特許第6719944号(P6719944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6719944-支柱受け床下地構造および支持部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719944
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】支柱受け床下地構造および支持部材
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20200629BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   E04F11/18
   E04B1/00 501L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-71444(P2016-71444)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179988(P2017-179988A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】岡尾 健二
(72)【発明者】
【氏名】町田 眞
(72)【発明者】
【氏名】吉森 理
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−117479(JP,A)
【文献】 実公昭57−059696(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
E04B 1/38−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱受け部が床部の縁の側に留め付けられる支柱受け床下地構造であって、
上記床部の下側に設けられた横架材上に、上記床部における床面材の縁部を支持する支持部材が設けられており、
上記支持部材は、中実構造の木質材からなる支持本体部と、上記支持本体部の下面部に位置する金属製の板部と、上記板部の下面側から入れられて当該板部を上記支持本体部に固定するビスと、上記板部から突出する螺子部とを備えており、
上記横架材に形成された挿通孔に上記螺子部が挿通されており、当該螺子部によって上記支持部材が上記横架材に固定されており、
上記支持部材の上面部に加わる鉛直方向の荷重が上記支持本体部および上記板部を介して上記横架材に伝達されることを特徴とする支柱受け床下地構造。
【請求項2】
請求項1に記載の支柱受け床下地構造において、上記支柱受け部が、上側から入れられた留め付け部材によって上記床面材に留め付けられるとともに、上記支持部材の上記木質材からなる支持本体部の上部に上記留め付け部材の下端が達することを特徴とする支柱受け床下地構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の支柱受け床下地構造において、上記床面材における最も上側の床面材が、上記支柱受け部の下面側で上側から入れられた留め付け部材により、上記支持部材の上記木質材からなる支持本体部に留め付けられていることを特徴とする支柱受け床下地構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の支柱受け床下地構造において、上記支柱受け部の配置間隔に一致して上記支持部材が間隔をおいて設けられ、支持部材間には、当該支持部材とは異なる別部材が設けられており、この別部材は上記横架材には固定されないことを特徴とする支柱受け床下地構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の支柱受け床下地構造において、上記床部の縁の側に吹き抜けが形成されることを特徴とする支柱受け床下地構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の支柱受け床下地構造に用いられて床面材の縁部を支持する支持部材であって、中実構造の木質材からなる支持本体部と、上記支持本体部の下面部に取り付けられた金属製の板部と、上記板部から突出する螺子部とを備えることを特徴とする支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支柱受け部が床部の縁の側に留め付けられる支柱受け床下地構造およびこの支柱受け床下地構造に用いることができる支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手摺を支持する支柱と、上記支柱の下端部に連結されるベースと、上記ベースを受ける支持部材とを備え、上記支持部材が支持構造物(溝形鋼)に固定されることで上記支持構