特許第6719683号(P6719683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719683
(24)【登録日】2020年6月18日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】切削加工機及び切削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20200629BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20200629BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20200629BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20200629BHJP
【FI】
   B23K26/38 A
   B23K26/08 Z
   B23K26/082
   B23K26/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-554704(P2019-554704)
(86)(22)【出願日】2019年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2019022106
(87)【国際公開番号】WO2020008780
(87)【国際公開日】20200109
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-128923(P2018-128923)
(32)【優先日】2018年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】永山 岳大
(72)【発明者】
【氏名】菅野 和宏
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−015179(JP,U)
【文献】 特開平03−155484(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02725277(CA,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103869748(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B23K 26/00
B23K 26/08
B23K 26/082
B23Q 15/00
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を切削加工する加工機本体と、
前記加工機本体を制御するNC装置と、
を備え、
前記NC装置は、
前記加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定された加工プログラムと加工条件とに基づいて、前記加工対象物を切削加工する切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報を生成する工具径補正量演算部と、
前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成する加工軌跡演算部と、
前記工具径補正制御信号に基づいて、前記加工機本体を制御する駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
を有し、
前記加工機本体は、
前記加工対象物との相対位置を変化させることにより、前記加工対象物を切削加工する加工ユニットと、
前記駆動制御信号に基づいて、前記切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を制御する工具軌跡制御部と、
を有し、
前記加工条件に前記工具軌跡を切削加工中に切り替えるための切削工具情報が含まれている場合、前記工具径補正量演算部は、前記加工条件に含まれる複数の工具軌跡を認識し、前記複数の工具軌跡を含む工具径補正情報を生成し、
前記工具径補正量演算部は、前記工具軌跡の切り替え時点に対して工具軌跡補間期間を設定し、かつ、前記工具軌跡補間期間における工具軌跡を設定し、
前記加工機本体は、前記駆動制御信号に基づいて、前記工具軌跡を、前記工具軌跡補間期間において設定された工具軌跡を介して段階的に切り替え、かつ、切り替えのタイミングで前記工具径を補正する
切削加工機。
【請求項2】
レーザビームを生成して射出するレーザ発振器をさらに備え、前記NC装置は、前記レーザ発振器及び前記加工機本体を制御し、
前記加工ユニットは、前記加工ユニットの先端部に取り付けられ、前記レーザ発振器より射出されたレーザビームを射出して前記加工対象物に照射するための開口部が形成されたノズルを有し、
前記工具軌跡制御部は、前記加工ユニットに収容され、前記開口部から射出されるレーザビームを非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記工具軌跡として、前記加工対象物に照射されるレーザビームのビームスポットの軌跡を制御する
請求項に記載の切削加工機。
【請求項3】
加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定され、加工対象物を切削加工するための切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を切削加工中に変更するための切削工具情報が含まれる加工条件と加工プログラムとに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための工具径補正情報を生成し、
前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成し、
前記工具径補正制御信号に基づいて駆動制御信号を生成し、
前記駆動制御信号に基づいて前記工具軌跡を制御し、
前記加工条件に前記工具軌跡を切削加工中に切り替えるための切削工具情報が含まれている場合、前記加工条件に含まれる複数の工具軌跡を認識し、前記複数の工具軌跡を含む工具径補正情報を生成し、
前記工具軌跡の切り替え時点に対して工具軌跡補間期間を設定し、かつ、前記工具軌跡補間期間における工具軌跡を設定し、
前記駆動制御信号に基づいて、前記工具軌跡を、前記工具軌跡補間期間において設定された工具軌跡を介して段階的に切り替え、かつ、切り替えのタイミングで前記工具径を補正する
切削加工方法。
【請求項4】
レーザビームを前記加工対象物に照射し、
前記レーザビームを非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記工具軌跡を制御する
請求項に記載の切削加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームを照射して加工対象物を加工するレーザ加工機等の切削加工機及び切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工機として、レーザビームを照射して加工対象物を加工し、所定の形状を有する製品を製作するレーザ加工機が普及している。レーザ加工機は、製品が所定の形状を有して製作されるように、レーザビームによる切削量を考慮した工具径補正により加工対象物を切削加工する。特許文献1には、工具径補正により加工対象物を切削加工するレーザ加工機の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6087483号公報
