特許第6719480号(P6719480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719480
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】車軸計数方法及び車軸計数装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/16 20060101AFI20200629BHJP
   G06M 7/00 20060101ALI20200629BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20200629BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20200629BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20200629BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B61L1/16
   G06M7/00 301Q
   G01D5/353 C
   G01L1/24 A
   G01L5/00 Z
   B61L23/00 Z
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-548392(P2017-548392)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公表番号】特表2018-514432(P2018-514432A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016054480
(87)【国際公開番号】WO2016150670
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】15160078.0
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516217907
【氏名又は名称】タレス マネジメント アンド サービシズ ドイチュランド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Thales Management & Services Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】オルデヴュルテル カッセン
(72)【発明者】
【氏名】クレム ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー マティアス
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530352(JP,A)
【文献】 特開2007−263937(JP,A)
【文献】 特開平04−372461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/16
B61L 23/00
G01D 5/353
G01L 1/24
G01L 5/00
G06M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸を有するホイールを検出するためのレール結合車両の車軸計数方法であって、
・少なくとも1つのセンサーファイバー(SF、SF1、SF2)であって、それぞれがレール(T)に取り付けられた少なくとも2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を備えるセンサーファイバー(SF、SF1、SF2)、又は、少なくとも2つのセンサーファイバー(SF、SF1、SF2)であって、それぞれがレール(T)に取り付けられた少なくとも1つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を備えるセンサーファイバー(SF、SF1、SF2)に、光を導入する工程であって、各ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、ブラッグ波長(λ1、λ2)にあって半値全幅(FWHM)を有する反射ピーク(P1、P2)を有する反射スペクトルを有する、工程と、
・互いに離間した2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)によって反射された前記光を検出することによって、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)それぞれについて、前記レールの2つのせん断応力信号を生成する工程と、
・せん断応力差信号を前記レールの2つのせん断応力信号から生成する工程と、
・前記せん断応力差信号が所定の上限値(G)を超える場合や所定の下限値(G)を下回る場合に、信号処理装置内でホイール検出信号を生成することによって、ホイールを検出する工程と
を含むレール結合車両の車軸計数方法。
【請求項2】
並べて配置され、異なるブラッグ波長(λ1、λ2)を有する2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)をそれぞれ有するセンサーファイバー(SF)を、前記レールの方向において互いに離間した2つのセンサー位置(SS1、SS2)で使用し、
前記せん断応力差信号は、前記センサーファイバー(SF)で反射された光出力の時間的強度プロファイルを、光電子部品(OEC)を用いて、前記光電子部品(OEC)の波長フィルターの2つのフィルターエッジ(K1、K2)でフィルターにかけることによって、信号処理装置(SV)内で前記光電子部品(OEC)によって光学的に生成され、前記フィルターエッジ(K1、K2)は、それぞれ前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)のブラッグ波長(λ1、λ2)のうちの1つの範囲にあり、異なる算術符号を有する勾配を有し、
前記フィルターにかけられた強度プロファイルを差信号として検出し、
信号処理装置内で前記差信号を処理することによって、ホイール検出信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸計数方法。
【請求項3】
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)の反射ピーク(P1、P2)の半値全幅の差が0.5nmよりも小さく、前記グレーティングの反射率(R)の差が20%よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の車軸計数方法。
【請求項4】
前記センサーファイバー(SF)において反射された前記光出力の時間的強度プロファイルから基準信号を検出し、前記基準信号は前記光電子部品(OEC)によってフィルターにかけられず、前記差信号は前記基準信号と比較されることを特徴とする請求項2に記載の車軸計数方法。
【請求項5】
異なるブラッグ波長(λ1、λ2)を有する並べて配置された2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を有するセンサーファイバー(SF)を、前記レールの方向において互いに離間した2つのセンサー位置(SS1、SS2)で使用し、
無負荷状態から負荷状態への移行中における前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)の反射ピーク(P1、P2)のスペクトルの重なりによって、前記せん断応力差信号を光学的に生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸計数方法。
【請求項6】
前記反射ピークは前記負荷状態で重なることを特徴とする請求項5に記載の車軸計数方法。
【請求項7】
1つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)をそれぞれ有する2つのセンサーファイバー(SF1、SF2)を使用し、異なるセンサーファイバー(SF1、SF2)の前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、前記レールの方向において互いに離間したセンサー位置(SS1、SS2)に配置され、
