特許第6720032号(P6720032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720032
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/08 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   H02K29/08
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-176422(P2016-176422)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-42421(P2018-42421A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】森本 典樹
(72)【発明者】
【氏名】萩村 将巳
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−220472(JP,A)
【文献】 特開昭63−220791(JP,A)
【文献】 特開2016−077081(JP,A)
【文献】 特開2014−087097(JP,A)
【文献】 特開2010−029020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースが周方向に並んで配置され、隣接する前記ティース間にスロットが形成されているステータと、
前記複数のティースに巻回され、相数が2相に設定されているコイルと、
前記ステータに対して回転可能に設けられ、周方向に沿って磁極が交互となるように配置された複数のマグネットを有するロータと、
複数の前記スロットのうちの何れかに配置され、前記マグネットの磁束を検出する第1磁気センサおよび第2磁気センサと、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサを収容するセンサケースと、
を備え、
B、L、M、NおよびXを自然数とし、前記スロットの個数をSとし、前記マグネットの磁極数をPとし、
X=90(2L−1)/{(360/S)×(P/2)}
を満たすLのうち、最少の値をAとすると、
前記スロットの個数S、前記磁極数P、および前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの間の電気角θは、
S=2N
P=S±2
θ=90(2B−1)
B<A
を満たすように設定されており、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサの少なくとも何れか一方が前記スロットの周方向の中心からずれた位置に配置されるように前記センサケースに収容されており、
少なくとも1つの前記ティースには、前記スロット側の一部に、前記センサケースのうちの前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサの少なくとも何れか一方が収容された箇所を受け入れ可能な凹部が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサは、1つの前記スロットに配置されており、該スロットを形成する2つの前記ティースに、前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記マグネットの磁束を検出する第3磁気センサを備え、
前記複数のマグネットのうちの1つは、
隣接する前記マグネットの磁極とは異極の主磁極部と、
隣接する前記マグネットの磁極と同極の副磁極部と、
を有し、
前記主磁極部と前記副磁極部とが前記ロータの回転軸線方向に隣接配置されており、
前記主磁極部に対応する位置に、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサが配置されていると共に、前記副磁極部に対応する位置に、前記第3磁気センサが配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第3磁気センサは、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサが配置されている前記スロットと同一のスロットに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
複数のティースが周方向に並んで配置され、隣接する前記ティース間にスロットが形成されているステータと、
前記複数のティースに巻回され、相数が3相に設定されているコイルと、
前記ステータに対して回転可能に設けられ、周方向に沿って磁極が交互となるように配置された複数のマグネットを有するロータと、
複数の前記スロットのうちの何れかに配置され、前記マグネットの磁束を検出する第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサと、
前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサを収容するセンサケースと、
を備え、
隣接する少なくとも2つの前記ティースが同相のティースに設定されており、
B、C、M、NおよびXを自然数とし、前記スロットの個数をSとし、前記マグネットの磁極数をPとし、
X=120M/{(360/S)×(P/2)}
を満たすMのうち、最少の値をAとすると、
前記スロットの個数S、前記磁極数P、前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの間の電気角θ1、および前記第2磁気センサと前記第3磁気センサとの間の電気角θ2は、
S=3N
Sが偶数のとき、P=S±2
Sが奇数のとき、P=S±1
θ1=120+360(B−1)
θ2=120+360(C−1)
θ1+θ2<240A
を満たすように設定されており、
前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの少なくとも何れか1つが前記スロットの周方向の中心からずれた位置に配置されるように前記センサケースに収容されており、
少なくとも1つの前記ティースには、前記スロット側の一部に、前記センサケースのうちの前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの何れかが収容された箇所を受け入れ可能な凹部が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサのうち、少なくとも2つの磁気センサは、1つの前記スロットに配置されており、該スロットを形成する2つの前記ティースに、前記凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記マグネットの磁束を検出する第4磁気センサを備え、
前記複数のマグネットのうちの1つは、
隣接する前記マグネットの磁極とは異極の主磁極部と、
隣接する前記マグネットの磁極と同極の副磁極部と、
を有し、
前記主磁極部と前記副磁極部とが前記ロータの回転軸線方向に隣接配置されており、
前記主磁極部に対応する位置に、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサが配置されていると共に、前記副磁極部に対応する位置に、前記第4磁気センサが配置されている
