【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のように、本発明は、向上した引張特性を有する自己補強熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法に関する。
【0013】
本発明の一例は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して接着する段階とを含み、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うものである熱可塑性樹脂複合材の製造方法に関する。
【0014】
詳細には、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うことができる。
【0015】
より詳細には、前記熱可塑性樹脂複合材の製造方法は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有するマトリックス樹脂層と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して樹脂積層体を接着する段階とを含み、
前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うものである熱可塑性樹脂複合材の製造方法に関する。
【0016】
本発明の他の例は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定し、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂とを含む熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0017】
前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。
【0018】
詳細には、前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する。
【0019】
より詳細には、本発明は、融点100℃〜150℃のマトリックス樹脂と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂とを含有する樹脂積層体と、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂とを含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されたものである熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0020】
前記ステッチ樹脂とマトリックス樹脂が溶融して接着された形態の熱可塑性樹脂複合材である。前記複合材の引張剛性2.4GPa以上および引張強度170Mpa以上を有するものであるとよい。
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法は、高延伸ホモポリマー補強材樹脂の効果を極大化して自己補強複合材の生産性および引張特性を向上させ、ステッチ樹脂の選択的溶融による潜熱で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の熱による結晶化度の低下を防止し、低融点ステッチ樹脂の使用量の減少で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の物性の発現を極大化することができ、従来知られたテープ織りに伴うwavinessの発生で一方向性(unidirection)物性の低下を防止することができる。
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して接着する段階とを含み、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に含むことができる。
【0024】
前記製造方法を各段階別に詳細に説明する。
【0025】
マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階
前記マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階は、通常の熱可塑性樹脂複合材の製造工程で行う方法で行うことができる。前記樹脂積層体の製造は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを互いに一定の交差角を有するように配列されるように積層することができる。
【0026】
本発明に係る樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂を溶融して補強材繊維に含浸する段階を含み、好ましくは、溶融および含浸された樹脂複合材を再結晶化する段階を追加的に含むことができる。また、前記溶融および含浸段階の前に、マトリックス樹脂および補強材樹脂を積層する段階を行うことができる。
【0027】
前記溶融および含浸する段階は、積層された複合材原材料がダブルベルトラミネータの内部に注入され、温度とベルト間隔による圧力を受けて基材が溶融して補強材に含浸される段階である。温度条件が異なる少なくとも2つ以上の区間に区分されるダブルベルトプレスラミネータを用い、前記区間は、2つ、3つ、4つ、または5つなどに区分して行うことができる。本発明の一例において、ラミネータの区間が4つの場合、各区間は別個に駆動されるローラに区分して作動し、別個の温度条件に設定可能である。例えば、前記ダブルベルトプレスラミネータは、温度条件が異なる4つ以上の区間を含み、前記区間は、前記ラミネータの注入部から排出部側へ第1区間、第2区間、第3区間、および第4区間に区分され、前記第1区間の温度は、補強材樹脂の溶融温度をTmとする時、常温〜(Tm−50)℃、第2区間の温度は、補強材樹脂の溶融温度をTmとする時、(Tm−50)℃〜(Tm−70)℃の温度範囲であり、前記第3区間の温度は、(Tm−70)℃〜(Tm−90)℃の温度範囲であり、前記第4区間の温度は、(Tm−90)℃〜(Tm−110)℃の温度範囲であるとよい。
【0028】
熱可塑性樹脂複合材、より詳細には、自己補強複合材は、FRPの構成要素であるマトリックス樹脂と補強材とを樹脂素材として使用するもので、好ましくは、同一素材であってよい。
【0029】
本発明の一例において、前記マトリックス樹脂は、フィルム形態であり、前記補強材樹脂は、繊維、テープ、または織物形態であるとよい。前記補強材樹脂は、一方向繊維形態であり、一定の交差角を有するように配置して補強材樹脂層を製造することができる。
【0030】
本発明において、マトリックス樹脂と補強材樹脂は、従来知られた熱可塑性樹脂を全て使用し、特に提案する意図ではない。前記補強材樹脂は、マトリックス樹脂より高い融点を有することが好ましい。前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有することができる。
【0031】
本発明において、前記補強材樹脂は、高延伸比、例えば、11:1〜20:1の延伸比を有するものであるとよい。これにより、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有することができる。
【0032】
本発明に使用可能なマトリックス樹脂と補強材樹脂の例は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂が使用できる。補強材樹脂の例は、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリブチレン(Polybutylene)、ポリペンテン(polypentene)、ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate))、およびポリスチレン(polystyrene)からなる群より選択された1種以上であるとよい。
【0033】
前記マトリックス樹脂と補強材樹脂は、ポリオレフィン樹脂、例えば、炭素数2−4の鎖状オレフィンを繰り返し単位として含むホモポリマー、ヘテロポリマー、またはコポリマーであるとよい。前記ポリオレフィン樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの共重合体などを含む。
