蓋をカバー50に固定するために、様々な手法を用いることができる。例えば、外蓋に雄ねじを形成し、カバー50の開口縁部に雌ねじを形成して、外蓋をカバーに螺合するものとしても良い。
【0073】
また、本実施形態の容器30において、カバー50〜50Eを構成する材料には、強化材としてのカーボン繊維やガラス繊維等の化学繊維が含まれているものとしても良い。また、カバー50〜50Eを構成する合成樹脂には、熱伝導性が比較的高いものが好ましく、当該合成樹脂の主成分であるポリカーボネートには、熱伝導率を向上させるための様々な成分が配合されているものとしても良い。
【0074】
また、本実施形態において、カバー50は、2つの半体51,52で構成されているものとしたが、本発明に係るカバーは、この態様に限定されるものではない。本発明に係るカバーは、前記容器本体31の外側を囲っており、前記容器本体31の外面に沿う形状に予め成形された複数の片を有し、且つ複数の片の端部同士が互いに結合されていれば良い。
【0075】
また、本実施形態のカバー50は、複数の片すなわち半体51,52の周方向端部同士が、接着剤により接着されて結合されるものとしたが、本発明に係るカバーは、この態様に限定されるものではない。周方向端部同士が嵌め合された状態で加熱して圧着するものとしても良い。また、周方向端部同士が嵌め合される際の塑性変形を利用して、複数の片を互いに結合するものとしても良い。
【0076】
また、本実施形態においては、第1半体51の周方向端部53,55には、凹状部が、第2半体52の周方向端部54,56には、凸状部が形成されており、凹状部に凸状部を挿入することにより、周方向端部同士を嵌め合わすものとしたが、本発明に係る複数の片の端部同士を結合する態様は、これに限定されるものではない。例えば、端部に貫通孔を形成し、ボルトやナットを用いて結合するものとしても良い。
【0077】
また、本実施形態において、カバー50〜50Eを構成する材料には、繊維強化プラスチックが用いられているものとしたが、本発明に係るカバーを構成する材料は、これに限定されるものではない。カバー50は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の合成樹脂を含んで構成されていれば良い。カバーを構成する材料には、熱可塑性樹脂のみで構成することも可能であり、この場合、ポリカーボネート(polycarbonate)が主成分として含む合成樹脂を用いることが好適である。
【0078】
また、本実施形態の容器30は、容器本体31とカバー50との間に全周に亘って微小な空隙40が形成されているものとしたが、本発明に係るガス絶縁開閉装置用容器は、この態様に限定されるものではない。カバー50は、その大部分が容器本体31と密着しているものとしても良い。以下にその一例について説明する。
【0079】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の構成について
図8を用いて説明する。
図8は、第2の実施形態のガス絶縁開閉装置用容器を構成するカバーの断面図である。本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器は、容器本体を囲うカバーの構成が、第1の実施形態と異なっている。なお、第1の実施形態と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
図8に示すように、本実施形態のカバー70は、複数の層から構成されており、本実施形態においては、容器本体31側すなわち内側から、弾性層73、化学繊維層71及び保護層77を有している。
【0081】
化学繊維層71は、化学繊維を含む層であり、例えば、化学繊維の織物、又は化学繊維の不織布として構成することができる。化学繊維層71を構成する化学繊維には、例えば、アラミド繊維を用いることができる。なお、化学繊維層71には、化学繊維以外の材料が含まれていても良い。例えば、化学繊維を強化材として含み、母材(マトリックス)として合成樹脂を含むものとしても良い。
【0082】
カバー70のうち最も内側すなわち容器本体31側には、弾性層73が設けられている。弾性層73は、隣接する化学繊維層71に比べて体積弾性係数(いわゆる弾性率)が小さい材料で構成されている。弾性層73は、カバー70のうち最も内側を構成しており、カバー70が容器本体31に取り付けられると、弾性層73のうち少なくとも一部が変形して容器本体31(
図3参照)に密着する。
【0083】
これにより、金属製の容器本体31が熱により径方向に変形、いわゆる熱膨張・熱収縮した場合であっても、これを吸収することができる。また、
図3に示すカバ−50のように容器本体31との間に僅かな空隙40が形成される場合に比べて、容器本体31からカバー70への熱伝達が良好なものになる。また、本実施形態において、弾性層73は、隣接する化学繊維層71に比べて熱伝導率が高い材料で構成されている。
【0084】
弾性層73を構成する材料には、例えば、ニトリルゴム等の合成ゴムや、フッ素樹脂(フッ素ゴム)等の合成樹脂がある。他に、熱伝導性フィラーを添加した樹脂、樹脂はPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂等も考えられる。フィラーとしてはアルミナなどが挙げられる。
【0085】
また、化学繊維層71の外側には、保護層77が設けられている。保護層77は、カバー70うち最も外側の層であり、化学繊維層71を保護するために設けられている。保護層77は、耐候性に優れた高分子材料で構成されている。保護層77は、化学繊維層71の外側に合成樹脂系の塗料を塗布することにより形成されている。このような塗料、いわゆる耐候性塗料には、例えば、ウレタン樹脂を主成分とする塗料が用いられる。また、耐候性塗料には、アクリル樹脂やフッ素樹脂等の合成樹脂を主成分とする塗料を用いることも可能である。当該保護層77により、化学繊維層71の劣化や汚損を抑制することができる。
【0086】
〔他の実施形態〕
以上に説明した各実施形態において、容器本体31を構成する材料、すなわち鋳物を構成する金属材料は、アルミニウム合金であるものとしたが、本発明に係る容器本体を構成する材料は、この態様に限定されるものではない。容器本体は、鋳造により製作されており、脆性破壊が生じる金属製のものであれば良く、様々な金属材料で構成することができる。
【0087】
また、第1の実施形態のカバー50は、化学繊維を強化材とし、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を母材とする複合材料で構成されており、第2の実施形態のカバー70は、化学繊維を含んで構成された化学繊維層71と、合成樹脂を主成分とする弾性層73及び保護層77を含むものとしたが、本発明に係るカバーを構成する材料は、上述した態様に限定されるものではない。本発明に係るカバーは、合成樹脂を含む材料で構成されていれば良い。例えば、カバーは、化学繊維の内部に合成樹脂を含浸させて固化させたものや、化学繊維の層の外面及び内面の少なくとも一方に合成樹脂の層を形成したもので構成されているものとしても良い。
【0088】
また、上述した各実施形態において、ガス絶縁開閉装置1は、ガス遮断器として構成されているものとしたが、本発明に係るガス絶縁開閉装置は、この態様に限定されるものではない。ガス絶縁開閉装置用容器30の容器本体31は、電力系統の電気回路を構成しており、主回路電流が通電可能な通電用導体を、内部空間33に収容するものであれば良い。例えば、容器30は、通電用導体として、容器30の軸方向に延びる棒状の導体、いわゆる母線を内部空間33に収容しており、ガス絶縁母線を構成するものとしても良い。なお、内部空間33に充填されるガスは、六フッ化硫黄であるものとしたが、当該ガスは、電気絶縁性を有していれば良く、乾燥空気、窒素、二酸化炭素、又はこれらを任意の割合にて混合した混合ガスを用いることもできる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。