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記第4磁気センサは、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの何れかが配置されている前記スロットと同一のスロットに配置されていることを特徴とする請求項7に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車等に用いられる回転電機として、エンジン始動機能と回生エネルギーによる回生発電機能の2つの機能を備えたものが知られている。この種の回転電機は、クランク軸に固定された有底筒状のロータ(回転子)と、エンジンのケースに固定されたステータ(固定子)と、を備えている。ロータの内周面側にはマグネットが設けられる一方、ステータには複数のコイルが巻装されたティースが放射状に設けられている。
【0003】
そして、ロータが回転することによりティースに流れる磁束が変化し、これが起電力となってコイルに電流が流れる。各コイルに流れる電流は、それぞれコイルと外部から延びるリード線とを接続することにより、このリード線を介してバッテリに蓄電されたり、付属電機機器に電力供給を行ったりする用途に用いられる。
また、ステータには、ロータの回転位置を検出する位置検出センサが設けられている。この位置検出センサによって検出された検出信号に基づいて、コイルの転流タイミング等を制御する。
【0004】
ここで、位置検出センサは、センサケース(センサホルダ)と、センサケースの内部に収納され、ロータの磁極の変化を検出する複数のホールICと、センサケースの内部に収納され、各ホールICと電気的に接続される回路基板と、を備えている。
センサケースは、一面に開口部を有する箱状のセンサケース本体(ケース体)と、センサケース本体から垂設された複数のホルダ片と、が一体成形されたものである。各ホルダ片は、それぞれ隣接するティース間に形成される複数のスロットに1つずつ挿入される。そして、センサケース本体に回路基板が収納されると共に、脚部にホールICが収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−89588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、各ホールICの位置は回転電機の仕様に応じて異なるため、仕様によっては1つのスロットに1つのホールIC(脚部)を配置するように構成すると、位置検出センサ(センサケース)が大型化してしまう可能性がある。
例えば、コイルの相数が2相に設定された回転電機では、各ホールICは、電気角で90°の間隔をあけて配置する必要がある。
【0007】
また、2相の回転電機において、マグネットの磁極数が14極に設定され、スロットの個数が12個に設定された回転電機の場合、各々スロットの中心に1つのホールICを配置しようとすると、ホールICの間の角度が機械角で90°になってしまう。このため、位置検出センサの占有スペース、センサケースが大型化するばかりか位置検出センサの製造コストが増大してしまう可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、位置検出センサを小型化できると共に製造コストも低減できる回転電機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る回転電機は、複数のティースが周方向に並んで配置され、隣接する前記ティース間にスロットが形成されているステータと、前記複数のティースに巻回され、相数が2相に設定されているコイルと、前記ステータに対して回転可能に設けられ、周方向に沿って磁極が交互となるように配置された複数のマグネットを有するロータと、複数の前記スロットのうちの何れかに配置され、前記マグネットの磁束を検出する第1磁気センサおよび第2磁気センサと、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサを収容するセンサケースと、を備え、B、L、M、NおよびXを自然数とし、前記スロットの個数をSとし、前記マグネットの磁極数をPとし、X=90(2L−1)/{(360/S)×(P/2)}を満たすLのうち、最少の値をAとすると、前記スロットの個数S、前記磁極数P、および前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの間の電気角θは、
S=2N
P=S±2
θ=90(2B−1)
B<A
を満たすように設定されており、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサの少なくとも何れか一方が前記スロットの周方向の中心からずれた位置に配置されるように前記センサケースに収容されており、少なくとも1つの前記ティースには、前記スロット側の一部に、前記センサケースのうちの前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサの少なくとも何れか一方が収容された箇所を受け入れ可能な凹部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、コイルの相数が2相に設定されている回転電機であっても、第1磁気センサと第2磁気センサとの間の機械角をできる限り小さく設定できる。このため、第1磁気センサや第2磁気センサを保持するセンサケースを設けた場合であっても、このセンサケースを小型化できる。また、第1磁気センサや第2磁気センサで構成される位置検出センサの製造コストを低減できる。
さらに、第1磁気センサおよび第2磁気センサの少なくとも何れか一方を、スロットの周方向の中心からずれた位置に配置しつつ、対応するティースに第1磁気センサおよび第2磁気センサの何れか一方を受け入れ可能な凹部を形成することにより、凹部を必要最小限の大きさに抑えつつ、2つの磁気センサをそれぞれ所望のスロットに配置することができる。このため、回転電機の特性悪化を抑制しつつ、センサケースを小型化できる。
【0011】
本発明に係る回転電機において、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサは、1つの前記スロットに配置されており、該スロットを形成する2つの前記ティースに、前記凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、センサケースを最小限にでき、位置検出センサの製造コストをさらに低減できる。
【0013】
本発明に係る回転電機は、前記マグネットの磁束を検出する第3磁気センサを備え、前記複数のマグネットのうちの1つは、隣接する前記マグネットの磁極とは異極の主磁極部と、隣接する前記マグネットの磁極と同極の副磁極部と、を有し、前記主磁極部と前記副磁極部とが前記ロータの回転軸線方向に隣接配置されており、前記主磁極部に対応する位置に、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサが配置されていると共に、前記副磁極部に対応する位置に、前記第3磁気センサが配置されていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、第1磁気センサおよび第2磁気センサに加え、第3磁気センサを用いてロータの円周上の絶対位置を検出することが可能になる。このため、例えば、回転電機によってエンジンの点火タイミングを制御することが可能になる。
