(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第三のステップは、前記検知部により出力されて前記先行杭材内または前記後続杭材内に伝達した信号に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する、
請求項1、2、4、6、9から11のうちいずれか1項に記載の施工状態監視方法。
前記第三のステップは、貫入長計測部により計測された貫入長と前記検知部の検知状態との対応関係に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する、
請求項1から12のうちいずれか1項に記載の施工状態監視方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された鋼矢板の打設方法は、鋼矢板の継手における抵抗を低減する動作を行っているものの、鋼矢板が他の鋼矢板と嵌合した状態で圧入されていることを保証するものではない。また、特許文献2に記載された地盤評価装置等は、音に基づいて地盤を評価しているので、地中に圧入された構造体の状態を検出することができない。さらに、特許文献3および4に記載された技術では、構造体の動作に起因する急激な音の変化を検出するため、杭材が次第に地中に圧入されていることを保証するための技術に適用はできない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、杭材が嵌合されて挿入されていることを保証することができる施工状態監視方法、施工状態監視装置、および自動施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、杭材の長手方向に沿って形成された継手によって互いに杭材を嵌合させて、複数の杭材の施工状態を監視する施工状態監視方法であって、先行杭材を地中に配置する第一のステップと、先行して地中に配置された前記先行杭材の開放された継手に対して後続して地中に配置される後続杭材の継手を嵌合させて、前記後続杭材を地中に挿入する第二のステップと、前記第二のステップにおいて前記後続杭材を挿入しながら、前記先行杭材または前記後続杭材に設置された検知部の検知状態に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する第三のステップと、を有する施工状態監視方法である。
【0009】
(2)本発明の一態様は、杭材の長手方向に沿って形成された継手によって互いに杭材を嵌合させて、複数の杭材の施工状態を監視する施工状態監視方法であって、開放される継手に検知部を有する先行杭材を地中に配置する第一のステップと、先行して地中に配置された前記先行杭材の開放された継手に対して後続して地中に配置される後続杭材の継手を嵌合させて、前記後続杭材を地中に挿入する第二のステップと、前記第二のステップにおいて前記後続杭材を挿入しながら、前記検知部により発信された信号の有無に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する第三のステップと、を有する施工状態監視方法である。
【0010】
(3)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記先行杭材の開放された継手には、杭材の長手方向の全長にわたって延びる電線が前記検知部として設けられ、前記第三のステップは、前記電線の通電状態に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0011】
(4)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記電線は、前記先行杭材の開放された継手に設けられ、前記電線の下端には、前記先行杭材の開放された継手における前記後続杭材の継手の嵌合領域内に突出する凸状部が形成され、前記第三のステップは、前記先行杭材に嵌合しながら挿入される前記後続杭材の下端が前記凸状部に直接的または間接的に衝突することにより、前記電線の凸状部が切断されて通電状態から非通電状態となることで、前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0012】
(5)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記先行杭材の開放された前記継手に嵌合する前記後続杭材の継手には、杭材の長手方向の全長にわたって延びる電線が前記検知部として設けられ、前記第三のステップは、前記電線の通電状態に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0013】
(6)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記電線は、前記先行杭材の開放された前記継手に嵌合する前記後続杭材の継手に設けられ、前記先行杭材は、開放された継手の下端に、前記先行杭材の開放された継手における前記後続杭材の継手の嵌合領域内に突出する突出刃部を有し、前記第三のステップは、前記先行杭材に嵌合しながら挿入される前記後続杭材に設けられた電線が前記突出刃部に接触することにより、前記電線が切断されて通電状態から非通電状態となることで、前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0014】
(7)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記電線は、前記継手に設けられる止水材に埋設されている。
【0015】
(8)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記検知部は発信部を有し、前記第三のステップは、前記検知部により送信された無線信号に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0016】
(9)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第一のステップは、前記検知部として開放された継手に設置された第1の光通信部を有する前記先行杭材を配置し、前記第二のステップは、前記後続杭材の継手に設置された第2の光通信部を有する前記後続杭材を配置し、前記第三のステップは、前記第1の光通信部または前記第2の光通信部により検知された光に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0017】