【発明の概要】
【0004】
レーザ加工機において、レーザビームを射出するノズルと加工対象物を載せる加工テーブルとの相対位置が固定されている状態では、レーザビームは通常、円形状を有するため、切削加工跡も円形状を有する。複数の種類の回転工具を備えたマシニングセンタにおいても、回転工具の位置座標が固定されている状態では、切削加工跡は通常、円形状を有する。ウォータジェット加工機においても、高圧水が射出される位置座標が固定されている状態では、切削加工跡は通常、円形状を有する。従って、工具径補正は、ノズル、回転工具、高圧水等の切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が円形状であることを前提としている。
【0005】
そのため、レーザ加工機等の切削加工機は、切削工具による切削加工跡の半径分または切削加工跡の半幅分を工具径補正量に設定し、工具径補正量分だけシフトさせて加工対象物を切削加工するときの軌跡を制御する。一般的に、従来の切削加工機では、工具径補正は切削加工跡が非円形状の場合に対応していない。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態は、切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる切削加工機及び切削加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、加工対象物を切削加工する加工機本体と、前記加工機本体を制御するNC装置とを備え、前記NC装置は、前記加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定された加工プログラムと加工条件とに基づいて、前記加工対象物を切削加工する切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報を生成する工具径補正量演算部と、前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成する加工軌跡演算部と、前記工具径補正制御信号に基づいて、前記加工機本体を制御する駆動制御信号を生成する駆動制御部とを有し、前記加工機本体は、前記加工対象物との相対位置を変化させることにより、前記加工対象物を切削加工する加工ユニットと、前記駆動制御信号に基づいて、前記切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を制御する工具軌跡制御部とを有し、前記加工条件に前記工具軌跡を切削加工中に切り替えるための切削工具情報が含まれている場合、前記工具径補正量演算部は、前記加工条件に含まれる複数の工具軌跡を認識し、前記複数の工具軌跡を含む工具径補正情報を生成し、前記工具径補正量演算部は、前記工具軌跡の切り替え時点に対して工具軌跡補間期間を設定し、かつ、前記工具軌跡補間期間における工具軌跡を設定し、前記加工機本体は、前記駆動制御信号に基づいて、前記工具軌跡を、前記工具軌跡補間期間において設定された工具軌跡を介して段階的に切り替え、かつ、切り替えのタイミングで前記工具径を補正する切削加工機が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定され、加工対象物を切削加工するための切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を切削加工中に変更するための切削工具情報が含まれる加工条件と加工プログラムとに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための工具径補正情報を生成し、前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成し、前記工具径補正制御信号に基づいて駆動制御信号を生成し、前記駆動制御信号に基づいて前記工具軌跡を制御し、前記加工条件に前記工具軌跡を切削加工中に切り替えるための切削工具情報が含まれている場合、前記加工条件に含まれる複数の工具軌跡を認識し、前記複数の工具軌跡を含む工具径補正情報を生成し、前記工具軌跡の切り替え時点に対して工具軌跡補間期間を設定し、かつ、前記工具軌跡補間期間における工具軌跡を設定し、前記駆動制御信号に基づいて、前記工具軌跡を、前記工具軌跡補間期間において設定された工具軌跡を介して段階的に切り替え、かつ、切り替えのタイミングで前記工具径を補正する切削加工方法が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機の全体的な構成例を示す図である。
図2図2は、ノズルと工具軌跡との関係を示す図である。
図3図3は、工具軌跡制御部の構成例を示す図である。
図4図4は、切削加工中に工具軌跡が切り替え補間なしの条件にて変更される状態を示す図である。
図5図5は、切削加工中に工具軌跡が切り替え補間ありの条件にて変更される状態を示す図である。
図6図6は、1またはそれ以上の実施形態の切削加工方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法について、添付図面を参照して説明する。切削加工機及び切削加工方法の一例として、レーザ加工機及びレーザ加工方法について説明する。
【0012】
図1に示すように、切削加工機1は、レーザ発振器10と、加工機本体100と、NC装置(数値制御装置)200とを備える。NC装置200は、レーザ発振器10と加工機本体100とを制御する。レーザ発振器10はレーザビームを生成して射出する。レーザ発振器10から射出されたレーザビームは、プロセスファイバ11を介して加工機本体100へ伝送される。加工機本体100は、レーザビームを加工対象物Wに照射し、かつ、加工対象物Wとレーザビームのビームスポットとの相対位置を変化させることにより、加工対象物Wを切削加工する。
【0013】
レーザ発振器10としては、レーザダイオードより発せられる励起光を増幅して所定の波長のレーザビームを射出するレーザ発振器、または、レーザダイオードより発せられるレーザビームを直接利用するレーザ発振器が好適である。レーザ発振器10は、例えば、固体レーザ発振器、ファイバレーザ発振器、ディスクレーザ発振器、または、ダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)である。
【0014】
レーザ発振器10は、波長900nm〜1100nmの1μm帯のレーザビームを射出する。ファイバレーザ発振器及びDDL発振器を例とすると、ファイバレーザ発振器は、波長1060nm〜1080nmのレーザビームを射出し、DDL発振器は、波長910nm〜950nmのレーザビームを射出する。
【0015】
加工機本体100は、加工対象物Wを載せる加工テーブル101と、門型のX軸キャリッジ102と、Y軸キャリッジ103と、加工ユニット104と、工具軌跡制御部300とを有する。加工対象物Wは例えばステンレス鋼よりなる板金である。加工対象物はステンレス鋼以外の鉄系の板金であっても構わないし、アルミニウム、アルミニウム合金、銅鋼などの板金であっても構わない。レーザ発振器10から射出されたレーザビームは、プロセスファイバ11を介して加工機本体100の加工ユニット104へ伝送される。工具軌跡制御部300は加工ユニット104の内部に収容されている。
【0016】