造物上に上記手摺が支持される手摺取付け構造において、上記支持部材は、上記手摺の長さ方向に直交する方向に少なくとも上記ベースの幅の2倍以上の幅を有して形成されており、その幅方向における一方の端部に上記ベースを受ける受け部を備え、上記ベースは、上記受け部に固定されており、上記支持部材の上記一方の端部側及び他方の端部側は、上記支持構造物に固定されている手摺取付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−117479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記支持構造物である溝形鋼は、その開口部側からビスを打ち込むのに有利ではあるものの、その上面部の縁部に加わる下方向の荷重を下面部に伝達することができないため、支持される支柱の支持安定性が低くなる欠点がある。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、支柱の支持安定性に優れる支柱受け床下地構造およびこの支柱受け床下地構造に用いることができる支持部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の支柱受け床下地構造は、上記の課題を解決するために、支柱受け部が床部の縁の側に留め付けられる支柱受け床下地構造であって、上記床部の下側に設けられた横架材上に、上記床部における床面材の縁部を支持する支持部材が設けられており、この支持部材は、その上面部に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達できる構造を有することを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記床部の縁の側に取り付けられた支柱受け部が、荷重を受けて、例えば、上記床部の縁の側の方向に傾倒しようとするときでも、上記支持部材は、その上面部に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達できる構造を有するので、上記支柱受け部の傾倒が生じ難く、支柱の支持安定性に優れたものとなる。
【0008】
上記支持部材は、中実構造、閉鎖断面構造、または縁部の側が開口する断面略コ字形状であってその上面部の縁部に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達する伝達部材を備える構造であってもよい。このような支持部材であれば、その上面部に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達することができる。
【0009】
上記支柱受け部が、上側から入れられた留め付け部材によって上記床面材に留め付けられるとともに、上記支持部材の上部に上記留め付け部材の下端が達するようにしてもよい。これによれば、上記支柱受け部を強固に床部に固定することができる。
【0010】
上記床面材における最も上側の床面材が、上記支柱受け部の下面側で上側から入れられた留め付け部材により、上記支持部材に留め付けられていてもよい。これによれば、床面上で上記留め付け部材を露呈させることなく、この留め付け部材によって上記最も上側の床面材を強固に固定することができる。
【0011】
上記支柱受け部の配置間隔に一致して上記支持部材が間隔をおいて設けられ、支持部材間には、当該支持部材とは異なる別部材が設けられており、この別部材は上記横架材には固定されない構造にしてもよい。これによれば、上記横架材には上記別部材を固定するためのボルト挿通孔等を形成する必要がないので、施工コストを低減することができる。
【0012】
上記床部の縁の側に吹き抜けが形成されていてもよい。これによれば、吹き抜けの周囲に立設される支柱を安定的に支持することができる。
【0013】
上記支持部材は、その下面部から螺子部を突出させた構造を有しており、上記横架材には上記螺子部が挿通される挿通孔が形成されていてもよい。これによれば、上記支持部材を上記螺子部によって上記横架材に固定することができる。
【0014】
また、この発明の支持部材は、上記の支柱受け床下地構造に用いられて床面材の縁部を支持する支持部材であって、非金属の支持本体部と、上記支持本体部に取り付けられた板部と、上記板部から突出する螺子部とを備えることを特徴とする。このような支持部材によれば、上記螺子部および上記板部によって上記支持部材を上記横架材に強固に固定することができるとともに、上記非金属の支持本体部に対しては木ネジ等をねじ込むことが容易であるので、床材等の上記支持部材への留め付けが簡単に行えるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、支柱受け部が床部の縁の側に留め付けられる支柱受け床下地構造において、上記支柱受け部で支持される支柱の支持安定性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の吹き抜け部の手摺支柱を支持する支柱受け床下地構造を示した概略の縦断面図である。