【0015】
本発明に係る回転電機において、前記第3磁気センサは、前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサが配置されている前記スロットと同一のスロットに配置されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、3つの磁気センサを備えた位置検出センサを小型化できると共に、製造コストを低減できる。
【0017】
本発明に係る回転電機は、複数のティースが周方向に並んで配置され、隣接する前記ティース間にスロットが形成されているステータと、前記複数のティースに巻回され、相数が3相に設定されているコイルと、前記ステータに対して回転可能に設けられ、周方向に沿って磁極が交互となるように配置された複数のマグネットを有するロータと、複数の前記スロットのうちの何れかに配置され、前記マグネットの磁束を検出する第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサと、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサを収容するセンサケースと、を備え、隣接する少なくとも2つの前記ティースが同相のティースに設定されており、B、C、M、NおよびXを自然数とし、前記スロットの個数をSとし、前記マグネットの磁極数をPとし、X=120M/{(360/S)×(P/2)}を満たすMのうち、最少の値をAとすると、前記スロットの個数S、前記磁極数P、前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの間の電気角θ1、および前記第2磁気センサと前記第3磁気センサとの間の電気角θ2は、
S=3N
Sが偶数のとき、P=S±2
Sが奇数のとき、P=S±1
θ1=120+360(B−1)
θ2=120+360(C−1)
θ1+θ2<240A
を満たすように設定されており、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの少なくとも何れか1つが前記スロットの周方向の中心からずれた位置に配置されるように前記センサケースに収容されており、少なくとも1つの前記ティースには、前記スロット側の一部に、前記センサケースのうちの前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの何れかが収容された箇所を受け入れ可能な凹部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することで、コイルの相数が3相に設定されている回転電機であっても、第1磁気センサと第2磁気センサとの間の機械角、および第2磁気センサと第3磁気センサとの間の機械角をできる限り小さく設定できる。このため、第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサを保持するセンサケースを設けた場合であっても、このセンサケースを小型化できる。また、第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサで構成される位置検出センサの製造コストを低減できる。
さらに、第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサの少なくとも何れかを、スロットの周方向の中心からずれた位置に配置しつつ、対応するティースに第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサの何れかを受け入れ可能な凹部を形成することにより、凹部を必要最小限の大きさに抑えつつ、3つの磁気センサをそれぞれ所望のスロットに配置することができる。このため、回転電機の特性悪化を抑制しつつ、センサケースを小型化できる。
【0019】
本発明に係る回転電機において、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサのうち、少なくとも2つの磁気センサは、1つの前記スロットに配置されており、該スロットを形成する2つの前記ティースに、前記凹部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成することで、センサケースを最小限にでき、位置検出センサの製造コストをさらに低減できる。
【0021】
本発明に係る回転電機は、前記マグネットの磁束を検出する第4磁気センサを備え、前記複数のマグネットのうちの1つは、隣接する前記マグネットの磁極とは異極の主磁極部と、隣接する前記マグネットの磁極と同極の副磁極部と、を有し、前記主磁極部と前記副磁極部とが前記ロータの回転軸線方向に隣接配置されており、前記主磁極部に対応する位置に、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサが配置されていると共に、前記副磁極部に対応する位置に、前記第4磁気センサが配置されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成することで、第1磁気センサ、第2磁気センサおよび第3磁気センサに加え、第4磁気センサを用いてロータの円周上の絶対位置を検出することが可能になる。このため、例えば、回転電機によってエンジンの点火タイミングを制御することが可能になる。
【0023】
本発明に係る回転電機において、前記第4磁気センサは、前記第1磁気センサ、前記第2磁気センサおよび前記第3磁気センサの何れかが配置されている前記スロットと同一のスロットに配置されていることを特徴とする。
【0024】
このように構成することで、4つの磁気センサを備えた位置検出センサを小型化できると共に、製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コイルの相数が2相や3相に設定されている回転電機であっても、各磁気センサの間の機械角をできる限り小さく設定できる。このため、各センサを保持するセンサケースを設けた場合であっても、このセンサケースを小型化できる。また、各磁気センサで構成される位置検出センサの製造コストを低減できる。
さらに、各磁気センサの少なくとも何れかを、スロットの周方向の中心からずれた位置に配置しつつ、対応するティースにその磁気センサを受け入れ可能な凹部を形成することにより、凹部を必要最小限の大きさに抑えつつ、各磁気センサをそれぞれ所望のスロットに配置することができる。このため、回転電機の特性悪化を抑制しつつ、センサケースを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態における回転電機の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるステータとロータとを軸方向からみた概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるロータヨークの内周面側の展開図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるステータおよび位置検出センサの斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態における位置検出センサの分解斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるステータとロータとを軸方向からみた概略構成図である。