X軸キャリッジ102は、加工テーブル101上でX軸方向に移動自在に構成されている。Y軸キャリッジ103は、X軸キャリッジ102上でX軸と直交するY軸方向に移動自在に構成されている。X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103は、加工ユニット104を加工対象物Wの面に沿って、X軸方向、Y軸方向、または、X軸とY軸との任意の合成方向に移動させる移動機構として機能する。
【0017】
加工機本体100は、加工ユニット104を加工対象物Wの面に沿って移動させる代わりに、加工ユニット104は位置が固定されていて、加工対象物Wが移動するように構成されていてもよい。加工機本体100は、加工対象物Wの面に対して加工ユニット104を相対的に移動させる移動機構を備えていればよい。
【0018】
加工ユニット104にはノズル106が取り付けられている。ノズル106の先端部には円形の開口部105が形成されている。加工ユニット104に伝送されたレーザビームは、ノズル106の開口部105から射出され、加工対象物Wに照射される。
【0019】
加工ユニット104には、窒素または空気等のアシストガスが供給される。アシストガスは酸素であってもよく、その目的が酸化抑制なのか、酸化反応熱を利用するのかによって、窒素と酸素との混合比を任意に設定できる。レーザビームが開口部105から加工対象物Wに照射され、かつ、アシストガスが開口部105から加工対象物Wへと吹き付けられる。アシストガスは、加工対象物Wが溶融したカーフ幅内の溶融物を排出する。
【0020】
工具軌跡制御部300は、加工ユニット104内を進行して開口部105から射出されるレーザビームを、非円形状の振動パターンで振動させるビーム振動機構として機能する。工具軌跡制御部300がレーザビームを非円形状の振動パターンで振動させることにより、加工ユニット104は非円形状の工具軌跡により加工対象物Wを切削加工する。工具軌跡制御部300の具体的な構成例、及び、工具軌跡制御部300がレーザビームのビームスポットを非円形状の振動パターンで振動させる方法については後述する。
ここで、工具軌跡とは、一定時間内に非円形状の振動パターンで振動させたビーム振動によってなされたビームの軌跡が描いた図形であって、振動工具形状を指す。つまり、通常は、ノズル106から射出される円形のレーザビームそのものが切削工具であり、そのビーム半径分が工具径補正となるが、ここでは、振動パターンで描いた図形の工具軌跡を切削工具とする。ノズル106と加工テーブル101との相対位置が固定されている状態における切削加工跡は、工具軌跡に対応する。
【0021】
CAD(Computer Aided Design)装置20は、加工対象物Wを切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて製品形状データ(CADデータ)SDを生成し、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置21へ出力する。CAM装置21は、製品形状データSDに基づいて、切削加工機1が加工対象物Wを切削加工するための加工プログラム(NCデータ)PPを生成し、加工条件CPを指定する。即ち、加工プログラムPPと加工条件CPとは、最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定される。
【0022】
加工プログラムPPには、切削加工の進行方向の左側に工具径補正量分だけシフトさせて切削工具の軌跡を制御するG41(左工具径補正)、または、切削加工の進行方向の右側に工具径補正量分だけシフトさせて切削工具の軌跡を制御するG42(右工具径補正)で示されるGコードが含まれている。
【0023】
CAM装置21は、加工条件CPとして、切削工具に相当する工具軌跡を指定する。工具軌跡は例えば非円形状を有する。CAM装置21は、形状または工具径が異なる複数の工具軌跡を指定することができる。加工条件CPには、切削加工中に工具軌跡を変更するための切削工具情報が含まれている。
【0024】
加工条件CPには、加工対象物Wの材質及び厚さ等の材料パラメータが指定された加工対象情報が含まれている。加工条件CPには、レーザビームの出力、加工速度、及び、ノズル106の開口部105の直径(ノズル径)等の加工パラメータ、及び、アシストガス条件等の切削加工情報が含まれている。即ち、加工条件CPには、工具軌跡等の切削工具情報と加工対象情報と切削加工情報とが含まれている。
【0025】
CAM装置21は、加工プログラムPPと加工条件CPとを切削加工機1のNC装置200へ出力する。NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいてレーザ発振器10を制御する。NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工機本体100を制御してX軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させることにより、ノズル106を目的の位置へ移動させる。
【0026】
NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、工具軌跡制御部300を制御することにより、ノズル106の開口部105より射出されるレーザビームのビームスポットの軌跡を制御する。ビームスポットの軌跡は工具軌跡に相当する。
【0027】
NC装置200は、工具径補正量演算部201と、加工軌跡演算部202と、駆動制御部203とを有する。工具径補正量演算部201、及び、加工軌跡演算部202には、CAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力される。工具径補正量演算部201は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工対象物Wを切削加工するための切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報TCを生成する。
【0028】
図2を用いて、工具径補正情報TCについて説明する。図2は、ノズル106の内部から開口部105を介して加工対象物Wに照射されるレーザビームのビームスポットの軌跡(工具軌跡)を示している。
【0029】
工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡TPを認識する。工具径補正量演算部201は、認識された工具軌跡TPとノズル106の軌跡NP(以下、ノズル軌跡NPとする)と切削加工の進行方向DTとに基づいて、工具径補正情報TCを生成する。工具軌跡TPは加工対象物Wを切削加工するための切削工具に相当する。工具軌跡TPの形状は切削工具の形状に相当する。工具軌跡TPは例えば非円形状を有する。
【0030】
工具径補正情報TCは、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPL及びMPRと、工具径補正値MVLL及びMVLRと、オフセット値SVLL及びSVLRとを含む。また、工具径補正情報TCは、ノズル軌跡NPにおけるノズル106の中心点CN(以下、ノズル中心点CNとする)と、工具径補正値MVNL及びMVNRと、オフセット値SVNL及びSVNRとを含む。なお、制御中心点CLとは、一般的なレーザ加工の工具径補正の場合のレーザビームの中心に相当する。1またはそれ以上の実施形態においては、工具軌跡を非円形状の切削工具としているので、切断ラインを切削工具と製品の境界とするときの切断ライン(切断位置)に対して切削工具を制御する中心の位置である。ノズル軌跡NPとは、具体的にはノズル中心点CNの軌跡である。ノズル106の中心点CNと開口部105の中心点とは一致している。