図2図1の支柱受け床下地構造で用いた支柱受け材を示した斜視図である。
図3図1の支柱受け床下地構造で用いた支持部材を示した斜視図である。
図4】同図(A)、(B)、(C)は、それぞれ図1の支柱受け床下地構造で用いることができる支持部材の他の例を示した概略の断面図である。
図5図1の支柱受け床下地構造における支持部材と別部材等の配置関係を示した概略の斜視図である。
図6】横架材の下フランジに固定した支持部材に天井下地を取り付けた構造を示した概略の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の支柱受け床下地構造は、吹き抜け100の周囲をなす上階の床部1の縁の側に支柱受け材2が取り付けられる構造である。上記支柱受け材2には、手摺支柱25の下部分がボルト等により固定される。上記支柱受け材2は、図2に示すように、略正方形状の金属製ベース21上に金属製支持板22が固定された構造を有する。上記金属製ベース21の4隅には、挿通孔21aが形成されており、この挿通孔21aにビス51を上側から入れることができる。上記ビス51によって上記支柱受け材2が上記床部1の縁部に留め付けられる。また、上記金属製支持板22には上記ボルト等が挿通される挿通孔22aが形成されている。
【0018】
そして、上記床部1の下側に設けられた例えばH形鋼からなる横架材(梁、胴差等)3の上フランジ上には、上記床部1における床面材11、12の縁部を支持する支持部材4が設けられている。上記床面材11および床面材12は、床版(ALC版等)6と上記支持部材4とを跨ぐように設けられている。なお、上記金属製ベース21も上記床版6と上記支持部材4とを跨ぐように設けられている。また、上記床面材11と床面材12は、図1の左右方向にずれて設けられており、最も上側の床面材(この例では、框部を形成している)となる上記床面材12は、上記吹き抜け100の側に突出して見切り部をなしている。そして、上記床面材12の突出する部位の下方には、石こうボード101が、上記床面材11、上記支持部材4および上記横架材3を覆うように設けられている。
【0019】
上記床面材11は、ビス52によって上記床版6に、また、ビス52′によって上記支持部材4に固定されている。そして、上記金属製ベース21に挿通される上記ビス51の下端は、上記床面材11および床面材12を貫通して、上記支持部材4と上記床版6に達している。また、上記床面材12は、上記支柱受け材2の下面側で上側から入れられたビス53により、上記支持部材4と上記床版6に留め付けられる。
【0020】
上記支持部材4は、図3にも示すように、非金属の木質材或いは樹脂材等からなる中実構造で直方体形状をなす支持本体部41と、上記支持本体部41の下面側に取り付けられた金属板部42と、上記金属板部42から突出する2本(2本以上でもよい)の螺子部43とを備えており、その上面部の縁部(吹き抜け100側)に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達できる構造を有している。上記支持本体部41の長手方向の長さは、上記金属製ベース21よりも大きく形成されている。上記金属板部42には皿状凹部およびその中心を通る貫通孔が形成されており、この貫通孔に通して上記支持本体部41にねじ込んだ6本の皿頭ビス44によって、上記金属板部42が上記支持本体部41に固定される。また、上記横架材3には上記螺子部43が挿通される挿通孔が形成されており、この挿通孔に通した上記螺子部43にナット31を螺合させて締め付けることにより、上記支持部材4が上記横架材3に固定される。
【0021】
上記螺子部43は、例えば、頭部付きのボルトからなり、上記金属板部42に形成した孔から上記ボルトの螺子部を突出させている。また、上記支持本体部41の下面側には座繰り部が形成されており、この座繰り部に上記螺子部43の頭部が収容されている。また、上記頭部付きのボルトからなる上記螺子部43の回り止めを行う回り止め部材を設けることができる。この回り止め部材は、例えば、上記金属板部42の一部を切り込んで上記支持本体部41側に曲げる加工をすることでも形成できる。また、このような回り止め部材によらずに、接着などで上記螺子部43(頭部付きのボルト)を上記支持本体部41に固定して回り止めを行うようにしてもよい。また、上記頭部を上記金属板部42に溶接することでも回り止めを行うことが可能である。
【0022】