図7】本発明の第2実施形態におけるロータヨークの内周面側の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
(回転電機)
図1は、回転電機1の断面図である。図2は、回転電機1を構成するステータ3とロータ5とを軸方向からみた概略構成図である。
図1図2に示すように、回転電機1は、自動二輪車等の車両用エンジンの始動発電機として用いられるものであって、2相ブラシレス型の回転電機である。回転電機1は、エンジンブロック2に固定されるステータ3と、エンジンのクランクシャフト4に固定されるロータ5と、ロータ5の回転位置を検出する位置検出センサ6と、ステータ3に巻回されているコイル7と、を備えている。
なお、以下の説明において、回転電機1におけるロータ5の回転軸方向を単に軸方向と称し、ロータ5の回転方向を周方向と称し、軸方向および周方向に直交するロータ5の径方向を単に径方向と称して説明する。
【0029】
(ロータ)
ロータ5は、強磁性部材からなる金属製プレートを適宜成形加工することにより略有底筒状に形成されたロータヨーク8を備えている。ロータヨーク8は、底部8aと、底部8aの外周縁からエンジンブロック2側に向かって屈曲延出する円筒部8bと、底部8aの径方向中央から円筒部8bと同一方向に向かって屈曲延出するボス筒部8cと、を備えている。
【0030】
ボス筒部8cには、クランクシャフト4の先端が挿入されている。さらに、このクランクシャフト4がボルト10によってボス筒部8cに締結固定されている。これにより、クランクシャフト4とロータ5とが一体となって回転する。
円筒部8bの内周面には、複数(本第1実施形態では14個)のマグネット9が周方向に等間隔で配置されている。
【0031】
図3は、ロータヨーク8の内周面側の展開図である。
同図に示すように、複数のマグネット9は、1つを除き他の全てのマグネット9は、ロータ5の回転軸中心に向く側の面(内側面)がN極とS極の何れかに着磁されている。そして、1つのマグネット9cは、内側面がS極に着磁された主磁極部119の一端側に、内側面がN極に着磁された短尺な副磁極部129が設けられている。
なお、以下の説明では、図3中、内側面全域がN極に着磁されているマグネット9をN極マグネット9a、内側面全域がS極に着磁されているマグネット9をS極マグネット9b、主磁極部119と副磁極部129とを備えたマグネット9を2極マグネット9cと称する。
【0032】
ここで、ロータ5は、隣接する特定の一組のS極マグネット9bの間に2極マグネット9cが配置され、他の隣接するS極マグネット9b間にN極マグネット9aが配置されている。
したがって、ロータ5の内周側は、軸方向一端側(図3中上端側)以外では、N極とS極が交互に現れる。一方、軸方向一端側では、2極マグネット9cの副磁極部129および、その前後(周方向の前後)のマグネット3個分だけN極が連続して現れる。
後に詳述するように、マグネット9の軸方向の一端側の領域は、エンジンの点火タイミングを検出するためのターゲットとして用いられ、マグネット9の軸方向の残余の領域は、主に、コイル7の転流タイミングを検出するためのターゲットとして用いられる。
【0033】
(ステータ)
図4は、ステータ3および位置検出センサ6の斜視図である。
図1図2図4に示すように、ステータ3は、例えば電磁鋼板を積層してなるステータ鉄心11と、ステータ鉄心11に巻回される複数のコイル7とを備えている。ステータ鉄心11は、略円環状に形成された本体部12と、この本体部12の外周面から径方向外側に向かって放射状に突出する複数(本第1実施形態では12個)のティース部13と、を有している。
本体部12には、周方向に等間隔で軸方向に貫通する複数の貫通孔12aが形成されている。この貫通孔12aにボルト18が挿入され、さらにこのボルト18がエンジンブロック2に螺入される。これにより、エンジンブロック2にステータ鉄心11が締結固定される。
【0034】
各ティース部13の先端部には、この先端部から周方向両側に張り出す爪片14が設けられている。また、隣接するティース部13間に、それぞれスロット15が形成される。すなわち、本第1実施形態では、スロット15が12個形成されている。
また、各ティース部13には、これらティース部13の周囲を覆う樹脂製のインシュレータ19が装着されている。そして、スロット15内にコイル7が挿入され、インシュレータ19の上から各ティース部13にコイル7が巻回される。
【0035】
また、図2に詳示するように、ティース部13は、2相のうちのA相が周方向に隣接する3つのティース部13に連続して割り当てられていると共に、2相のうちのB相が周方向に隣接する3つのティース部13に連続して割り当てられている。さらに、ティース部13は、3つのA相と3つのB相とが周方向に交互に配置されるように割り当てられている。すなわち、ティース部13は、周方向にA相、A相、A相、B相、B相、B相、A相、A相、A相、B相、B相、B相の順に割り当てられている。そして、各ティース部13に巻回されたコイル7の端末部は、不図示の制御機器に電気的に接続される。
【0036】
ここで、複数のティース部13のうち、所定の隣接する2つのティース部13(本第1実施形態では、隣接する2つのA相のティース部13)の爪片14には、これら2つのティース部13によって形成されるスロット15側の一部に、それぞれ切欠き部16が形成されている。また、この切欠き部16に対応するように、インシュレータ19にも切欠き部19aが形成されている。2つの切欠き部16(切欠き部19a)は、爪片14の軸方向中央よりもやや外側から軸方向外側端に至る間に形成されている。2つの切欠き部16によって、周方向で隣接する2つの爪片14に跨る略長方形状の嵌合溝17が形成される。この嵌合溝17に、位置検出センサ6の一部が嵌合される。
なお、以下の説明では、爪片14に切欠き部16が形成される2つのティース部13を他のティース部13と区別するために特定ティース部13Aと称する。
【0037】
(位置検出センサ)
図5は、位置検出センサ6の分解斜視図である。
図4図5に示すように、位置検出センサ6は、ステータ鉄心11の軸方向一端側に配置される樹脂製のセンサケース60と、このセンサケース60内に収納される2つの回路基板55A,55B(第1回路基板55A、第2回路基板55B)とにより構成されている。
なお、以下の説明では、位置検出センサ6の向きは、この位置検出センサ6をステータ鉄心11に配置した状態での向きとする。つまり、以下の説明でいう軸方向、周方向、径方向は、回転電機1におけるロータ5の軸方向、周方向、径方向と一致する。
【0038】
各回路基板55A,55Bは、その面方向が周方向に沿うように配置される。各回路基板55A,55Bは、それぞれ略T字状に形成されており、軸方向に沿って長くなるように形成された挿入部56と、挿入部56の軸方向外側端に一体成形され、周方向に沿って長くなるように形成されたセンサ線接続部57とにより構成されている。
【0039】
第1回路基板55Aの挿入部56には、径方向外側の面(ロータ5のマグネット9と対向する面)に、第1ホールIC50aおよび第2ホールIC50bが軸方向に並ぶように表面実装されている。また、第2回路基板55Bの挿入部56には、径方向外側の面に、第3ホールIC50cが表面実装されている。また、第2ホールIC50bと第3ホールIC50cは、軸方向で同一高さとなるように実装されている。