【0031】
図2に示すCCNa及びCCNbは、ノズル106の中心線を示している。中心線CCNaは進行方向DTに対して平行であり、中心線CCNbは進行方向DTに対して垂直である。図2に示すBSは、工具軌跡TP上を移動するレーザビームのビームスポットを示している。図2には、非円形状の一例として、ビームスポットBSがアルファベットのCを描くようにビームスポットBSを振動させる振動パターンの工具軌跡TPを示している。なお、工具軌跡TPの振動パターンは非円形状を含む自由形状であればよい。
【0032】
レーザ加工機の場合、工具軌跡TPはレーザビームのビームスポットBSの軌跡に相当する。ビームスポットBSは工具軌跡TP上を往復移動する。または、ビームスポットBSは非円形状であれば周期移動してもよい。加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPにおいて制御中心点CLを通り進行方向DTと平行な中心線CCLaからビームスポットBSまでの距離が最大となる位置に相当する。加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPが切削加工の進行方向DTに移動したときに、加工対象物Wに加工面が形成される位置である。即ち、加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPにおいて工具径が最大となる位置である。
【0033】
加工面形成位置MPL及びMPRは、ノズル軌跡NPにおいてノズル中心点CNを通り進行方向DTと平行な中心線CCNaからの距離が最大となる位置に相当する。即ち、加工面形成位置MPL及びMPRは、ノズル軌跡NPにおいて工具径が最大となる位置である。加工面形成位置MPLは左工具径補正におけるパラメータであり、加工面形成位置MPRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0034】
工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLL及びMVLRは、中心線CCLaから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLL及びMVLRは、工具軌跡TPにおける工具径に相当する。ノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNL及びMVNRは、中心線CCNaから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。ノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNL及びMVNRは、ノズル軌跡NPにおける工具径に相当する。工具径補正値MVLL及びMVNLは左工具径補正におけるパラメータであり、工具径補正値MVLR及びMVNRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0035】
工具軌跡TPにおけるオフセット値SVLL及びSVLRは、制御中心点CLを通り進行方向DTと垂直な中心線CCLbから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。ノズル軌跡NPにおけるオフセット値SVNL及びSVNRは、ノズル中心点CNを通り進行方向DTと垂直な中心線CCNbから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。オフセット値SVLL及びSVNLは左工具径補正におけるパラメータであり、オフセット値SVLR及びSVNRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0036】
従って、工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡TPを認識し、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、工具軌跡TPに基づく補正情報とノズル軌跡NPに基づく補正情報とを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。また、工具径補正量演算部201は、左工具径補正と右工具径補正の両方の補正情報を含む工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0037】
加工軌跡演算部202には、CAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力され、工具径補正量演算部201から工具径補正情報TCが入力される。加工軌跡演算部202は、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。なお、加工プログラムPPはGコードの代わりにロボット言語等を含んでいてもよい。
【0038】
加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかのいずれかの切削加工補正条件を決定する。
【0039】
加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCと決定された切削加工補正条件とに基づいて工具径補正制御信号TSを生成する。加工軌跡演算部202は、工具径補正制御信号TSを駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、工具径補正制御信号TSに基づいて、加工機本体100を制御する駆動制御信号CSを生成する。駆動制御部203は駆動制御信号CSを加工機本体100へ出力する。
【0040】
工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、工具軌跡TPと工具軌跡TPにおける制御中心点CLと工具径補正値MVLLとオフセット値SVLLとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、工具軌跡TPと工具軌跡TPにおける制御中心点CLと工具径補正値MVLRとオフセット値SVLRとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。
【0041】
ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、ノズル軌跡NPとノズル軌跡NPにおけるノズル中心点CNと工具径補正値MVNLとオフセット値SVNLとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、ノズル軌跡NPとノズル軌跡NPにおけるノズル中心点CNと工具径補正値MVNRとオフセット値SVNRとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。
【0042】
駆動制御部203は、駆動制御信号CSにより、加工機本体100の工具軌跡制御部300を制御する。工具軌跡制御部300は、駆動制御信号CSに基づいて、ノズル106の開口部105より射出されるレーザビームのビームスポットBSの軌跡を制御する。
【0043】
図3を用いて、工具軌跡制御部300の具体的な構成例、及び、工具軌跡制御部300がレーザビームのビームスポットBSを非円形状の振動パターンで振動させる方法の一例を説明する。
【0044】
