(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719581
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】グラフェン薄膜トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20200629BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20200629BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20200629BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20200629BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20200629BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
H01L29/78 618A
H01L29/78 616V
H01L29/78 618B
H01L29/28 250E
H01L29/28 100A
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/50 M
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-547909(P2018-547909)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公表番号】特表2019-512881(P2019-512881A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】CN2016078391
(87)【国際公開番号】WO2017156803
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】201610156131.8
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517264292
【氏名又は名称】武漢華星光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN CHINA STAR OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 選芸
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1372286(KR,B1)
【文献】
特表2013−535407(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/060419(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103227203(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0108806(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105047562(CN,A)
【文献】
特開2007−096126(JP,A)
【文献】
特表2014−525134(JP,A)
【文献】
特表2017−524636(JP,A)
【文献】
特開2015−176725(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104030274(CN,A)
【文献】
特開2014−046632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
C01B 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン薄膜トランジスタの製造方法であって、
S1:メタンを炭素源として、化学気相堆積法により銅箔の表面にグラフェン層を堆積し、
S2:前記グラフェン層の表面に、前記グラフェン層の表面に近い層がチタン層になるように複合層からなる金属層を堆積し、前記金属層に採用される金属は、チタン以外に、ニッケル又はプラチナを含み、
S3:前記金属層の表面に支持層を貼り合わせることにより、グラフェン膜シートを形成し、
S4:前記グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置き、前記銅箔が全部溶解されるまで前記支持層は一部が銅腐食液に浸る一方、前記金属層、グラフェン層及び銅箔は全部が銅腐食液に浸っており、そして銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動し、前記支持層を取り除き、
S5:前記金属層の表面にソース・ドレインのパターンを定義してソース・ドレイン電極を作成し、目標基板におけるグラフェン層から離れている側にゲート電極を作成することにより、グラフェン薄膜トランジスタを取得することを含むグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
S1の前に、前記銅箔を順にエタノール、プロトン、0.5mol/Lの希塩酸で洗浄することを更に含む請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記金属層が電子ビーム蒸発又はマグネトロンスパッタ技術によりグラフェンの表面に堆積される請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記金属層の厚さは5nm〜50nmである請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記複合層からなる金属層の各種の金属層の厚さが同じである請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記支持層の密度が前記銅腐食液の密度よりも小さい請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記支持層がポリウレタン材料である請求項6に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記目標基板は絶縁層を含み、絶縁層の材料は、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ガラスまたはサファイアを含む請求項1に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
