(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719786
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ロータリー式炒め・焙煎装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20200629BHJP
A23N 12/10 20060101ALI20200629BHJP
A47J 37/04 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
A47J27/14 Z
A23N12/10 A
A23N12/10 Z
A47J37/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-22202(P2019-22202)
(22)【出願日】2019年2月11日
(62)【分割の表示】特願2016-250600(P2016-250600)の分割
【原出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2019-88880(P2019-88880A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391040571
【氏名又は名称】クマノ厨房工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106895
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】牧田 哲博
【審査官】
八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−038349(JP,A)
【文献】
特開昭53−093080(JP,A)
【文献】
特開平07−320847(JP,A)
【文献】
実開昭53−035077(JP,U)
【文献】
特開2004−008385(JP,A)
【文献】
特開平09−329503(JP,A)
【文献】
特開平11−211577(JP,A)
【文献】
特開2000−206022(JP,A)
【文献】
特開2008−026084(JP,A)
【文献】
特開平11−051780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/08−12/10
A47J 27/14
A47J 37/04
G01K 1/14
G01K 7/08
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を閉鎖端とし他端を材料受口とした略円筒形状であり、略水平に横倒しにされ、当該円筒形状の閉鎖端外側軸心に片持突着された中空の回転軸と、前記材料受口近辺の外周面下部に配置された鍋受ローラーとで支持された鍋と、当該鍋を内部に収納する筐体と、当該鍋を回転させるモーターと、当該鍋を加熱するバーナーと、当該鍋内部の温度を検出する熱電対と、当該熱電対の検出結果に基づいて前記バーナーの火力を制御するバーナーコントローラーと、を有してなるロータリー式炒め・焙煎装置において、
前記熱電対は、導電性の材料で形成された前記鍋と、前記バーナーで加熱される前記鍋の内周面底部に一端が密着又は溶接されている1本の金属線とからなること、
前記金属線は前記鍋の内側面から少し離れて設けられた保護管内に絶縁されて収納されているとともに、他端が前記保護管から出て前記回転軸の末端部位に取り付けられたスリップリングに至っていること、
前記保護管の一端は前記鍋の内周面底部に接続しているとともに、他端は前記鍋の閉塞端内側軸心を貫通して前記回転軸内に貫挿されていること、
前記バーナーコントローラーは、前記熱電対の種類によって前記バーナーの出力の調整を行うとともに前記筐体の一部と導線で接続されていること、
前記鍋受けローラー及び前記筺体は導電性の材料で形成されていて、前記鍋受けローラーと筺体は接触していること、
及び前記スリップリングは金属ブラシと接触し、当該金属ブラシと前記バーナーコントローラーとが導線で接続されていること、
を特徴とするロータリー式炒め・焙煎装置。
【請求項2】
前記鍋及び鍋受ローラーはステンレスで形成されているとともに、前記金属線はアルメルで形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のロータリー式炒め・焙煎装置。
【請求項3】