【0040】
より具体的には、図3に示すように、各ホールIC50a〜50cのうち、第1ホールIC50aは、ロータヨーク8の内周面における軸方向一端側に対峙する位置M1に配置され、第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cは、ロータヨーク8の内周面における軸方向略中央に対峙する位置M2に配置されている。
【0041】
換言すれば、第2ホールIC50b、および第3ホールIC50cは、ロータ5の回転方向(周方向)で同一線上に配置されている。一方、第1ホールIC50aは、第2ホールIC50b、および第3ホールIC50cが配置されている線上からずれた位置に配置されている。また、第1のホールIC50aと第2のホールIC50bは、互いにロータ5の回転方向と直交する方向、つまり、軸方向で同一線上に位置するように配置されている。
【0042】
これにより、第1のホールIC50aは、2極マグネット9cの副磁極部129を通る高さで各極マグネット9a,9b,9cの磁束の切り替わりを検出する。一方、第2ホールIC50b、および第3ホールIC50cは、2極マグネット9cの主磁極部119を通る高さで各極マグネット9a,9b,9cの磁束の切り替わりを検出する。
【0043】
図4図5に戻り、各回路基板55A,55Bのセンサ線接続部57には、周方向略中央に、それぞれ2つのセンサ線用スルーホール58aが形成されている。これらセンサ線用スルーホール58aに、不図示のセンサ線の一端が挿入され、はんだ付け等により各回路基板55A,55Bに接続される。一方、センサ線の他端は、制御機器(何れも不図示)に電気的に接続される。
さらに、センサ線接続部57の周方向一側には、それぞれ2つのリード線用スルーホール58bが形成されている。これらリード線用スルーホール58bに、不図示のリード線の端末が2つの回路基板55A,55Bを跨るように接続される。
【0044】
センサケース60は樹脂により形成されており、各回路基板55A,55Bが収納されるセンサホルダ70と、センサホルダ70に取り付けられ、このセンサホルダ70からの各回路基板55A,55Bの抜けを防止するセンサ押え90と、センサホルダ70が挿入される外枠部材20と、により構成されている。
センサホルダ70は、ベース部71と、このベース部71から軸方向他端側(図4図5における下側)に向かって突設されたホルダ本体72とが一体成形されたものである。
【0045】
ベース部71は、軸方向からみて長円形状となるように形成され、且つステータ鉄心11の外周に沿うように僅かに湾曲形成されている。ベース部71の外周縁には、ホルダ本体72とは反対側に向かって突出する周壁76が立設されている。この周壁76は、外枠部材20にセンサホルダ70を挿入する際のインロー部76aとして機能すると共に、センサホルダ70にセンサ押え90を取り付ける際のインロー部76bとして機能する。
【0046】
また、ベース部71には、各回路基板55A,55Bの挿入部56を挿通可能な2つの開口部73が形成されている。また、各開口部73の径方向内側には、それぞれガイド壁74が軸方向一方(図4図5における上側)に向かって突設されている。このガイド壁74は、各回路基板55A,55Bから延びる不図示のセンサ線をセンサケース60の外部へと導くためのものである。各ガイド壁74には、それぞれ2つの凹部74aが周方向に並んで形成されている。凹部74aは、略半円状に形成されており、各凹部74a上を不図示のセンサ線が通る。
【0047】
ホルダ本体72は、ベース部71の開口部73が連通する略有底筒状に形成されている。また、ホルダ本体72は、ステータ3のティース部13に形成されている嵌合溝17に対応するように形成されている。すなわち、嵌合溝17にホルダ本体72が挿入される。嵌合溝17にホルダ本体72を挿入した状態では、このホルダ本体72の径方向外側の面と、ティース部13の爪片14の径方向外側の面とが面一になる。
また、ホルダ本体72は、ベース部71の2つの開口部73の間に、不図示の仕切り壁が形成されており、開口部73毎に回路基板55A,55Bを収納できるようになっている。
【0048】
また、ホルダ本体72のベース部71とは反対側端(先端)には、保持部77が軸方向に沿って延出形成されている。保持部77は、センサホルダ70の嵌合溝17内でのガタツキを抑制すると共に、剛性を高めるためのものである。保持部77は、ホルダ本体72の径方向内側の面から延出するベース部77aと、ベース部77aの径方向外側の面に突出形成されたリブ部77bとにより構成されている。
ベース部77aは、特定ティース部13Aの爪片14の内周面に当接される。リブ部77bは、周方向で隣接する特定ティース部13Aの爪片14の間で、且つ嵌合溝17(切欠き部16)よりも軸方向他方側に介装される。
【0049】
このような構成のもと、ベース部71の開口部73側から各回路基板55A,55Bの挿入部56を挿入、または圧入する。この際、ベース部71のガイド壁74に沿って挿入することにより、開口部73に挿入部56を容易に挿入できる。そして、開口部73に挿入部56を挿入することにより、ホルダ本体72に各回路基板55A,55Bの挿入部56が収納される。一方、各回路基板55A,55Bのセンサ線接続部57は、ベース部71に当接し、このベース部71上に突出した状態で配置される。
【0050】
ここで、ホルダ本体72は、前述したようにステータ3のティース部13に形成されている嵌合溝17に挿入されている。ホルダ本体72には、2つの回路基板55A,55Bの挿入部56が収納されているので、これら2つの挿入部56は、それぞれ嵌合溝17が形成されているスロット15の周方向の中心C1からずれた箇所に位置していることになる。換言すれば、各回路基板55A,55Bに表面実装されている第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cは、それぞれスロット15の周方向の中心C1からずれた位置に配置されている。なお、第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとの間の角度についての詳細は、後述する。
【0051】
センサ押え90は、ベース部71上載置される押え本体91を有している。押え本体91は、ベース部71の周壁76の内周面(インロー部76b)に沿うように、且つベース部71の長手方向に長くなるように、略円弧状に形成されている。これにより、ベース部71の周壁76に押え本体91がインロー嵌合される。
また、押え本体91は、その短手方向の幅が、ベース部71の短手方向の幅の約半分となるように形成されており、ベース部71のガイド壁74寄りに配置されている。
【0052】
さらに、押え本体91には、ベース部71の開口部73を避けるように、2つの凹部92が形成されている。また、凹部92の底面92aには、ベース部71側の端部に、ガイド壁74が挿入される挿入凹部93が形成されている。挿入凹部93の底面93aに、スリット94が形成されている。このスリット94を介し、一端が各回路基板55A,55Bに接続された不図示のセンサ線の他端が、径方向内側へと引き出される。
【0053】