グラフェン薄膜トランジスタの製造方法であって、
S1:銅箔の表面にグラフェン層を堆積し、
S2:前記グラフェン層の表面に、前記グラフェン層の表面に近い層がチタン層になるように複合層からなる金属層を堆積し、前記金属層に採用される金属は、チタン以外に、ニッケル又はプラチナを含み、
S3:前記金属層の表面に支持層を貼り合わせることにより、グラフェン膜シートが形成され、
S4:前記グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置き、前記銅箔が全部溶解されるまで前記支持層は一部が銅腐食液に浸る一方、前記金属層、グラフェン層及び銅箔は全部が銅腐食液に浸っており、そして前記銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動し、前記支持層を取り除き、
S5:前記金属層の表面にソース・ドレインのパターンを定義してソース・ドレイン電極を作成し、目標基板におけるグラフェン層から離れている側にゲート電極を作成することにより、グラフェン薄膜トランジスタを取得することを含むグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
S1の前に、前記銅箔を順にエタノール、プロトン、0.5mol/Lの希塩酸で洗浄することを更に含む請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
グラフェンは、化学気相堆積法により前記銅箔の表面に堆積される請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記金属層が電子ビーム蒸発又はマグネトロンスパッタ技術によりグラフェンの表面に堆積される請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記金属層の厚さは5nm〜50nmである請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記支持層の密度が前記銅腐食液の密度よりも小さい請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記支持層がポリウレタン材料である請求項14に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記目標基板は絶縁層を含み、絶縁層の材料は、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ガラス又はサファイアを含む請求項9に記載のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜領域に関し、特に、グラフェン薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは良い導電性及び透光性を持つ新しい材料である。タッチパネルや液晶ディスプレィなどの技術の発展について、グラフェンが、その表現された優れた機械強度及び柔軟性により、薄膜トランジスタでの応用は、次第に人々に研究されるホットスポットになってきた。
【0003】
現在、グラフェン薄膜トランジスタの製造方法ステップは主に以下のことを含む。即ち、銅箔の表面にグラフェンを生成し、グラフェンの表面に有機高分子材料、例えばポリメタクリル酸メチル(英文名称:Polymeric Methyl Methacrylate、PMMAと簡単に称す)を塗布し、PMMA、グラフェン及び銅箔からなる膜シートを銅腐食液に入れて銅箔を腐食して除去し、そしてPMMAを溶解して、フォトエッチングなどの技術を利用してグラフェンの表面でソース及びドレインを作成することにより、全体のグラフェン薄膜トランジスタが形成される。しかしながら、既存のグラフェン薄膜トランジスタを製造する方法では、PMMA、及びフォトエッチング技術で採用されたフォトレジストのいずれもグラフェンに直接接触し、PMMA及びフォトレジストを溶解する際にPMMA及びフォトレジストがグラフェンの表面に残っている問題が生じ、続いてソース・ドレインを作成するときに、残っているPMMA及びフォトレジストの存在によりソース・ドレインがグラフェンの表面との接触を不充分にされることで、ソース・ドレインとグラフェンとの接触抵抗が増加されて電荷の搬送が制限されて、薄膜トランジスタにおける電流が減少し、駆動能力が低減することが招致される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の製造方法でのグラフェンの表面に有機高分子材料が残っていることに起因した接触抵抗の増加という問題を解決するためのグラフェン薄膜トランジスタの製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる実施例は、従来の製造方法でのグラフェンの表面に有機高分子材料が残っていることに起因した接触抵抗の増加という問題を解決するためのグラフェン薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【0006】
本発明にかかる実施例は、グラフェン薄膜トランジスタの製造方法を提供し、
S1:メタンを炭素源として、化学気相堆積法により銅箔の表面にグラフェン層を堆積し、
S2:前記グラフェン層の表面に金属層を堆積し、
S3:前記金属層の表面に支持層を貼り合わせることにより、グラフェン膜シートを形成し、
S4:前記グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置き、前記銅箔が全部溶解されるまで支持層は一部が銅腐食液に浸る一方、金属層、グラフェン層及び銅箔は全部が銅腐食液に浸っており、そして銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動し、支持層を取り除き、