図3に示すように、工具軌跡制御部300は加工ユニット104の内部に収容されている。工具軌跡制御部300は、コリメータレンズ331と、ガルバノスキャナユニット340と、ベンドミラー334と、集束レンズ335とを有する。コリメータレンズ331は、プロセスファイバ11より射出されたレーザビームを平行光(コリメート光)に変換する。
【0045】
ガルバノスキャナユニット340は、スキャンミラー341(第1のスキャンミラー)と、スキャンミラー341を回転駆動させる駆動部342(第1の駆動部)と、スキャンミラー343(第2のスキャンミラー)と、スキャンミラー343を回転駆動させる駆動部344(第2の駆動部)とを有する。
【0046】
駆動部342は、駆動制御部203の制御により、スキャンミラー341を所定の方向(例えばX方向)に所定の角度範囲で往復駆動させることができる。スキャンミラー341は、コリメータレンズ321により平行光に変換されたレーザビームをスキャンミラー343に向けて反射する。
【0047】
駆動部344は、駆動制御部203の制御により、スキャンミラー343を、スキャンミラー341の駆動方向とは異なる方向(例えばY方向)に所定の角度範囲で往復駆動させることができる。スキャンミラー343は、スキャンミラー341により反射されたレーザビームをベンドミラー334に向けて反射する。
【0048】
ベンドミラー334は、スキャンミラー343により反射されたレーザビームをX軸及びY軸に垂直なZ軸方向下方に向けて反射させる。集束レンズ335はベンドミラー334により反射したレーザビームを集束して、加工対象物Wに照射する。
【0049】
ガルバノスキャナユニット340は、スキャンミラー341とスキャンミラー343とのいずれか一方または双方を高速で例えば1000Hz以上で往復振動させることにより、切削加工跡を多種の非円形状にすることができる。即ち、一定の光強度以上のレーザビームを単位時間当たりに複数個所へ集束させることにより、加工対象物Wに接して実質的に加工に寄与する工具形状を、多種の非円形状にすることが任意にできる。
【0050】
図4及び図5を用いて、加工条件CPに、切削加工中に工具軌跡TPを変更するための切削工具情報が含まれている場合について説明する。図4及び図5は、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工する場合を示している。加工条件CPには、複数の切削工具に相当する複数の工具軌跡TPと工具軌跡TPを切り替えるタイミング(切り替え時点または位置)と切り替え方法とを含む工具軌跡切り替え情報が含まれている。複数の工具軌跡TPは形状または工具径が異なる。工具軌跡切り替え情報は、切り替え方法として例えば切り替え補間なし、または、切り替え補間ありのパラメータを含む。
【0051】
工具径補正量演算部201は、加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれているか否かを認識する。加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれていない場合、工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡TPを認識する。加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれている場合、工具径補正量演算部201は、工具軌跡切り替え情報に含まれる複数の工具軌跡TPを認識する。
【0052】
工具径補正量演算部201は、加工条件CPに基づいて、複数の工具軌跡TPを含む上記の工具軌跡切り替え情報を有する工具径補正情報TCを生成する。また、工具径補正量演算部201は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、複数の工具軌跡TPの切り替え基準位置となる加工面形成位置MPL及びMPRと、各工具軌跡TPにおける制御中心点CLと工具径補正値MVLL及びMVLRとオフセット値SVLL及びSVLRとを含む工具軌跡変更情報を有する工具径補正情報TCを生成する。即ち、工具径補正情報TCには、上記の工具軌跡切り替え情報と工具軌跡変更情報とが含まれている。
【0053】
図4は、加工条件CPに、切り替え時点t1で工具軌跡TP11を工具軌跡TP12に切り替え、切り替え時点t2で工具軌跡TP12を工具軌跡TP11に切り替える切削工具情報が含まれている場合を示している。図4は、工具径補正情報TCが切り替え補間なしのパラメータを含む場合を示している。なお、図4では説明をわかりやすくするために、オフセット値SVLL及びSVLRが0である場合を示している。
【0054】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t1までの期間において選択される工具軌跡TP11と、工具軌跡TP11における制御中心点CL11と、加工面形成位置MPL11及びMPR11と、工具径補正値MVLL11及びMVLR11と、オフセット値SVLL11及びSVLR11とを含む工具径補正情報TCを生成する。加工面形成位置MPL11及びMPR11は、工具軌跡TP11の切り替え基準位置となる。オフセット値SVLL11及びSVLR11は、図2に示すオフセット値SVLL及びSVLRに相当する。
【0055】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t1から切り替え時点t2までの期間において選択される工具軌跡TP12と、工具軌跡TP12における制御中心点CL12と、加工面形成位置MPL12及びMPR12と、工具径補正値MVLL12及びMVLR12と、オフセット値SVLL12及びSVLR12とを含む工具径補正情報TCを生成する。加工面形成位置MPL12及びMPR12は、切削工具CT2の切り替え基準位置となる。オフセット値SVLL12及びSVLR12は、図2に示すオフセット値SVLL及びSVLRに相当する。
【0056】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t2以降の期間において選択される工具軌跡TP11と、工具軌跡TP11における制御中心点CL11と、加工面形成位置MPL11及びMPR11と、工具径補正値MVLL11及びMVLR11と、オフセット値SVLL11及びSVLR11とを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0057】
加工軌跡演算部202は、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかのいずれかの切削加工補正条件を決定する。
【0058】
工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工すると決定された場合、加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、切り替え時点t1にて、加工面形成位置MPL11と加工面形成位置MPL12とを一致させ、工具軌跡TP11を工具軌跡TP12に切り替えるための第1の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0059】
また、加工軌跡演算部202は、制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とを、制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とに切り替えるための第2の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0060】