各センサーファイバー(SF1、SF2)に関し、前記センサーファイバー(SF1、SF2)において前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)によって反射された光出力の時間的強度プロファイルについてのフィルターにかけられた信号を、光電子部品(OEC)の波長フィルターの各フィルターエッジ(K1、K2)でフィルターにかけることによって、信号処理装置(SV)内でせん断応力差信号として生成し、
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)の前記せん断応力差信号を、マイクロコントローラ(MC)を用いて電子的に生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸計数方法。
【請求項8】
前記センサーファイバー(SF)において反射された前記光出力の時間的強度プロファイルから基準信号を検出し、前記基準信号は前記光電子部品(OEC)によってフィルターにかけられず、前記せん断応力信号は、フィルターにかけられた信号の基準信号に対する比率から求められることを特徴とする請求項7に記載の車軸計数方法。
【請求項9】
前記基準信号が所定の第3制限値を下回ると、故障であると特定されることを特徴とする請求項に記載の車軸計数方法。
【請求項10】
光源(L)と、
少なくとも1つの計数部(ZP)とを備え、各計数部(ZP)はレール(T)に取り付ける2つのレール接触部(SK1、SK2)を備え、各レール接触部(SK1、SK2)は、
−第1ブラッグ波長(λ1)を有する第1ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1)と、第2ブラッグ波長(λ2)を有する第2ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG2)とを備えたセンサーファイバー(SF)であって、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)はニュートラルファイバー(NF)に対して斜めに前記レール(T)に取り付けられるように設計された、センサーファイバー(SF)と、
−センサーファイバー(SF)の前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)によって反射された前記光出力の光学サブトラクションを実行する光電子部品(OEC)を有する信号処理装置(SV)であって、前記光電子部品(OEC)は、2つのフィルターエッジ(K1、K2)を有する波長依存フィルター(F)を備え、前記フィルターエッジ(K1、K2)はそれぞれ、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)のブラッグ波長(λ1、λ2)のうちの1つの範囲にあって異なる算術符号を有する勾配を有する、信号処理装置(SV)と
を備える請求項2に記載の方法を実行するための車軸計数装置。
【請求項11】
前記フィルターエッジ(K1、K2)の勾配の絶対値は同じであることを特徴とする請求項10に記載の車軸計数装置。
【請求項12】
計数部(ZP)の前記2つのレール接触部(SK1、SK2)の前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、共通のセンサーファイバー(SF)内に配置されることを特徴とする請求項10又は11に記載の車軸計数装置。
【請求項13】
光源(L)と、
少なくとも1つの計数部(ZP)とを備え、各計数部(ZP)はレール(T)に取り付ける2つのレール接触部(SK1、SK2)を備え、各レール接触部(SK1、SK2)は、
・互いに離間した2つのセンサー位置(SS1、SS2)において、並べて配置された2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を備えるセンサーファイバー(SF)であって、
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)はニュートラルファイバー(NF)に対して斜めに前記レール(T)に取り付けられるように設計され、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)のブラッグ波長(λ1、λ2)と、前記2つのセンサー位置(SS1、SS2)間の距離とは、前記レール(T)が前記2つのセンサー位置(SS1、SS2)間において所定の負荷を受けた時に前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)の反射ピーク(P1、P2)が重なるように選択される、センサーファイバー(SF)と、
・前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された前記光を検出し、次いで処理する信号処理装置(SV)とを備える
請求項4に記載の方法を実行するための車軸計数装置。
【請求項14】
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)の反射ピーク(P1、P2)の半値全幅(FWHM)は1〜2桁異なることを特徴とする請求項13に記載の車軸計数装置。
【請求項15】
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)のブラッグ波長(λ1、λ2)の差が5nm以下であり、一方のファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1)の半値全幅(FWHM)が少なくとも0.05nmであり、他方のファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG2)の半値全幅が最大でも5nmであることを特徴とする請求項13又は14に記載の車軸計数装置。
【請求項16】
光源(L)を備え、
各計数部(ZP)はレール(T)に取り付ける2つのレール接触部(SK1、SK2)を備え、各レール接触部(SK1、SK2)は、
−ブラッグ波長(λ1、λ2)を有するファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を備えたセンサーファイバー(SF1、SF2)であって、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)はニュートラルファイバー(NF)に対して斜めに前記レール(T)に取り付けられるように設計された、センサーファイバー(SF1、SF2)と、
−せん断応力信号を生成する信号処理装置(SV)であって、フィルターエッジ(K)を有する光電子部品(OEC)を備える信号処理装置(SV)とを備え、
前記信号処理装置(SV)が発した前記せん断応力信号の差信号を生成するマイクロコントローラ(MC)を備える請求項7に記載の方法を実行するための車軸計数装置。
【請求項17】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、前記ニュートラルファイバー(NF)に対して±30°から±60°、特に±45°の角度で互いに平行に前記レール(T)に取り付けられることを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の車軸計数装置。
【請求項18】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は前記レール(T)の前記ニュートラルファイバー(NF)と交差することを特徴とする請求項10乃至17のいずれか1項に記載の車軸計数装置。
【請求項19】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、前記レール(T)の熱膨張を補償するためのコンバータ構造を備えることを特徴とする請求項10乃至18のいずれか1項に記載の車軸計数装置。
【請求項20】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)は、予め張力が加わった状態で前記レール(T)に固定されることを特徴とする請求項10乃至19のいずれか1項に記載の車軸計数装置。
