特許第6719986号(P6719986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6719986
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/09 20190101AFI20200629BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20200629BHJP
   B29C 70/02 20060101ALI20200629BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B32B7/09
   B32B27/12
   B29C70/02
   C08J5/04CES
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-115449(P2016-115449)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-109473(P2017-109473A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0180509
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162123
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒョン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、トク−ウ
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−134233(JP,A)
【文献】 特開2009−127169(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099611(WO,A1)
【文献】 特開2002−227066(JP,A)
【文献】 米国特許第04913937(US,A)
【文献】 特開2008−149708(JP,A)
【文献】 特開2006−291369(JP,A)
【文献】 特開2007−160587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/04−5/10、5/24
B29B 11/16、15/08−15/14
B29C 41/00−41/36、41/46−41/52、
70/00−70/88
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して接着する段階とを含み、
前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を行うものであり、
前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、
前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有するものである、
熱可塑性樹脂複合材の製造方法。
【請求項2】
前記固定する段階は、前記ステッチ樹脂が積層体を通過して上端および下端を交互に連結して固定させるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
マトリックス樹脂は、フィルム形態であり、
補強材樹脂は、繊維、テープ、または織物形態であり、
ステッチ樹脂は、繊維形態である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
補強材樹脂は、一方向繊維形態であり、一定の交差角を有するように配置して補強材樹脂層を製造するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂積層体の製造は、前記マトリックス樹脂層と前記補強材樹脂層とを互いに一定の交差角を有するように配列されるように積層するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
補強材樹脂は、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン、ポリビニルアセテート、およびポリスチレンからなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂積層体を接着する段階は、前記ステッチ樹脂の融点以上に加熱して行うものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂積層体を接着する段階は、100℃〜150℃の温度に加熱するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂積層体を接着する段階において、100〜150℃の温度範囲で加熱して前記ステッチ樹脂とマトリックス樹脂を選択的に溶融するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
融点100℃〜150℃のマトリックス樹脂と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂とを含む樹脂積層体と、10:1未満の延伸比150℃以下の融点を有するステッチ樹脂とを含み、
前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されたものである、熱可塑性樹脂複合材。
【請求項11】