前記保護管の内部には、酸化マグネシウムが充填されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のロータリー式炒め・焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼ソバ、野菜炒め、炒飯、スパゲッティ等の食材を炒めたり、茶葉、米粉、麦、塩、ゼラチン、豆・ナッツ類等を焙煎するのに使用されるロータリー式炒め・焙煎装置に関し、特に、回転鍋の温度を測定して制御するロータリー式炒め・焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炒められる食材が入れられる鍋と、その鍋を回転させるモータと、鍋を加熱するバーナーとからなるロータリー式炒め装置がある。一般に、ロータリー式炒め装置の鍋は、一般家庭で用いられるように縦向きに置かれるのではなく、横に寝かせた状態で支持され、鍋の回転軸が地面に水平となるように回転する。そして、食材を撹拌混合するための羽根を鍋の中に配置し、調理時にその羽根を回転させて、短時間で食材を均一に撹拌混合することで、良好な調理をしようとするものである。
【0003】
特に炒め物においては、短時間の内に高温で食材を処理する必要があるが、鍋の温度が高すぎると焦げが多くなり、鍋の温度が低すぎると油が食材に吸収されずべとついてしまう。従って、従来のロータリー式炒め装置では、鍋の温度を認識することはできず、鍋の温度調整を調理人の感に頼っていたため、良好に炒め調理をすることが容易でなく、そのロータリー式炒め装置を使いこなすのが困難であり長期間に亘る修練が必要であった。
【0004】
そこで、出願人は、ロータリー式炒め装置における回転鍋の内側の検出した温度に基いて回転鍋の温度を制御することで、良好な炒め調理を自動的に行うことを可能とするロータリー式炒め装置を開発した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−38349
【0006】
すなわち、特許文献1には、鍋10の内側に鍋10の温度を検出する異質の2本の金属からなる熱電対7が密着されており、更に熱電対7の上にステンレス板8が被せられ、ステンレス板8の全ての縁が鍋10の内側に溶接されて、ステンレス板8と鍋10の内側との間に熱電対7が密封されてなるロータリー式炒め装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、熱電対7はステンレス板8内に2本の金属線を使用し、かつそれぞれの金属線を互いに絶縁しなければならないため、それぞれの金属線の太さを細くする必要があり、高温の鍋内においては断線や故障などのトラブルが起きやすく、その度に修理が必要となり、メンテナンスに手間と費用がかかってしまうという問題点があった。
【0008】
また、熱電対7の出力として2本の導線をスリップリング6まで引き込まなければならず、構造が複雑となり、その製造にも手間と費用がかかっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、起電力を発生させる金属線を1本にすることにより、構造を簡略化し、製造コストを下げるとともに、金属線の強度を強化し、断線等の故障がしにくいロータリー式炒め・焙煎装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第1の特徴は、一端を閉鎖端とし他端を材料受口とした略円筒形状であり、略水平に横倒しにされ、当該円筒形状の閉鎖端外側軸心に片持突着された中空の回転軸と、前記材料受口近辺の外周面下部に配置された鍋受ローラーとで支持された鍋と、当該鍋を内部に収納する筐体と、当該鍋を回転させるモーターと、当該鍋を加熱するバーナーと、当該鍋内部の温度を検出する熱電対と、当該熱電対の検出結果に基づいて前記バーナーの火力を制御するバーナーコントローラーと、を有してなるロータリー式炒め・焙煎装置において
、前記熱電対は、導電性の材料で形成された前記鍋と、前記バーナーで加熱される前記鍋の内
周面底部に一端が密着又は溶接されている1本の金属線とからなること、前記金属線は
前記鍋の内側面から少し離れて設けられた保護管内に絶縁されて収納されている
とともに、他端が前記保護管から出て前記回転軸の末端部位に取り付けられたスリップリングに至っていること、
前記保護管の一端は前記鍋の内周面底部に接続していること、及び前記バーナーコントローラーは、前記熱電対の種類によって前記バーナーの出力の調整を行うことにある。
【0011】
また、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第2の特徴は、前記第1の特徴における前記鍋及び軸受ローラーがステンレスで形成されているとともに、前記金属線がアルメルで形成されていることにある。
【0012】
さらに、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴における前記保護管の内部に、酸化マグネシウムが充填されていることにある。
【0013】
さらにまた、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第4の特徴は、前記第1から第3までのいずれか1の特徴における前記保護管の他端が、前記鍋の閉塞端内側軸心を貫通して前記回転軸内に貫挿されていることにある。
【0014】