【0034】
前記補強材樹脂は、マトリックス樹脂と同一または類似の物性を有する樹脂であるとよい。
【0035】
本明細書において、用語「自己補強」補強材は、広義には補強材が樹脂材質からなるものを意味し、従来、マトリックスを樹脂として用い、補強材を炭素繊維およびガラス繊維などの無機質繊維などを用いていたのとは区別される意味であり、狭義には補強材樹脂の物性がマトリックス樹脂と物性が同一または類似の樹脂を意味する。例えば、前記自己補強補強材は、示差走査熱量分析法(Differential Scanning Calorimetry;DSC)により決定することができ、マトリックス樹脂と補強材樹脂を用いて製造された複合材をDSC分析した結果、1次昇温ピークにおいて、互いに異なる2つでない、1つの同一のTmピークが現れる素材を意味することができる。
【0036】
ステッチ樹脂を用いて固定する段階
ステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定することができ、前記樹脂積層体は、補強材樹脂の積層体であってもよいが、好ましくは、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層との積層体であってよい。ステッチ樹脂は、補強材樹脂層または樹脂積層体の上端と下端を交互に交差してステッチ方式で固定する機能を果たし、熱可塑性樹脂で製造された繊維形態であるとよい。前記ステッチ樹脂は、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有する熱可塑性樹脂であるとよく、ステッチされた補強材繊維または樹脂積層体は、加熱してステッチ樹脂とマトリックス樹脂を補強材繊維に含浸して固定化することができる。
【0037】
一例として、ステッチ樹脂で補強材樹脂層のみを固定する場合、前記補強材樹脂は、一方向繊維形態であり、一定の交差角を有するように配置して補強材樹脂層を製造し、ステッチ繊維で補強材樹脂層の上端および下端を交互に交差して固定することができる。例えば、補強材樹脂は、一方向繊維形態に製造し、これを0度方向1レイヤ90度方向1レイヤを重ねてステッチ固定したものであるとよい。補強材樹脂を経糸および緯糸として製織し、ステッチ樹脂で固定した補強材樹脂生地の一例は、
図3〜
図5に示す。
【0038】
一例として、ステッチ樹脂で補強材樹脂層とマトリックス樹脂層とから構成された樹脂積層体を固定する場合、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを互いに一定の交差角を有するように配列されるように積層して樹脂積層体を製造し、ステッチ繊維で樹脂積層体の上端および下端を交互に交差して固定することができる。ステッチ樹脂で補強材樹脂層とマトリックス樹脂層とから構成された樹脂積層体を固定した場合の一例は、
図2に示す。
【0039】
本発明において、前記ステッチ樹脂は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する機能を果たす。また、前記固定化に使用されたステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、加熱により溶融して樹脂積層体内に含浸されて樹脂積層体を固定する機能を果たす。
【0040】
そこで、前記加熱接着段階において、補強材樹脂は溶融せず、ステッチ樹脂は溶融する条件を満足しなければならないので、前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。低融点/無延伸繊維を使用することによって、加熱により低融点/無延伸繊維のみ選択的に溶融して相変化による潜熱効果で高延伸Homo−PPの結晶性の低下を防止できるだけでなく、加圧成形時、高延伸Homo−PP繊維が補強効果を発揮できるように固定させる役割も果たせるという利点がある。
【0041】
前記ステッチ樹脂は、1mm以下の直径、例えば、0.05〜1mmの範囲の繊維形態であるステッチの太さが一定以上大きくなると、全体素材における高延伸繊維の比率が低くなって物性の低下が発生する。
【0042】
前記固定する段階は、ステッチ樹脂が積層体を通過して上端および下端を交互に連結して固定させることができる。
図1に示しているように、従来技術は、経糸と緯糸が互いによれている方式で織り込まれている形態で、糸よれによる一方向性機械的物性の低下が憂慮される問題がある。しかし、
図2のように、経糸と緯糸は、よれなく一直線に積層し、経糸と緯糸を繋ぐ低延伸低融点(10:1未満の延伸比および150℃以下の融点)のステッチ樹脂を活用することで既存の糸よれの問題を解決することができる。また、
図5に示しているように、ステッチの形状は、目的に合わせて多様な形態に変形して適用可能である。
【0043】
樹脂積層体を加熱して接着する段階
本発明の熱可塑性樹脂複合材は、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されて樹脂積層体を接着することができる。前記樹脂積層体を接着する段階は、ステッチ樹脂の融点以上に加熱して行うことができる。前記樹脂積層体を接着する段階は、100℃〜150℃の温度に加熱することができる。前記樹脂積層体を接着する段階で加熱してステッチ樹脂とマトリックス樹脂を選択的に溶融することができる。
【0044】
ステッチ樹脂の選択的溶融による潜熱で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の熱による結晶化度の低下を防止し、従来知られたテープ織りに伴う波形(waviness)の発生で一方向性(unidirection)物性の低下を防止することができる。
【0045】
本発明に係る樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂に補強材樹脂を溶融および含浸する段階を含み、好ましくは、溶融および含浸された樹脂複合材を再結晶化する段階を追加的に含むことができる。また、前記溶融および含浸段階の前に、マトリックス樹脂および補強材樹脂を積層する段階を行うことができる。
【0046】
前記溶融および含浸する段階は、積層された複合材原材料がダブルベルトラミネータの内部に注入され、温度とベルト間隔による圧力を受けて基材が溶融して補強材に含浸される段階である。
【0047】
前記熱可塑性樹脂複合材は、引張剛性2.4GPa以上および170Mpa以上の引張強度を有し、例えば、引張剛性2.4〜2.7GPa、170〜190MPaの引張強度を有することができる。
【0048】
本発明の他の例は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定し、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂とを含む熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0049】
前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。
【0050】
詳細には、前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する。
【0051】
より詳細には、本発明は、融点100℃〜150℃のマトリックス樹脂と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂とを含有する樹脂積層体と、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂とを含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されたものである熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0052】
前記ステッチ樹脂とマトリックス樹脂が溶融して接着された形態の熱可塑性樹脂複合材である。前記複合材の引張剛性2.4GPa以上および引張強度170Mpa以上を有するものであるとよい。