前記ステッチ樹脂と前記マトリックス樹脂が溶融して接着された形態である、請求項10に記載の熱可塑性樹脂複合材。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂複合材は、引張弾性係数2.4GPa以上および170MPa以上の引張強度を有する、請求項10に記載の熱可塑性樹脂複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張特性が改善された熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法に関し、より詳細には、特定の融点および延伸比を有する熱可塑性樹脂を用いて、補強材樹脂とマトリックス樹脂とから構成された樹脂積層体または補強材樹脂を固定して製造され、引張特性が改善された自己補強熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)は、複合材料であって、多様な分野、例えば、土木、建築分野、自動車素材などの輸送分野、電子機器、電気機器分野、航空、宇宙分野などに幅広く用いられている。このようなFRPにおいては、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂が用いられ、補強材繊維として、ガラス繊維、金属繊維、セラミックス繊維、炭素繊維などの無機繊維や、天然繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリレート繊維、ポリイミド繊維などの有機繊維が多様な形態で用いられている。これらの補強材のうち、特にFRPの強度を考慮してガラス繊維が幅広く使用されている。例えば、補強材として、ガラス繊維などの無機繊維を用いたFRP、あるいは樹脂マトリックスと異なる材質の有機繊維を用いたFRPは、その再利用が難しいという欠点がある。
【0003】
そこで、マトリックス樹脂と補強材が同じ素材からなる、再生性の良いFRPが開発された。このような自己補強複合材は、無機繊維を補強材として使用するものと異なり、補強材繊維として、有機繊維、特に樹脂繊維を用いたFRPが使用されており、これは、無機繊維に比べて強度がやや低いが、補強材繊維とマトリックス樹脂の類似する物性を有するので、多様な利点がある。自己補強複合材は、低比重高剛性素材であって、比重が0.9以下と非常に低いが、引張弾性係数および強度の側面で既存のガラス繊維(不連続)強化複合材と類似水準の発現が可能であるため、従来のShort/long GFRPの代替時、約30%追加軽量化が可能なだけでなく、熱可塑性単一素材の使用で既存の繊維強化複合材に比べて再利用性が非常に優れるという利点がある。
【0004】
マトリックス樹脂と補強材が同じ素材からなるFRPの例は、熱可塑性樹脂からなる高強度および高弾性率の繊維やフィルムを補強材として用いたり、補強材と同じ熱可塑性樹脂に溶媒を含むものをマトリックス樹脂として用いて、マトリックス樹脂と補強材を混合または積層した後、加熱および加圧することによって複合化する方法で製造されたものであるとよい。しかし、前記方法は、溶媒を用いるのに環境汚染をもたらすなどの問題がある。したがって、高強度を有し、再生性に優れたFRPおよびその製造方法を提供する必要性が切実である。
【0005】
そこで、マトリックス樹脂と補強材が同じ素材からなるFRPの場合、無機補強材に比べて低い補強効果を高め、引張特性を改善するための多様な試みが行われた。
【0006】
例えば、US6,458,727には、高延伸(highly drawn)ポリプロピレンテープの製造後、表面のみ選択的に溶融する方式で自己補強複合材を製造する方法が開示されているが、テープ織りに伴うwavinessの発生による物性が低下し、高延伸ポリプロピレン表面のみ選択的に溶融させなければならないので、processing windowが非常に狭くて生産性に劣る問題があった。
【0007】
また、Lankhorst社製品Pure(商標名)の押出(co−extrusion)手法でホモポリプロピレン(コア)とランダム−ポリプロピレン(外皮)を押出して自己補強複合材テープを製造したものがある。前記製品は、同一のポリプロピレン素材であるが、コアに使用される樹脂に比べて融点が低いランダム重合体を表面に適用することによって、processing windowが拡大して生産性を向上させた。しかし、前記製造された自己補強複合材テープを追加的に織り込んで使用するため、テープ織りに伴うwavinessの発生による物性が低下する問題は依然として改良する必要性がある。
【0008】
したがって、引張強度などの物性に優れた自己補強複合材を簡単な製造工程により高い生産性で製造し、テープ織りに伴うwavinessの発生による物性の低下を減少させ、溶融および接着工程が簡単で高い生産性を達成しなければならず、これによる物性の低下が減少した自己補強複合材およびその製造方法に対する開発の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特定の融点および延伸比を有する熱可塑性樹脂を用いて、樹脂層を固定して製造され、引張特性が改善された自己補強熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、特定の融点および延伸比を有する熱可塑性樹脂を用いて、補強材樹脂とマトリックス樹脂とから構成された樹脂積層体または補強材樹脂を固定して製造され、選択的に固定化熱可塑性樹脂を溶融して接着した樹脂複合材を製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、高い生産性、簡単な製造工程、製織または溶融および接着工程による物性の低下を防止することができる熱可塑性樹脂複合材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のように、本発明は、向上した引張特性を有する自己補強熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法に関する。