加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、切り替え時点t2にて、加工面形成位置MPL12と加工面形成位置MPL11とを一致させ、工具軌跡TP12を工具軌跡TP11に切り替えるための第3の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0061】
また、加工軌跡演算部202は、制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とを、制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とに切り替えるための第4の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。即ち、工具径補正量演算部201は、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工すると決定された場合、第1〜第4の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0062】
加工軌跡演算部202は、工具径補正制御信号TSを駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、工具径補正制御信号TSに基づいて駆動制御信号CSを生成する。駆動制御部203は、駆動制御信号CSにより、加工機本体100を制御する。加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させてノズル軌跡NPを制御する。また、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡制御部300を駆動させて工具軌跡TPを制御する。
【0063】
工具径補正情報TCが切り替え補間なしのパラメータを含む場合、加工機本体100は、切り替え時点t1にて加工面形成位置MPL11と加工面形成位置MPL12とを一致させ、工具軌跡TP11を工具軌跡TP12に瞬時に切り替える。また、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とを、制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とに変更する工具径補正を実行する。
【0064】
工具径補正情報TCが切り替え補間なしのパラメータを含む場合、加工機本体100は、切り替え時点t2にて加工面形成位置MPL12と加工面形成位置MPL11とを一致させ、工具軌跡TP12を工具軌跡TP11に瞬時に切り替える。また、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とを、制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とに変更する工具径補正を実行する。
【0065】
図5は、加工条件CPに、切り替え時点t1で工具軌跡TP11を工具軌跡TP12に切り替え、切り替え時点t2で工具軌跡TP12を工具軌跡TP11に切り替える切削工具情報が含まれている場合を示している。図5は、工具径補正情報TCが切り替え補間ありのパラメータを含む場合を示している。なお、図5では説明をわかりやすくするために、オフセット値SVLL及びSVLRが0である場合を示している。
【0066】
工具径補正情報TCが切り替え補間ありのパラメータを含む場合、工具径補正量演算部201は、切り替え時点t1に対して工具軌跡補間期間SP11を設定する。工具軌跡補間期間SP11は切り替え時点t1までの所定の期間である。
【0067】
工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP11と工具軌跡TP12との特徴点を抽出する。工具径補正量演算部201は、抽出された特徴点に基づいて特徴曲線を設定する。工具径補正量演算部201は、特徴曲線の各構成点間の比率を一定にして工具軌跡補間期間SP11における工具軌跡TP112を設定する。工具軌跡TP112は、工具軌跡TP11と工具軌跡TP12とを段階的に切り替えるため、工具軌跡TP11と工具軌跡TP12とを補間する補間工具軌跡である。
【0068】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t1までの期間において選択される工具軌跡TP11と、工具軌跡TP11における制御中心点CL11と、加工面形成位置MPL11及びMPR11と、工具径補正値MVLL11及びMVLR11と、オフセット値SVLL11及びSVLR11とを含む工具径補正情報TCを生成する。
【0069】
工具径補正量演算部201は、工具軌跡補間期間SP11において設定された工具軌跡TP112と、工具軌跡TP112における制御中心点CL112と、加工面形成位置MPL112及びMPR112と、工具径補正値MVLL112及びMVLR112と、オフセット値SVLL112及びSVLR112とを含む工具径補正情報TCを生成する。オフセット値SVLL112及びSVLR112は図2に示すオフセット値SVLL及びSVLRに相当する。
【0070】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t2に対して工具軌跡補間期間SP12を設定する。工具軌跡補間期間SP12は切り替え時点t2までの所定の期間である。工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP12と工具軌跡TP11との特徴点を抽出する。工具径補正量演算部201は、抽出された特徴点に基づいて特徴曲線を設定する。工具径補正量演算部201は、特徴曲線の各構成点間の比率を一定にして工具軌跡補間期間SP12における工具軌跡TP121を設定する。工具軌跡TP121は、工具軌跡TP21と工具軌跡TP11とを段階的に切り替えるため、工具軌跡TP12と工具軌跡TP11とを補間する補間工具軌跡である。
【0071】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t1から切り替え時点t2までの期間において選択される工具軌跡TP12と、工具軌跡TP12における制御中心点CL12と、加工面形成位置MPL12及びMPR12と、工具径補正値MVLL12及びMVLR12と、オフセット値SVLL12及びSVLR12とを含む工具径補正情報TCを生成する。
【0072】
工具径補正量演算部201は、工具軌跡補間期間SP12において設定された工具軌跡TP121と、工具軌跡TP121における制御中心点CL121と、加工面形成位置MPL121及びMPR121と、工具径補正値MVLL121及びMVLR121と、オフセット値SVLL121及びSVLR121とを含む工具径補正情報TCを生成する。オフセット値SVLL121及びSVLR121は図2に示すオフセット値SVLL及びSVLRに相当する。
【0073】
工具径補正量演算部201は、切り替え時点t2以降の期間において選択される工具軌跡TP11と、工具軌跡TP11における制御中心点CL11と、加工面形成位置MPL11及びMPR11と、工具径補正値MVLL11及びMVLR11と、オフセット値SVLL11及びSVLR11とを含む工具径補正情報TCを生成する。即ち、工具径補正情報TCには、工具軌跡TP11、TP112、TP12、及び、TP121における工具径補正情報が含まれている。
【0074】