【請求項21】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG1、FBG2)を前記レール(T)に取り付ける際に予め加える張力を調節するために、トリミング装置を設けることを特徴とする請求項20に記載の車軸計数装置。
【請求項22】
前記信号処理装置は光ファイバー・ビーム・スプリッタ(ST)を備えることを特徴とする請求項10乃至21のいずれか1項に記載の車軸計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸を有するホイールを検出するためのレール結合車両の車軸計数方法に関し、レールに取り付けられた少なくとも1つのファイバー・ブラッグ・グレーティングを備えた少なくとも1つのセンサーファイバーであって、各ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、ブラッグ波長にあって半値全幅を有する反射ピークを有する反射スペクトル(波長に応じた、ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射される光出力の強度プロファイル)を有するセンサーファイバーに光を導入し、互いに離間した2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光を検出することを含む、レール結合車両の車軸計数方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、未公開の特許文献1から公知である。
【0003】
公知の車軸計数システムにおいては、計数部を通り過ぎる車軸が誘導によって検出されることが知られている。上記システムの問題は、電磁場、例えば列車に取り付けられた空調装置が、干渉や数え間違いを引き起こす場合があることである。
【0004】
特許文献2において、線路に取り付けられたセンサーファイバーを使用して車軸を計数する鉄道監視システムが記載されている。光ファイバー(センサーファイバー)に光を導入することで、光がファイバー・ブラッグ・グレーティングに発せられ、ブラッグ波長付近のフィルター帯域幅内の波長が反射される。ブラッグ波長は一般に、neffを有効屈折率、Λをファイバー・ブラッグ・グレーティングの格子周期とすると、λB=neff・2Λ=neff・λで定義される。力が作用することにより、センサーファイバーと、したがってファイバー・ブラッグ・グレーティングとが伸張され、ファイバー・ブラッグ・グレーティングの伸張に応じて異なる波長の光が反射されて評価分析装置に伝送されるように、ファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射と伝送波長が変化する。個々のファイバー・ブラッグ・グレーティングは、互いに2.5m離れたところに取り付けられる。個々のファイバー・ブラッグ・グレーティングは異なるブラッグ波長を有し、ブラッグ波長の差は、負荷に起因する、対応するファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長の変化よりも大きくなければならない。
【0005】
未公開の特許文献1において、レールに作用する機械的変量を、光ファイバーセンサーを用いて測定するレール測定システムが記載されている。この場合に使用されるファイバー・ブラッグ・グレーティングは、ニュートラルファイバーに対して±30°から±60°、特に±45°の角度でレールに取り付けられる。これにより、光ファイバーセンサー装置によって、正又は負の伸張につながり、前記ニュートラルファイバーと平行に延びないせん断ひずみが検出されるという利点がもたらされる。
【0006】
この公知の装置の欠点の1つは、全ての車軸を確実に検出するには感度が不十分であることであり、すなわち、せん断応力の測定から発生する信号が、閾値評価を実行するのに適していないので、列車に必要な安全完全性レベル(SIL4)が確保されないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願第102014100654.4号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/093971(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一方で、干渉の影響、特に電磁干渉に関する影響をあまり受けず、他方で、必要な安全完全性レベルを満たすのに十分な感度を有する車軸計数方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、以下の方法工程を設ける本発明によって達成される。
・せん断応力差信号を生成する。
・前記せん断応力差信号が所定の上限値を超える場合や所定の下限値を下回る場合に、信号処理装置内でホイール信号を生成する。
【0010】
本発明によると、せん断応力差信号、すなわち、互いに離間した2つのセンサー位置における2つのせん断応力の差の時間的変化を推定できる信号が生成される。せん断応力差信号は、その絶対値に関して、せん断応力の算術符号の変化の範囲において非常に大きくなり(すなわち、ホイールによるレールへの力の放出が前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのちょうど間で生じた場合)、そのためホイールを簡単に検出することができる。せん断応力信号、すなわち、あるセンサー位置で起こるせん断応力を推定できる信号は、例えば、前記センサー位置に取り付けられた前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光の検出結果として受信することができ、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記ニュートラルファイバーに対して斜めに、具体的には±45°又は±90°の角度で配置される。せん断応力差信号は、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長の波長の変化の時間的プロファイルの差を検出し確定することによって生成され、波長の変化は、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射光の強度の変化を検出することによって求められる。これは種々の方法で実現でき、種々の変型例を参照して以下に詳細に説明する。全ての変型例の場合において、前記センサーファイバーで反射された光出力の時間的強度プロファイルは、ファイバーに結合された1つ以上のフォトダイオードを用いて検出されるのが好ましい。
【0011】
好ましい変型例
本発明による車軸計数方法(OECコンセプト)の特に有利な変型例は、並べて(in a row)配置され、異なるブラッグ波長を有する2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングをそれぞれ有するセンサーファイバーを、前記レールの方向において互いに離間した2つのセンサー位置で使用し、前記せん断応力差信号は、前記センサーファイバーで反射された光出力の時間的強度プロファイルが光電子部品によって検出され、前記光電子部品の波長フィルターの2つのフィルターエッジでフィルターにかけられることによって、信号処理装置内で前記光電子部品によって光学的に生成され、前記フィルターエッジは、それぞれ前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長のうちの1つの範囲にあり、異なる算術符号を有する勾配を有し、前記フィルターにかけられた強度プロファイルを前記差信号として検出することを特徴とする。前記差信号を前記信号処理装置内で処理することによって、(デジタル)ホイール信号が生成される。
【0012】