【0013】
本発明の一例は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して接着する段階とを含み、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うものである熱可塑性樹脂複合材の製造方法に関する。
【0014】
詳細には、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うことができる。
【0015】
より詳細には、前記熱可塑性樹脂複合材の製造方法は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有するマトリックス樹脂層と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して樹脂積層体を接着する段階とを含み、
前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に行うものである熱可塑性樹脂複合材の製造方法に関する。
【0016】
本発明の他の例は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定し、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂とを含む熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0017】
前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。
【0018】
詳細には、前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する。
【0019】
より詳細には、本発明は、融点100℃〜150℃のマトリックス樹脂と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂とを含有する樹脂積層体と、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂とを含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されたものである熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0020】
前記ステッチ樹脂とマトリックス樹脂が溶融して接着された形態の熱可塑性樹脂複合材である。前記複合材の引張剛性2.4GPa以上および引張強度170Mpa以上を有するものであるとよい。
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法は、高延伸ホモポリマー補強材樹脂の効果を極大化して自己補強複合材の生産性および引張特性を向上させ、ステッチ樹脂の選択的溶融による潜熱で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の熱による結晶化度の低下を防止し、低融点ステッチ樹脂の使用量の減少で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の物性の発現を極大化することができ、従来知られたテープ織りに伴うwavinessの発生で一方向性(unidirection)物性の低下を防止することができる。
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階と、前記樹脂積層体を加熱して接着する段階とを含み、前記樹脂積層体を接着する段階を行う前に、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する段階を追加的に含むことができる。
【0024】
前記製造方法を各段階別に詳細に説明する。
【0025】
マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階
前記マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを積層して樹脂積層体を製造する段階は、通常の熱可塑性樹脂複合材の製造工程で行う方法で行うことができる。前記樹脂積層体の製造は、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを互いに一定の交差角を有するように配列されるように積層することができる。
【0026】
本発明に係る樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂を溶融して補強材繊維に含浸する段階を含み、好ましくは、溶融および含浸された樹脂複合材を再結晶化する段階を追加的に含むことができる。また、前記溶融および含浸段階の前に、マトリックス樹脂および補強材樹脂を積層する段階を行うことができる。
【0027】