また、押え本体91には、軸方向でベース部71とは反対側の端部の凹部92を避けた位置に、3つの押え板95a,95b,95cが径方向外側に向かって延出されている。各押え板95a,95b,95cは、各回路基板55A,55Bのセンサ線接続部57上に位置する。すなわち、各押え板95a,95b,95cによって、各回路基板55A,55Bのセンサホルダ70からの抜けが防止される。
【0054】
さらに、押え本体91には、径方向内側の側面に2つの係合部96a,96bが突設されている。これら係合部96は、外枠部材20にセンサ押え90を係合させるためのものである。係合部96は、押え本体91から径方向内側に向かって突出する支持部97と、支持部97の径方向内側端(先端)から周方向に沿って延びる爪部98と、が一体成形されてなる。
【0055】
外枠部材20は、センサホルダ70のベース部71の形状に対応するように、軸方向からみて長円形状となるように形成され、且つステータ鉄心11の外周に沿うように僅かに湾曲形成された筒状の周壁23を有している。より具体的には、周壁23は、径方向外側の壁を構成する外周壁部23aと、径方向内側の壁を構成する内周壁部23bと、これら外周壁部23aと内周壁部23bとを連結する側壁部23c,23dとが一体成形されたものである。
【0056】
そして、周壁23に、センサホルダ70のベース部71が挿入される。このとき、ベース部71の周壁76(インロー部76a)が、外枠部材20の周壁23に内嵌される形になる。
また、周壁23の内周面には、その内周側に突出する位置決め凸部21が、周壁23の周方向に所定間隔をあけて複数形成されている。位置決め凸部21は、外枠部材20に対するセンサホルダ70の位置決めの役割を有している。すなわち、外枠部材20にベース部71を挿入した際、位置決め凸部21にベース部71が当接し、このベース部71の位置が決まる。
【0057】
さらに、周壁23の内周面には、各位置決め凸部21の間に、その内周側に突出する抜け止め爪22が複数形成されている。抜け止め爪22は、外枠部材20に位置決めされたベース部71の外枠部材20からの抜けを防止するためのものである。これにより、外枠部材20とセンサホルダ70とが一体化される。
また、外枠部材20の外周壁部23aには、周方向略中央よりも周方向端部寄りに、厚肉の板状の舌片部64が径方向外側に向かって突設されている。この舌片部64は、位置検出センサ6を不図示のエンジンブロックに締結固定するためのものであって、その大部分に不図示のボルトが挿通されるボルト挿通孔64aが形成されている。
【0058】
さらに、外枠部材20の内周壁部23bには、センサ押え90の係合部96a,96bに対応する位置に、係合凹部25a,25bが形成されている。これら係合凹部25a,25bに係合部96a,96bの支持部97が挿入される。そして、センサ押え90の押え本体91と係合部96a,96bの爪部98とにより外枠部材20の内周壁部23bを挟持する。これにより、外枠部材20にセンサ押え90が係合される。また、外枠部材20の係合凹部25a,25bには、底部24にスリット24aが形成されている。これらスリット24aを介し、不図示のセンサ線の他端が外枠部材20の径方向内側に引き出される。
【0059】
また、内周壁部23bの中央には、径方向内側に向かって延出する配線ガイド68が一体成形されている。この配線ガイド68は、外枠部材20から引き出された不図示のセンサ線を集合させて側方への引き出すためのものである。
配線ガイド68は、ベース部68aと、このベース部68aから軸方向外側に離間して設けられた舌片部68bとが一体成形されてなる。そして、ベース部68aと舌片部68bとの間に、不図示のセンサ線が引き回されて保持される。
【0060】
また、ベース部68aには、径方向内側の先端にボルト座69が一体成形されている。ボルト座69は、外枠部材20をステータ鉄心11に固定するためのものである。ボルト座69は、ベース部68aの先端から軸方向内側に向かって屈曲延出する縦壁部69aと、縦壁部69aから径方向内側に向かって屈曲延出する横壁部69bとにより構成されている。縦壁部69aの高さは、ステータ鉄心11にボルト座69を取り付けた状態で、インシュレータ110の内周壁111に外枠部材20が干渉しない高さに設定されている。
【0061】
さらに、ボルト座69の横壁部69bには、ボルト挿通孔67が形成されている。そして、図1に示すように、ボルト座69の上からボルト30を挿通し、このボルト30をステータ鉄心11に螺入することにより、ステータ鉄心11に外枠部材20が締結固定される。
なお、外枠部材20にセンサホルダ70、各ホールIC50a,50b,50c、およびセンサ押え90を組み付けた後、外枠部材20の周壁23内が不図示の充填剤で封止される。これにより、塵埃や水滴によって位置検出センサ6の動作不良が生じてしまうことを防止している。
【0062】
(位置検出センサの作用と各ホールICの配置角度の詳細)
次に、位置検出センサ6の作用と、各ホールIC50a,50b,50cの配置角度の詳細について説明する。
各ホールIC50a,50b,50cのうち、第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cは、ロータ5の中央側の位置M2(図3参照)で検出した信号を、ロータ5の回転位置信号として不図示の制御装置に出力する。一方、第1ホールIC50aは、ロータ5の軸方向一端側の位置M1(図3参照)で検出した信号を、ロータ5の円周上の絶対位置情報信号として不図示の制御装置に出力する。
【0063】
不図示の制御装置では、第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cの出力信号を受けて、2相のコイル7に対する転流タイミングを制御すると共に、第1ホールIC50aの出力信号と、第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cの出力信号と、を受けてエンジンの点火タイミングおよび燃料噴射タイミングを制御する。
コイル7に対する転流タイミングに基づいて所定のコイル7に電流を供給すると、ロータ5およびクランクシャフト4が回転する。これにより、エンジンが始動される。また、エンジンの始動後には、ロータ5の回転に伴う発電電力を、不図示のバッテリに充電し、若しくは、直接使用に供する。
【0064】
ここで、B、L、M、NおよびXを自然数とし、スロット15の個数をSとし、マグネット9の個数、つまり磁極数をPとし、
X=90(2L−1)/{(360/S)×(P/2)}・・・(1)
を満たすLのうち、最少の値をA1とすると、
回転電機1のスロット15の個数S、磁極数P、および第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとの間の電気角θは、
S=2N ・・・(2)
P=S±2 ・・・(3)
θ=90(2B1−1)・・・(4)
B1<A1 ・・・(5)
を満たすように設定されている。
【0065】
本第1実施形態では、スロット15の個数Sが「12」であるので、この「12」を式(2)に代入するとN=2となる。また、本第1実施形態では、磁極数Pが14極であるので、式(3)を満たす。
さらに、式(1),(5)を満たすB1の数として、B1を「1」とし、この「1」を式(4)に代入して電気角θを90°に設定している。このように電気角θを設定することにより、第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとにより、2相のコイル7に対する転流タイミングを制御することができる。ここで、本第1実施形態では、磁極数Pが14極であるので、電気角θ=90°を機械角θmに引き直すと、θm≒12.85°となる。