工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。加工軌跡演算部202は、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかのいずれかの切削加工補正条件を決定する。
【0075】
工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工すると決定された場合、加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、工具軌跡補間期間SP11にて、工具軌跡TP11を工具軌跡TP112に切り替えるための第5の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。また、工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP11の制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とを、工具軌跡TP112の制御中心点CL112と工具径補正値MVLL112とオフセット値SVLL112とに切り替えるための第6の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0076】
加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、切り替え時点t1にて、工具軌跡TP112を工具軌跡TP12に切り替えるための第7の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。また、工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP112の制御中心点CL112と工具径補正値MVLL112とオフセット値SVLL112とを、工具軌跡TP12の制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とに切り替えるための第8の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0077】
加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、工具軌跡補間期間SP12にて、工具軌跡TP12を工具軌跡TP121に切り替えるための第9の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。また、工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP12の制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とを、工具軌跡TP121の制御中心点CL121と工具径補正値MVLL121とオフセット値SVLL121とに切り替えるための第10の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0078】
加工軌跡演算部202は、工具径補正情報TCに基づいて、切り替え時点t2にて、工具軌跡TP121を工具軌跡TP11に切り替えるための第11の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。また、工具径補正量演算部201は、工具軌跡TP121の制御中心点CL121と工具径補正値MVLL121とオフセット値SVLL121とを、工具軌跡TP11の制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とに切り替えるための第12の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。即ち、工具径補正量演算部201は、第5〜第12の切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。
【0079】
加工軌跡演算部202は、工具径補正制御信号TSを駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、工具径補正制御信号TSに基づいて駆動制御信号CSを生成する。駆動制御部203は、駆動制御信号CSにより、加工機本体100を制御する。加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させてノズル軌跡NPを制御する。また、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡制御部300を駆動させて工具軌跡TPを制御する。
【0080】
工具径補正情報TCが切り替え補間ありのパラメータを含む場合、加工機本体100は、工具軌跡TP11を、工具軌跡補間期間SP11に設定された工具軌跡TP112を介して、工具軌跡TP12に段階的に切り替える。
【0081】
また、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とを、制御中心点CL112と工具径補正値MVLL112とオフセット値SVLL112とに変更する工具径補正を実行する。
【0082】
さらに、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL112と工具径補正値MVLL112とオフセット値SVLL112とを、制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とに変更する工具径補正を実行する。
【0083】
工具径補正情報TCが切り替え補間ありのパラメータを含む場合、加工機本体100は、工具軌跡TP12を、工具軌跡補間期間SP12に設定された工具軌跡TP121を介して、工具軌跡TP11に段階的に切り替える。また、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL12と工具径補正値MVLL12とオフセット値SVLL12とを、制御中心点CL121と工具径補正値MVLL121とオフセット値SVLL121とに変更する工具径補正を実行する。
【0084】
さらに、加工機本体100は、切り替えのタイミングで制御中心点CL121と工具径補正値MVLL121とオフセット値SVLL121とを、制御中心点CL11と工具径補正値MVLL11とオフセット値SVLL11とに変更する工具径補正を実行する。
【0085】
図6に示すフローチャートを用いて、切削加工方法の一例を説明する。CAD装置20は、ステップS1にて、最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて製品形状データSDを生成する。さらに、CAD装置20は、製品形状データSDをCAM装置21へ出力する。
【0086】
CAM装置21は、ステップS2にて、製品形状データSDに基づいて、切削加工機1の加工プログラムPP(Gコードを含む)を生成し、加工条件CPを指定する。さらに、CAM装置21は加工プログラムPPと加工条件CPとを切削加工機1のNC装置200へ出力する。
【0087】
NC装置200は、ステップS3にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工機本体100を制御してX軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させることにより、ノズル106を目的の位置へ移動させる。また、NC装置200は、ステップS4にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいてレーザ発振器10を制御することにより、レーザビームをノズル106の開口部105から射出し、加工対象物Wに照射する。ステップS3とステップS4とのタイミングは加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて制御される。