前記溶融および含浸する段階は、積層された複合材原材料がダブルベルトラミネータの内部に注入され、温度とベルト間隔による圧力を受けて基材が溶融して補強材に含浸される段階である。温度条件が異なる少なくとも2つ以上の区間に区分されるダブルベルトプレスラミネータを用い、前記区間は、2つ、3つ、4つ、または5つなどに区分して行うことができる。本発明の一例において、ラミネータの区間が4つの場合、各区間は別個に駆動されるローラに区分して作動し、別個の温度条件に設定可能である。例えば、前記ダブルベルトプレスラミネータは、温度条件が異なる4つ以上の区間を含み、前記区間は、前記ラミネータの注入部から排出部側へ第1区間、第2区間、第3区間、および第4区間に区分され、前記第1区間の温度は、補強材樹脂の溶融温度をTmとする時、常温〜(Tm−50)℃、第2区間の温度は、補強材樹脂の溶融温度をTmとする時、(Tm−50)℃〜(Tm−70)℃の温度範囲であり、前記第3区間の温度は、(Tm−70)℃〜(Tm−90)℃の温度範囲であり、前記第4区間の温度は、(Tm−90)℃〜(Tm−110)℃の温度範囲であるとよい。
【0028】
熱可塑性樹脂複合材、より詳細には、自己補強複合材は、FRPの構成要素であるマトリックス樹脂と補強材とを樹脂素材として使用するもので、好ましくは、同一素材であってよい。
【0029】
本発明の一例において、前記マトリックス樹脂は、フィルム形態であり、前記補強材樹脂は、繊維、テープ、または織物形態であるとよい。前記補強材樹脂は、一方向繊維形態であり、一定の交差角を有するように配置して補強材樹脂層を製造することができる。
【0030】
本発明において、マトリックス樹脂と補強材樹脂は、従来知られた熱可塑性樹脂を全て使用し、特に提案する意図ではない。前記補強材樹脂は、マトリックス樹脂より高い融点を有することが好ましい。前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有することができる。
【0031】
本発明において、前記補強材樹脂は、高延伸比、例えば、11:1〜20:1の延伸比を有するものであるとよい。これにより、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有することができる。
【0032】
本発明に使用可能なマトリックス樹脂と補強材樹脂の例は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂が使用できる。補強材樹脂の例は、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリブチレン(Polybutylene)、ポリペンテン(polypentene)、ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate))、およびポリスチレン(polystyrene)からなる群より選択された1種以上であるとよい。
【0033】
前記マトリックス樹脂と補強材樹脂は、ポリオレフィン樹脂、例えば、炭素数2−4の鎖状オレフィンを繰り返し単位として含むホモポリマー、ヘテロポリマー、またはコポリマーであるとよい。前記ポリオレフィン樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの共重合体などを含む。
【0034】
前記補強材樹脂は、マトリックス樹脂と同一または類似の物性を有する樹脂であるとよい。
【0035】
本明細書において、用語「自己補強」補強材は、広義には補強材が樹脂材質からなるものを意味し、従来、マトリックスを樹脂として用い、補強材を炭素繊維およびガラス繊維などの無機質繊維などを用いていたのとは区別される意味であり、狭義には補強材樹脂の物性がマトリックス樹脂と物性が同一または類似の樹脂を意味する。例えば、前記自己補強補強材は、示差走査熱量分析法(Differential Scanning Calorimetry;DSC)により決定することができ、マトリックス樹脂と補強材樹脂を用いて製造された複合材をDSC分析した結果、1次昇温ピークにおいて、互いに異なる2つでない、1つの同一のTmピークが現れる素材を意味することができる。
【0036】
ステッチ樹脂を用いて固定する段階
ステッチ樹脂を用いて、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定することができ、前記樹脂積層体は、補強材樹脂の積層体であってもよいが、好ましくは、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層との積層体であってよい。ステッチ樹脂は、補強材樹脂層または樹脂積層体の上端と下端を交互に交差してステッチ方式で固定する機能を果たし、熱可塑性樹脂で製造された繊維形態であるとよい。前記ステッチ樹脂は、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有する熱可塑性樹脂であるとよく、ステッチされた補強材繊維または樹脂積層体は、加熱してステッチ樹脂とマトリックス樹脂を補強材繊維に含浸して固定化することができる。
【0037】
一例として、ステッチ樹脂で補強材樹脂層のみを固定する場合、前記補強材樹脂は、一方向繊維形態であり、一定の交差角を有するように配置して補強材樹脂層を製造し、ステッチ繊維で補強材樹脂層の上端および下端を交互に交差して固定することができる。例えば、補強材樹脂は、一方向繊維形態に製造し、これを0度方向1レイヤ90度方向1レイヤを重ねてステッチ固定したものであるとよい。補強材樹脂を経糸および緯糸として製織し、ステッチ樹脂で固定した補強材樹脂生地の一例は、図3図5に示す。
【0038】
