(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0013】
1.天然木複合素材
本発明の天然木複合素材10は、天然木自在シート12とメッシュ素材14とが積層したものである。本発明について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係る天然木複合素材10の図解図を示す。
【0014】
天然木複合素材10は、耐折強さを有する天然木自在シート12と天然木自在シート12の裏面側に設けられ、塑性変形するメッシュ素材14とを備える。天然木自在シート12とメッシュ素材14とは、例えば、天然木自在シート12の裏面、すなわち成型品の表面になる面とは反対側の面と、メッシュ素材14の天然木自在シート12側の面とが、接着剤等によって密着して貼付されている。なお、接着剤を使用する場合は、既知の接着剤を用いることができる。天然木複合素材10は、メッシュ素材14をプレス成形等により塑性変形させることにより、メッシュ素材に追従して天然木自在シート12も変形し、塑性変形させたあと樹脂成形をするまでの期間、塑性変形後の形状を維持することができる。
【0015】
(1)天然木自在シート
天然木複合素材10の天然木自在シート12は、例えば、天然木薄板材の細胞中、細胞間隙、導管部、篩管部等の空隙に合成樹脂と線状高分子化合物とを充填させたものである。天然木自在シート12は、天然木薄板材の細胞中、細胞間隙、導管部、篩管部等の空隙に合成樹脂と高分子化合物とが充填されるため、柔軟性および耐折性を有する。
【0016】
天然木自在シート12に用いられる天然木薄板材の厚さは、0.1mm以上5.0mm以下である。好ましくは、天然木薄板材の厚さは、0.15mm以上0.20mm以下である。0.1mmより薄い単板は、機械的には製造することはできず、5.0mmより厚い単板は、合成樹脂等を充填させるのが困難だからである。なお、厚さを調整するために、バフ研磨等を行うこともある。また、天然木薄板材の木の種類は限定されるものではない。例えば、ホワイトシカモア、マホガニー、バーズアイメイプル、アニグレ、チーク、竹などが用いられる。
【0017】
天然木自在シート12に用いられる合成樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等である。
また、合成樹脂を主体とし、線状高分子化合物が並存する。線形高分子化合物は、例えば、常温での蒸気圧が1.3kPa以下である線形高分子化合物である。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等である。木材中に前記線形高分子化合物が収着されると、木材の骨格構造は膨潤し、合成樹脂が充填されやすくなるとともに、湿潤されることによる柔軟性も増すことによって、加工性も向上する。
【0018】
(2)メッシュ素材
天然木複合素材10のメッシュ素材14は、例えば金属製や樹脂製の複数の開口を有するシートである。メッシュ素材14は天然木自在シート12の裏面側に設けられている。天然木自在シート12のみの場合は、変形させると応力が残留するため、形状を維持することができない。しかし、メッシュ素材14は、複数の開口を有しており形状に合わせて開口を変更することができるため、応力が残留せず、塑性変形させても形状を維持することができる。メッシュ素材14を天然木自在シート12の裏面側に設けることにより、天然木自在シート12を補強するとともに、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを塑性変形させて曲率が大きく複雑な形状をプレス成形等により成形したとしても、天然木複合素材10に加わる応力が分散され、天然木複合素材10の追従性が良く複雑な形状を成形することができる。また、天然木自在シート12は、表面にある天然木薄板材の細胞中や細胞間隙等の空隙の約70%しか樹脂が充填されない場合があり、プレス成形等により成形したとしても、成形後に天然木薄板材の空隙から空気中の水分を取り込み、天然木薄板材が弾性変形してしまうため、元の形状に戻りやすく、プレス成形等によって予備賦形した形状が維持できないという問題があったが、メッシュ素材14を貼付することにより、メッシュ素材14はほぼ永久に塑性変形するため、空気中の水分を吸収して天然木自在シート12が弾性変形したとしても、天然木複合素材10の形状を維持することができる。
【0019】
また、メッシュ素材14の開口率は25%以上52%以下であることが好ましい。開口率が25%より小さいメッシュ素材を使用すると、天然木複合素材10に加わる応力を分散させることができず、メッシュ素材の開口率を52%以上にすると、天然木自在シート12の弾性力が大きくなり、天然木自在シート12がメッシュ素材14を引っ張って、天然木複合素材10の形状を維持できないからである。さらに、開口を有しないシートよりも軽い成型品を得ることができる。