OECコンセプトの場合、反射光出力の測定及び信号の変換に、光電子部品(OEチップ)が使用される。センサー位置への負荷とそれに伴うせん断応力によって、ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長はシフトする。種々のファイバー・ブラッグ・グレーティングから発生する反射光出力の一部は、様々なフィルターエッジでフィルターにかけられる。ブラッグ波長の変化は、せん断応力の発生の基準となる。せん断応力信号の光学的差は、いずれの場合においても光電子部品の1つのフィルターエッジに沿った、種々のファイバー・ブラッグ・グレーティングから生じた前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射光出力(2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光の全スペクトル)の一部がシフトすることで確立され、前記フィルターエッジは異なる算術符号の勾配を有する。このように、前記2つのセンサー素子の反射光出力の一部は様々な程度にフィルターにかけられる。前記ブラッグ波長と前記フィルターエッジを、想定される負荷時に、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークがいずれの場合においても他のフィルターエッジ内にシフトしないように、互いに適合させるのが好ましい。このように、前記2つのセンサー位置におけるせん断応力の差が非常に大きくなる時、最小値と最大値(算術符号は、前記ニュートラルファイバーに対する前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの配列方法によって決まる前記ニュートラルファイバーに対する前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの角度方向(±45°)によって決まる)が反射光出力のプロファイルに出現する。これは比較器によってデジタル化することができる。
【0013】
変化が小さい場合に全出力を一定にするために、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのスペクトルの半値全幅(FWHM)とその反射率(R)は近似しているのが有利である。したがって、特に有利な変型例において、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークの半値全幅の差は0.5nmよりも小さく、前記グレーティングの反射率の差は20%よりも小さい。これとは別に、フィルターエッジにおける動作点(好ましくは中央位置)からのずれは小さくすべきであり、一般的には1nmよりも小さくすべきである。さもなければ、最小出力の前後にアンダーシュートやオーバーシュートが発生することがあり、その結果、ごくわずかに検出可能な負荷が、制限される。例えば、以下の値を有するファイバー・ブラッグ・グレーティングを使用して、レール上の列車の車軸を検出ことができる:λ1=1541.9nm、R1=45%、FWHM1=550pm;λ2=1550.1nm、R=55%、FWHM=650pm。
【0014】
前記センサーファイバーにおいて反射された光出力の時間的強度プロファイルから基準信号を検出し、前記基準信号は前記光電子部品によってフィルターにかけられず、前記差信号は前記基準信号と比較されるのが好ましい。
【0015】
本発明による方法の他の変型例(RRコンセプト)において、異なるブラッグ波長を有する並べて(in a row)配置された2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングを有するセンサーファイバーを、前記レールの方向において互いに離間した2つのセンサー位置で使用し、無負荷状態から負荷状態への移行中における前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークのスペクトルの重なりによって、前記せん断応力差信号が光学的に生成される。前記差信号を前記信号処理装置内で処理することによって、(デジタル)ホイール信号が生成される。
【0016】
前記ブラッグ波長のシフトは、いずれの場合もセンサー位置で発生するせん断応力の基準となる。前記反射ピークの重なりの程度は、せん断応力差の基準となる。
【0017】
前記反射ピークの重なりは、負荷状態で起こるのが好ましい。この変型例において、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長は、負荷状態において、1つのレール接触部の前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークが重なるように選択される。前記反射ピークが多く重なるほど、反射される光は少なくなる。そのため、前記レールの負荷は最小強度として検出される。したがって、この変型例において、前記レールに負荷がかかると、前記反射ピークが重なった結果、せん断応力差信号が生成される。この目的のために、本発明によると、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長の間隔は、想定される質量を有する負荷の場合、前記反射ピークの認知できる重なり、好ましくは完全な重なりが起こるように選択される。しかしながら、無負荷状態において前記反射ピークが重なり、負荷がかかっている間は互いにシフトして離れるように、前記間隔と半値全幅を選択することも可能である。この場合、負荷がかかっている間は最大強度が測定される。
【0018】
このRRコンセプトは、アダプタボードにおける信号処理の複雑度が低いことを特徴とする。
【0019】
本発明による車軸計数方法の第3の変型例(OE2コンセプト)において、1つのファイバー・ブラッグ・グレーティングをそれぞれ有する2つのセンサーファイバーを使用し、異なるセンサーファイバーの前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記レールの方向において互いに離間したセンサー位置に配置される。本発明によると、各センサーファイバーに関し、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光出力の時間的強度プロファイルのフィルターにかけられた信号は、光電子部品の波長フィルターの各フィルターエッジでフィルターにかけることによって信号処理装置内で生成され、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのせん断応力差信号は、マイクロコントローラを用いて電子的に生成される。前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射され、フィルターにかけられていない光、もっと正確に言えば、前記光から信号を処理することによって得られる電子信号は、前記基準信号(光学的にフィルターにかけられていない光出力信号)の働きをする。
【0020】
したがって、この変型例において、前記せん断応力差信号はレール接触部内で求められるのではなく、前記マイクロコントローラにおいて、前記2つのレール接触部の前記光電子部品によって処理される信号から求められる。それゆえ、電気信号の差が実現される。
【0021】
前記センサーファイバーにおいて反射された光出力の時間的強度プロファイルから基準信号を検出し、前記基準信号は前記光電子部品によってフィルターにかけられず、前記せん断応力信号は、フィルターにかけられた信号の基準信号に対する比率から求められることは特に有利である。照射された光出力からの独立はこのように達成される。
【0022】
故障を検出するために、前記基準信号が第3制限値(第3制限値=上限値)を超えているかどうか、又は第3制限値(第3制限値=下限値)を下回っているかどうかを確認することができる。後者の変型例、すなわち、前記基準信号が所定の第3制限値を下回ると故障が検出されるのが好ましい。したがって、前記車軸計数方法は、「スタンバイ光原理」(スタンバイ電流原理に類似する)に従って実行するのが好ましい。これは、スタンバイ動作において、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された信号が連続して検出されることを意味する。前記光源が故障した場合や、ケーブル(例えば、レール接点と信号処理盤の間の)が切断された場合、前記基準信号は前記所定の制限値を下回り、その結果、簡単な前記光電子部品の故障検出が実現される。このように、診断装置(前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの自己検査機能)を付加することなく、前記信号処理システムの光学部分やガラスファイバー供給ラインや前記センサー自身における想定される故障(前記光源の故障、ケーブルの切断、ソケット位置の汚れ)の検出が可能となる。例えば、前記光源を短時間オフにして検査を実行することができる。また、前記光源の光の強度を調整することも可能である。検出された光が同じように調整されていれば、検査は成功と見なされる。この場合、前記光源をオフにする必要はない。