(10)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記先行杭材または前記後続杭材は前記検知部、および検知部により検知された信号を伝達する線路が収容される溝部を有し、前記第三のステップは、前記線路に伝達された信号に基づいて前記後続杭材継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0018】
(11)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第三のステップは、前記検知部により出力されて前記先行杭材内または前記後続杭材内に伝達した信号に基づいて前記後続杭材が前記先行杭材と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0019】
(12)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第三のステップは、貫入長計測部により計測された貫入長と前記検知部の検知状態との対応関係に基づいて前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する。
【0020】
(13)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第一のステップまたは前記第二のステップは、保護材により前記検知部が保護された状態で前記先行杭材または前記後続杭材を配置する。
【0021】
(14)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第一のステップまたは前記第二のステップは、内蔵電池により駆動する前記検知部を備える前記先行杭材または前記後続杭材を配置する。
【0022】
(15)本発明の一態様は、上述の施工状態監視方法であって、前記第一のステップおよび前記第二のステップは、前記杭材として鋼矢板を配置する。
【0023】
(16)本発明の一態様は、先行して地中に配置された先行杭材の開放された継手に対して後続して地中に配置される後続杭材の継手を嵌合させて前記後続杭材を挿入している最中に、前記先行杭材または前記後続杭材に設置された検知部により出力された信号が入力される信号入力部と、前記信号入力部に対し入力された信号に基づく検知状態に基づいて、前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する監視部と、を有する施工状態監視装置である。
【0024】
(17)本発明の一態様は、先行して地中に配置された先行杭材の開放された継手に対して後続して地中に配置される後続杭材の継手を嵌合させて前記後続杭材を挿入している最中に、前記先行杭材または前記後続杭材に設置された検知部により出力された信号が入力される信号入力部と、前記信号入力部に対し入力された信号に基づく検知状態に基づいて、前記後続杭材の継手が前記先行杭材の開放された継手と嵌合しながら挿入されていることを監視する監視部と、を有する施工状態監視装置を備えた自動施工装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、杭材が嵌合されて挿入されていることを保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した施工状態監視方法、施工状態監視装置、および自動施工装置を、図面を参照して説明する。以下の実施形態では杭材を圧入するものとして説明するがこれに限ることはなく、少なくとも、先行杭材が予め地中に配置されている状態で、後続して地中に配置される後続杭材の継手を先行杭材の開放された継手に嵌合させた状態で後続杭材を地中に挿入する技術に適用可能である。先行杭材および後続杭材ともに、圧入以外に、例えば打込みや埋込みにより地中に配置するものとしても良い。杭材の打込みの場合には振動打込みや、打撃による打込みなどがある。また、杭材の埋込みでは、予めオーガなどにより掘削して掘削した部分に杭材を挿入するものでも良いし、杭材の先端にオーガなどを取り付けて、掘削しながら挿入するものとしても良い。また、これら配置方法について組み合わせても良い。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は本発明を適用した第1の実施形態の鋼矢板圧入システムにおいて地中に圧入される鋼矢板1の構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。なお、本実施形態において、圧入される杭材をU形鋼矢板(以下、鋼矢板と称する)1として説明するが、杭材の長手方向に沿って形成され、隣り合う他の杭材と嵌合可能な継手を有する杭材であれば、例えばZ形鋼矢板やゼロ矢板や直線形鋼矢板や鋼管矢板やH形鋼矢板などといった他の形状の鋼杭や、例えばコンクリート杭といった鋼杭とは材質の異なる杭材など、他の形態の杭材であってもよい。
【0029】
鋼矢板1は、
図1(a)に示すように、ウェブ部12と、フランジ部14と、継手部16とを有する。ウェブ部12は、後述する圧入機本体100を直線状に移動させながら鋼矢板1を設置する直線施工を行っている場合には、鋼矢板圧入システムにおける圧入施工の進行方向(X方向)と平行となり、後述の圧入機本体にY方向の両側から掴まれる。フランジ部14は、ウェブ部12の両端部のそれぞれに一体に接続される。1対のフランジ部14は、ウェブ部12から外側(X方向)に広がるテーパ状に形成されている。一対のフランジ部14は、ウェブ部12の略中心位置から互いに対称となる形状を有する。継手部16は、フランジ部14の端部のそれぞれに一体に接続される。この継手部16は、施工方向(鋼矢板1の配列方向)における前方および後方において隣り合う他の杭材と嵌合可能な継手である。
【0030】
一対の継手部16は、上面から見て略U字状に形成されている。一対の継手部16は、鋼矢板1における幅方向の両側の端部であって、鋼矢板1の長手方向の上端から下端に亘って形成される。一対の継手部16は、圧入施工の初期において他の鋼矢板1の継手部16と嵌合されるように位置決めされ、圧入施工中において鋼矢板1同士の位置関係の変化によって他の鋼矢板1の継手部16と接触する。−X方向側の継手部16aは、圧入施工の進行方向(X方向)の反対側となり、+X方向側の継手部16bは、圧入施工の進行方向(X方向)側となる。以下、継手部16aと継手部16bとを区別して記載しない場合には単に「継手部16」と記載し、施工方向後方側の継手部である継手部16aを「後方継手部16a」と記載し、施工方向前方側の継手部である継手部16bを「前方継手部16b」と記載する。前方継手部16bと後方継手部16aとは、圧入施工において互いに嵌合される。