さらに、メッシュ素材14の厚さは、0.050mm以上0.630mm以下であることが好ましい。
【0020】
金属製のメッシュ素材は、例えば、パンチングメタル、平織金網、綾織金網などの複数の開口を有するものである。開口の形状は、例えば、円形や、三角形、四角形、六角形などの多角形の形状を有することができ、これらを組み合わせて用いることも可能である。特に、金属製のメッシュ素材を用いることにより、金属製のメッシュ素材が塑性変形するため、予備賦形した形状を維持することができる。
【0021】
さらに、材質は、鉄、銅、ニッケル、アルミ、タングステン、その他これらの合金であるステンレス、真鍮など種々の材質を用いることができる。特に、錆びにくいステンレス製のメッシュ素材を用いることが好ましい。また、金属製のメッシュ素材の厚さは0.03mm以上0.12mm以下であることが好ましい。金属製のメッシュ素材の厚さが0.03mm以下になると、天然木自在シート12の弾性変形に追従してしまい予備賦形した形状が維持できなくなるからである。また、金属製のメッシュ素材の厚さが0.12mm以上になると、厚みが増すため成形性が悪くなるからである。
【0022】
特に、金属製のメッシュ素材を使用する場合、金属製のメッシュ素材の開口率は25%であることが好ましい。開口率を25%にすることにより、残留応力を残すことなく変形させることができる。
【0023】
樹脂製のメッシュ素材としては、例えば、パンチングされたプラスチック板、樹脂製ネットなどの複数の開口を有するものである。開口の形状は、例えば、円形や、三角形、四角形、六角形などの多角形の形状を有することができ、これらを組み合わせて用いることも可能である。樹脂製のメッシュ素材として樹脂製のネットを用いる場合は、樹脂製の糸の交点を溶着しても良い。
【0024】
また、材質は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂など種々の材質を用いることができる。特にガラス転移点が室温(約20℃)よりも高い樹脂、または、結晶化が可能な樹脂であることが好ましい。
【0025】
ガラス転移点が室温(約20℃)よりも高い樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等である。メッシュ素材14のガラス転移点が室温よりも高い樹脂である場合、予備賦形時に金型内で加熱されることによって、樹脂製のメッシュ素材も加熱されゴム状態となり、冷却することによって予備賦形用の金型の形状に塑性変形するため、予備賦形した形状を維持することができる。さらに、ガラス転移点が室温(約20℃)以上70℃以下である樹脂を用いることが好ましい。ガラス転移点が70℃以上となる樹脂を使用すると、予備賦形時に金型を70℃以上にしなければならず、天然木自在シート12に熱による損傷を与えるからである。
【0026】
また、結晶化が可能な樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等である。メッシュ素材14のガラス転移点が室温よりも低い樹脂であっても、結晶化が可能な樹脂である場合、予備賦形のときに結晶が移動するため、予備賦形した形状を維持することができる。
【0027】
特に、樹脂製のメッシュ素材を使用する場合、樹脂製のメッシュ素材の開口率は42%以上52%以下であることが好ましい。開口率が42%より小さい場合、例えば、樹脂板(開口率0%)を用いる場合は、樹脂板を折った部分のみ変形する。つまり、折った部分のみに応力が集中し、樹脂板は折れてしまう可能性がある。メッシュ素材を用いることにより、メッシュ素材に加わる力を分散することができ、形状を容易に付与することが可能となる。また、開口率が52%より大きいの場合は、天然木自在シート12の弾性変形に追従してしまい、予備賦形した形状が維持できないからである。
【0028】
2.天然木複合素材を用いた成型品
天然木複合素材10は、家具、家電、車の内外装等の表面に用いることにより、天然木複合素材10を表面に使用した成型品を得ることができる。天然木複合素材10を用いることによって、曲率が大きい部分、例えば携帯電話の角部であっても、表面の天然木自在シートが折損、破損することなく、天然木自在シート12が追従でき、天然木自在シート12を表面に有する成型品を得ることができる。また、家具、家電、車の内外装等の人の目につく部分に天然木複合素材10を用いることによって、天然木によるヒーリング効果を得つつ、天然木よりも軽い製品を製造することが可能である。
【0029】
3.天然木複合素材の製造方法
本発明に係る天然木複合素材10の製造方法について説明する。
【0030】