【0023】
本発明はまた、本発明による方法の種々の変型例を実行する車軸計数装置に関する。
【0024】
本発明による第1の車軸計数装置(OEC車軸計数器)は、光源と、少なくとも1つの計数部とを備え、各計数部はレールに取り付ける2つのレール接触部を備える。本発明によると、各レール接触部は、第1ブラッグ波長を有する第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングと、第2ブラッグ波長を有する第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングとを備えるセンサーファイバーを備え、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記ニュートラルファイバーに対して斜めに前記レールに取り付けられるように設計される。さらに、前記レール接触部は、センサーファイバーの前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光出力の光学サブトラクションを実行する光電子部品を備え、前記光電子部品は、2つのフィルターエッジを有する波長依存フィルターを備え、前記フィルターエッジはそれぞれ、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長のうちの1つの範囲にあって異なる算術符号を有する勾配を有する。
【0025】
前記フィルターエッジの勾配の絶対値は同じであるのが好ましい。この場合、前記勾配は、前記ブラッグ波長がシフトする範囲において絶対値が同じであれば十分である。
【0026】
材料を節約するため、1つの計数部の前記2つのレール接触部のファイバー・ブラッグ・グレーティングは、共通のセンサーファイバー内に配置され得る。周波数分離フィルターを用いて個々の前記レール接触部に信号を割り当てることができる。この実施形態を特に材料を節約するように発展させた実施形態において、計数部の前記レール接触部は共通のファイバー・ブラッグ・グレーティングを有する。
【0027】
本発明による第2の車軸計数装置(RR車軸計数器)は、光源と、少なくとも1つの計数部とを備え、各計数部は、レールに取り付ける2つのレール接触部を備え、各レール接触部は、互いに離間した2つのセンサー位置において並べて(in a row)配置される2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングを備えるセンサーファイバーを備え、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記ニュートラルファイバーに対して斜めに前記レールに取り付けられるように設計され、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長と、前記2つのセンサー位置間の距離とは、前記レールが前記2つのセンサー位置間において所定の負荷を受けた時に前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射スペクトルが重なるように選択される。さらに、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光を検出し、次いで処理する信号処理装置が設けられる。
【0028】
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長と、前記2つのセンサー位置間の距離(すなわち、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの同一部分間の距離)は、前記センサー位置に所定の負荷がかかっている間、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの2つの反射スペクトルが完全に重なるように選択されるのが好ましい。
【0029】
良好な飽和効果を達成するために、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの1つは、大きい半値全幅を有する反射ピークを有するべきであり、一方、他方のファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークの半値全幅は小さくなければならない。したがって、前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングの反射ピークの半値全幅は、1〜2桁異なるのが好ましい。この結果、重い列車の場合に、前記反射ピークの完全な超過が防止される。そうでなければ、反射光出力の強度プロファイルにおいて車軸当たり2つのピークが生じることになる。
【0030】
前記2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長の差が5nm以下であり、一方のファイバー・ブラッグ・グレーティングの半値全幅が少なくとも0.05nmであり、他方のFBGの半値全幅が最大でも5nmであれば特に有利である。無負荷状態において前記2つのFBGの反射ピークが少し重なり、前記第1ファイバー・ブラッグ・グレーティング(前記信号処理装置に面するファイバー・ブラッグ・グレーティング)のブラッグ波長は、前記第2ファイバー・ブラッグ・グレーティング(前記信号処理装置からそれた向きにあるファイバー・ブラッグ・グレーティング)のブラッグ波長よりも大きいのが好ましい。
【0031】
本発明による第3の車軸計数装置(OE2車軸計数器)は、光源と、レールに取り付ける2つのレール接触部をそれぞれが備える少なくとも1つの計数部と、を備える。本発明によると、各レール接触部は、ブラッグ波長を有するファイバー・ブラッグ・グレーティングを備えるセンサーファイバーを備え、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記ニュートラルファイバーに対して斜めに前記レールに取り付けられるように設計される。さらに、各レール接触部は、せん断応力信号を生成する信号処理装置を備え、前記評価部は、フィルターエッジ(光学フィルター)を有する光電子部品を備える。前記車軸計数装置は、前記信号処理装置が発するせん断応力信号の差信号を生成するマイクロコントローラを有する。
【0032】
前記マイクロコントローラはプログラム可能な部品であり、前記2つのレール接触部の光電子部品によって処理された信号から前記せん断応力信号の差を求める。
【0033】
本発明による全ての車軸計数器に関して、広帯域光源、例えばスーパールミネッセントダイオードを前記光源として使用するのが好ましい。
【0034】
提案された本発明による全ての車軸計数装置の場合、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティング(すなわち、光伝搬方向における前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングの延長部分)が、前記ニュートラルファイバーに対して±30°〜±60°、特に±45°の角度で互いに平行に前記レールに取り付けられるのが最も有利である。前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングを斜めに配置することで、ホイールが前記レールに沿って回転する時に前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングによって反射された光を検出することによって、前記レールのせん断応力は測定される。したがってこの方法は、ホイールやホイールリムのサイズから独立している。
【0035】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは前記レールの前記ニュートラルファイバーと交差しているのが好ましい。
【0036】