また、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第5の特徴は、前記第1から第4までのいずれか1の特徴における前記回転軸の末端部位にスリップリングが取り付けられていて、前記金属線の他端は前記保護管から出て前記スリップリングに至ることにある。
【0015】
さらに、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第6の特徴は、前記第1から第5までのいずれか1の特徴における前記筐体が、導電性の材料で形成されているとともに、前記鍋受ローラーが接触していること、及び当該筐体の一部と前記バーナーコントローラーとが導線で接続されていることにある。
【0016】
さらにまた、本発明に係る本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第7の特徴は、前記第1から第6までのいずれか1の特徴における前記スリップリングが金属ブラシと接触し、当該金属ブラシと前記バーナーコントローラーとが導線で接続されていることにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱電対による熱センサーに利用する金属線を1本にすることで、極めて簡単な構造で熱センサーを製造することができるため、ロータリー式炒め・焙煎装置の製造コストをおさえることができる。
【0018】
また、金属線を1本にすることで、金属線を太くすることができるため、耐久性に優れた熱センサーを得ることができ、断線や故障などのトラブルの発生率を格段に低くすることができるロータリー式炒め・焙煎装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本願発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の断面側面図である。
【
図2】本願発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の正面図である。
【
図3】本願発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第1の実施例における鍋の簡略した正面図である。
【
図4】本願発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第2の実施例における鍋の簡略した正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
なお、本発明装置は、鍋を自動的に回転させつつ鍋を熱するバーナーの火力をその鍋の温度に基いて制御することで、炒め調理又は焙煎を短時間でかつむらなく良好に行うものであるが、本実施形態例では、鍋を横倒しにして支持する形態のロータリー式炒め・焙煎装置を代表例として説明するもこれらに限定されるものではなく、鍋の中心軸を斜めにして支持する形態、又は鍋を横倒しにせずに立てた状態で支持する形態のロータリー式炒め・焙煎装置に提供することができる。
【0022】
図中1は、本実施形態例のロータリー式炒め・焙煎装置の断面側面図である。図中11は材料が入れられる鍋、1は鍋11の鍋底中心部位に軸心を当該鍋11の軸心延長線上に一致して接続された中空シャフト、20は鍋11を回転させるモータ、21はモータ20の回転を中空シャフト1に伝達する鍋回転用駆動チェーン、30は鍋11を加熱するバーナー、40は本ロータリー式炒め・焙煎装置の導電性の筐体、41は筐体40に設けられた排気口である。
【0023】
鍋11は、一端を閉塞端とし他端を材料受口12とした略円筒形状をしており、材料受口12が図面左側となるように横倒しにされている。鍋11は、導電性の部材で形成されていて、例えばステンレス等の軽量の部材が望ましい。なお、本ロータリー式炒め・焙煎装置の稼働中においては、材料受口12に鍋蓋(図示せず)が被せられる。
【0024】
また、鍋11は、当該鍋11の材料受口12寄りの外周面下部に配置され鍋11を回動自在に支持する鍋受けローラー13と、当該鍋11の円筒形状の閉鎖端外側軸心延長線上に片持突着された中空シャフト1とで、回動自在に支持されている。中空シャフト1は、筐体40に取り付けられたフランジ型ベアリング14で回動自在に貫通支持され、かつ中空のチェーン・スプロケット15及び円筒状のスリップリング5に挿通されている。スリップリング5は金属ブラシ50を備えている。51は金属ブラシ50と温度調節器53とを結ぶ導線である。
【0025】
モータ20が回転すると、モータ20の力が鍋回転用駆動チェーン21を介してチェーン・スプロケット15に伝達されて中空シャフト1が回転する。中空シャフト1には回動自在に支持されている鍋11が軸心を共通にして一体固着されているので、中空シャフト1が回転すると鍋11も回転する。
【0026】
鍋受けローラー13は、導電性の材料で形成されており、例えばスレンレス等の軽量の部材が望ましい。また、鍋受けローラー13は、筐体40に支持されて取り付けられている。
【0027】