S5:前記金属層の表面にソース・ドレインのパターンを定義してソース・ドレイン電極を作成し、目標基板におけるグラフェン層から離れる側にゲート電極を作成することにより、グラフェン薄膜トランジスタを取得することを含む。
【0007】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、S1の前に、前記銅箔を順にエタノール、プロトン、0.5mol/Lの希塩酸で洗浄することを更に含む。
【0008】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層が電子ビーム蒸発又はマグネトロンスパッタ技術により前記グラフェンの表面に堆積される。
【0009】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層の厚さは5nm〜50nmである。
【0010】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層は、単一層の金属層又は複合層の金属層を含む。
【0011】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層が複合層の金属層である場合、各種の金属層の厚さが同じである。
【0012】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層に採用される金属は、チタン、金、ニッケル、パラジウム又はプラチナを含む。
【0013】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記支持層の密度が前記銅腐食液の密度よりも小さい。
【0014】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記支持層がポリウレタン材料である。
【0015】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記目標基板は絶縁層を含み、絶縁層の材料は、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ガラスまたはサファイアを含む。
【0016】
本発明にかかる実施例は、グラフェン薄膜トランジスタの製造方法を提供し、
S1:銅箔の表面にグラフェン層を堆積し、
S2:グラフェン層の表面に金属層を堆積し、
S3:金属層の表面に支持層を貼り合わせることにより、グラフェン膜シートが形成され、
S4:グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置き、銅箔が全部溶解されるまで支持層は一部が銅腐食液に浸る一方、金属層、グラフェン層及び銅箔は全部が銅腐食液に浸っており、そして銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動し、支持層を取り除き、
S5:金属層の表面にソース・ドレインのパターンを定義してソース・ドレイン電極を作成し、目標基板におけるグラフェン層から離れる側にゲート電極を作成することにより、グラフェン薄膜トランジスタを取得することを含む。
【0017】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、S1の前に、前記銅箔を順にエタノール、プロトン、0.5mol/Lの希塩酸で洗浄することを更に含む。
【0018】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記グラフェンは、化学気相堆積法により前記銅箔の表面に堆積される。
【0019】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層が電子ビーム蒸発又はマグネトロンスパッタ技術により前記グラフェンの表面に堆積される。
【0020】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層の厚さは5nm〜50nmである。
【0021】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層は、単一層の金属層又は複合層の金属層を含む。
【0022】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記金属層に採用される金属は、チタン、金、ニッケル、パラジウム又はプラチナを含む。
【0023】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記支持層の密度が前記銅腐食液の密度よりも小さい。
【0024】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記支持層がポリウレタン材料である。
【0025】
本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法では、前記目標基板は絶縁層を含み、絶縁層の材料は、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ガラス又はサファイアを含む。
【発明の効果】
【0026】
従来技術に比べて、本発明のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法において、グラフェン層の表面に金属層を堆積して、グラフェン層が保護されることにより、グラフェン層が支持層及びフォトレジストに直接接触しなくなる。よって、グラフェンの表面に残留物を有する問題が回避され、ソース・ドレインがグラフェン層と充分に接触するようにできて、ソース・ドレインとグラフェンとの間の接触抵抗が低減されることにより、従来の製造方法でのグラフェン層の表面にPMMA及びフォトレジストが残っていることに起因したソース及びドレイン電極とグラフェンとの間の接触抵抗の増加という問題を解決した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法の好ましい実施例のフローチャートである。