本発明による前記車軸計数装置の有利な実施形態の場合、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記レールの熱膨張を補償するコンバータ構造を備えている。前記レールの温度変化から生じる波長の変化の絶対値は、前記コンバータ構造によって制限される。同時に、前記コンバータ構造は、低い車軸負荷も検出できるようにするために、せん断応力の比較的低いひずみレベルを高める役割をする。
【0037】
前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、予め張力が加わった状態(プレテンションされた状態)で前記レールに固定されるのが特に有利である。張力がなくなると前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長は変化するので、このようにして、ファイバー・ブラッグ・グレーティングが前記レールから外れているかどうかを簡単な方法で確認することができる。あるファイバー・ブラッグ・グレーティングが外れた場合、張力がなくなり、このファイバー・ブラッグ・グレーティングのブラッグ波長はそれに応じて変化するので、ファイバー・ブラッグ・グレーティングを予め張力が加わった状態で固定することで、このファイバー・ブラッグ・グレーティングが前記レールから外れているかどうかを検出することができる。その結果、永久的なホイール信号が発せられる。張力を予め加えることは、前記ファイバー・ブラッグ・グレーティングを前記レールに取り付ける前に機械的に実現してもよいし、又は、ブラケットを用いて、このブラケットを予め張力が加わった状態で前記レールに固定する間に熱的に実現してもよい。
【0038】
前記FBGを前記レールに取り付ける際に予め加える張力を調節するために、トリミング装置を設けるのが特に有利である。
【0039】
前記信号処理装置は光ファイバー・ビーム・スプリッタを備えるのが好ましい。前記ビームスプリッタは、エッジフィルターにかけられた信号に加えて、第2フォトダイオードを用いて基準信号を拾い取る目的を果たす。
【0040】
本発明のさらなる利点は、本明細書と図面から明らかになるであろう。本発明によると、上記の特徴と、以下にさらに詳細に説明する特徴はそれぞれ、個々に、又は任意の組み合わせで集合的に使用することもできる。図示及び説明する実施形態は、全てを網羅したものであると考えるべきではなく、一例として本発明を説明する性質のものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】EOCコンセプトによる、本発明による車軸計数装置のレール接触部の概略構造を示す。
図2図1におけるレール接触部が受信した光信号の処理についてのブロック配線図である(EOCコンセプト)。
図3】フィルターエッジに対する反射ピークのプロファイルを示す(EOCコンセプト)。
図4】OECコンセプトによる、フォトダイオードによって検出された差信号の光電流、及び、個々のファイバー・ブラッグ・グレーティングに割り当てられた検出された光電流の一部の時間的プロファイルを示す。
図5】RRコンセプトによる、本発明による車軸計数装置のレール接触部の概略構造を示す。
図6図5におけるレール接触部の1つが受信した光信号の処理についてのブロック配線図である(RRコンセプト)。
図7a】無負荷状態及び負荷状態における反射ピークの配置を示す。
図7b】無負荷状態及び負荷状態における反射ピークの配置を示す。
図8】RRコンセプトによる差信号の時間的プロファイルを示す。
図9】EO2コンセプトによる、本発明による車軸計数装置の2つのレール接触部の概略構造を示す。
図10図9による2つのレール接触部が受信した信号の処理についてのブロック配線図である(OE2コンセプト)。
図11】レールの無負荷状態における、フィルターエッジに対する反射ピークの配置を示す。
図12】(a)は、OE2コンセプトによる2つのレール接触部のせん断応力信号の時間的プロファイルを示す。(b)は、OE2コンセプトによる差信号の時間的プロファイルを示す。
図13a】別個のセンサーファイバーを備えた、OECコンセプト及びRRコンセプトによる、レールに固定された2つのレール接触部のファイバー・ブラッグ・グレーティングを示す。
図13b】共通のセンサーファイバーを備えた、OECコンセプト及びRRコンセプトによる、レールに固定された2つのレール接触部のファイバー・ブラッグ・グレーティングを示す。
図13c】OE2コンセプトによる、レールに固定された2つのレール接触部のファイバー・ブラッグ・グレーティングを示す。
図14図13a〜図13cによる、レールに固定されたファイバー・ブラッグ・グレーティングを備えたレールの断面である。
図15】本発明による車軸計数装置の全体構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、EOCコンセプトによる、本発明による車軸計数装置のレール接触部SK1の構造を示す。レール接触部SK1は2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2を有するセンサーファイバーSFを備え、ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は互いに離間しており、ブラケットTに予め組み付けて、レールSに任意の向きに簡単に取り付けられるようにするのが好ましい(図13a、図13b参照)。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、異なるブラッグ波長λ1、λ2を有し、そのため対応するブラッグ波長λ1、λ2の光を反射する。光源Lによって、光がセンサーファイバーSFに導入される。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2によって反射された光は、ファイバー結合器FKによって光電子部品OECに伝送され、この光電子部品内で反射光は処理される。この場合、光電子部品OECと光源Lは、信号処理装置SVの一部である。
【0043】
図2は、信号処理装置SVにおける反射光のその後の処理方法を示す。反射光はセンサーファイバーSFから光電子部品OECに伝送され、そこにおいてビームスプリッタSTによって光が分岐される。第1チャネルにおいて、反射光は波長フィルターFによってフィルターにかけられ、第1フォトダイオードPD1によって電気差信号Sとして検出される。第2チャネルにおいて、反射光はそのまま第2フォトダイオードPD2に伝送され、そこで基準信号Sとして検出される。ここで、基準信号Sは全反射光出力に比例する。本発明によると、波長フィルターFは2つのフィルターエッジK1、K2を有し、この2つのフィルターエッジK1、K2は、異なる算術符号を有する勾配を有する。算術符号が異なるため、2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2のブラッグ波長λ1、λ2のシフト、例えば大きい波長へのシフトは、評価が異なる。これはすなわち、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1の場合は検出された光出力が増加し、他方のファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2の場合は検出された光出力が減少するためである。
【0044】
トランスインピーダンス増幅器V1、V2は、差信号S及び基準信号Sをストレス信号に変換する。該ストレス信号はそれから続けて処理することができる(例えば、低域フィルタリングによって)。測定した実際の変数を求めるために、差信号Sと基準信号Sの比率が与えられる。このように経路の中立性が実現され、減衰効果から独立した測定が可能となる。このように、生成された信号は軸重に比例し、別個に解析することができる。比較器を使用して、アナログ信号をデジタルホイール信号(ホイールパルスRI1)に変換することができる。
【0045】