まず、天然木自在シート12を準備する。天然木自在シート12は耐折性を有する。天然木自在シート12は既知の方法(特許文献1等)により製造される。
【0031】
次に、天然木自在シート12の裏面側に接着剤(不図示)を塗布し、メッシュ素材14を貼り付ける。接着剤は既知の接着剤を用いることができる。天然木自在シート12とメッシュ素材14との間にコットンや不織布などの異種素材を介して接着しても良い。
【0032】
最後に、圧着乾燥させることにより、天然木複合素材10が製造される。
【0033】
4.天然木複合素材を用いた成型品の製造方法
天然木複合素材10を表面に有する成型品を製造する方法について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、本発明に係る天然木複合素材から予備賦形品を製造する工程を示す図である。
図5は、本発明に係る天然木複合素材から製造した予備賦形品を用いて成型品を製造する工程を示す図である。
【0034】
図4に示すように、天然木複合素材10を例えば、プレス加工等により予備賦形して予備賦形品24を得る。プレス加工により予備賦形する際は、金型22に天然木複合素材10を設置したあと、金型22の温度を上げて、天然木複合素材10を塑性変形させる。その後、金型22が冷めるまで放置し、金型22から取り出す。このようにして予備賦形品24を得ることができる。本発明の実施の形態では予備賦形品24を得るために、天然木複合素材10をプレス成形により予備賦形しているが、プレス成形以外の成形方法、例えば、真空成形、圧空成形、エンボス成形、曲げ加工等によっても天然木複合素材10を予備賦形させることができる。
【0035】
そして、予備賦形品24を用いて樹脂成形を行い、成型品34を得る。樹脂成形の方法は、例えば、射出成形、真空成形、圧空成形などがある。
射出成形によって成型品を製造する場合は、
図5(A)に示すように、作製した予備賦形品24を射出成形用金型32に設置して、天然木複合素材10の裏面側に熱可塑性樹脂を射出し、冷却することにより成型品34が製造される。
真空成形によって成形品を製造する場合は、
図5(B)に示すように、天然木複合素材10の裏面側に接着剤等を塗布し、天然木複合素材10と基材36との間の空気を吸引することで、天然木複合素材10を基材36に密着させることにより、成型品34が製造される。
圧空成形によって成型品を製造する場合は、
図5(C)に示すように、天然木複合素材10の裏面側に接着剤等を塗布し、圧縮した空気を天然木複合素材10の天然木自在シート12側から基材36に押し付けることで、天然木複合素材10を基材36に密着させることにより、成型品34が製造される。
【0036】
5.変形例
本発明の実施の形態に係る天然木複合素材10の変形例について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明に係る天然複合素材の変形例10Aの模式図である。なお、本発明の変形例である天然木複合素材10Aは、天然木複合素材10の構成であるメッシュ素材14の裏面側にシート材16は貼付されていることを除いて、
図1を参照して説明した天然木複合素材10と同様の構成を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0037】
天然木複合素材10Aは、天然木自在シート12とメッシュ素材14とシート材16とから構成される。
【0038】
天然木複合素材10Aのシート材16は、例えば、コットン、不織布、和紙、洋紙、合成紙、帆布、ピッグスキン、合成樹脂フィルムなどである。メッシュ素材14の裏面側にシート材16を貼付することにより、天然木自在シート12とメッシュ素材14とが分離してしまうことを防ぐことができる。シート材16を貼付する際には、既知の接着剤を用いることができる。また、メッシュ素材14として金属製のメッシュ素材を使用する場合、金属製のメッシュ素材の端部が鋭い刃状になっているため、作業者が怪我をしてしまう虞がある。メッシュ素材14の裏面側にシート材16を貼付することにより、メッシュ素材の端部を覆うことができるため、より安全に作業をすることができる。また、天然木複合素材10Aの成形性を確保するために、シート材16はできる限り薄い方が好ましい。シート材16の厚さは例えば、0.1mm以下であることが好ましい。
【0039】
天然木複合素材10Aのシート材16は、コットンや化学繊維の織物であることが好ましい。シート材16が織物である場合、縦糸と横糸とを交差させて織っているため、糸同士のずれを低減することができる。したがって、天然木自在シート12が空気中の水分を吸収して弾性変形しようとしても、メッシュ素材14だけでなく、シート材16である織物も天然木自在シート12の弾性変形を抑制するため、天然木複合素材10Aの弾性変形を抑制することができる。したがって、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを貼付させた天然木複合素材10よりも、さらにシート材16としてコットン等の織物を貼付させた天然木複合素材10Aの方が、予備賦形した形状をより長時間維持することができる。