【
図2】
図2は本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法におけるグラフェン膜シートの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法により作成されたバックゲートの遷移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例又は従来技術の技術案をより明瞭に説明するために、以下に実施例に使用される図面を簡単に説明する。以下に記載の図面は、本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、進歩性に値する労働を必要しなくても、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0029】
図1を参照し、
図1は本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法の好ましい実施例のフローチャートである。当該製造方法は、以下の幾つかのステップ、即ち、
S101:銅箔の表面にグラフェン層を堆積し、
S102:グラフェン層の表面に金属層を堆積し、
S103:金属層の表面に支持層を貼り合わせることにより、グラフェン膜シートを形成し、
S104:グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置き、銅箔が全部溶解されるまで支持層は一部が銅腐食液に浸る一方、金属層、グラフェン層及び銅箔は全部が銅腐食液に浸り、そして銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動し、支持層を取り除き、
S105:金属層の表面にソース・ドレインのパターンを定義し、ソース・ドレイン電極を作成し、目標基板におけるグラフェン層から離れる側にゲート電極を作成することにより、グラフェン薄膜トランジスタを取得することを含む。
【0030】
ステップS101では、銅箔の表面にグラフェン層を堆積する前に、さらに、銅箔の表面における油汚れや酸化物などの不純物に対して洗浄操作を行う必要がある。本好ましい実施例において、使用される洗浄操作は、銅箔の表面がグラフェンの生長プロセス要求に達成するように、銅箔の表面における不純物がすべて取り除かれるまで銅箔を順にエタノール、プロトン、0.5mol/Lの希塩酸で洗浄することである。
【0031】
本好ましい実施例では、化学気相堆積法により銅箔の表面にグラフェン層を堆積する。化学気相堆積法は、それにより製造されるグラフェンが高品質、生長面積広などのメリットを有し、現在の高品質製造用の主要方法であり、一種又は多種の気体状態の物質を反応チャンバーに導入して化学反応を発生させて、新しい材料を生成して基板表面に堆積することを原理とする。
【0032】
化学気相堆積法によりグラフェン層を堆積する場合、非酸化性気体として、水素ガスを選択して反応チャンバーに通して、反応チャンバーにおける酸化性気体を取り除く。勿論、アルゴンガスなどの他の気体を選択して非酸化性気体とすることができるため、ここで具体的に限定しない。本発明の発明者は、メタンを炭素源とするが、炭素源は、他の炭素含有物質であってもよい。例えば、一酸化炭素、アセチレンなどがあり、ここで具体的に限定しない。高温低圧の雰囲気において、銅箔の表面にグラフェン層を堆積するステップを終了させる。
【0033】
S102において、マグネトロンスパッタ技術により金属をグラフェン層の表面に堆積し、グラフェン層の表面に金属層が形成される。他の実施例において、電子ビーム蒸発などの他の技術により金属をグラフェン層の表面に堆積してもよいため、ここで具体的に限定しない。
【0034】
本好ましい実施例では、金属層は複合金属層であり、2層の金属層を含み、グラフェン層の表面に近い層は、チタン金属層であり、グラフェン層の表面に遠い層は、金の金属層であり、金の金属層よりもチタン金属層をグラフェン層に近く設置するメリットは、チタン金属とグラフェンとが結合し易いため、チタン金属とグラフェンの間の接触抵抗が低減することができる。
【0035】
勿論、他の実施例において、金属層は単一層の金属層であってもよく、3層や4層などの複合金属層であっても良い。金属層の金属は、チタン、金、ニッケル、パラジウム又はプラチナうちの1種又は多種であってもよいため、ここで、金属層の層数及び金属の種類を具体的に限定しない。
【0036】
グラフェン層の表面に金属層を堆積する場合、金属の注入量をコントロールする必要がある。即ち、金属層の厚さをコントロールすることである。金属層の厚さが薄すぎると、グラフェン層を良く保護する機能を発揮できない。金属層の厚さが厚すぎると、後続の銅箔溶解プロセスにおいて支持層が金属層、グラフェン層及び銅箔を銅腐食液で浮遊状態にすることができなくなり、支持層、金属層、グラフェン層及び銅箔が一緒に銅腐食液に落ち易くなり、後続のプロセスに不便になる。従って、金属層の厚さには、一定の制限が必要であり、一般に、金属層の厚さは5nm〜50nmであり、本好ましい実施例において、金属層の厚さは10nmであり、且つチタン金属層及び金金属層の厚さはそれぞれ5nmであることが好ましい。
【0037】
S103では、金属層の表面に支持層を張り合わせる。なお、該支持層の密度は銅腐食液の密度よりも小さい。支持層の密度と銅腐食液の密度との差が大きければ大きいほど良い。その目的は、支持層と銅腐食液の密度の差を利用して、支持層が銅腐食液の表面に漂っているようにすることにある。即ち、後続の銅箔溶解ステップにおいて、支持層は、金属層、グラフェン層及び銅箔を銅腐食液において浮遊状態にすることができ、それらが銅腐食液に落ちないようにする。支持層は、上記の機能に加え、後続の、銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動することに便宜を提供する。
【0038】
本好ましい実施例では、支持層はポリウレタン材料であり、他の実施例において、密度が銅腐食液よりも小さい他の材料であってもよく、ここで具体的に限定しない。
【0039】
グラフェン膜シートの構成をより明瞭に説明するために、以下に、グラフェン膜シートの構成を示す模式図を与えている。