また、上記支持部材4は、上記のような中実構造に限らない。例えば、図4(A)に示すように、支持本体部41が金属等からなる中空で閉鎖断面の構造を有するもの、或いは、図4(B)に示すように、支持本体部41の縁部の側(吹き抜け100側)が開口する金属等からなる断面略コ字形状であって(例えば、溝形鋼)、その上面部の縁部に加わる鉛直方向の荷重をその下面部に伝達する1枚または複数枚の板状の伝達部材45を備える構造であってもよい。上記板状の伝達部材45は、上記支柱受け材2の下側となる位置に設けられるのがよい。また、上記板状の伝達部材45に代えて、図4(C)に示すように、棒状の伝達部材46を備える構造であってもよい。このような構造の支持部材4においても、その上面部の縁部に加わる鉛直方向の荷重を下面部に伝達することができる。なお、上記鉛直方向の荷重伝達は、上方向と下方向のどちらにも荷重伝達できることに限るものではなく、上方向または下方向の荷重伝達だけできるものでもよいものとする。
【0023】
上記支持部材4は、上記支柱受け材2の配置間隔に一致して間隔をおいて設けるようにしてもよい。このような場合、図5に示すように、上記支持部材4間には、当該支持部材4とは異なる別部材7を設け、この別部材7を上記横架材3には固定しない構造としてもよい。上記別部材7は、水平に設けられるビス55によって、上記床版6に固定してもよい。また、上記別部材7は、上記ビス52と同様のビスによって上記床面材11に固定してもよい。上記別部材7は、例えば木材や耐火材等からなる。なお、上記支持部材4も、水平に設けられる上記ビス55によって、上記床版6に固定してもよい。また、上記床版6としてALC版ではなく、鋼製根太(鋼製根太床パネル)が用いられる場合、上記別部材7を、上記ビス52と同様のビスによって上記床面材11に固定してもよい。このようにすると、上記横架材3には上記別部材7を固定するためのボルト挿通孔等を形成しておくことが不要になるので、施工コストを低減することができる。
【0024】
上記の構成であれば、上記床部1の縁の側に取り付けられた支柱受け材2が、荷重を受けて、上記床部1の縁の側の方向に傾倒しようとするときでも、上記支持部材4は、その上面部の縁部に加わる鉛直方向の荷重を下面部に伝達できる構造を有するので、上記支柱受け材2の傾倒が生じ難く、手摺支柱25の支持安定性に優れたものとなる。
【0025】
上記支柱受け材2が、上側から入れられたビス51によって上記床面材11、12に留め付けられるとともに、上記支持部材4の上部に上記ビス51の下端が達していると、上記支柱受け材2を強固に床部1に固定することができる。
【0026】
上記床面材11、12における最も上側の床面材12が、上記支柱受け材2の下面側で上側から入れられた上記ビス53によって上記支持部材4に留め付けられていると、床面上で上記ビス53を露呈させることなく、このビス53によって上記最も上側の床面材12を強固に設けることができる。なお、上記の例では、支柱受け部として支柱受け材2を示したが、支柱受け部は支柱自体のベース部であってもよいものである。
【0027】
また、上記支持部材4が、図3に示したように、非金属の支持本体部41と、上記支持本体部41に取り付けられた金属板部42と、上記金属板部42から突出する2以上の螺子部43とを備えていると、上記螺子部43および上記金属板部42によって上記支持部材4を上記横架材3に強固に固定することができるとともに、上記非金属の支持本体部41に対して木ネジ等を用いた床材等の上記支持部材4への留め付けが容易に行えることになる。なお、板部として上記金属板部42を示したが、これに限らず、硬質樹脂などからなる板部としてもよい。
【0028】
なお、図6に示すように、上記横架材3の下フランジに、上記支持部材4の螺子部43が挿通される挿通孔を形成しておき、上記支持部材4を上記横架材3の下フランジに固定することもできる。そして、非金属の支持本体部41にビス57をねじ込むことにより、天井下地102を、上記支持部材4によって支持することができる。上記天井下地102に限らず、スタッドを支持するランナー等を、上記支持部材4を介して、上記横架材3の下フランジに固定することもできる。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 :床部
2 :支柱受け材(支柱受け部)
3 :横架材
4 :支持部材
6 :床版
7 :別部材
11 :床面材
12 :床面材
21 :金属製ベース
21a :挿通孔
22 :金属製支持板
22a :挿通孔
25 :手摺支柱
31 :ナット
41 :支持本体部
42 :金属板部(板部)
43 :螺子部
44 :ビス
45 :伝達部材
46 :伝達部材
51 :ビス(留め付け部材)
52′ :ビス(留め付け部材)
53 :ビス
55 :ビス
57 :ビス
100 :吹き抜け
101 :石こうボード
102 :天井下地
図1
図2
図3
図4
図5
図6