【0031】
鋼矢板1における前方継手部16bには、検知部20bが設置される。検知部20bは、複数の鋼矢板1を地中に設置する圧入施工において、先行杭材と後続杭材とが嵌合した状態において後続杭材の後続継手に接触しうる位置に設置される。検知部20bは、例えば接着剤により前方継手部16bのU字状の内壁に取り付けられる。
【0032】
検知部20bは、第1の実施形態において無線信号を発信する発信部である。無線信号は、信号線等の媒体を介さずに送信および受信される信号であって、例えば無線電波、磁波、または音等の各種の振動が含まれる。本実施形態において、無線信号が無線電波である一例について説明する。検知部20bは、内蔵電池により駆動して、無線電波を発信する。内蔵電池は、施工期間に亘って検知部20bを駆動できればよく、例えば2〜3日に亘り検知部20bを駆動させる電力を蓄えている。検知部20bは、継手部16の長手方向における複数の位置に設置される。検知部20bにより発信された無線電波は、後述する受信部により受信される。なお、地中には土砂に地下水が介在するケースが多いため、検知部20bは防水性能を有するものが好ましい。なお、検知部20bは、鋼矢板1に取り付けた送信コイルの動力源であってもよく、送信コイルから発信させた無線信号を、鋼矢板1を信号伝達媒体として受信コイル(受信部)まで送信させるものであってもよい。
また、第1の実施形態においては、検知部20bが無線信号を発信するものについて説明するが、検知部20bは、保護材が被覆された線路によって受信部と接続されていてもよい。
【0033】
検知部20bは、当該検知部20bを保護するための保護材22で覆われる。保護材22は、鋼矢板1を地中に圧入する際に検知部20bを保護する材料であって、例えばウレタン素材の発泡フォームである。これにより、検知部20bは、鋼矢板1を地中に圧入する際に地中の障害物から保護される。また、保護材22は、自身の継手部16と他の鋼矢板1における継手部16とが嵌合され、他の鋼矢板1が圧入されることにより削り取られる。これにより、保護材22は、他の鋼矢板1と嵌合されていない状態で圧入された場合には検知部20bを保護し、他の鋼矢板1と嵌合された状態で圧入された場合には削り取られて検知部20bと他の鋼矢板1とを接触させる。
【0034】
図2は、複数の鋼矢板1が嵌合されている状態を示す側面図である。鋼矢板(先行杭材)1−1の開放された継手(前方継手部16b−1)には、鋼矢板1−1の長手方向に複数の検知部20b−1、・・・検知部20b−nが設置される。複数の検知部20b−1、・・・検知部20b−nは、少なくとも鋼矢板1−1の杭先端(−Z方向側の端部付近)に設けられる。先行の鋼矢板1−1(先行杭材)の地中への圧入が完了した状態において、後続の鋼矢板1−2(後続杭材)は、自身の後方継手部16a−2を鋼矢板1−1の前方継手部16b−1に嵌合させるように位置決めされる。後続の鋼矢板1−2は、自身の後方継手部16a−2と前方継手部16b−1との嵌合状態が正常に維持されたまま、地中に圧入される。これによって、複数の鋼矢板1−1と鋼矢板1−2とは、地中に構築される壁体の一部となる。
【0035】
鋼矢板1−1の前方継手部16b−1に設置された検知部20b−1は、鋼矢板1−2の後方継手部16a−2が前方継手部16b−1に嵌合して圧入されると、鋼矢板1−2の前方継手部16b−1と接触して、破壊される。検知部20b−1は、鋼矢板1−2の前方継手部16b−1により破壊されるまで無線電波を送信し、鋼矢板1−2の前方継手部16b−1により破壊されたことに応じて無線電波の送信を停止する。なお、ここでいう破壊されるとは、検知部20bが無線電波を送信可能な状態から少なくとも無線電波の送信が停止する状態に変化され、後述する受信部により受信される無線電波が途絶することをいう。
【0036】
図3は、本発明を適用した第1の実施形態の鋼矢板圧入システムの構成を示す図である。鋼矢板圧入システムは、圧入機本体100と、パワーユニット(PU)とを備える。圧入機本体100は、鋼矢板1を地中に圧入する。パワーユニットは、圧入機本体100が油圧により鋼矢板1を圧入する動力を与える動作を行う。なお、実施形態においては、圧入機本体100が鋼矢板1を圧入するものについて説明するが、圧入以外の施工において圧入機本体100に代えて杭材を地中に挿入する挿入機を備える。
【0037】
圧入機本体100は、後述する施工状態監視装置300を有し、自動的に鋼矢板1を圧入施工する自動施工装置である。圧入機本体100は、複数のクランプ102と、サドル104と、スライドフレーム106と、リーダマスト108と、チャック110と、チャックフレーム112と、メインシリンダ114とを備える。また、圧入機本体100は、貫入長計測部120と、施工状態監視装置300とを備える。
【0038】
複数のクランプ102は、先行して地盤Gに圧入された複数の鋼矢板1(先行杭材、以下、完成杭1Rとも記載する。)の杭天端から所定高さまでのウェブ部12のY方向の両側を掴む。複数のクランプ102により複数の完成杭1Rを掴むことにより、圧入機本体100を圧入機本体100が鋼矢板1を地盤Gに圧入するための反力基盤を形成する。複数のクランプ102は、圧入施工が進むにつれて、圧入施工の進行方向の他の完成杭1Rを掴む。
【0039】
サドル104は、複数のクランプ102と接続される。サドル104は、複数のクランプ102を完成杭1Rに取り付ける基盤となる。
【0040】
スライドフレーム106は、サドル104に対して圧入施工の進行方向およびその逆方向に動作する。これにより、スライドフレーム106は、圧入機本体100により地盤Gに圧入しようとする鋼矢板1(後続杭材、以下、圧入杭1Aとも記載する。)を圧入施工の進行方向およびその逆方向において位置決めするように動作する。さらに具体的には、スライドフレーム106は、完成杭1Rのうち、圧入施工の進行方向の端部(+X方向の端部)に圧入施工が完了した完成杭(先行杭材、以下、完成杭1Bとも記載する。)における前方継手部16bと嵌合するように、圧入杭1Aの後方継手部16aの位置(X方向位置およびY方向位置の双方)を決める。
【0041】