一例として、ステッチ樹脂で補強材樹脂層とマトリックス樹脂層とから構成された樹脂積層体を固定する場合、マトリックス樹脂層と補強材樹脂層とを互いに一定の交差角を有するように配列されるように積層して樹脂積層体を製造し、ステッチ繊維で樹脂積層体の上端および下端を交互に交差して固定することができる。ステッチ樹脂で補強材樹脂層とマトリックス樹脂層とから構成された樹脂積層体を固定した場合の一例は、図2に示す。
【0039】
本発明において、前記ステッチ樹脂は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定する機能を果たす。また、前記固定化に使用されたステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、加熱により溶融して樹脂積層体内に含浸されて樹脂積層体を固定する機能を果たす。
【0040】
そこで、前記加熱接着段階において、補強材樹脂は溶融せず、ステッチ樹脂は溶融する条件を満足しなければならないので、前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。低融点/無延伸繊維を使用することによって、加熱により低融点/無延伸繊維のみ選択的に溶融して相変化による潜熱効果で高延伸Homo−PPの結晶性の低下を防止できるだけでなく、加圧成形時、高延伸Homo−PP繊維が補強効果を発揮できるように固定させる役割も果たせるという利点がある。
【0041】
前記ステッチ樹脂は、1mm以下の直径、例えば、0.05〜1mmの範囲の繊維形態であるステッチの太さが一定以上大きくなると、全体素材における高延伸繊維の比率が低くなって物性の低下が発生する。
【0042】
前記固定する段階は、ステッチ樹脂が積層体を通過して上端および下端を交互に連結して固定させることができる。図1に示しているように、従来技術は、経糸と緯糸が互いによれている方式で織り込まれている形態で、糸よれによる一方向性機械的物性の低下が憂慮される問題がある。しかし、図2のように、経糸と緯糸は、よれなく一直線に積層し、経糸と緯糸を繋ぐ低延伸低融点(10:1未満の延伸比および150℃以下の融点)のステッチ樹脂を活用することで既存の糸よれの問題を解決することができる。また、図5に示しているように、ステッチの形状は、目的に合わせて多様な形態に変形して適用可能である。
【0043】
樹脂積層体を加熱して接着する段階
本発明の熱可塑性樹脂複合材は、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂を含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されて樹脂積層体を接着することができる。前記樹脂積層体を接着する段階は、ステッチ樹脂の融点以上に加熱して行うことができる。前記樹脂積層体を接着する段階は、100℃〜150℃の温度に加熱することができる。前記樹脂積層体を接着する段階で加熱してステッチ樹脂とマトリックス樹脂を選択的に溶融することができる。
【0044】
ステッチ樹脂の選択的溶融による潜熱で高延伸ホモポリマー補強材樹脂の熱による結晶化度の低下を防止し、従来知られたテープ織りに伴う波形(waviness)の発生で一方向性(unidirection)物性の低下を防止することができる。
【0045】
本発明に係る樹脂複合材の製造方法は、マトリックス樹脂に補強材樹脂を溶融および含浸する段階を含み、好ましくは、溶融および含浸された樹脂複合材を再結晶化する段階を追加的に含むことができる。また、前記溶融および含浸段階の前に、マトリックス樹脂および補強材樹脂を積層する段階を行うことができる。
【0046】
前記溶融および含浸する段階は、積層された複合材原材料がダブルベルトラミネータの内部に注入され、温度とベルト間隔による圧力を受けて基材が溶融して補強材に含浸される段階である。
【0047】
前記熱可塑性樹脂複合材は、引張剛性2.4GPa以上および170Mpa以上の引張強度を有し、例えば、引張剛性2.4〜2.7GPa、170〜190MPaの引張強度を有することができる。
【0048】
本発明の他の例は、マトリックス樹脂層および補強材樹脂層が積層された樹脂積層体と、前記補強材樹脂層および樹脂積層体からなる群より選択された1種以上を固定し、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有するステッチ樹脂とを含む熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0049】
前記ステッチ樹脂は、補強材樹脂より低い融点と延伸比を有し、例えば、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するものであるとよい。
【0050】
詳細には、前記マトリックス樹脂層は、融点100℃〜150℃を有するマトリックス樹脂を含有し、前記補強材樹脂層は、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂を含有する。
【0051】
より詳細には、本発明は、融点100℃〜150℃のマトリックス樹脂と、11:1〜20:1の延伸比および160℃〜180℃の融点を有する補強材樹脂とを含有する樹脂積層体と、10:1未満の延伸比および150℃以下の融点を有するステッチ樹脂とを含み、前記ステッチ樹脂が溶融して樹脂積層体に含浸されたものである熱可塑性樹脂複合材に関する。
【0052】
前記ステッチ樹脂とマトリックス樹脂が溶融して接着された形態の熱可塑性樹脂複合材である。前記複合材の引張剛性2.4GPa以上および引張強度170Mpa以上を有するものであるとよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材は、従来知られた熱可塑性樹脂複合材、例えば、自己補強複合材で製造できる多様な製品に利用可能である。