図2を参照し、
図2は本発明に係るグラフェン薄膜トランジスタの製造方法におけるグラフェン膜シートの構成を示す模式図である。グラフェン膜シートは、下から順に、銅箔21、グラフェン層22、金属層23及び支持層24を含む。
【0040】
S104において、グラフェン膜シートを銅腐食液に入れ置く。このとき、支持層の密度が銅腐食液の密度よりも小さいため、支持層が銅腐食液の表面に漂っている。一方、金属層、グラフェン層及び銅箔が銅腐食液に浸っている。銅箔は前部が腐食された後、銅箔が除去されたグラフェン膜シートを目標基板に移動してから支持層を取り除く。
【0041】
本好ましい実施例において、目標基板は絶縁層を含み、周知の常識によれば、グラフェン膜シートが目標基板の絶縁層に移動されることが分かる。なお、絶縁層は、二酸化珪素の材料を使用している。勿論、炭化珪素、ガラス又はサファイアの材料を使用してもよいため、ここで具体的に限定しない。
【0042】
S105では、フォトエッチング技術により金属表面にソース・ドレインのパターンを定義してから、マグネトロンスパッタ技術または電子ビーム蒸発技術により金金属をソース・ドレインのパターンにおける相応位置に堆積し、そしてドライエッチング技術によりチャンネル領域における金属層を取り除いて、チャンネル領域におけるグラフェン層を露出させるとともに、目標基板におけるグラフェン層から離れる側にゲート電極を作成し、ソース、ドレイン及びゲート電極の製造に使用される方法ステップは従来技術であり、当業者にとって周知の常識に該当するため、本好ましい実施例では重複説明を行わない。S105の終了後、低接触抵抗のグラフェン薄膜トランジスタが取得できる。
【0043】
従来のグラフェン薄膜トランジスタの製造方法において、フォトエッチング技術を用いたソース・ドレインのパターンの定義は、グラフェン層の表面に直接に行われており、そして、マグネトロンスパッタ技術または電子ビーム蒸発技術によりソース・ドレインのパターンにおける相応位置に、一層の薄いチタン金属及び一層の厚い金金属を堆積することにより、ソース・ドレイン電極が形成されていた。全体の過程において、グラフェン層と、フォトエッチング技術に使用されるフォトレジストとが直接接触し、フォトレジストを溶解するときに、フォトレジストがグラフェン層の表面に残るという問題が生じ、グラフェン層とソース・ドレイン電極との接触が不充分になり、グラフェン層とソース・ドレイン電極との接触抵抗が大きくなることを招致する。
【0044】
本好ましい実施例が提供している製造方法では、フォトエッチング技術を用いたソース・ドレインのパターンの定義は、金属層の表面に行われるものである。このように、グラフェン層はフォトレジストに接触していない。フォトレジストを溶解するときにフォトレジストがグラフェン層の表面に残っている問題もなくなるとともに、金属層については、ソース・ドレインの目標金属であるチタン金属及び金金属が使用されることにより、後続のマグネトロンスパッタ技術または電子ビーム蒸発技術により金金属をソース・ドレインにおける対応の位置に堆積する場合に、その相応位置における金属層を取り除くことも必要なくなる。従って、グラフェン薄膜トランジスタの全体製造過程においても、グラフェンが金属層に保護されており、グラフェン層とソース・ドレイン電極との充分な接触が確実に保障され、グラフェン層とソース・ドレイン電極との接触抵抗が低減される。
【0045】
グラフェン薄膜トランジスタを作成した後、グラフェン薄膜トランジスタのバックゲートの遷移グラフをテストした。
図3を参照し、図面における縦座標はドレイン電流I
dであり、その単位はミリアンペア(mA)である。横座標はゲート電圧V
gであり、その単位はボルト(V)である。バックゲートの遷移グラフをテストするときに、ソースを接地する。図示から分かるように、異なるドレイン電圧V
dにおいて、ドレイン電流の最小値は、いずれもV
g=0の位置に出現している。グラフェン薄膜トランジスタのチャンネル領域におけるグラフェンはドープされていないと考えられる。即ち、グラフェン層の表面にいずれの不純物も存在せず、本来の特性が良好である。一方、従来技術により作成されたグラフェン薄膜トランジスタは、グラフェンの表面にPMMA及びフォトレジストなどの不純物が残っているため、ドレイン電流の最小値が0ボルトの左側または右側に出現する。つまり、グラフェンの電界効果デバイスの双極対称性が破壊されて、グラフェンとソース・ドレインの間の接触抵抗が増加する。図示から分かるように、V
gが一定である場合、ドレイン電圧V
dが5mvの幅で絶えず増加しているときに、ドレイン電流I
dの増加幅が基本的に同じであり、即ち、ドレイン電流I
dとドレイン電圧V
dとが比例関係にあり、グラフェン薄膜トランジスタの電気的性能が優れていると考えられる。
【0046】
好ましい実施例にて提供しているグラフェン薄膜トランジスタの製造方法において、グラフェン層の表面に10nm厚さの金属層を堆積して、グラフェン層と支持層及び後続に使用されるフォトレジストとが接触しなくなる。よって、グラフェンの表面に残留物が残る問題が回避され、ソース・ドレイン電極とグラフェン層とが充分に接触できて、ソース・ドレイン電極とグラフェン層の間の接触抵抗が低減し、グラフェン薄膜トランジスタにおける電流が増加し、従来の製造方法でのグラフェンの表面にPMMA及びフォトレジストが残っていることに起因したソース・ドレイン電極とグラフェンとの接触抵抗の増加という問題を解決した。
【0047】
また、本好ましい実施例にて提供している製造方法により作成されたグラフェン薄膜トランジスタにおけるグラフェン層の表面の起伏度は0.1nmよりも小さい。従来の製造方法により作成されたグラフェン薄膜トランジスタにおけるグラフェン層の表面の起伏度である1nmよりも遥かに小さい。よって、本好ましい実施例に係る製造方法により作成されたグラフェン薄膜トランジスタは、より良い電気的性能を持っていることが分かる。
【0048】
上記のように、本発明は、好ましい実施例により前記の内容を開示しているが、前記の好ましい実施例は本発明を制限するためのものではない。当業者は、本発明の技術思想及び範囲を離脱せず、各種の変更や修飾を行うことができるため、本発明の保護範囲は、請求の範囲によって限定されたものに基づく。