リーダマスト108は、圧入杭1Aを上下方向(Z方向)に移動させるためのガイドとして機能する。また、リーダマスト108は、スライドフレーム106の動作に従って圧入施工の進行方向およびその逆方向に移動される。リーダマスト108の内部には、貫入長計測部120と施工状態監視装置300とが収容される。
【0042】
チャック110は、圧入杭1Aのウェブ部12をY方向における両端から掴む。チャックフレーム112は、チャック110の上側(−Z方向側)に配設され、メインシリンダ114により与えられた動力によってチャック110を上下方向に移動させる。
【0043】
メインシリンダ114は、圧入杭1Aを下方向(+Z方向)に移動させ、圧入杭1Aを地盤Gに圧入させる動力を発生させる油圧シリンダである。メインシリンダ114は、パワーユニットの制御に従って圧入杭1Aを上下方向に移動させる。
【0044】
以下、上述した鋼矢板圧入システムにおける圧入施工手順について説明する。
図4は、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムにおける圧入施工手順を示すフローチャートである。
【0045】
まず、鋼矢板圧入システムは、他の鋼矢板1が設置されていない地盤Gに先行杭材を圧入施工する(ステップS100)。これにより、鋼矢板圧入システムは、完成杭1Bを設置する。次に鋼矢板圧入システムは、完成杭1Bの前方継手部16bに圧入杭1A(後続杭材)の後方継手部16aを嵌合させて、圧入杭1Aを地盤Gに圧入する(ステップS102)。鋼矢板圧入システムは、圧入杭1Aを地盤Gに圧入しながら、施工状態監視装置300により圧入杭1Aの施工状態を監視する監視処理を実施する(ステップS104)。
【0046】
施工状態監視装置300は、ステップS102の圧入施工をしている最中に、施工状態監視装置300により、検知部20bにより送信された無線電波に基づく監視処理を行う。施工状態監視装置300は、監視処理の結果、施工状態に異常があるか否かを判定する(ステップS106)。施工状態監視装置300は、施工状態に異常があると判定した場合には異常を表示させて(ステップS108)、処理を終了する。これにより、鋼矢板圧入システムは、圧入施工の管理者などに圧入杭1Aの施工異常を通知する。鋼矢板圧入システムは、施工状態監視装置300により施工状態に異常があると判定されなかった場合、全ての鋼矢板1の圧入が終了したか否かを判定する(ステップS110)。鋼矢板圧入システムは、全ての鋼矢板1の圧入が終了したと判定した場合には施工を終了させ、全ての鋼矢板1の圧入が終了したと判定しない場合にはステップS102に処理を戻す。
【0047】
図5は、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムにおける施工状態監視装置300の機能的な構成を示すブロック図である。
施工状態監視装置300には、貫入長計測部120と、検知部20bと、表示部320とが接続される。表示部320は、施工状態監視装置300による監視処理の結果を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部320は、例えば、圧入施工を管理する作業者によって視認される。表示部320は、表示制御部310の制御に従って、上述したステップS108において施工状態に異常があることを示す画像を表示させる。これにより、施工状態監視装置300は、作業者に施工状態の異常に対する対処を促すことができる。表示制御部310は、監視部308における監視処理の結果に基づいて表示部320を駆動制御する。
【0048】
貫入長計測部120は、メインシリンダ114の動作に基づいて圧入杭1Aの貫入長を示す信号(以下、貫入長信号と記載する。)を生成する。貫入長計測部120は、例えば所定時間毎に貫入長信号を施工状態監視装置300に出力する。検知部20bは、無線通信ICなどにより構成される無線送信部200を備える。無線送信部200は、例えば所定時間毎に無線電波を送信する。無線送信部200は、他の検知部20bと異なるタイミングで無線電波を送信する時分割方式、または他の検知部20bと異なる識別情報を含む無線電波を送信する方式などに従って動作する。なお、無線送信部200は、無線送信部200が無線電波を送信する送信間隔と圧入杭1Aの圧入速度とによって決まる貫入長の精度に基づいて、無線電波を送信する間隔を設定してもよい。
【0049】
施工状態監視装置300は、入出力回路、演算回路、制御回路、および記憶装置を含むコンピュータである。施工状態監視装置300は、信号入力部302と、無線受信部304と、同期処理部306と、監視部308と、表示制御部310とを備える。
【0050】
無線受信部304は、無線送信部200により送信された無線電波を受信する。無線受信部304は、所定の信号処理を施した無線信号を信号入力部302に出力する。信号入力部302には、貫入長計測部120により出力された貫入長信号、および無線受信部304により出力された無線信号が入力される。
【0051】
同期処理部306および監視部308は、演算回路および制御回路としてのCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することで機能するソフトウェア機能部であってもよいし、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0052】
同期処理部306は、貫入長信号と無線信号との同期を取る。同期処理部306は、貫入長信号の入力タイミングと無線信号との入力タイミングとに基づいて、互いに同期した貫入長信号および無線信号を記憶部312に記憶させる。
図6は、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムにおいて、無線電波の状態と鋼矢板1の貫入長との関係を示す図である。
【0053】
記憶部312は、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。また、記憶部312には、ファームウェアやアプリケーションプログラム等の各種プログラム、施工状態監視装置300の各部における設定情報や処理結果の情報などが記憶される。
【0054】
記憶部312には、
図6に示すように、圧入杭1Aの施工状態を監視するための情報および監視結果が記憶される。圧入杭1Aの施工状態を監視するための情報は、少なくとも検知部20bが設置された位置と、当該検知部20bにより送信される無線電波が途絶した時刻と、貫入長計測部120により計測された貫入長との組を示す情報である。
【0055】