【0054】
本発明に係る熱可塑性樹脂複合材およびその製造方法は、特定の融点および延伸比を有する熱可塑性樹脂を用いて、補強材樹脂とマトリックス樹脂とから構成された樹脂積層体または補強材樹脂を固定して製造され、引張特性が改善された自己補強熱可塑性樹脂複合材を提供し、自己補強複合材で製造できる多様な製品に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】従来技術により経糸と緯糸が互いによれている方式で織り込まれている形態の樹脂積層体を示す図である。
図2】本発明の一例により経糸と緯糸はよれなく一直線に積層し、経糸と緯糸を繋ぐステッチ樹脂繊維を活用してステッチされた樹脂積層体の図である。
図3】本発明の一例により補強材繊維の経糸と緯糸を織る時、ステッチを±45度方向に連結したステッチされた補強材繊維で製織された生地を示す図である。
図4】本発明の一例により補強材繊維の経糸と緯糸を織る時、ステッチを0/90度方向に連結したステッチされた補強材繊維で製織された生地を示す。
図5】本発明の一例により多様なステッチ形状に固定された補強材繊維で製織された生地を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、下記の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本願発明の範囲が下記の実施例に限定される意図ではない。
【0057】
比較例1:樹脂複合材の製造
樹脂複合材を製造するための補強材樹脂繊維およびマトリックス樹脂を準備した。マトリックス樹脂は、プロピレン/エチレンの共重合樹脂(MI:25、Tm:130℃)を用いて、マトリックス樹脂自体を用いて無延伸フイルムを製作した。
補強材樹脂は、ホモポリプロピレン(MI:1、Tm:165℃、分子量Mw:480,000、ロッテケミカル社製のY120樹脂)を使用した。前記補強材樹脂自体を用いて原糸を製作し、製作した原糸に15:1の延伸比を与えて繊維を製作した。前記繊維は、1880denier、引張弾性係数133.2g/denier、引張強度6.8g/denier、伸び率7.44%の機械的物性を有する。補強材繊維を緯糸/縦糸として用いて1:1平織に製織した補強材生地を使用した。
前記補強材樹脂とマトリックス樹脂を、前記補強材樹脂とマトリックス樹脂を、繊維補強材/マトリックス/繊維補強材の順に3つの層に積層するために、ロール形態のアンワインダに装着し、アンワインダから移送されて出てきて順次に積層され、ダブルベルトプレスラミネータに挿入した。加工前の試片の厚さは0.56mmであり、ダブルベルトラミネータのベルト間隔(ロールギャップ)0.5mm、ベルト速度8mm/sec、および滞留時間150secで運転した。前記ダブルベルトプレスラミネータは、区分された4つの区間を有し、ダブルベルトプレスである。本実験では、区間1〜4の温度を全て異なって設定するが、区間1の温度が最も高く、ラミネータの注入口から排出口側へ温度が減少する温度勾配を有するように設定し、各区間の滞留時間は同一に設定した。第1区間の温度は160℃、第2区間の温度は100℃、第3区間の温度は80℃、および第4区間の温度は50℃で運転した。
前記方法で製造された自己補強複合材の物性から、ISO−527方法により引張強度および引張弾性係数を測定した。その結果、得られた自己補強複合材の引張強度は163MPaであり、引張弾性係数は2.29GPaであった。下記表1の試片1−5は、前記製造された自己補強複合材を製造し、この中から5回試片を採取したものである。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1:ステッチ繊維で固定されたUD形態の補強材樹脂の使用
比較例1と同様に、マトリックス樹脂は、プロピレン/エチレンの共重合樹脂(MI:25、Tm:130℃)を用いて、マトリックス樹脂自体を用いてフイルムを製作して使用した。
ステッチ樹脂は、プロピレン/エチレンの共重合樹脂(MI:25、Tm:130℃)を用いて、ステッチ樹脂自体を用いて、延伸比5:1として直径0.5mmを有する繊維を製作した(マトリックスと同一の樹脂)。
補強材樹脂は、ホモポリプロピレン(MI:1、Tm:165℃、分子量Mw:480,000、ロッテケミカル社製のY120樹脂)を使用した。前記補強材樹脂自体を用いて原糸を製作し、製作した原糸に15:1の延伸比を与えて繊維を製作した。ステッチ樹脂で固定された補強材樹脂を得るために、本繊維は、1880denier、引張弾性係数133.2g/denier、引張強度6.8g/denier、伸び率7.44%の機械的物性を有する。本繊維を一方向に配列した後に、前記製造されたステッチ樹脂として融点130℃の温度の熱可塑性繊維を用いて、補強材樹脂をステッチする方式で固定して補強材生地を製作した。前記補強材生地は一方向性(unidirection、UD)であるので、0°および90°を1セットとして使用した。
前記ステッチ繊維で固定された補強材樹脂とマトリックス樹脂を、補強材繊維/マトリックス/補強材繊維の順に3つの層に積層するために、ロール形態のアンワインダに装着し、アンワインダから移送されて出てきて順次に積層され、ダブルベルトプレスラミネータに挿入した。加工前の試片の厚さは0.56mmであり、ダブルベルトラミネータのベルト間隔(ロールギャップ)0.5mm、ベルト速度8mm/sec、および滞留時間150secで運転した。前記ダブルベルトプレスラミネータは、区分された4つの区間を有し、ダブルベルトプレスである。本実験では、区間1〜4の温度を全て異なって設定するが、区間1の温度が最も高く、ラミネータの注入口から排出口側へ温度が減少する温度勾配を有するように設定し、各区間の滞留時間は同一に設定した。第1区間の温度は160℃、第2区間の温度は100℃、第3区間の温度は80℃、および第4区間の温度は50℃で運転した。