【0066】
このように、上述の第1実施形態では、上記式(1)〜式(5)を満たすように、回転電機1のスロット15の個数S、磁極数P、および第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとの間の電気角θを設定している。また、スロット15の周方向の中心C1からずれた位置に第1ホールIC50a、第2ホールIC50b、および第3ホールIC50cを配置している。さらに、複数のティース部13のうちの2つのティース部13を、切欠き部16を形成した特定ティース部13Aとし、これら特定ティース部13Aの嵌合溝17内に第1ホールIC50a、第2ホールIC50b、および第3ホールIC50cを配置している。このため、コイル7の相数が2相に設定されている回転電機1であっても、第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとの間の機械角θmをできる限り小さく設定できる。したがって、1つのスロット15内に各ホールIC50a〜50cを収めることができ、この結果、各ホールIC50a〜50cを収納するセンサケース60も小型化できる。また、小型化できる分、位置検出センサ6の製造コストを低減できる。さらに、2つのティース部13に切欠き部16を形成するだけでマグネット9に各ホールIC50a〜50cを対向配置させることができるので、ティース部13(回転電機1)の特性悪化をできる限り抑えることができる。
【0067】
また、複数のマグネット9のうち、1つを主磁極部119と副磁極部129とを備えた2極マグネット9cとし、副磁極部129に対向する第1ホールIC50aを設けた。このため、不図示の制御装置によって、第1ホールIC50aの出力信号と、第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cの出力信号と、を受けてエンジンの点火タイミングおよび燃料噴射タイミングを制御することができる。
【0068】
さらに、第1ホールIC50aを、第2ホールIC50bと軸方向で並ぶように配置し、この2つのホールIC50a,50bを纏めて1つの第1回路基板55Aに表面実装している。このため、3つのホールIC50a〜50cを全て1つのスロット15内に配置することができ、回転電機1への転流タイミングやエンジンへの点火タイミングの制御を可能としつつ、位置検出センサ6を小型化できる。
【0069】
なお、上述の第1実施形態では、第1ホールIC50aおよび第2ホールIC50bが表面実装された第1回路基板55Aと、第3ホールIC50cが表面実装された第2回路基板55Bとを、それぞれ別々にセンサケース60のホルダ本体72に収納する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第1回路基板55Aと第2回路基板55Bとを一体に構成してもよい。
【0070】
また、上述の第1実施形態では、上記式(1)〜式(5)を満たすスロット15の個数S、磁極数P、および第2ホールIC50bと第3ホールIC50cとの間の電気角θとして、スロット15の個数Sを「12」、磁極数Pを「14」、電気角θを90°に設定した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、上記式(1)〜式(5)を満たすスロット15の個数S、磁極数P、電気角θであれば、任意に設定することが可能である。
【0071】
例えば、電気角θは、式(1)〜式(5)を満たす角度であればよく、場合によっては1つのスロット15内に第2ホールIC50bおよび第3ホールIC50cを配置できない場合もある。しかしながら、このような場合であっても、2つのホールIC50b,50cの少なくとも何れか一方を、スロット15の周方向の中心C1からずれた位置に配置し、2つのホールIC50b,50cに対応する位置のティース部13にホールIC50b,50cを受け入れ可能な切欠き部16を形成することにより、この切欠き部16を必要最小限の大きさに抑えることができる。このため、回転電機1の特性悪化を抑制できる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、図6に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図6は、第2実施形態における回転電機201を構成するステータ203とロータ205とを軸方向からみた概略構成図であって、前述の図2に対応している。
同図に示すように、前述の第1実施形態の回転電機1は2相ブラシレス型の回転電機であるのに対し、本第2実施形態の回転電機201は、3相ブラシレス型の回転電機である。この点、前述の第1実施形態と本第2実施形態との相違点である。
【0073】
(回転電機)
より具体的には、回転電機201のロータ205を構成するロータヨーク208には、複数(本第2実施形態では14個)のマグネット9が周方向に等間隔で配置されている。複数のマグネット9は、内側面全域がN極に着磁されているN極マグネット9a、内側面全域がS極に着磁されているS極マグネット9b、および主磁極部119と副磁極部129とを備えた1つの2極マグネット9cにより構成されている。
【0074】
そして、隣接する特定の一組のS極マグネット9bの間に2極マグネット9cが配置され、他の隣接するS極マグネット9b間にN極マグネット9aが配置されている。したがって、ロータ205の内周側は、軸方向一端側以外では、N極とS極が交互に現れる。一方、軸方向一端側では、2極マグネット9cの副磁極部129および、その前後(周方向の前後)のマグネット3個分だけN極が連続して現れる。
一方、ステータ203のステータ鉄心211は、複数(本第2実施形態では12個)のティース部213を有している。隣接するティース部213間には、スロット215が形成される。
【0075】
ここで、回転電機201は、nを3以上の自然数としたとき、スロット15の個数S、磁極数Pは、
nが奇数のとき、
P:S=3n±1:3n ・・・(11)
を満たすように設定され、
nが偶数のとき、
P:S=3n±2:3n ・・・(12)
を満たすように設定されている。
本第2実施形態の相回転電機201は、スロット15の個数Sが「12」、磁極数Pが「14」であるので、n=4(偶数)に設定すると、式(12)を満たす。
【0076】
また、各ティース部213は、それぞれ3相(U相、V相、W相)に割り当てられる。そして、ティース部213の数をTとし、
[条件1]nが偶数のとき、mを1以上の自然数とし、ティース部213の数Tと、磁極数Pとが共にm倍であるとき、3相(U相、V相、W相)のうち、n/2個の同相のティース部213が周方向に隣接して(並ぶように)配置され、同相ティース群286U,286V,286Wを2m個形成する。そして、同相の同相ティース群286U,286V,286Wは、それぞれロータ205の回転軸線を中心にして対向配置されている。
より好ましくは、
[条件2]ティース部213は、nが奇数のとき、3相(U相、V相、W相)のうち、同相のティース部213が全て周方向に隣接して(並ぶように)配置される。
【0077】
本実施形態では、n=4である。すなわち、ティース部213は、周方向にU相、U相、V相、V相、W相、W相、U相、U相、V相、V相、W相、W相の順に割り当てられている。