同期処理部306は、杭番号に対応させて、検知部20bの位置情報T−1、・・・T−nと、無線電波が途絶した時刻t1、・・・tnと、無線電波が途絶した時刻において貫入長計測部120により計測されている貫入長との組を対応づけて記憶部312に記憶させる。
【0056】
監視部308は、記憶部312に記憶された検知部20bの位置情報と、無線電波が途絶した時刻において貫入長計測部120により計測されている貫入長とに基づいて、圧入杭1Aを圧入する施工状態を監視する。監視部308は、無線電波が途絶した時刻において検知部20bが設置されている位置(貫入長)を圧入杭1Aが通過したことを判定する。監視部308は、無線電波が途絶した時刻における貫入長計測部120により計測された貫入長と、検知部20bの取り付け位置とを比較する。監視部308は、無線電波が途絶した時刻における貫入長計測部120により計測された貫入長と検知部20bの取り付け位置とが所定の範囲内である場合には、施工状態に異常がないことを判定する。すなわち、施工状態監視装置300は、圧入機本体100が圧入杭1Aを圧入した貫入長と完成杭1Bに対する圧入杭1Aの位置との間に整合がとれている場合には、施工状態に異常がないことを判定する。監視部308は、無線電波が途絶した時刻における貫入長計測部120により計測された貫入長と検知部20bの取り付け位置とが所定の範囲内にはない場合には、施工状態に異常があることを判定する。
【0057】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、検知部20bが設置された完成杭1Bを設置した状態で、先行杭材の前方継手部16bと後続杭材の後方継手部16aとを嵌合させて圧入杭1Aを圧入しながら、検知部20bの検知状態に基づいて圧入杭1Aが完成杭1Bと嵌合していることを監視する。これにより、鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが検知部20bの位置を通過したことを検知できる。この結果、鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが嵌合されて圧入されていることを保証することができる。
【0058】
また、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、検知部20bにより送信された無線電波の有無に基づいて先行杭材の後方継手部16aが後続杭材の前方継手部16bと嵌合していることを監視する。これにより、鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが検知部20bの位置を通過して検知部20bが破壊されたことに基づく無線電波の途絶に基づいて、圧入杭1Aが検知部20bの位置を通過したことを検知できる。この結果、鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが嵌合されて圧入されていることを保証することができる。
【0059】
さらに、本発明を適用した第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、貫入長計測部120により計測された貫入長と検知部20bの検知状態との対応関係に基づいて圧入杭1Aが完成杭1Bと嵌合していることを監視する。これにより、鋼矢板圧入システムによれば、圧入機本体100が圧入した圧入杭1Aの貫入長と実際の圧入杭1Aが通過した貫入長とが整合しているか否かを監視することができる。この結果、鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが嵌合されて圧入されていることを高精度で保証することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムについて説明する。
第2の実施形態は、完成杭1Bに対する圧入杭1Aの通過を検知する検知部20bを備える点で第1の実施形態とは異なる。
【0061】
図7は、本発明を適用した第2の実施形態の鋼矢板圧入システムにおける検知部20bの構成を示す図である。検知部20bは、光を媒体として通信を行う光通信部である。この検知部20bは、光通信部として、前方継手部16b−1の少なくとも先端部に取り付けられた光検知部210aと、後方継手部16a−2の先端部に取り付けられた光出力部210bとを含む。第2の実施形態における鋼矢板1は、例えば接着剤により、前方継手部16b−1に光検知部210aが取り付けられ、後方継手部16a−2に光出力部210bが取り付けられる。光検知部210aは、少なくとも鋼矢板1における杭先端を含む、前方継手部16b−1における長手方向の複数の位置に取り付けられていてもよい。
【0062】
光出力部210bは、常時または所定期間毎に光を出力するLED(light emitting
diode)等の光源を備える。光出力部210bは、鋼矢板1における後方継手部16a−2に取り付けられ、U字状の内壁に向けて光を発する。光検知部210aは、光電変換回路などの光検出器を備える。光検知部210aは、鋼矢板1における前方継手部16b−1に取り付けられる。光出力部210bは、圧入杭1Aが圧入機本体100により圧入されたことに対して圧入方向において移動される。光検知部210aと光出力部210bとは、鋼矢板1の後方継手部16a−2と前方継手部16b−1とが嵌合し、光検知部210aと光出力部210bとが同じ貫入長に位置した状態において、光検知部210aの光出力面と光出力部210bの光検知面とが対向するように配置される。なお、地中には地下水が介在する場合における検知性能の低下を抑制するため、光検知部210aおよび光出力部210bは防水性能を有するものが好ましい。
【0063】
光検知部210aは、無線通信機212と接続され、光出力部210bにより出力された光を検知したことに応じて光検知信号を示す無線電波として送信させる。無線通信機212は、例えば鋼矢板1の凹部に埋込まれて保護材により保護されて、鋼矢板1に設置される。光検知信号を示す無線電波は、施工状態監視装置300の無線受信部304により受信される。なお、光検知部210aは、鋼矢板1に取り付けた送信コイルおよび送信コイルの動力源と接続され、光検出信号に基づいて動力源を制御して送信コイルから無線信号を発信させ、鋼矢板1を信号伝達媒体として受信コイル(受信部)まで送信させるものであってもよい。
【0064】