図中、2は内部に収納したセンサーとしての金属線3が傷まないように保護するための保護管であり、その先端部2Aは、バーナー30により加熱される鍋11の内周面底部11Aに接触している。一方で、保護管2の後端部2Bは、鍋11の鍋底中心部位の軸心を貫通し、かつ中空シャフト1、チェーン・スプロケット15の中空部位、及びスリップリング5を貫通して設けられている。
【0028】
保護管2は、耐久性のある金属、例えばステンレス等のパイプで形成されるのが望ましい。図示の例では、保護管2は、鍋11の内側面から少し離れて設けられているが、鍋11の内側面に密着させてもよい。
【0029】
第1の実施例においてセンサーは、1本の金属線3からなり、保護管2の内部に充填された酸化マグネシウムなどの絶縁性部材により保護管2内で絶縁されている。金属線3の先端部3Aは、保護管2と同様に、バーナー30により加熱される鍋11の内周面底部11Aに接触し、温度計測点(温接点)となっている。先端部3Aは図示の例では、内周面底部11Aと溶接されているが、圧力をかけて内周面底部11Aと密着させれば、溶接することを要しない。
【0030】
一方で、金属線3の後端部3Bは、保護管2を貫通してスリップリング5内まで続いており、保護管2から出てスリップリング5と接続されている。図示の例では、保護管2は鍋11内から中空シャフト1を介してスリップリング5まで挿通されているが、金属線後端部3Bがスリップリング5に接続されていればよく、例えば保護管2の後端部を鍋11の鍋底中心部位に溶接し、金属線3を直接中空シャフト1内に絶縁して通しスリップリング5に接続してもよい。
【0031】
センサーに使用される金属線3は、鍋11とは異なる金属で形成されており、それ以外の金属であれば材質は特に問わない。代表的な例としては、アルメル等があげられる。また、図中52は、筐体40と温度調節器53を結ぶ導線である。
【0032】
本発明では、鍋11と金属線3とで熱電対を構成して起電力を発生させる。鍋11はアースとしての役割を有し、鍋受けローラー13や中空シャフト1及びベアリング14等を通して筐体40と導通し、導線52を通して筐体40の外側に配置されたバーナーコントローラ53と接続されている。一方、金属線3はスリップリング5及び金属ブラシ50を通して導線51によりバーナーコントローラー53と接続されている。
【0033】
バーナーコントローラー53は、鍋11と金属線3とで構成される熱電対の起電力を検知して温接点の温度を測定し、バーナー30の火力を制御して温度を調整し、鍋11の温度が高すぎて焦げが多くなること、及び鍋11の温度が低すぎて油が食材に吸収されずべとついてしまうことなどを防ぐ。バーナーコントローラー53は、熱電対の種類によって出力の調整を行い、バーナー30に適切な出力を行うようになっている。54は、バーナーコントローラー53の制御に基いてバーナー30に対するガスの供給量を調節する電磁弁である。
【0034】
図中、42は金属ブラシ5の台座であり、筐体40に固定されて支持されている。台座42は絶縁性の部材で構成されている。
【実施例2】
【0035】
図4は本発明に係るロータリー式炒め・焙煎装置の第2の実施例を示したものであり、鍋11の簡略正面図である。本実施例では、センサーとして金属線3の先端部3Aと鍋11の内周面底部11Aにそれらと異種の金属から構成される金属線4の先端部4Aを温接点にて接合し、一方で金属線4の後端部4Aを保護管2の内周壁面の一部に接合したものである。金属線4は先端部4A及び後端部4Bを除いて保護管2内にて絶縁されている。また、それぞれの接合部は溶接により密着するのが望ましい。
【0036】
本実施例においては、センサーとして金属線3と金属線4とが熱電対を構成している。金属線4のアースとしては保護管2を利用し、実施例1と同様に鍋11を通して、鍋受けローラー13や中空シャフト1及びベアリング14等を介して筐体40と導通し、導線52を通してバーナーコントローラ53と接続されている。
【0037】
第2の本実施例における熱電対としては、様々な金属線の組み合わせが考えられるが、金属線3をアルメルとし、金属線4をクロメルとする、いわゆるK熱電対を利用するのが望ましい。
【0038】
以上、本発明の実施例につき図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載した構成の範囲内において様々な態様で実施することができる。例えば、上述の実施形態では、鍋11を鍋受けローラー13と回転軸1の2箇所で支持する構成としたが、鍋受けローラー13を複数設けてもよく、また鍋受けローラー13の代わりに他の導電性の支持手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 中空シャフト
2 保護管
3、4 金属線
5 スリップリング
11 鍋
12 材料受口
13 鍋受けローラー
14 フランジ型ベアリング
15 チェーン・スプロケット
20 モーター
21 駆動チェーン
30 バーナー
40 筐体
41 排気口
42 台座
50 金属ブラシ
51、52 導線
53 温度調節器