また、ステータ鉄心211の軸方向一端側には、ロータ205の回転位置を検出する位置検出センサ206が設けられている。
【0078】
図7は、ロータヨーク208の内周面側の展開図であって、前述の図3に対応している。
同図に示すように、位置検出センサ206は、4つのホールIC250a〜250d(第1ホールIC250a、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、第4ホールIC250d)を有している。第1ホールIC250aおよび第2ホールIC250bは、軸方向に並ぶように不図示の回路基板に表面実装されている。
【0079】
また、第1ホールIC250aは、ロータヨーク208の内周面における軸方向一端側に対峙する位置M1に配置されている。
さらに、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、および第4ホールIC250dは、ロータヨーク208の内周面における軸方向略中央に対峙する位置M2に配置されている。換言すれば、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、および第4ホールIC250dは、ロータ5の回転方向(周方向)で同一線上に配置されている。
【0080】
これにより、第1のホールIC250aは、2極マグネット9cの副磁極部129を通る高さで各極マグネット9a,9b,9cの磁束の切り替わりを検出する。一方、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、および第4ホールIC250dは、2極マグネット9cの主磁極部119を通る高さで各極マグネット9a,9b,9cの磁束の切り替わりを検出する。
そして、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、および第4ホールIC250dは、ロータ205の中央側の位置M2で検出した信号を、ロータ205の回転位置信号として不図示の制御装置に出力する。一方、第1ホールIC250aは、ロータ205の軸方向一端側の位置M1で検出した信号を、ロータ205の円周上の絶対位置情報信号として不図示の制御装置に出力する。
【0081】
ここで、B、C、M、NおよびXを自然数とし、スロット215の個数をSとし、磁極数をPとし、
X=120M/{(360/S)×(P/2)}・・・(13)
を満たすMのうち、最少の値をA2とすると、
回転電機1のスロット15の個数S、磁極数P、第2ホールIC250bと第3ホールIC250cとの間の電気角θ1、および第3ホールIC250cと第4ホールIC250dとの間の電気角θ2は、
S=3N ・・・(14)
Sが偶数のとき、P=S±2 ・・・(15)
Sが奇数のとき、P=S±1 ・・・(16)
θ1=120+360(B2−1)・・・(17)
θ2=120+360(C−1) ・・・(18)
θ1+θ2<240A2 ・・・(19)
を満たすように設定されている。
【0082】
本第2実施形態では、スロット15の個数Sが「12」であるので、この「12」を式(14)に代入するとN=2となる。また、本第2実施形態では、スロット15の個数Sが偶数で、且つ磁極数Pが14極であるので、式(15)を満たす。
さらに、式(13),(19)を満たすB2の数として、B2を「1」とし、この「1」を式(17)に代入し、さらに、式(18),(19)を満たすようにθ2およびCを設定する。ここでは、Cを「1」とし、電気角θ1,θ2をそれぞれ120°に設定している。このように電気角θ1,θ2を設定することにより、第2ホールIC250b、第3ホールIC250c、および第4ホールIC250dにより、3相のコイル7に対する転流タイミングを制御することができる。ここで、本第2実施形態では、磁極数Pが14極であるので、電気角θ1=θ2=120°を機械角θ1m,θ2mに引き直すと、θ1m=θ2m≒17.14°となる。
【0083】
また、各ホールIC250a〜250dは、それぞれスロット15の周方向の中心C2からずれた位置に配置されている。
さらに、複数のティース部213のうち、各ホールIC250a〜250dに対応するティース部213には、それぞれ切欠き部16(前述の図4参照、本第2実施形態の図6では不図示)が形成されている。そして、切欠き部16にそれぞれ各ホールIC250a〜250dを配置している。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
なお、上述の第2実施形態では、上記式(13)〜式(19)を満たすスロット215の個数S、磁極数P、第2ホールIC250bと第3ホールIC250cとの間の電気角θ1、および第3ホールIC250cと第4ホールIC250dとの間の電気角θ2として、スロット215の個数Sを「12」、磁極数Pを「14」、電気角θ1,θ2を120°に設定した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、上記式(13)〜式(19)を満たすスロット215の個数S、磁極数P、電気角θ1,θ2であれば、任意に設定することが可能である。
【0085】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、回転電機1,201は、自動二輪車等の車両用エンジンの始動発電機として用いられるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に回転電機1,201を適用することが可能である。例えば、回転電機1,201を単に発電機として用いたり、単に電動モータとして用いたりすることも可能である。
【0086】
また、上述の実施形態では、ロータヨーク8,208に設けられた複数のマグネット9は、内側面全域がN極に着磁されているN極マグネット9a、内側面全域がS極に着磁されているS極マグネット9b、および主磁極部119と副磁極部129とを備えた1つの2極マグネット9cにより構成されている場合について説明した。そして、2極マグネット9cは、内側面がS極に着磁された主磁極部119の一端側に、内側面がN極に着磁された短尺な副磁極部129が設けられている場合について説明した。しかしながら、マグネット9の着磁はN極とS極とが逆でもよい。つまり、2極マグネット9cにあっては、主磁極部119がN極に着磁され、副磁極部129がS極に着磁されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1,201…回転電機
3,203…ステータ
5,205…ロータ
6,206…位置検出センサ
7…コイル
9…マグネット
9a…N極マグネット
9b…S極マグネット
9c…2極マグネット
11,211…ステータ鉄心
13,213…ティース部(ティース)
15,215…スロット
16…切欠き部(凹部)
17…嵌合溝(凹部)
50a…第1ホールIC(第3磁気センサ)
50b,250b…第2ホールIC(第1磁気センサ)
50c,250c…第3ホールIC(第2磁気センサ)
60…センサケース
119…主磁極部
129…副磁極部
250a…第1ホールIC(第4磁気センサ)
250d…第4ホールIC(第3磁気センサ)
θ,θ1,θ2…電気角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7