監視部308は、記憶部312に記憶された光検知部210aの位置情報と、光検知信号を受信した時刻において貫入長計測部120により計測されている貫入長とに基づいて、圧入杭1Aを圧入する施工状態を監視する。監視部308は、光検知信号を受信した時刻において光検知部210aが設置されている位置(貫入長)を圧入杭1Aが通過したことを判定する。監視部308は、光検知信号を受信した時刻における貫入長計測部120により計測された貫入長と、光検知部210aの取り付け位置とを比較する。監視部308は、無線電波が途絶した時刻における貫入長計測部120により計測された貫入長と光検知部210aの取り付け位置とが所定の範囲内である場合には、施工状態に異常がないことを判定する。すなわち、施工状態監視装置300は、圧入機本体100が圧入杭1Aを圧入した貫入長と完成杭1Bに対する圧入杭1Aの位置との間に整合がとれている場合には、施工状態に異常がないことを判定する。
【0065】
第2の実施形態の鋼矢板圧入システムは、光検知部210aにより検知された光に基づいて圧入杭1Aを圧入する施工状態を監視する。具体的には、鋼矢板圧入システムは、光の有無、または光の状態の変化に基づいて、圧入杭1Aが通過したことを判定することができる。光の有無は、光検知部210aが光出力部210bにより光の照射範囲に存在しない場合には光検知部210aにより光が検知されず、光検知部210aが光出力部210bにより光の照射範囲に存在する場合には光検知部210aにより光が検知されることによって、監視部308により検知される。光の状態の変化は、光検知部210aが光出力部210bにより光の照射範囲に存在しない場合には光検知部210aにより低い強度光が検知され、光検知部210aが光出力部210bにより光の照射範囲に存在する場合には光検知部210aにより高い強度の光が検知されることによって、監視部308により検知される。光の状態の変化は、光の強度にかぎらず、圧入杭1Aが完成杭1Bと嵌合しながら地中に挿入されることによって変わるものであればよい。
【0066】
以上のように、第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、先行杭材の前方継手部16bに光検知部210aを設置した先行杭材を圧入し、先行杭材の後方継手部16aに設置された光出力部210b有する後続杭材を圧入し、光検知部210aにより検知された光の強度に基づいて後続杭材が先行杭材と嵌合していることを監視することができる。
【0067】
なお、第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムは、光検知部210aおよび光出力部210bにより後続杭材が先行杭材を嵌合していることを監視しているが、先行杭材の前方継手部16b−1に光検知部210aを設置し、後続杭材の後方継手部16a−2に光出力部210bを設置してもよい。
【0068】
また、第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムにおいて、光出力部210bは、少なくとも鋼矢板1における杭先端を含む、前方継手部16b−1における長手方向の複数の位置に取り付けられていてもよい。これにより、第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、圧入杭1Aが次第に地中に挿入される途中において複数の前方継手部16b−1を後方継手部16a−2に設置された光検知部210aにより検知でき、圧入杭1Aが次第に地中に挿入される途中を監視することができる。
【0069】
(第3の実施形態)
以下、本発明を適用した第3の実施形態に係る鋼矢板圧入システムについて説明する。
第3の実施形態は、完成杭1Bに対する圧入杭1Aの通過を検知するための構成を、先行杭材または後続杭材の溝部に収容された、検知部、および検知部により検知された信号を伝達する線路とする。
図8の(a)は先行杭材1−1と後続杭材1−2とが嵌合している状態を示し、
図8の(b)は
図8(a)における点線部分の拡大図であって、第3の実施形態に係る鋼矢板圧入システムにおいて、前方継手部16b−1と後方継手部16a−2とが嵌合している状態を示す断面図である。
【0070】
先行杭材1−1の前方継手部16b−1には、その先端部に溝部161が形成されている。溝部161は、前方継手部16b−1により形成される凹状部分から外側が開口部となるように形成される。溝部161は、鋼矢板1の長手方向において杭天端から杭先端に亘って形成される。後続杭材1−2の後方継手部16a−2には、前方継手部16b−1により形成される凹状部分の内側が開口部となるように溝部162が形成される。溝部162は、鋼矢板1の長手方向において杭天端から杭先端に亘って形成される。溝部161と溝部162とは、先行杭材1−1の前方継手部16b−1と後続杭材1−2の後方継手部16a−2とが嵌合した状態において開口部の少なくも一部同士が対向するように配置される。なお、本実施形態のように、鋼矢板1に溝部161および162を形成することは、例えば、Jポケットパイル(登録商標、以下同様)などで実現されている技術(http://www.jfe-steel.co.jp/products/construction/items/jpocket-pile/index.html)を利用することができる。
【0071】
溝部161および溝部162には、圧入杭1Aを検知する検知部、および検知部と施工状態監視装置300とを接続する線路が設置される。検知部および線路は、当該検知部および線路を保護するための保護材22により覆われる。
【0072】
検知部は、例えば、上述した第2の実施形態において説明した光通信部である。さらに具体的には、圧入杭1A(
図8の後続杭材1−2)の溝部162には、光検知部210aおよび光検知部210aと施工状態監視装置300とを接続する線路とが設置される。光検知部210aは、少なくとも鋼矢板1における杭先端を含む、前方継手部16bにおける長手方向の複数の位置に取り付けられていてもよい。一方、先行杭材1−1の溝部161には、光出力部210bおよび光出力部210bと施工状態監視装置300とを接続する線路とが設置される。施工状態監視装置300は、圧入杭1Aを圧入している最中において、光出力部210bにより光を出力するよう制御すると共に、光検知部210aにより検知された光の強度に基づく信号が線路を介して伝達される。これにより、施工状態監視装置300は、光検知部210aにより検知された光の強度が所定値以上となった時に、圧入杭1Aが完成杭1Bと嵌合されて圧入されていることを検知する。
【0073】