図3はファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FG2の反射ピークP1、P2に対する、フィルターエッジK1、K2の想定されるプロファイルを示す。示した図において、2つのフィルターエッジK1、K2は同じ絶対値の勾配を有するが、異なる方向に傾いている(算術符号が異なる)。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2の反射ピークP1、P2は、フィルターエッジK1、K2と対称を成すように選択される。フィルターエッジK1、K2が反射ピークP1、P2を通って延びることで、反射ピークの大きい波長や小さい波長へのシフトが光度の変化につながり、第1反射ピークP1の大きい波長へのシフトが光度の増加を引き起こし、一方、第2反射ピークP2の大きい波長へのシフトが光度の減少を引き起こす。
【0046】
図4は、差信号Sのプロファイル(実線曲線)と、いずれの場合も差信号からのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2によって反射された光の一部のプロファイル(FBG1:鎖線曲線、FBG2:点線曲線)の図である。図示された例において、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、接近する負荷によって圧縮され、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1のブラッグ波長λ1は大きい波長へ、すなわち、立ち上がるフィルターエッジK1に沿ってシフトする。光出力の強度の増加は、この結果生じる。負荷が第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1を越えて第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2に向かって移動すると、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1は伸張し、そのため第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1のブラッグ波長λ1は小さい波長へと(下がるフィルターエッジK1に沿って)シフトし、その一方、第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2は圧縮され、そのため第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2のブラッグ波長λ2は大きい波長へと(下がるフィルターエッジK2に沿って)シフトする。これにより、図4に示すプロファイルの差信号Sが生じる。差信号Sが所定の制限値Gを下回ると、ホイールパルスRI1が検出される。
【0047】
図5は、RRコンセプトによる車軸計数装置のレール接触部SK1の構造を示す。レール接触部SK1は、2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2を有するセンサーファイバーSFを備え、ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は互いに離間しており、ブラケットTに予め組み付けて、レールSに任意の向きに簡単に取り付けられるようにするのが好ましい(図13a、図13b参照)。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は異なるブラッグ波長λ1、λ2を有し、そのため、対応するブラッグ波長λ1、λ2の光を反射する。光源Lによって、光がセンサーファイバーSFに導入される。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2によって反射された光は、信号処理装置SVに伝送され、そこで反射光は処理される。この場合、光源Lは信号処理装置SVの一部である。
【0048】
図6は、信号処理装置SVにおける反射光のその後の処理方法を示す。反射光はフォトダイオードPDによって電気差信号Sとして検出される。2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2のブラッグ波長λ1、λ2のシフト。トランスインピーダンス増幅器Vによって、差信号Sはストレス信号に変換される。該ストレス信号はそれから続けて処理することができる(例えば、低域フィルタリングによって)。アナログ信号はその後、比較器を使用してデジタルホイール信号(ホイールパルスRI1)に変換することができる。
【0049】
図7a、図7bは、無負荷状態(図7a)及び負荷状態(図7b)における2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2の反射ピークP1、P2の特に有利な例を示す。反射ピークP1、P2は異なる半値全幅FWHMを有する。無負荷状態において、反射ピークP1、P2は図示された例でわずかに重なっており、これによって、反射ピークP1、P2が重なることで反射光の帯域幅は減少するので、反射ピークの大きい波長や小さい波長へ反射ピークがシフトすると光度が変化し、反射ピークP1、P2が互いから離れてシフトすると光度が増加し、一方、反射ピークP1、P2が互いに向かってシフトすると光度が減少するようになっている。第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2によって反射される光の一部はすでに第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1によって反射されているため、第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2には届かず、その結果、第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2によって反射され得ないため、差信号Sは反射ピークP1、P2の重なりによって生成される。
【0050】
図8は差信号Sのプロファイルの図である。図示された例において、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングは、接近する負荷のために圧縮され、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1の第1反射ピークP1は大きい波長へ、すなわち、第2反射ピークP2に向かってシフトする。この結果、反射ピークP1、P2の重なりが増え、光出力の強度の減少につながる。負荷が第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1を越えて第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2に向かって移動すると、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1は伸張し、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1のブラッグ波長λ1と、したがって、第1反射ピークP1とは、小さい波長へシフトし、一方、第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2は圧縮され、そのため第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2の第2反射ピークP2は大きい波長へシフトする。したがって、反射ピークP1、P2は互いに離れる。この結果、反射ピークP1、P2の重なりが減少し、光出力の強度の急速な増加につながる。この結果、図8に示す差信号Sのプロファイルが生じる。差信号Sが所定の制限値Gを超えた場合、ホイールパルスRI1が検出される。
【0051】