【0040】
メッシュ素材14の裏面側にシート材16を貼付する場合は、メッシュ素材14の開口率は25%以上60%以下であることが好ましい。開口率が25%より小さいメッシュ素材を使用すると、天然木複合素材10Aに加わる応力を分散させることができず、開口率が60%より大きいメッシュ素材を使用すると、天然木自在シート12の弾性力が大きくなり、天然木自在シート12がメッシュ素材14を引っ張って、天然木複合素材10Aの形状を維持できないからである。さらに、メッシュ素材14の厚さは、0.050mm以上0.630mm以下であることが好ましい。シート材16を貼付することにより、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを貼着させた天然木複合素材10よりも開口率または厚さが広い範囲のメッシュ素材14を用いることができる。
【0041】
メッシュ素材14として金属製のメッシュを用いる場合は、金属製のメッシュ素材14の開口率は25%以上60%以下であることが好ましい。シート材16を貼付することにより、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを貼着させた天然木複合素材10よりも開口率または厚さが広い範囲のメッシュ素材14を用いることができる。
【0042】
メッシュ素材14として樹脂製のメッシュを用いる場合は、樹脂製のメッシュ素材14の開口率は38%以上56%以下であることが好ましい。シート材16を貼付することにより、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを貼着させた天然木複合素材10よりも開口率または厚さが広い範囲のメッシュ素材14を用いることができる。
【0043】
6.天然木複合素材10Aを用いた成型品
天然木複合素材10Aは、天然木複合素材10と同様に、家具、家電、車の内外装等の表面に用いることにより、天然木複合素材10Aを表面に使用した成型品を得ることができる。天然木複合素材10Aを用いることによって、曲率が大きい部分、例えば携帯電話の角部であっても、表面の天然木自在シートが折損、破損することなく、天然木自在シートが追従でき、天然木自在シートを表面に有する成型品を得ることができる。また、家具、家電、車の内外装等の人の目につく部分に天然木複合素材10Aを用いることによって、天然木によるヒーリング効果を得つつ、天然木よりも軽い製品を製造することが可能である。
【0044】
7.天然木複合素材10Aの製造方法
本発明に係る天然木複合素材10Aの製造方法について説明する。本発明の変形例である天然木複合素材10Aは、天然木複合素材10の構成であるメッシュ素材14の裏面側にシート材16は貼付されていることを除いて、天然木複合素材10と同様の構成を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0045】
まず、天然木自在シート12とメッシュ素材14とシート材16とを準備する。次に、天然木自在シート12の裏面側に接着剤(不図示)を塗布し、メッシュ素材14を貼り付ける。そして、メッシュ素材14の裏面側に接着剤(不図示)を塗布し、シート材16を貼り付ける。接着剤は既知の接着剤を用いることができる。天然木自在シート12とメッシュ素材14との間にコットンや不織布などの異種素材を介して接着しても良い。最後に、圧着乾燥させることにより、天然木複合素材10Aが製造される。
【0046】
8.天然木複合素材10Aを用いた成型品の製造方法
天然木複合素材10Aを表面に有する成型品を製造する方法について説明する。天然木複合素材10Aは、天然木複合素材10の構成であるメッシュ素材14の裏面側にシート材16は貼付されていることを除いて、天然木複合素材10と同様の構成を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。天然木複合素材10と同様にプレス加工等により予備賦形して予備賦形品を得た後、射出成形、真空成形、または圧空成形などの樹脂成形を行うことで成型品が製造される。
【0047】
9.実験データ
本発明に係る実施例1ないし実施例22、比較例1について以下の実験を実施し、予備賦形後1ヶ月間、予備賦形した形状が維持されるか確認をした。使用したメッシュ素材とその変化について、表1に示す。実施例1ないし実施例22については、それぞれ開口率および厚みが異なるメッシュ素材を使用した。
【0048】