【0088】
NC装置200の工具径補正量演算部201、及び、加工軌跡演算部202には、ステップS2にてCAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力される。工具径補正量演算部201は、ステップS5にて、加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれているか否かを認識する。加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれていないと認識された場合、工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡TPを認識する。
【0089】
加工条件CPに工具軌跡切り替え情報が含まれていると認識された場合、工具径補正量演算部201は、工具軌跡切り替え情報に含まれる複数の工具軌跡TPを認識する。工具径補正量演算部201は、ステップS6にて、工具軌跡TPの切り替え時点tに対して工具軌跡補間期間SPを設定する。
【0090】
工具径補正量演算部201は、ステップS7にて、ステップS5にて認識された複数の工具軌跡TPの特徴点を抽出する。工具径補正量演算部201は、抽出された特徴点に基づいて特徴曲線を設定する。さらに、工具径補正量演算部201は、特徴曲線の各構成点間の比率を一定にして工具軌跡補間期間SPにおける工具軌跡TP(補間工具軌跡)を設定する。
【0091】
工具径補正量演算部201は、ステップS8にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、工具軌跡TPに基づく補正情報とノズル軌跡NPに基づく補正情報とを含む工具径補正情報TCを生成する。さらに、工具径補正量演算部201は工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0092】
加工軌跡演算部202には、CAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力され、工具径補正量演算部201から工具径補正情報TCが入力される。加工軌跡演算部202は、ステップS9にて、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。さらに、加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかのいずれかの切削加工補正条件を決定する。
【0093】
加工軌跡演算部202は、ステップS10にて、加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCと決定された切削加工補正条件とに基づいて工具径補正制御信号TSを生成する。さらに、加工軌跡演算部202は、工具径補正制御信号TSを駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、ステップS11にて、工具径補正制御信号TSに基づいて、加工機本体100を制御する駆動制御信号CSを生成する。駆動制御部203は駆動制御信号CSを加工機本体100へ出力する。
【0094】
加工機本体100は、ステップS12にて、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させてノズル軌跡NPを制御する。また、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡制御部300を駆動させて工具軌跡TPを制御する。
【0095】
さらに、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡TPを切り替え、かつ、切り替えのタイミングで工具径を補正する。工具径補正情報TCが切り替え補間なしのパラメータを含む場合には、駆動制御部203は工具軌跡TPを瞬時に切り替えて変更する。工具径補正情報TCが切り替え補間ありのパラメータを含む場合には、駆動制御部203は工具軌跡TPを、工具軌跡補間期間SPに設定された工具軌跡TPを介して段階的に切り替えて変更する。
【0096】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具軌跡TPに基づく補正情報とノズル軌跡NPに基づく補正情報とを含む工具径補正情報TCを生成する。1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具径補正情報TCに基づいて加工ユニット104の駆動と工具軌跡制御部300の駆動とを制御することにより、ノズル軌跡NPと工具軌跡TPとを制御する。従って、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、切削工具に相当する工具軌跡、または、ノズル106と加工テーブル101との相対位置が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる。
【0097】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、加工条件CPに切削加工中に工具軌跡を変更するための切削工具情報が含まれている場合、切削加工機1は、複数の工具軌跡TPを含む工具径補正情報TCを生成する。さらに、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具径補正情報TCに基づいて、工具軌跡TPを切り替えるための切り替え情報を含む工具径補正制御信号TSを生成する。さらに、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具径補正制御信号TSに基づいて加工機本体100を制御し、工具軌跡TPを切り替える。
【0098】
従って、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、加工条件CPに切削工具情報が含まれている場合においても、工具径補正情報TCに基づいて工具軌跡TPを切り替えることにより、工具径を精度よく補正することができる。
【0099】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0100】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具軌跡補間期間SP11及びSP12に1つの補間工具軌跡を設定したが、複数の補間工具軌跡を設定してもよい。
【0101】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、レーザ加工機及びレーザ加工方法を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明はウォータジェット加工機に対しても適用可能である。
【0102】
本願の開示は、2018年7月6日に出願された特願2018−128923号に記載の主題と関連しており、それらの全ての開示内容は引用によりここに援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6