なお、溝部161および162において検知部が取り付けられた部分以外は、保護材22を設置しなくてもよく、検知部が取り付けられた部分の近傍の部分に保護材22を設置してもよく、検知部が取り付けられた部分以外のすべてに保護材22を設置してもよい。
保護材22は、検知部および線路を保護する材料であればいかなる材料でもよく、例えばゴム等の弾性体やウレタン素材の発泡フォームや鋼材やアクリル系接着剤などを用いることができる。
【0074】
(第4の実施形態)
以下、本発明を適用した第4の実施形態に係る鋼矢板圧入システムについて説明する。
第4の実施形態は、検知部により検知された信号を、鋼矢板1内に伝達させて施工状態監視装置300に供給するものである。第4の実施形態に係る鋼矢板圧入システムは、上述した無線送信部200および無線通信機212に代えて、検知部20bにより検知された信号を鋼矢板1内に伝達させる信号出力部(不図示)を備える。
【0075】
信号出力部は、例えば、検知部と線路を介して接続され、磁波である磁気信号により検知部の信号を磁気信号に変換し、磁気信号を、鋼矢板1を媒体として伝達させる。信号出力部は、例えば、鋼矢板1の杭先端付近に設けられた送信コイルと、鋼矢板1の杭先端から杭天端側に設けられ、施工状態監視装置300と信号線路により接続された受信コイルとを備える。送信コイルは、杭材が鋼矢板1である場合、杭先端に取り付けられ、保護材が被覆される。また、送信コイルは、杭材が鋼管である場合、例えば、鋼管の杭先端付近に鋼管の外周面に巻き付けられ、保護材が被覆される。保護材は、例えば鋼管が回転圧入される状態において送信コイルが保護可能なものである。信号出力部は、検知部の信号を発振器により変換して送信コイルに供給し、鋼矢板1に磁気信号を伝達させる。鋼矢板1に伝達された磁気信号は、受信コイルにおける電磁誘導を利用して電気信号に変換されて、施工状態監視装置300に電気信号として受信される。施工状態監視装置300は、発振器における変換処理に対応した受信処理を行って、検知部の信号を受信する。なお、磁気信号を鋼矢板1に伝達させる構成は、例えば、「磁気信号伝送方式における伝送距離シミュレーション」(T.IEE Japan, Vol. 113-D, No. 12, ‘93)に記載された技術を利用して、公知技術により実現できる。
【0076】
これにより、第4の実施形態に係る鋼矢板圧入システムによれば、第1の実施形態に係る鋼矢板圧入システムのように、検知部20bが破壊されたことに応じた信号の途絶を施工状態監視装置300により検知させることができる。また、第4の実施形態の鋼矢板圧入システムによれば、第2の実施形態に係る鋼矢板圧入システムのように、光の強度の増加を施工状態監視装置300により検知させることができる。この結果、第4の実施形態の鋼矢板圧入システムによれば、上述した実施形態と同様に、完成杭1Bと圧入杭1Aが嵌合しながら圧入されていることを監視することができる。
【0077】
(第1変形例)
上述した第1〜第4の各実施形態は、先行杭材と後続杭材が継手部16同士で嵌合されるものについて説明したが、他の形態の杭材にも適用可能である。
図9は、第1変形例に係る先行杭材1−1および後続杭材1−2を示す斜視図である。先行杭材1−1および後続杭材1−2は、熱間または冷間圧延鋼であり、長さ方向の寸法が5メートルから20メートル、最大で50メートルに形成される。先行杭材1−1は、断面がコの字状であり、後続杭材1−2は、先行杭材1−1の内空面に対して所定(1ミリメートルから3ミリメートル)のクリアランスを介して対向するように図中の矢印方向に圧入される。
【0078】
先行杭材1−1には、複数の検知部が設けられる。先行杭材1−1には、後続杭材1−2が先行杭材1−1の先端部まで圧入されたことを検知する先端センサを備える。また、先行杭材1−1には、後続杭材1−2が先行杭材1−1の中途位置まで圧入されたことを検知する中間センサを備えていてもよい。
【0079】
(第5の実施形態)
以下、本発明を適用した第5の実施形態に係る鋼矢板圧入システムについて説明する。
第5の実施形態は、
図10及び
図11に示すように、鋼矢板(先行杭材1−1)の開放された継手(前方継手部16b−1)には、先行杭材1−1の長手方向の全長にわたって延びる止水材30が設けられ、この止水材30内に長手方向に沿って電線3(検知部)が埋設されている。止水材30は、下端30bにおいて、先行杭材1−1の前方継手部16b−1に嵌合する後続杭材1−2の継手(後方継手部16a−2)が配置される側(すなわち、先行杭材1−1の前方継手部16b−1における後続杭材1−2の後方継手部16a−2の嵌合領域内)に向けて電線3とともに突出する凸部31が設けられている。止水材30は、先行杭材1−1の前方継手部16b−1の内面に、例えば両面テープや接着剤等によって貼付されている。止水材30としては、例えば特開2010−112054号公報に記載されるような高吸収ポリマーとゴムの複合材である水膨張性ゴムからなる止水材を採用することができる。なお、止水材30の凸部31は、止水材30の長手方向に延びる部分に対して一体的に設けられていてもよいし、別体であってもよい。別体の場合には、止水材30と異なる部材から形成されるものであってもかまわない。
【0080】
電線3は、止水材30の内部において、止水材30の一端(上端30a)から他端(下端30b)に向けて延び、さらに下端30bの凸部31内で折り返されて上端30a側に戻るように埋設され、止水材30の上端30aから電線3の両端部3b、3bが突出している。このように電線3の下側の折返し部分3a(凸状部)が凸部31内に埋設されているために、この折返し部分3aも、後続杭材1−2の継手(後方継手部16a−2)が配置される側に向けて突出することとなる。電線3の両端部3b、3bは、それぞれ不図示の電源、及び例えば電球や回転灯等の通電表示部32を介して直列の回路を形成するように接続されている。通電表示部32では、前述の回路が正常な場合において電線3の通電状態、すなわち検知状態であることが電球や回転灯の点灯により表示される。つまり、電線3の一部が断線すると非通電状態(非検知状態)となり、通電表示部32において電球や回転灯が消灯することで通電表示が消える。
【0081】
なお、止水材30が設けられる先行杭材1−1の前方継手部16b−1の下端には、凸部31を覆うカバー体等で防護されていてもよい。このようなカバー体としては、先行杭材1−1の打設時に止水材30の下端部(凸部31)が土の先端抵抗や周面摩擦によって破断しない程度に防護され、かつ後続杭材1−2の挿入によって凸部31が破断するように設定される。