また、上記各試料は温度23℃(±1℃)、湿度50%の室内の平らな場所に並べて保管した。予備賦形時、予備賦形後1ヶ月における各試料の幅方向の長さW(
図3(a)参照)、を測定した。測定は三次次元リアルタイムモーション計測システム(株式会社ノビテック製)を使用して行った。
【0050】
図6に、上記表1の幅方向の長さWのそれぞれの変化量を示す。
図6は、本発明に係る天然複合素材10の実験において、予備賦形後1ヶ月における幅方向Wの変化を示す図である。なお、幅方向Wの変化が比較例よりも小さいものを良品として判断した。
【0051】
図6より、天然木自在シート12とメッシュ素材14のみを用いたとき、すなわち、シート材16を使用しなかったときは、開口率が25%以上52%以下のメッシュ素材を使用した場合、良品となった。また、天然木自在シート12とメッシュ素材14とシート材16とを使用したときは、開口率が25%以上60%以下で、厚みが0.050mm以上0.630mm以下の場合、良品となった。シート材16としてコットンを使用したときは、開口率が25%以上60%以下で、厚みが0.050mm以上0.630mm以下の場合、良品となった。シート材16として不織布を使用したときは、開口率が25%以上60%以下で、厚みが0.050mm以上0.630mm以下の場合、良品となった。
【0052】
以上の結果より、天然木自在シート12の裏面側に金属製または樹脂製のメッシュ素材14を貼付することにより、予備賦形した形状を一定期間(予備賦形したあと樹脂成形するまでの期間)維持することができる。天然木自在シート12は、表面にある天然木薄板材の細胞中や細胞間隙等の空隙の約70%しか樹脂が充填されない場合があり、天然木自在シート12のみの場合は、予備賦形したあと樹脂成形までに期間があいてしまうと、天然木自在シート12の天然木薄板材の空隙から空気中の水分を取り込み、天然木薄板材が弾性変形してしまうため、プレス成形等によって予備賦形した形状が維持できないという問題があったが、天然木自在シート12の裏面側にメッシュ素材14を貼付した天然木複合素材10は、プレス加工等をすることにより、メッシュ素材14が容易に塑性変形することができる。そして、塑性変形させて形状を付与した天然木複合素材10は一定時間、すなわち予備賦形した後、樹脂成形(射出成形等)をするまでの時間、形状を維持することができる。そのため、天然木複合素材10を予備賦形した後樹脂成形(射出成形等)を行うまでに時間があいたとしても、射出成形を行う場合は射出成形の金型に収まり、真空圧空成形を行う場合は成型品に貼り付ける際に天然木自在シート12が割れることなく貼着できる。
【0053】
特に、メッシュ素材14として開口率25%以上52%以下の金属製または樹脂製のメッシュ素材を貼付することにより、予備賦形した形状をより維持することができる。
【0054】
また、メッシュ素材14の裏面側にコットンまたは不織布のシート材16を貼付することにより、予備賦形した形状をより維持することができる。特に、開口率が25%以上60%以下で、厚みが0.050mm以上0.630mm以下のメッシュ素材14にシート材16として不織布またはコットン製を貼付することにより、予備賦形した形状をより維持することができる。シート材16を貼付することにより、天然木自在シート12とメッシュ素材14とを貼着させた天然木複合素材10よりも開口率または厚さが広い範囲のメッシュ素材14を用いることができる。
【0055】
さらに、天然木複合素材10、10Aを家具、家電、車の内外装等の表面に用いることにより、天然木複合素材10、10Aを表面に使用した成型品を得ることができる。天然木複合素材10、10Aを用いることによって、曲率が大きい部分、例えば携帯電話の角部であっても、表面の天然木自在シートが折損、破損することなく、天然木自在シート12が追従でき、天然木自在シート12を表面に有する成型品を得ることができる。また、家具、家電、車の内外装等の人の目につく部分に天然木複合素材10、10Aを用いることによって、天然木によるヒーリング効果を得つつ、天然木よりも軽い製品を製造することが可能である。
【0056】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
天然木の風合いや手触り感が残存しており、予備賦形をしたあと樹脂成形をするまでの期間、予備賦形により成形した形状を維持することができる天然木複合素材を提供すること。
耐折強さを有する天然木自在シート12と、天然木自在シート12の裏面側に設けられ、塑性変形するメッシュ素材14とを備える天然木複合素材10であって、メッシュ素材14を塑性変形させることにより、メッシュ素材14に追従して天然木自在シート12も変形し、塑性変形させたあと樹脂成形をするまでの期間、塑性変形後の形状が維持されることを特徴とする。