前記方法で製造された自己補強複合材の物性である引張強度および引張弾性係数を、ISO−527方法により測定した。その結果、得られた自己補強複合材の平均引張強度は180MPaであり、平均引張弾性係数は2.55GPaであった。下記表2の試片1−5は、前記製造された自己補強複合材を製造し、この中から5回試片を採取したものである。
【0060】
【表2】
【0061】
ステッチ繊維で固定された補強材繊維を用いて製造された熱可塑性樹脂複合材の特性評価の結果、ステッチ繊維で固定しない補強材繊維を用いた樹脂複合材に比べて、引張弾性係数が約9.5%増加した。このような実験結果は、高延伸繊維補強材をステッチ繊維で固定して一方向形態に積層した結果、製織に伴う緯糸/緯糸のwavenessによる物性の低下を防止した。また、加熱により補強材繊維は溶融せず、低融点ステッチ繊維が選択的に溶融することによって発生した潜熱効果で高延伸Homo−PPの熱による結晶化度の低下を防止した。
【0062】
実施例2:多様な延伸比を有する補強材の活用
本実施例は、実施例1で使用した補強材樹脂と異なる延伸比を有する樹脂を用いて熱可塑性樹脂複合材を製造し、その物性を測定した。
具体的には、補強材樹脂は、ホモポリプロピレン(MI:1、Tm:165℃、分子量Mw:480,000、ロッテケミカル社製のY120樹脂)を使用した。前記補強材樹脂を、14:1の延伸比を与えて原糸で繊維を製作した。本繊維は、1850denier、引張弾性係数120.2g/denier、引張強度6.4g/denier、伸び率9.32%の機械的物性を有する。本繊維を一方向に配列した後に、前記製造されたステッチ樹脂として融点130℃の温度の熱可塑性繊維を用いて補強材樹脂をステッチする方式で固定して補強材生地を製作した。前記補強材生地は一方向性(unidirection、UD)であるので、0°および90°を1セットとして使用した。
マトリックス樹脂およびステッチ樹脂は、実施例1と実質的に同様の方法で製造して使用した。実施例1と同様の方法で、ダブルベルトプレスラミネータを用いて、前記ステッチ繊維で固定された補強材繊維と、マトリックス樹脂およびステッチ樹脂から構成された熱可塑性樹脂複合材を製造した。
前記方法で製造された自己補強複合材の物性である引張強度および引張弾性係数を、ISO−527方法により測定した。その結果、得られた自己補強複合材の平均引張強度は173MPaであり、平均引張弾性係数は2.43GPaであった。下記表3の試片1−5は、前記製造された自己補強複合材を製造し、この中から5回試片を採取したものである。
【0063】
【表3】
【0064】
比較例2:多様な融点を有するステッチ繊維の活用
本比較例は、実施例1で使用したステッチ繊維と異なる融点を有する樹脂を用いて熱可塑性樹脂複合材を製造し、その物性を測定した。
具体的には、ステッチ繊維は、ホモポリプロピレン樹脂(MI:1、Tm:165℃)を用いて、延伸比5:1と直径0.5mmを有する繊維を製作した。前記製作されたステッチ繊維を用いて、実施例1と同じ補強材繊維を固定した。補強材繊維およびマトリックス樹脂は、実施例1と実質的に同様の方法で製造して使用した。
実施例1と同様の方法で、ダブルベルトプレスラミネータを用いて、前記ステッチ繊維で固定された補強材繊維とマトリックス樹脂とから構成された熱可塑性樹脂複合材を製造した。
前記方法で製造された自己補強複合材の物性である引張強度および引張弾性係数を、ISO−527方法により測定した。その結果、得られた自己補強複合材の平均引張強度は174MPaであり、平均引張弾性係数は1.87GPaであった。下記表4の試片1−5は、前記製造された自己補強複合材から5回採取したものである。
【0065】
【表4】
【0066】
比較例3
本比較例では、実施例1で使用したステッチ繊維およびマトリックス樹脂フィルムと同じものを使用し、補強材樹脂は延伸比が異なるものを使用した。
具体的には、補強材樹脂は、ホモポリプロピレン(MI:1、Tm:165℃、分子量Mw:480,000、ロッテケミカル社製のY120樹脂)を使用した。前記補強材樹脂自体を用いて原糸を製作し、製作した原糸に10:1の延伸比を与えて繊維を製作した。本繊維は、1800denier、引張弾性係数60.8g/denier、引張強度5.8g/denier、伸び率16.44%の機械的物性を有する。本繊維を一方向に配列した後に、ステッチ樹脂で補強材樹脂をステッチする方式で固定して補強材生地を製作した。前記補強材生地は一方向性(unidirection、UD)であるので、0°および90°を1セットとして使用した。
実施例1と同様の方法で、ダブルベルトプレスラミネータを用いて、前記ステッチ繊維で固定された補強材繊維と、マトリックス樹脂およびステッチ樹脂から構成された熱可塑性樹脂複合材を製造した。
前記方法で製造された自己補強複合材の物性である引張強度および引張弾性係数を、ISO−527方法により測定した。その結果、得られた自己補強複合材の平均引張強度は150MPaであり、平均引張弾性係数は1.17GPaであった。下記表5の試片1−5は、前記製造された自己補強複合材を製造し、この中から5回試片を採取したものである。
【0067】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5