【0082】
図12及び
図13は、
図10に示す継手部分を紙面上側から見たときの先行杭材1−1に後続杭材1−2を嵌合する施工状態を示している。
第5の実施形態の鋼矢板圧入システムでは、
図12及び
図13に示すように、電線3を埋設させた止水材30を備えた先行杭材1−1の前方継手部16b−1に対して、上方から後続杭材1−2の後方継手部16a−2を嵌合させながら挿入する。このときの挿入時には、止水材30内の電線3は切断されることがなく正常であるので、電線3は通電状態であり、通電表示部32における電球や回転灯の点灯を確認することで、正常な嵌合により挿入されていることを監視することができる。そして、後続杭材1−2の下端が先行杭材1−1の下端の深さに一致する打設完了位置まで打設され、先行杭材1―1と後続杭材1−2の継手同士が正常に嵌合されたときには、止水材30の凸部31に、下方に向けて挿入される後続杭材1−2の下端が衝突することによって、その凸部31が破断される。凸部31には電線3の折返し部分3aが埋設されているため、凸部31が破断されると電線3も折返し部分3aで切断されて非通電状態(非検知状態)となり、通電表示部32において電球や回転灯が消灯することで通電表示が消える。つまり、電線3の通電状態を通電表示部32で監視し、非通電状態を確認することで、後続杭材1−2が継手同士で正常に嵌合しながら挿入されて、先行杭材1−1の下端まで到達したことを確認することができる。
なお、凸部31は、凸部31内の電線3(折返し部分3a)が切断していれば良いため、後続杭材1−2の衝突によって止水材30の本体部分から切り離された状態で破断されている必要はない。
【0083】
(第2変形例)
なお、第5の実施形態では、先行杭材1−1に止水材30を設ける構成としているが、これに限定されることはない。例えば、
図14に示す第2変形例のように、後続杭材1−2の後方継手部16a−2に、上述したような凸部31(
図12参照)を備えない止水材30を設けた構成であってもよい。第2変形例の電線3は、止水材30の内部において、止水材30の一端(上端30a)から凸部を備えない他端(下端30b)に向けて延び、さらにこの下端30b内で折り返されて上端30a側に戻るように埋設されている。また、第2変形例では、先行杭材1−1の前方継手部16b−1の下端部分に、嵌合時に後続杭材1−2の後方継手部16a−2が配置される側(すなわち、先行杭材1−1の前方継手部16b−1における後続杭材1−2の後方継手部16a−2の嵌合領域内)に向けて突出する突出刃部33が設けられている。
この場合も上述した第5の実施形態と同様に、後続杭材1−2の下端が先行杭材1−1の下端の深さに一致する打設完了位置まで打設され、先行杭材1―1と後続杭材1−2の継手同士が正常に嵌合されたときには、止水材30内の電線3の下端の折返し部分3cが突出刃部33に接触することによって切断され非通電状態(非検知状態)となり、これを上述した通電表示部32で確認することができる。
【0084】
なお、上述した第5の実施形態及び第2変形例では、止水材30に電線3が埋設された例について説明したが、電線が止水材に埋設される構成に限定されることはない。例えば、上述したJポケットパイル等のように継手部にパイプ等が設置可能なポケット部(溝部)を有する場合などでは、先行杭材の継手にその長手方向に沿って電線のみが設けられる構成とすることも可能である。さらに、電線のみを設ける場合には、後続杭材の衝突によって破断可能な部材からなる保護材(例えば樹脂製の管材など)によって電線を保護し、先行杭材の挿入中、あるいは後続杭材の挿入中における電線の切断を防止する構成としてもよい。
【0085】
(第3変形例)
上述した各実施形態では、杭材が嵌合されて挿入されていることを保証するにあたっての嵌合が、複数の杭材を予め定めた施工方向に連続して地中に配置する施工において、先行して地中に配置された先行杭材の施工方向前方側の継手と、後続して地中に配置される後続杭材の施工方向後方側の継手との嵌合である例を挙げて説明したが、このような嵌合に限定されることはなく、複数の杭材の施工における先行杭材の開放された継手と後続杭材の継手との嵌合であればよい。例えば、複数の杭材を連続して地中に圧入してなる壁体に対して杭材の長手方向に沿わせて補強材を配置するような施工における杭材と補強材との嵌合などにも本発明を適用できる。
【0086】
以下、本発明を適用した第3変形例に係る鋼矢板圧入システムについての具体例を説明する。
鋼矢板のウェブ部には、ウェブ部の外面から直交方向に突出し、鋼矢板の長手方向の上端から下端に亘って形成される側方継手部が設けられている。補強材は、例えば、外周面に長手方向の上端から下端に亘って形成される継手部が設けられた鋼管からなる。あるいは、補強材は、例えば、一方のフランジの外面に長手方向の上端から下端に亘って形成される継手部が設けられたH形鋼矢板からなる。この場合の施工状態監視方法としては、先行して地中に配置された鋼矢板(先行杭材)の開放された側方継手部に対して後続して地中に配置される補強材(後続杭材)の継手部を嵌合させて、補強材を地中に挿入する。このとき、補強材を挿入しながら、鋼矢板または補強材に設置された検知部の検知状態や、検知部により発信された信号の有無に基づいて補強材の継手部が鋼矢板の側方継手部と嵌合しながら挿入されていることを上述した施工状態監視装置を使用して監視することができる。
【0087】
上述した各実施形態は、鋼矢板圧入システムの圧入機本体100が施工状態監視装置300を有する例を挙げて説明したが、その施工状態監視装置300の機能を、圧入機本体とは独立したコンピュータで実現するようにしても良い。例えば、施工状態監視装置300は、鋼矢板1を設置する施工を管理する管理者が保有する端末のコンピュータにより実現してもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0088】
また、上述した各実施形態は、貫入長計測部が、杭材を挿入する挿入機に設置されたものである例を挙げて説明したが、貫入長計測部は、杭材を挿入する挿入機に設置されていなくてもよい。例えば、地上に設置したワイヤ式のストロークセンサにより実現してもよい。この場合、地中に挿入する杭材にワイヤを連結しておくことで、杭材の挿入に伴うストロークセンサにおけるワイヤの繰り出し量の変化に基づいて貫入長を計測することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。