図9は、EO2コンセプトによる、本発明による車軸計数装置の2つのレール接触部SK1、SK2の構造を示す。レール接触部SK1、SK2はそれぞれ、1つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2を有する1つのセンサーファイバーSFを備える。2つのレール接触部SK1、SK2のファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、ブラッグ波長λ1、λ2を有し、したがって、対応するブラッグ波長λ1、λ2の光を反射する。この変型例では、ブラッグ波長λ1、λ2を同一にできる。いずれの場合も、光源Lによって光がセンサーファイバーSFに導入される。しかしながら、原則的には、2つのセンサーファイバーSFに光を供給する光源をただ1つ設けることができる。ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2によって反射された光は、ファイバー結合器FKによって各レール接触部SK1、SK2内の光電子部品OECに伝送され、この光電子部品で反射光は処理される。この場合、光電子部品OECと光源Lは、信号処理装置SVの一部である。光電子部品OECは検出信号を電流に変換し、該電流を処理し、その後マイクロコントローラMCに伝導し、そこで差信号が生成される。マイクロコントローラMC内において、閾値を設定することで差信号からデジタル信号を生成し、このデジタル信号をホイールパルスとして発する。
【0052】
図10は、信号処理装置SVにおける反射光のその後の処理方法を示す。2つのセンサーファイバーSFで反射された光は、センサーファイバーSFから光電子部品OECに伝送され、ここでビームスプリッタSTによって光が分岐される。いずれの場合も、反射光は、第1チャネル内において、フィルターエッジKを有する波長フィルターFによってフィルターにかけられ、第1フォトダイオードPD1によってせん断応力信号S、Sとして検出される。いずれの場合も、反射光はそのまま第2チャネル内の第2フォトダイオードPD2に伝送され、そこで基準信号SR1、SR2として検出される。ここで、基準信号SR1、SR2は対応するセンサーファイバーSF1、SF2で反射される全光出力に比例する。トランスインピーダンス増幅器V1、V2は、せん断応力信号S、Sと基準信号SR1、SR2とをストレス信号に変換する。該ストレス信号は、それから続けて処理することができる(例えば、低域フィルタリングによって)。続けて処理される実際の信号を求めるために、差信号Sと基準信号Sとの比率が与えられる。これらの比率信号は次に、マイクロコントローラMCに送信され、マイクロコントローラMCは電気信号を引き算することで差信号を生成する。
【0053】
図11は、第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1の第1反射ピークP1に対する、第1フィルターエッジKの想定されるプロファイルを示す。フィルターエッジKは反射ピークP1を通って延び、これによって、反射ピークの大きい波長や小さい波長へ反射ピークがシフトすると光度が変化し、第1反射ピークP1が大きい波長へとシフトすると光度が減少し、一方、第1反射ピークP1が小さい波長へとシフトすると光度が増加するようになっている。第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2の第2反射ピークP2に対する第2フィルターエッジKのプロファイルは、同様であるのが好ましい。
【0054】
図12において、(a)は、OE2コンセプトによる2つのレール接触部のせん断応力信号の時間的プロファイルを示す。
【0055】
2つのせん断応力プロファイルに差異が生じる場合、図12の(b)に示すように、2つのセンサー間で、ホイールによるレールへの負荷伝達が正確に行われる時、この差異は最大になる。
【0056】
図13a、図13bは、OECコンセプト及びRRコンセプトによる2つのレール接触部SK1、SK2の、レールSに固定されたファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2を示す。第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1と第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2とはそれぞれ、レールの方向に互いに離間した2つのセンサー位置SS1、SS3においてブラケットTに共に配置され、ブラケットは予め張力が加わった状態でレールSに取り付けられる。図13aにおいて、各レール接触部SK1、SK2に別個のセンサーファイバーSFが設けられ、このセンサーファイバーに第1ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1と第2ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG2とが書き込まれる。この2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は互いに離間している。図13bは他の実施形態を示し、ここで、2つのレール接触部SK1、SK2のファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、1つのセンサーファイバーSFの一部である。周波数分離フィルターFWによって、信号は、対応するレール接触部SK1、SK2の信号処理装置SVに送信される。しかしながら、この目的のため、4つのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、異なるブラッグ波長を有さざるを得ない。
【0057】
図13cは、OE2コンセプトによる、レールに固定された2つのレール接触部のファイバー・ブラッグ・グレーティングを示す。各ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、いずれの場合も、ブラケットTに予め組み付けられており、それ自身のセンサーファイバーSF1、SF2に書き込まれる。
【0058】
図13a及び図13cにおいて、ファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2は、ニュートラルファイバーNFに対して45°の角度でレールに固定されている。一方、図13bは、ファイバー・ブラッグ・グレーティングFG1、FBG2がニュートラルファイバーNFに対して−45°の角度でレールに固定される実施形態を示す。ここに説明した3つのコンセプト全てに関し、この2つの取り付けの選択が可能である。一方の図13a、図13cと、他方の図13bのファイバー・ブラッグ・グレーティングFBG1、FBG2の向きの違いにより、算術符号が異なるせん断応力信号と差信号が発せられるという効果がある。ホイール信号が最低値として発せられるように向きを選択するのが好ましい。2つのファイバー・ブラッグ・グレーティングは、互いに約150mmの間隔をあけて配置するのが好ましい。2つのセンサー素子が互いに十分接近した位置にあれば(150mmよりも近いのが好ましい)、ファイバー・ブラッグ・グレーティングの温度挙動の変化が起こらないように両者とも同じ温度下にある。レールヘッドに力が横方向にかかることによるレールのねじれも、このように補償することができる。
【0059】
図14はレールSの断面であって、図13a〜図13cによる、ブラケットTによってレールSに取り付けられたファイバー・ブラッグ・グレーティングを有する。
【0060】
図15は、本発明による車軸計数装置の全体構造を示す。図示された車軸計数装置は、それぞれ2つのレール接触部SK1、SK2を有する2つの計数部ZPを備え、各レール接触部SK1、SK2は、各計数部内の計数装置に送信されるホイールパルスRI1、RI2を生成する。移動方向は、ホイールパルスRI1、RI2を使用して各計数部内で特定することができる。検出された情報(ホイールパルスRI1、RI2、移動方向)は評価部ACEに送信される。
【符号の説明】
【0061】
ACE 評価部
F 波長フィルター
FBG1、FBG2 ファイバー・ブラッグ・グレーティング
FK ファイバー結合器
FW 周波数分離フィルター
FWHM 半値全幅
G 制限値
K、K1、K2 フィルターエッジ
L 光源
MC マイクロコントローラ
NF ニュートラルファイバー
OEC 光電子部品
P1、P2 反射ピーク
PD、PD1、PD2 フォトダイオード
RI1、RI2 ホイールパルス
SK1、SK2 レール接触部
S レール
SF センサーファイバー
SS1、SS2 センサー位置
ST ビームスプリッタ
SV 信号処理装置
差信号
、SR1、SR2 基準信号
、S せん断応力信号
T ブラケット
V、V1、V2 トランスインピーダンス増幅器
ZP 計数部
λ1、λ2 ブラッグ波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図14
図15